説明

点弧支援機能を備えた高圧放電ランプ及びその製造方法

【課題】電気的な引込みに対する信頼性を高め、かつ低抵抗な特性を有するように改善を行うこと、ランプの点弧電圧を低減し、発光効率が高められるよう改善を行うこと。
【解決手段】リード導体と延長線条部との間に設けられた手段が、リード導体と延長線条部との間のオーム抵抗値を最大でも10kΩまでに制限し、特に有利には最大でも100Ωまでに制限するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点弧支援機能を備えた高圧放電ランプであって、セラミック製発光管と、2つの電極と、ハイブリッドアンテナとして構成された点弧支援装置とを有しており、前記2つの電極からは、外方へ向けてリード導体が引き出されて、該リード導体は、前記発光管端部においてガラスろう材を用いて封止されており、前記点弧支援装置は、前記発光管周囲に設けられた少なくとも2つの環状部材と、該環状部材に接続された接続線条部とを有しており、さらに前記点弧支援装置の片側では延長線条部がリード導体まで延在するように形成されている、高圧放電ランプに関している。ここでの高圧放電ランプとは、主に高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀含有若しくは水銀フリーの高圧放電ランプ等である。また本発明はそのようなランプの製造方法にも関している。
【背景技術】
【0002】
PCAセラミック表面に設けられ、電極と接続されており、ハイブリッドアンテナとも称される、サーメット製の点弧線条部によって、点弧電圧が公知のシステムよりも低く設定され、仮に点弧電圧が同じならば、キセノンガス圧を高めることによって発光効率を高めることのできる、高圧ナトリウムランプは公知である。これについては例えばWO2010/004472号明細書が参照される。
【0003】
WO2010/004472号明細書の記載によれば、アクティブハイブリッドアンテナとパッシブハイブリッドアンテナとの間には相違のあることが判明している。パッシブハイブリッドアンテナは、実質的に電極とハイブリッドアンテナとの容量結合がベースとなっている。最適な効率を得るためには、このハイブリッドアンテナと電極との間のインピーダンスを10kΩ以下にしなければならない。点弧装置が300kHzの動作周波数を使用するならば、この条件の実現のためには、約55pFの結合容量が必要である。この結合容量は、3mmのリード導体直径と、リード導体とハイブリッドアンテナとの間の間隔が50μmで、円筒状のハイブリッドアンテナを、4mm以上の高さで構成した高圧ナトリウムランプによって可能となるが、しかしながら実際にはそのような構成のランプの実現は不可能である。
【0004】
それ故、実務的な理由から、ハイブリッドアンテナが直接か若しくは所定のオーム抵抗値を有する接続線路を介して電極と接続される、アクティブアンテナの方が有利である。前記WO2010/004472号明細書では、導電性の接続又は10kΩを上回らない、有利には約10〜200Ωの間の所定の移行抵抗値を有する接続が実現されるように提案されている。これについては、導電性の膜を公知手法でガラスろう上に堆積させることが可能である。それにより、ハイブリッドアンテナは電極のリード導体と電気的に接続される。ここでの欠点としてあげられることは、十分に高い融点を有する金属物質と、ガラスろうと同じような熱的膨張係数を有する堆積可能な金属物質が、高圧放電ランプ用の既存の製造技術との汎用性を持っておらず、それ故に新たに別の製造装置を既存の製造プロセスに統合することが必要になってくることである。
【0005】
前記WO2010/004472号明細書では、導電性のガラスろうを利用することが提案されている。この導電性のガラスろうは、公知のガラスろう粉末に、例えばタングステン、モリブデン、ニオブなどの金属物質の添加によって作成されたものである。但しこのような新規なガラスろうは、既知の絶縁性のガラスろうと同じような熱膨張係数を有していなければならず、その他にもPCAセラミック及びニオブからなるリード導体に対する良好な接続形成を確立しなければならず、さらに投入される約730℃の作業温度のもとで、ナトリウム拡散に対しても十分に対応できる耐性を有していなければならない。このような導電性ガラスろうにおける欠点は、そのようなガラスろうの開発と検査にかかる費用が非常に高くなることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2010/004472号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、冒頭に述べたような高圧放電ランプにおいて、電気的な引込みに対する信頼性を高め、かつ低抵抗な特性を有するように改善を行うことである。
【0008】
また本発明のさらなる課題は、冒頭に述べたような高圧放電ランプにおいて、ランプの点弧電圧を低減し、発光効率が高められるよう改善を行うことである。
【0009】
さらに本発明の課題は、そのようなランプの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は本発明により、リード導体と延長線条部との間に設けられた手段が、リード導体と延長線条部との間のオーム抵抗値を最大でも10kΩまでに制限し、特に有利には最大でも100Ωまでに制限するように構成されて解決される。
【0011】
また前記課題は、請求項14の特徴部分に記載された本発明による方法によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】メタルハライドランプの実施例の側面図
【図2】ハイブリッドアンテナと2つの環状部材と左方側電極までの接続線条部とを有する高圧ナトリウムランプの発光管の断面図
【図3】外方からハイブリッドアンテナが内部の孔部内へ延在している、PCAセラミックからなる栓体の断面図
【図4】電極と、リード導体、電極の高さまでのハイブリッドアンテナの環状部材を有する高圧ナトリウムランプの発光管の横断面図
【図5】ハイブリッドアンテナがPCA管状部とPCA栓体を越えて延在し、ガラスろうが栓体に載置され、リード導体が孔部内へ挿入されている、封止前の発光管上方領域の断面図
【図6】毛管領域にガラスろうが充填され、リード導体が栓体とハイブリッドアンテナに載置されている、封止後の発光管上方領域の断面図
【図7】リード導体が、ガラスろうを浸透させてハイブリッドアンテナとの確実な接続を実現させる削切縁部を有している、封止後の発光管上方領域の断面図
【図8】ハイブリッドアンテナが環状部材の成形処理により、平坦でない切削縁部の場合でもリード導体との確実なコンタクトを保証する、PCAセラミック製毛管領域の断面図
【図9】封止領域のハイブリッドアンテナ表面を最小化するためにハイブリッドアンテナが環状部材の代わりに部分円区分で構成されたPCAセラミック製毛管領域の断面図
【図10】球状の発光管と円筒状の毛管領域を有し、ハイブリッドアンテナが毛管領域を囲繞する複数の環状部材を有し、発光管の高さで発光管を取り囲む2つの環状部材を有し、全ての環状部材の線条部が接続され、左方側の電極まで延在している、メタルハライド高圧放電ランプの発光管の断面図
【図11】円形に形成されたハイブリッドアンテナを備えたPCAセラミック製毛管領域の断面図
【図12】PCAセラミック製毛管領域と、ハイブリッドアンテナと、ガラスろうリングと、突起部を備えたリード導体とを有する、封止前の発光管の横断面図
【図13】3つの突起部がハイブリッドアンテナ表面に載置されている、12のAから見た、リード導体を有するPCAセラミック製毛管領域の断面図
【図14】封止後の封止領域における発光管の横断面図
【図15】パルス制御された電圧源UFと、リード導体とハイブリッドアンテナ6に接続されたバイアス抵抗RFとを有する、成形装置の基本回路図
【図16】電圧源UFによって充電されたコンデンサCFがスイッチTFの切換後に抵抗RFを介して放電される、成形装置の簡単な回路図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の別の有利な実施例及び改善例は以下の明細書に記載される。
【0014】
本発明は特に、多結晶の酸化アルミニウムセラミック(PCA)からなる発光管を備えたメタルハライドランプ又は高圧ナトリウムランプに関している。この発光管は、金属ハロゲン化物充填物、アマルガン充填物、ナトリウム充填物、キセノン又はアルゴンからなる始動ガスを含んでいる。2つの電極はPCAセラミックに封入されている。その他にサーメット製の点弧支援装置が線条部の形態で設けられており、この線条部は、点弧線条部の端部に2つの環状の部材若しくは平面的な部材を有し、さらに点弧線条部の電極に対する延在部分は、外方に向けて発光管にもたらされている。最後にこの点弧線条部と電極との間で電気的な接続が直接形成される。ハイブリッドアンテナと電極との間で信頼性の高い電気的な接続をもたらすための方法を提供する目的は、それによって、ランプの点弧電圧を引き下げることができるからである。またその他の特徴となる特性、例えば発光効率はキセノンガスの圧力を高めることによって高めることができる。
【0015】
本発明による、ハイブリッドアンテナと電気的な引き込み線との信頼性の高い接続を可能にする技術的な方法の提案によれば、既存の製造プロセスと製造装置に対してできるだけ僅かな変更しか生じさせないようにすることが前提条件となっている。つまりここでの目的は、第1に高圧放電ランプにおいて、点弧電圧を低減させることにあり、あるいは、例えば高圧ナトリウムランプにおいてはその他の特徴的な特性であるランプ発光効率をさらなる手段、例えばキセノンガス圧力を高めることによって改善することにある。
【0016】
発光管はセラミックから製造される。この場合は片側若しくは両側が封止され得る。
【0017】
本発明の課題が基礎としていることは、ハイブリッドアンテナと引き込み線との間の直接の接続を良好に実現するための技術及び製造方法を提供することである。
【0018】
特許請求の範囲に記載されている本発明によれば、有利には、点弧支援機能を備えた高圧放電ランプであって、セラミック製発光管と、2つの電極と、ハイブリッドアンテナとして構成された点弧支援装置とを有しており、前記2つの電極からは、外方へ向けてリード導体が引き出されて、該リード導体は、前記発光管端部においてガラスろう材を用いて封止されており、前記点弧支援装置は、前記発光管周囲に設けられた少なくとも2つの環状部材と、該環状部材に接続された接続線条部とを有しており、前記点弧支援装置の片側では延長線条部がリード導体まで延在するように形成されている、高圧放電ランプにおいて、前記リード導体と延長線条部との間に設けられた手段が、リード導体と延長線条部との間のオーム抵抗値を最大でも10kΩまでに制限し、特に有利には最大でも100Ωまでに制限するように構成されている。
【0019】
本発明の別な有利な実施例によれば、前記延長線条部の末端部分は、有利には環状、円形リンク状、円形区分状に形成されるか又は部分円区分として形成されており、前記末端部分は、リード導体から離間されて、有利には当該リード導体を囲繞するように配置されており、前記離間間隔は、有利にはリード導体の直径の大きさであり、最大でもリード導体の直径の2倍までの大きさである。
【0020】
また有利には、前記リード導体は管状若しくは棒状の部材であり、この場合そこに設けられる手段として、外方へ向けて突出する局所的な突起部が設けられており、該突起部は、電極の方向へ向けて特に切削縁部を有しており、該切削縁部の末端部材が前記延長線条部と接触形成される。
【0021】
本発明によれば、有利には、封止プロセスの期間中に発光管とリード導体との間に機械的な圧力が加えられる。
【0022】
別の実施例によれば、有利には、前記手段は、ガラスろう領域における導電性のチャネルであり、該導電性チャネルは、ガラスろう材の他に金属部材を含み、該金属部材は、前記末端部分とリード導体との間を線条形態で延在しており、この場合特に、前記リード導体と延長線条部との間で絶縁性の接続または高抵抗な接続がチャネル内で低抵抗に形成されるような成形プロセスが適用される。
【0023】
また有利には、前記リード導体は管状若しくは棒状の部材であり、この場合そこに設けられる手段として外方へ向けて突出する突起部が設けられており、該突起部は前記延長線条部と接触する。
【0024】
有利には、前記突起部は段状部材として構成されている。
【0025】
本発明によれば有利には、前記突起部は、電極方向に向けて突出する切削縁部を備えた段状部材として構成されている。
【0026】
有利には、前記リード導体は管状若しくは棒状の部材であり、この場合そこに設けられる手段として外方へ向けて突出する局所的な突起部が設けられており、該突起部は、電極方向に向けて延長線条部の末端部分と接触する1つ若しくは複数の接触点を有している。
【0027】
有利には、前記接触点は、切削ないし研磨加工された端部である。
【0028】
有利には、前記リード導体は管状若しくは棒状の部材であり、この場合そこに設けられる手段として外方へ向けて突出する突起部が設けられており、該突起部が前記延長線条部と接触する。
【0029】
有利には、前記突起部は、段状部材として、特に電極方向に向いた切削縁部を伴って形成されている。
【0030】
有利には前記オーム抵抗値は0.2乃至1Ωである。
【0031】
本発明によれば、前記高圧放電ランプを製造するための方法であって、
成形プロセスが適用されており、
前記成形プロセスのために、パルス制御された電圧が、一方のハイブリッドアンテナと、もう一方のリード導体との間に印加される。
【0032】
本発明によれば有利には、前記ハイブリッドアンテナとリード導体との間に印加される電圧は、最大で6kVであり、有利には少なくとも1kVであり、前記パルスの持続時間は、100ns乃至100μsの間の値であり、有利には0.5乃至5μsの間の値であり、前記チャネルに供給されるエネルギーは、0.1mJ乃至10mJの間の値であり、有利には、0.5乃至2mJの間の値である。
【実施例】
【0033】
図1には、典型的なメタルハライドランプ1が示されている。このメタルハライドランプ1は、胴の膨らんだセラミック製発光管2を有している。この発光管2は、石英ガラスからなる外管3内でフレーム4を用いて支持されている。外管3には口金5が取付けられている。前記発光管は点弧を向上させるためのハイブリッドアンテナ6を有している。このハイブリッドアンテナ6は、発光管2の端部周辺にあるセラミック製の2つの焼結環状部材7と、当該焼結環状部材7の間に存在する接続線条部8と、前記焼結環状部材7からリード導体10まで引き出されている延長線条部9とからなっている。
【0034】
図2には、例えば400Wの電力の高圧ナトリウムランプが示されている。このランプはPCAセラミックで製造されており、ハイブリッドアンテナ6を有している。ここでは2つの焼結環状部材7が接続線条部8によって接続されており、前記接続線条部8は、発光管11の左方側において、さらに延長線条部9により、当該発光管11の端部まで延長され、そこから端面壁部12に沿って案内されている。PCAセラミックからなる発光管11の端面壁部12では、孔部方向へリード導体10まで案内されている。これについては図3参照。
【0035】
図4には、ハイブリッドアンテナ6を有している発光管11の断面が示されている。ここでは、環状部材7が円筒状発光管11の周りで、2つの電極15の位置ないし高さに存在していることが表わされている。
【0036】
図5には、焼結処理されたハイブリッドアンテナ6を備えたセラミック製発光管11の封止前の様子が断面図で示されている。ここでは、栓体19に付属する部品として実現されているガラスろうリング16、例えばNGKのG61(登録商標)が、発光管11の端面壁部12に設けられている。同様に、溶接される電極15を支持する電気的なNbリード導体10が、前記栓体19の中央孔部17に挿入される。このリード導体10は、段状に形成されたストッパー部分20を有している。
【0037】
この構造ユニットは炉内へ挿入される。真空処理後は、炉内においてアルゴンが100ヘクトパスカル乃至1000ヘクトパスカルの圧力で供給される。この炉内では、前記ガラスろう材が溶融するまで加熱がなされ、その温度は例えば1350℃乃至1400℃である。溶融した流体状のガラスろうは、前記栓体19とリード導体10との間にある中央孔部17の周囲に流れ込む。同時にリード導体10はその固有の重さに基づいて(例えば0.5g乃至1g)孔の中へ沈み、そのストッパー部分20が前記栓体19の上方縁部12に当接するまで沈み込む。流体状のガラスろう材が最終的なガラス状態に移行したときには、加熱装置がスイッチオフされる。
【0038】
図6には、そのような最終的に完成した封止部の断面図が概略的に示されている。ストッパー部分20は、ハイブリッドアンテナの端部9に接触し、特にこの端部9の上に前記ストッパー部分20が載置される。
【0039】
その後で前記炉が開かれる。充填材、例えばアマルガムなどが充填された後では、第2の封止が行われる。この場合当該炉のチャンバー内には、適切な圧力の始動ガス、例えばキセノンガスが充填される。第2の封止部が完成された後では、できあがった発光管の検査が実施される。その後で、当該発光管がランプ内、例えばチューブ状の外管を備えたランプ内に組込まれる。
【0040】
前記封止の際には、液状化されたガラスろう材がその表面張力に基づいて、リード導体10と栓体19壁部との間の毛管領域に留まり、特にリード導体とハイブリッドアンテナ表面との間には良好に留まる。冷却された後は、このガラスろうは、当該箇所に残留し、その場合最も薄い箇所は、10μm乃至100μmの層厚さが保証される。絶縁性のガラスろうからなる層は大きなオーム抵抗値を有するものであり、通常ならこの抵抗値は10kΩ以上となる。容量結合は表面積が小さければ例えば55pFよりも小さくなるので、この種のハイブリッドアンテナ6の作用は少なく、ランプの点弧電圧も低減されない。
【0041】
有利には、様々な技術や手段にとっては、非常に小さなオーム抵抗値、例えば100Ω以下の抵抗値しか有さない接続を高い信頼性のもとで実現するために、まだ開発の余地が多く残されている。以下ではこのような抵抗値の小さな接続を、単に"良好な接続"乃至"良好な導通接続"とも称するものとする。
【0042】
リード導体とハイブリッドアンテナとの間で電気的に良好な導通接続を形成するための、基本的な実施形態として、まず、リード導体における平坦な段部に、良好なコンタクトが一度形成される(図7参照)。このコンタクト形成は押出しプレス方式のスタンプを変更することで実現することが可能である。例えば、リード導体10の外径が3.7mmで、封止部領域の直径が3.0mmの場合には、切削縁部21は、0.2mm乃至1mmの間の高さを有し、有利には、0.5mmの高さを有する。封止の際には、前記切削縁部21が、ハイブリッドアンテナ6の上方、詳細には延長線条部9の上方に載置され、流体状のガラスろう材16が切削縁部21から広範囲な部分に浸透する。それにより、前記切削縁部21とハイブリッドアンテナ6との間に残留するガラスろう剤が大幅に少なくなる。このことは既に、十分に小さなオーム抵抗値、典型的には50Ωの抵抗値しか伴わない電気的な接続を実現する。
【0043】
例えば、通常はニオブからなるリード導体10において形成される切削縁部21は、ハイブリッドアンテナ6の高さよりも低い平坦部、例えば25μmよりも薄い平坦部は持たない。そのため、ハイブリッドアンテナ6との確実な接触を保つためには、ハイブリッドアンテナにおける接触面が、PCAセラミック製栓体19に対する終端部材としての環状部材25の形成によって拡張される。この場合この環状部材25の平均直径は、切削縁部21の延在部分の直径にほぼ相当し、例えば3.7mmである。この場合は少なくとも両部材で接触がなされていてもよい。前記環状部材25の内径は、栓体孔部と切削縁部の許容範囲内で定められ、例えばそれは3.5mmであってもよい。また外径も同じように許容範囲内で定められ、例えばそれは3.9mmであってもよい。
【0044】
例えば、前記ハイブリッドアンテナ6の表面とその組成が、90重量パーセントのタングステンと10重量パーセントの酸化アルミニウムとからなるサーメットであるならば、発光管11自体の表面と構造からは明らかに異なってくる。それ故に、ガラスろう材16とハイブリッドアンテナ6との間に生じる介在層も、発光管とガラスろう材との間に生じる介在層とは明らかに異なり、その結果として、これらのシステムの熱的特性と密封性も異なってくる。このような影響をできるだけ小さく抑えるためには、延長線条部9の封止領域の面積をできるだけ小さくする必要がある。このことは本発明による構成においては、次のことによって達成され得る。すなわち完全な円形の部材25、詳細には環状部材25を用いる代わりに、例えば案内される延長線条部9の軸線に対して、所定の角度+/−φA、例えば+/−45°の角度を有する部分円区分26(図9参照)を用いることによって達成される。このような構造を用いることによって、既にハイブリッドアンテナ6と金属製リード導体10との間で十分な電気的接続が達成される。
【0045】
さらに別の有利な実施例によれば、セラミック製発光管31を備えたメタルハライド高圧放電ランプ30において、新たな接続技術が用いられている。例えば図10には、球状の放電空間と、円筒状の封止領域、いわゆる毛管領域32a,32bとを有している、PCAセラミックからなる発光管31が示されている。前記毛管領域32a,32b内では、図に示されていない2つの電極系がリード導体10と共に封止されている。ハイブリッドアンテナ6はここでは次のように構成されている。すなわち、毛管領域内でプラズマを発生するために、第1の毛管領域32aの周囲に、当該毛管領域を囲繞する複数の環状部材7が設けられている。それに対して第2の毛管領域32bの周囲には、唯1つの環状部材7が設けられているだけである。胴が膨らんでいる形状の発光管領域では、さらにこの発光管に割当てられた2つの環状部材77が電極の位置に設けられている。全てのサーメット製環状部材7,77は、同じサーメット製の接続線条部8によって相互に接続されている。この接続線条部8は、第2の毛管領域32bの外方端部まで延在し、さらにそこからは当該毛管領域の端面側を越えて延在している。接続線条部は終端部材としての環状部材25において終端している。これは図11の平面図においてPCA正面側に示されている。この環状部材はリード導体10と接触している。
【0046】
有利な実施例によれば、電極と共に毛管領域32aないし32b内へ浸入し得るリード導体10の深さは、外方へ向けて突出している複数の突起部35、例えば3つの突起部35によって定まっている。これらの突起部(接触点)は例えば切削ないし研磨工具を用いてリード導体に対する切削加工ないし研磨加工によって形成することが可能である(図12)。これらの突起部(接触点)35は、リード導体10の周囲に規則的に、例えば120°の角度をおいて設けられてもよい。これらの突起部の配向は、製作過程の間は定まらないので、ハイブリッドアンテナとの確実な接触を形成するためには、終端部材が図に示されているように環状部材25として形成されるか、又は少なくとも図9に示されているような部分円領域26として、十分に大きな角度+/−φA、例えば+/−65°の角度で形成される必要がある。
【0047】
封止過程の間は、リード導体10が電極と共に発光管の毛管領域32内へ挿入される。その際には、複数の突起部35ないしは複数の突起部35のうちの少なくとも1つが環状部材25又は部分円区分26に載置される(図13参照)。それに続いてガラスろうリング16が設けられてこれが加熱される。
【0048】
そのようにしてこれらのユニットは溶融される(図14参照)。一例によれば、リード導体10の直径は、例えば0.73mmであり、毛管領域32の内径は、例えば0.8mmであって、非常に小さい。一般に、機械的なコンタクト形成を簡単に行うためには、前記突起部35が、リード導体の素表面に対して例えば0.05mm乃至0.08mmの高さを有していれば十分であることがわかっている。このことは、端面12に対する0.015mm乃至0.045mmの突出に相当する。
【0049】
ハイブリッドアンテナの焼結線条部の被着に対しては、例えばインク技法が用いられてもよい。このハイブリッドアンテナ製造のためのインク溶剤は、毛管領域の内部にまで到達する必要はないので、ハイブリッドアンテナの環状に湾曲した少なくとも部分的な末端部材と、毛管領域32孔部との間では、技術的な理由から少なくとも例えば0.020mmの最小間隔が必要となる。またハイブリッドアンテナも、技術的な理由から必ずしも完全な環状に厳密に形成する必要はないので、有利には、例えば0.020mmの付加的な許容誤差が受け入れ可能である。前記突起部35と焼結環状部材25との確実な電気的コンタクトを形成できるようにするために、有利には、毛管領域からのハイブリッドアンテナの最小間隔に関する突起部35の飛び出しは拡大された方がよい。それにより、前述した実施例に対して0.090mm乃至0.120mmの超過が許容される。線条形状のハイブリッドアンテナの典型的な幅は、0.30mmから+/−0.05mmであり、それによって突起部と末端部材との間の信頼性の高い電気的なコンタクト形成が可能になる。図13には、挿入されたリード導体と3つの突起部を伴った毛管領域の平面図が示されているが、これらは必ずしも縮尺通りに示されたものではないことを理解されたい。
【0050】
リード導体とハイブリッドアンテナの機械的な構造、特にそれらの環状の端部においては、ハイブリッドアンテナとリード導体との間の良好な電気的接続が前提とされる。それにもかかわらず封止プロセス中は、ガラスろう材の表面張力が高いために、リード導体がともすると持ち上げられてしまい、これによって、ハイブリッドアンテナの末端部材とリード導体との間でガラスろう材からなる絶縁層が形成されてしまう。このようなことを避けるために、通常は、毛管領域内へ自然に挿入される電極システム、つまり電極を含めたリード導体がその自重によって(これは典型的には0.8gの重さであり得る)、ハイブリッドアンテナの末端部材に確実に押し込まれるように構成される。また代替的にこのリード導体を、さらに十分に押し付けることで確実に支持されるようにしてもよい。このためには、重量が、0.5g乃至20g、有利には3g乃至7gとなるようにする必要がある。同様にバネを用いてPCAセラミックとリード導体をストッパーまで押し付けるようにしてもよい。もちろんその他の技術的な手段も、良好なコンタクト形成の保証のために適用可能である。
【0051】
所定の抵抗値、例えば100Ω以下の抵抗値しか有さない、リード導体10とハイブリッドアンテナ6との間の良好な電気的接続形成のためのさらなる手法は、リード導体10とハイブリッドアンテナ6との間で抵抗溶接を実施することからなる。この形成に対しては、パルス制御可能な電圧源UFがバイアス抵抗RFを介してリード導体10とハイブリッドアンテナ6に接続される。使用されるガラスろう材のブレークダウン電界強度は、200kV/cm乃至500kV/cmの間である。推定されるガラスろうの層厚さは、10μm乃至200μmの間にあり、これによって必要とされる絶縁破壊電圧は、0.3kV乃至6kVの間となる。ガラスろう表面に沿った空気による絶縁破壊放電を回避するために、ここでは2kVのピーク電圧が選択される。これにより、約50μmの層厚さのガラスろうに絶縁破壊放電がもたらされるようになる。
【0052】
ブレークダウンの間は、電流が流れる導電性チャネルが発生する。十分な電気エネルギーが付加されることにより、例えば直径が30μmで、長さが50μmのチャネル内では、ガラスろうが約4000℃の温度まで加熱可能となる。これにより、例えば2468℃の融点を有するニオブを含んだリード導体表面と、隣接する、例えば組成成分として3410℃の溶点を有するタングステンを含んだハイブリッドアンテナ表面は、十分に液状化され得る。さらに、溶融された金属、ここではタングステンとニオブは、チャネル領域内でガラスろうと良好に混合される。電流を通流した後では、これらのチャネルが非常に迅速に冷却され、これによって、再び固体の質量体が形成される。但しこの質量体は金属物質の添加に基づいて導電性を帯びる。チャネル40における成形プロセスによって生成された導電性ガラスろうは、十分に小さな抵抗値、例えば1000Ω以下の抵抗値、特に有利には、100Ω以下の抵抗値となり得る。その際、チャネル40内の導電性ガラスろうは、絶縁性ガラスろうとは異なって、不所望な熱的緊張は引き起こさない。この熱的緊張は、絶縁性ガラスろう又は導電性ガラスろうにおいて、あるいはそれらのどちらにおいても、ランプ寿命を悪化させる原因となる。それ故に、チャネル40の領域におけるガラスろうの金属の割合はできるだけ少ない方がよい。このことは、チャネル幅を比較的大きくすることで達成可能である。これらの特性量は、ブレークダウンの期間中に入力結合されるエネルギーと、このエネルギーの作用した時間とによって確定される。それ故にこのエネルギーは、0.1mJ乃至500Jの間、有利には0.5mJ乃至2mJの間におかれる。作用時間は、100ns乃至500sの間、有利には0.5乃至5sの間におかれる。
【0053】
図16には、当該抵抗溶接を実現するための簡単な回路が示されている。ここでは、まずコンデンサCFに電圧UFが印加される。続いて、スイッチTFが切り替えられ、これによって、ハイブリッドアンテナ6とリード導体10との間に、ブレークダウンを誘起する電圧が印加される。この場合はバイアス抵抗RFが電流を制限し、定数RF・CFを介してコンデンサの放電時間とそれに伴う作用時間、並びにチャネル幅が決定される。前記コンデンサのキャパシタンスは、ブレークダウンにもたらされたエネルギーに比例する。実際には、前記ハイブリッドアンテナ6とリード導体1との接触部分と、前記スイッチTFには移行抵抗が存在するので、コンデンサとバイアス抵抗に対する具体的な数値は経験的に求められる。例えばキャパシタンスは0.5nF乃至50nFの間におかれ、抵抗値は、10Ω乃至1kΩの間におかれる。
【0054】
他の実施例によれば、成形プロセス若しくは抵抗溶接のために、基準型点弧装置又は重畳型点弧装置が用いられてもよい。またこれらは、例えば2kVまでの振幅と、0.5μs乃至10μsのパルス持続時間の電圧パルスを発生するものであってもよい。
【0055】
50Hzの繰り返しレートと1mJ/Pulseのエネルギー入力のもとでは、例えば10分までの溶接時間の間に点弧線条部とリード導体との間の導電性接続が達成され得る。この溶接時間を秒単位で短縮させるならば、パルスの繰り返しレートを例えば50kHzまで増加させること、及び/又はエネルギーを10mJ/Pulseまで引き上げることが可能になる。
【0056】
発光管の製造が完了した後では、発光管の所定の検査が実施される。ここではとりわけ点弧検査が行われる。ハイブリッドアンテナを備えた高圧放電ランプの場合には、さらに付加的にその他の検査、例えば抵抗測定器を用いたオーム抵抗値の測定が行われる。ここで測定された値が所定の限界値、例えば100Ωを上回っていた場合には、当該発光管において成形プロセスが再度実施され、それに続いて抵抗値が再び測定される。ここで測定された抵抗値も限界値を上回っていた場合には、当該発光管は破棄される。
【0057】
25%乃至75%のタングステンと、75%乃至25%の酸化アルミニウムからなる既知の材料の点弧線条部に対し、0.3mmの幅と、3μmの厚さと、1Ω/cm以下のオーム抵抗値でのケースを調査したところ、点弧線条部の端部とリード導体との間の直接接触している移行部の抵抗値を測定したところ、0.5Ω以下であることが判明した。そして抵抗値が1Ω以下である場合には、接続が正常であることも観察された。この小さな抵抗値は、溶接過程によって実現することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 メタルハライドランプ
2 発光管
3 外管
4 フレーム
5 口金
6 ハイブリッドアンテナ
7 焼結環状部材
8 接続線条部
9 延長線条部
10 リード導体
11 発光管
12 端面壁部
15 電極
16 ガラスろうリング
17 中央孔部
19 栓体
20 ストッパー部分
25 環状部材
26 部分円区分
30 高圧放電ランプ
31 発光管
32a 第1の毛管領域
32b 第2の毛管領域
35 突起部(接触点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点弧支援機能を備えた高圧放電ランプであって、
セラミック製発光管と、
2つの電極と、
ハイブリッドアンテナとして構成された点弧支援装置とを有しており、
前記2つの電極からは、外方へ向けてリード導体が引き出されて、該リード導体は、前記発光管端部においてガラスろう材を用いて封止されており、
前記点弧支援装置は、前記発光管周囲に設けられた少なくとも2つの環状部材と、該環状部材に接続される接続線条部とを有しており、前記点弧支援装置の片側では延長線条部がリード導体まで延在するように形成されている、高圧放電ランプにおいて、
前記リード導体と延長線条部との間に設けられた手段が、リード導体と延長線条部との間のオーム抵抗値を最大でも10kΩまでに制限し、特に有利には最大でも100Ωまでに制限するように構成されていることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
前記延長線条部の末端部分は、有利には環状、円形リンク状、円形区分状に形成されるか又は部分円区分として形成されており、前記末端部分は、リード導体から離間されて、有利には当該リード導体を囲繞するように配置されており、前記離間間隔は、有利にはリード導体の直径の大きさであり、最大でもリード導体の直径の2倍までの大きさである、請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
前記リード導体は管状若しくは棒状の部材であり、この場合そこに設けられる手段として、外方へ向けて突出する局所的な突起部が設けられており、該突起部は、電極の方向へ向けて特に切削縁部を有しており、該切削縁部の末端部材が前記延長線条部とコンタクト形成される、請求項2記載の高圧放電ランプ。
【請求項4】
封止過程の期間中に発光管とリード導体との間に機械的な圧力が加えられる、請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項5】
前記手段は、ガラスろう領域における導電性チャネルであり、該導電性チャネルは、ガラスろう材の他に金属部材を含み、該金属部材は、前記末端部分とリード導体との間に線条形態で延在しており、この場合特に、前記リード導体と延長線条部との間で絶縁性の接続または高抵抗な接続がチャネル内で低抵抗に形成されるような成形プロセスが適用される、請求項2記載の高圧放電ランプ。
【請求項6】
前記リード導体は管状若しくは棒状の部材であり、この場合そこに設けられる手段として外方へ向けて突出する突起部が設けられており、該突起部は前記延長線条部と接触する、請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項7】
前記突起部は段状部材として構成されている、請求項6記載の高圧放電ランプ。
【請求項8】
前記突起部は、電極方向に向けて突出する切削縁部を備えた段状部材として構成されている、請求項6記載の高圧放電ランプ。
【請求項9】
前記リード導体は管状若しくは棒状の部材であり、この場合そこに設けられる手段として外方へ向けて突出する局所的な突起部が設けられており、該突起部は、電極方向に向けて延長線条部の末端部分と接触する1つ若しくは複数の接触点を有している、請求項6記載の高圧放電ランプ。
【請求項10】
前記接触点は、切削ないし研磨加工された端部である、請求項9記載の高圧放電ランプ。
【請求項11】
前記リード導体は管状若しくは棒状の部材であり、この場合そこに設けられる手段として外方へ向けて突出する突起部が設けられており、該突起部が前記延長線条部と接触する、請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項12】
前記突起部は、段状部材として、特に電極方向に向いた切削縁部を伴って形成されている、請求項11記載の高圧放電ランプ。
【請求項13】
前記オーム抵抗値は0.2乃至1Ωである、請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項14】
請求項5記載の高圧放電ランプを製造するための方法であって、
成形プロセスが適用されており、
前記成形プロセスのために、パルス制御された電圧が、一方のハイブリッドアンテナと、もう一方のリード導体との間に印加されることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記ハイブリッドアンテナとリード導体との間に印加される電圧は、最大で6kVであり、有利には少なくとも1kVであり、前記パルスの持続時間は、100ns乃至100μsの間の値であり、有利には0.5乃至5μsの間の値であり、前記チャネルに供給されるエネルギーは、0.1mJ乃至10mJの間の値であり、有利には、0.5乃至2mJの間の値である、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−129207(P2012−129207A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−272429(P2011−272429)
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【出願人】(508096703)オスラム アクチエンゲゼルシャフト (92)
【氏名又は名称原語表記】OSRAM AG
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Str. 1, 81543 Muenchen Germany
【Fターム(参考)】