説明

炭酸ガスによる変質防止超音波処理装置

【課題】超音波振動処理によって、溶存空気による溶液の変質を防止する装置を提供する。
【解決手段】容器1に超音波で処理する液体2が入れられ、この容器1に炭酸ガスボンベ3がバルブ4、給入管5を介して接続され、又、容器1に供給管6、液体供給装置7を介して霧化槽8が接続され、霧化槽8の底部に超音波振動子9が装着され、超音波振動子9に発振器10から発振出力が印加され、霧化槽8に第1の送風管11を介して送風装置12が接続され、送風装置12に第2の送風管13を介してデミスター14が接続され、デミスター14に第3の送風管15を介して冷却槽16が接続され、冷却槽16に第4の送風管17を介して霧化槽8に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波処理する溶液の変質を炭酸ガスによって防止する炭酸ガスによる変質防止超音波処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波霧化装置や超音波濃縮装置又は食品や香料などの超音波処理装置では、容器の底部に装着した超音波振動子から溶液に超音波を照射すると、溶液に含まれる溶存空気によって溶液が酸化されて変質することが知られている。特に、超音波照射によって起きるキャビテーションにより、気泡の温度が上昇してOHラジカルが生成され、ソノケミカル反応が起きる。
【0003】
しかしながら、従来の超音波処理装置では、このような超音波振動により、溶液に含まれる溶存空気による溶液の変質については何ら対策が取られていないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−169655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、このような超音波振動により、溶液に含まれる溶存空気による溶液の変質については何ら対策が取られていないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体を入れた容器と、該容器に接続され、前記液体に炭酸ガスを注入する炭酸ガスボンベと、前記炭酸ガスを注入した液体を前記容器から給送する給送装置と、該給送装置で給送された炭酸ガスを注入した液体を霧化する超音波振動子を装着した霧化装置と、該霧化装置で霧化された液体を送風する第1の送風管と、該第1の送風管に接続された送風装置と、該送風装置に接続された第2の送風管と、該第2の送風管に接続されたデミスターと、該デミスターに接続された第3の送風管と、該第3の送風管に接続された冷却槽と、該冷却槽に接続された第4の送風管を介して接続された前記霧化装置と、前記送風装置に衝突することによって液化した液体を回収する第1の回収口と、前記デミスターで冷却することによって液化した液体を回収する第2の回収口と、前記冷却槽で冷却されることによって液化した液体を回収する第3の回収口とからなるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の炭酸ガスによる変質防止超音波装置では、容器に入れた液体に超音波を照射したとき、液体に存在する溶存空気が液体中の物質と作用して他の物質に変質することを防ぐために、液体に炭酸ガスを注入することにより、液体に混入されている残存空気と置換して、超音波振動によって発生するキャビテーションの温度上昇を抑え、ソノケミカル反応を起こさず、溶液の変質を防ぐようにするという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の炭酸ガスによる変質防止超音波装置の構成図である。
【図2】図2は本発明の他の実施例の炭酸ガスによる変質防止超音波装置の構成図である。
【図3】図3は本発明の更に他の実施例の炭酸ガスによる変質防止超音波装置の構成図である。
【図4】図4は本発明の他の実施例の抽出・熟成処理の構成図である。
【図5】図5は本発明のさらに他の実施例の抽出・熟成処理の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明では、容器に入れた液体に炭酸ガスボンベから炭酸ガスを注入し、炭酸ガスを注入した液体を超音波振動子を装着した霧化装置で霧化し、霧化された粒子が送風装置内で衝突することによって液化して第1の回収口で回収し、霧化された液体をデミスターで冷却することによって第2の回収口で回収し、冷却槽で冷却されることによって液化した液体を回収する第3の回収口で回収口するものである。
【実施例】
【0010】
図1は本発明の実施例の炭酸ガスによる変質防止超音波装置の構成図で、密閉された容器1に超音波で処理する液体2が入れられ、この容器1に炭酸ガスボンベ3がバルブ4、給入管5を介して接続され、又、この密閉された容器1に供給管6、液体供給装置7を介して霧化槽8が接続され、霧化槽8の底部に超音波振動子9が装着され、この超音波振動子9に発振器10から発振出力が印加され、又、霧化槽8に第1の送風管11を介して送風装置12が接続され、この送風装置12に第2の送風管13を介してデミスター14が接続され、さらに、デミスター14に第3の送風管15を介して冷却槽16が接続され、冷却槽16に第4の送風管17を介して霧化槽8に接続され、さらに、送風装置12の下方に、この送風装置内で衝突して液化した液体を回収する第1の回収口18が装着され、又、デミスター14にこのデミスター14で回収された液体を取り出す第2の回収口19が装着され、さらに、冷却槽16に冷却槽16で回収された液体を取り出す第3の回収口20が設けられている。
【0011】
このように構成された本実施例の炭酸ガスによる変質防止超音波装置では、容器1から液体供給装置7によって炭酸ガスボンベ3から炭酸ガスを供給された液体2が霧化槽8に供給されると、超音波振動子9に発振器10から発振出力が印加されることにより、霧化槽8で霧化粒子が発生し、又、この霧化粒子は送風装置12が駆動されることにより、第2の送風管13を通ってデミスター14に霧化粒子が送られるが、送風装置12の回転翼によって霧化粒子は送風装置内で衝突して液化するが、この液化した液体は第1の回収口18で回収され、又、霧化粒子はデミスター14で回収されて第2の回収口19からとり出され、さらに、デミスター14で回収されなかった霧化粒子は冷却槽16で回収されて、第3の回収口20から取り出される。
【0012】
ここで、炭酸ガスボンベ3から液体2に供給された炭酸ガスによって、超音波振動子で霧化された液体に溶存空気による液体の酸化作用が生じることなく、液体の変質を防ぐことができる。
【0013】
図2は本発明の他の実施例の炭酸ガスによる変質防止超音波装置の構成図で、1は容器、2は液体、3は炭酸ガスボンベ、4はバルブ、5は給入管、6は供給管、7は液体供給装置、8は霧化槽、9は超音波振動子、10は発振器、11は第1の送風管、12は送風装置、13は第2の送風管、14はデミスター、15は第3の送風管、16冷却槽、17は第4の送風管、18は第1の回収口、19は第2の回収口、20は第3の回収口でこれらの構成は上記実施例と同じで、説明は省略するが、本実施例では、吸入管5は霧化槽8から送風装置12に接続されている第1の送風管11に接続されている。
【0014】
このように構成された本発明の炭酸ガスによる変質防止超音波装置では、第1の送風管11に注入された炭酸ガスは送風装置12で第2の送風管13,デミスター14、冷却槽16,霧化槽8に循環するので、霧化槽8の超音波振動子9によって照射された超音波により、液体に残存する溶存空気によって液体が変質されることがない。
【0015】
図3は本発明のさらに他の実施例の炭酸ガスによる変質防止超音波装置の具体例で、容器1に液体2が入れられ、炭酸ガスボンベ3から炭酸ガスが液体2に入れられ、液体供給装置であるポンプ7によって炭酸ガスが注入された液体2が霧化槽8に供給され、霧化槽8に供給された液体2は霧化槽8の底部に装着された超音波振動子9によって霧化粒子が発生し、この発生した霧化粒子は送風装置12の吸引によって第1の冷却装置21で冷却されて第1の回収容器22で回収され、又、第1の冷却装置21で回収されない霧化粒子は、第2の冷却装置23で冷却され、第2の回収容器24で回収され、ファン12に送られた霧化粒子を含む気体は送風装置12の回転翼で液化され、霧化槽8に戻され、霧化槽8で余剰の液体は容器1に戻される。
【0016】
このように構成された本実施例の炭酸ガスによる変質防止超音波装置では、炭酸ガスが充満し、超音波振動子9からの超音波によって液体が振動されても、液体の残存空気で変質されないという利点がある。
【0017】
又、図4に示すように、抽出や熟成などの処理中ににおいて、超音波振動子9を底部に装着した密閉容器21に液体2をいれ、炭酸ガスボンベ3から液体2に炭酸ガスをバブリングをして、超音波振動子9から超音波を照射することにより、キャビテーションの最終段階で気泡中には炭酸ガスが大部分を占め、温度が上がらなくなり、OHラジカルの生成量が低くなる。
【0018】
さらに、図5に示すように、超音波振動子9を底部に装着した密閉容器21に液体2を入れ、炭酸ガスボンベ3から液体2の上部の気相に炭酸ガスを供給すると、液中に溶け込んでいる空気を脱気することができ、炭酸ガスのため、OHラジカルの生成量が低くなる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
上記実施例と同様、超音波洗浄装置においても炭酸ガスをバブリングすることにより、ケミカル反応を抑制することができ、エロージョンを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0020】
1 容器
2 液体
3 炭酸ガスボンベ
4 バルブ
5 吸入管
6 供給管
7 液体供給装置
8 霧化槽
9 超音波振動子
10 発振器
11 第1の送風管
12 送風装置
13 第2の送風管
14 デミスター
15 第3の送風管
16 冷却槽
17 第4の送風管
18 第1の回収口
19 第2の回収口
20 第3の回収口
21 密閉容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を入れた容器と、該容器に接続され、前記液体に炭酸ガスを注入する炭酸ガスボンベと、前記炭酸ガスを注入した液体を前記容器から給送する給送装置と、該給送装置で給送された炭酸ガスを注入した液体を霧化する超音波振動子を装着した霧化装置と、該霧化装置で霧化された液体を送風する第1の送風管と、該第1の送風管に接続された送風装置と、該送風装置に接続された第2の送風管と、該第2の送風管に接続されたデミスターと、該デミスターに接続された第3の送風管と、該第3の送風管に接続された冷却槽と、該冷却槽に接続された第4の送風管を介して接続された前記霧化装置と、前記送風装置に衝突することによって液化した液体を回収する第1の回収口と、前記デミスターで冷却することによって液化した液体を回収する第2の回収口と、前記冷却槽で冷却されることによって液化した液体を回収する第3の回収口とからなることを特徴とする炭酸ガスによる変質防止超音波処理装置。
【請求項2】
前記容器に接続された炭酸ガスボンベを前記第1の送風管に接続することを特徴とする請求項1記載の炭酸ガスによる変質防止超音波処理装置。
【請求項3】
前記容器は密閉容器であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の炭酸ガスによる変質防止超音波処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−106207(P2012−106207A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258568(P2010−258568)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】