説明

炭酸ガスインジケーター、及びこれを用いた包装体

【課題】水分の多い条件下でも外観が変化しない指示部を有する炭酸ガスインジケーターを得る。
【解決手段】炭酸ガスインジケーターの支持体として、吸湿性を有する材料を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料、及び薬品等を長期間保存するためのガス置換包装中の置換されたガス雰囲気が保持されていることを検出するためのインキ組成物、これを用いた炭酸ガスインジケーター、及びこれを用いた包装体に関する。特に、内容物により外装体内の相対湿度が高い場合にも良好な外観を維持する炭酸ガスインジケーター、及びこれを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭酸ガスを含む置換ガスを封入したガス置換包装のピンホール、及びシール不良の発生によるガス雰囲気の変化を簡単に確認し得る種々の炭酸ガスインジケーターが上市されている。
【0003】
この炭酸ガスインジケーターは、pH指示薬を含み、周囲雰囲気中の炭酸ガスが十分に存在すると、炭酸ガスインジケーター中の水に炭酸ガスが溶けて弱い酸性を示し、pH値が低くなり、これに伴って、pH指示薬の色調が変化する。また一方、ピンホール等で周囲雰囲気中の炭酸ガス濃度が低下するに従ってpH値が上がり、これに伴って、pH指示薬の色調が変化する。このpH指示薬の色調の変化を利用して、周囲雰囲気の炭酸ガス濃度の変化を視覚的に検知することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この炭酸ガスインジケーターの指示部は、pH指示薬及びバインダーを含有する炭酸ガスインジケーター用インキ組成物を用いて印刷することができる。また、印刷されたインキ層は、鮮明な色調変化と、十分な発色のために2層以上重ねて形成することが望ましい。
【0005】
しかしながら、このインキ層は、高温多湿の条件下では、過剰な水分が寄り集まって水溜りとなり、外観が損なわれるという問題があった。外装体内の相対湿度は、内容物や外部の温湿度、内部空間容積によって変わってくる。特に、内容物によるところが大きい。食品や飲料、医薬品はそれぞれ固有の水分活性(相対湿度(%RH)=水分活性[−]×100)を持っており、内容物により外装体内の湿度が大きく変わる要因となっている。例えば、コーヒー、のり、お茶、米菓、ビスケット、チョコレートは0.1〜0.5、米、キャラメル、煮干、医療用アンプルは0.5〜0.7、味噌、生菓子、団子、パン粉、チーズ、ちくわ、餅、飲料、医療用薬液バッグ等は0.7〜1を示す。水分活性が高いものほど相対湿度が高くなり、インジケータの外観が損なわれる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第01/044385号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、水分の多い条件下でも外観が変化しない指示部を有する炭酸ガスインジケーターを提供することにある。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、水分の多い条件下でも外観が変化しない指示部を有する炭酸ガスインジケーターを具備した包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の炭酸ガスインジケーターは、吸湿性を有する支持体、及び該支持体上にpH指示薬、結合剤、及び溶媒を含む炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて形成された指示部を具備することを特徴する。
【0010】
本発明の包装体は、吸湿性を有する支持体、及び該支持体上にpH指示薬、結合剤、及び溶媒を含む炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて形成された指示部を有する炭酸ガスインジケーターを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の炭酸インジケーターを用いると、水分の多い条件下でも指示部の外観が変化しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の炭酸ガスインジケーターの指示部の断面図である。
【図2】本発明の炭酸ガスインジケーターの第1の例を示す正面図である。
【図3】図2の断面図である。
【図4】本発明の炭酸ガスインジケーターの第2の例の構成を表す断面図である。
【図5】本発明にかかるガス置換包装体の第1の例を表す図である。
【図6】本発明にかかるガス置換包装体の第2の例を表す図である。
【図7】本発明にかかるガス置換包装体の第3の例を表す図である。
【図8】本発明にかかるガス置換包装体の第3の例に使用し得る炭酸ガスインジケーターの構造の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、吸湿性を有する支持体を使用し、pH指示薬、結合剤及び溶媒を含む炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて支持体上に形成された指示部を有する炭酸ガスインジケーターを提供する。
【0014】
本発明の炭酸ガスインジケーターは、その支持体が吸湿性材料からなるため、水分の多い条件下に晒されると、指示部よりも支持体の方が過剰な水分を優先的に吸収し得る。このため、指示部の外観の劣化を防ぐことが可能となる。
【0015】
支持体として、吸湿性材料からなる層を単層で使用するか、あるいは、吸湿性材料層と、水蒸気透過層との積層体を使用することができる。この場合、水蒸気透過層は、吸湿性材料層と指示層との間に設けることができる。
【0016】
指示部と支持体との間に水蒸気透過層を設けると、支持体の水分の吸収量を適切な量に維持することができる。このため、支持体は必要以上に水分を吸収しないように制御され得る。
【0017】
さらに、この水蒸気透過層を設けることにより、例えばカール・しわが発生しやすく、単体では扱い難い特性を持つ吸湿性材料であっても、水蒸気透過層を積層することによって、印刷適性、加工適性を向上するため、支持体としての使用が可能となる。
【0018】
また、支持体は、指示層とは反対側の面上に、炭酸ガス不透過層を設けることができる。
【0019】
また、吸湿性材料からなる支持体の一方の面に、炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて指示部を印刷し、他方の面に、もしくはそれ以外の炭酸ガス不透過性材料層を設けることにより、支持体に炭酸ガス不透過性を付与することもできる。
【0020】
支持体に用いられる吸湿性材料としては、例えばポリビニルアルコール、セロハン、ポリイミド、ポリアミド、エチレン・ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
【0021】
また、樹脂材料中に多孔質の材料や吸湿性顔料を含む材料も用いることも考えられる。このような樹脂材料としては、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、及びポリスチレン等があげられる。
【0022】
吸湿性顔料としては、硫酸バリウム、酸化チタン等の通常の色顔料の他、硫酸マグネシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム、焼明礬、酸化アルミニウム、シリカゲル等が挙げられる。
【0023】
吸水性能の高い紙、ろ紙、不織等は透明性や印刷適性、加工適性の点で難があるため除外できる。
【0024】
ここでは、吸湿性材料とは30℃の水に24時間浸漬した場合5.0wt%以上の吸水率を有する材料のことを言う。
【0025】
一般的には吸水率20%程度のものが汎用フィルムとして用いられている。
【0026】
ここで、炭酸ガス不透過性とは約23℃、約40%RHで、50(ml/m・24時間)以下の炭酸ガス透過率を有することを言う。
【0027】
炭酸ガス不透過性材料層として、無機酸化物蒸着層やポリ塩化ビニリデン被覆層、EVOH被覆層、PVA被覆層、バリアNy被覆層等が用いられる。また、無機酸化物蒸着層に用いられる無機酸化物材料としては、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
【0028】
また、好ましい水蒸気透過層としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、セルロース、ポリ乳酸等が挙げられる。また、水蒸気透過層の厚さは、10〜30μmが、望ましい。この厚さは、汎用的な包装用ラミネートフィルムの厚さである(シーラントを除外する)。
【0029】
本発明に使用される水蒸気透過層は、5.0g/m/24時間以上60g/m/24時間以下の水蒸気透過度を有することが好ましい。
【0030】
5.0g/m/24時間未満であると、インキ層の過剰な水分が透過せず、外観不良が発生する傾向がある。また、60g/m/24時間を超えると、インキ層の水分が過剰に吸湿層へと透過し、発色が悪くなる傾向がある。
【0031】
ここでいう水蒸気透過度とは、温度40℃湿度90%の条件で、24時間、1平方メートル当たりに、透過した水蒸気のグラム数をいう。
【0032】
本発明に用いるpH指示薬としては、炭酸ガスの影響で色調変化を伴うもの、またはアルカリ性物質の濃度変化に応じたpHの変動に対して色調変化を伴うものであればどのようなものでも使用できる。
【0033】
下記表1に好ましいpH指示薬及びその呈色範囲を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
特に好ましいpH指示薬としては、安全性及び呈色反応の変化がわかりやすいことなどからメタクレゾールパープルがあげられる。
【0036】
本発明のインキ組成物には、好ましくは、0より大きく5重量%以下のアルカリ性物質を添加することができる。5重量%を超えるアルカリ性物質を添加しても、その効果は同等である。
【0037】
本発明に用いられるアルカリ性物質は、例えばトリエタノールアミン、ポリエチレンイミンなどの有機アルカリ、及び水酸化アルカリ、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリ及びアンモニア等から選択することができる。
【0038】
溶媒としては、本発明のインキ組成物の各成分を均一にかつ安定に溶解または分散することのできるものが選択され、エーテル類、芳香族炭化水素、エステル類、アルコール類、ケトン類等が挙げられる。特に、アルコール類が好ましい。また、色素、アルカリ性物質等を溶解させてインキ組成物とし、且つインジケータとしての良好な発色を得るためには、水が含まれることが好ましい。アルコール類等の溶剤と水の割合としては、水1重量部に対して、溶媒が1ないし3重量部であることが好ましい。溶媒の添加量が3重量部を超えると、十分な発色が得られず色調の変化が判別不可となる傾向がある。また、溶媒が1重量部未満であると、高湿度条件下で外観不良が発生する傾向がある。
【0039】
結合剤は、pH指示薬等の構成成分を支持体上に固着するために使用するもので、被膜形成後に水を吸って膨潤したり、水に溶解したりするような樹脂は不適であり、かつ水を保持する樹脂を用いる。このような結合剤としては、例えばポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、酢酸ビニル部分ケン化物等があげられる。
【0040】
本発明に用いられる炭酸ガス検知用インキ組成物は、さらに多価アルコールを含むことが好ましい。多価アルコールは保湿剤として作用し、指示部となるインキ層中に水等の溶媒を保持して炭酸ガスの吸収を容易にせしめ、pH指示薬の呈色反応を促進させることができる。
【0041】
多価アルコールとしては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコール等が使用可能である。より好ましくはグリセリンを使用することができる。
【0042】
多価アルコールの添加量は、インキ組成物に1重量%〜10重量%が好ましい。多価アルコールの割合が1重量%未満であると、インジケータの発色スピードが不十分となる傾向がある。一方で、多価アルコールの割合が10重量%を超えても、ほとんど効果が変わらない。
【0043】
上記表1に示すpH指示薬は、指示薬そのものの色調の変化で判断するだけでなく、他の色の色素との混色による色調の変化で判断することができる。
【0044】
このような目的で、本発明の炭酸ガス検知用インキ組成物には、着色剤を添加することができる。
【0045】
着色剤を添加して、炭酸ガス検知用インキ組成物の色と混色させることにより、例えば指示薬そのものの色調の変化が視覚的に判断しにくいものであるとき、あるいはデザイン上所望の色調でないとき、視覚的に判断しやすい色調、あるいはデザイン上所望の色調に変化させることができる。
【0046】
また、同様の目的で、白以外の着色された支持体を適用し、その上に、本発明の炭酸ガス検知用インキ組成物を用いた指示部を設けることができる。
【0047】
着色剤としては、例えば食用赤色2号(アマランス)、食用赤色3号(エリスロシン)、食用赤色40号(アルラレッドAC)、食用赤色102号(ニューコクシン)、食用赤色104号(フロキシン)、食用赤色106号(アシッドレッド)、及び天然系コチニール色素等の赤色着色剤、食用黄色4号(タートラジン)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF)、及び天然系紅花黄色素等の黄色着色剤、食用青色1号(ブリリアントブルーFCF)、及び食用青色2号(インジゴカルミン)等の青色着色剤があげられる。
【0048】
インキ組成物に着色剤を添加する以外に、支持体として着色されたものを用いることにより、同様の色調の変化が得られる。
【0049】
また、この他インキの塗工性向上のため、炭酸ガス検知用インキの発色に影響を与えない範囲で各種薬剤例えば界面活性剤、ニス、コンパウンド、乾燥抑制剤、及びドライヤー等を添加することも可能である。
【0050】
支持体へのインキの塗布方法としては、印刷法例えばスクリーン印刷法、凹版印刷法、及びグラビア印刷法等や、コーティング法例えばロールコーティング、スプレーコーティング、及びディップコーティング等が好適に使用される。
【0051】
本発明に用いられる指示部は、インキ組成物の塗布量が比較的多く、一定であることが望まれることから、印刷法を用いることが好ましい。
【0052】
例えば支持体に指示部を連続して印刷し、ヒートシール及び切断することにより包装袋を加工する場合には、支持体が巻き取り供給され得ることから、グラビア印刷やフレキソ印刷が適している。
【0053】
また、指示部は、文字、絵柄等のパターンを有するインキ層からなることが好ましい。
【0054】
特に指示部として文字を選択した場合、商品名等を印刷したラベルと兼用することもできる。
【0055】
本発明に用いられる炭酸ガスインジケーターの使用形態としては、(1)食品、飲料、薬品等の内容物を収納するガスバリヤー性材料からなる容器内を炭酸ガス雰囲気とし、容器内に炭酸ガスインジケーターを配置する方法、(2)内容物を収容するガス透過性材料からなる容器をガスバリヤー性材料からなる外装体で包装し、該外装体内を炭酸ガス雰囲気にすると共に外装体内に炭酸ガスインジケーターを配置する方法を例示することができる。
【0056】
より具体的には、上記(1)の場合、炭酸ガスインジケーターを配置する方法としては、吸湿性材料を含む支持体に印刷した炭酸ガスインジケーターを単に容器内に入れる方法、容器内面に炭酸ガスインジケーターを接着する方法、または容器を構成する材料として本発明に用いられる吸湿層とガスバリヤー性材料を貼り合わせたもの、もしくは吸湿性材料を含み、かつガスバリヤー性を有する支持体を用い、その内面にインキ組成物を印刷する方法がある。
【0057】
一方、上記(2)の場合、前述の炭酸ガスインジケーターの配置は、容器の外面、容器と外装体の間の空間部、及び外装体の内面とすることができる。容器の外面または外装体の内面に炭酸ガスインジケーターを配置する方法としては、該インジケータをこれらの面に接着する方法、あるいは本発明に用いられる吸湿性の支持体とガスバリヤー性材料を貼り合わせたもの、もしくは吸湿性材料を含み、かつガスバリヤー性を有する支持体を用い外装体を構成し、インキ組成物を直接これらの面に印刷する方法がある。
【0058】
なお、上記(1)における容器の内面、上記(2)におけるガス透過性容器の外面又は外装体の内面にインキ組成物を直接印刷する場合は、フィルムにインキ組成物を印刷後、印刷面をガス透過性フィルムで被うことも可能であり、被覆した場合は内容物又は容器との接触がなく、衛生的であり且つ指示部の摩耗も防ぐことができるので好適である。
【0059】
本発明の炭酸ガスインジケーターが適用され得る食品、飲料、及び薬品としては、酸素と接触して変質するおそれのあるもの、あるいは炭酸ガスの放出によって、品質の劣化や薬効が失われるおそれのものなどがある。
【0060】
食品、飲料としては、例えばお茶、コーヒー、チーズ、ハム、味噌、及び生肉などをあげることができる。
【0061】
薬品の例としては、例えば重炭酸塩含有薬液、アミノ酸輸液剤、脂肪乳剤、抗生物質製剤等をあげることができる。
【0062】
以下、図面を参照し、本発明を具体的に説明する。
【0063】
図1は、本発明の炭酸ガスインジケーターの断面図である。
【0064】
図示するように、この炭酸ガスインジケーター4は、吸湿性材料1、及び吸湿性材料1上に積層された透湿性材料2を有する支持体6と、例えばメタクレゾールパープル、炭酸ナトリウム、ポリビニルアセタール樹脂、微結晶セルロース、及び水からなる炭酸ガス検知用インキ組成物を、円形状のパターンで透湿性材料2上にスクリーン印刷により塗布して得られた指示部3とを含む。
【0065】
図2は、本発明の炭酸ガスインジケーターの第1の例を表す正面図、図3はその断面図である。
【0066】
図示するように、このインジケータ10は、吸湿性材料1の両面に透湿性材料2を積層した支持体6の両面に、例えばメタクレゾールパープル、炭酸ナトリウム、ポリビニルアセタール樹脂、微結晶セルロース、及び水からなる炭酸ガス検知用インキ組成物を円形状のパターンでスクリーン印刷により塗布して得られた指示部3を有し、その周囲を炭酸ガス透過性を有する例えば多孔性のフィルム7で包囲した構成を有する。このインジケータの指示部は、通常の空気中では、紫色を呈している。なお、図1及び図2では、支持体6の両面に指示部3を設けたが、片面のみに指示部を設けた構成も適用し得る。また、このインジケータは、通気性フィルム7で包囲されているが、通気性フィルム7を用いないで、そのまま使用することができる。
【0067】
図4は、本発明の炭酸ガスインジケーターの第2の例の構成を表す断面図を示す。
【0068】
図4は図示するように、この炭酸ガスインジケーター70は、片面のみに指示部を設けた例であって、支持体として例えば吸湿性のあるポリアミド樹脂にシリカを蒸着したフィルムからなる吸湿性かつ炭酸ガス不透過性を有する層71と、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムからなる透湿性を有する層72の積層体である支持体76上に例えばメタクレゾールパープル、炭酸ナトリウム、ポリビニルアセタール樹脂、微結晶セルロース、及び水からなる炭酸ガス検知用インキ組成物を円形状のパターンでスクリーン印刷により塗布して得られた指示部3と、透湿性を有する層72上に設けられた指示部3を封止するように形成された、例えばポリエチレンフィルムからなる炭酸ガス透過性を有する層73とから構成される。
【0069】
ここで、炭酸ガス透過性とは、約23℃、約40%RHで、500(ml/m・24時間)以上の炭酸ガス透過率を有することをいう。
【0070】
この炭酸ガスインジケーター70は、炭酸ガス透過性を有する層73側からのみ炭酸ガスを透過して検知し、支持体側からは炭酸ガスを透過しない構成を有する。例えば支持体として包装体の外装体等を使用し、炭酸ガス不透過性を有する層71を外側に、炭酸ガス透過性を有する層73が内側になるように包装体を作成し、この炭酸ガスインジケーター70が包装体内部で機能するように、包装体を構成することができる。このようにして得られた包装体は、雰囲気の変化に対する応答性に優れ、かつ炭酸ガスの保持性が良好であるため内容物の保存性に優れる。
【0071】
炭酸ガスを透過すべき層の炭酸ガス透過率が500(ml/m・24時間)より低いと、炭酸ガス雰囲気変化へ対する応答が遅くなり、判定を誤るおそれがある。
【0072】
また、例えば包装体を構成する場合、炭酸ガスを不透過にすべき層の炭酸ガス透過率が50(ml/m・24時間)より高いと、包装体内の炭酸ガス雰囲気を保持することができない。
【0073】
指示部が印刷された支持体と、炭酸ガス透過率が50(ml/m・24時間)以下のフィルムと、炭酸ガス透過率が500(ml/m・24時間)以上のフィルム、及びその他のフィルムを貼り合わせる方法としては、公知の方式が利用可能であり、例えば接着剤を用いたドライラミネーションが利用可能である。
【0074】
図5に、本発明にかかるガス置換包装体の第1の例を表す図を示す。図示するように、このガス置換包装体20は、例えば薬液、飲料等の内容物を収納したポリエチレン製の容器11と、炭酸ガスインジケーター10とを、置換ガスとして窒素50容量%、二酸化炭素50容量%混合ガス13を用いて、ガスバリヤー性の積層フィルムからなる外装体12に封入した構成を有する。
【0075】
この包装体中のインジケータの指示部3は、封入時には黄色を呈している。しかしながら、包装体にピンホールあるいはシール不良等が発生し、置換ガスが漏れ出して代わりに周囲の大気が混入すると、包装体内の炭酸ガス濃度が低下する。このため、インジケータ10の周囲のガス雰囲気が変化して、指示部3の色調が黄色からうす茶色、さらには紫色へとpHに応じて変化する。この色調の変化を視認することにより、包装体内の炭酸ガスを含む雰囲気が保持されているかどうかを容易に確認することができる。
【0076】
なお、炭酸ガスインジケーター10の代わりに、上述の炭酸ガスインジケーターの第2の例を適用することができる。
【0077】
図6には、本発明にかかるガス置換包装体の第2の例を示す。
【0078】
図示するように、包装体30は、吸湿性を持つポリアミドフィルム製の容器14の表面に、容器14の外装部を支持体とし、本発明のインキ組成物を用いてスクリーン印刷により形成された指示部3と、この指示部3上に被覆された通気性材料からなる被覆層8とを有する炭酸ガスインジケーター18を設け、例えばブロック生肉等の内容物を置換ガスとして窒素50容量%、二酸化炭素50容量%混合ガス13を用いて、ガスバリヤー性の積層フィルムからなる外装体12で封入した構成を有する。また、被覆層8を設けない以外は、図6の包装体30と同様の構成を有する包装体とすることもできる。
【0079】
この包装体30でも、図5に示す包装体と同様に、この色調の変化を視認することにより、包装体内の炭酸ガスを含むガス雰囲気が保持されているかどうかを容易に確認することができる。
【0080】
なお、炭酸ガスインジケーター18の代わりに、上述の炭酸ガスインジケーターの第2の例を適用することができる。
【0081】
図7には、本発明にかかるガス置換包装体の第3の例を示す。
【0082】
図5、図6に示した包装体以外に、図7に示すように指示部3を設けた支持体5からなるインジケータ10を外装体12に接着する等の方法で、包装体と一体化して使用しても良い。
【0083】
この包装体40は、例えば支持体5を含む積層フィルムを指示部3を内側にして配し、その間に内容物16を配置した後、窒素50容量%、二酸化炭素50容量%混合ガス13で置換しながら、外装体12周辺をヒートシールにより気密に封止することにより形成され得る。
【0084】
図8には、本発明にかかるガス置換包装体の第3の例に使用し得る炭酸ガスインジケーターの構造の一例を表す図を示す。
【0085】
外装体12を支持体として、本発明のインキ組成物を用いて指示部3を印刷したインジケータの場合、図8に示すように、外装体12を構成するガスバリヤー層と吸湿層を含む積層体31のガスバリヤー層32の内面に指示部3を設け、指示部3の内面側を炭酸ガス透過性の保護フィルム33で覆うことも可能である。
【0086】
このように指示部3が露出しない構成とすることにより、指示部3が直接、容器又は内容物と接触することがなく、また製造工程中や輸送中に指示部3が摩耗することを防ぐことができる。
【0087】
実施例
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0088】
実施例1
炭酸ガス検知層組成:
メタクレゾールパープル1重量部、水酸化ナトリウム4重量部、バインダ樹脂7重量部、グリセリン5重量部、n−プロパノール84重量部、水28重量部
アンカーコート層、
オーバーコート層組成:
ウレタン樹脂8重量部 イソプロピルアルコール 5重量部 酢酸エチル10重量部 メチルエチルケトン5重量部 トルエン10重量部
支持体:
吸水率8.0%ポリアミドフィルム12μmと、その上に積層された水蒸気透過度55g/m/24時間のポリエチレンテレフタレートフィルム12μmとの積層体
支持体の水蒸気透過層側にアンカーコート層0.5μm、炭酸ガス検知層1μm、オーバーコート層1μmをグラビア印刷法により順次積層させ、その上にポリエチレンフィルムからなる炭酸ガス透過性層を形成して炭酸ガスインジケーターを得た。
【0089】
得られた炭酸ガスインジケーターをガスバリアー性基材からなる透明な外装体に入れて、内部を炭酸ガス50%窒素50%に置換し、重曹溶液入りの内容物を封入し内部の湿度が70%の包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観を観察したところ、発色が良く外観の劣化は見られなかった。
【0090】
得られた結果を下記表2に示す。
【0091】
実施例2
炭酸ガス検知層組成:
実施例1と同様
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
実施例1と同様
支持体:
吸水率24%のポリビニルアルコールフィルム12μmと水蒸気透過度55g/m/24時間のポリエチレンテレフタレートフィルム12μmの積層体
実施例1と同様にして包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観を観察したところ、発色が良く外観の劣化は見られなかった。
【0092】
得られた結果を下記表2に示す。
【0093】
実施例3
炭酸ガス検知層組成:
実施例1と同様
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
実施例1と同様
支持体:
吸水率8.0%ポリアミドフィルム12μmと水蒸気透過度5.0g/m/24時間のポリプロピレンフィルム20μmとの積層体
実施例1と同様にして包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観を観察したところ、極薄く水の凝集が見られた。
【0094】
得られた結果を下記表2に示す。
【0095】
実施例4
炭酸ガス検知層組成:
実施例1と同様
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
実施例1と同様
支持体:
ポリプロピレンフィルム12μmに吸水率4.0%のアルミナ蒸着ポリアミドフィルム15μmを蒸着面をポリプロピレン側に向け積層し、非蒸着面側に水蒸気透過度55g/m/24時間のポリエチレンテレフタレートフィルム12μmを積層した積層体
支持体のポリエチレンテレフタレートフィルムにアンカーコート層0.5μm、炭酸ガス検知層1μm、オーバーコート層1μmをグラビア印刷法により順次積層させ、その上にポリエチレンフィルムからなる炭酸ガス透過性層を形成して炭酸ガスインジケーターを得た。
【0096】
得られた炭酸ガスインジケーターの支持体をヒートシールにより封止することにより外装体とし、内部を炭酸ガス50%窒素50%に置換し、重曹溶液入りの内容物を封入し内部の湿度が70%の包装体を得た。
【0097】
得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観を観察したところ、外観の劣化は見られなかった。
【0098】
得られた結果を下記表2に示す。
【0099】
実施例5
炭酸ガス検知層組成:
実施例1と同様
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
実施例1と同様
支持体:
水蒸気透過度5.0g/m/24時間のポリプロピレンフィルム20μm、吸水率8.0%のポリアミドフィルム15μmの積層体にアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmを蒸着層を吸湿性層に向けて積層した積層体
実施例4と同様にして包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観を観察したところ、外観の劣化は見られなかった。
【0100】
得られた結果を下記表2に示す。
【0101】
実施例6
炭酸ガス検知層組成:
実施例1と同様
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
実施例1と同様
支持体:
吸水率8.0%のポリアミドフィルム15μm
実施例1と同様にして包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観を観察したところ、発色はやや悪いが外観の劣化は見られなかった。
【0102】
得られた結果を下記表2に示す。
【0103】
比較例1
炭酸ガス検知層組成:
実施例1と同様
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
実施例1と同様
支持体:
吸水率0.3%のポリプロピレンフィルム12μm
実施例1と同様にして包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観を観察したところ、水の凝集による外観劣化が観察された。
【0104】
得られた結果を下記表2に示す。
【0105】
比較例2
炭酸ガス検知層組成:
実施例1と同様
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
実施例1と同様
支持体:
水蒸気透過度0.8g/m/24時間のアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmと吸水率8.0%のポリアミドフィルム15μmの積層体
実施例2と同様にし包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観を観察したところ、水の凝集による外観劣化が観察された。
【0106】
得られた結果を下記表2に示す。
【0107】
比較例3
炭酸ガス検知層組成:
実施例1と同様
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
実施例1と同様
支持体:
水蒸気透過度0.8g/m/24時間のアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmと吸水率24%ポリビニルアルコールフィルム25μmの積層体
実施例2と同様にし、包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観を観察したところ、水の凝集による外観劣化が観察された。
【0108】
得られた結果を下記表2に示す。
【0109】
比較例4
炭酸ガス検知層組成:
実施例1と同様
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
実施例1と同様
支持体:
水蒸気透過度55g/m/24時間のポリエチレンテレフタレートフィルム12μmと吸水率0.3%ポリエチレンフィルム12μmの積層体
実施例2と同様にし包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観を観察したところ、水の凝集による外観劣化が観察された。
【0110】
得られた結果を下記表2に示す。
【0111】
比較例5
炭酸ガス検知層組成:
実施例1と同様
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
実施例1と同様
支持体:
水蒸気透過度5.0g/m/24時間のポリエチレンテレフタレートフィルム20μmと吸水率0.3%ポリプロピレンフィルム12μmの積層体
実施例2と同様にし包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観を観察したところ、水の凝集による外観劣化が観察された。
【0112】
得られた結果を下記表2に示す。
【0113】
比較例6
炭酸ガス検知層組成:
実施例1と同様
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
実施例1と同様
支持体:
水蒸気透過度0.8g/m/24時間のアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmと吸水率0.3%ポリプロピレンフィルム20μmの積層体
実施例2と同様にして、包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観を観察したところ、水の凝集による外観劣化が観察された。
【0114】
得られた結果を下記表2に示す。
【0115】
比較例7
炭酸ガス検知層組成:
実施例1と同様
アンカーコート層、オーバーコート層組成:
実施例1と同様
支持体:
水蒸気透過度120g/m/24時間のポリアミドフィルム15μmと吸水率8.0%ポリプロピレンフィルム20μmの積層体
実施例2と同様にし包装体を得た。得られた包装体を60℃75%Rhの高温高湿条件下に2週間放置後、外観を観察したところ、劣化は確認されなかったが色調の劣化が観察された。
【0116】
得られた結果を下記表2に示す。
【0117】
【表2】

【0118】
上記表2より、例えば実施例1ないし実施例7に示すように、十分な吸湿性を有する支持体を使用することにより、指示部の外観の劣化を防ぐことが可能となる。また、例えば5.0wt%以上20wt%以下の範囲内の吸水率を有する基材を使用し、5.0g/m/24時間以上60g/m/24時間以下の水蒸気透過度を有する層を積層することにより、より良い結果が得られることがわかる。
【0119】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0120】
食品、飲料、及び薬品等を長期保存するためのガス置換包装体中の置換されたガス置換雰囲気が保持されていることを検出するために適用できる。
【符号の説明】
【0121】
1…吸湿性材料、2…透湿性材料、3…指示部、4…炭酸ガスインジケーター、5、75…支持体、7、73…炭酸ガス透過性フィルム、8…被覆層、10、18、50、60、70…炭酸ガスインジケーター、11,14,16…容器、12…外装体、13…炭酸ガス含有ガス、20、30、40…包装体、31…積層体、32…ガスバリヤー層、33…保護フィルム、71…炭酸ガス不透過性フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿性を有する支持体、及び該支持体上にpH指示薬、結合剤、及び溶媒を含む炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて形成された指示部を具備することを特徴する炭酸ガスインジケーター。
【請求項2】
前記支持体は、30℃の水に24時間浸漬した場合5.0wt%以上20wt%以下の吸水率を有することを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガスインジケーター。
【請求項3】
前記支持体は、吸湿性を有する基材と、該基材上に設けられた水蒸気透過層との積層体であって、該水蒸気透過層は、該基材と前記指示部との間に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の炭酸ガスインジケーター。
【請求項4】
前記水蒸気透過層は、5.0g/m/24時間以上60g/m/24時間以下の水蒸気透過度を有することを特徴とする請求項3に記載の炭酸ガスインジケーター。
【請求項5】
前記支持体は両主面を有し、一方の主面に前記指示部が設けられ、他方の主面に炭酸ガス不透過層がさらに設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の炭酸ガスインジケーター。
【請求項6】
前記炭酸ガス不透過層は、無機酸化物蒸着層であることを特徴とする請求項5に記載の炭酸ガスインジケーター。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の炭酸ガスインジケーターを、炭酸ガスを含むガスを封入した外装体内に配したことを特徴とする包装体。
【請求項8】
前記外装体内の相対湿度が50%以上となる内容物を封入したことを特徴とする請求項7に記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−123026(P2011−123026A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283192(P2009−283192)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】