説明

炭酸入りトマトアルコール飲料

【課題】トマト中に含まれている呈味成分や健康成分、トマトの鮮やかな色合いが損なわれることなく、甘くなくて、トマトの鮮やかな色合いを有し、ギャバ等の健康成分の補給に適した沈殿せず、また、泡が噴きこぼれることなく、楽しめる炭酸入りトマトアルコール飲料を提供する。
【解決手段】不溶性成分を除去した透明トマト果汁を調合した飲料液に炭酸ガスを封入してなる炭酸入りトマトアルコール飲料。さらに、トマト色素製剤が添加された炭酸入りトマトアルコール飲料。また、透明トマト果汁は、パルプ質等の粒径0.1μm以上の不溶性成分が除去されたものであり、前記トマト色素製剤は、トマト果実由来のリコピンである。これによって、鈍重感がなく、しかもトマト本来に含有されている健康成分、呈味成分をそのまま含み、甘くなくて、トマトの旨みが強くて、濁りのないアルコール飲料となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸入りトマトアルコール飲料に関し、特に、濁りがなく、トマトの旨みと健康成分を含有し、トマトの鮮やかな色合いを有する炭酸入りトマトアルコール飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ギャバ(GABA、すなわちγ―アミノ酪酸)は自然界に広く存在しているアミノ酸の一種で分子式がNHCHCHCOOHである。生体内においては、抑制系の神経伝達物質として知られ、副交換神経の働きを高め、興奮を抑える作用があることが知られている。また、血圧降下作用、精神安定作用、腎、肝機能改善作用、アルコール代謝促進作用などが知られている。しかし、胚芽米や緑茶など植物由来の食品に含まれる量は少なく、薬理作用を発揮するのに必要な量(30mg以上)を通常の食品から摂取するのは困難である。そこで、医薬品として、ギャバの合成品が脳の血流改善作用を基に、脳卒中等の後遺症改善薬として経口投与されている。健康食品では、米が発芽するときに、胚芽中でギャバが産出されるので、発芽玄米が良く利用されている。また、嫌気状態で緑茶のギャバ量を増加させたギャバロン茶というお茶があるが、茶葉を嫌気的条件下に置いてギャバを生成させるため、その条件制御が煩わしく、またギャバ量が少ない。また、最近、グルタミン酸を乳酸菌の作用や米胚芽中の酵素(グルタミン酸脱炭酸酵素)の作用でギャバに変換した、高ギャバ飲食品が開発されている。例えば、グルタミン酸を構成アミノ酸として含む蛋白質またはペプチドを含有する乳類に、グルタミン酸遊離活性を有する乳酸菌またはビフィドバクテリウム属細菌およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ生産能を有する乳酸菌を接種して培養することで高ギャバ含有発酵乳飲料が開発されており、該飲料はギャバ10mgの摂取(飲料として1日100mlの摂取)で腸管動脈の拡大作用により、血圧の降下作用が認められ、特定保健用食品となっている。しかし、ギャバは一部の特定の食品にしか、十分な量が含まれていない。
【0003】
一方、トマト果実にはギャバが多く含まれることが知られており、また、ビタミンやミネラル等の成分に富み、アミノ酸や有機酸等の成分もバランスよく含んでおり、多汁質で、加工適正等にも優れていることから、これを搾汁して得られるトマト搾汁液は、健康飲料としてトマトジュースや他の野菜および/または果実の搾汁液を混合したトマトミックスジュース等の形で広く飲用されている。ところが、トマトジュースは、トマトを搾汁してそのまま飲むのが一般的である。つまり、生のトマトを単に搾汁したものは、パルプ質、繊維質が多く、どろどろした喉越し感があり、この感覚が好きになれずにトマトジュースを好んで飲まない人もいる。
【0004】
添加物の加えられていない果汁100%の製品にこだわる健康志向の需要者には、飲み易さを犠牲にする事ができるが、喉越しや飲み易さを追求すると、健康志向とは二律背反となり、健康には良いのは判るが、飲みにくいのでトマトジュースが苦手と言うことになる。
【0005】
また、トマトを用いた酒類で代表的なものに、ウォッカをトマトジュースで割ったブラディマリーがある。これはトマトの旨みを加えることで他の酒類にはないおいしさと爽やかな酔い心地があるが、これはピューレ状のトマト果汁を加えたものであるので、固形分が沈殿し易いことになる。このため、チューハイ等の透明なアルコール飲料においては、パルプ質による濁りや鈍重感等から少なからずあることになる。
【0006】
そこで、喉越し感が通常の透明ジュースと余り変わりがない、且つ、従来のトマトの濃い味わいとは異なる飲み易いトマトジュースやアルコール飲料等に調合しても濁りを生じないトマト果汁が求められており、例えば、特許文献1のような透明なトマトジュースを製造する方法(トマトの実を粉砕し、果肉と果汁に分離し、分離した果汁を目の細かい濾紙で濾過することで透明なトマトジュースを得る方法)が開発されている。
【特許文献1】特許第3561516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1には、濾過は目の細かい濾紙で濾過するとしか開示されておらず、濾紙の細かさの度合いによっては、アミノ酸、ペプチド等のトマトの呈味成分やギャバ等の健康成分までが除去されてしまい、トマトの旨みやトマトの鮮やかな色合い、健康成分が損なわれる怖れがある。
【0008】
また、炭酸ガスを圧入したトマト果汁入り炭酸飲料やトマトチューハイ等の透明なアルコール入り炭酸飲料では、パルプ質等の不溶性成分が含まれていると、濁りや鈍重感等から抵抗感があって好まれて飲用され難い。また、飲用の際に容器を振って沈殿を分散させようとすると泡が立ち容器から中味の飲料液が噴き出す怖れがある等でこれまで市販されたことがない。
【0009】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、トマト中に含まれている呈味成分や健康成分、トマトの鮮やかな色合いが損なわれることなく、甘くなくて、トマトの鮮やかな色合いを有し、ギャバ等の健康成分の補給に適した沈殿せず、また、泡が噴きこぼれることなく、楽しめる炭酸入りトマトアルコール飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた処、ペプチドやアミノ酸等の呈味成分や泡蛋白が除去されない程度に濾過または遠心分離してパルプ質等の不溶性成分を除去した透明トマト果汁を使用することで、トマトに含まれるギャバ、ビタミン、ミネラル等の健康成分が損なわれず、甘くなくて、風味や泡立ちも良い沈殿しない炭酸入りトマトアルコール飲料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0012】
(1)不溶性成分を除去した透明トマト果汁を調合した飲料液に炭酸ガスを圧入してなる炭酸入りトマトアルコール飲料。
【0013】
(2) さらに、トマト色素製剤が添加されたものである(1)に記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。
【0014】
(3) 前記透明トマト果汁は、粒径0.1μm以上の不溶性成分が除去されたものである(1)または(2)に記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。
【0015】
(4) 前記透明トマト果汁は、トマト果実を搾汁して得たトマト搾汁液が精密濾過膜で濾過されたものである(1)から(3)いずれか記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。
【0016】
(5) 前記トマト色素製剤は、トマト果実由来のリコピンである(2)から(4)いずれか記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。
【0017】
(6) 前記リコピンは、トマト果実を搾汁して得たトマト搾汁液を遠心分離より得た不溶物や前記精密濾過膜により濾過した不溶性成分の残渣より抽出して得られたものである(5)に記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。
【0018】
(7) ギャバ含量が5mg/100ml以上である(1)から(6)いずれか記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。
【0019】
(8) 甘味料が無添加である(1)から(7)いずれか記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、トマト果実を搾って得られたトマト搾汁液から不溶性成分を除去した透明トマト果汁を調合したアルコール飲料液に炭酸ガスを圧入してなる炭酸入りトマト飲料であるので、パルプ質等の不溶性成分を含まず、トマトの呈味成分と色合い、およびギャバ等の健康成分を含有することになる。このため、トマト搾汁液の鈍重感がなく、しかもトマト本来に含有されているビタミンやミネラル成分、ギャバ、グルタミン酸等のアミノ酸やクエン酸等の有機成分をそのまま含み、甘くなくて、トマトの旨みが強くて、濁りのない飲料となる。また、泡蛋白を有するので、泡立ちが良く、爽やかさが富化されたものとなる。また、トマト由来のギャバ含量が高いので、ギャバの血圧降下作用、アルコール代謝促進効果が期待できる健康飲料となる。さらには、パルプ質等の不溶性成分が含まれていないため、静置しておいても沈殿を生じないので、飲用の際に容器を振って沈殿物を分散させることがなく、このため、容器を振ることによる泡立ちが生じないことになり、開封した際に容器から泡が噴きこぼれることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0022】
本発明の炭酸入りトマト飲料は、トマト果実を搾って得られたトマト搾汁液からパルプ質等の不溶性成分を除去した透明トマト果汁をアルコール飲料等の飲料液に調合して、この調合液に炭酸ガスを含ませて得られる。
【0023】
本発明に使用する透明トマト果汁は、トマト果実を搾って得られたトマト搾汁液を遠心分離、珪藻土濾過等の機械的分離法や膜分離等の輸送的分離法等によって、パルプ質等の粒径が0.1μm以上の不溶性成分を分離して得られたものである。
【0024】
本発明においてトマト搾汁液は、トマト等を飲用とする際に通常に行われる処理方法(洗浄、選別、剥皮、除芯、破砕、搾汁、濾過、分離、加熱、冷却、均質化等の諸操作を適宜組合せた方法)で得ることができる。この様な方法として、例えば、トマト果実を洗浄してから熱水中でブランチングした後、剥皮し細断する。これを加熱し、さらに、搾汁、遠心処理で不溶物を除去し、次いで殺菌処理を行う等の方法が挙げられる。尚、上記トマト搾汁液の製法は、通常行われている方法のごく一例であって、本発明に用いるトマト搾汁液はこれに限定されるものではない。
【0025】
この様にして得られたトマト搾汁液は、濾過等の透明化処理をして、パルプ質等の不溶性成分が除去されて透明トマト果汁にされる。この透明化処理としては、トマトのパルプ質等の不溶性成分は除去されるが、ペプチド、ギャバ等のアミノ酸や泡蛋白である分子量が5000〜10000程度のタンパク質は除去されない程度の処理であって、パルプ質等の粒径が0.1μm以上の不溶性成分が分離されるのが好ましい。具体的には、例えば、遠心分離、珪藻土濾過等の機械的分離法や膜分離等の輸送的分離法が挙げられるが、特に好ましくは膜分離である。この膜分離は、例えば孔径0.1〜10μmの精密濾過膜でトマト搾汁液を濾過することで行われ、パルプ質等の粒径が0.1μm以上の不溶性成分が除去される。この分離によってパルプ質等の不溶性成分を含まず、ペプチドやアミノ酸等の呈味成分や泡蛋白、ギャバ等を含有するBrixが通常6Brix程度の透明トマト果汁となる。尚、この精密濾過を行う前に、予め目の粗い濾布などにより粗濾過や遠心分離等の機械的分離等で不溶の表皮、種子、果肉、パルプ質等を除去してもよい。
【0026】
得られた透明トマト果汁は必要に応じて濃縮してもよく、この濃縮液をそのまま、あるいは濃縮液を飲用水等で適当な濃度に希釈して、本発明の炭酸入りトマト飲料用原料の主成分として用いることが可能である。また、透明トマト果汁がアルコール飲料等の飲料液と調合されて炭酸入りトマト飲料に供されるまでに時間がある場合には、これらをポリエチレンバッグ等に充填した後、例えば−20℃程度の冷凍庫にて保管することが可能である。保管後、これを調合して使用する際には適当な方法で解凍して用いればよい。尚、保管、取扱い作業性等の面から濃縮されたものであるのが好ましい。
【0027】
次に、透明トマト果汁の製法について説明するが、この製法はこれに限定されるものではない。上記のトマト搾汁液を必要により、予め目の粗い濾布などにより粗濾過して不用の表皮、種子、果肉等の固形物を除去したトマト搾汁液をそのままで、またはこれに適宜加水し均一に攪拌して水性懸濁液とした後に遠心分離して、繊維質等の不溶性成分を分離する。加水量は、1.5容量倍以上、特に2〜5容量倍が好ましい。
【0028】
遠心分離は、任意の遠心分離法が採用できるが、短時間に固液分離をするためには高速遠心分離法を採用することが好ましい。その遠心力と時間の条件は、遠心分離してトマト搾汁液を液体部分と沈殿部分とに分けた場合に液体部分の回収量ができるだけ多くなる任意の条件が採用され、例えば9000G以上で5分間以上を採用することが好ましい。
【0029】
この操作により極めて簡単に半流動性(ペースト状)の沈殿部分と液体部分とに分離される。こうして得られた液体部分は、微細なパルプ質、多糖類、蛋白質等の不溶性成分並びに糖、酸、芳香成分等の可溶性成分が高濃度で含有している。この液体部分を更に精密濾過することにより、ビタミンやミネラル成分、ギャバ、グルタミン酸等のアミノ酸やクエン酸等の有機成分を含有する透過液部と、パルプ質等の粒径0.1μm以上の不溶性成分を含有する非透過部とに分離する。ここで行う精密濾過(microfiltration,MF)とは、0.1〜10μm程度以上の懸濁粒子を、膜を用いて分離することを意味する。一般的に分離膜は、0.01〜数μm程度の懸濁粒子を分離できる細孔を有するものであるが、本発明においては、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜8μm程度の平均細孔を有する液体分離膜を用いることができる。
【0030】
この精密濾過に使用する精密濾過膜は、チューブラータイプ、キャピラリータイプ、スパイラルタイプまたはホロファイバータイプに成型されたものを利用できる。濾過方式はクロスフロー濾過方式、フィード・ブリード方式(Feed&Breed)方式、直接方式等の任意の方式が挙げられる。精密濾過膜として具体的には、ポリスルフォン系、フッソ系、ポリオレフィン系の素材で作られた有機膜、セラミックの素材で作られた無機膜が使用できる。精密濾過膜の操作圧力は通常の操作圧力0.1〜8.0kg/cm、温度10〜80℃で行われる。平均孔径が0.1μmより小さい精密濾過膜を使用するときは、液体部分からパルプ質だけでなくペプチドやアミノ酸等の呈味成分や泡蛋白、ギャバ等の健康成分も除去されるために、得られた透明トマト果汁はトマトの旨みや健康成分の劣るものになってしまう。一方、10μmより大きいと、得られた透明トマト果汁はパルプ質の除去が不十分なものとなり、濁りや沈殿物の発生の原因となる等の不都合が生じる。
【0031】
次に、以上の方法で得られる透過液、すなわち透明トマト果汁を必要により、エバポレーター、コントロ、ロータリー・クッカー・タンク等の蒸発濃縮、凍結濃縮、又は逆浸透膜法などを用いて、Brix20〜60に濃縮してもよい。
【0032】
本発明の炭酸入りトマトアルコール飲料は、上記の透明トマト果汁とアルコール飲料液との調合液を作成し、該調合液に炭酸ガスを圧入することで得られるチューハイ等のアルコール入り炭酸飲料等である。また、炭酸入りトマトアルコール飲料にトマト色素製剤を添加することが好ましい。このトマト色素製剤を添加することにより、トマト搾汁液を透明化処理して透明トマト果汁を得る過程で失われたトマトの色素リコピンが補足され、トマトの鮮やかな色合いを富化することができる。
【0033】
このトマト色素製剤は、トマト搾汁液からパルプ質等の不溶性成分を除去して透明トマト果汁を得る際に、トマトの色素成分であるリコピンは、上記の目の粗い濾布などにより粗濾過された不用の表皮、種子、果肉等の固形物や遠心分離で分離された沈殿部分および膜濾過で濾過された非透過部であるパルプ質等の不溶性成分に含まれて分離されるので、これら固形物、沈殿部分および非透過部(以下、固形物、沈殿部分および非透過部を分離処理物と総称する)からリコピンを回収して製造することになる。
【0034】
トマト色素製剤は、例えば、リコピンを含有するパルプ質等の不溶性成分の分離処理物を最終的に90%以上のエチルアルコールで脱水処理した後、脱水処理物を超臨界二酸化炭素で抽出処理し、抽出物を植物油に溶解することで得られる。
【0035】
具体的には、まず上記の透明トマト果汁を製造する際に遠心分離や膜濾過等で分離された分離処理物に最終的に90%以上のエチルアルコールを加え、双方を十分に接触させた後、固液分離して、固形分すなわち脱水物を得るのである。残渣中に含まれる水分は固液分離によりエチルアルコールと共に除去され、同時にエチルアルコール可溶性の成分が除去される。固液分離にはデカンター、スクリュープレス、フィルタープレス等を使用することができる。
【0036】
脱水処理は固液分離した固形分すなわち脱水物の水分含量およびエチルアルコール含量がそれぞれ10重量%以下となるように行うのが好ましい。脱水物に残存する水分およびエチルアルコールが後の超臨界二酸化炭素による抽出処理の際の妨げとなるからである。
【0037】
次に、この脱水物を超臨界二酸化炭素で抽出処理する。この場合の抽出装置としては公知のものを使用できる。抽出装置は通常、二酸化炭素ボンベ、熱変換器、圧縮ポンプ、抽出槽、圧力制御弁および分離槽等を直列に備え、該抽出槽および該圧力制御弁は恒温槽に設置されていて、該分離槽から排気した二酸化炭素を回収して再使用するようになっている。
【0038】
抽出槽に脱水物を投入し、該抽出槽に二酸化炭素ボンベから熱変換器および圧縮ポンプを介して二酸化炭素を導入する。圧力制御弁の開度および恒温槽の設定温度を調節して所定の圧力および温度条件下で超臨界二酸化炭素により脱水物中のリコピンを抽出する。抽出されたリコピンは二酸化炭素に同伴して分離槽へと至り、ここで二酸化炭素を排気すると、該分離槽の内壁面に付着する。
【0039】
超臨界二酸化炭素による抽出処理は、圧力150〜300kg/cm、温度35〜80℃の条件下で行うことができるが、圧力250〜300kg/cm、温度35〜50℃の条件下で行うのが好ましい。抽出装置を無理なく安定運転して、リコピンの回収率を高めるためである。
【0040】
超臨界二酸化炭素による抽出処理後、分離槽に植物油を投入し、該植物油にリコピンを溶解して、リコピン油のトマト色素製剤を得る。植物油としては、常温で液体のものであれば、適宜に使用でき、例えば大豆油、菜種油、コーン油等を使用できる。植物油の投入量も、所望するリコピン濃度との関係で、適宜に選択できる。
【0041】
尚、トマト搾汁液を透明化処理した際に分離された分離処理物からリコピンを回収する方法について上記に説明したが、これは一例であって、これに限定されるものではなく、食用油を使用し、リコピンを食用油に転溶させるようにした油溶法、或いはアセトン、酢酸エチル、ジクロロエタン、ヘキサン、低級脂肪族アルコール類などの有機溶剤で抽出する溶剤法等であってもよい。
【0042】
得られたトマト色素製剤はトマト果汁入り炭酸飲料、トマトチューハイ等の炭酸飲料、トマト果汁入りアルコール飲料等の各種トマトミックス飲料やトマトスープ、トマトソース、ドレッシング等の各種の食品の着色料として使用できる。
【0043】
得られたリコピン油のトマト色素製剤は、以下のようにしてアラビアゴム等の乳化剤で乳化され、透明トマト果汁を炭酸飲料、アルコール飲料等の飲料液に加えて炭酸入りトマトアルコール飲料を製造する際に添加されて、トマトの鮮やかな色合いを飲料に付与するのに用いられる。
【0044】
トマト色素製剤の乳化は、乳化剤を加え、トマト色素のリコピンの結晶をコロイドミル、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波乳化機、ナノマイザー等を用いて乳化させることで、リコピンの乳化物ができる。リコピンの含量は乳化液の0.001〜30%、より好ましくは0.01〜10%でよい。
【0045】
ここで、乳化に用いることのできる乳化剤としては食品添加用に使用できるものであれば特に制限はなく、既存の単分子乳化剤および高分子乳化剤などを使用することができる。単分子乳化剤としては、例えば、各種アニオン系界面活性剤やカチオン系界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の非イオン系界面活性剤、レシチンのような両性界面活性剤が挙げられる。また、高分子乳化剤としては、例えば、アラビアガム等の植物性天然ガム質、水溶性ヘミセルロース、ペクチン、サポニンが挙げられる。
【0046】
これらの乳化剤は通常水溶液の状態で使用され、その濃度は使用する乳化剤の種類によって異なるが、0.01〜10%の濃度範囲を例示することができる。リコピンの乳化液全体に対する乳化剤の割合としては0.001〜30%の濃度範囲を例示することができる。
【0047】
また、リコピンの乳化液中には、乳化性、耐熱性、保存安定性等を向上させる目的で、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール類、タンパク質分解物、化工澱粉、デキストリン等を共存させてもよい。またリコピン色素自体の退色防止、油脂類の酸化防止等を目的として、抽出トコフェロール、ポリフェノール類、茶抽出物、ヒマワリ抽出物、香辛料抽出物、アスコルビン酸、クロロゲン酸、フェルラ酸、BHA、BHT、没食子酸等の酸化防止剤を共存させてもよい。
【0048】
本発明の炭酸入りトマトアルコール飲料は、前述のようにして得られた透明トマト果汁やトマト色素製剤の乳化液を飲用水やアルコール飲料等の飲料液と調合し、得られた調合液に炭酸ガスを圧入することで得られる。例えば、Brix40に濃縮された透明トマト果汁を飲用水で希釈し、アルコールを加え、さらにトマト色素乳化液を添加して、トマトミックス調合液を作成し、この調合液に炭酸ガスを含ませてトマト果汁入りアルコールとしてもよい。また、95%アルコールにBrix40に濃縮した透明トマト果汁を飲用水で希釈し、これにトマト色素乳化液を調合した調合液を加え、さらにこれに炭酸ガスを含ませてトマトチューハイとしてもよい。
【0049】
これらの炭酸入りトマトアルコール飲料には、クエン酸等の酸味料を添加してもよい。酸味料としては、例えば、クエン酸、DL−リンゴ酸、L−酒石酸、乳酸、リン酸等が挙げられ、通常は0.2〜5g/100ml程度添加される。また、甘味料を添加して甘みを調整してもよい。甘味料は糖であってもよく、糖としては、砂糖、葡萄糖、果糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。あるいは、糖の代わりに、アスパラテーム、サッカリン等の合成甘味料が添加されていてもよい。
【0050】
このようにして得られた炭酸入りトマトアルコール飲料は、前述のようにパルプ質等の不溶性固形分が除去されているが、呈味成分であるペプチドやアミノ酸、泡蛋白、健康成分であるギャバ等をそのまま含有している透明トマト果汁を使用しているので、トマト由来の健康成分や風味、旨みを有し、濁りや固形物の沈殿のない透明なものである。さらには、泡蛋白を含んでいるので、炭酸の泡立ちがよく、この泡立ちによって爽快感が一層向上され、飲用し易いものとなる。また、トマト搾汁液を透明化する過程で分離されたトマトの色素成分であるリコピンを回収して得たトマト色素製剤を乳化液の状態で添加しているので、トマトの鮮やかな色合いを呈するとともに、色素の安定性が向上し、健康成分としての吸収性も良くなる。
【0051】
また、トマト由来のギャバは、透明化処理の過程で失われることがないので、トマト果実の種類や熟度等にもよるが、透明トマト果汁中には40〜100mg/100ml程度含有されている。この透明トマト果汁を用いたアルコール飲料は、ギャバ含量が5mg/100ml以上の高含量の飲料にすることができ、ギャバのリラックス効果により、爽やかで楽しい酔い心地が期待できる。また、ギャバの血圧降下作用、アルコール代謝促進作用が期待できる健康酒となる。また、トマトチューハイにすることで、甘くなくて、トマトのアミノ酸由来の旨みが強く、泡立ちもよく、赤いビールのような食事と良く合う酒類となる。また、アルコールを使用しない炭酸入りトマト飲料は、甘くなくて、止渇性のある、ギャバおよびリコピンの健康成分の補給に適した飲料となる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
<実施例>
[透明トマト果汁の製造]
洗浄、選別したトマト果実(品種は桃太郎)1kgを破砕して10分間程度静置し、約70℃達温で加熱した後、直ちに30℃に冷却した。次いで、粉砕、搾汁し、パルパー(スクリーンの網目100メッシュ)に通し、Brix5.2程度のトマト搾汁液8kgを得た(収率は80%)。この搾汁液を遠心分離機(日立社製himac)を用いて、3000rpmで10分間の条件で脱パルプ質処理を行って、粗パルプ質の不溶性成分(沈殿部分)と液体部分に分離を行った。この液体部分を孔径8μmの精密濾過機(ダイセル社製)に品温20℃、圧力1kg/cmで供給して、500gの透過液、すなわち透明なトマト果汁(A)を得た。
【0054】
[トマトチューハイの製造]
95%アルコール76mlに、飲用水と透明トマト果汁(A)40gとトマト色素乳化液(三栄源社製)0.7gとクエン酸0.5gとを調合し良く攪拌して1リットルとする。この調合液に炭酸ガス2.2VOLをカーボネーター(昭和炭酸社製)で圧入して含ませた後、350mlの缶に詰めて、約65℃で15分程度殺菌処理して、トマトチューハイを得た。
【0055】
得られたトマトチューハイは、ギャバが20mg/100ml、トマト色素(リコピン)が1.4mg/100mlが含有されていた。また、アスパラギン酸が50mg/100ml、グルタミン酸が100mg/100ml、アラニンが30mg/100ml含まれており、アミノ酸の旨みが十分あり、ビール状の泡と爽快な切れ味を有し、糖無添加で、甘くなく、スッキリとした味わいのチューハイであることが多数のパネリストにより確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不溶性成分を除去した透明トマト果汁を調合した飲料液に炭酸ガスを圧入してなる炭酸入りトマトアルコール飲料。
【請求項2】
さらに、トマト色素製剤が添加されたものである請求項1に記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。
【請求項3】
前記透明トマト果汁は、粒径0.1μm以上の不溶性成分が除去されたものである請求項1または2に記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。
【請求項4】
前記透明トマト果汁は、トマト果実を搾汁して得たトマト搾汁液が精密濾過膜で濾過されたものである請求項1から3いずれか記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。
【請求項5】
前記トマト色素製剤は、トマト果実由来のリコピンである請求項2から4いずれか記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。
【請求項6】
前記リコピンは、トマト果実を搾汁して得たトマト搾汁液を遠心分離より得た不溶物や前記精密濾過膜により濾過した不溶性成分の残渣より抽出して得られたものである請求項5に記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。
【請求項7】
ギャバ含量が5mg/100ml以上である請求項1から6いずれか記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。
【請求項8】
甘味料が無添加である請求項1から7いずれか記載の炭酸入りトマトアルコール飲料。

【公開番号】特開2007−189934(P2007−189934A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10315(P2006−10315)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)