説明

炭酸飲料の液面への泡層形成方法

【課題】 炭酸飲料の液面に適切な泡層を形成すること。
【解決手段】 容器Bに収容された炭酸飲料の一部を吸引部材11で気泡を形成しながら吸引する吸引工程S1と、吸引部材11内の前記気泡が含まれる前記炭酸飲料を排出して炭酸飲料の液面に載置する載置工程S5と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールなどの炭酸飲料の液面に、泡層形成装置を用いて適切に泡層を形成する、炭酸飲料の液面への泡層形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールを美味しく飲むには、ビールをビールジョッキ又はグラスに注いだ状態で、ビールの液面にクリーミーできめ細かな泡の層が形成されていることが必要である。その理由は、(1)泡がビール中の炭酸ガス、味、香り等を逃がさない、(2)泡がビールの酸化を防ぐ蓋の役目をする、(3)泡が苦み成分を吸着するので口当たりがよく、爽快感を与える、等である。また、このクリーミーできめ細かな泡の層が消えにくい状態に保たれることも重要である。
【0003】
飲食店では、樽詰めされたビールを冷やしてから、ビールディスペンサーやビールサーバー(以下、総称して「ビールディスペンサー」と呼ぶ)を用いてビールジョッキに注ぎ込み、清涼感のあるビールを来店者に提供することが多い。このビールディスペンサーを用いるには、ビールが専用の樽に樽詰めされていなければならない。このため、一般に流通している缶や瓶に詰められたビールを、ビールディスペンサーを用いて注出することはできない。缶や瓶に詰められたビールをビールジョッキ又はグラスに泡の層を適正に形成して注ぐには熟練が必要であり、このため、ビールを缶や瓶から注出する人の腕前の如何によっては、ビールジョッキやグラスに注がれたビールの液面に泡層が適切に形成されない場合があるという問題があった。
【0004】
こうした問題に対処するために、缶や瓶などに詰められたビールをビールジョッキやグラスに注いだ後、液面に泡を形成する手段として超音波を利用する下記特許文献1乃至5に記載されたものがある。
【0005】
これらのうち、特許文献1と特許文献2に記載される技術は、超音波振動素子をビールサーバーのビール注出ノズルに組み込んで、ノズルから流れ出るビールに超音波振動を印加するものである。また、特許文献3と特許文献4に記載される技術は、超音波振動素子を組み込んだ据え置き型の振動装置を構成して、ビールを容器に充填した後に、この容器を振動装置にかけてビールに超音波振動を印加するものである。さらに、特許文献5に記載される技術は、ケースに保持された超音波振動子とこの超音波振動子に一端が連結され他端がケース外に突出して容器に振動を与え得る、片手での操作が可能な泡立て装置に関するものである。
【0006】
しかしながら、超音波を利用する上記技術は、何れもビールジョッキやグラスに注がれたビール全体に超音波振動を加えるものであり、ビール全体から発泡がなされる。このため、発泡が過剰になったり、適量の泡を形成するには使用者の力量に因るところが大きい。
【特許文献1】特開平11−9256号
【特許文献2】特開2000−327096号
【特許文献3】特開平4−253691号
【特許文献4】特開平8−98675号
【特許文献5】特開2005−58号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、予めビールの一部を抜き出しておき、この抜き出したビールを泡立たせた後、ビールの液面に載置することにより、使用者の力量に因ることなくビールジョッキやグラスに注がれたビールの液面に適正に泡層を形成できるであろうとの考えの下鋭意研究を進めた結果、本発明を見出した。即ち、本発明は、使用者の力量に因ることなく、缶や瓶に詰められたビールをビールジョッキ又はグラスに注ぐ場合に、ビールなどの炭酸飲料の液面に泡の層を適正に形成することを可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、缶や瓶に詰められたビールの一部、即ち泡を形成させたい分量のビールを抜き出して、この一部のビールを泡立たせた後排出し、ビールの液面へと載置をすることでビール全体に振動を与えることなく泡層を形成するものである。
【0009】
即ち、請求項1に記載の発明によれば、容器に収容された炭酸飲料の一部を吸引部材で気泡を形成しながら吸引する吸引工程と、前記吸引部材内の前記気泡が含まれる前記炭酸飲料を排出して前記炭酸飲料の液面に載置する載置工程とを含む、という構成を採っている。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記気泡は前記炭酸飲料が吸引される際の乱流、衝撃若しくは減圧によって生じる、という構成を採っている。
また、請求項3に記載の発明によれば、前記吸引部材は開口付きシリンダとピストンからなる、という構成を採っている。
【0011】
更に、請求項4に記載の発明によれば、前記容器は前記炭酸飲料を密封状態で保存する瓶容器若しくは缶容器であり、前記吸引工程と載置工程との間に、前記容器から吸引されなかった残留炭酸飲料を前記容器と異なる他の容器に注入する工程を更に含む、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用者の力量に因ることなく、缶や瓶に詰められたビールをビールジョッキ又はグラスに注ぐ場合に、液面に適正な泡層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本願発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
[全体概要]
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る炭酸飲料の液面への泡層形成方法は、容器から炭酸飲料の一部を吸引する工程を含んでいる。そして、この吸引工程に伴って気泡が形成される。そして、気泡が含まれる炭酸飲料を排出する工程も含んでいる。排出後は、吸引されなかった残留飲料と気泡を含む炭酸飲料とが合流し、炭酸飲料の液面へ泡層を載置して終了となる。各工程の詳細は、炭酸飲料の一例としてビールを用いて以下に説明する。尚、実際の使用状態においては上記以外の工程も必要となる場合があるため、それらの工程についても説明する。また、各工程の理解を助けるために、本発明に用いられる泡層形成装置(図2〜図5)を参照しながら説明する。なお、本発明において、炭酸飲料はビールには限られない。好ましくは、グラスに注ぎいれられた際液面に泡立ちが起こり、泡持ちのする飲料であり、例えば、ビールテイスト飲料が該当する。具体例を列挙すると、ビール、発泡酒、雑酒、リキュール類、スピリッツ類、低アルコール発酵飲料などである。これらの他、泡立ちが生じ、泡持ちする飲料であれば、アルコール類にも限られない。
【0014】
[泡層形成装置]
図2は、本実施形態の実施のために用いられる泡層形成装置1を示す図である。正面図である図2(A)に示すように、泡層形成装置1は、装置本体3と、ビール瓶の蓋を開栓するための開栓部材5と、この開栓部材5を上下方向に移動自在に支持する第1の昇降機構7を備えている。開栓部材5はビール瓶の蓋に被せた後引き上げることで、蓋を開栓できる機構を備えている。第1の昇降機構7は、使用者が回動操作する第1の回動レバー7aと、第1の回動レバー7aの回動に伴って回動する第1の回動アーム7bと、第1の回動アーム7bに支持されて上記開栓部材5を支持する第1の支持軸7cと、装置本体3から突出して固定されている第1の固定アーム7dとを備えている。
【0015】
また、泡層形成装置1は、瓶容器に収容されているビールを吸引するための吸引部材11と、この吸引部材11を上下方向に移動自在に支持する第2の昇降機構13を備えている。吸引部材11は注射器のような構造を有しており、シリンダ11aとピストン11bと細長い吸引端11cを備えている。第2の昇降機構は、使用者が回動操作する第2の回動レバー13aと、第2の回動レバー13aの回動に伴って回動する第2の回動アーム13bと、第2の回動アーム13bに支持されて上記吸引部材11を支持する第2の支持軸13cと、装置本体3から突出して固定されている固定アーム13dとを備えている。
【0016】
ここで、第2の昇降機構の仕組みについて、図2(B)に基づいて説明する。先ず、使用者は第2の操作レバー13aを例えば反時計回りに回動させる。すると、第2の回動アーム13bも反時計回りに回動する。このとき、第2の回動アーム13bには第2の支持軸13cが長孔13b1を介して支持される。また、この第2の支持軸13cは第2の固定アーム13dに形成された長孔13d1も貫通している。このため、第2の操作レバー13aの回動によって第2の支持軸13c、およびこの第2の支持軸13cに支持されている吸引部材が鉛直下方へ移動する。吸引部材を上方へ移動させたい場合には、上記と逆に第2の操作レバー13aを時計回りに回動させればよい。
【0017】
図3は、泡層形成装置の背面図を示している。
[開栓工程]
図4は開栓工程を説明する図である。開栓工程では、先ず図4(A)に示すように、瓶容器Bを開栓部材5の真下に位置決めする。そして、図4(B)に示すように、第1の操作レバー7aを手前に回動させて、開栓部材5を瓶容器Bの蓋に被せる。その後、第1の操作レバー7aを引き起こすと、これに伴って開栓部材5が上昇し、蓋を開栓することができる。
【0018】
[吸引工程]
吸引工程は、瓶容器Bに収容されたビールを、直接吸引部材11で吸引する工程である。図5(A)に示すように、開栓された瓶容器Bを吸引部材11の真下に位置決めする。そして、第2の操作レバー7aを手前に回動させて、吸引部材11の吸引端11cを瓶容器Bの内部に挿入する。その後、ピストン11bを引き上げることで、瓶容器Bの内部のビールの一部をシリンダ11a内に吸引する(ステップS1)。吸引するビールの量は適宜選択されるが、例えば一般的な瓶容器や缶容器から吸引する場合は、全量の10%程度が考えられる。
【0019】
シリンダ11a内にビールが吸引される際には、ビールに対して乱流や減圧状態が付与される。このため、ビール内に溶け込んでいる炭酸ガスが気泡となって顕在化する(ステップS2)。また、シリンダに衝撃を加えることによって気泡が発生する場合もある。これにより、シリンダ11a内では気泡が混じりあったビールとなっている。この状態で、第2の操作レバー13aを引き起こすと、これに伴って吸引部材11が上昇する。
【0020】
[載置工程]
続いて、図5(B)に示すように、容器Bと異なる他の容器であるグラスCに瓶容器B内の残留ビールを注ぎ入れる。続いて、図6に示すように、グラスCを吸引部材11の真下の位置決めし、ピストン11aを押し下げる。これにより、気泡が混入しているビールがグラスC内に排出される(ステップS3)。この結果、グラスC内の残留ビールに気泡が混入しているビールが合流し(ステップS4)、グラスCの液面には泡層が載置される(ステップS5)。これにより、ビールの気抜けが長時間にわたって適切に抑制される。尚、気泡が混入したビールは、グラスCではなく瓶容器Bに戻すようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、炭酸飲料の液面に適正な泡層を形成する方法に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態にかかる炭酸飲料の液面への泡層形成方法の各工程を示すフローチャートである。
【図2】図1に開示した炭酸飲料の液面への泡層形成方法を実施するための泡層形成装置の例を示す図であり、図2(A)は正面図であり、図2(B)は右側面図である。
【図3】図2に開示した泡層形成装置の背面図である。
【図4】図2に開示した泡層形成装置による開栓工程を示す正面図であり、図4(A)は瓶容器を位置決めした状態を示し、図4(B)は瓶容器に開栓部材を被せた状態を示す。
【図5】図2に開示した泡層形成装置による吸引工程を示す正面図であり、図5(A)は瓶容器からビールを吸引している状態を示し、図5(B)は瓶容器に残留しているビールがグラスに注ぎ入れられる状態を示す。
【図6】気泡が混入したビールが吸引部材からグラスへ排出される工程を示す正面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 泡層形成装置
3 装置本体
5 開栓部材
7 第1の昇降機構
11 吸引部材
13 第2の昇降機構
S1 吸引工程
S3 排出工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された炭酸飲料の一部を吸引部材で気泡を形成しながら吸引する吸引工程と、
前記吸引部材内の前記気泡が含まれる前記炭酸飲料を排出して前記炭酸飲料の液面に泡層を載置する載置工程と、
を含む炭酸飲料の液面への泡層形成方法。
【請求項2】
前記気泡は前記炭酸飲料が吸引される際の乱流、衝撃若しくは減圧によって生じることを特徴とする請求項1に記載の炭酸飲料の液面への泡層形成方法。
【請求項3】
前記吸引部材は開口付きシリンダとピストンからなることを特徴とする請求項1に記載の炭酸飲料の液面への泡層形成方法。
【請求項4】
前記容器は前記炭酸飲料を密封状態で保存する瓶容器若しくは缶容器であり、
前記吸引工程と載置工程との間に、前記容器から吸引されなかった残留炭酸飲料を前記容器と異なる他の容器に注入する工程を更に含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の炭酸飲料の液面への泡層形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−278768(P2008−278768A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123598(P2007−123598)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】