説明

炭酸ガス含有排ガスの改質方法および改質設備

【課題】BOGを炭酸ガスの還元剤として有効に利用することにより、BOG再液化のための手間をなくし、排ガスの増熱と炭酸ガスの排出削減とを同時に実現することができる技術を提案する。
【解決手段】高温の炭酸ガス含有排ガスに還元剤を添加し、その排ガス中に含まれる炭酸ガスと還元剤とによる改質反応を導いて該排ガスの改質を行うにあたり、その還元剤として、液化ガス貯蔵タンク内において揮発生成するボイルフガスを用いる炭酸ガス含有排ガスの改質方法およびこの方法の実施に用いる改質設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガス含有排ガスの改質方法およびこの方法の実施に際して採用される改質設備に関し、例えば、転炉や溶融還元炉のような冶金炉または焼結炉から発生する、高温の炭酸ガス含有排ガスを改質して熱エネルギーとして有効に回収するための技術である。特に、本発明では、排ガスの顕熱を利用すること、および還元剤として液化ガス貯蔵タンク内で揮発生成するボイルオフガスを利用することによって、該排ガスの効果的な改質を行うための技術を提案する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境を保護し地球温暖化を防止するために、炭酸ガスの排出削減は、産業界にとって重要な課題となっている。特に、製鉄所において、炭酸ガスの排出削減は、企業の将来性にも関わる最重要の課題である。従来、そのための各種の提案がなされてきたが、本格的な炭酸ガス削減の技術は、未だ完成していないのが実情である。
【0003】
ところで、製鉄所や発電所、化学工場、あるいはガス会社などには液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)などの液化ガスを貯蔵するためのタンク、即ち液化ガス貯蔵タンクが設置されている。これらの液化ガス貯蔵タンク内には、液化ガスがガス化した炭化水素系のガス、即ちボイルオフガス(液化ガス貯蔵タンク内で揮発生成する低圧のガス、以下、これを「BOG」と略記する)が発生することはよく知られている。一般に、このボイルオフガス(BOG)は、加圧圧縮することによって再液化させた後、再び液化ガス貯蔵タンク内に戻されるのが普通である。ただし、このような再液化のための処理には、多大な圧縮動力が必要となる。そこで、最近は、貯蔵している液化ガスの冷熱を利用することによって、前記BOG再液化のために必要なエネルギーを低く抑える技術が開発されている。その開発努力にもかかわらず再液化のためのエネルギーはなお大きいのが実情である。従って、炭酸ガス排出削減の観点からは、このBOGを再液化することなく利用できる技術の確立が望まれている。
【0004】
一方、製鉄所では、転炉や溶融還元炉などの冶金炉を通じて、炭酸ガスを含む高温の排ガスが多量に発生することが知られている。これらの排ガスは、炭酸ガスの他に一酸化炭素や水素などを含むため、製鉄所内の各種設備を稼動させるエネルギー源としても利用されている。また、こうした高温排ガスの顕熱を利用するという観点からは、ボイラーに供給して低圧のスチームを発生させることで、廃熱回収を行うことが一般的である。しかしながら、製鉄所での低圧スチームの利用価値は低く、むしろ高温の排出ガスは化学的に利用できるようにすることの方が望まれている。
【0005】
ところで、メタンなどの各種炭化水素やメタノール、ジメチルエーテルなどの含酸素化合物等は、炭酸ガスや水蒸気と反応して一酸化炭素や水素に改質されることが知られている。この反応を利用した廃熱回収技術として、特許文献1には、転炉等の精錬設備から発生する、二酸化炭素および/または水蒸気を含む高温の排ガス中に、炭化水素を含む気体および/または液体を供給して改質反応を起こさせ、該排ガス中の一酸化炭素と水素を増加させることにより、排ガスの潜熱を増大させて「増熱」を図る方法が開示されている。
【0006】
この文献1に開示の方法では、転炉排ガス中に天然ガスを吹込んで、下記(1)式の改質反応を行わせているが、炭化水素を含む気体としてBOGを用いることの開示はない。また、この反応が完了していると考えられる位置の温度を375℃程度まで低下させている。しかしながら、発明者らの研究によれば、改質反応の完了温度が800℃よりも低くなると、カーボンの生成が顕著となり、排ガス回収設備内にカーボンやダストの堆積を招くという問題があることを突き止めた。その上、(1)式の改質反応は、反応完了の温度が低下すると、改質反応効率の低下を招き、二酸化炭素の転化率も低下することもわかった。
【0007】
CH+CO→2CO+2H (1)
【0008】
また、特許文献2には、転炉から排出するガスの温度が600℃以上となる位置に石炭を供給し、排ガスと石炭とを対向接触させることによって、下記(2)式の改質反応を行わせて一酸化炭素を生成させ、排ガスの増熱を図る方法が開示されている。
【0009】
CO+C→2CO (2)
【0010】
この文献2に開示の方法では、安価な石炭を用いて改質反応を行わせる点において優れているが、石炭に含まれる非燃焼成分(SiO、Al等)が煙道内に堆積したり、転炉内に落下してスラグ量の増大を招くという問題がある。
【0011】
また、特許文献3には、転炉から発生する排ガスの温度が1300℃以上である位置に、メタンおよび水蒸気を添加して下記(3)式の水性ガス反応を行なわせ、排出ガス中の一酸化炭素と水素の増量を図ることにより、熱エネルギーを増大させる方法およびその装置が開示されている。
【0012】
CH+HO→CO+3H (3)
【0013】
この文献3に開示の方法では、水蒸気の添加によって起こる反応ではCOとHの発生だけであり、二酸化炭素が絡む改質反応が起らないため、COの削減には何ら寄与しないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−212615号公報
【特許文献2】特開平5−117668号公報
【特許文献3】特開平2−11715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように、製鉄所などに設置されている液化ガス貯蔵タンク内には、通常、前記のボイルオフガス(BOG)が不可避に揮発生成する。発生したそのBOGは、圧縮して再液化した上で、タンク内に還流させるのが普通である。ただし、このBOGを再液化するには、大きな圧縮動力(エネルギー)が必要である。
【0016】
また、前述したように、炭酸ガス含有排ガス排出設備、特に、転炉や溶融還元炉のような冶金炉または焼結炉からは、高温の炭酸ガス含有排出ガスが多量に発生する。従来、この排ガスのもつ顕熱を利用して還元剤による改質反応を起こさせ、排ガスのエネルギー(潜熱分)を増大(1式の吸熱分を反応生成物の燃焼熱の形で蓄積する)させる、所謂、増熱を図ることが試みされている。ただし、この従来技術は、多くの場合、排ガス管路内等にカーボンやSiO、Al等の非燃焼成分の堆積を招いたり、炭酸ガス反応効率の低下を招いて、排ガスの増熱および炭酸ガスの排出削減に効果が少ないという課題を抱えていた。
【0017】
そこで、本発明の目的は、上述したBOGを炭酸ガスの還元剤として利用することにより、BOG再液化のための手間をなくすと共に、排ガスの増熱と炭酸ガスの排出削減とを効率よく実現するための技術を提案することにある。さらに、本発明の他の目的は、排ガス管路内等へのカーボンや非燃焼成分などの堆積を少なくすることのできる、炭酸ガス改質反応を実現するための技術を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従来技術が抱えている上述した課題を克服し、BOGを再液化する必要がなくなると共に、排ガスの増熱と炭酸ガスの排出削減を同時にかつ効率よく実現するために、本発明では、次のような解決手段を提案する。即ち、本発明は第1に、高温の炭酸ガス含有排ガスに還元剤を添加し、その排ガス中に含まれる炭酸ガスと還元剤とによる改質反応を導いて該排ガスの改質を行うにあたり、前記還元剤として、液化ガス貯蔵タンク内において揮発生成するボイルオフガスを用いることを特徴とする炭酸ガス含有排ガスの改質方法である。
【0019】
なお、本発明の炭酸ガス含有排ガスの改質方法において、
(1)前記ボイルオフガスは、再液化させることなくそのまま使用に供すること、
(2)前記ボイルオフガスの排ガス中への添加は、排ガス中の酸素濃度が1容積%以下のときに行い、前記改質反応を、排ガス温度が800℃以上の時に完了させること、
(3)前記液化ガスは、液化天然ガス、液化石油ガスまたは液化ジメチルエーテルのいずれか1種以上であること、
(4)前記炭酸ガス含有排ガスは、冶金炉または焼結炉から排出されるものであること、
がより好ましい解決手段となる。
【0020】
本発明では第2に、炭酸ガスを含有する高温の排ガスを発生する排ガス排出装置に対し、液化ガス貯蔵タンク内で揮発生成するボイルオフガスを貯蔵するボイルオフガス貯蔵タンクと、高温排ガスとボイルオフガスとを接触させて該排ガス中の炭酸ガスとの改質反応を起こさせる改質反応装置と、ボイルオフガスを前記改質反応装置に吹込むための吹込み装置とを配設したことを特徴とする炭酸ガス含有排ガスの改質設備を提供する。
【0021】
なお、本発明の炭酸ガス含有排ガスの改質設備において、
(1)前記ボイルオフガス貯蔵タンクと前記吹込み装置との間には、ボイルオフガスの昇圧装置および流量制御装置を配設したこと、
(2)前記排ガス排出装置は、冶金炉または焼結炉であること、
がより好ましい解決手段となる。
【発明の効果】
【0022】
(1)前述のように構成される本発明によれば、例えば、転炉等の冶金炉または焼結炉から発生する炭酸ガス含有排ガス排出装置から発生する、高温の炭酸ガス含有排ガスに対し、液化ガス貯蔵タンクから発生する炭化水素や含酸素化合物等のボイルホフガス(BOG)を炭酸ガスの還元剤として添加するようにしたので、まず第1に、BOGを再液化する必要がなく、それ故に液化のための手間(圧縮動力を加えること)がなくなり炭酸ガス排出削減と共に経済的にも有利である。また、本発明によれば、排ガスの効果的な増熱技術を確立することができると共に、炭酸ガスの排出削減を同時にかつ効率よく達成することができる。
(2)また、本発明によれば、炭酸ガス含有排ガス排出装置として、高温の排ガスを排出する装置、例えば、転炉や溶融還元炉のような冶金炉、または焼結炉を対象とすることによって、高温排ガスのもつ顕熱を有効に利用することができるので、高い改質反応効率を達成することができる。また、炭酸ガス改質反応を導く際に、還元剤としてBOGを用い、かつそれの添加時期(O≦1vol%)や改質反応時期(温度≧800℃)を制御することとが相俟って、排気系管炉内壁面などへのカーボンやSiO、Alなどの非燃焼成分の堆積がなくなり、設備の維持、管理が容易になり、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る排ガス改質方法の基本的なフローを示す略線図である。
【図2】本発明方法の一実施形態である転炉排ガスを用いる改質方法のフローを示す略線図である。
【図3】本発明を説明するための、転炉排ガス回収設備の略線図である。
【図4】模擬ガスの出口温度と、カーボン量(C)およびCO転化率、CH転化率との関係を示すグラフである。
【図5】模擬ガスの酸素濃度と、低位発熱量およびCO転化率、CH転化率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、炭酸ガスを含有する排ガスの改質に用いる還元剤として、上述したBOGを用いること、しかも、そのBOGを再液化して使用するのではなく、そのまま(ガス状態)利用する点に特徴がある。このようなBOGを利用する排ガス改質方法によると、BOG再液化のための加圧圧縮の作業が不要になるだけでなく炭化水素または含酸素化合物等のガスであるBOGを用いることで、排ガスの増熱と炭酸ガス排出量の削減とを同時に実現することができる。即ち、本発明は、好ましくは転炉などの冶金炉または焼結炉から発生する、800℃以上、好ましくは1000℃以上の高温である、炭酸ガスを含有する排ガス中に、液化ガス貯蔵タンク内において揮発生成するBOGを、炭酸ガスの還元剤として添加する排ガスの改質方法である。以下、この改質方法の詳細を説明するが、これは例示であって、以下の説明のみに限定されるものではない。
【0025】
液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)等を液化した状態で貯蔵している液化ガス貯蔵タンク内には、液化ガス受入れ時のタンク内液体の揺動やタンク外部からの入熱などによって、液化ガスの一部がタンク内で揮発しガス化する。こうしてタンク内で揮発生成したガスは、通常、液化ガス貯蔵タンクの圧力を、10〜30kPaG程度に設定されているため、タンク内圧が設計圧力以上にならないようにすることが必要であり、しばしばタンク上部から放出することが必要となる。この放出ガスのことを前述したボイルオフガス(BOG)と言う。
【0026】
上記BOGの圧力は、液化ガスの種類やタンクの設計圧力によって変わるのが普通であり、通常、4〜20kPaG程度の圧力である。そして、かかるBOGの発生量は環境などの影響を受けて大きく変動することが知られている。特に、液化ガス受入れ時には、多量のBOGが発生することが知られている。また、このBOGは、揮発して発生するものであるため、液化ガス中の特定成分が濃縮されたガスとなることも特徴の一つである。例えば、LNGの場合、BOGとしてほぼ純粋なメタンガス(CH)が発生する。
【0027】
さて、図1は、本発明の排ガスの改質方法を説明するための改質設備のフローを示す略線図である。以下、この図に基づいて本発明について説明する。上述したように、BOGの発生量は常に変動するものであることから、本発明では、液化ガス貯蔵タンク1の他に、BOG発生量の変動を吸収すると共にこれを貯蔵するための、ボイルオフガス貯蔵タンク2が設けられる。このボイルオフガス貯蔵タンク2は、BOGの圧力に耐えられる密閉型のものであればよく、これにはシール方式の違いで有水式、無水式、乾式などの円筒型ガスホルダーや球形ガスホルダーなどを用いることができる。
【0028】
本発明において、ボイルオフガス貯蔵タンク2内に貯蔵されているBOGは、炭酸ガス含有排ガス中の炭酸ガスを還元するための還元剤として用いられるものであって、これらが互いに接触して、炭酸ガスの改質反応が進行する。なお、このBOGは、改質反応装置6までダクト、配管8等によって輸送される。ただし、このBOGは低圧のため、BOG昇圧装置3によって昇圧することが好ましい。このBOGの昇圧は、配管8の径や長さ、屈曲部の数、BOG流量などによって変わるが、好ましくは10〜1000kPaG、より好ましくは50〜500kPaG程度まで行う。その理由は、昇圧したBOGの圧力を10kPaG以上とすると、改質反応装置6で必要とされるBOGの流量や流速を確保でき、改質反応効率の低下を招くことがない。一方、その圧力を1000kPaG以下にすると改質反応効率に影響を与えることなく、不必要に昇圧するエネルギーロスが小さく、設備も高圧仕様とならずコスト高を招かない。BOGの昇圧装置3としては、例えば、渦巻きポンプ、往復ポンプ、ロータリーポンプなどを用いることができる。
【0029】
昇圧後のBOGは、BOGの流量制御装置4によって、炭酸ガスとの改質反応に必要とされる流量に制御されることが好ましい。制御対象となるBOGの流量は、BOGの種類、炭酸ガス含有排ガス中の炭酸ガス流量、および、目標とする炭酸ガス転化率などによって変化させることが好ましい。
【0030】
BOGの流量制御に当たっては、例えば、BOGが純粋なメタン、ブタンのような炭化水素、あるいはジメチルエーテルのような含酸素化合物である場合、BOGと炭酸ガスとの反応は、下記(4)、(5)、(6)式のように表わされる。
CH+CO→2CO+2H (4)
10+4CO→8CO+5H (5)
CHOCH+CO→3CO+3H (6)
【0031】
そこで、BOGが純粋なメタン(CH)である場合について検討すると、炭酸ガス含有排ガス中のCO流量が10,000Nm/hで、目標とするCO転化率を50%とすれば、BOGの流量は反応式に示す化学量論から5,000Nm/h程度に制御すればよいことがわかる。また、BOGが純粋なブタン(C10)で、CO流量や目標とするCO転化率が前記と等しい場合のBOGの流量は、1,250Nm/h程度に制御すればよい。
【0032】
なお、流量制御装置4としては、可燃性のBOG流量を制御できるバルブ等を用いることができる。例えば、ニードル弁や可変絞り弁などの種々のタイプの質量流量計と連動させた流量制御弁などが好適に用いられる。
【0033】
本発明は、上述したように、改質すべき炭酸ガス含有高温排ガスの還元剤として、BOGを用いることによって、排ガスの増熱と炭酸ガスの排出削減とを促進させることができればよく、特に、炭酸ガス転化率には制限はない。ただし、炭酸ガス転化率が低くなると、BOGを吹き込むことの意義が薄れて、吹込み効果が小さくなる。この意味において、経済性の観点から、かかる炭酸ガス転化率は少なくとも1%程度を目指すことは必要であり、好ましくは3%以上とする。また、この炭酸ガス転化率は、BOGの再液化作業をなくし、排ガスの増熱と炭酸ガスの排出削減とを同時に達成するという目標を達成するためには、少なくとも10%、より好ましくは20%以上とすることが経済的な効果が大きい。一方、この炭酸ガス転化率の上限は高い程よいが、あまり転化率を高くすると、BOG貯蔵タンク2の容量が過大となり、経済的でなくなるので、90%以下、より好ましくは80%以下にすることが推奨される。
【0034】
前記BOGは、一般には、炭酸ガス濃度、排ガス温度、装置内圧力などに応じて、図1に示す改質反応装置6内において、上記(4)〜(6)式に従う平衡組成まで反応が進行することになる。しかし、この改質反応が炭酸ガス含有排ガスの流量や組成の変動などによって平衡まで達しない場合であっても、改質ガス中にこのBOGの一部が混合状態となって残留するだけであるから、特に問題にはならない。
【0035】
上記排ガス排出装置7から発生する炭酸ガス含有排ガス中の炭酸ガス流量は、排ガス排出装置7の種類や大きさに依存する。例えば、この排ガス排出装置7が転炉であれば、炭酸ガス流量は5,000〜50,000Nm/h程度であり、この排ガス排出装置7が鉄鉱石の焼結炉であれば炭酸ガス流量は10,000〜100,000Nm/h程度である。
【0036】
図1において、BOG流量制御装置4の下流には、改質反応装置6にBOGを吹込むための、BOG吹込み装置5が設けられる。この吹込み装置5は、改質反応装置6内に吹込まれるBOGを速やかに拡散させて炭酸ガス含有排ガスとよく混合させ、改質反応装置6内でのBOG濃度分布ができるだけ小さくなるようにできるものを用いることが好ましい。例えば、超音速域で用いられるラバールノズル、亜音速から低流速域で用いられる先細ノズルや直管ノズル、多数のスリットから噴射させるスリットノズル等を用いることができる。
【0037】
前記BOG吹込み装置5は、図2に示すような、排ガス排出装置7が転炉であり、改質反応装置6が上部フード6a、第1輻射部6b、第2輻射部6cからなる排ガス回収設備であるとき、高さ方向の下部から中央付近、即ち、上部フード6aから第1輻射部6bにかけての位置に配置することが好ましい。高さ方向の上部よりも、下部側に設置する理由は、改質反応によって比重の小さいHが生成するため、上昇流であれば生成したHの逆拡散による転化率の低下を防止できるからである。
【0038】
かかる吹込み装置5からのBOGの噴流速度は、吹込み装置5近傍における、改質反応装置6内での、炭酸ガス含有排ガスの流速の1倍以上100倍以下が好ましく、3倍以上、50倍以下になるように調整することがより好ましい。その理由は、BOGの流速が、炭酸ガス含有排ガス流速の1倍未満では、吹込んだBOGが炭酸ガス含有排ガス流の慣性力に負けて、改質反応装置6の内部壁に押し付けられるため好ましくない。一方、前記流速比が、100倍超では吹込んだBOGの慣性力が大きすぎて、改質反応装置6の中心付近をBOGが上昇していくため好ましくない。また、流速を100倍超のような大流速とすると、吹込み装置5へのBOGの供給圧力が高くなり、断熱膨張による冷却のため、吹込んだ後のBOG温度が著しく低くなり、好ましくない。
【0039】
前記改質反応装置6は、BOGと炭酸ガス含有排ガスとが合流して上記の改質反応を行うに十分な滞留時間を確保できるようなものであること、例えば、反応域の長さを確保できるような構造のものであることが必要であり、構造や材質などには特に制限はない。BOGと排ガスとの混合ガスの滞留時間としては、0.01〜50秒程度であればよく、0.1〜20秒間滞留させる時間が確保できる長さがあればより好ましい。上述した反応域の長さは、主に装置の規模(大きさ、長さ)により決まるものである。ガスの滞留時間について、0.01秒以上とする理由は、改質反応が完了するのに十分な反応時間を確保するためであり、未反応還元剤のリークもなく経済的である。一方、このガス滞留時間を50秒以内にする理由は、改質反応装置6をガスの滞留が50秒を超えるような大きさのものにしても、反応は平衡点以上には進まないため、非経済的だからである。
【0040】
例えば、こうした改質反応装置6としては、既設の排ガスダクトをそのまま利用することができる。それは、この場合、新たに改質反応装置6を建設する必要がないため経済的だからである。既設の排ガスダクトとしては、転炉排ガス回収設備や焼結炉の煙道などを例示することができる。
【0041】
上記改質反応装置6内での改質反応は、金属ニッケルや酸化ニッケルなどのニッケル系触媒を使うと反応が促進されることは既知であり、これら市販の改質触媒を用いて反応を促進させることは有効である。ところで、上記の改質反応には、そのニッケル系触媒の他に、金属鉄や酸化鉄、金属コバルト、酸化コバルトなどの遷移金属やその酸化物もまた有効であることを本発明者らは新たに知見している。
【0042】
この点に関し、本発明においては、冶金炉または焼結炉から排出される高温の排ガスを用いる。冶金炉または焼結炉から排出される排ガスというのは、炭酸ガスを含有するだけでなく、触媒作用のあるFeやCoのような遷移金属およびその酸化物を主成分とするダストを多く含んでいるので、とりわけ有効な排ガスであると言える。
【0043】
即ち、本発明においては、前記排ガス排出装置7として、触媒作用のある酸化鉄等のダストを多く含む排ガスを排出する転炉等の冶金炉または焼結炉(以下、「転炉」の例で述べる)を用いることが有効である。要するに、本発明は、転炉等から排出される、高温の排ガス(以下、これを「オフガス」という)に、前記BOGを添加し、このことにより、そのオフガス中に含まれている炭酸ガスとBOGとの間で、ダストを触媒とした改質反応を起させるようにした点が特徴の一つである。
【0044】
一般に、転炉から排出されるオフガスは、10〜20容積%のCOと50〜80容積%程度のCOを含有し、発熱量が1500〜2000kcal/Nm程度、操業中の炉口部における温度は1200〜1800℃程度である。本発明では、この転炉のオフガス中に、還元剤としてBOGを添加して、そのBOGと炭酸ガスとによる、上記(4)〜(6)式の改質反応を、酸化鉄の介在の下に起こさせることにより、該オフガスの増熱と炭酸ガスの排出削減を同時に実現する。即ち、増熱されたオフガス、即ち、改質オフガスは、例えば、製鉄所内の各種熱源として使われる(燃焼させる)ため、最終的には炭酸ガスを排出することになるものの、製鉄所内で用いられる重油等の補助燃料を増熱分相当量削減することができ、その分の炭酸ガスが削減できることになる。
【0045】
図3は、本発明にかかる排ガス改質方法を実施するために、転炉の排ガス回収設備に適用した例を示す略線図である。この図に示すように、転炉Cから排出される高温の炭酸ガスを含有するオフガスは、上部フード6a、第1・第2輻射部6b、6cの下流側に連設されている1次集塵機(湿式集塵機)9、2次集塵機10等を経て排出される間に、この2次集塵機10の出側に配設した流量計11、ガス分析計12にて連続的または半連続的に、あるいは間欠的にオフガス流量、オフガス酸素濃度が計測される。なお、該オフガス中の酸素濃度が1容積%より多いときは、改質反応用還元剤(BOG)の添加(注入)量を制御する制御弁4を閉とすると同時に、ガス流路切替弁13を間にし、該オフガスがフレア14側に流れるようにすることが好ましい。
【0046】
ガス分析計12の形式はとくに限定しないが、酸素濃度の他、炭酸ガス濃度(流量)やオフガス流量の計測もできるものが好ましい。このガス分析計12の計測値からは、炭酸ガスの流量も求めることができ、ひいては改質反応用還元剤の注入量を決定することができるようになる。
【0047】
本発明において処理対象となるオフガスは、このガス中に含まれる酸素濃度が1容積%以下にまで低下したものを用いることが好ましい。そして、改質処理は、図3に示す温度計15の位置、即ち改質反応装置6の最下流の位置で計測されるオフガスの温度が800℃以上で上記の改質反応が完了するようにすることが好ましい。従って、改質反応が進行している間は、ガス流路切替弁13を開にし、流量制御弁4を開として、上部フード6aや酸素上吹きランス16の側管から改質反応用還元剤(BOG)の添加を行い乍ら、改質されたオフガスがガスホルダー(図示せず)側に流れるようにする。この間、前記温度計15では、被処理オフガスの温度を連続的に計測し、そして、改質処理により増熱されたオフガスの温度が800℃以上で改質反応が完了するように、BOGの注入量および/または、添加(注入)位置を制御すればよい。
【0048】
上述したように、BOGのオフガス中への添加は、オフガス中の酸素濃度が1容積%以下になったときに添加することが好ましい。この理由は、オフガス中の酸素を1容積%以下とすると、オフガス中の水素ガスや還元剤中の水素原子が酸素と反応することによって発生する水蒸気の量が少なくなり水蒸気と還元剤との反応が生じなくなる。その結果、炭酸ガスの転化率を低下させることなく、炭酸ガス削減効果を上げることができるからである。なお、オフガス中の酸素濃度が1容積%以下のときに還元剤を添加すると、発火や爆発の危険性がない。
【0049】
一方で、前記(4)〜(6)式で示される炭酸ガス改質反応を効率的に行わせるためには、オフガス中の酸素濃度を限りなくゼロに近づけることが好ましいが、1容積%程度までの混入なら許容される範囲だからである。それは、転炉の排ガス回収設備というのは、空気が少し混入するように作られているため、酸素濃度を検出限界以下にまで低下させるには長時間が必要となる。もし、その間、還元剤(BOG)を添加することができないとなると、増熱効果が低下するばかりでなく、単にフレア9で燃焼させる量が増大し、結果として炭酸ガス排出量の増大を招いて、好ましくない。従って、本発明において、この還元剤の注入を開始するときの、オフガス中の酸素濃度は、1容積%以下にすることが好ましい。
【0050】
また、本発明では、排ガスの顕熱を利用した上記の改質反応によって、低温の改質排ガス、即ち、反応生成物の燃料潜熱となって増熱された状態のオフガスの温度が800℃以上においてその改質反応が完了するように、還元剤の添加量および/または添加位置等を調整することが好ましい。このように、前記改質反応完了時のオフガス温度としては、800℃以上であることが好ましく、850℃以上であればより好ましい。その理由は、前記改質反応完了時のオフガス温度を800℃以上とすると、フライアッシュ等のカーボンの発生による煙道での堆積が生じないだけでなく、炭酸ガスの転化率が低下せず、増熱効果ならびに炭酸ガス削減効果がともに低下することがない。
【0051】
つまり、本発明の考え方の特徴の一つは、オフガス中の炭酸ガス流量によって改質反応を制御するのではなく、改質反応完了時のオフガスの温度(好ましくは800℃以上)を制御目標にしてオフガスの増熱制御を行う点にある。このような制御をする理由は、転炉は一般に、回分式の炉であり、溶鋼中に酸化鉄が増大するなどの吹錬異常が発生すると、オフガスの温度が大きく変動する性質をもっているからである。つまり、このような方法によれば、オフガス温度の変動による影響を回避するのに有利だからである。
【0052】
熱エネルギーとして蓄積されることによって、増熱した状態の改質オフガスは、好ましくは800℃以上のときに前記改質反応が完了するように、還元剤の添加量や添加位置を決定する。例えば、還元剤添加量の制御は、炭酸ガス流量、還元剤の種類、炭酸ガス改質反応の化学量論、添加位置におけるオフガス温度、ならびに添加位置から温度計15の位置までのガス滞留時間などに応じて、変化させることが必要である。
【0053】
ここで、前述の「改質反応の完了」とは、添加したメタン等のBOG(還元剤)と排ガス中の炭酸ガスとの反応が、その雰囲気における概平衡まで進行したことを意味する。完全に平衡になるまで反応を進行させるのは、理論上、無限の滞留時間が必要となるので、概平衡を厳密に定義することができない。そこで、本発明においては、改質前の排ガス中の水素ガス濃度に対して、以下に説明する水素ガス濃度が増加したしたときを、「改質反応の完了」とするのが好ましい。
【0054】
例えば、脱炭吹錬では、もともと排ガス中の水素ガス量が1容積%程度と少なく、改質後の排ガス中の水素ガス濃度は改質前の2〜25倍程度にまで増加するため、モニタリングが容易である。従って、脱炭吹錬では、改質前の2倍以上に水素ガスが増加したときを、「改質反応が完了」とすることが好ましい。
【0055】
一方、もともと排ガス流量が少なく、排ガス回収率の低い脱燐吹錬では、近年、廃プラスチックスなどを投入して排ガス量を多くして、回収率を高めることが行われている。この場合、廃プラスチックスなどの副原料から生成する水素ガスのため、改質前の排ガス中の水素ガス濃度は10〜15容積%程度に達する。また、底吹き転炉では、羽口の損傷防止のため、冷却ガスとしてLPGを供給しているため、LPGの分解によっても多量の水素ガスが発生する。このような多量の水素ガスが発生している場合には、改質後の排ガス中の水素ガス濃度の増加量は改質前と比べて1〜5容積%程度に過ぎない。従って、脱燐吹錬や底吹転炉では、改質前よりも1容積%以上水素ガスが増加したときを、「改質反応が完了」とすることが好ましい。
【0056】
なお、排ガス温度は、改質反応が進むことによって低下するので、反応後の排ガス温度が好ましくは800℃以上のときに完了させることに物理的に意味がある。一方、添加した還元剤に由来する水素原子は、改質反応によって水素ガスに変化する。エネルギー源として排ガスを回収しているプロセスであれば、排ガス組成の分析は必須であり、水素ガス濃度によって反応の完了をモニターすることは、化学的な意味があり、かつ、操業管理としても重要である。
【0057】
また、オフガスを改質することにより製造される改質ガスとは、該排ガス中の炭酸ガスとBOGとの反応が完了することによって生成する増熱されたガスを意味する。
【0058】
なお、上記の説明において、炭酸ガス改質反応の化学量論では、下記の一般式(7)に示すように、還元剤1モルに対し、炭酸ガスは(X−Z)モルが反応することを意味している。一般的には、当量の還元剤を注入することが好ましいが、添加位置におけるオフガスの温度が、温度計15の位置での反応完了の好ましい下限温度である800℃に比べてあまり高くない場合は、当量よりも少ない量を添加することが好ましい。例えば、転炉オフガスの炭酸ガス濃度が15容積%で、還元剤としてメタンであるBOGを用いる場合、(X−Z)=1が当量であるので、注入位置におけるオフガス温度が1600℃以上であれば、炭酸ガスと等量のメタンを添加すればよい。しかし、注入位置におけるオフガス温度が1200℃であれば、当量の約2/3が適切な添加量となる。ここで適切な添加量とは、増熱されたオフガスの温度が800℃以上を示す位置で改質反応が完了する量を意味する。
【0059】

【0060】
例えば、転炉オフガス中の炭酸ガス濃度が15容積%で、還元剤としてBOG(メタン)を用い、添加位置におけるオフガスの温度が1600℃以上の場合、炭酸ガスと当量のメタンを添加するには、滞留時間を0.5〜5秒とすると改質反応を完了させることができ、反応完了時のガス温度は800℃以上となる。
【0061】
なお、還元剤の添加位置は、前記ガス滞留時間ならびに添加位置におけるオフガスの温度を考慮して決定する。例えば、ガス滞留時間が、前述したように、0.01〜50秒の場合、還元剤の添加位置は、オフガス温度ができるだけ高い温度となる位置にすることが望ましい。図3は、還元剤を酸素上吹きランス16の側管の位置から吹込むようにした例である。この場合、オフガス温度は最も高く、前記ガス滞留時間も十分に確保できる位置と言える。一方で、転炉オフガス中の炭酸ガス量が比較的少ないような場合などでは、反応時間は短くてもよいので、上部フード6aや第1輻射部6bの位置でBOGの添加を行ってもよい。添加位置は、1箇所だけに限らず複数個所であってもよく、例えば、ランス16の側管と上部フード6aの2個所で行うようにしてもよい。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
この実施例は、内径12mm、長さ5mのアルミナチューブからなる模擬試験炉を用い、模擬BOGとして高純度メタンガスを用いた例である。この試験炉は、アルミナチューブ上端に設けた上流側フランジに、外径3mmのメタンガス導入管と熱電対保護管とを取付け、メタンガスの添加は、上端(上流側フランジ)から1.5m下方の位置となる位置で行うようにし、また、ガス温度の計測制御は、上流側フランジから1mの位置となるにしたものである。また、この試験炉の下流側フランジには、熱電対挿入口、水冷によるガス冷却設備を取付け、さらに、ガス冷却設備の下流側には積算式ガス流量計とガス分析装置を取付けたものである。アルミナチューブ全体は電気炉で覆われているが、上流側の1mの範囲内のヒーターのみに通電して、この部分を転炉模擬ガスの予熱ゾーンとし、それより下流側のヒーターは通電せず、断熱反応ゾーンとした。なお、前述したようにメタンは、予熱ゾーンの下方0.5mの位置で添加されるため、実際の断熱反応ゾーンの長さは3.5mである。
【0063】
転炉模擬ガスとしては、CO:50容積%、CO:15容積%、H:1容積%、N:34容積%の混合ガスを準備した。模擬ガス流量は、1L/minに、メタンガス流量は、COと等量の150mL/minに固定し、予熱ゾーンの温度を1800℃、1500℃、1300℃、1100℃、900℃と変化させて改質反応実験を行った。これらの例の下で、下流側フランジに取付けた熱電対により断熱反応ゾーンの出口温度を計則したところ、予熱ゾーン温度は1800℃、1500℃、1300℃、1100℃、900℃の各実験での出口温度は、それぞれ、1060℃、840℃、775℃、735℃、705℃であった。また、出口での水素ガス濃度はそれぞれ、21容積%、20容積%、19容積%、18容積%、17容積%であった。そして、断熱ゾーンでのガス滞留時間は2〜6秒であった。
【0064】
反応済み出口ガスの流量とガス分析結果とから転化率と物質収支を計算した。カーボンの生成は各実験後の配管内の目視確認により行ったが、小規模の実験のため定量化するのは困難であった。そこで、C原子の物質収支実測値(%)と100(%)との差分をカーボン生成量とした。図4は、横軸に増熱模擬ガスの出口温度、左縦軸にCO転化率およびにCH転化率を、そして、右縦軸にカーボン生成量を示した。この図に示すように、増熱模擬ガスの出口温度が1060℃の実験(予熱ゾーン温度1800℃の場合)では目視によるカーボンの生成は認められなかったが、増熱模擬ガスの出口温度が800℃より低い実験(予熱ゾーン温度1300〜900℃の場合)ではカーボンの生成が顕著であった。
【0065】
また、図4より明らかなように、改質反応によって増熱されたオフガスの温度が800℃以上の位置において、改質反応が完了するように制御することによって、高い炭酸ガス転化率と高い増熱効果を達成できると共に、煙道の閉塞の原因となるカーボンの生成も抑制できることが明らかとなった。
【0066】
(実施例2)
転炉模擬ガス組成として表1に示すガスを用い、模擬ガスの予熱ゾーンを1600℃としたこと以外は、実施例1と同様にして改質反応実験を行った。増熱模擬ガスの出口温度は、いずれの場合も800℃以上であった。図5は、横軸に模擬ガス中の酸素濃度、左縦軸にCO転化率およびCH転化率を、右縦軸にガス組成から求めた増熱模擬ガスの低位発熱量を示した。図5に示すとおり、模擬ガス中の酸素濃度が1容積%超の実験No.2−4〜2−6ではCH転化率は高いものの、CO転化率、低位発熱量はともに大きく低下した。これは、模擬ガス中の酸素によってHOが生成した結果、CHのHO改質反応が進行したことを示している。
【0067】
【表1】

【0068】
また、図5より明らかなように、還元剤の添加開始をオフガス中の酸素濃度が1容積%以下になった時点となるように制御することによって、高い炭酸ガス転化率と高い増熱効果を達成できることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、転炉の排ガスだけでなく、多量の炭酸ガスを含む高温のガスが排出される溶融還元炉や非鉄精錬で用いられる各種の炉などの冶金炉、ならびに各種焼結炉から排出される排ガスの改質技術として有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 液化ガス貯蔵タンク
2 ボイルオフガス貯蔵タンク
3 昇圧装置
4 流量制御装置
5 吹込み装置
6 改質反応装置
6a 上部フード
6b 第1輻射部
6c 第2輻射部
7 排ガス排出装置
8 配管
9 1次集塵機
10 2次集塵機
11 流量計
12 ガス分析計
13 ガス流路切替弁
14 フレア
15 温度計
16 酸素上吹きランス
C 転炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の炭酸ガス含有排ガスに還元剤を添加し、その排ガス中に含まれる炭酸ガスと還元剤とによる改質反応を導いて該排ガスの改質を行うにあたり、前記還元剤として、液化ガス貯蔵タンク内において揮発生成するボイルオフガスを用いることを特徴とする炭酸ガス含有排ガスの改質方法。
【請求項2】
前記ボイルオフガスは、再液化させることなくそのまま使用に供することを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガス含有排ガスの改質方法。
【請求項3】
前記ボイルオフガスの排ガス中への添加は、排ガス中の酸素濃度が1容積%以下のときに行い、前記改質反応を、排ガス温度が800℃以上の時に完了させることを特徴とする請求項1または2に記載の炭酸ガス含有排ガスの改質方法。
【請求項4】
前記液化ガスは、液化天然ガス、液化石油ガスまたは液化ジメチルエーテルのいずれか1種以上あることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭酸ガス含有排ガスの改質方法。
【請求項5】
前記炭酸ガス含有排ガスは、冶金炉または焼結炉から排出されるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭酸ガス含有排ガスの改質方法。
【請求項6】
炭酸ガスを含有する高温の排ガスを発生する排ガス排出装置に対し、液化ガス貯蔵タンク内で揮発生成するボイルオフガスを貯蔵するボイルオフガス貯蔵タンクと、高温排ガスとボイルオフガスとを接触させて該排ガス中の炭酸ガスとの改質反応を起こさせる改質反応装置と、ボイルオフガスを前記改質反応装置に吹込むための吹込み装置とを配設したことを特徴とする炭酸ガス含有排ガスの改質設備。
【請求項7】
前記ボイルオフガス貯蔵タンクと前記吹込み装置との間には、ボイルオフガスの昇圧装置および流量制御装置を配設したことを特徴とする請求項6に記載の炭酸ガス含有排ガスの改質設備。
【請求項8】
前記排ガス排出装置は、冶金炉または焼結炉であることを特徴とする請求項6または7に記載の炭酸ガス含有排ガスの改質設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−42824(P2011−42824A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190844(P2009−190844)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】