説明

点字表示手摺

【課題】点字ピンを容易かつ確実に打ち込むことができる点字表示手摺を提供すること。
【解決手段】中空状に形成された手摺構成体2の点字表示部3に、点字ピン4を打刻して点字を形成する点字表示手摺Hにおいて、点字表示部3における点字ピン4を打刻する箇所に、点字ピン4の打ち込み部42の径より大径の貫通孔31を設け、手摺構成体2の内部には、手摺構成体2の内面のうち少なくとも点字表示部3の範囲で手摺構成体2の内面に接触する接触面51を有すると共に、接触面51に点字ピン4が打ち込み可能な保持部材5を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、点字表示部を有する手摺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば駅等の公共施設においては、階段手摺等に点字等の情報表示部を設けて、視覚障害者に対する情報の提供を行っている。
【0003】
しかし、従来のものは、手摺を摺って歩く動作に支障のないように薄肉の金属板やシール等に点字を刻印した情報表示プレートを手摺の表面にリベット等で取り付けるため、使用するうちに剥がれた状態や、金属板の端部が跳ね上がった状態となって、利用者が負傷する危険性の虞がある。
【0004】
これを解決するものとして、点字表示部に直接点字ピンを打刻する構造のものがあり、例えば、点字ピンを打刻する面に点字孔を設け、この点字孔に軸部にかしめ用の突起を形成した点字ピンを打刻して、点字ピンを打刻面に固定する構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平7−41579号公報(実用新案登録請求の範囲、図2〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、点字ピンを金属製の手摺等に打刻する場合、かしめ用突起を打刻面内に打ち込む必要があるので強い力で打ち込まなければならず、打ち込み作業に手間がかかると共に、ピンが曲がる虞がある。また、点字ピンの軸部にかしめ用の突起を設ける必要があるため、点字ピンの製作コストが嵩むという問題があった。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、点字ピンを容易かつ確実に打ち込むことができ、点字ピンの製作コストの低廉化を図ることができる点字表示手摺を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、中空状に形成された手摺構成体の点字表示部に、点字ピンを打刻して点字を形成する点字表示手摺であって、 上記点字表示部における上記点字ピンを打刻する箇所に、点字ピンの打ち込み部の径より大径の貫通孔を設け、 上記手摺構成体の内部には、上記手摺構成体の内面のうち少なくとも上記点字表示部の範囲で手摺構成体の内面に接触する接触面を有すると共に、接触面に上記点字ピンが打ち込み可能な保持部材を配置してなる、ことを特徴とする。
【0008】
このように構成することにより、点字ピンを手摺構成体の表示部に設けられた点字ピンの打ち込み部の径より大径の貫通孔を介して手摺構成体の内部に配置された保持部材に打ち込むことで、点字を手摺構成体の点字表示部に打刻することができる。
【0009】
請求項1記載の発明において、上記保持部材の接触面は、手摺構成体に設けられた貫通孔と連通すると共に、点字ピンの打ち込み部の径より小径の保持孔を有する構造としてもよい(請求項2)。この場合、上記保持孔を、点字表示部に打刻した点字と同一ピッチ間隔で縦横に複数配列してなる方が好ましい(請求項3)。
【0010】
このように構成することにより、点字ピンの打ち込み部を保持部材の保持孔に嵌挿して保持することができる。この場合、上記保持孔を点字と同一ピッチ間隔で縦横に複数配列することで、点字表示部の範囲に設けられた貫通孔に対応して点字ピンの打ち込み部を保持部材の保持孔に貫挿することができる(請求項3)。
【0011】
請求項4記載の発明は、上記保持部材を着脱可能に保持した状態で上記手摺構成体の内部に挿入する位置決め用治具に、上記手摺構成体の端部と当接して手摺構成体の長さ方向への上記保持部材の位置決めをする係止鍔部と、上記手摺構成体の端部に設けられた切欠部に係止して手摺構成体の周方向への上記保持部材の位置決めをする係止突部を設けてなることを特徴とする。
【0012】
このように構成することにより、位置決め用治具の係止鍔部によって手摺構成体の長さ方向への保持部材の位置決めをすることができると共に、係止突部によって手摺構成体の周方向への保持部材の位置決めをすることができるので、保持部材を手摺構成体の表示部に対応する所定位置に挿入することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上に詳述したように、この発明の手摺によれば、上記のように構成されているので、以下の効果が得られる。
【0014】
(1)請求項1記載の発明によれば、点字ピンを手摺構成体に設けられた貫通孔を介して手摺構成体の内部に配置された保持部材に打ち込むことで、点字を手摺構成体の点字表示部に打刻することができるので、点字ピンの打ち込み作業を容易に行うことができる。
【0015】
また、点字ピンは保持部材に打ち込まれるので、脱抜の防止が図れ、点字を有する手摺の寿命を延ばすことができる。
【0016】
(2)請求項2記載の発明によれば、保持部材の接触面に、手摺構成体に設けられた貫通孔と連通すると共に、点字ピンの打ち込み部の径より小径の保持孔を設けることで、点字ピンの打ち込み部を保持部材の保持孔に嵌挿して保持することができるので、上記(1)に加えて更に、小さな力で点字ピンを打ち込むことができ、打ち込み作業を容易に行うことができると共に、点字ピンを確実に打ち込むことができる。
【0017】
(3)請求項3記載の発明によれば、保持孔を点字と同一ピッチ間隔で縦横に複数配列することで、点字表示部の範囲に設けられた貫通孔に対応して点字ピンの打ち込み部を保持部材の保持孔に貫挿することができるので、上記(2)に加えて更に、手摺構成体の点字表示部に複数列の点字文を容易に打刻することができる。
【0018】
(4)請求項4記載の発明によれば、位置決め用治具の係止鍔部によって手摺構成体の長さ方向への保持部材の位置決めをすることができると共に、係止突部によって手摺構成体の周方向への保持部材の位置決めをすることができ、保持部材を手摺構成体の表示部に対応する所定位置に挿入することができるので、上記(1)〜(3)に加えて更に、保持部材を手摺構成体の内部の所定位置へ容易かつ確実に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、この発明に係る点字表示手摺の最良の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、この発明に係る手摺の取付状態を示す全体斜視図、図2は、この発明における手摺構成体に点字ピンを打刻する状態を示す拡大斜視図(a)及び(a)のI−I線に沿う断面図(b)、図3は、この発明における手摺構成体と保持部材を示す斜視図である。
【0021】
この発明に係る点字表示手摺Hは、例えば駅等の公共施設の階段や通路等に設置される手摺本体1の一部に、図示しない連結ジョイントを介して、点字表示部3を有する手摺構成体2を組み込んで、視覚障害者に対する情報の提供を行えるようにした点字表示手摺Hである。
【0022】
この場合、手摺本体1は、例えばステンレス製のパイプにて形成されており、ブラケット8によって壁面9に固定されている。
【0023】
上記手摺構成体2は、図2ないし図4に示すように、外径が手摺本体1の外径と同一寸法の例えばステンレス製のパイプにて形成されており、略中央部の上方側に、点字ピン4を打刻して点字を形成する点字表示部3と、この点字表示部3における点字ピン4を打刻する箇所に、点字ピン4を打ち込む貫通孔31が例えばレーザー加工によって設けられている。
【0024】
また、手摺構成体2の内部には、手摺構成体2の内面のうち少なくとも点字表示部3の範囲で手摺構成体2の内面に接触する接触面51を有すると共に、接触面51に点字ピン4が打ち込み可能な保持部材5が配置されている。
【0025】
また、両開口端部21の下方側には、後述する化粧部材(図示せず)を取り付ける切欠部22が設けられている。
【0026】
なお、第1実施形態においては、保持部材5の全面が手摺構成体2の内面に接触する構造になっており、摩擦力によって保持部材5が手摺構成体2内に固定される。
【0027】
上記点字ピン4は、図2に示すように、点字表示部3において点字を形成する略半球状の点字頭部41と、手摺構成体2の貫通孔31を貫通すると共に、先端が保持部材5に打ち込み可能な打ち込み部42とで形成されている。この場合、打ち込み部42は先端に向かってテーパ部43を有して形成されている。
【0028】
上記点字表示部3は、図2に示すように、点字ピン4を打刻する箇所に、点字ピン4の打ち込み部42より大径の貫通孔31が設けられている。なお、点字1文字は6ピンで形成されており、点字の間隔及び点字ピン4の点字頭部41の中心間距離等はJIS(日本工業規格)により定められ、1行マス数は40マスを超えない程度が望ましい。
【0029】
上記保持部材5は、図2ないし図4に示すように、例えば、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)又はABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の合成樹脂製部材によって手摺構成体2の点字表示部3の範囲で手摺構成体2の内面に接触する接触面51を有する略円筒状に形成されている。また、接触面51には、手摺構成体2に設けられた貫通孔31と連通すると共に、点字ピン4の打ち込み部42の径より小径の保持孔52が設けられている。この場合、保持孔52は、点字を打刻する箇所に保持孔52を6個単位で40マス分設けられている。
【0030】
なお、保持孔52は、図8に示すように、点字表示部3に打刻した点字と同一ピッチ間隔で縦横に複数配列して設けてもよい。
【0031】
また、保持部材5の両端部には、保持部材5を手摺構成体2の内部の所定位置に挿入する位置決め用治具6を着脱可能に係止する係止溝53が形成されている。
【0032】
このように点字表示部3と保持部材5を形成することにより、点字ピン4の打ち込み部42を点字表示部3の貫通孔31を貫通させ、保持部材5の保持孔52に嵌挿して保持することができるので、小さな力で点字ピン4を打ち込むことができ、打ち込み作業を容易に行うことができると共に、点字ピン4を確実に打ち込むことができる。また、打ち込まれた点字ピン4は不用意に脱抜することがないので、点字を有する手摺Hの寿命を延ばすことができる。
【0033】
上記位置決め用治具6は、図4に示すように、手摺構成体2の内部に挿入される基部61と、この基部61の一端に設けられ保持部材5の両端部に形成された係止溝53に着脱可能に係止する係止凸条62と、基部61の他端周縁に外方に向かって突出して周設され、手摺構成体2の開口端部21と当接する係止鍔部63と、基部61の下方端部に係止鍔部63と連続して設けられ、手摺構成体2の開口端部21に設けられた切欠部22に係止する係止突部64とで一体に形成されている。
【0034】
このように位置決め用治具6を形成することにより、係止凸条62と保持部材5の係止溝53とを係止させて保持部材5を保持して、保持部材5を手摺構成体2の開口端部21から手摺構成体2の内部に挿入し、係止鍔部63が手摺構成体2の開口端部21に係合することで手摺構成体2の長さ方向への保持部材5の位置決めをすることができる。
【0035】
また、係止突部64が手摺構成体2の開口端部21に設けられた切欠部22に係止することで手摺構成体2の周方向への保持部材5の位置決めをすることができる。
【0036】
したがって、保持部材5を手摺構成体2の内部の所定位置に容易かつ確実に配置することができる。
【0037】
なお、保持部材5を所定位置に配置した後に位置決め用治具6を外方へ引き出すことで、保持部材5の係止溝53と位置決め用治具6の係止凸条62との係止状態が解かれて、保持部材5を手摺構成体2内に配置した状態で位置決め用治具6を手摺構成体2内から抜き出すことができる。
【0038】
上記のように構成される点字表示手摺Hは、まず、工場において点字表示部3の点字を打刻する位置に貫通孔31をレーザー加工等によって穿設しておき、上記において説明したように、工場または施工現場において、手摺構成体2の内部に位置決め用治具6を用いて保持部材5を配置する。
【0039】
次に、保持部材5を内部に配置した手摺構成体2を、手摺構成体2の長さと略同一幅の間隔をあけて分割された手摺本体1の間に配置して、手摺構成体2の両開口端部21と手摺本体1の開口部とを突き合わせる。この状態で、手摺構成体2と手摺本体1の内面側から手摺構成体2の両開口端部21と手摺本体1の開口部にまたがって係合する連結ジョイント(図示せず)を介して、手摺本体1に手摺構成体2を接続する。
【0040】
なお、この場合、化粧部材(図示せず)を切欠部22に挿入すると共に、取付ねじ(図示せず)を介して連結ジョイントに取り付けることで、切欠部22を塞いで目隠しすることができる。
【0041】
上記のように手摺本体1と手摺構成体2とを接続した状態で、点字表示部3の貫通孔31に、図示しないハンマー等の打ち込み用工具を用いて、点字ピン4の点字頭部41を叩くと共に、打ち込み部42を貫通孔31を貫通させて保持部材5の保持孔52に打ち込むことで、打ち込み部42を保持孔52に嵌挿して保持することができるので、小さな力で点字ピン4を打ち込むことができ、打ち込み作業を容易に行うことができると共に、点字ピン4を確実に打ち込むことができる。
【0042】
なお、第1実施形態において、点字ピン4を手摺構成体2を手摺本体1に接続した後に打ち込む場合について説明したが、手摺構成体2を手摺本体1に接続する前に、予め工場または施工現場で打ち込んでおいてもよい。
【0043】
<第2実施形態>
図5は、この発明に係る手摺の第2実施形態の保持部材及び位置決め用治具を示す斜視図(a)及び(b)である。
【0044】
第2実施形態は、点字表示手摺において、手摺構成体2の内部に配置される保持部材5Aの断面形状を変形し、位置決め用治具6Aの形状を変形した場合である。
【0045】
上記保持部材5Aは、図5に示すように、例えば、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)又はABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の合成樹脂製部材によって手摺構成体2の点字表示部3の範囲で手摺構成体2の内面に接触する接触面51を有する略半円筒状に形成されており、接触面51には、手摺構成体2に設けられた貫通孔31と連通すると共に、点字ピン4の打ち込み部42の径より小径の保持孔52が設けられている。この場合、保持孔52は、点字を打刻する箇所に保持孔52を6個単位で40マス分設けられている。
【0046】
このように保持部材5Aを形成することにより、第1実施形態の保持部材5に対して材料を少なくすることができ、第1実施形態と同様に、点字ピン4の打ち込み部42を点字表示部3の貫通孔31を貫通し、保持部材5Aの保持孔52に嵌挿して保持することができるので、小さな力で点字ピン4を打ち込むことができ、打ち込み作業を容易に行うことができると共に、点字ピン4を確実に打ち込むことができる。
【0047】
上記位置決め用治具6Aは、図5に示すように、手摺構成体2の内部に挿入されて手摺構成体2の下方内面に沿って接触する略半円柱状の支持部65と、支持部65の上面側に設けられ、保持部材5Aの内面に沿って接触する略半円柱状の受け部66と、支持部65の端部に設けられ、外方に向かって突出して周設されて手摺構成体2の開口端部21と当接する係止鍔部63と、支持部65の下方端部に係止鍔部63と連続して設けられ、手摺構成体2の開口端部21に設けられた切欠部22に係止する係止突部64と、支持部65の上面端部に設けられ、係止鍔部63から間隔をおいて端部が保持部材5Aの端部と当接する段部67とで一体に形成されている。
【0048】
このように位置決め用治具6Aを形成することにより、受け部66に保持部材5Aを載置して、保持部材5Aを手摺構成体2の開口端部21から手摺構成体2の内部に挿入し、係止鍔部63が手摺構成体2の開口端部21に係合することで手摺構成体2の長さ方向への保持部材5Aの位置決めをすることができる。
【0049】
また、係止突部64が手摺構成体2の開口端部21に設けられた切欠部22に係止することで手摺構成体2の周方向への保持部材5Aの位置決めをすることができる。
【0050】
したがって、保持部材5Aを手摺構成体2の内部の所定位置に容易かつ確実に配置することができる。
【0051】
なお、第2実施形態においては、保持部材5Aを所定位置に配置し、位置決め用治具6Aに保持部材5Aを載置した状態で、手摺構成体2の点字表示部3に点字ピン4を打ち込み、点字ピン4の打ち込み作業が終わった後に、位置決め用治具6Aを外方へ引き出すことで、保持部材5Aを手摺構成体2内に固定した状態で位置決め用治具6Aを手摺構成体2内から抜き出すことができる。
【0052】
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0053】
<第3実施形態>
図6は、この発明に係る手摺の第3実施形態の保持部材および位置決め用治具を示す斜視図(a)及び(b)である。
【0054】
第3実施形態は、点字表示手摺において、手摺構成体2の内部に配置される保持部材5Bの断面形状を変形し、位置決め用治具6Bの形状を変形した場合である。
【0055】
上記保持部材5Bは、図6に示すように、例えば、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)又はABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の合成樹脂製部材によって手摺構成体2の点字表示部3の範囲で手摺構成体2の内面に接触する接触面51を有し、内面に後述する位置決め用治具6Bの係止段部68に係止可能な係止凹部54を有する略中空半円筒状に形成されており、接触面51には、手摺構成体2に設けられた貫通孔31と連通すると共に、点字ピン4の打ち込み部42の径より小径の保持孔52が設けられている。この場合、保持孔52は、点字を打刻する箇所に保持孔52を6個単位で40マス分設けられている。
【0056】
このように保持部材5Bを形成することにより、第1実施形態の保持部材5に対して材料を少なくすることができ、第1実施形態と同様に、点字ピン4の打ち込み部42を点字表示部3の貫通孔31を貫通させて、保持部材5Bの保持孔52に嵌挿して保持することができるので、小さな力で点字ピン4を打ち込むことができ、打ち込み作業を容易に行うことができると共に、点字ピン4を確実に打ち込むことができる。
【0057】
上記位置決め用治具6Bは、図6に示すように、手摺構成体2の内部に挿入されて手摺構成体2の下方内面に沿って接触する略半円柱状の支持部65Bと、支持部65Bの上面側に設けられ、保持部材5Bの係止凹部54に係止可能な係止段部68と、支持部65Bの端部に設けられ、外方に向かって突出して周設されて手摺構成体2の開口端部21と当接する係止鍔部63と、支持部65の下方端部に係止鍔部63と連続して設けられ、手摺構成体2の開口端部21に設けられた切欠部22に係止する係止突部64と、支持部65の上面端部に設けられ、係止鍔部63から間隔をおいて端部が保持部材5Bの端部と当接する段部67とで一体に形成されている。
【0058】
このように位置決め用治具6Bを形成することにより、係止段部68と係止凹部54を係止した状態で保持部材5Bを位置決め用治具6Bに載置して、保持部材5Bを手摺構成体2の開口端部21から手摺構成体2の内部に挿入し、係止鍔部63が手摺構成体2の開口端部21に係合することで手摺構成体2の長さ方向への保持部材5Bの位置決めをすることができる。
【0059】
また、係止突部64が手摺構成体2の開口端部21に設けられた切欠部22に係止することで手摺構成体2の周方向への保持部材5Bの位置決めをすることができる。
【0060】
したがって、保持部材5Bを手摺構成体2の内部の所定位置に容易かつ確実に配置することができる。
【0061】
なお、第3実施形態は上記第2実施形態と同様に、保持部材5Bを所定位置に配置し、位置決め用治具6Bに保持部材5Bを載置した状態で、手摺構成体2の点字表示部3に点字ピン4を打ち込み、点字ピン4の打ち込み作業が終わった後に、位置決め用治具6Bを外方へ引き出すことで、保持部材5Bを手摺構成体2内に固定した状態で位置決め用治具6Bを手摺構成体2内から抜き出すことができる。
【0062】
なお、第3実施形態において、その他の部分は第1及び第2実施形態と同じであるので、同一部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0063】
<第4実施形態>
図7は、この発明に係る手摺の第4実施形態の保持部材および位置決め用治具を示す分解斜視図(a)及び保持部材、位置決め用治具、支持部材及び手摺構成体を示す斜視図(b)及び(b)のII−II線に沿う拡大断面図(c)及び(c)のIII部分を示す拡大図(d)である。
【0064】
第4実施形態は、保持部材5Cに保持孔を設けずに、点字ピン4の打ち込みを可能にした場合である。この場合、手摺構成体2の内部に配置される保持部材5Cは、手摺構成体2の内部において支持部材7によって支持される。
【0065】
上記保持部材5Cは、図7に示すように、例えば、PE(ポリエチレン)等の硬質発泡樹脂製部材によって、手摺構成体2の点字表示部3の範囲で手摺構成体2の内面に接触する接触面51を有する略半円筒状に形成されている。
【0066】
このように保持部材5Cを硬質発泡樹脂にて形成することにより、保持孔を設ける必要がなく点字ピン4の打ち込み部42を点字表示部3の貫通孔31を貫通させて、保持部材5Cに打ち込むことができるので、小さな力で点字ピン4を打ち込むことができ、打ち込み作業を容易に行うことができる。
【0067】
上記支持部材7は、図7に示すように、保持部材5Cの内面に接触する円筒状の支持基部71と、支持基部71の上面に保持部材5Cを載置する際に、保持部材5Cの両端を支持すると共に、先端面が手摺構成体2の内面に接触する突片72と、支持基部71の下面に設けられ、先端面が手摺構成体2の下方内面に接触する支持片73とで、例えばPP又はPE等の硬質の合成樹脂製部材によって一体に形成されている。なお、支持部材7の下方側には、支持基部71と両突片72及び支持片73とで、後述する位置決め用治具6Cの連結凸部69を係合可能な連結凹部74が形成されている。
【0068】
このように支持部材7を形成することにより、点字ピン4の打ち込み部42を点字表示部3の貫通孔31を貫通させて保持部材5Cに打ち込み、点字ピン4を更に打ち込んで、打ち込み部42を保持部材5C及び支持部材7の支持基部71を貫通させることで、支持部材7に嵌挿して保持することができるので、点字ピン4を確実に打ち込むことができる。
【0069】
なお、この場合、支持基部71の上面の両突片72間に保持部材5Cを載置した状態で、手摺構成体2の内面に両突片72の先端及び支持片73の先端が接触することによって、保持部材5Cの接触面51を手摺構成体2の点字表示部3の範囲に接触させて支持し、点字ピン4を打ち込む際の加重を受けることができる。
【0070】
上記位置決め用治具6Cは、図7に示すように、手摺構成体2の内部に挿入される基部61と、この基部61の一端に設けられ支持部材7の連結凹部74に係合可能な連結凸部69と、基部61の他端周縁に外方に向かって突出して周設され、手摺構成体2の開口端部21と当接する係止鍔部63と、基部61の下方端部に係止鍔部63と連続して設けられ、手摺構成体2の開口端部21に設けられた切欠部22に係止する係止突部64とで一体に形成されている。
【0071】
このように位置決め用治具6Cを形成することにより、連結凸部69と支持部材7の連結凹部74とを係合させて保持部材5C及び支持部材7の端部を押圧して、保持部材5C及び支持部材7を手摺構成体2の開口端部21から手摺構成体2の内部に挿入し、係止鍔部63が手摺構成体2の開口端部21に係合することで手摺構成体2の長さ方向への保持部材5C及び支持部材7の位置決めをすることができる。また、係止突部64が手摺構成体2の開口端部21に設けられた切欠部22に係止することで手摺構成体2の周方向への保持部材5C及び支持部材7の位置決めをすることができる。
【0072】
したがって、第4実施形態の手摺Hによれば、保持部材5Cを手摺構成体2の内部の所定位置に容易かつ確実に配置することができる。
【0073】
なお、保持部材5Cを所定位置に配置した後に位置決め用治具6Cを外方へ引き出すことで、支持部材7の連結凹部74と位置決め用治具6の連結凸部69との係合状態が解かれて、保持部材5C及び支持部材7を手摺構成体2内に配置した状態で位置決め用治具6Cを手摺構成体2内から抜き出すことができる。
【0074】
なお、第4実施形態において、その他の部分は第1ないし第3実施形態と同じであるので、同一部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明に係る手摺の取付状態を示す全体斜視図である。
【図2】この発明における手摺構成体に点字ピンを打刻する状態を示す拡大斜視図(a)及び(a)のI−I線に沿う断面図(b)である。
【図3】この発明における手摺構成体と第1実施形態の保持部材を示す斜視図である。
【図4】この発明の第1実施形態における保持部材及び位置決め用治具を示す下方分解斜視図(a)及び保持部材及び位置決め用治具を手摺構成体内に挿入した状態を示す下方斜視図(b)である。
【図5】この発明の第2実施形態における保持部材及び位置決め用治具を示す分解斜視図(a)及び保持部材、位置決め用治具及び手摺構成体を示す斜視図(b)である。
【図6】この発明の第3実施形態における保持部材及び位置決め用治具を示す分解斜視図(a)及び保持部材、位置決め用治具及び手摺構成体を示す斜視図(b)である。
【図7】この発明の第4実施形態における保持部材、位置決め用治具及び支持部材を示す分解斜視図(a)及び保持部材、位置決め用治具、支持部材及び手摺構成体を示す斜視図(b)及び(b)のII−II線に沿う拡大断面図(c)及び(c)のIII部分を示す拡大図(d)である。
【図8】この発明における保持部材の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
H 手摺
2 手摺構成体
3 点字表示部
4 点字ピン
5,5A,5B,5C 保持部材
6,6A,6B,6C 位置決め用治具
22 切欠部
31 貫通孔
42 打ち込み部
51 接触面
52 保持孔
63 係止鍔部
64 係止突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状に形成された手摺構成体の点字表示部に、点字ピンを打刻して点字を形成する点字表示手摺であって、
上記点字表示部における上記点字ピンを打刻する箇所に、点字ピンの打ち込み部の径より大径の貫通孔を設け、
上記手摺構成体の内部には、上記手摺構成体の内面のうち少なくとも上記点字表示部の範囲で手摺構成体の内面に接触する接触面を有すると共に、接触面に上記点字ピンが打ち込み可能な保持部材を配置してなる、ことを特徴とする点字表示手摺。
【請求項2】
請求項1記載の点字表示手摺において、
上記保持部材の接触面は、手摺構成体に設けられた貫通孔と連通すると共に、点字ピンの打ち込み部の径より小径の保持孔を有する、ことを特徴とする点字表示手摺。
【請求項3】
請求項2記載の点字表示手摺において、
上記保持孔は、点字表示部に打刻した点字と同一ピッチ間隔で縦横に複数配列されている、ことを特徴とする点字表示手摺。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の点字表示手摺において、
上記保持部材を着脱可能に保持した状態で上記手摺構成体の内部に挿入する位置決め用治具に、上記手摺構成体の端部と当接して手摺構成体の長さ方向への上記保持部材の位置決めをする係止鍔部と、上記手摺構成体の端部に設けられた切欠部に係止して手摺構成体の周方向への上記保持部材の位置決めをする係止突部を設けてなる、ことを特徴とする点字表示手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−138356(P2009−138356A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313201(P2007−313201)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【出願人】(594128647)株式会社ジェイアール東日本建築設計事務所 (6)
【Fターム(参考)】