説明

炭酸ガス吸収剤

【課題】
炭酸ガスの吸収能力が高く維持され、例えばセボフルラン等の麻酔薬の分解が少なく且つコストの低下や製造工程の簡易化が可能な炭酸ガス吸収剤を提供すること。
【解決手段】
水酸化カルシウムと水と0.3〜1.4w/w%の塩化カルシウム、更に好ましくは0.3〜1.4w/w%の塩化ナトリウムとを含有することを特徴とする炭酸ガス吸収剤、及びこれを用いた呼吸ガスや麻酔ガス中の二酸化炭素除去方法。
本発明によれば、炭酸ガスの吸収能力は高く維持され、且つ例えばセボフルラン等の麻酔薬の分解が少ない炭酸ガス吸収剤が得られる。
更に、本発明の炭酸ガス吸収剤に塩化ナトリウムをも含有させた場合には、より一層二酸化炭素吸収保持時間を長くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸ガスや麻酔ガスの清浄化に用いられる、気体状の二酸化炭素(炭酸ガス)の吸収剤(以下、炭酸ガス吸収剤と記載する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸ガスや麻酔ガス中の炭酸ガスの吸収剤として、水酸化カルシウム、アルカリ金属の水酸化物又は/及びカルシウム以外のアルカリ土類金属の水酸化物及び水を主成分とするものが広く使用されている。
【0003】
しかしながら、このような組成の吸収剤を、例えばフルオロ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルエーテル(セボフルラン)等の麻酔薬を含む呼吸ガス、すなわち麻酔ガス中の炭酸ガスを吸収するために使用した場合には、麻酔薬の一部が分解し、その分解産物が麻酔ガス中に混入するという問題点があった。また、この水酸化カルシウム、アルカリ金属の水酸化物又は/及びカルシウム以外のアルカリ土類金属の水酸化物及び水を主成分とするものは、炭酸ガスの吸収に従って、該吸収剤中に含有する酸アルカリ指示が発色又は変色する。しかし、放置しておくとやがて元の色に帰ってしまい、充分な炭酸ガス吸収能が残っているのか否かが判らなくなってしまう。そのため、炭酸ガス吸収能が低下した、又は使用によって乾燥した吸収剤を誤って使用したことによって、炭酸ガス除去が不十分であったり、麻酔ガスの分解や異常発熱等に由来する危険な問題も発生していた。
【0004】
このような状況下、特に麻酔薬の一部が分解し、その分解産物が麻酔ガス中に混入するという問題点を解決するために、マグネシウム化合物を用いることを特徴とする炭酸ガス吸収剤(特許文献1)が開発されている。即ち、このような問題が生じる原因は、上記した如き炭酸ガス吸収剤の主成分である水酸化カルシウム、或はこれとアルカリ金属の水酸化物等にあると考え、水酸化カルシウムの代りにマグネシウム化合物を用いた炭酸ガス吸収剤がそれである。しかしながら、マグネシウム化合物を用いることを特徴とする上記の炭酸ガス吸収剤は、水酸化カルシウムを主成分とする炭酸ガス吸収剤に比べて、生産コストが高いという問題があった。
【0005】
また、本発明者らは、従来の炭酸ガス吸収剤による麻酔薬の分解反応について検討した結果、従来炭酸ガス吸収剤として用いられていたソーダ石灰(ソーダライム)中に含まれる、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が麻酔薬を分解する原因であり、これらを実質的に含まない水酸化カルシウム及び水を主成分とした炭酸ガス吸収剤を調製した場合には、炭酸ガスの吸収能力は高く維持され、且つ麻酔薬であるセボフルランの分解が少なく、しかもコストの低下や製造工程の簡易化が可能な炭酸ガス吸収剤が得られることを見出し、先に特許出願して登録されている(特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開平5−57182号公報
【特許文献2】特許第3433493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、炭酸ガスの吸収能力が高く維持され、例えばセボフルラン等の麻酔薬の分解が少なく且つコストの低下や製造工程の簡易化が可能な炭酸ガス吸収剤を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水酸化カルシウムと水と0.3〜1.4w/w%の塩化カルシウムとを含有し、且つアルカリ金属の水酸化物を実質的に含まないことを特徴とする、炭酸ガス吸収剤の発明である。
また、本発明は上記炭酸ガス吸収剤を用いて呼吸ガスや麻酔ガスを処理することを特徴とする、麻酔ガス中の炭酸ガス除去方法の発明である。
【0009】
即ち、本発明者らは、上記した如き問題点に鑑み、従来の炭酸ガス吸収剤による麻酔薬の分解反応について検討した結果、従来炭酸ガス吸収剤として用いられていたソーダ石灰中に含まれる、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が麻酔薬を分解する原因であり、これらを実質的に含まない水酸化カルシウム及び水を主成分として炭酸ガス吸収剤を調製した場合には、炭酸ガスの吸収能力は高く維持され、且つ例えばセボフルラン等の麻酔薬の分解が少なく、しかもコストの低下や製造工程の簡易化が可能な炭酸ガス吸収剤が得られることを見出した。そして更に鋭意研究の結果、水酸化カルシウム及び水を主成分とする炭酸ガス吸収剤に、0.3〜1.4w/w%の塩化カルシウムを含有させた場合には、更にセボフルラン等の分解が少なく、また、炭酸ガスの吸収力も更に優れた炭酸ガス吸収剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の水酸化カルシウムとアルカリ金属類の水酸化物とを含む炭酸ガス吸収剤や、水酸化カルシウムと水のみを有効成分とする炭酸ガス吸収剤と比較して、炭酸ガスの吸収能力は高く維持され、且つ例えばセボフルラン等の麻酔薬の分解が少ない炭酸ガス吸収剤が得られる。また、炭酸ガスを吸収して消耗するに従って該吸収剤に含有される酸アルカリ指示薬が発色又は変色し、且つその色が持続するため、吸収剤が消耗したものか吸収能のあるものかが容易にわかる。また、使用後の消耗した、又は乾燥した吸収剤を使用することによる異常発熱や有害成分が発生するような危険を起こすこともない。
【0011】
更に、本発明の炭酸ガス吸収剤に塩化ナトリウムをも含有させた場合には、より一層炭酸ガス吸収保持時間を長くすることができる。また粒子サイズを極端に細かくして総表面積を多くする必要がなく、例えば錠剤型のものを調製する場合には、そのサイズを大きくすることができるため、一定重量のものを調製するための打錠時間を短くすることができ、製造コストを抑えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の炭酸ガス吸収剤とは、水酸化カルシウムと水と0.3〜1.4w/w%の塩化カルシウム(無水物として)とを含有することを特徴とするものである。
また、本発明の炭酸ガス吸収剤としては、更に0.3〜1.4w/w%の塩化ナトリウムを含有するものが好ましい。
【0013】
尚、該炭酸ガス吸収剤は、アルカリ金属の水酸化物を含有しないことが望ましいが、その濃度が、アルカリ金属の水酸化物の作用によるセボフルランの分解が生じない程度以下であれば、特に問題はない。
【0014】
そのような、アルカリ金属の水酸化物の、炭酸ガス吸収剤中の許容される具体的な濃度としては、該吸収剤中に0.01w/w%以下、望ましくは0.0075w/w%以下、更に望ましくは0.005w/w%以下である。
【0015】
本発明において用いられる、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、水、更に好ましくは添加される塩化ナトリウムは、呼吸ガス中の炭酸ガスの吸収剤として用いる際に有害且つ危険な問題を起こす様な不純物、或は麻酔薬を分解する性質を有するアルカリ金属の水酸化物を実質的に含まない(それらの作用によるセボフルラン等の分解が生じない程度以下しか含まない)ものであればよく、特に高純度のものを用いる必要はないが、例えば水酸化カルシウムの場合には通常純度95%以上、好ましくは純度97%以上のものが挙げられる。また、塩化カルシウムは、無水のものでも、適当な水和物(例えば一水和物、二水和物等)でも用いることが出来る。無水の水酸化カルシウムを用いる場合には、通常純度95%以上、水酸化カルシウムの二水和物を用いる場合には、通常純度70%のものが挙げられる。塩化ナトリウムは、通常純度94%以上、好ましくは純度99%以上のものが挙げられる。
【0016】
尚、アルカリ土類金属の水酸化物は麻酔薬を分解する性質を有していないので、本発明の炭酸ガス吸収剤中には例えば水酸化マグネシウムの如きアルカリ土類金属の水酸化物が存在していても特に問題はない。
【0017】
本発明の炭酸ガス吸収剤が塩化ナトリウムを含有しないものである場合、該吸収剤中に含有される各成分の含有量は、塩化カルシウムが二水和物として0.5〜1.2w/w%、好ましくは0.6〜1.1w/w%、より好ましくは0.7〜1.0w/w%、即ち無水の塩化カルシウムとして0.3〜1.0w/w%、好ましくは0.4〜0.9w/w%、より好ましくは0.5〜0.8w/w%含有されていればよい。水酸化カルシウム及び水の量は、塩化カルシウムの量に従って適宜選択されるが、例えば水酸化カルシウムの含有量は77.8〜89.7w/w%、好ましくは79.8〜86.7w/w%、より好ましくは79.9〜85.7w/w%の範囲が挙げられる。また、水分含量としては、通常10〜21w/w%、好ましくは13〜19w/w%、より好ましくは14〜19w/w%の範囲が挙げられる。
【0018】
本発明の塩化ナトリウムを含有しない炭酸ガス吸収剤の好ましい一実施態様としては、例えば水酸化カルシウムを77.8〜89.7w/w%、水を10.0〜21.0w/w%、塩化カルシウムを0.3〜1.0w/w%含有する、炭酸ガス吸収剤が挙げられる。
【0019】
また、本発明の塩化ナトリウムを含有しない炭酸ガス吸収剤には、炭酸ガス吸収能力の残存能力を検知するためのインジケーターとして、酸アルカリ指示薬を含有させる事が望ましい。酸アルカリ指示薬の具体例としては、例えばエチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ブリリアントグリーン、アシッドグリーン、チタンイエロー、コンゴーレッド等の酸アルカリ指示薬が挙げられる。中でも、水に対する溶解性やその毒性、色の変化(発色様態)等を考慮すると、エチルバイオレットが最も好ましい。このような酸アルカリ指示薬を本発明の炭酸ガス吸収剤に含有させておけば、炭酸ガスを吸収して吸収剤自体のアルカリ性の度合が低下してくると、言い換えれば炭酸ガスの吸収能力が低下してくると、炭酸ガス吸収剤の色が変化(発色又は変色)して、吸収剤の交換時期を適切に肉眼で判断することができる。
【0020】
本発明の塩化ナトリウムを含有しない炭酸ガス吸収剤に酸アルカリ指示薬を含有させる場合の酸アルカリ指示薬の濃度としては、該吸収剤中の濃度として0.007〜0.025w/w%程度、好ましくは0.007〜0.017w/w%程度であればよいが、通常は0.01〜0.016w/w%程度の濃度範囲が挙げられる。
【0021】
本発明の炭酸ガス吸収剤が塩化ナトリウムを含有するものである場合、該吸収剤中に含有される各成分の含有量は、該吸収剤中に、塩化カルシウムが二水和物として0.5〜1.8w/w%、好ましくは0.7〜1.8w/w%、より好ましくは1.0〜1.8w/w%、即ち無水の塩化カルシウムとして0.3〜1.4w/w%、好ましくは0.5〜1.4w/w%、より好ましくは0.8〜1.4w/w%含有されていればよい。塩化ナトリウムは、0.3〜1.4w/w%、好ましくは0.5〜1.2w/w%、より好ましくは0.7〜1.0w/w%含有されていればよい。水酸化カルシウム及び水の量は、塩化カルシウム及び塩化ナトリウムの量に従って適宜選択されるが、例えば水酸化カルシウムの含有量は77.8〜89.7w/w%、好ましくは79.8〜89.5w/w%、より好ましくは81.1〜89.4w/w%の範囲が挙げられる。また、水分含量としては、通常8〜21w/w%、好ましくは9〜19w/w%、より好ましくは9〜16w/w%の範囲が挙げられる。
【0022】
また、上記した塩化ナトリウムを含有する本発明の炭酸ガス吸収剤には、前記した酸アルカリ指示薬を含有させる事が望ましい。酸アルカリ指示薬の具体例等は前記した通りである。
【0023】
塩化ナトリウムを含有する本発明の炭酸ガス吸収剤に酸アルカリ指示薬を含有させる場合の酸アルカリ指示薬の濃度としては、0.002〜0.025w/w%程度、好ましくは0.004〜0.015w/w%程度であればよいが、通常は0.004〜0.01w/w%程度の濃度範囲が挙げられる。
【0024】
本発明の塩化ナトリウムを含有する炭酸ガス吸収剤の好ましい一実施態様としては、水酸化カルシウムを81.1〜89.4w/w%、水を9.0〜16.0w/w%、塩化カルシウムを0.8〜1.4w/w%、塩化ナトリウムを0.7〜1.0w/w%、酸アルカリ指示薬を0.004〜0.01w/w%含有する、炭酸ガス吸収剤が挙げられる。
【0025】
また、本発明の塩化ナトリウムを含有する炭酸ガス吸収剤の別の好ましい一実施態様としては、上記の態様に於いて、更に水酸化カルシウムを84.65〜84.75w/w%、塩化カルシウムを1.31w/w%、塩化ナトリウムを0.91w/w%含有する炭酸ガス吸収剤が挙げられる。
【0026】
本発明の炭酸ガス吸収剤の形状としては、粒状(顆粒状、ペレット状を含む意味で用いられる。以下同じ。)又は錠剤型が挙げられる。
【0027】
本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤の成分含量は、塩化カルシウム(二水和物)が0.5〜1.8w/w%程度(無水塩化カルシウムとして0.3〜1.4w/w%程度)含有されるのが好ましい。
【0028】
特に、塩化ナトリウムを含有しない、本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤の成分含量は、塩化カルシウム(二水和物)が0.5〜1.2w/w%、好ましくは0.6〜1.1w/w%、より好ましくは0.7〜1.0w/w%程度(無水塩化カルシウムとして0.3〜1.0w/w%、好ましくは0.4〜0.9w/w%、より好ましくは0.5〜0.8w/w%程度)含有されるのが好ましい。また、水酸化カルシウムの含有量は、塩化カルシウムの濃度によるが、77.8〜89.7w/w%、好ましくは79.8〜86.7w/w%、より好ましくは79.9〜85.7w/w%の範囲が挙げられる。また、水分含量としては、通常10〜21w/w%、好ましくは13〜19w/w%、より好ましくは14〜19w/w%の範囲が挙げられる。更にまた、要すれば含有させる酸アルカリ指示薬の濃度としては、0.007〜0.025w/w%程度、好ましくは0.007〜0.017w/w%程度であればよいが、通常は0.01〜0.016w/w%程度の範囲で用いられる。
【0029】
更に塩化ナトリウムを含有する、本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤の成分含量は、塩化カルシウム(二水和物)が0.5〜1.8w/w%、好ましくは0.7〜1.8w/w%、より好ましくは1.0〜1.8w/w%程度(無水塩化カルシウムとして0.3〜1.4w/w%、好ましくは0.5〜1.4w/w%、より好ましくは0.8〜1.4w/w%程度)含有されるのが好ましい。塩化ナトリウムは0.3〜1.4w/w%、好ましくは0.5〜1.2w/w%、より好ましくは0.7〜1.0w/w%程度含有されるのが好ましい。また、水酸化カルシウムの含有量は、塩化カルシウム及び塩化ナトリウムの濃度によるが、77.8〜89.7w/w%、好ましくは79.8〜89.5w/w%、より好ましくは81.1〜89.4w/w%の範囲が挙げられる。また、水分含量としては、通常8〜21w/w%、好ましくは9〜19w/w%、より好ましくは9〜16w/w%の範囲が挙げられる。更にまた、要すれば含有させる酸アルカリ指示薬の濃度としては、0.002〜0.025w/w%程度、好ましくは0.004〜0.015w/w%程度であればよいが、通常は0.004〜0.01w/w%程度の範囲で用いられる。
【0030】
本発明の粒状の炭酸ガス吸収剤の成分含量は、塩化カルシウム(二水和物)が0.5〜1.8w/w%程度(無水塩化カルシウムとして0.3〜1.4w/w%程度)含有されるのが好ましい。
【0031】
特に、塩化ナトリウムを含有しない、本発明の粒状炭酸ガス吸収剤の成分含量は、塩化カルシウム(二水和物)が0.5〜1.2w/w%、好ましくは0.6〜1.1w/w%、より好ましくは0.7〜1.0w/w%程度(無水塩化カルシウムとして0.3〜1.0w/w%、好ましくは0.4〜0.9w/w%、より好ましくは0.5〜0.8w/w%程度)含有されるのが好ましい。また、水酸化カルシウムの含有量は、塩化カルシウムの濃度によるが、77.8〜89.7w/w%、好ましくは79.8〜86.7w/w%、より好ましくは79.9〜85.7w/w%の範囲が挙げられる。また、水分含量としては、通常10〜21w/w%、好ましくは13〜19w/w%、より好ましくは14〜19w/w%の範囲が挙げられる。更にまた、要すれば含有させる酸アルカリ指示薬の濃度としては、0.007〜0.025w/w%程度、好ましくは0.007〜0.017w/w%程度であればよいが、通常は0.01〜0.016w/w%程度の範囲で用いられる。
【0032】
塩化ナトリウムを含有する、本発明の粒状炭酸ガス吸収剤の成分含量は、塩化カルシウム(二水和物)が0.5〜1.8w/w%、好ましくは0.7〜1.8w/w%、より好ましくは1.0〜1.8w/w%程度(無水塩化カルシウムとして0.3〜1.4w/w%、好ましくは0.5〜1.4w/w%、より好ましくは0.8〜1.4w/w%程度)含有されるのが好ましい。塩化ナトリウムは0.3〜1.4w/w%、好ましくは0.5〜1.2w/w%、より好ましくは0.7〜1.0w/w%含有されるのが好ましい。また、水酸化カルシウムの含有量は、塩化カルシウム及び塩化ナトリウムの濃度によるが、77.8〜89.7w/w%、好ましくは79.8〜89.5w/w%、より好ましくは81.1〜89.4w/w%の範囲が挙げられる。また、水分含量としては、通常8〜21w/w%、好ましくは9〜19w/w%、より好ましくは9〜16w/w%の範囲が挙げられる。更にまた、要すれば含有させる酸アルカリ指示薬の濃度としては、0.002〜0.025w/w%程度、好ましくは0.004〜0.015w/w%程度であればよいが、通常は0.004〜0.01w/w%程度の範囲で用いられる。
【0033】
これらの中でも、取り扱いの容易さ等を考慮すると、特に錠剤型が好ましい。
【0034】
本発明の炭酸ガス吸収剤を調製するには、従来から用いられている方法、即ち水酸化カルシウムと塩化カルシウムと水と、更に好ましくは塩化ナトリウムとを混合後、適宜顆粒状等に成型する方法によっても良いが、このような方法により調製した炭酸ガス吸収剤における問題点である、輸送中に容器中の顆粒がお互いに擦り合い凹凸部が摩耗し、その結果、微粉末状或は塵状の水酸化カルシウム、塩化カルシウム等が生じ、これを吸収剤として充填したカラムを装着した装置を使用した場合には、水酸化カルシウム、塩化カルシウム等の微粉末或は塵が呼吸ガスや麻酔ガスと共に運び出され、呼吸している患者が吸入して重大な影響を受ける危険性があったり、炭酸ガス吸収剤を詰め替える際に水酸化カルシウム、塩化カルシウム等の塵が室内に飛散し、室内の空気を汚染する可能性があるので、本発明者らの一部らによって開発された炭酸ガス吸収剤の製造法(特開平3−047533号公報)を利用することが望ましい。
【0035】
本発明者らの一部らによって開発された炭酸ガス吸収剤の製造方法により本発明の炭酸ガス吸収剤を調製するには例えば以下の如く行えば良い。
【0036】
即ち、塩化ナトリウムを含有しない、錠剤型の本発明の炭酸ガス吸収剤を調製するには、先ず、水酸化カルシウムの粉末或は顆粒を常法により錠剤化する。これに、糖衣機、コーティングパン等を用いる常法により塩化カルシウム、要すれば酸アルカリ指示薬を含有する水溶液を噴霧して含水させ、次いで密封的に加熱処理すれば、本発明の錠剤型吸収剤が得られる。
【0037】
また、塩化ナトリウムを含有する、錠剤型の本発明の炭酸ガス吸収剤を調製するには、先ず、水酸化カルシウムと塩化カルシウムを混合した粉末或は顆粒を常法により錠剤化する。これに、糖衣機、コーティングパン等を用いる常法により塩化カルシウムと塩化ナトリウムと、要すれば酸アルカリ指示薬を含有する水溶液を噴霧して含水させ、次いで密封的に加熱処理すれば、本発明の錠剤型吸収剤が得られる。
【0038】
錠剤を成型するために加圧成型する方法としては、部分的に鋭い角を有する等摩耗により微粉末を生じやすい成型品が得られるような方法でなければ特に限定されないが、例えば製造機械の入手の容易さや操作性等を考慮して、通常市販されている打錠機を用いればよい。
【0039】
尚、本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤を調製する際の打錠圧力は非常に重要である。即ち、打錠圧力を大きくしていくと、微粉末や塵の発生は少ないが、炭酸ガスの吸収能力が小さい錠剤が得られるし、打錠圧力を小さくしていくと、炭酸ガスの吸収能力は大きいが、微粉末や塵が発生し易い錠剤が得られるからである。
【0040】
そのため、本発明の錠剤型吸収剤を調製するために、材料の粉末又は顆粒を打錠して得られたものの硬度としては、通常100〜1600g、好ましくは200〜1200g、より好ましくは200〜900g程度が望ましい。
【0041】
また、材料の粉末又は顆粒を打錠して上記した如き100〜1600g程度の硬度の錠剤型に成型した後、密閉加熱熟成等の処理を経て、最終的には600〜1600g、好ましくは900〜1200g程度の硬度の錠剤型炭酸ガス吸収剤とすると、微粉末や塵の発生量が少なく、且つ炭酸ガスの吸収能力も高いので特に望ましい。
【0042】
尚、本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤の場合には、その性能に影響しないものであれば、錠剤を調製する際に通常用いられる賦型剤を含んでいても良い。
【0043】
また、本発明の炭酸ガス吸収剤を錠剤型に成型した場合には、一錠の重さが一定である必要もなく、更にはその外観も、市販されている一般的な錠剤の様に平担できれいである必要はないことは、その使用目的から類推し得る通りである。
【0044】
例えば、本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤の場合の形状としては、第1図の(a)に示す如き形状のものが一般的ではあるが、第1図の(b),(c),(d)の如き形状としてもよい。このような形状とした場合には、該吸収剤の表面積を大きくすることができるので、炭酸ガスの吸収能力を向上させることができることは言うまでもない。
【0045】
成型される錠剤の大きさとしては、塩化ナトリウムを含有しない、錠剤型の本発明の炭酸ガス吸収剤の場合には、直径が1〜10mm、好ましくは1〜5mm、より好ましくは3〜4mm程度で、厚みが1〜10mm、好ましくは1〜3mm、より好ましくは1.5〜2.8mm程度であればよく、特に限定されない。
【0046】
また、塩化ナトリウムを含有する、本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤の場合には、錠剤の直径は1〜10mm、好ましくは1〜5mm、より好ましくは3〜5mm程度で、厚みが1〜10mm、好ましくは1〜3mm、より好ましくは1.5〜2.8mm程度であればよく、特に限定されない。即ち、該吸収剤の場合には、塩化ナトリウムを含有しない吸収剤より直径が大きいものであっても、炭酸ガス吸収能保持時間が長く保たれ、満足する吸収剤が得られる。
【0047】
また、この錠剤に塩化カルシウム及び水、好ましくは更に塩化ナトリウム、要すれば酸アルカリ指示薬を含有させる方法としては、塩化カルシウムの水溶液(要すれば、塩化ナトリウム、酸アルカリ指示薬を含有させておいても良い)を、例えば、糖衣機やコーティングパン等を用いる等の常法により行ってもよい。
【0048】
また、酸アルカリ指示薬を本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤に含浸させる方法としては、上記したような錠剤に含有させる水の中に酸アルカリ指示薬を溶解しておき、錠剤に噴霧する方法の他、例えば錠剤化する際に、粉末状の酸アルカリ指示薬を混合して錠剤に成型する方法等も挙げられるが、特に限定されるものではない。また、その濃度も前記した通りであるが、吸収剤の適当な交換時期を肉眼で判断できる程度に発色又は変色するような濃度であればよい。
【0049】
錠剤に前記した各成分を噴霧するには、これら全ての成分を含有する水溶液を調製し、これを一度に噴霧しても良いし、各成分を含有する水溶液をそれぞれ調製して、夫々別々に噴霧しても良い。例えば、初めに塩化カルシウム、好ましくは更に塩化ナトリウムを含有する水溶液を噴霧し、次に酸アルカリ指示薬溶液を噴霧する方法がある。このように、二液で噴霧する場合は一液の場合と比べて、夫々の噴霧液の濃度は二倍となり、噴霧する噴霧液の液量は1/2ずつとなる。
【0050】
具体的には、例えば塩化ナトリウムを含有しない本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤を得る場合には、錠剤79.9〜85.7w/w%に対して当該水溶液を14.3〜20.1w/w%程度の割合で、該錠剤に噴霧すればよい。該水溶液中の塩化カルシウムの濃度は2.5〜8.5w/w%程度であればよい。
【0051】
また、塩化ナトリウムを含有する本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤を得る場合には、錠剤81.1〜89.4w/w%に対して塩化カルシウム及び塩化ナトリウムを含有する水溶液を10.6〜18.9w/w%程度の割合で、該錠剤に噴霧すればよい。該水溶液中の塩化カルシウム(及び塩化ナトリウム)の濃度は3.1〜26.4w/w%程度であればよい。
【0052】
水分を含有させた錠剤を加熱熟成するための加熱処理をする際、加熱度は通常50〜120℃、好ましくは75〜85℃の範囲から、また、加熱時間は通常1〜24時間、好ましくは、4〜15時間の範囲から適宜選択して行えばよい。但し、加熱処理を行う際には、錠剤中に含まれる水分が蒸散しないように注意しなければならない。
【0053】
即ち、本発明の炭酸ガス吸収剤は、水分が必須成分であるからである。従って、加熱処理する際には、水蒸気圧が飽和となっている状態で行うことが望ましい。この状態で加熱処理を行うための最も簡単な方法としては、例えば密閉可能な容器や袋に上記の錠剤を詰めた後に密閉し、その状態で加熱処理を行う方法等が挙げられるが、具体的な方法に関してはこのような条件下で加熱処理を行い得る方法であれば特に限定されない。
【0054】
本発明の、粒状の炭酸ガス吸収剤を調製するには、まず原料として市販されている水酸化カルシウムの粒状(ペレット状)のものをそのまま使用し、整粒すればよい。また、一粒が同程度の量になるように自体公知の方法で整粒したものを用いても良い。整粒する場合には、一粒の量が1〜550mg、好ましくは20〜200mg、更に好ましくは30〜100mgになるように整粒すればよい。得られた水酸化カルシウムの粒に塩化カルシウム、水、好ましくは更に塩化ナトリウムや、要すれば適当な酸アルカリ指示薬を含有させる方法としては、上記した錠剤型の炭酸ガス吸収剤を得る場合と同様の方法が挙げられる。
【0055】
また、本発明の、粒状の炭酸ガス吸収剤は、錠剤型の炭酸ガス吸収剤の場合と同様、一粒の重さや形が一定である必要はない。また、最終的に得られる粒状の炭酸ガス吸収剤の硬度等の条件も、錠剤型酸性ガス吸収剤と同様である。
【0056】
かくして得られる本発明の炭酸ガス吸収剤の中でも、水酸化カルシウムと水と0.3〜1.4w/w%の塩化カルシウムと、要すれば酸アルカリ指示薬で作製されたものが好ましく、更に水酸化カルシウムと水と0.3〜1.4w/w%の塩化カルシウムと0.3〜1.4w/w%の塩化ナトリウムと、更に適当な酸アルカリ指示薬で作製されたものが好ましい。
【0057】
即ち、その他の副成分が混入すると、混合した際の混合物の流動性が悪くなり、成型・造粒する際の取り扱いが悪くなる場合があるので、前記した三成分又は四成分、更に要すれば酸アルカリ指示薬を加えた材料で作製することが望ましい。
【0058】
本発明の炭酸ガス吸収剤を適用できる吸入麻酔薬としては、セボフルラン、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル ジフルオロメチル エーテル(エンフルラン)、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)等を含有する、一般に麻酔ガスとして用いられているものであれば特に制限はないが、中でもセボフルランを含有するものが代表的である。
【0059】
本発明の炭酸ガス吸収剤は、水酸化カルシウムと塩化カルシウムと水と、又はこれらと塩化ナトリウムとのみで調製可能であるので、従来のものの如く水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等の、アルカリ金属の水酸化物や、アルカリ土類金属の水酸化物等を添加混合する必要がないので製造工程が簡便となるという利点も有している。また、本発明の炭酸ガス吸収剤に使用される水酸化カルシウムは、水酸化マグネシウムの如きマグネシウム化合物に比較して高純度のものを安価に購入できるため、水酸化マグネシウム等を使用する炭酸ガス吸収剤に比較して製造コストが低減できるという利点も有している。
【0060】
尚、炭酸ガス吸収剤を製造(成型)する場合は、錠剤又は粒の大きさを小さくすることにより、炭酸ガス吸収効率を上げる試みが行われるが、本発明に於いて、更に塩化ナトリウムを含有させた本発明の炭酸ガス吸収剤は、その径を大きくしても炭酸ガス吸収能保持時間の長いものが製造できる。例えば、塩化ナトリウムを含有しない場合には、直径4mmの炭酸ガス吸収剤の方が、直径5mmの炭酸ガス吸収剤よりも炭酸ガス吸収能保持時間の長いものが得られる。これに対し、塩化ナトリウムを含有させることにより、直径5mmの炭酸ガス吸収剤でも、塩化ナトリウムを含有しない直径4mm及び直径5mmの炭酸ガス吸収剤より更に炭酸ガス吸収能保持時間の長いものが得られる。実際の使用に当たっては、直径4mmのものよりも直径5mmのものの方が扱いにくいといったような、使い勝手には差はないが、通常後者の方が呼吸に対する流通抵抗は少ないという利点がある。更に、径が大きいものとすることにより、同じ量の材料から炭酸ガス吸収剤を成型する場合には、当然4mm径のものを成型するよりも、5mm径のものを成型する方が、成型時間(打錠時間)を短くすることができ、ひいては製造コストが上がらないという、優れた効果がある。
【0061】
また、本発明の炭酸ガス除去方法は、上記した如き本発明の炭酸ガス吸収剤を用いて、通常この分野で用いられる方法により呼吸ガスや麻酔ガスを処理〔例えば、麻酔器のキャニスター(炭酸ガス吸収用カラム)中に本発明の炭酸ガス吸収剤を充填したものに麻酔ガスを通気する等。〕すれば良く、麻酔ガスとしては、上記したものが好ましいものとして挙げられる。
【0062】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0063】
実施例1
(1)炭酸ガス吸収剤の調製
粉末状の水酸化カルシウム(Ca(OH)、和光純薬工業(株)製、純度97.5%)を市販の打錠機を用い、打錠硬度250gで直径4mm、高さ2.3mmの錠剤に成型した。得られた錠剤を市販の糖衣機にかけて、錠剤84w/w%に対して、塩化カルシウム・二水和物(CaCl・2HO、和光純薬工業(株)製)とエチルバイオレットを所定濃度溶解した水溶液を16w/w%の割合で噴霧含有させた。次いで、これをポリ袋中に密閉したものを80℃の恒温器中に15時間放置し、密閉加熱熟成により、硬度を900gにして、表1に示すような、4種の組成の、錠剤型炭酸ガス吸収剤を得た。尚、得られた炭酸ガス吸収剤中の水分含量(w/w%)を測定したところ、15w/w%であった。また、エチルバイオレットの含量は0.016w/w%であった。
【0064】
表1に於いて、No.1の錠剤が、従来の水酸化カルシウムと水を含有する炭酸ガス吸収剤である。No.2〜No.4が水酸化カルシウムと水と塩化カルシウムとを含有する、本発明の炭酸ガス吸収剤である。また、塩化カルシウムの含量は、無水の塩化カルシウムとしてNo.2は0.378w/w%、No.3は0.604w/w%、No.4は0.906w/w%である。
【0065】
【表1】

【0066】
(2)炭酸ガス吸収能力テスト
上記(1)で得た各炭酸ガス吸収剤の炭酸ガス吸収能力テストを以下の操作に従って行った。
炭酸ガス吸収剤810gをキャニスター(直径9cm、高さ15cm)に充填し、該キャニスターに酸素と炭酸ガスの混合ガス(CO濃度 4.6%)を間歇流通(一回換気量:400mL、換気回数:15回/分)し、通過したガス中の炭酸ガス濃度を赤外線炭酸ガス分析装置(機械名BIR−200、(株)ベスト測器製)で測定し、通過ガス中の炭酸ガス濃度が0.10%に達するまでの時間(炭酸ガス吸収能保持時間)を測定した。炭酸ガス吸収能保持時間が長い方が、長時間炭酸ガスを吸収する能力を保持していること、即ち炭酸ガス吸収能力が高いことを示す。
結果を図2に折れ線グラフ(−◆−)で示す。
【0067】
(3)麻酔薬の分解物生成率の測定
上記(1)で得た炭酸ガス吸収剤を用い、麻酔薬の分解物生成率の測定を以下の操作に従って行った。
炭酸ガス吸収剤1gを30mLのバイアル瓶に取り麻酔薬セボフルラン(丸石製薬(株)製、商品名:セボフレンTM)1.5mLを添加したのち、密栓し、40℃恒温槽で17時間接触反応させた後、気相部分1mLを採取し、ガスクロマトグラフィーにより、麻酔薬セボフルランの分解物生成率を測定した。分析は、島津GC−14B型ガスクロマトグラフィーを使用し、検出器FID、キャリャーガスはHe、流量50mL/min、試料注入口温度120℃、カラム恒温槽温度100℃、検出器温度180℃、H流量圧60KPa、空気流量圧50KPaの条件で測定した。カラムは、Dioctyl Phthalate 20% chromosorb W(AW−DMCS)60/80 meshを充填した3.2mmφ×2mのガラスカラムを使用した。
結果を図2に棒グラフで併せて示す。
【0068】
図2から明らかな如く、塩化カルシウムを含有する本発明の炭酸ガス吸収剤は、従来の水酸化カルシウムと水のみを含有する炭酸ガス吸収剤(図2で、塩化カルシウム・二水和物添加量が0.0%の場合)よりも長時間炭酸ガスを吸収する能力を保持しており(折れ線グラフ:−◆−)、炭酸ガスの吸収能力が高く、更に麻酔薬の分解物生成率(%)(棒グラフ)は明らかに低いことが判る。
【0069】
また、炭酸ガス吸収剤中の塩化カルシウム・二水和物の含有量は、0.5w/w%以上(無水物として0.378w/w%)が好ましいこと、並びに1.2%(無水物として0.906w/w%)程度の添加で、炭酸ガス吸収能はピークに達して飽和し、麻酔薬の分解も低値で平衡化することが判る。
【0070】
実施例2
(1)炭酸ガス吸収剤の調製
粉末状の水酸化カルシウム(Ca(OH)、和光純薬工業(株)製、純度97.5%)30kgと塩化カルシウム・二水和物(CaCl・2HO、和光純薬工業(株)製)158gとを良く混合した後、市販の打錠機を用い、打錠硬度250gで直径5mm、高さ2.3mmの錠剤に成型した。得られた錠剤を市販の糖衣機にかけて、錠剤87w/w%に対して、塩化カルシウム・二水和物(CaCl・2HO、和光純薬工業(株)製)と塩化ナトリウム(NaCl、和光純薬工業(株)製、純度99%)とエチルバイオレットを所定濃度溶解した水溶液を13w/w%の割合で噴霧含有させた。次いで、これをポリ袋中に密閉したものを50℃の恒温器中に2時間放置し、密閉加熱熟成により、硬度を1100gにして、表2に示すような、5種の組成の錠剤型炭酸ガス吸収剤を得た。
尚、得られた炭酸ガス吸収剤中の水分含量(w/w%)を測定したところ、13w/w%であった。また、エチルバイオレットの含量は0.00455w/w%であった。
【0071】
表2に於いて、No.1の錠剤が、水酸化カルシウムと水と塩化カルシウムを含有する、本発明の炭酸ガス吸収剤である。No.2〜No.5が水酸化カルシウムと水と塩化カルシウム及び塩化ナトリウムを含有する、本発明の炭酸ガス吸収剤である。また、各炭酸ガス吸収剤中の塩化カルシウム量は、無水の塩化カルシウムとして1.31w/w%で、塩化ナトリウム含量は、No.2で0.39w/w%、No.3で0.65w/w%、No.4で0.91w/w%、No.5で1.3w/w%である。
【0072】
【表2】

【0073】
(2)炭酸ガス吸収能力テスト
実施例1と同様の方法で、上記(1)で得た炭酸ガス吸収剤の炭酸ガス吸収能力テストを行った。
結果(炭酸ガス吸収能保持時間)を図3に折れ線グラフ(−◆−)で示す。
【0074】
(3)麻酔薬の分解物生成率の測定
上記(1)で得た炭酸ガス吸収剤を用い、実施例1と同様の方法で麻酔薬の分解物生成率の測定を行った。
結果を図3に棒グラフで併せて示す。
【0075】
図3から明らかな如く、本発明の水酸化カルシウムと水と塩化カルシウムを含有する炭酸ガス吸収剤に更に塩化ナトリウムを含有させたものは、更に長時間炭酸ガスを吸収する能力を保持しており(折れ線グラフ:−◆−)、炭酸ガスの吸収能力が高く、更に麻酔薬分解物生成率(%)(棒グラフ)は低下することが判る。
【0076】
また、炭酸ガス吸収剤中の塩化ナトリウムの含有量は、0.3w/w%以上、好ましくは0.65w/w%であること、並びに0.91w/w%程度の添加で、炭酸ガス吸収能はほぼピークに達し、麻酔薬分解能も低値で平衡化することが判る。
【0077】
実施例3
[炭酸ガス吸収剤の調製]
粉末状の水酸化カルシウム(Ca(OH)、和光純薬工業(株)製、純度97.5%)を市販の打錠機を用い、打錠硬度250gで直径4mm、高さ2.3mmの錠剤に成型した。得られた錠剤を市販の糖衣機にかけて、錠剤84w/w%に対して、5w/w%塩化カルシウム・二水和物(CaCl・2HO、和光純薬工業(株)製)と0.1w/w%エチルバイオレットを含有する水溶液を16w/w%の割合で噴霧含有させた。次いで、これをポリ袋中に密閉したものを80℃の恒温器中に15時間放置し、密閉加熱熟成により、硬度を900gにして、本発明の、塩化ナトリウムを含有しない錠剤型の炭酸ガス吸収剤を得た(wet品とする)。得られた錠剤の組成及び形状を表3に示す。
尚、得られた炭酸ガス吸収剤中の水分含量(w/w%)を測定したところ、15w/w%であった。また、エチルバイオレットの含量は0.016w/w%であり、塩化カルシウム含量は、二水和物として0.8w/w%、無水塩化カルシウムとして0.604w/w%である。
更に、得られた炭酸ガス吸収剤を、恒温器中で水分含量が1.0w/w%以下になるまで乾燥させたものを調製し、これをdry品とした。
【0078】
[炭酸ガス吸収剤の性能試験]
上記で得た炭酸ガス吸収剤の性能試験を下記の通り行った。結果を表3に併せて示す。
(1)麻酔薬の分解物生成率の測定
炭酸ガス吸収剤のwet品とdry品について、実施例1と同様の方法で、麻酔薬の分解物生成率(%)を測定した。結果を表3に併せて示す。
【0079】
(2)炭酸ガス吸収能力テスト
炭酸ガス吸収剤のwet品について、実施例1と同様の方法で、炭酸ガス吸収能力テストを行った。結果を表3に「炭酸ガス吸収能保持時間」として示す。
【0080】
(3)一酸化炭素の発生量の測定
炭酸ガス吸収剤のdry品1gを30mLのバイアル瓶に取り、麻酔薬セボフルラン、エンフルラン(大日本製薬(株)製、商品名:エトレンTM)又はイソフルラン(大日本製薬(株)製、商品名:フォーレンTM)0.5mLを添加したのち、密栓し、37℃恒温槽で18時間接触反応させた後、バイアル瓶の口に一酸化炭素測定器(機器名TPA−5000、光明理化学製)をあてて、生成した一酸化炭素量を測定した。
結果を表3に、「CO発生量(dry品)」として示す。
【0081】
(4)発熱試験
炭酸ガス吸収剤のwet品とdry品について、42mmφ×150mmステンレスカラムに炭酸ガス吸収剤150gを充填し、カラムの中央部に温度計を設置し、酸素流量1L/分で麻酔薬セボフルランは6.6%、エンフルランは7.2%、イソフルランは7.1%濃度でカラムに流通させ、発熱温度を調べた。
結果を表3に、「発熱」として示す。
【0082】
(5)粉末発生率の測定
精秤した炭酸ガス吸収剤10gを直径30mm×長さ10cmのポリプロピレン容器に入れ密栓し横に倒して、往復式振盪機(ヤマト科学(株))に固定し振盪幅30mm、振盪数120回/minの条件で7時間振盪した。これをふるい(12メッシュ篩、篩目寸法1.4mm)にかけ、12メッシュ以下の粉末発生率(w/w%)を測定した。
【0083】
(6)使用後の退色(変色)の検査
炭酸ガス吸収剤810gをキャニスター(直径9cm、高さ15cm)に充填し、該キャニスターに酸素と炭酸ガスの混合ガス(CO濃度 4.6%)を4時間かけて間歇流通(一回換気量:400mL、換気回数:15回/分)した。炭酸ガス吸収剤を回収し、着色した部分について、ミノルタ色彩色計CR−321を用い、プロトコルに従って、発色の表色モード(Lab)のL値(明度%)を測定した。
尚、測定は検査前、検査直後、及び検査1日後の炭酸ガス吸収剤について行った。
結果を表4に示す
【0084】
実施例4
[錠剤型炭酸ガス吸収剤の調製]
粉末状の水酸化カルシウム(Ca(OH)、和光純薬工業(株)製、純度97.5%)30kgと塩化カルシウム・二水和物(CaCl・2HO、和光純薬工業(株)製)158gとを良く混合した後、市販の打錠機を用い、打錠硬度250gで直径5mm、高さ2.3mmの錠剤に成型した。得られた錠剤を市販の糖衣機にかけて、錠剤87w/w%に対して、10w/w%塩化カルシウム・二水和物(CaCl・2HO、和光純薬工業(株)製)と7w/w%塩化ナトリウム(NaCl、和光純薬工業(株)製、純度99%)と0.035w/w%エチルバイオレットを所定濃度溶解した水溶液を13w/w%の割合で噴霧含有させた。次いで、これをポリ袋中に密閉したものを50℃の恒温器中に2時間放置し、密閉加熱熟成により、硬度を1120gにして、本発明の、塩化ナトリウムを含有する錠剤型の炭酸ガス吸収剤を得た(wet品)。得られた錠剤の組成及び形状を表3に示す。尚、得られた炭酸ガス吸収剤中の水分含量(w/w%)を測定したところ、13w/w%であった。また、塩化カルシウム含量は、二水和物として初めの粉末混合で0.435w/w%と噴霧添加で1.3w/w%(合計1.735w/w%、即ち無水塩化カルシウムとして1.31w/w%)である。塩化ナトリウムの含量は0.91w/w%である。また、エチルバイオレットの含量は0.00455w/w%である。
更に、得られた炭酸ガス吸収剤を、恒温器中で水分含量が1.0w/w%以下になるまで乾燥させたものを調製し、これをdry品とした。
【0085】
[炭酸ガス吸収剤の性能試験]
得られた炭酸ガス吸収剤について、実施例3と同様の方法により、麻酔薬の分解物生成率の測定、炭酸ガス吸収能力テスト、一酸化炭素の発生量の測定、発熱試験、粉末発生率の測定を行った。結果を表3に併せて示す。
また、実施例3と同様の方法により、使用後の退色(変色)の検査を行った。結果を表4に併せて示す。
【0086】
比較例1
粉末状の水酸化カルシウム3kgと粒状の水酸化ナトリウム140gを良く混合した後、市販の打錠機を用い、打錠硬度250gで直径5mm、高さ2.3mmの錠剤に成型した。得られた錠剤を市販の糖衣機にかけて、錠剤84w/w%に対して0.075w/w%エチルバイオレット水溶液を16w/w%の割合で噴霧含有させた。次いで、これをポリ袋中に密閉したものを80℃の恒温器中に15時間放置し、密閉加熱熟成により、硬度を1020gにして、炭酸ガス吸収剤を得た。得られた錠剤の組成及び形状を表3に併せて示す。
尚、得られた炭酸ガス吸収剤中の水分含量(w/w%)を測定したところ、15w/w%であった。
得られた炭酸ガス吸収剤について、実施例3と同様の方法により、麻酔薬の分解物生成率の測定、炭酸ガス吸収能力テスト、一酸化炭素の発生量の測定、発熱試験、粉末発生率の測定を行った。結果を表3に併せて示す。
また、実施例3と同様の方法により、使用後の退色(変色)の検査を行った。結果を表4に併せて示す。
【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
表3の結果から明らかな如く、本発明の炭酸ガス吸収剤は、比較例1の炭酸ガス吸収剤と比較して、wet品でもdry品でも麻酔薬の分解物生成率は明らかに低いことが判る(実施例3、実施例4)。また、塩化ナトリウムを含有させることにより、更に麻酔薬分解物生成率が低くなることが判る(実施例4)。
【0090】
比較例1の炭酸ガス吸収剤(dry品)は、麻酔薬と接触することにより一酸化炭素(CO)が大量に発生したが、実施例3及び実施例4で得られたdry品では全く発生しなかった。尚、実施例3及び実施例4で得られたwet品を用いて同様に一酸化炭素の発生量の測定を行った結果、やはりdry品と同様に、全く一酸化炭素の発生が無かったことを確認している。
以上のことより、本発明の炭酸ガス吸収剤は、特に麻酔ガス中の炭酸ガスを吸収するためのものとして優れていることが判る。
【0091】
更に、比較例1の炭酸ガス吸収剤(dry品)は、麻酔薬と接触させることにより30℃以上の発熱が起こったが、本発明の炭酸ガス吸収剤は、wet品もdry品も、麻酔薬と接触させた場合に発熱する現象は起こらなかった。
また、本発明の炭酸ガス吸収剤(wet品)の粉末の発生率は、比較例1の炭酸ガス吸収剤のそれより低かった。
【0092】
また、炭酸ガス吸収剤の使用に当たっては、その炭酸ガス吸収剤が乾燥したものか否かを色で判別できると便利である。
表3から明らかなとおり、本発明の炭酸ガス吸収剤は乾燥することによって発色した(実施例3、実施例4)が、比較例1の炭酸ガス吸収剤は発色しなかった。
【0093】
更に表4から明らかな如く、本発明の炭酸ガス吸収剤(実施例3、実施例4)は、検査前は白色であったものが、炭酸ガスを吸収した検査直後では紫色に発色し、その発色は、検査後1日たっても保たれていた。しかし、比較例1の炭酸ガス吸収剤は、使用前は白色で、炭酸ガスを吸収した直後は紫色に発色したが、その後1日おくと退色して白色になってしまい、その炭酸ガス吸収剤が消耗したものか、吸収能のあるものかが判別できなくなってしまった。
これらのことより、本発明の炭酸ガス吸収剤は、従来品に比較して、高能力で安全且つ取扱いやすいことが判る。
【0094】
尚、炭酸ガス吸収剤は使用を繰り返す間に乾燥してくるが、この乾燥品を使用したことによって、炭酸ガス吸収能の低下及び麻酔ガスの分解や異常発熱等の問題が起こったことが知られている。本発明の炭酸ガス吸収剤(実施例3、実施例4)は、wet品は勿論、dry品においても、麻酔薬の分解物生成率及び一酸化炭素発生率が低く、更に使用によっても異常発熱が起こらないという優れた特長を有する。
【0095】
実施例5
(1)塩化ナトリウムを含有しない、本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤の調製
粉末状の水酸化カルシウム(Ca(OH)、和光純薬工業(株)製、純度97.5%)を市販の打錠機を用い、打錠硬度250gで直径4mm、高さ2.3mmの錠剤に成型したものと、直径5mm、高さ2.3mmの錠剤に成形したものを得た。得られた錠剤を市販の糖衣機にかけて、錠剤84w/w%に対して、塩化カルシウム・二水和物(CaCl・2HO、和光純薬工業(株)製)5w/w%とエチルバイオレット0.1w/w%を含有する水溶液を16w/w%の割合で噴霧含有させた。これをポリ袋中に密閉したものを80℃の恒温器中に15時間放置して、錠剤型炭酸ガス吸収剤を得た。得られた吸収剤の組成は、直径4mmのものも、直径5mmのものも、水酸化カルシウム84w/w%、水15w/w%、及び塩化カルシウム・二水和物0.8w/w%(無水塩化カルシウムとして0.604w/w%)である。また、エチルバイオレットの含量は0.016w/w%である。
【0096】
(2)塩化ナトリウムを含有する、本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤の調製
粉末状の水酸化カルシウム(Ca(OH)、和光純薬工業(株)製、純度97.5%)を市販の打錠機を用い、打錠硬度250gで直径5mm、高さ2.3mmの錠剤に成形したものを得た。得られた直径5mm錠剤を市販の糖衣機にかけて、錠剤89w/w%に対して、10w/w%塩化カルシウム・二水和物(CaCl・2HO、和光純薬工業(株)製)と5w/w%塩化ナトリウム(NaCl、和光純薬工業(株)製、純度99%)と0.035w/w%エチルバイオレットを含有する水溶液を11w/w%の割合で噴霧含有させた。これをポリ袋中に密閉したものを50℃の恒温器中に2時間放置して、錠剤型の炭酸ガス吸収剤を得た。
尚、得られた炭酸ガス吸収剤中の水分含量(w/w%)を測定したところ、糖衣機により含浸させた水分含量と殆ど同じ10w/w%であった。水酸化カルシウムの含量は88w/w%、塩化カルシウム含量は、二水和物として1.0w/w%、無水塩化カルシウムとして0.755w/w%である。塩化ナトリウムの含量は0.5w/w%である。また、エチルバイオレットの含量は0.00385w/w%である。
【0097】
上記(1)及び(2)で得られた炭酸ガス吸収剤の炭酸ガス吸収能力テストを以下の操作に従って行った。
炭酸ガス吸収剤810gをキャニスター(直径9cm、高さ15cm)に充填し、該キャニスターに酸素と炭酸ガスの混合ガス(CO濃度 4.6%)を間歇流通(一回換気量:400mL、換気回数:15回/分)し、通過したガス中の炭酸ガス濃度を赤外線炭酸ガス分析装置(機械名BIR−200、(株)ベスト測器製)で測定した。
【0098】
結果を図4に示す。図4に於いて、横軸は混合ガスの流通時間を、縦軸は各流通時間における、通過した混合ガス中の炭酸ガス濃度(CO通過濃度(%))を夫々示し、−●−は直径5mmの錠剤型炭酸ガス吸収剤(NaCl無添加)、−○−は直径4mmの本発明の炭酸ガス吸収剤(NaCl無添加)、−△−は直径5mmの錠剤型炭酸ガス吸収剤(NaCl、0.5w/w%含有)について得られた結果を夫々示す。
【0099】
図4から明らかな如く、本発明の直径4mmの炭酸ガス吸収剤(NaCl無添加)の方が、本発明の5mmの炭酸ガス吸収剤(NaCl無添加)よりも通過炭酸ガス0%の炭酸ガス吸収能保持時間が長く、炭酸ガス吸収剤として優れていることが判る。
また、図4から明らかな如く、更に塩化ナトリウムを含有する本発明の炭酸ガス吸収剤は、直径5mmのものであっても、他の本発明の炭酸ガス吸収剤(NaCl無含有)の直径4〜5mmの炭酸ガス吸収剤よりも、更に通過炭酸ガス0%の吸収能保持時間が長く、炭酸ガス吸収剤として更に優れていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上述べた如く、本発明は、従来の水酸化カルシウムとアルカリ金属の水酸化物とを含む炭酸ガス吸収剤に比較して、呼吸ガスや麻酔ガス中の炭酸ガスの吸収能力は高く維持され、且つ例えばセボフルラン等の麻酔薬の分解が少なく、しかも材料の混合操作等を省略できるためコストの低下や製造工程の簡易化が可能な炭酸ガス吸収剤を提供するものであり、斯業に貢献するところ大なる発明である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤の、形状の例を示したものである。
【図2】実施例1で得られた、錠剤型の炭酸ガス吸収剤中の塩化カルシウム濃度(塩化カルシウム添加量(%))と、麻酔薬の分解物生成率(%)との関係、及び炭酸ガス吸収能保持時間(分)との関係を示すグラフである。
【図3】実施例2で得られた、錠剤型の炭酸ガス吸収剤中の塩化ナトリウム濃度(塩化ナトリウム添加量(%))と、麻酔薬の分解物生成率(%)との関係、及び炭酸ガス吸収能保持時間(分)との関係を示すグラフである。
【図4】実施例5で得られた、直径4mm及び直径5mmの本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤(NaCl無添加)、及び直径5mmの本発明の錠剤型炭酸ガス吸収剤(NaCl含有)を用いて、炭酸ガスの吸収能力を調べて得られた、混合ガス中の炭酸ガス吸収能保持時間(分)と混合ガス中の炭酸ガス濃度(CO通過濃度(%))との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0102】
図4に於いて、−●−は直径5mmの錠剤型炭酸ガス吸収剤(NaCl無添加)、−○−は直径4mmの本発明の炭酸ガス吸収剤(NaCl無添加)、−△−は直径5mmの錠剤型炭酸ガス吸収剤(NaCl 0.5w/w%含有)について得られた結果を夫々示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化カルシウムと水と0.3〜1.4w/w%の塩化カルシウムとを含有し、且つアルカリ金属の水酸化物を実質的に含まないことを特徴とする、炭酸ガス吸収剤。
【請求項2】
水酸化カルシウムと水と0.3〜1.0w/w%の塩化カルシウムとを含有する、請求項1に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項3】
水酸化カルシウムを79.9〜85.7w/w%含有する、請求項2に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項4】
水を13.0〜19.0w/w%含有する、請求項2又は3に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項5】
水酸化カルシウムを77.8〜89.7w/w%、水を10.0〜21.0w/w%、塩化カルシウムを0.3〜1.0w/w%含有する、請求項1に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項6】
更に酸アルカリ指示薬を含有する、請求項2〜5の何れかに記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項7】
更に0.3〜1.4w/w%の塩化ナトリウムを含有する、請求項1に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項8】
水酸化カルシウムを77.8〜89.7w/w%含有する、請求項7に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項9】
水を8.0〜21.0w/w%含有する、請求項7又は8に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項10】
更に酸アルカリ指示薬を含有する、請求項7〜9の何れかに記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項11】
水酸化カルシウムを81.1〜89.4w/w%、水を9.0〜16.0w/w%、塩化カルシウムを0.8〜1.4w/w%、塩化ナトリウムを0.7〜1.0w/w%、酸アルカリ指示薬を0.004〜0.01w/w%含有する、請求項7又は10に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項12】
水酸化カルシウムを84.65〜84.75w/w%、水を9.0〜16.0w/w%、塩化カルシウムを1.31w/w%、塩化ナトリウムを0.91w/w%含有する、請求項11に記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項13】
固体状で且つ平均硬度が600〜1600gである、請求項1〜12の何れかに記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項14】
固体状の吸収剤が、粒状又は錠剤型である、請求項1〜13の何れかに記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項15】
吸収剤が錠剤型であり、当該錠剤型の直径が1〜5mmで厚みが1〜3mmである、請求項1〜14の何れかに記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項16】
吸収剤が錠剤型であり、当該錠剤型の直径が3〜4mmで厚みが1.5〜2.8mmである、請求項1〜14の何れかに記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項17】
アルカリ金属の水酸化物を該吸収剤中に0.01w/w%以下しか含有しない、請求項1〜16の何れかに記載の炭酸ガス吸収剤。
【請求項18】
請求項1〜17の何れかに記載の炭酸ガス吸収剤を用いて呼吸ガスや麻酔ガスを処理することを特徴とする、麻酔ガス中の炭酸ガス除去方法。
【請求項19】
麻酔ガスがフルオロ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルエーテル(セボフルラン)を含むものである、請求項18に記載の麻酔ガス中の炭酸ガス除去方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−142280(P2006−142280A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267943(P2005−267943)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【Fターム(参考)】