説明

点検孔のプラグ構造

【課題】スリット部が形成されることのなく長寿命化を可能にしたな点検孔のプラグ構造を提供する。
【解決手段】配管1に穿設された点検孔2に挿入し、全周のすみ肉溶接により配管1に固定して点検孔2を封止する点検孔2のプラグ構造において、プラグ10は、プラグ本体11と、点検孔2に挿入されるプラグ本体11より小径の挿入部12と、プラグ本体11から挿入部12に縮径する段差部13とを備え、段差面14を形成して縮径する配管軸方向の段差領域と、傾斜面15を形成して縮径する配管周方向の傾斜領域とが、段差部13の円周方向へ交互に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば発電用ボイラの蒸気配管全般に適用される点検孔のプラグ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電用ボイラの蒸気配管には、溶接後に溶接部の非破壊検査を実施するため、配管肉厚を貫通する点検孔が設けられている。この点検孔は、配管内に放射線源を配置して配管外部のフィルムに照射するために設けられたものであり、検査完了後にはプラグを取り付けて封止される。
このような点検孔のプラグ構造(形状)として、たとえば図4及び図5に示すように、配管1側に点検孔2を設けておき、この点検孔2に載置したプラグ3と配管1との間をすみ肉溶接して形成した溶接部4でシール及び固定するものが知られている。
【0003】
なお、図4において、左側の周断面は配管1の周方向断面、右側の軸断面は配管1の軸方向断面を示している。
また、下記の特許文献1に開示されているように、配管側にねじ込んだプラグをすみ肉溶接する構造もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−113576号公報(たとえば、図1等を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した図4のプラグ構造(従来構造)は、点検孔2の周囲となる配管1側の端部に対して、プラグ3側の全周に設けられている段差面3aを載置した後、全周にわたってすみ肉溶接を行うものであり、乗せかけ型とも呼ばれている。
このため、応力集中部となる溶接部4の内面側には、配管1の外表面との間にスリット部が存在する。このスリット部は、載置したプラグ3の段差面3aと配管1との面間に僅かな隙間が残り、この隙間まで溶接の溶け込みが完全に行き渡らないために形成されたものである。なお、上述した隙間は、たとえば曲面となる配管1の外周面とプラグ3の接触面(段差面3a)との間にある僅かな形状差等により形成されるものであり、特に、曲面の影響が大きくなる配管1の周方向(周断面)側においてスリット部を生じやすい。
【0006】
このようなスリット部には高いピーク応力が発生するので、配管1の点検孔2にすみ肉溶接してプラグ3を固定した溶接部4の寿命が短くなるという問題が生じてくる。すなわち、配管1内を流れる高圧の蒸気は、溶接部4の内側に形成されたスリット部に入り込むので、この蒸気圧によりピーク応力が発生し、溶接部4の寿命が短縮されている。
【0007】
このような背景から、溶接部4のピーク応力を低減して長寿命化するためには、溶接部4にスリット部が形成されることのない、すなわち、溶接部4にスリット部のない点検孔2のプラグ構造が望まれる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スリット部が形成されることのない点検孔のプラグ構造を提供して長寿命化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る点検孔のプラグ構造は、配管に穿設された点検孔に挿入し、全周のすみ肉溶接により前記配管に固定して前記点検孔を封止する点検孔のプラグ構造において、前記プラグは、プラグ本体と、前記点検孔に挿入される前記プラグ本体より小径の挿入部と、前記プラグ本体から前記挿入部に縮径する段差部とを備え、段差面を形成して縮径する配管軸方向の段差領域と、傾斜面を形成して縮径する配管周方向の傾斜領域とが、前記段差部の円周方向へ交互に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
このような本発明の点検孔のプラグ構造によれば、プラグ本体と、点検孔に挿入されるプラグ本体より小径の挿入部と、プラグ本体から挿入部に縮径する段差部とを備えたプラグとされ、段差面を形成して縮径する配管軸方向の段差領域と、傾斜面を形成して縮径する配管周方向の傾斜領域とが、段差部の円周方向へ交互に設けられているので、配管の外表面との間に形状差を生じやすい配管周方向領域が、配管の外表面端部と線接触をする傾斜領域となる。この結果、プラグと配管との間には隙間が形成されず、しかも、プラグの配管周方向領域に設けた傾斜面がすみ肉溶接による溶接部の溶着量を増加させるので、溶接部にスリット部が生じることを防止する。
【0010】
上記の発明において、前記傾斜領域は、前記段差部の周方向両側にそれぞれ45度〜135度の範囲に設けられていることが好ましく、これにより、配管周方向領域のほとんどまたは全域が配管の外表面端部と線接触をする傾斜領域となり、プラグの溶接時には、配管軸方向の段差面が取付位置に対する位置決めを容易にし、冶具等による位置決め固定が不要になる。
【0011】
上記の発明において、前記傾斜領域を前記段差部の周方向全周にわたって設けることが好ましく、これにより、加工が容易な低コストのプラグ構造により同等のピーク応力低減が可能になる。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明によれば、段差面を形成して縮径する配管軸方向の段差領域と、傾斜面を形成して縮径する配管周方向の傾斜領域とが段差部の円周方向へ交互に設けられているので、溶接部にスリット部が形成されないようにしてピーク応力を低減し、点検孔のプラグ構造を長寿命化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る点検孔のプラグ構造について、その一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示した点検孔のプラグ構造について、段差面の形成範囲例を示す点検孔の平面図である。
【図3】本発明に係る点検孔のプラグ構造について、他の実施形態を示す断面図である。
【図4】点検孔のプラグ構造に係る従来構造を示す断面図である。
【図5】発電用ボイラの蒸気配管に取り付けられた点検孔のプラグを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る点検孔のプラグ構造について、その一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、発電用ボイラの蒸気配管に設けられる点検孔を封止するプラグ構造について説明するが、これに限定されるものではない。
図1に示す実施形態において、発電用ボイラの蒸気配管である配管1には、配管肉厚を貫通する点検孔2が設けられている。この点検孔2は、平面視が円形の穴である。
【0015】
点検孔2に取り付けて封止するプラグ10は、円筒形状とした本体11の下端部側に、本体11より若干小径とした円筒形状の挿入部12を備えている。この挿入部12は、配管1に穿設された点検孔2に挿入される部分である。
このようなプラグ10においては、本体11から挿入部12に断面形状を変化(縮径)させる段差部13が存在する。この段差部13は、その円周方向において、配管1側の端部に載置される段差面14が形成された段差領域と、滑らかな傾斜面15による形状変化をして段差面14のない傾斜領域とを備えている。
【0016】
プラグ10の段差領域では、本体11から挿入部12に段差面14を形成して縮径している。この段差面14は、挿入部12を点検孔2の所定位置に挿入した状態で、点検孔2の周囲に存在する配管1の外表面端部に係止されて面接触する略平面の部分である。
プラグ10の傾斜領域では、本体11から挿入部12まで滑らかな傾斜面15を形成して縮径しており、従って、段差領域に形成されている段差面14は存在しない。この傾斜面15は、その縦断面形状が曲線または直線を描くものであるから、点検孔2の周囲に存在する配管1の外表面端部とは線接触となる。
【0017】
本実施形態において、段差面14を形成する段差領域は、たとえば図2に示すように、点検孔2の平面視で配管1の軸方向となる領域に設けられている。また、傾斜面15を形成する傾斜領域は、同じく点検孔2の平面視で配管1の周方向となる領域に設けられている。すなわち、プラグ10に形成される360度の段差部13に対し、配管軸方向の段差領域と配管周方向の傾斜領域とが交互に設けられている。図示の構成例では、点検孔2の中心位置から軸方向両側に2箇所の段差領域が設けられ、軸方向と直交する周方向両側に2箇所の傾斜領域が設けられている。
【0018】
図2に示す構成例では、平面視で円形となる点検孔2に対しプラグ10が所定位置に挿入して取り付けられた状態において、配管軸方向の段差領域と配管周方向の傾斜領域とが略90度ピッチで交互に設けられている。しかし、傾斜領域を設ける好適な周方向の範囲は45度〜135度であり、従って、たとえば配管1の径や点検孔2の径(すなわちプラグ10の径)等の諸条件に応じて適宜最適値を選択すればよい。すなわち、本実施形態のプラグ10は、配管1の外表面との間に形状差を生じやすい配管周方向領域が、配管1の外表面端部と線接触をする傾斜領域となっている。なお、上述した傾斜領域の角度は、周方向の軸線から両方向へ均等に振り分けることが望ましい。
【0019】
このような段差部13を有するプラグ10は、点検孔2の所定位置に挿入して周囲をすみ肉溶接した溶接部4を形成すると、曲面の影響が大きい配管周方向領域において、段差面14がなく配管1の外表面端部と線接触している。このため、プラグ10と配管1の外表面との間に隙間が形成されることを防止でき、しかも、プラグ10の配管周方向領域に傾斜面15を設けることにより溶着量が増加するので、結果として溶接部4にスリット部が形成されることを防止できる。従って、溶接部4に発生するピーク応力を低減し、プラグ10をすみ肉溶接により固定するプラグ構造を長寿命化することができる。
【0020】
また、上述したプラグ10は、段差面14が形成された段差領域と、滑らかな傾斜面15が形成された傾斜領域とを備えているので、プラグ10の溶接時には、配管軸方向の段差面14が所定の取付位置に対する位置決めを容易にし、しかも、冶具等による位置決め固定を不要にする。
なお、プラグ10には内部穴16を設けておくことが好ましく、これにより、溶接時の収縮応力を低減することができる。
【0021】
次に、本発明に係るプラグ構造について、他の実施形態を図3に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態では、プラグ10Aの段差部13Aが、全周にわたって傾斜面15を形成した傾斜領域となる。従って、この場合の段差部13Aには段差面14を備えた段差領域がなく、配管1の外表面端部と全周にわたって線接触する構造となっている。
【0022】
このような段差部13Aを有するプラグ10Aは、点検孔2の所定位置に挿入して周囲をすみ肉溶接した溶接部4を形成すると、段差面14がないため、全周にわたって配管1の外表面端部と線接触している。このため、プラグ10Aと配管1の外表面との間に隙間が形成されることを防止でき、しかも、プラグ10Aの全周にわたって設けた傾斜面15により溶着量が増加するので、結果として溶接部4にスリット部が形成されることを防止できる。従って、溶接部4に発生するピーク応力を低減し、プラグ10をすみ肉溶接により固定するプラグ構造を長寿命化することができる。
【0023】
このように構成したプラグ10Aは、段差部13Aの形状が単純化するため、製造が容易になってコストの低減に有効である。なお、ボイラの蒸気配管においては、多数のプラグ10Aが必要となるので、プラグ10Aの低コストかはボイラ全体のコスト低減に有効である。
【0024】
このように、上述した本発明の実施形態によれば、段差面13を形成して縮径する配管軸方向の段差領域と、傾斜面15を形成して縮径する配管周方向の傾斜領域とが段差部13の円周方向へ交互に設けられているので、溶接部4にスリット部が形成されないようにしてピーク応力を低減し、点検孔2のプラグ構造を長寿命化することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 配管
2 点検孔
4 溶接部
10,10A プラグ
11 本体
12 挿入部
13,13A 段差部
14 段差面
15 傾斜面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に穿設された点検孔に挿入し、全周のすみ肉溶接により前記配管に固定して前記点検孔を封止する点検孔のプラグ構造において、
前記プラグは、プラグ本体と、前記点検孔に挿入される前記プラグ本体より小径の挿入部と、前記プラグ本体から前記挿入部に縮径する段差部とを備え、
段差面を形成して縮径する配管軸方向の段差領域と、傾斜面を形成して縮径する配管周方向の傾斜領域とが、前記段差部の円周方向へ交互に設けられていることを特徴とする点検孔のプラグ構造。
【請求項2】
前記傾斜領域が、前記段差部の周方向両側にそれぞれ45度〜135度の範囲に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の点検孔のプラグ構造。
【請求項3】
前記傾斜領域が前記段差部の周方向全周にわたって設けられていることを特徴とする請求項1に記載の点検孔のプラグ構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−173139(P2011−173139A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37605(P2010−37605)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】