説明

炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法

【課題】炭酸ガス圧を高めることなく、炭酸飲料の炭酸刺激を増強し得る方法の提供。
【解決手段】ヒドロキシ酸エステル類を添加することを特徴とする、炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法;炭酸飲料にヒドロキシ酸エステル類を添加する、又はヒドロキシ酸エステル類を原料として炭酸飲料を製造することを特徴とする前記記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法;前記いずれか記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法を用いることを特徴とする、炭酸飲料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸飲料の炭酸刺激を増強する方法、及び当該方法により製造された炭酸飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料の主な特徴は、口腔内における炭酸刺激により得られる爽快感である。このため、炭酸飲料においては、充分な炭酸刺激を有することが、嗜好性の点から非常に重要である。炭酸刺激は、主に含有される炭酸ガスの量及び温度に依存し、温度が低く、かつ炭酸ガスの含有量が高いほど、炭酸刺激が強く感じられる(例えば、非特許文献1等参照。)。特にビールや発泡酒等のビールテイスト飲料においては、通常0.38〜0.5%の炭酸ガスが含まれているが、炭酸ガス含有量が少ないと単調で味気なくなり、炭酸ガス含有量を高くすることにより、ピリピリした感じが得られ、喫飲によって充分な爽快感が得られる(例えば、非特許文献2等参照。)。
【0003】
炭酸飲料の炭酸ガス圧を高めることによって、炭酸刺激を増強することができる。しかしながら、従来製品よりも炭酸ガス圧を高めた炭酸飲料を製造するためには、製造時に耐圧をより高めたタンクを使用しなければならず、また、より耐圧性の高い缶や瓶等に充填する必要があり、充填設備を変更しなければならない。さらに、通常ガス圧製品と同じ設備を使用する場合、製造時に設備の切り替え時間が必要となることから、充填効率の低下が見込まれ、大幅なコスト増加になるという問題もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】グリーン(Green)、ケミカル・センス(Chemical Sense)、1992年、第17巻、第4号、第435〜450ページ。
【非特許文献2】ラングスタッフ(Langstaff)、他1名、ジャーナル・オブ・ジ・インスティチュート・オブ・ブリューイング(Journal of the Institute of Brewing)、1993年、第99巻、第31〜37ページ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、炭酸ガス圧を高めることなく、炭酸飲料の炭酸刺激を増強し得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、炭酸飲料にヒドロキシ酸エステル類を添加することにより、炭酸ガス圧を高めることなく、炭酸刺激を改善し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) ヒドロキシ酸エステル類を添加することを特徴とする、炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法、
(2) 炭酸飲料にヒドロキシ酸エステル類を添加する、又はヒドロキシ酸エステル類を原料として炭酸飲料を製造することを特徴とする、前記(1)に記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法、
(3) 最終製品である炭酸飲料中のヒドロキシ酸エステル類の含有量が5ppm以上であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法、
(4) 前記ヒドロキシ酸エステル類が、クエン酸トリエチル、クエン酸トリプロピル、クエン酸トリブチル、酒石酸ジエチル、リンゴ酸ジエチル、リンゴ酸ジブチル、乳酸アミル、乳酸ブチル、乳酸エチル、乳酸イソアミル、乳酸イソブチル、乳酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸2−メチルブチル、及び乳酸プロピルからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、前記(1)〜(3)の何れか一つに記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法、
(5) さらに、酸を添加することを特徴とする、前記(1)〜(4)の何れか一つに記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法、
(6) 前記炭酸飲料がビールテイスト飲料であることを特徴とする、前記(1)〜(5)の何れか一つに記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法、
(7) 前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法を用いることを特徴とする、炭酸飲料の製造方法、
(8) 5ppm以上のヒドロキシ酸エステル類を含有することを特徴とする炭酸飲料、
(9) ビールテイスト飲料であることを特徴とする、前記(8)に記載の炭酸飲料、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の炭酸飲料の炭酸刺激を増強する方法により、炭酸ガス圧を高めずとも、炭酸飲料の炭酸刺激を増強することができる。このため、当該方法により、既存の製造設備を大幅に変更することなく、より強い炭酸刺激を有する炭酸飲料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1において、ビール1の炭酸刺激強度の評価結果を示した図である。
【図2】実施例1において、ビール2の炭酸刺激強度の評価結果を示した図である。
【図3】実施例1において、新ジャンルの炭酸刺激強度の評価結果を示した図である。
【図4】実施例1において、ノンアルコールビールの炭酸刺激強度の評価結果を示した図である。
【図5】実施例2において、新ジャンルの炭酸刺激強度の評価結果を示した図である。
【図6】実施例2において、ノンアルコールビールの炭酸刺激強度の評価結果を示した図である。
【図7】実施例3において、各炭酸飲料の炭酸刺激強度の評価結果を示した図である。
【図8】実施例4において、各炭酸飲料の炭酸刺激強度の評価結果を示した図である。
【図9】実施例5において、コーラの炭酸刺激強度の評価結果を示した図である。
【図10】実施例5において、サイダーの炭酸刺激強度の評価結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法(以下、本発明の炭酸刺激増強方法)は、ヒドロキシ酸エステル類を添加することを特徴とする。炭酸ガス含有量が等しいにもかかわらず、炭酸飲料にヒドロキシ酸エステル類が含有されていることにより、ヒドロキシ酸エステル類が含まれていない炭酸飲料に比べて、喫飲時の口腔内における炭酸刺激をより強く感じることができる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、クエン酸エステルをはじめとするヒドロキシ酸エステル類の多くは、鋭くキレの良い苦味を有しており、この苦味が炭酸による刺激と同時に感じられることによって、炭酸刺激と錯覚する結果、炭酸刺激が増強されたと感じられると推察される。
【0011】
本発明の炭酸刺激増強方法によって炭酸刺激が増強される炭酸飲料は、炭酸を含有する飲料であれば特に限定されるものではなく、アルコール飲料であってもよく、ノンアルコール飲料であってもよい。炭酸飲料としては、具体的には、ビール、発泡酒、新ジャンル、ノンアルコールビール等のビールテイスト飲料;ウイスキー、ブランデー、焼酎、リキュール等の非発泡性のアルコール飲料に炭酸ガスを圧入した発泡性アルコール飲料;コーラ、サイダー、ラムネ、ジンジャーエール等の清涼飲料水等が挙げられる。また、甘味料や香料等を含まない単なる炭酸水であってもよい。本発明の炭酸刺激増強方法は、ビールテイスト飲料に対して用いられることがより好ましい。ビールテイスト飲料はもともと苦味を有しているため、ヒドロキシ酸エステル類の添加による苦味を違和感なく受け入れることができるからである。なお、本発明及び本願明細書において、ビールテイスト飲料とは、アルコール含有量や麦芽の使用の有無に関わらず、ビールと同等の又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有し、高い止渇感・ドリンカビリティーを有する発泡性飲料を意味する。また、「新ジャンル」とは、酒税法上、ビールと発泡酒のいずれにも属さないアルコールを含有するビールテイスト飲料を指す。
【0012】
本発明の炭酸刺激増強方法においては、最終製品である炭酸飲料中に、炭酸ガスとヒドロキシ酸エステル類が含有されていればよい。このため、ヒドロキシ酸エステル類の添加時期は特に限定されるものではなく、炭酸飲料の製造工程のいずれかの時点において、原料として添加して炭酸飲料を製造してもよく、製造された炭酸飲料に添加してもよい。また、ヒドロキシ酸エステル類を原料として添加して炭酸飲料を製造し、製造された炭酸飲料にさらにヒドロキシ酸エステル類を添加してもよい。
【0013】
発酵工程を経て製造されるビールテイスト飲料は、一般的に、仕込、発酵、貯酒、濾過、充填の工程で製造される。例えば、ヒドロキシ酸エステル類は、仕込工程において、大麦、小麦、コーンスターチ、コーングリッツ、米、こうりゃん等の澱粉原料や、液糖や砂糖等の糖質原料と共に原料水に添加されてもよく、ホップと共に添加されてもよく、発酵工程において発酵液に添加されてもよく、濾過後、容器への充填前に添加されてもよい。また、複数回に分けて添加してもよい。炭酸ガス圧を調整するために、充填前のビールテイスト飲料にさらに炭酸ガスが圧入される場合があるが、この場合、炭酸ガス圧入前のビールテイスト飲料にヒドロキシ酸エステル類を添加してもよく、炭酸ガス圧入後、充填直前のビールテイスト飲料にヒドロキシ酸エステル類を添加してもよい。
【0014】
また、炭酸ガス以外の全ての原料を添加して調製された飲料溶液に、炭酸ガスを圧入することによって製造される炭酸飲料の場合、ヒドロキシ酸エステル類は、その他の原料と共に添加し、ヒドロキシ酸エステル類を含む試料溶液に炭酸ガスを圧入することによって炭酸飲料を製造してもよく、炭酸ガス圧入後の炭酸飲料に、ヒドロキシ酸エステル類を添加してもよい。
【0015】
本発明において用いられるヒドロキシ酸エステル類としては、経口摂取可能なものであれば特に限定されるものではなく、飲食品への添加剤や原料として使用し得る公知のヒドロキシ酸エステル類の中から、目的とする炭酸飲料の品質等を考慮して適宜選択して用いることができる。本発明においては、クエン酸エステル、酒石酸エステル、リンゴ酸エステル、乳酸エステル等が好ましく用いられる。また、本発明においては、1種類のヒドロキシ酸エステル類のみを用いてもよく、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、複数のヒドロキシ酸エステル類を添加する場合、同時に添加してもよく、1又は2類ずつ別々の時点で添加してもよい。
【0016】
本発明において用いられるヒドロキシ酸エステル類としては、クエン酸トリエチル、クエン酸トリプロピル、クエン酸トリブチル、酒石酸ジエチル、リンゴ酸ジエチル、リンゴ酸ジブチル、乳酸アミル、乳酸ブチル、乳酸エチル、乳酸イソアミル、乳酸イソブチル、乳酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸2−メチルブチル、及び乳酸プロピルからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、クエン酸トリエチル、クエン酸トリプロピル、クエン酸トリブチル、酒石酸ジエチル、及びリンゴ酸ジブチルからなる群より選択される1種以上であることがより好ましく、クエン酸トリエチル、クエン酸トリプロピル、及びクエン酸トリブチルからなる群より選択される1種以上を含むことがさらに好ましい。
【0017】
炭酸飲料に添加されるヒドロキシ酸エステル類の量は、最終製品である炭酸飲料中に、炭酸刺激増強効果が奏されるために充分な量であればよい。例えば最終製品中の含有量は1〜3ppm程度であってもよいが、充分な炭酸刺激増強効果が得られやすいため、5ppm以上であることが好ましい。コーラやサイダー等の発泡性清涼飲料水のガス圧は0.3MPa程度であるが、ガス圧がこの程度の炭酸飲料であれば、ヒドロキシ酸エステル類の含有量を5ppm以上とすることにより、充分な炭酸刺激増強効果が得られる。
【0018】
ヒドロキシ酸エステル類の含有量が過剰になると、ヒドロキシ酸エステル類が有する苦味が炭酸飲料に影響するおそれがある。このため、炭酸飲料中のヒドロキシ酸エステル類の含有量は、5〜40ppmがより好ましく、5〜35ppmがさらに好ましく、5〜30ppmがよりさらに好ましく、10〜30ppmが最も好ましい。
【0019】
ヒドロキシ酸エステル類に加えて、さらに酸を添加することにより、炭酸飲料の炭酸刺激をより向上させることができる。添加される酸は経口摂取可能なものであれば無機酸でも有機酸でもよく、飲食品への添加剤や原料として使用し得る公知の酸の中から、目的とする炭酸飲料の品質等を考慮して適宜選択して用いることができる。本発明においては、1種類の酸を添加してもよく、2種類以上を組み合わせて添加してもよい。また、複数の酸を添加する場合、同時に添加してもよく、酸ごとに別々の時点で添加してもよい。用いられる有機酸としては、乳酸、リン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フィチン酸、グルコン酸、酢酸等が挙げられる。
【0020】
酸は、ヒドロキシ酸エステル類と共に添加してもよく、その他の原料と共に添加してもよい。また、炭酸飲料に添加される酸の量は、炭酸飲料の味を損なわず、かつヒドロキシ酸エステル類による炭酸刺激増強効果をさらに増強し得る量であればよく、炭酸飲料の種類、ヒドロキシ酸エステル類の種類や添加量、添加する酸の種類等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、炭酸飲料には、10〜200ppmの酸を添加することができる。
【実施例】
【0021】
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
【0022】
[実施例1]
ビールテイスト飲料にクエン酸トリブチル(TBC)を添加し、炭酸刺激に対する影響を調べた。具体的には、市販されているビール(2種類)、新ジャンル(1種類)、ノンアルコールビール(1種類)に、TBCを20ppmとなるように添加し、TBC無添加のものと炭酸刺激強度を比較した。
炭酸刺激強度は、訓練されたビール専門パネリスト5名による官能評価にて測定した。評価は、TBC無添加のビールテイスト飲料(対照)の刺激強度を4とし、TBCを添加したビールテイスト飲料(試験品)の刺激強度を1〜7の7段階評価(1が最も刺激が弱く、7が最も刺激が強い。)により行った。また、対照と試験品は、TBCの添加の有無以外は全て同じ条件で評価に供され、かつ、銘柄及び添加濃度はパネリストには提示しない状態で評価を行った。
【0023】
使用した4種のビールテイスト飲料のガス圧、アルコール度数、苦味価(BU)の分析値を表1に示す。苦味価の測定は、EBC(European Brewery Convention)のAnalytica−EBC標準法に準じて行った。また、TBC無添加のビール1及び2の官能コメントを表2に示す。各コメントの後ろの括弧内の数値は、コメントした人数である。官能コメントの結果から、ビール1はすっきり系のビールであり、ビール2はコク系のビールであると評価された。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
炭酸刺激強度の評価結果を図1〜4に示す。図1はビール1の結果であり、図2はビール2の結果であり、図3は新ジャンルの結果であり、図4はノンアルコールビールの結果である。この結果、いずれのビールテイスト飲料においても、TBC無添加の対照よりも、TBCを添加した試験品(図中、「20ppm」)のほうが同じガス圧であってもより強い刺激感が得られた。特にビールについては、官能評価によりすっきり系と評価されたもの(ビール1)と、コク系と評価されたもの(ビール2)のどちらもTBCにより炭酸刺激増強効果が得られた。これらの結果から、各種ビールテイスト飲料において、TBCを適量添加することにより、ガス圧を変更せずとも、炭酸刺激強度を増強し得ることが明らかである。
【0027】
[実施例2]
ビールテイスト飲料に添加するTBC量の、炭酸刺激に対する影響を調べた。具体的には、実施例1で用いた新ジャンル及びノンアルコールビールに、TBCを2、5、20、30、又は40ppm添加した炭酸飲料の炭酸刺激強度を、実施例1と同様にして、ビール専門パネリスト5名による官能評価にて評価した。
炭酸刺激強度の評価結果を図5及び6に示す。図5は新ジャンルの結果であり、図6はノンアルコールビールの結果である。この結果、新ジャンル及びノンアルコールビールのいずれにおいても、TBCを2ppm以上添加することにより炭酸刺激強度が向上する傾向が観察された。特にTBCを5ppm以上添加することにより、炭酸刺激強度が顕著に増大していた。一方で、40ppmを添加した場合には、新ジャンルでは4名のパネリストが、ノンアルコールビールでは3名のパネリストが、苦味を感じるとコメントした。
【0028】
[実施例3]
ヒドロキシ酸エステル類と酸を併用した場合の炭酸刺激に対する影響を調べた。具体的には、実施例1で用いた新ジャンルに、TBCを10ppm添加した炭酸飲料、クエン酸を50ppm添加した炭酸飲料、TBCを10ppm、クエン酸を50ppm添加した炭酸飲料をそれぞれ調製し、これらの炭酸刺激強度を、実施例1と同様にして、ビール専門パネリスト5名による官能評価にて評価した。
炭酸刺激強度の評価結果を図7に示す。この結果、50ppmのクエン酸を添加した炭酸飲料でも、10ppmのTBCを添加した炭酸飲料よりは弱いものの、TBCとクエン酸のいずれも無添加の対照よりも、炭酸刺激強は向上していた。また、TBCとクエン酸をいずれも添加した炭酸飲料では、それぞれ単独で添加したものよりも炭酸刺激強は向上していた。これらの結果から、ヒドロキシ酸エステル類と酸を併用することにより、相加的に炭酸刺激強度を向上させられることが明らかである。
【0029】
[実施例4]
TBC以外のヒドロキシ酸エステル類を添加した場合の炭酸刺激増強効果を調べた。具体的には、実施例1で用いた新ジャンルに、TBC、クエン酸トリエチル(TEC)、酒石酸ジエチル(DET)、又はリンゴ酸ジブチル(DBM)を20ppmとなるように添加して炭酸飲料を調製し、これらの炭酸刺激強度を、実施例1と同様にして、ビール専門パネリスト5名による官能評価にて評価した。
炭酸刺激強度の評価結果を図8に示す。この結果、いずれのヒドロキシ酸エステル類を添加した場合でも、無添加の対照よりも炭酸刺激が向上していた。
【0030】
[実施例5]
ビールテイスト飲料に代えて、清涼飲料水にTBCを添加し、炭酸刺激に対する影響を調べた。具体的には、市販のコーラ又はサイダー(いずれも、ガス圧は0.30MPa)に、TBCを20ppm添加した炭酸飲料をそれぞれ調製し、これらの炭酸刺激強度を、実施例1と同様にして、ビール専門パネリスト5名による官能評価にて評価した。
炭酸刺激強度の評価結果を図9及び10に示す。図9はコーラの結果であり、図10はサイダーの結果である。この結果、コーラとサイダーのいずれにおいても、TBCを添加することにより、無添加の対照よりも炭酸刺激が向上していた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の炭酸刺激増強方法により、炭酸ガス圧を高めずとも、炭酸刺激が増強された炭酸飲料を製造し得るため、当該方法及びこれにより製造された炭酸飲料は、ビール、発泡酒等の発泡性アルコール飲料、ノンアルコールビール、コーラ等の発泡性清涼飲料等の製造分野で利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ酸エステル類を添加することを特徴とする、炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法。
【請求項2】
炭酸飲料にヒドロキシ酸エステル類を添加する、又はヒドロキシ酸エステル類を原料として炭酸飲料を製造することを特徴とする、請求項1に記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法。
【請求項3】
最終製品である炭酸飲料中のヒドロキシ酸エステル類の含有量が5ppm以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法。
【請求項4】
前記ヒドロキシ酸エステル類が、クエン酸トリエチル、クエン酸トリプロピル、クエン酸トリブチル、酒石酸ジエチル、リンゴ酸ジエチル、リンゴ酸ジブチル、乳酸アミル、乳酸ブチル、乳酸エチル、乳酸イソアミル、乳酸イソブチル、乳酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸2−メチルブチル、及び乳酸プロピルからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法。
【請求項5】
さらに、酸を添加することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法。
【請求項6】
前記炭酸飲料がビールテイスト飲料であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の炭酸飲料の炭酸刺激の増強方法を用いることを特徴とする、炭酸飲料の製造方法。
【請求項8】
5ppm以上のヒドロキシ酸エステル類を含有することを特徴とする炭酸飲料。
【請求項9】
ビールテイスト飲料であることを特徴とする、請求項8に記載の炭酸飲料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−94129(P2013−94129A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240506(P2011−240506)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(311007202)アサヒビール株式会社 (36)
【Fターム(参考)】