説明

点字式墨字入力方法、点字式墨字入力プログラム及び点字式墨字入力装置

【課題】接触式の入力部を用いながら、より効率的な点字入力を可能とする点字式墨字入力方法、点字式墨字入力プログラム及び点字式墨字入力装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る点字式墨字入力方法、点字式墨字入力プログラム、及び点字式墨字入力装置50によれば、手指等の指示体が入力パネル面20に接触してから離れるまでを1ストロークとし、1ストロークが終了するまでの間に通過した点字入力領域を認識することで点字入力を行う。これにより、キー等を用いた従来の点字入力よりも、遥かに高速且つ効率的な点字入力を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル等の入力装置を用いて点字入力を墨字に変換する点字式墨字入力方法、点字式墨字入力プログラム及び点字式墨字入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯通信機器、パーソナルコンピュータ、インターネットなどの普及により、視覚障害者が文字(以後、健常者の使用する文字を墨字と表記する。)を用いて意思伝達を行う機会が多くなっている。ただし、視覚障害者にとってはキーボード等を用いた墨字の文字入力よりも、点字による文字入力の方が容易である場合が多い。ここで、下記[特許文献1]には、携帯通信端末のダイヤルキーによる点字入力を墨字に変換する発明が開示されている。この[特許文献1]で開示された発明では、携帯通信端末のダイヤルキーのうち縦3列、横2列の6つのキーを点字のドットに見立て、このキーを押下することで点字入力を可能としている。これにより、視覚障害者はより直感的で効率的な文字入力を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−045135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、[特許文献1]に開示された発明では、キーの押下回数が膨大になると共に指の動きが大きいという問題点があり、より効率的な点字入力方法の実現が望まれる。
【0005】
また、最近では表示画面にタッチパネルを採用し、このタッチパネルへの手指の接触により基本操作を行う携帯通信機器やモバイル機器が人気を博している。このような接触式の入力部を用いて基本操作を行う機器は、平滑な入力パネル面に操作キーが表示され、その表示を視認して操作等を行う。このため視覚障害者にとっては障壁の高い機器といえる。しかしながら、このような障壁の高い機器であっても健常者と同じ機器を使いたいという視覚障害者も多く存在する。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、接触式の入力部を用いながら、より効率的な点字入力を可能とする点字式墨字入力方法、点字式墨字入力プログラム及び点字式墨字入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)指示物の接触により入力が可能な入力パネル面20の縁部近傍に点字のドット配列に対応した複数の点字入力領域を設定するステップと、
指示物が前記入力パネル面20に接触してから離れるまでを1ストロークとして、1ストローク内で通過した点字入力領域を認識するステップと、
1ストロークもしくは連続する複数のストロークで通過した点字入力領域と対応する点字を特定するステップと、
特定された点字を墨字に変換するステップと、
を有することを特徴とする点字式墨字入力方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)指示物の接触により入力が可能な入力パネル面20の縁部近傍に点字のドット配列に対応した複数の点字入力領域を設ける手順と、
指示物が前記入力パネル面20に接触してから離れるまでを1ストロークとして、1ストローク内で通過した点字入力領域を認識する手順と、
1ストロークもしくは連続する複数のストロークで通過した点字入力領域と対応する点字を特定する手順と、
特定された点字を墨字に変換する手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする点字式墨字入力プログラムを提供することにより、上記課題を解決する。
(3)指示物の接触により入力が可能な入力パネル面20を備えた入力部22と、
当該入力部22に点字入力された点字を特定するための点字墨字変換辞書データと、
上記(2)記載の点字式墨字入力プログラムを実行する制御部26と、
を有することを特徴とする点字式墨字入力装置50を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接触式の入力部の入力パネル面に点字のドット配列に対応した点字入力領域を設け、指示物が入力パネル面に接触してから離れるまでに通過した点字入力領域を認識することで点字入力を行う。このため、より高速且つ効率的な点字入力を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る点字式墨字入力装置の模式ブロック図である。
【図2】本発明に係る点字式墨字入力方法、点字式墨字入力プログラム及び点字式墨字入力装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明による点字入力を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る点字式墨字入力方法、点字式墨字入力プログラム及び点字式墨字入力装置について図面に基づいて説明する。
【0011】
図1に示す、本発明に係る点字式墨字入力装置50は、手指などの指示物が接触することで入力動作が可能な入力パネル面20を備えた入力部22と、点字墨字変換辞書データが記録された記録部28と、これらを制御する制御部26と、当該制御部26が各処理に使用するメモリ25と、を有している。また、点字式墨字入力装置50にはスピーカ等の周知の音声出力部24や、振動によりユーザに情報を伝達する振動装置を備えていることが好ましい。
【0012】
尚、本発明に係る点字式墨字入力装置50は、既存の機器に本発明に係る点字式墨字入力プログラムを導入することで構成することが好ましい。この場合、上記の点字式墨字入力装置50の構成は、基本的に点字式墨字入力プログラムが導入された機器に搭載されているものを流用する。即ち、本発明に係る点字式墨字入力プログラム及びそれに付随する点字墨字変換辞書データ等を導入機器の記録部にインストールし、点字式墨字入力プログラムを起動すると、導入機器の接触式の入力部が点字式墨字入力装置50の入力部22を兼ね、導入機器のメモリが点字式墨字入力装置50のメモリ25を兼ね、導入機器の制御コンピュータが点字式墨字入力装置50の制御部26を兼ね、導入機器の音声出力部が点字式墨字入力装置50の音声出力部24を兼ねることとなる。点字式墨字入力装置50の導入が想定される機器としては、タッチパネル方式の携帯通信機器(携帯電話)、タブレット型通信端末、PDA、タッチパッドを備えたノート型パソコンの他、駅の券売機やカーナビゲーション装置、カーオーディオ装置等、接触式の入力部を有する全ての機器が考えられる。また、点字式墨字入力装置50を独立した装置として別に構成し、他の機器と有線もしくは無線で接続して用いても良い。さらに、点字式墨字入力装置50の一部の構成のみを導入機器の構成と兼用することも可能である。例えば、導入機器に接触式の入力部が存在しない場合、専用の入力部22を外付けして点字式墨字入力装置50を構成しても良い。この場合、外付けの入力部22を据置式にして片手での点字入力を可能とすることが好ましい。
【0013】
また、本発明は基本的に導入機器で起動しているソフトウェアへの文字入力を行うものである。よって、点字式墨字入力装置50は後述の手順により点字を墨字(墨字情報)に変換した後、これを導入機器で起動しているソフトウェアに伝達する。導入機器で起動しているソフトウェアは伝達された墨字(墨字情報)をそのソフトウェアに応じて取り扱う。例えば、起動しているソフトウェアが文書作成ソフトウェアであれば、点字式墨字入力装置50から伝達された墨字をテキストで表示し墨字の文書を作成する。また、起動しているソフトウェアがユーザに対し“はい”、“いいえ”などの選択を読み上げ等で要求している場合に、本願発明を用いて“はい”、“いいえ”などの回答を点字入力で行うことができる。
【0014】
次に、本発明に係る点字式墨字入力装置50の動作、点字式墨字入力方法及び点字式墨字入力プログラムを図2のフローチャート及び図1、図3を用いて説明する。
【0015】
先ず、所定の操作により点字式墨字入力プログラムを起動する(ステップS100)。これにより点字式墨字入力装置50の制御部26は、入力部22の入力パネル面20の縁部近傍に点字のドット配列に対応した複数の点字入力領域を設定する(ステップS102)。
【0016】
ここで、六点点字は縦3列、横2列の6点で表記する。よって六点点字に基づく点字入力の場合、入力パネル面20には、図1に示すように、入力パネル面20の四隅近傍と左右縁部近傍の6箇所に点字入力領域A〜Fが設定される。また、漢字を表現するために拡張された「漢点字」体系では縦4列、横2列の8点で表記する。よって漢字点に基づく点字入力の場合、入力パネル面20の四隅近傍に加え左右縁部近傍に2対(4箇所)の計8箇所に点字入力領域が設定される。点字式墨字入力装置50は六点点字入力と漢字点入力との双方に対応可能としても良いし、六点点字入力のみ対応可能としても良い。そして、六点点字入力と漢字点入力との双方に対応可能な場合には、所定の操作により六点点字入力と漢字点入力とが切り替わることが好ましい。尚、ここでは六点点字入力を例に本願発明の説明を行う。
【0017】
また、後述するように本発明に係る点字式墨字入力方法では入力パネル面20に指示体を接触させたまま、必要な点字入力領域に連続して接触させる必要がある。従って、点字入力領域の少なくとも縦列間には点字入力領域が存在しない空白領域を設けることが好ましい。この空白領域の存在により、入力パネル面20に指示体を接触させたまま上列の点字入力領域A、Dから中列の点字入力領域B、Eに接触せずに下列の点字入力領域C、Fに接触することが可能となる。また、点字入力領域は指示体による誤入力を防止するため角には十分なアールを設けるか、その形状を略半円状もしくは略扇形状とすることが好ましい。
【0018】
また、点字入力領域は基本的に視覚障害者のためのものであるから、入力パネル面20がタッチパネルのように表示機能を備えている場合でも、この点字入力領域を表示する必要は無い。ただし、健常者の使用も考慮して表示を行うことが好ましく、この場合には点字入力領域を半透明表示にするなどして表示画面への干渉を最小限に抑えることが好ましい。
【0019】
さらに、入力パネル面20の点字入力領域に相当する位置には目印のための突起や段差を設けても良い。この目印としては、点字入力領域に相当する入力パネル面20の位置に手指が感知する程度の厚みを有する透明な粘着フィルムを貼り付けることで形成することが好ましい。この構成によれば、入力パネル面20が表示機能を備えている場合でも、その表示機能及び入力機能を損なうことなく、また安価かつ容易に目印を設けることができる。尚、目印は、図1の目印12に示すように、入力パネル面20外側の外装体10の点字入力領域A〜F近傍に突起や段差を形成することで設けても良い。
【0020】
上記のステップS102において点字入力領域が設定すると、制御部26はユーザが手指等の指示体を入力パネル面20に接触させるまで待機する(ステップS104)。ここで、ユーザが点字入力の終了操作を行った場合(ステップS103:Yes)、制御部26は点字入力動作を終了する(ステップS300)。
【0021】
ユーザが手指等の指示体を入力パネル面20に接触させると(ステップS104:Yes)、制御部26はこれを感知して点字入力認識動作を開始する(ステップS105)。ここで、指示体が入力パネル面20に接触してから離れるまでを1ストロークとすると、制御部26は1ストロークが終了するまでの間に通過した点字入力領域を認識しメモリ25に記録する(ステップS106)。そして、指示体が入力パネル面20から離れると制御部26はこのことを感知して(ステップS108:Yes)、1ストロークの点字入力認識動作を確定する(ステップS109)。
【0022】
例えば、図3(a)に示すように、墨字“あ”を点字入力する場合、ユーザは図3(a−1)に示すように、指示体を点字入力領域Aに接触させた後、入力パネル面20から離す。制御部26は指示体が接触した点字入力領域Aをメモリ25に記録して、1ストロークの点字入力動作を確定する。また、図3(b)に示すように、墨字“い”を点字入力する場合、ユーザは例えば図3(b−1)に示すように、指示体を点字入力領域Aに接触させた後、接触状態を維持したまま点字入力領域Bに接触させる。そして、入力パネル面20から離す。この場合、制御部26は指示体が接触した点字入力領域A、Bをメモリ25に記録して、1ストロークの点字入力動作を確定する。また、図3(c)に示すように、墨字“え”を点字入力する場合、ユーザは例えば図3(c−1)に示すように、指示体を点字入力領域Aに接触させた後、接触状態を維持したまま点字入力領域B、点字入力領域Dに接触させる。そして、入力パネル面20から離す。この場合、制御部26は指示体が接触した点字入力領域A、B、Dをメモリ25に記録して、1ストロークの点字入力動作を確定する。また、図3(d)に示すように、墨字“く”を点字入力する場合、ユーザは例えば図3(d−1)に示すように、指示体を点字入力領域Aに接触させた後、接触状態を維持したまま点字入力領域Dを接触し空白領域を経由して、点字入力領域Fに接触させる。そして、入力パネル面20から離す。この場合、制御部26は指示体が接触した点字入力領域A、D、Fをメモリ25に記録して、1ストロークの点字入力動作を確定する。
【0023】
尚、1ストローク内での点字入力領域の接触順序は問わない。例えば、上記の墨字“え”の点字入力では前述のように点字入力領域A→B→Dの順に入力しても良いし、図3(c−2)に示すように、点字入力領域D→A→Bの順でも、点字入力領域B→A→Dの順でも、それ以外でも構わない。また、上記の墨字“く”の点字入力では前述のように点字入力領域A→D→Fの順に入力しても良いし、図3(d−2)に示すように、点字入力領域D→A→Fの順でも、それ以外でも構わない。
【0024】
また、1ストローク内で同じ点字入力領域を複数回接触したとしてもこれは1回の接触と同等に取り扱う。例えば、墨字“え”の点字入力の際に、点字入力領域A→B→A→Dのルートで点字入力を行ったとしても、制御部26は点字入力領域A、B、Dをメモリ25に記録する。さらに、1ストロークの開始点、即ち指示体が入力パネル面20に接触する点と、指示体が入力パネル面20から離れる終点は空白領域であっても良い。このような構成とすることで、ユーザによる点字入力の自由度を飛躍的に向上させることができる。尚、1ストロークの点字入力動作内で空白領域のみを接触した場合、もしくは予め決められた空白領域、例えば点字入力領域C、F間の空白領域のみを接触した場合、空白(スペース)が点字入力されたものと認識しても良い。
【0025】
尚、点字入力領域に接触した際には“ピッ”等のビープ音を出力して、点字入力領域に接触したことをユーザに報知しても良い。またこの際、接触している点字入力領域の色を変化させても良い。さらに、盲聾者の使用も考慮して振動装置を短時間振動させても良い。
【0026】
上記のようにして、1ストロークの点字入力動作が終了すると、制御部26は記録部28に記録された点字墨字変換辞書データを検索して1ストローク内で通過した点字入力領域と対応する点字を特定する(ステップS110)。尚、対応する点字が特定できなかった場合、このことを音声、振動等でユーザに報知した上でステップS104に移行して、ユーザが次の点字入力動作を行うまで待機する。
【0027】
次に、制御部26はステップS110で特定された点字が濁音や拗音等を示す前置点、数字を示す数符、アルファベットを示す外字符等か否かを判別する(ステップS112)。尚、以後は前置点、数符、外字符等を全て前置符と記述するものとする。そして、特定された点字が前置符以外であった場合(ステップS112:No)、そのままステップS114に移行する。また、特定された点字が前置符であった場合(ステップS112:Yes)、2ストローク入力モードに移行する(ステップS200)。このとき、入力された前置符の音声による読み上げ、特殊なビープ音の出力、画面への表示、振動装置の振動等を単独もしくは組み合わせて行い、どの前置符が入力されたかをユーザに報知するようにしても良い。
【0028】
次に、2ストローク入力モードにおいて、ユーザが指示体を入力パネル面20に接触させる。制御部26はこれを感知して(ステップS202:Yes)、2ストローク目の点字入力認識動作を開始する(ステップS203)。次に、制御部26はステップS106と同様に指示体が入力パネル面20に接触してから離れるまでの間に通過した点字入力領域を認識しメモリ25に記録する(ステップS204)。そして、指示体が入力パネル面20から離れると制御部26はこのことを感知して(ステップS206:Yes)、2ストローク目の点字入力認識動作を確定する(ステップS207)。次に、制御部26は点字墨字変換辞書データを検索し、直前に入力された前置符の内容を加味した上で2ストローク目で通過した点字入力領域と対応する点字を特定する(ステップS208)。例えば、ステップS110で特定された点字が、図3(e−1)の“1st”に示すように濁音符であった場合に、2ストローク目で図3(e−1)の“2nd”に示すように墨字“く”の点字入力が行われると、制御部26はステップS208において先の濁音符を加味してこれを墨字“ぐ”と特定する。そして、制御部26は2ストローク入力モードを通常の点字入力モードに戻した上で(ステップS210)、ステップS114に移行する。尚、ステップS208において対応する点字が特定できなかった場合、このことを音声、振動等でユーザに報知した上で通常の点字入力モードに戻した後、ステップS104に移行してユーザが次の点字入力動作を行うまで待機する。
【0029】
上記のようにして1ストロークもしくは連続する2ストロークで点字入力された点字が特定されると、制御部26は特定された点字を墨字(墨字情報)に変換する(ステップS114)。そして、音声出力部24を備えている場合には、変換した墨字の読み上げを行う(ステップS116)。このとき、振動装置を入力した点字に応じた特定のパターンで振動させても良い。墨字の読み上げは導入した機器側が音声データを備えていればそれを利用する。音声データを備えていない場合、例えば必要な音声データと音声出力プログラムを予め記録部28に記録しておき、これを用いて変換した墨字の読み上げを行う。またこのとき、入力パネル面20の表示部に変換した墨字を表示するようにしても良い。
【0030】
尚、上記の例では1ストロークもしくは連続する2ストロークでの点字入力の例を示している。ただし、点字には3つ以上の点字で構成される特殊な表記符号等が存在する。よって、連続する2ストロークが特殊な表記符号の先頭と2番目の点字である場合、特殊な表記符号の最後の点字入力が終了した時点で、これら連続する複数のストロークで点字入力された点字を特定する。また、点字には後ろの点字により直前の点字が変化する場合がある。よって、点字入力の入力履歴はメモリ25等に必要最低限記録しておき、後続の点字入力により入力されるべき点字が変化する場合には、遡ってこれを適用するものとする。
【0031】
次に、制御部26は変換された墨字(墨字情報)を連携して動作しているソフトウェアに伝達する(ステップS118)。そして、制御部26はステップS104に戻りステップS103で終了操作が行われるまで点字入力動作を継続する。また、墨字(墨字情報)が伝達されたソフトウェアはこの墨字(墨字情報)をソフトウェアのプログラムに応じて取り扱う。
【0032】
尚、ステップS116の読み上げ時に、点字入力した文字がユーザの意図した文字と異なる場合、次の点字入力動作時に予め定められた一字削除の入力動作を行うことで、制御部26は直前に変換された墨字を削除するようソフトウェアに伝達する。一字削除の入力動作としては、例えば予め決められた空白領域、例えば点字入力領域A、D間の空白領域のみを接触する入力動作などが挙げられる。
【0033】
尚、点字では表面から指で触って読む場合の凸面点字と、裏面からピン等で紙に孔を開け点字を書く場合の凹面点字とが存在する。そして、凸面点字と凹面点字とは点の配列が対称となる。上記の例では凸面点字による入力を説明したが、本発明に係る点字式墨字入力方法、点字式墨字入力プログラム及び点字式墨字入力装置50では、凸面点字による点字入力と凹面点字による点字入力との双方に対応し切り替え可能とすることが好ましい。この場合、図3の破線で囲った図のように、凸面点字入力と凹面点字入力とでは入力する点字入力領域が対称となる。尚、凸面点字による点字入力と凹面点字による点字入力との切り替えは、点字墨字変換辞書データ内の凸面点字用辞書データと凹面点字用辞書データとを切換えることで行うことが好ましい。
【0034】
また、点字では例えば“は”、“わ”等の助詞の記載において、墨字の書き言葉とは異なる規則が存在する。これに関しては、基本的に墨字の書き言葉の規則に従うものとする。ただし、連携するソフトウェアが伝達された墨字を受けて適宜修正変換するようにしても構わない。
【0035】
尚、入力部22によっては複数の手指により同時に入力が可能な複数点入力に対応したものが存在する。複数点入力に対応した入力部22においては、最初に指(指示体)が接触してから全部の指が離れるまでを1ストロークとする。そして、この場合には2本以上の指で2つ以上の点字入力領域を並行して通過させて点字入力を行うことが可能である。
【0036】
また、六点点字は世界的に利用されており、点字墨字変換辞書データをその国の言語に対応するものに変更すれば、本願の点字式墨字入力装置50、点字式墨字入力方法及び点字式墨字入力プログラムは他言語でも使用可能である。
【0037】
以上のように、本発明に係る点字式墨字入力方法、点字式墨字入力プログラム、及び点字式墨字入力装置50によれば、手指等の指示体が入力パネル面20に接触してから離れるまでを1ストロークとし、1ストロークが終了するまでの間に通過した点字入力領域を認識することで点字入力を行う。具体的にはユーザの手指が入力パネル面20に触れる、なぞる、離す、といった一連の動作によって点字入力を行うことができる。また、指示体が入力パネル面20から離れることが1ストロークの点字入力の確定動作を意味しており、キー等の点字入力における確定ボタンの押下が不要となる。これらのことから、本願発明はキー等を用いた従来の点字入力よりも、遥かに高速且つ効率的な点字入力を行うことができる。
【0038】
また、本発明に係る点字式墨字入力方法、点字式墨字入力プログラム、及び点字式墨字入力装置50は、視覚障害者にとっては扱いづらい接触式の入力部を用いて点字入力を行う。よって、視覚障害者に対し接触式の入力部を備えた機器の利用促進を図ることができる。
【0039】
さらに、本発明に係る点字式墨字入力方法、点字式墨字入力プログラム、及び点字式墨字入力装置50では、1ストローク内であればどのような順番で点字入力領域に接触しても良い。また、同一の点字入力領域に複数回接触しても良い。さらに、始点、終点が空白領域であっても構わない。よって、点字入力動作の自由度が高く、ユーザの熟練によってさらなる点字入力の高速化と効率化とを図ることができる。
【0040】
またさらに、本発明に係る点字式墨字入力方法、点字式墨字入力プログラム、及び点字式墨字入力装置50は基本的に導入機器の構成を流用するため、特別な装置構成を必要とせず、安価かつ手軽に導入することができる。これにより、視覚障害者のみならず健常者による点字の習得にも利用することができる。
【0041】
尚、本発明は点字式墨字入力方法の機能を導入機器のコンピュータに実現させるためのプログラムを含むものである。これらのプログラムは、他の記録媒体から読み取って導入機器に取り込んでも良いし、通信ネットワークを介した伝送により導入機器に取り込んでも良い。
【0042】
また、上記の例は本発明の具体的な一例であるから、フローチャートの内容、一字削除の方法、前置符の扱い等、本発明と間接的に関連する部分はこれに限定されるものではない。さらに、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
20 入力パネル面
22 入力部
26 制御部
50 点字式墨字入力装置
A〜F 点字入力領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指示物の接触により入力が可能な入力パネル面の縁部近傍に点字のドット配列に対応した複数の点字入力領域を設定するステップと、
指示物が前記入力パネル面に接触してから離れるまでを1ストロークとして、1ストローク内で通過した点字入力領域を認識するステップと、
1ストロークもしくは連続する複数のストロークで通過した点字入力領域と対応する点字を特定するステップと、
特定された点字を墨字に変換するステップと、
を有することを特徴とする点字式墨字入力方法。
【請求項2】
指示物の接触により入力が可能な入力パネル面の縁部近傍に点字のドット配列に対応した複数の点字入力領域を設ける手順と、
指示物が前記入力パネル面に接触してから離れるまでを1ストロークとして、1ストローク内で通過した点字入力領域を認識する手順と、
1ストロークもしくは連続する複数のストロークで通過した点字入力領域と対応する点字を特定する手順と、
特定された点字を墨字に変換する手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする点字式墨字入力プログラム。
【請求項3】
指示物の接触により入力が可能な入力パネル面を備えた入力部と、
当該入力部に点字入力された点字を特定するための点字墨字変換辞書データと、
請求項2記載の点字式墨字入力プログラムを実行する制御部と、
を有することを特徴とする点字式墨字入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−118643(P2012−118643A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265929(P2010−265929)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】