説明

点火コイル

【課題】軸方向に余分な距離を要することなく高周波ノイズを抑制でき、簡易な構成で組付けも容易な点火コイルを提供する。
【解決手段】一次コイルL1と二次コイルL2とが、同軸状に収容されるコイルケース1の基端側にスイッチング素子Qが収容されて構成された点火コイルである。二次コイルL2の二次ボビン20の先端側に装着され二次巻線21に電気接続されたワイヤ状の出力端子TRと、突出部50bが二次ボビン20の先端側に挿入されて出力端子TRに電気接続される高圧端子50と、基端側の接続端子51bが高圧端子50の収容穴HOに圧入されて電気接続されると共に、先端側の接続端子51cが導電スプリングSPを通して点火プラグに電気接続される抵抗体51とを有し、コイルケースの先端側の境界口40が抵抗体51によって閉塞される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンなどの内燃機関のプラグホールに挿入される点火コイルに関し、特に、一次コイルと二次コイルとが同軸状に収容されるコイルケースを有するペンシル型の点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
ペンシル型の点火コイルにおいて、点火コイルの二次側に適宜な抵抗体を配置して高周波ノイズの発生を防止する構成は、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−23840号公報
【特許文献2】特開2002−50528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1に記載の発明では、抵抗部材の一方側は、基端側の二次ターミナル(T2a)に圧入され、二次ターミナル(T2a)に配置された板バネ部材の付勢力によって保持されている。一方、抵抗部材の他方側は、別の先端側の二次ターミナル(T2b)に圧入され、二次ターミナル(T2b)に配置された板バネ部材の付勢力によって保持されている。そして、先端側の二次ターミナル(T2b)が、高圧ターミナルの凹部に圧入される構成を採っている。
【0005】
このように、引用文献1に記載の発明では、基端側と先端側の2つの二次ターミナル(T2a,T2b)に対応して、各々、板バネ部材が必要であり、部品点数が増加する分だけ製造コストが増加し、製造工程も複雑化するという問題がある。
【0006】
一方、引用文献2の第5実施例では、軸方向に延長された二次スプールの内部に、抵抗体を収容し、抵抗体の先端側の接続端子に、高圧端子の突出部を挿入して電気的接続を実現している。
【0007】
この引用文献2の構成では、引用文献1より部品点数が減少するものの、抵抗体の長さ分だけ、点火コイル全体が軸方向に延びるので、点火コイルの小型化の要請に応えることができない。また、引用文献2の発明では、下方に向けて開口する略キャップ状の高圧端子の組付けなど、各部材の組付けが、必ずしも簡単とは言えないという問題もある。
【0008】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであって、軸方向に余分な距離を要することなく高周波ノイズを抑制でき、簡易な構成で組付けも容易な点火コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係る点火コイルは、一次ボビンに一次巻線を巻着した一次コイルと、二次ボビンに二次巻線を巻着した二次コイルとが、同軸状に収容されるコイルケースを有して構成される点火コイルであって、前記二次ボビンの先端側に装着され、前記二次巻線に電気接続されたワイヤ状の出力端子と、基端側に向けて突出する突出部と、先端側に開口する収容穴とを有し、前記突出部が前記二次ボビンの先端側に挿入されて前記出力端子に電気接続される高圧端子と、基端側端子が、前記収容穴に圧入されて前記高圧端子に電気接続されると共に、先端側端子が、導電性のスプリング材を通して点火プラグに電気接続される抵抗体と、を有し、前記コイルケースの先端側が、前記抵抗体によって閉塞されている。
【0010】
前記高圧端子は、好ましくは、略円盤状に形成された本体部と、前記本体部から基端側に連設される略円柱状の前記突出部と、前記本体部から先端側に連設される円筒部とを有して構成され、前記円筒部に、前記収容穴が形成されているべきである。
【0011】
また、前記コイルケースの先端側には、前記抵抗体によって閉塞される最小口径の境界口と、前記境界口から先端側に向けて拡径されて前記スプリング材を受け入れる先端穴と、前記境界口から基端側に向けて拡径される底部穴と、が設けられているのが好適である。
【0012】
前記底部穴は、前記境界口から基端側に向けてテーパ状に広がる第一部と、第一部の最大内径とほぼ同一の内径を維持して基端側に延びる第二部と、第二部より大きい内径を有して基端側に延びる第三部と、を有して構成されているのが好ましい。ここで、前記底部穴の第二部の内径寸法が、前記高圧端子の円筒部の外径寸法にほぼ一致する一方、前記底部穴の第三部の内径寸法が、前記高圧端子の本体部の外径寸法にほぼ一致することで、前記高圧端子が、前記底部穴の第二部と第三部の境界位置に形成される段差部で位置決めされるよう構成されるのが最適である。
【0013】
前記抵抗体は、基端側端子及び先端側端子と共に、全体として略円筒状に形成され、前記コイルケースの境界口は、前記抵抗体の先端側端子によって閉塞されているのが好ましい。また、前記二次ボビンの先端側には、前記二次ボビンの円筒本体から小円筒状に突出する延長ボビンが形成され、前記二次コイルの出力端子は、ワイヤ材を屈曲変形して構成されることで、前記延長部の外周に巻着される始端と終端とを有する巻着部と、前記巻着部に略直交して、巻着部の終端から先端側に延びる軸方向部と、前記軸方向部の最先端から略直交して、延長部の先端面に沿って配置される径方向部と、が設けられ、前記高圧端子の突出部が、前記延長ボビンの中に挿入されることで、前記突出部と前記径方向部とが電気接触するよう構成するのが好ましい。
【0014】
前記二次コイルの出力端子には、前記巻着部の始端から径方向に延びる接続部が設けられ、前記接続部には、前記二次巻線の高圧側終端が半田付けされているのが好適である。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明によれば、軸方向に余分な距離を要することなく高周波ノイズを抑制でき、簡易な構成で組付けも容易な点火コイルを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例に係る点火コイルを説明する図面である。
【図2】図1の要部を拡大して示す図面である。
【図3】二次ボビンの先端側の形状を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、実施例に係る点火コイルの概要を示す図面であり、平面図(a)と、中央断面図(b)と、回路図(c)とを示している。
【0018】
この点火コイルは、PPS樹脂(poly phenylene sulfide)、又はPBT樹脂(poly buthylene terephthalete)によって略円筒状に形成されたコイルケース1に、各構成部材が収容された後、エポキシ樹脂が充填されて一体化されている。
【0019】
コイルケース1は、詳細には、上方に開口する箱状の基端部1Aと、円筒状に延びる本体部1Bとに区分されている。そして、コイルケース1の基端部1Aには、スイッチング素子Qが収容され、スイッチング素子Qには、基端部1Aと一体化された接続ターミナル2を経由して、制御信号SGとバッテリ電圧VBとが供給されている(図1(c)参照)。
【0020】
一方、コイルケース本体部1Bには、導体スプリングSPを保持したプラグブーツ3が、先端側から装着されている。なお、図1において、プラグブーツ3とコイルケース1とは縮尺が一致していない。
【0021】
図1(c)の回路図に示すように、コイルケース本体部1Bには、電磁結合された一次コイルL1及び二次コイルL2と、二次コイルL2の高圧側に接続された抵抗体51とが収容されている。抵抗体51は、2kΩ〜3kΩ程度の抵抗値Rを有して、点火プラグの放電時に発生する高周波ノイズを抑制している。
【0022】
一次コイルL1は、略円筒状の一次ボビン10に一次巻線11を巻着して構成され、二次コイルL2は、略円筒状の二次ボビン20に二次巻線21を巻着して構成されている。この実施例では、一次コイルL1と二次コイルL2とは同軸状に構成され、一次ボビン10の内部に、二次コイルL2が収容されている。また、一次巻線11の外側に、外装鉄心30が配置される一方、二次ボビン20の内部に中心鉄心31が収容されている。
【0023】
また、一次ボビン10の先端側には、最小口径の境界口40を境界位置として、境界口40から基端側に向けて拡径される底部穴41と、境界口40から先端側に向けて拡径される先端穴42とが形成されている。そして、一次ボビン10の底部穴41には、高圧端子50と抵抗体51とが配置され、一次ボビン10の底部穴41は、抵抗体51によって閉塞されている。また、先端穴42には、プラグブーツ3に保持された導体スプリングSPが位置決めされた状態で収容される。
【0024】
図2の部分拡大図に示す通り、一次ボビン10の底部穴41は、境界口40から基端側に向けてテーパ状に広がる第一部41aと、第一部41aの最大内径とほぼ同一の内径を維持して基端側に延びる第二部41bと、第二部41bより大きい内径を有して基端側に延びる第三部41cとを有して構成されている。そして、第二部41bと第三部41cとの境界位置(段差部)には、径方向に広がるリング状の載置面PTが形成されている。
【0025】
抵抗体51は、略円筒状の抵抗本体51aと、抵抗本体51aの軸方向の両端を覆う有底円筒状の接続キャップ51b,51cとで一体化されている。なお、一体化された状態で市場に流通している抵抗体51を採用するのが好ましい。ここで、一次ボビン10の境界口40の内径寸法は、接続キャップ51cの外径寸法と略同一に設定されている。したがって、抵抗体51が装着された状態(図1、図2)では、接続キャップ51cが境界口40に圧入されることで、一次ボビン10の底部穴41が完全に閉塞される。
【0026】
高圧端子50は、略円盤状に形成された本体部50aと、本体部から基端側に連設される略円柱状の突出部50bと、本体部50aから先端側に連設される円筒部50cとを有して構成されている。そして、円筒部50cの内径寸法は、抵抗体51の接続キャップ51bの外径寸法と略同一に形成され、抵抗体51が圧入される収容穴HOを形成している。
【0027】
また、高圧端子50の円筒部50cと本体部50aの外径寸法は、各々、一次ボビン10に形成された底部穴41の第二部41bと第三部41cの外径寸法と略同一でやや小さく形成されている。そのため、高圧端子50は、一次ボビン10の載置面PTに着座して位置決めされる。なお、この着座状態では、高圧端子50の収容穴HOの底面は、一次ボビン10の載置面PTと略同一平面に位置するよう構成されている。
【0028】
高圧端子50は、抵抗体51が圧入された状態で、基端側から一次ボビン10の内部に挿入されるが、高圧端子50が着座した図示の状態では、抵抗体51が境界口40を貫通し、抵抗体51の接続キャップ51cが先端穴42から露出するよう構成されている。そして、一次ボビン10の先端側から装着された導体スプリングSPが、接続キャップ51cを押圧することで、二次コイルL2と点火プラグ(不図示)との確実な電気的接続が実現される。
【0029】
図3は、二次ボビン20の先端側の形状を示す図面である。二次ボビン20は、二次巻線21が巻着される略円筒状のボビン本体22と、ボビン本体22から先端側に突出する延長ボビン23とを有して構成され、延長ボビン23は、ボビン本体22より小径の略円筒状に形成されている。そして、延長ボビン23に形成されている内部穴24の内径寸法は、高圧端子50の突出部50bの外径寸法に対応して、突出部50bの外径よりやや大きく設定されている。
【0030】
また、延長ボビン23の根元には、その半周にわたって円弧溝が形成されると共に、円弧溝に連続して軸方向に直線溝が形成されている。そして、円弧溝と直線溝に沿って、導電性ワイヤが屈曲変形された出力端子TRが配置されている。
【0031】
この出力端子TRは、延長ボビン23の円弧溝に巻着される巻着部61と、巻着部61の始端61aから径方向に延びる接続部62と、巻着部61の終端61bから略直交して延長ボビン23の直線溝に装着される軸方向部63と、軸方向部63の最先端から略直交して延長ボビン23の先端面に沿う径方向部64とに区分されている。そして、接続部62には、二次コイルL2の二次巻線21の高圧側引出し線が巻着されて半田付けされている(図3(b))。
【0032】
図3(c)に現れる通り、出力端子TRの径方向部64は、延長ボビン23の内部穴24の輪郭円に確実に接するようやや内側に配置されている。この内部穴24には高圧端子50の突出部50bが挿入されるが、突出部50bの外径寸法が、内部穴24の内径寸法と略同一に設定されているため、突出部50bが内部穴24に挿入される際、突出部50bの外周が、出力端子TRの径方向部64を径方向外側に押し広げることで確実な電気接触が実現される。
【0033】
なお、図示の実施例では、径方向部64を直線状に形成したが、径方向部64をU字状に屈曲形成して、U字状の内側に、高圧端子50の突出部50bを挿入させるのも好適である。
【0034】
上記の通り、本実施例の点火コイルは、収容穴HO及び突出部50bを有する高圧端子50と、高圧端子50の収容穴HOに圧入される抵抗体51と、高圧端子の突出部50bが挿入される二次ボビン20とを有して構成されている。そのため、抵抗体51を収容しても、二次ボビン20の先端面から一次ボビン10の境界口40までの距離が短くて足り、高周波ノイズの発生を抑制した小型の点火コイルを実現できる。
【0035】
また、製造時において、抵抗体51と一体化された高圧端子50を、一次ボビン10の底部穴41に落し込み、その後、二次コイルL2を収容するだけで、高圧端子50及び抵抗体51の位置決めと、底部穴41の閉塞とが実現され、製造工程も複雑化しない利点がある。
【0036】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、具体的な記載内容は特に本発明を限定するものではない。例えば、実施例では、コイルケースの基端部1Aにスイッチング素子Qを収容したが、この構成に代えて、コイルケースの外部にスイッチング素子を配置しても良い。逆に、コイルケースの基端部1Aに、スイッチング素子Qに加えて、イオン電流検出回路などの検出回路や制御回路を配置しても良い。
【符号の説明】
【0037】
L1 一次コイル
L2 二次コイル
10 一次ボビン
11 一次巻線
20 二次ボビン
21 二次巻線
TR 出力端子
50b 突出部
50 高圧端子
HO 収容穴
SP 導体スプリング
51 抵抗体
40 境界口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次ボビンに一次巻線を巻着した一次コイルと、二次ボビンに二次巻線を巻着した二次コイルとが、同軸状に収容されるコイルケースを有して構成される点火コイルであって、
前記二次ボビンの先端側に装着され、前記二次巻線に電気接続されたワイヤ状の出力端子と、
基端側に向けて突出する突出部と、先端側に開口する収容穴とを有し、前記突出部が前記二次ボビンの先端側に挿入されて前記出力端子に電気接続される高圧端子と、
基端側端子が、前記収容穴に圧入されて前記高圧端子に電気接続されると共に、先端側端子が、導電性のスプリング材を通して点火プラグに電気接続される抵抗体と、を有し、
前記コイルケースの先端側が、前記抵抗体によって閉塞されていることを特徴とする点火コイル。
【請求項2】
前記高圧端子は、略円盤状に形成された本体部と、前記本体部から基端側に連設される略円柱状の前記突出部と、前記本体部から先端側に連設される円筒部とを有して構成され、前記円筒部に、前記収容穴が形成されている請求項1に記載の点火コイル。
【請求項3】
前記コイルケースの先端側には、
前記抵抗体によって閉塞される最小口径の境界口と、前記境界口から先端側に向けて拡径されて前記スプリング材を受け入れる先端穴と、前記境界口から基端側に向けて拡径される底部穴と、が設けられている請求項1又は2に記載の点火コイル。
【請求項4】
前記底部穴は、前記境界口から基端側に向けてテーパ状に広がる第一部と、第一部の最大内径とほぼ同一の内径を維持して基端側に延びる第二部と、第二部より大きい内径を有して基端側に延びる第三部と、を有して構成されている請求項3に記載の点火コイル。
【請求項5】
前記底部穴の第二部の内径寸法が、前記高圧端子の円筒部の外径寸法にほぼ一致する一方、前記底部穴の第三部の内径寸法が、前記高圧端子の本体部の外径寸法にほぼ一致することで、
前記高圧端子が、前記底部穴の第二部と第三部の境界位置に形成される段差部で位置決めされるよう構成されている請求項4に記載の点火コイル。
【請求項6】
前記抵抗体は、基端側端子及び先端側端子と共に、全体として略円筒状に形成され、
前記コイルケースの境界口は、前記抵抗体の先端側端子によって閉塞されている請求項3に記載の点火コイル。
【請求項7】
前記二次ボビンの先端側には、前記二次ボビンの円筒本体から小円筒状に突出する延長ボビンが形成され、
前記二次コイルの出力端子は、ワイヤ材を屈曲変形して構成されることで、
前記延長部の外周に巻着される始端と終端とを有する巻着部と、
前記巻着部に略直交して、巻着部の終端から先端側に延びる軸方向部と、
前記軸方向部の最先端から略直交して、延長部の先端面に沿って配置される径方向部と、が設けられ、
前記高圧端子の突出部が、前記延長ボビンの中に挿入されることで、前記突出部と前記径方向部とが電気接触するようになっている請求項1〜6の何れかに記載の点火コイル。
【請求項8】
前記二次コイルの出力端子には、前記巻着部の始端から径方向に延びる接続部が設けられ、
前記接続部には、前記二次巻線の高圧側終端が半田付けされている請求項7に記載の点火コイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−100758(P2011−100758A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252761(P2009−252761)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)