説明

炭酸ガス検知用インキ組成物、及びこれを用いた炭酸ガスインジケーター、並びに炭酸ガスインジケーターを配置した包装体

【課題】高温滅菌処理後でも、外観不良及び色調不良が発生せず、耐熱水性が良好な指示部を有する炭酸ガスインジケーターを提供する。
【解決手段】pH指示薬、耐熱水性を有するバインダー樹脂、及び溶媒を含有する炭酸ガス検知用インキ組成物を使用する。バインダー樹脂は、カルボキシル基を有し、該カルボキシル基により水性化もしくは水分散された、分子量が10000ないし90000の酸性樹脂を使用する。炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて支持体上に指示部を印刷し、支持体及び指示部のうち少なくとも一方が、炭酸ガス吸収剤を含み、炭酸ガス吸収剤がアミン類である、炭酸ガスインジケーター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料、及び薬品等を長期間保存するためのガス置換包装中の置換されたガス雰囲気が保持されていることを検出するための炭酸ガス検知用インキ組成物、これを用いた炭酸ガスインジケーター、及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭酸ガスを含む置換ガスを封入したガス置換包装のピンホール、及びシール不良の発生によるガス雰囲気の変化を簡単に確認し得る種々の炭酸ガスインジケーターが上市されている。
【0003】
この炭酸ガスインジケーターは、pH指示薬を含み、周囲雰囲気中の炭酸ガスが十分に存在すると、炭酸ガスインジケーター中の水に炭酸ガスが溶けて弱い酸性を示し、pH値が低くなり、これに伴って、pH指示薬の色調が変化する。
【0004】
例えば外装体内に、内容物と共に、炭酸ガスインジケーター及び炭酸ガスを封入した包装体の場合、外装体にピンホール等が発生して炭酸ガスが漏れると、炭酸ガスインジケーター周囲雰囲気中の炭酸ガス濃度が低下して、pH値が上がり、これに伴ってpH指示薬の色調が変化する。このように、炭酸ガスインジケーターを用いると、このpH指示薬の色調の変化を利用して、炭酸ガスインジケーター周囲雰囲気の炭酸ガス濃度の変化を視覚的に検知することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような炭酸ガスインジケーターとして、バインダー樹脂とpH指示薬を含む炭酸ガスインジケーター用インキを用い、支持体上にpH指示部を印刷したものがある。このようなpH指示部は、包装体に用いられる種々の外装体などにも印刷できるので、見やすく、便利である。pH指示部の鮮明な色調変化を保持するには水分の存在が不可欠であるので、バインダー樹脂としては、水に溶解または分散するものが使用されている。
【0006】
しかしながら、包装体を高温滅菌処理した場合に、これらの炭酸ガスインジケーターは、熱水のアタックによりその外観不良が発生したり、色調が不鮮明になり視覚的検知が困難になるという問題があった。
【特許文献1】国際公開第01/044385号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、高温滅菌処理後でも、外観不良及び色調不良が発生せず、耐熱水性が良好な指示部を有する炭酸ガスインジケーターを提供することにある。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、高温滅菌処理後でも、外観不良及び色調不良が発生せず、耐熱水性が良好な指示部を形成し得る炭酸ガス検知用インキ組成物を提供することにある。
【0009】
更に、本発明の第3の目的は、高温滅菌処理後でも、外観不良及び色調不良が発生せず、耐熱水性が良好な指示部をもつ炭酸ガスインジケーターを備えた包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1に、pH指示薬、耐熱水性を有するバインダー樹脂、及び溶媒を含有することを特徴とする炭酸ガス検知用インキ組成物を提供する。
【0011】
本発明は、第2に、支持体と、及び該支持体上に、pH指示薬、耐熱水性を有するバインダー樹脂、及び溶媒を含有する炭酸ガス検知用インキ組成物を印刷された指示部とを具備することを特徴とする炭酸ガスインジケーターを提供する。
【0012】
本発明は、第3に、支持体と、及び該支持体上に、pH指示薬、耐熱水性を有するバインダー樹脂、及び溶媒を含有する炭酸ガス検知用インキ組成物を印刷された指示部とを有する炭酸ガスインジケーターを、炭酸ガスを含むガスを封入した外装体内に配したことを特徴とする包装体を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明を用いると、炭酸ガスインジケーターの指示部が、高温滅菌処理後でも、その外観不良及び色調不良が発生せず、良好な耐熱水性,及び二酸化炭素濃度に対する応答性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の炭酸ガス検知用インキ組成物は、pH指示薬と、バインダー樹脂と、バインダー樹脂を溶解または分散し得る溶媒とを含有し、バインダー樹脂が耐熱水性を有することを特徴とする。
【0015】
耐熱水性を有するバインダー樹脂は、好ましくは、カルボキシル基を有し、このカルボキシル基により水溶化もしくは水分散可能な酸性樹脂、ポリエステル樹脂骨格とアミノ末端を有するポリエステル樹脂、あるいはポリエーテル樹脂骨格とアミノ末端を有するポリエーテル樹脂である。
【0016】
上記酸性樹脂は、10000ないし90000の分子量を有する。また、上記ポリエステル樹脂、若しくは上記ポリエーテル樹脂は、10000ないし50000の分子量を有する。
【0017】
また、本発明の炭酸ガスインジケーターは、支持体と、支持体上に上記インキ組成物により形成された指示部とを有する。
【0018】
さらに、本発明の包装体は、炭酸ガスインジケーターが、炭酸ガスを含むガスを封入した外装体内に配された構成を有する。
【0019】
本発明によれば、使用される炭酸ガス検知用インキ組成物のバインダー樹脂が、カルボキシル基を有し、このカルボキシル基により水溶化もしくは水分散可能な酸性樹脂、ポリエステル樹脂骨格とアミノ末端を有するポリエステル樹脂、あるいはポリエーテル樹脂骨格とアミノ末端を有するポリエーテル樹脂であることにより、この炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて得られた指示部は耐熱水性が良好となる。このため、指示部は、高温滅菌処理後でも色調の変化が鮮明であり、かつ外観不良を発生せず、置換したガス雰囲気中の炭酸ガス濃度の変化を指示部の色調が炭酸ガスがない時の色に近づくことにより容易に判断し得、包装体のピンホール、及びシール不良の発生を簡単に確認することができる。
【0020】
好ましくは、炭酸ガスインジケーターを構成し得る例えば支持体、指示部、及び他の任意の部材の少なくとも1つは、炭酸ガス吸収剤を含み得る。
【0021】
さらに、炭酸ガス吸収剤は、包装体を構成し得る部材例えば炭酸ガスインジケーター、外装体、及び他の任意の部材の少なくとも1つに含まれ得る。
【0022】
他の任意の部材としては、例えば炭酸ガスを発生する薬剤を収容する炭酸ガスバリア一次容器の本体、口栓部封止用積層フィルム、及び炭酸ガスを含むガスを封入した外装体等があげられる。
【0023】
包装体を構成し得る部材が炭酸ガス吸収剤を含有することにより、高温滅菌時に発生する過剰な炭酸ガスを除去することが可能となることから、高温滅菌処理後でも応答性が良好であるため、包装体のピンホール、シール不良の発生を感度良く検知することができる。
【0024】
バインダー樹脂の好ましい添加量は、pH指示薬の重量に対し、100ないし1000重量%である。100重量%未満であると、指示部の支持体への密着が不十分となる傾向があり、1000重量%を超えると、指示部の色調が不明瞭となる傾向がある。
【0025】
pH指示薬としては、炭酸ガスの影響で色調変化を伴うもの、またはアルカリ性物質の濃度変化に応じたpHの変動に対して色調変化を伴うものであれば、どのようなものでも使用できる。
【0026】
下記表1に好ましいpH指示薬及びその呈色範囲を示す。
【表1】

【0027】
特に好ましいpH指示薬としては、安全性及び呈色反応の変化がわかりやすいことなどからパラキシレノールブルーがあげられる。
【0028】
本発明のインキ組成物には、好ましくは、0より大きく5重量%以下のアルカリ性物質を添加することができる。5重量%を超えるアルカリ性物質を添加した場合、印刷後の塗膜の吸湿性が著しく、ロール取られ等加工に不具合を生じる可能性がある。
【0029】
本発明に用いられるアルカリ性物質は、水酸化アルカリ、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリ及びアンモニア等から選択することができる。
【0030】
炭酸ガス吸着剤としては、炭酸ガスを吸収するものであれば、特に限定はないが、アミン類が好適に用いられる。
【0031】
このようなアミン類としては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンジグリコールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−(エチルアミノ)−エタノール、2−(メチルアミノ)−エタノール、2−(ジエチルアミノ)−エタノール、エチレンジアミン、及びジエチレントリアミンなどが使用可能である。添加量は、好ましくは、0より大きく10重量%以下である。
【0032】
アミン類の添加量は、10重量%を超えると、印刷後の塗膜の吸湿性が著しく、ロール取られ(例えば印刷装置内のフィルムが走行する経路上にあるロールに印刷面が接触して塗膜が転移する現象)やブロッキング、裏移り等の不具合が生じ難くなる傾向がある。
【0033】
溶媒としては、本発明のインキ組成物の各成分を均一にかつ安定に溶解または分散することのできるものが選択され、例えばエーテル類、芳香族炭化水素、エステル類、アルコール類、及びケトン類等が挙げられる。特に、アルコール類が好ましい。また、色素、アルカリ性物質等を溶解させてインキ組成物とし、且つインジケーターとしての良好な発色を得るためには、水が含まれることが好ましい。
【0034】
バインダー樹脂は、pH指示薬等の構成成分を支持体上に固着する結合剤として使用するもので、印刷層形成後、あるいは高温滅菌処理後などに水を吸って膨潤したり、水に溶解したりするような樹脂は不適であり、外観を維持した上で水を保持するような樹脂を用いる。
【0035】
バインダー樹脂は、pH指示薬、アルカリ性物質、吸水性粉末を支持体上に固着するために使用されるもので、酸性樹脂としては、カルボキシル基を有する水性ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂等が挙げられる。その分子量は、10000ないし90000であることが好ましい。分子量がこの範囲を下回ると印刷物がブロッキングする恐れが生じ、上回ると、インキの再溶解性が劣る問題が生じる傾向がある。
【0036】
また、バインダー樹脂として使用可能なアミノ末端を含有するバインダー樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂等が挙げられる。これにより、耐熱水性を高めることができる。
【0037】
アミノ末端を含有するバインダー樹脂の分子量は、10000ないし50000であることが好ましい。分子量がこの範囲を下回ると、印刷物がブロッキングするおそれが生じ、上回るとインキの再溶解性が劣る問題が生じる。
【0038】
また、これらのバインダー樹脂に加えて架橋剤を添加することにより、より耐熱水性を高めることができる。そのような架橋剤としては、水性ポリイソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、フェノール系硬化剤、メラミン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、ジアルデヒド系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤等が適用可能である。
【0039】
本発明の炭酸ガス検知用インキ組成物は、さらに吸水剤を含有し得る。
【0040】
これにより、指示部となるインキ層中に水などの溶媒を保持して炭酸ガスの吸収を容易にせしめ、pH指示薬の呈色反応を促進させることができる。吸水剤としては、水等の溶媒を含んだときに極端な酸性或いはアルカリ性を示さないものが選択され、例えばでんぷん、カオリン、合成シリカ、ガラス、微結晶セルロース、イオン交換セルロース、及びケイ酸アルミニウム等を用いることができる。
【0041】
また、本発明の炭酸ガス検知用インキ組成物は、さらに多価アルコールを含むことが好ましい。多価アルコールは保湿剤として作用し、指示部となるインキ層中に水等の溶媒を保持して炭酸ガスの吸収を容易にせしめ、pH指示薬の呈色反応を促進させることができる。
【0042】
多価アルコールとしては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコール等が使用可能である。より好ましくはグリセリンを使用することができる。
【0043】
多価アルコールの添加量は、インキ組成物に1重量%〜10重量%が好ましい。多価アルコールの割合が1重量%未満であると、インジケーターの発色スピードが不十分となる傾向がある。一方で、多価アルコールの割合が10重量%を超えても、効果は変わらない。
【0044】
上記表1に示すpH指示薬は、指示薬そのものの色調の変化で判断するだけでなく、他の色の色素との混色による色調の変化で判断することができる。
【0045】
このような目的で、本発明の炭酸ガス検知用インキ組成物には、着色剤を添加することができる。
【0046】
着色剤を添加して、炭酸ガス検知用インキ組成物の色と混色させることにより、例えば指示薬そのものの色調の変化が視覚的に判断しにくいものであるとき、あるいはデザイン上所望の色調でないとき、視覚的に判断しやすい色調、あるいはデザイン上所望の色調に変化させることができる。
【0047】
また、同様の目的で、白以外の着色された支持体を適用し、その上に、本発明の炭酸ガス検知用インキ組成物を用いた指示部を設けることができる。
【0048】
着色剤としては、例えば食用赤色2号(アマランス)、食用赤色3号(エリスロシン)、食用赤色40号(アルラレッドAC)、食用赤色102号(ニューコクシン)、食用赤色104号(フロキシン)、食用赤色106号(アシッドレッド)、及び天然系コチニール色素等の赤色着色剤、食用黄色4号(タートラジン)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF)、及び天然系紅花黄色素等の黄色着色剤、食用青色1号(ブリリアントブルーFCF)、及び食用青色2号(インジゴカルミン)等の青色着色剤があげられる。
【0049】
また、インキ組成物に着色剤を添加する以外に、支持体として着色されたものを用いることにより、同様の色調の変化が得られる。
【0050】
さらに、この他インキの塗工性向上のため、炭酸ガス検知用インキの発色に影響を与えない範囲で各種薬剤例えば界面活性剤、ニス、コンパウンド、乾燥抑制剤、及びドライヤー等を添加することも可能である。
【0051】
支持体へのインキの塗布方法としては、印刷法例えばスクリーン印刷法、凹版印刷法、及びグラビア印刷法等や、コーティング法例えばロールコーティング、スプレーコーティング、及びディップコーティング等が好適に使用される。
【0052】
本発明に用いられる指示部は、インキ組成物の塗布量が比較的多く、一定であることが望まれることから、印刷法を用いることが好ましい。
【0053】
本発明に用いられる指示部を炭酸ガスバリア一次容器、口栓部封止積層フィルム、外装体に印刷し、本発明のインジケーターを有する包装体を作成することができる。
【0054】
例えば支持体に指示部を連続して印刷し、ヒートシール及び切断することにより包装袋を加工する場合には、支持体が巻き取り供給され得ることから、グラビア印刷やフレキソ印刷が適している。
【0055】
支持体としては、本発明のインキ組成物と反応せず、しかも試薬の呈色を阻害しないものが選択され得る。このような支持体として、例えば紙、合成紙、不繊布または合成樹脂フィルムを用いることができる。耐熱水性を考慮すれば主に合成樹脂フィルムが好適に適用される。例えばポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のフィルム、及びこれらフィルムにシリカ、あるいはアルミナ蒸着層を設けた透明蒸着フィルム等を、目的、使用形態に合わせて用いることができる。
【0056】
また、指示部は、文字、絵柄等のパターンを有するインキ層からなることが好ましい。
【0057】
特に指示部として文字を選択した場合、商品名等を印刷したラベルと兼用することもできる。さらに指示部を見やすくするために支持体を適宜着色しても良い。
【0058】
本発明に用いられる炭酸ガスインジケーターの使用形態としては、(1)食品、飲料、薬品等の内容物を収納する炭酸ガスバリア性材料からなる容器内を炭酸ガス雰囲気とし、容器内に炭酸ガスインジケーターを形成する方法、(2)口栓つき炭酸ガスバリア一次容器の内側に炭酸ガスを発生する薬剤等の内容物を充填し、口栓部に炭酸ガスインジケーターを形成する方法、(3)内容物を収容するガス透過性材料からなる容器を炭酸ガスバリア性材料からなる外装体で包装し、該外装体内を炭酸ガス雰囲気にすると共に外装体内に炭酸ガスインジケーターを形成する方法を例示することができる。
【0059】
より具体的には、上記(1)の場合、炭酸ガスインジケーターを配置する方法としては、例えば合成樹脂フィルムからなる支持体に印刷した炭酸ガスインジケーターを単に容器内に入れる方法、容器内面に炭酸ガスインジケーターを接着する方法、または容器を構成する材料を支持体とすることによって容器内面に上述のインキ組成物を直接印刷する方法がある。
【0060】
上記(2)の場合、前述の炭酸ガスインジケーターの配置する方法としては、口栓封止フィルムを構成する材料を支持体として印刷する方法がある。
【0061】
一方、上記(3)の場合、前述の炭酸ガスインジケーターの配置は、容器の外面、容器と外装体の間の空間部、及び外装体の内面とすることができる。容器の外面または外装体の内面に炭酸ガスインジケーターを配置する方法としては、該インジケーターをこれらの面に接着する方法、あるいは本発明に用いられるインキ組成物を直接これらの面に印刷する方法がある。
【0062】
なお、上記(1)および(2)におけるガスバリヤー性材料からなる容器の内面、上記(3)におけるガス透過性容器の外面又はガスバリヤー性材料からなる外装体の内面にインキ組成物を直接印刷する場合は、フィルムにインキ組成物を印刷後、印刷面をガス透過性フィルムで被う必要があり、被覆した場合は内容物又は容器との接触がなく、衛生的であり且つ指示部の摩耗も防ぐことができる。
【0063】
本発明の炭酸ガスインジケーターが適用され得る食品、飲料、及び薬品としては、高温滅菌処理が必要で、なおかつ酸素と接触して変質するおそれのあるもの、あるいは炭酸ガスの放出によって、品質の劣化や薬効が失われるおそれのものなどがある。
【0064】
ここでは、炭酸ガスバリア性材料として、室温約23℃、相対湿度約40%で、50(ml/m・24時間)以下の炭酸ガス透過率を有する材料を使用する。
【0065】
また、炭酸ガス透過性材料として、室温約23℃、相対湿度約40%RHで、500(ml/m・24時間)以上の炭酸ガス透過率を有する材料を使用する。
【0066】
炭酸ガス透過性材料は、炭酸ガス透過率が500(ml/m・24時間)より低いと、炭酸ガス雰囲気変化へ対する応答が遅くなり、判定を誤るおそれがある。
【0067】
また、例えば包装体を構成する場合、炭酸ガスバリア性材料の炭酸ガス透過率が50(ml/m・24時間)より高いと、包装体内の炭酸ガス雰囲気を保持することが困難となる傾向がある。
【0068】
本発明に使用可能な炭酸ガス透過率が50(ml/m・24時間)以下の樹脂フィルムとしては、ポリエステル(PET)フィルムやナイロン(Ny)フィルム等の合成樹脂からなる基材フィルム上にシリカやアルミナ等を蒸着した透明蒸着フィルム、及びポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVOH)フィルム等があげられる。
【0069】
これらのフィルムは単独であるいは積層して使用することができる。また、使用目的に応じた強度や耐熱性等を得るために他の樹脂フィルムを積層することができる。例えば、突き刺し強度を得るために、ナイロンフィルム等を積層することができる。
【0070】
本発明に用いる炭酸ガス透過率が500(ml/m・24時間)以上であるフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン類があげられる。なお、低密度ポリエチレンや未延伸ポリプロピレンはヒートシール性を有しており、包装袋内層としてより好適である。
【0071】
以下、図面を参照し、本発明を具体的に説明する。
【0072】
図1は、本発明にかかる炭酸ガスインジケーターの第1の例を表す正面図、図2はその断面図である。
【0073】
図1及び図2に示すように、このインジケーター10は、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムからなる支持体1の両面に、pH指示薬と、バインダー樹脂と、バインダー樹脂を溶解または分散し得る溶媒とを含有する炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて印刷された指示部2、その周囲を炭酸ガス透過性を有する例えば多孔性のフィルム3で包囲した構成を有する。
【0074】
このインジケーターの指示部2は、通常の空気中では、紫色を呈している。なお、図1及び図2では、支持体1の両面に指示部2を設けたが、片面のみに指示部を設けた構成も適用し得る。また、このインジケーターは、通気性フィルム3で包囲されているが、通気性フィルム3を用いないで、そのまま使用することができる。
【0075】
図3は、本発明の炭酸ガスインジケーターの第2の例の構成を表す断面図を示す。
【0076】
図示するように、この炭酸ガスインジケーター70は、片面のみに指示部を設けた例であって、支持体として例えばポリエステル樹脂にシリカを蒸着したフィルムからなる炭酸ガス不透過性を有する層71と、この炭酸ガス不透過性を有する層71上に例えばメタクレゾールパープル、炭酸ナトリウム、耐熱水性を有するポリエステル樹脂、微結晶セルロース、及び水からなる炭酸ガス検知用インキ組成物を円形状のパターンでスクリーン印刷により塗布して得られた指示部2と、炭酸ガス不透過性を有する層71上に設けられた指示部2を封止するように形成された、例えばポリエチレンフィルムからなる炭酸ガス透過性を有する層73とから構成される。
【0077】
この炭酸ガスインジケーター70は、炭酸ガス透過性を有する層73側からのみ炭酸ガスを透過して検知し、支持体側からは炭酸ガスを透過しない構成を有する。例えば支持体として包装体の外装体等を使用し、炭酸ガス不透過性を有する層71を外側に、炭酸ガス透過性を有する層73が内側になるように包装体を作成し、この炭酸ガスインジケーター70が包装体内部で機能するように、包装体を構成することができる。このようにして得られた包装体は、雰囲気の変化に対する応答性に優れ、かつ炭酸ガスの保持性が良好であるため内容物の保存性に優れる。
【0078】
図4は、本発明の炭酸ガスインジケーターの第3の例の構成を表す断面図を示す。
【0079】
図示するように、この炭酸ガスインジケーター50は、例えばアルミナ蒸着層(図示せず)を有するナイロンフィルム55と、これに接着剤層56を介して積層された、アルミナ蒸着層(図示せず)を有するポリエステルフィルム57とからなる支持体1と、支持体1上に形成されたアンカーコート層51と、指示部2が印刷されたアンカーコート層51上に、この指示部2を封止するように形成されたオーバーコート層52とから構成される。このインジケーターの指示部2は、通常の空気中では、紫色を呈している。
【0080】
指示部中のpH指示薬は、溶媒例えば水やアルコール化合物などの親水性溶媒を介して反応する。このため指示部は、このような溶媒を含み得る。このため、指示部は、水がたまりやすく、外観不良を起こしやすい。また、指示部は、外的衝撃に弱く、この指示部及びその周辺で剥離、破断し易い。
【0081】
本発明の炭酸ガスインジケーターの第3の例では、指示部2をアンカーコート層51とオーバーコート層52で挟み込むことにより、指示部2を構成する炭酸ガス検知用インキ組成物を保護し、外観不良、剥離、及び破断を防止することができる。さらに、耐水性、耐光性、耐熱性を含めた炭酸ガスインジケーターの長期安定性が良好となる。
【0082】
このアンカーコート層51としては、非水溶性であり、支持体1とその上に形成される指示部2との密着性が良好な材料を、また、オーバーコート層52としては、炭酸ガス透過性、指示部2との密着性、及び任意に指示部2上にさらに設けられ得る例えば接着剤層または他の樹脂層との密着性が良好な材料を好ましく使用することができる。
【0083】
このような材料として、例えばウレタン系樹脂及びポリビニルアセタール樹脂等を単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0084】
なお、ここでは、支持体1の片面のみに指示部を設けたが、支持体1の両面に指示部2を設けた構成も適用し得る。また、支持体1の片面のみに多層指示部を設ける場合には、必要に応じて、支持体として前述の炭酸ガス不透過性を有する層を、また、オーバーコート層上に炭酸ガス透過性を有する層を各々適用することができる。
【0085】
また、図5は、炭酸ガスインジケーターの第4の例の構成を表す断面図である。
【0086】
図示するように、この炭酸ガスインジケーター60は、上述の炭酸ガスインジケーター50の改良例であって、アンカーコート層51の代わりに、支持体1上に第1のアンカーコート層53と第2のアンカーコート層54の積層構造が使用されていること以外は、図5に示す炭酸ガスインジケーターと同様の構造を有する。好ましくは第1のアンカーコート層53の周縁部とオーバーコート層52とが密着されることにより指示部2及び第2のアンカーコート層54が2つの層52,53内に封入されている。
【0087】
第1のアンカーコート層としては、支持体1と密着性の良い非水溶性材料例えばウレタン系樹脂等が好ましく使用される。また、第2のアンカーコート層としては、第1のアンカーコート層及び指示部2との密着性が良好であり、さらに好ましくは親水基を有し、水を含む指示部2に対し保水効果を有する材料例えばブチラール系樹脂等が好ましく使用される。
【0088】
オーバーコート層としては例えばウレタン系樹脂等を用いることができる。
【0089】
アンカーコート層及びオーバーコート層の塗布方法としては、印刷法例えばスクリーン印刷法、凹版印刷法、及びグラビア印刷法等や、コーティング法例えばロールコーティング、スプレーコーティング、及びディップコーティング等が好適に使用される。
【0090】
この炭酸ガスインジケーター60では、アンカーコート層を2層に分けて形成しているので、第1のアンカーコート層53により、支持体1と指示部2との密着性を強固にする作用、第2のアンカーコート層54により、少なくとも指示部2中のpH指示薬が機能するために十分な量の水分を確保する作用が得られる。従って、炭酸ガスインジケーター60は、図5に示す炭酸ガスインジケーター50のように、アンカーコート層を1層だけ形成するよりも、より強固な密着性と、多層指示部に対するより効果的な保水性とが実現できる。さらに、耐光性、耐熱性を含めた炭酸ガスインジケーターの長期安定性がさらに良好となる。
【0091】
なお、ここでは、支持体1の片面のみに多層指示部を設けたが、支持体1の両面に多層指示部2を設けた構成も適用し得る。また、支持体1の片面のみに多層指示部を設ける場合には、必要に応じて、支持体として前述の炭酸ガス不透過性を有する層を、また、オーバーコート層上に炭酸ガス透過性を有する層を各々適用することができる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0093】
実施例1
(炭酸ガスインジケーター用インキ組成)
パラキシレノールブルー 1重量部
水酸化カリウム 4重量部
グリセリン 5重量部
カルボキシル基含有水性ウレタン樹脂
7重量部(分子量40000)
(アンカーコート層、オーバーコート層組成)
酸化チタン 10重量部
ウレタン樹脂 15重量部
図6に、実施例1で使用される外装体の構成を表す断面図を示す。
【0094】
外装体の一部兼支持体として、厚さ12μmのポリエステルフィルム7を用意した。その片側に、厚さ0.5μmの上記組成のアンカーコート層9、指示層として、上記組成の炭酸ガスインジケーター用インキを用いて印刷した厚さ1μmの炭酸ガスインジケーター用インキ層11、厚さ1μmの上記組成のオーバーコート層10をグラビア印刷法にて順次積層させた。また、その反対側に、金属酸化物層を蒸着した厚さ12μmのポリエステルフィルム6を、図示しない2液硬化型ウレタン系接着剤にて積層させた。積層した印刷面を覆う形で、熱融着層として、厚さ50μmのポリプロピレンフィルム8をさらに積層させ、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体20を得た。
【0095】
次に図7に示すように、この外装体20を用いて製袋し、得られた袋体4内に、内容物として重炭酸薬液を適当量充填したポリプロピレンバッグ5を入れた後、内部を4%炭酸ガス置換することで包装体30を得た。
【0096】
包装体の評価
得られた包装体に、110℃、60分のシャワー滅菌を施し、炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。
【0097】
外観は、水たまり等による外観不良が認められない場合を○、水たまり等による外観不良を多少発生した場合を△、水たまり等による外観不良が顕著である場合を×と、各々評価した。その結果を下記表2に示す。
【0098】
色調は確認した色を下記表2に示す。
【0099】
その後、開封することで、炭酸インジケーターの応答性を確認した。
【0100】
応答性は、色調変化が鮮明で判定が容易であった場合を二重丸、判定に支障がない程度のものを○、判定が多少難しい場合を△、判定が不可能であった場合を×と、各々評価した。その結果を下記表2に示す。
【0101】
また、別途同様の炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部すなわちアンカーコート層、炭酸ガスインジケーター用インキ層、オーバーコート層、及び接着層の積層体の剥離強度(測定試料:15mm幅)を、室温にて300mm/分の速度で、T字(180度)剥離にて測定した。その結果を下記表2に示す。
【0102】
実施例2
(炭酸ガスインジケーター層組成)
パラキシレノールブルー 1重量部
水酸化ナトリウム 5重量部
グリセリン 3重量部
アミノ末端ポリエステル樹脂 7重量部(分子量15000)
上記インキ組成物を使用すること以外は実施例1と同様にして包装体を得た。
【0103】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0104】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0105】
実施例3
(炭酸ガスインジケーター層組成)
パラキシレノールブルー 1重量部
水酸化カリウム 5重量部
グリセリン 4重量部
アミノ末端ポリエーテル樹脂 7重量部(分子量20000)
上記インキ組成物を使用すること以外は実施例1と同様にして包装体を得た。
【0106】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0107】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0108】
実施例4
実施例1と同様にして、支持体上に炭酸ガスインジケーターを作成した後、適当な大きさに裁断し、得られた炭酸ガスインジケーター片16を口栓封止用バリアフィルムとして使用し、図8に示すように、重炭酸含有薬液を内容物とするガスバリア1次容器5の口栓部17にヒートシールして、1次容器サンプル40を作成した。重炭酸含有薬液1次容器5の内側上部空間における炭酸ガス濃度は4.7%であった。
【0109】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0110】
また、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0111】
実施例5
分子量9000のカルボキシル基含有水性ウレタン樹脂を用いること以外は、実施例1と同様にして、包装体を得た。
【0112】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0113】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0114】
実施例6
分子量100000のカルボキシル基含有水性ウレタン樹脂を用いること以外は、実施例1と同様にして、包装体を作成した。しかしながら、炭酸ガスインジケーターの安定した印刷は多少困難であった。
【0115】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0116】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0117】
実施例7
分子量8000のアミノ末端ポリエステル樹脂を用いること以外は、実施例2と同様にして、包装体を作成した。
【0118】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0119】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0120】
実施例8
分子量100000のアミノ末端ポリエステル樹脂を用いること以外は、実施例2と同様にして、包装体を作成した。安定な印刷が可能であった。
【0121】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0122】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0123】
実施例9
(炭酸ガスインジケーター層組成)
パラキシレノールブルー 1重量部
水酸化ナトリウム 4重量部
カルボキシル基含有水性ウレタン樹脂(分子量50000) 7重量部
上記インキ組成物を用いること以外は実施例1と同様にして包装体を作成した。
【0124】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0125】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0126】
実施例10
(炭酸ガスインジケーター層組成)
パラキシレノールブルー 1重量部
水酸化ナトリウム 5重量部
グリセリン 3重量部
2−(ジエチルアミノ)−エタノール 3重量部
カルボキシル基含有水性ウレタン樹脂(分子量50000) 7重量部
上記インキ組成物を用いること以外は実施例1と同様にして包装体を作成した。
【0127】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0128】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0129】
実施例11
(炭酸ガスインジケーター層組成)
パラキシレノールブルー 1重量部
水酸化ナトリウム 5重量部
グリセリン 3重量部
2−(ジエチルアミノ)−エタノール 3重量部
カルボキシル基含有水性ウレタン樹脂 7重量部(分子量50000)
(アンカーコート層)
酸化チタン 10重量部
エチレンジアミン 4重量部
ウレタン樹脂 15重量部
(オーバーコート層)
酸化チタン 10重量部
ウレタン樹脂 15重量部
上記インキ組成物以外は実施例1と同様にして包装体を作成した。
【0130】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0131】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0132】
実施例12
実施例10に記載のインキ組成物を使用した以外は、実施例4と同様にして作成した炭酸ガスインジケーターを使用し、適当な大きさに裁断し、得られた炭酸ガスインジケーター片を用いて、一次容器サンプルを得た。重炭酸含有薬液1次容器の内側上部空間における炭酸ガス濃度は5.1%であった。
【0133】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0134】
また、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0135】
実施例13
(炭酸ガスインジケーター層組成)
パラキシレノールブルー 1重量部
水酸化ナトリウム 5重量部
カルボキシル基含有水性ウレタン樹脂 7重量部(分子量50000)
(アンカーコート層)
酸化チタン 10重量部
ウレタン樹脂 15重量部
(オーバーコート層)
酸化チタン 10重量部
トリエタノールアミン 3重量部
ウレタン樹脂 15重量部
上記インキ組成物及びオーバーコート層用組成物を用いること以外は実施例1と同様にして包装体を得た。
【0136】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0137】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0138】
比較例1
(炭酸ガスインジケーター層組成)
パラキシレノールブルー 1重量部
水酸化ナトリウム 4重量部
グリセリン 5重量部
ポリビニルアルコール樹脂 7重量部
耐熱水性の低いポリビニルアルコール樹脂を含む上記インキ組成物を用いること以外は実施例1と同様にして包装体を得た。
【0139】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0140】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0141】
実施例14
2−(ジエチルアミノ)−エタノール の添加量を 1重量部に変更すること以外は、実施例10と同様にして、包装体を得た。
【0142】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0143】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0144】
実施例15
2−(ジエチルアミノ)−エタノール の添加量を 10重量部に変更すること以外は、実施例10と同様にして、包装体を得た。
【0145】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0146】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0147】
実施例16
2−(ジエチルアミノ)−エタノール の添加量を 11重量部に変更すること以外は、実施例10と同様にして、包装体を得た。このとき、インキ組成物の加工性が多少劣っていた。
【0148】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。このその結果を下記表2に示す。
【0149】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0150】
実施例17
カルボキシル基含有水性ウレタン樹脂(分子量40000)の添加量を0.5重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、包装体を得た。
【0151】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0152】
得られた炭酸インジケーターの外観は水たまりが多少見られ、応答性は多少劣っていた。
【0153】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0154】
実施例18
カルボキシル基含有水性ウレタン樹脂(分子量40000)の添加量を2重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、包装体を得た。
【0155】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0156】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0157】
実施例19
カルボキシル基含有水性ウレタン樹脂(分子量40000)の添加量を9重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、包装体を得た。
【0158】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0159】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0160】
実施例20
カルボキシル基含有水性ウレタン樹脂(分子量40000)の添加量を15重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、包装体を得た。
【0161】
得られた包装体について、実施例1と同様にして炭酸インジケーターの外観及び色調を確認し、応答性を調べた。その結果を下記表2に示す。
【0162】
得られた炭酸インジケーターは、色調変化が多少不鮮明で、応答性は多少困難であった。
【0163】
また、実施例1と同様にして、別途、炭酸ガスインジケーターを設けた外装体を作成し、インジケーター部の剥離強度を測定した。その結果を下記表2に示す。
【表2】

【0164】
上記表2より、請求項に記載の分子量を有する耐熱水性のバインダー樹脂を使用した実施例1ないし4、9ないし16のインジケーターについては、滅菌後の応答性がさらに良好となった。それに対し、樹脂種は同じでも、分子量の小さいものを用いた実施例5、7あるいは耐熱水性のないポリビニルアルコールをバインダー樹脂として使用した比較例1のインジケーターについては、滅菌後、インジケーター部が水たまり状になり、水たまり部分が青色となって、青、黄のまだらの色調を呈した。また、樹脂種は同じものでも分子量の大きいものを用いた実施例6,8のインジケーターについては、安定した印刷自体が困難であった。このことから、適切な分子量を持った耐熱水性のあるバインダー樹脂を選定することにより、インジケーターは滅菌後も色調・応答性がさらに向上した。
【0165】
また、バインダー樹脂の添加量がpH指示薬の重量に対し、100重量%未満である実施例17は、外観不良が見られ、応答性の判定が多少難しく、バインダー樹脂の添加量がpH指示薬の重量に対し、1000重量%を超える実施例20は、外観は良好であったが応答性の判定が困難であった。これに対し、バインダー樹脂の添加量が100ないし1000重量部である実施例18,19はいずれも良好であった。
【0166】
なお、上記実施例では、ポリプロピレンバッグ5の口栓、あるいはポリプロピレンバッグ5を包装する外装体の一部に炭酸ガスインジケーター11を設けているけれども、炭酸ガスインジケーターの配置はこれに限定されるものではなく、例えば図9に示すように、ポリプロピレンバッグ5の一部に炭酸ガスインジケーター11を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明の炭酸ガスインジケーターの第1の例を表す正面図
【図2】図1の断面図
【図3】本発明の炭酸ガスインジケーターの第2の例の構成を表す断面図
【図4】本発明の炭酸ガスインジケーターの第3の例の構成を表す断面図
【図5】炭酸ガスインジケーターの第4の例の構成を表す断面図
【図6】本発明に用いられる外装体の一例を表す概略図
【図7】本発明の包装体の一例を表す概略図
【図8】本発明の包装体の他の一例を表す概略図
【図9】本発明の包装体のさらに他の一例を表す概略図
【符号の説明】
【0168】
1…支持体、2,90…指示部、3…炭酸ガスインジケーター、4…外装体、
5…ガス透過性容器、6…金属酸化物蒸着ポリエステルフィルム、7…ポリエステルフィルム、8…ポリプロピレンフィルム、9…アンカーコート層、10…オーバーコート層
11…炭酸ガス検知層、16…口栓封止用バリアフィルム、51…アンカーコート層、52…オーバーコート層、53…第1のアンカーコート層、54…第2のアンカーコート層、55、81…ナイロンフィルム、56、74、82…接着剤層、57、83…アルミナ蒸着ポリエステルフィルム、71…炭酸ガス不透過性フィルム、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH指示薬、耐熱水性を有するバインダー樹脂、及び溶媒を含有することを特徴とする炭酸ガス検知用インキ組成物。
【請求項2】
前記耐熱水性を有するバインダー樹脂は、カルボキシル基を有し、該カルボキシル基により水溶化もしくは水分散された、分子量が10000ないし90000の酸性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガス検知用インキ組成物。
【請求項3】
前記耐熱水性を有するバインダー樹脂は、ポリエステル樹脂骨格若しくはポリエーテル樹脂骨格と、アミノ末端基とを有し、分子量が10000ないし50000であることを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガス検知用インキ組成物。
【請求項4】
0より大きく5重量%以下のアルカリ性物質を更に含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の炭酸ガス検知用インキ組成物。
【請求項5】
1重量%ないし10重量%の多価アルコールを更に含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の炭酸ガス検知用インキ組成物。
【請求項6】
支持体、及び該支持体上に、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の炭酸ガス検知用インキ組成物を用いて印刷された指示部を具備することを特徴とする炭酸ガスインジケーター。
【請求項7】
前記支持体及び指示部のうち少なくとも一方が、炭酸ガス吸収剤を含むことを特徴とする請求項6に記載の炭酸ガスインジケーター。
【請求項8】
前記炭酸ガス吸収剤を含む部材をさらに有することを特徴とする請求項6または7に記載の炭酸ガスインジケーター。
【請求項9】
前記炭酸ガス吸収剤がアミン類であることを特徴とする請求項7または8に記載の炭酸ガスインジケーター。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれか1項に記載の炭酸ガスインジケーターを、炭酸ガスを含むガスを封入した外装体内に配したことを特徴とする包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−79936(P2009−79936A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248193(P2007−248193)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】