点火コイル
【課題】一次コイルにおいて巻線体の短絡が生じ難く信頼性の高い点火コイルを提供する。
【解決手段】小径部102と大径部103とからなる略段付円柱状の巻胴部と、小径部102の先端に設けられ大径部103よりも径大となるように略矩形に広がる鍔部101とを具備する中心コア10に一次巻線体12を巻回した一次コイル1を具備する点火コイル100において、鍔部101をコネクタソケット11に挿嵌したときに、鍔部101の表面に不可避的に形成される分割線痕PLが、巻線体12の巻き終わりWENDを係止する巻終端係止部112側でコネクタソケット11の開口部112に露出しないよう、鍔部101の対角線、又は、鍔部101を二分する中心軸に沿って2分割した成形型を用いて中心コア10の圧縮成形を行う。
【解決手段】小径部102と大径部103とからなる略段付円柱状の巻胴部と、小径部102の先端に設けられ大径部103よりも径大となるように略矩形に広がる鍔部101とを具備する中心コア10に一次巻線体12を巻回した一次コイル1を具備する点火コイル100において、鍔部101をコネクタソケット11に挿嵌したときに、鍔部101の表面に不可避的に形成される分割線痕PLが、巻線体12の巻き終わりWENDを係止する巻終端係止部112側でコネクタソケット11の開口部112に露出しないよう、鍔部101の対角線、又は、鍔部101を二分する中心軸に沿って2分割した成形型を用いて中心コア10の圧縮成形を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関において点火プラグに印加する高電圧を発生させる点火コイルに係り、特に磁性粉末を圧縮成形した圧粉コアを中心コアとして用いた点火コイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、点火コイルには、一次コイルと二次コイルとによる相互誘導作用の効果を高めるために、これらのコイルの内側に中心コアが配設されている。
中心コアには、珪素鋼板を積層してなる積層コアと、絶縁被覆を施した磁性粉末を圧縮成形した圧粉コアとがある。
圧粉コアは、積層コアに比べて表面が滑らかであることから、近年、点火コイルの小型化のため、巻枠を介さず巻線体を圧粉コアに直接巻回したものが用いられるようになっている。
また、圧粉コアは、積層コアに比べて複雑な形状に成形することが容易で、巻胴部を段付き形状とすることによって全体の体格を大きくすることなく巻線体の巻回数を多くすることもできる。
【0003】
特許文献1には、水アトマイズ法により製造された磁性粉末原料に機械的衝撃を加えて球状化した後、焼鈍により歪みを除去し、シリコン樹脂等の耐熱性有機樹脂成分からなる絶縁被覆を施して個々に絶縁した磁性粉末を温間で潤滑金型を用いて圧縮成型することにより鉄損の少ない圧粉コアを製造する方法が開示されている。
点火コイルの中心コアとして用いられる圧粉コアは、小径部と大径部とを有する段付き円柱状に形成された巻胴部と、巻胴部の小径側の先端において巻胴部の中心軸に対して直交方向に広がり、略矩形に形成された鍔部とによって構成されている。
鍔部は、巻線体の巻始めと巻き終わりとを係止すると共に中心コアを保持固定するためのコネクタソケットに挿入固定されて使用されている。
【0004】
点火コイルに用いられる圧粉コアは、このような段付き形状を呈しているため、一体型の成形型を用いたのでは、圧粉コアを離型することができず、通常、成形型を複数に分割した分割型が用いられている。
ところが、分割型によって磁性粉末を圧縮成形する場合、各分割型が当接する当接面には、金型の欠け・割れの防止を図るために施したC面や、使用による摩耗によって形成される微少な間隙が存在し、そこに磁性粉末が侵入し加圧されることによって、成形型の分割線に沿って圧粉コアの外周表面に不可避的にバリが発生する。
バリのある圧粉コアに巻線体を直接巻回すると、バリによってコイルの絶縁被覆が傷つき、一次コイルの短絡を招く虞がある。
このため、研磨等により、圧粉コアの表面に形成されたバリを除去する必要がある。
圧粉コアの段付き円柱状の巻胴部の外周面に発生するバリは、バフ研磨、ブラスト研磨等の公知の方法により比較的容易に除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−324270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、圧粉コアの巻胴部と鍔部とが直交する根本部に発生するバリを簡易な方法により完全に除去することは困難で、僅かにバリが残る虞がある。
一方、圧粉コアは靱性が低いので、インサート成形によりコネクタソケットとの一体化を図ろうとすると、鍔部の割れを招く虞がある。
このため、圧粉コアの巻胴部を挿通すべく筐体側壁の一部を切り欠いて開口部を設けたコネクタソケットに鍔部を挿入固定するアウトサート成形によりコネクタソケットとの一体化を図る必要がある。
ところが、アウトサート成形により圧粉コアとコネクタソケットとの一体化を図った場合、コネクタソケットの開口部から鍔部と巻胴部とが直交する根本部に残ったバリが露出することになる。
コネクタソケットの開口部は側壁が切り欠かれているので、巻胴部に巻線体を巻回したときに、一段目の巻線体の内、最も鍔部に近い巻線体とその隣の巻線体との間に二段目の巻線体が押し付けられると、側壁によって支持されていない鍔部に最も近い巻線体が撓んで鍔部に当接することがある。
このとき、鍔部と巻線体とが当接する位置にバリが残っていると、巻線体の絶縁被覆が傷つき、一次コイルの短絡を招く虞がある。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたものであり、磁性粉末を圧縮成形した圧粉コアを用いた点火コイルであって、一次コイルの短絡が生じ難く信頼性の高い点火コイルとその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明では、少なくとも、分割型に充填した磁性粉末を圧縮して小径部と大径部とを有する略段付き円柱状に形成した巻胴部と上記小径部の端部から外径方向に向かって略矩形に広がる鍔部とを設けた圧粉コアを中心コアとし、
一端が開口し、他端が閉塞する略有底筒状で、側壁の一部を切り欠いて開口端から上記巻胴部を挿通する開口部を設けたコネクタソケットに上記中心コアの鍔部を挿入固定すると共に、上記コネクタソケットの側壁に巻始端末線係止部と巻終端末線係止部とを設けて、これらの係止部に端末線を絡めて係止せしめた巻線体を上記巻胴部に巻回して一次コイルとして設けた点火コイルであって、上記分割型として上記鍔部の頂点を結ぶ対角線の内、巻始側の対角線が上記開口部から露出し、巻終側の対角線が上記開口部から露出しない方向となる対角線に沿った分割線によって2分割した分割型を用いて、上記鍔部と上記小径部との交わる巻胴部の根本部の表面に残留し上記開口部から露出するバリを巻始側に配置せしめる(請求項1)。
【0009】
第1の発明によれば、上記開口部から露出するバリは巻始側の一カ所のみとなり、巻始端末線は上記コネクタソケットの側壁に設けた巻始端末線係止部に係止され、巻始め位置まで上記コネクタソケットの側壁に支持された状態であるので、上記巻胴部に巻線体を巻回したときに、上記鍔部に最も近い側の巻線体が上記開口部で撓んでも、上記巻始端末線によって持ち上げられた状態となり上記開口部から露出するバリに当接することがなく、巻終側に発生するバリは上記コネクタソケットの側壁に覆われた状態である。
したがって、巻線体の絶縁被覆がバリによって傷つき難くなり、上記中心コアとの間で短絡を生じがたくなる。
【0010】
第2の発明では、少なくとも、分割型に充填した磁性粉末を圧縮して小径部と大径部とを有する略段付き円柱状に形成した巻胴部と上記小径部の端部から外径方向に向かって略矩形に広がる鍔部とを設けた圧粉コアを中心コアとし、
一端が開口し、他端が閉塞する略有底筒状で、側壁の一部を切り欠いて開口端から上記巻胴部を挿通する開口部を設けたコネクタソケットに上記中心コアの鍔部を挿入固定すると共に、上記コネクタソケットの側壁に巻始端末線係止部と巻終端末線係止部とを設けて、これらの係止部に端末線を絡めて係止せしめた巻線体を上記巻胴部に巻回して一次コイルとして設けた点火コイルであって、
上記分割型として上記鍔部を上記コネクタソケットに挿入する挿入方向に対して、直交し、上記鍔部を2分する中心軸に沿った分割線によって2分割した分割型を用いて、上記鍔部と上記小径部との交わる巻胴部の根本部の表面に残留するバリを上記中心軸に沿った位置に配置せしめる(請求項2)。
【0011】
第2の発明によれば、上記コネクタソケットの側壁によって上記バリが覆われるので、巻線体を中心コアに巻回したときに、最も鍔部に近い位置の巻線体と上記バリとが当接することがなく、上記巻線体と上記中心コアとの間の短絡を生じ難くなる。
【0012】
一方、本発明によらず、上記分割型を3分割以上に分割した場合には、除去すべきバリも3カ所以上に形成されるので、バリ除去のための工数が増加するのに加え、除去不十分なバリが上記コネクタソケットの開口部から露出している場合に、巻始端末線によって支えきれず、鍔部に最も近い位置の巻線体がバリに当接して傷つき上記中心コアとの間で短絡を生じる虞がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態における点火コイルの全体概要を示す縦断面図、(b)は、その点火コイルに用いられ、本発明の要部である一次コイルの概要を示す外観上面図。
【図2】本発明の第1の実施形態における一次コイルに用いられる圧粉コアの概要を示し、(a)は、鍔部を上にしたときの下面図、(b)は、その正面図。
【図3】本発明の効果を組み付け順を追って説明するための説明図であって、(a)は、本発明に係る圧粉コアをコネクタソケットに装着した状態を示す上面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った矢視断面図、(c)は、一次コイルを巻回した状態を示す一部切り欠き上面図、(d)は、本図(c)中A−Aに沿った矢視断面図。
【図4】本発明の点火コイルに係る圧粉コアの製造方法について圧縮成形行程を(a)から(e)の順を追って示す断面図。
【図5】本発明の点火コイルに係る圧粉コアの製造方法について、(a)は、成形型の概要を示す下面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った矢視断面図、(c)は、本発明の第1の実施形態に係る成形型の分割方向を示す下面図、(d)は、バリの発生状態を示す本図(c)中B−Bに沿った矢視断面図。
【図6】本発明の第1の実施形態における点火コイルに係る圧粉コアの概要を示し、(a)は、成形直後の状態を示す側面図、(b)は、上面図、(c)は、バリ除去後の状態を示す側面図、(d)は、その上面図。
【図7】(a)は、比較例における成形型の概要を示す下面図、(b)は、分割方向を示す下面図、(c)は、比較例における圧粉コアの概要を示す側面図、(d)は、その下面図。
【図8】比較例における問題点を説明するための説明図であって、(a)は、比較例に係る圧粉コアをコネクタソケットに装着した状態を示す上面図、(b)は本図(a)中A−Aに沿った一部断面図、(c)は、一次コイルを巻回した状態を示す一部切り欠き上面図、(d)、(e)は、本図(c)中B−Bに沿った矢視断面図。
【図9】比較例における問題点を説明するための説明図であって、(a)は、比較例に係る圧粉コアの挿入向きを変えてコネクタソケットに装着した状態を示す一部断面図、(b)は、本図(a)中A方向から見た上面図、(c)は、コネクタソケットの開口方向を変えた場合の一部断面図、(d)は、本図(c)中B方向から見た側面図。
【図10】(a)は、第2の実施例における成形型の概要を示す下面図、(b)は、当該実施例における成形型の分割方向を示す下面図、(c)は、第2の実施例における圧粉コアの概要を示す下面図、(d)は、本実施例の圧粉コアをコネクタソケットに装着した状態を示す一部断面図。
【図11】(a)は、本発明の第3の実施例における成形型の概要を示す下面図、(b)は、当該実施例における成形型の分割方向を示す下面図、(c)は、第3の実施例における圧粉コアをコネクタソケットに装着した状態を示す一部断面面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、内燃機関において点火プラグに印加する高電圧を発生させる点火コイル100であって、特定の方向に2分割した分割型D1、D2を用いて磁性粉末を圧縮成形した中心コア10の表面に不可避的に発生する分割線痕PLが鍔部101対して特定の方向に位置するようにして、中心コア10に一次巻線体12を直接巻回した一次コイル1の短絡を防止するようにしたものである。
【0015】
図1を参照して、本発明の第1の実施形態における点火コイル100及び、本発明の要部であり、点火コイル100に用いられる一次コイル1の概要について説明する。
図1(a)は、本実施形態における点火コイル100の部分断面図であり、本図(b)は、点火コイル100に用いられる一次コイル1の外観を示す上面図である。
図1(a)に示すように、点火コイル100は、概ね一次コイル1と二次コイル20とイグナイタ30とこれらを収容するハウジング40と入力コネクタ50と固定部60とによって構成されている。
一次コイル1は、小径部102と大径部103とを有する略段付き円柱状に形成された中心コア10と、中心コア10の小径部102と大径部103とを巻胴部として巻回された一次巻線体12と、中心コア10の端部に設けられ外径方向に向かって略矩形に広がる鍔部101を固定すると共に一次巻線体12の巻始端末線121と巻終端末線122とを係止するコネクタソケット11とによって構成されている。
鍔部101は、中心コア10に巻回された巻線体12の巻崩れを防ぐと共に、コネクタソケット11に挿入され、ハウジング40内の所定位置への中心コア10の固定を担っている。
コネクタソケット11は、一端が開口し他端が閉塞する略有底筒状に形成され、開口端から鍔部101が挿入され、開口端から側壁111の一部を切り欠いて小径部102が挿通される開口部112が形成されており、コネクタソケット11に鍔部101を挿入固定した状態では、開口部112以外は鍔部101の表面を覆っている。
なお、中心コア10を略段付き円柱状に形成することによって、一次コイル1の体格を大きくすることなく、小径部102へ巻回する回数を増やしている。
二次コイル20は、一次コイル1と同軸に配設され、二次巻線体202を巻回する略筒状の二次巻線用巻枠201と、二次巻線体202と、外周コア203とによって構成されている。
一次巻線体12の巻終端末線122に接続して、二次巻線体202が二次巻線用巻枠201の外周に巻回されている。
中心コア10と外周コア203とによって点火コイル100の磁気回路が構成されている。
イグナイタ30は、コネクタ50内に収容された接続端子51を介して、図略の電源及び電子制御装置に接続され、電子制御装置から発信される点火信号にしたがって電源から一次コイル1へ印加する電圧を開閉して所定の点火時期に相互誘導作用により二次コイル20に高電圧を発生させる。
二次コイル20に発生した高電圧は、二次巻線端末204、高圧線21、高圧端子22、雑防抵抗23、接続スプリング24等を介して、図略の点火プラグに印加される。
ハウジング40内には、熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の絶縁材料410が満たされている。
固定部60は、点火コイル100を図略のエンジンヘッドに固定している。
【0016】
中心コア10は、水アトマイズ法により略球状に製造された磁性粉末を、後述する特徴を有する分割型に充填して圧縮成形した圧粉コアである。磁性粉末として、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の磁性金属単体、又は、これら金属単体を主とする合金を用いることができる。
中心コア10は、珪素鋼板等の電磁鋼板を積層して形成した従来の積層コアとは異なり、外周面にエッジが存在しておらず、全体に亘って滑らかな外周面を有しているため、中心コア10の巻胴部102、103に巻線体12が直接巻回されている。
中心コア10の表面において、分割型の分割線PLに沿った位置に発生したバリを除去した後に、本図(b)に示すように、鍔部101の特定の位置に配置されたバリBRが残っていたとしても、コネクタソケット11に設けられた巻始端末線係止部113から中心コア10の巻胴部102に巻回される巻始WSTRの位置まで巻始端末線121が、コネクタソケット11の側壁111に支持された状態となっており、小径部102に巻回された巻線体12の内最も鍔部101の表面に近い巻線体12は巻始端末線121に支えられており、コネクタソケット11の開口部112の巻終WEND側には、バリが発生してないので、巻線体12の落ち込みによりバリBRと接触して絶縁被覆が損傷する虞がない。
【0017】
図2を参照して、本実施形態における中心コア10の特徴についてさらに詳述する。
中心コア10は、小径部102と大径部103とを有する段付き円柱状に形成された巻胴部と、巻胴部の小径側の先端で略矩形に形成された鍔部101とによって構成されている。
小径部101と大径部103との間の径変部105は、連続的に径変するテーパ状に形成されている。
中心コア10は、水アトマイズ法によって略球状に製造された磁性粉末原料を用い、焼鈍により歪みを除去した後、シリコン樹脂等の耐熱性有機樹脂成分からなる絶縁コーティングを施して個々に絶縁した磁性粉末を後述する特定方向に分割した分割型D(D1、D2)を用いて圧縮成形されている。
本実施形態における中心コア10は、本図(a)に示すように、鍔部101をコネクタソケット11への挿入方向と平行な中心軸C/Lに対して、巻線体12の巻始側となる頂点P1から巻線体の巻終側となる頂点P2を結んだ特定の対角線に沿って分割線圧PLが位置している。
また、本図(b)に示すようにバリ除去後に残留するバリBR1、BR2は、中心コア10の巻胴部と鍔部101とが直交する根本部104であって、鍔部101の巻始側から巻終側に向かう対角線上に発生する虞がある。
【0018】
次いで図3を参照して本発明の効果について説明する。
図3(a)、(b)は、図2に示した中心コア10を、コネクタソケット11に装着した状態を示し、図3(c)、(d)は、これに、巻線体12を巻回した状態を示す。
コネクタソケット11は、絶縁性の樹脂からなり、鍔部101を挿入可能とする一端が開放し他端が閉塞する有底筒状に形成された側壁111を有し、側壁111の一部を切り欠いて中心コア10の小径部102を挿通するための開口部112が設けられている。
また、コネクタソケット11の周壁111の上面には、巻線体12の巻始めの端末線121を絡めて固定するための巻始端末係止部113と、巻線体12の巻終わりの端末線122を絡めて固定するための巻終端末線係止部114とが設けられている。
コネクタソケット11に鍔部101を挿入すると、本図(b)に示すように、鍔部101の対角線上で、開口部112の中心軸C/Lに対して巻始側となる位置には、上述の如く鍔部101の巻始側の対角線上に残存したバリBR1が露出するが、巻終側の対角線上に残存したバリBR2は、コネクタソケット11の周壁111によって覆われ、開口部112には露出しない。
さらに、本図(c)、(d)に示すように、巻線体12の巻始端末線121をコネクタソケット11に設けられた巻始端末係止部113に絡めて、巻始端末線係止部113から中心コア10の巻胴部102に巻回される巻始WSTRの位置まで巻始端末線121が、コネクタソケット11の側壁111に支持された状態となっており、小径部102に巻回された巻線体12の内最も鍔部101の表面に近い巻線体12は巻始端末線121に支えられているので、鍔部101の巻始側のバリBR1が残っていたとしても、巻線体12が当接して損傷する虞がない。
一方、巻終側に発生するバリBR2は、コネクタソケット11の側壁111に覆われており、開口部112には露出しないので、巻線体12の落ち込みによりバリBRと接触して絶縁被覆が損傷する虞がない。
したがって、信頼性の高い点火コイル100が実現できる。
【0019】
図4を参照して、本発明の要部である中心コア10の製造方法の一例について説明する。本図(a)から(e)は、磁性粉末MGPを圧縮成形して中心コア10を成形する工程順を追って示す断面図である。
本発明に用いられる分割型Dは、本図(a)に示すように、中心コア10の鍔部101を形成するための第1の空間部CV101、小径部102を形成するための第2の空間部CV102、大径部103を形成するための第3の空間部CV103が形成され、第2の空間部CV102を区画する周壁は、他の周壁より狭くなった縮径部BN102を設けた略筒状に形成され、特定の分割線に沿って2分割された分割型D1、D2によって構成されている。
さらに、第3の空間部CV103は、下方から下パンチPLが摺動可能に挿入され、下端が閉じられている。
本図(a)に示すように、材料供給手段FDから第3の空間部103第2の空間部CV102、第1の空間部CV101、に水アトマイズ法等の公知の方法により製造された略球状の磁性粉末MGPが供給され、本図(b)に示すように、所定量の磁性粉末MGPが充填されると、本図(c)に示すように、上パンチPUと下パンチPLとによって圧縮され、圧粉コアが形成される。
次いで、本図(d)に示すように、分割型Dが、外側に向かって2分割され、圧粉コア10が離型され、本図(e)に示すように、圧粉コア10が取り出される。
なお、一般的には、加圧工程は温間で処理され、分割型Dを潤滑剤によって潤滑したり、磁性粉末MGPに離型剤を混合したりすることによって、分割型Dと圧粉コア10との離型性の向上が図られている。
さらに、磁性粉末MGPは、個々の粉末粒子がシリコン系樹脂、リン酸ガラス、絶縁性有機材料等の公知の絶縁材料によって絶縁コーティングされている。
【0020】
図5を参照して、本発明の点火コイル1に係る圧粉コア10を圧縮成形するための分割型Dの特徴について詳述する。
本実施形態において、分割型Dは、本図(a)に示すように、鍔部101を形成するための第1の空間部CV101の特定の方向の対角線に沿った分割線PLによって2分割された分割型D1、D2によって構成されている。
さらに、本図(b)に示すように、分割型D1、D2が互いに当接する面には、分割型D1、D2の欠け、割れを防ぐためにC面が全周に渡って施されている。
また、本図(c)に示すように、分割型D1、D2は、分割線PLに直交する方向に分離される。このため、成形された中心コア10の鍔部101の側面、及び表面と分割型D1、D2の第1の空間部CV101の内周側面及び底面との摩擦が少なく、速やかに離型することができる。
さらに、離型後の中心コア10の外表面には、本図(d)に示すように、分割型D1、D2に施されたC面内に充填された磁性粉末MGPが加圧されて分割線PLに沿って、バリBRが発生する。
【0021】
図6(a)、(b)に示すように、本実施形態においては、中心コア10の巻胴部102、103の表面及び鍔部101の表面に鍔部101の特定の対角線に沿った位置にバリが発生する。
これらのバリは、本図(c)、(d)に示すように、バフ研磨や、ブラスト研磨等の公知の方法によりバリ除去処理がされ、巻胴部102、103、径変部105の表面及び鍔部101の平らな面は比較的容易にバリ取りができるが、鍔部101と小径部102とが直交する根本部の近傍のバリを完全に除去するのは困難で、僅かにバリが残留する虞がある。
しかし、本実施形態によれば、バリは、鍔部101の特定の対角線上に表れ、上述の如く、コネクタソケット11に挿入したときに、開口部112から露出するのは、巻始側のバリBR1の一カ所のみとなり、上述の効果を発揮できる。
また、本実施形態によれば、鍔部101の表面に発生するバリを除去せずとも同様の効果が発揮されるので、バリ除去作業を簡略化することもできる。
【0022】
図7、図8、図9を参照して、比較例として図7(a)に示す、成形型DZを分割型D1Z、D2Z、D3Zの3分割した場合の問題点について説明する。
成形型DZを3分割する場合、図7(b)に示すように、鍔部101zの長辺を含む分割型D1Zは、必然的に鍔部101zの長辺に直交する方向へ離型する必要があり、その他の分割型D2Z、D3Zは、それぞれ、120°の角度で、離型されることになる。
このため、比較例の中心コア10Zには、図7(c)、(d)に示すように、バリBR1、BR2、BR3の3カ所にバリが残留する虞がある。
これを図8(a)、(b)に示すように、コネクタソケット11に挿入すると、バリBR2は側壁111に覆われるが、バリBR1、BR3の2カ所のバリが開口部112から、露出することになる。
このような状態で、巻線体12を中心コア10Zに巻回すると、図8(c)に示すように、巻始側のバリBR1には、巻線体12は当接しないが、巻終側のバリBR2の上を通過する巻線体12は、これを支える側壁111がないため、一段目の最も鍔部101Zに近い位置の巻線体とコネクタソケットの開口部は側壁が切り欠かれているので、巻胴部102Zに巻線体12を巻回したときに、図8(d)に示すように、一段目の巻線体の内、最も鍔部101Zに近い巻線体12とその隣の巻線体12との間に二段目の巻線体12が押し込まれると、図8(e)に示すように側壁111Zによって巻線体12を支持することができず、鍔部101Zに最も近い巻線体12が鍔部101Zに当接することになる。このとき、バリBR3によって、巻線体12の絶縁被覆が傷つき、中心コア10Zと巻線体12との間に導通を生じ一次コイル1の短絡を招く虞がある。
【0023】
また、図9(a)に示すように、3分割した分割型DZを用いて形成した中心コア10Zを上述の比較例とは挿入方向を変えてコネクタソケット11に挿入した場合、バリBR2が、開口部12の中心に露出することになり、このような状態で、巻線体12を中心コア10Zに巻回すると、図9(b)に示すように、鍔部101Zに最も近い巻線体12が撓んでバリBR2に当接し、損傷する虞がある。
さらに、図9(c)に示すように、中心コア10Zを挿入方向を変えたコネクタソケット11Yに挿入した場合でも、バリBR1が開口部112Yに露出し、さらに、巻線体12の巻始WSTRが開口部112Y内に位置するため、端末線121がコネクタソケット112Yの側壁111によって支持されなくなる。このため、図9(d)に示すように、巻線体12がバリBR1に当接し、損傷する虞がある。
以上のように、本発明によらず、中心コアを圧縮成形するための成形型を3分割した場合には、コネクタソケット11への挿入向きを変えたり、コネクタソケット11Yのように開口部112Yの開口方向を変えたりしても、残留するバリに巻線体12が当接するのを防ぐことが困難となり、一次コイルの短絡を招く虞がある。
【0024】
図10を参照して本発明の第2の実施形態における点火コイル1aの要部である中心コア10aについて説明する。
上記実施形態においては、鍔部101の特定の対角線方向に沿って、2分割した分割型D1、D2を用いた場合について説明したが、本実施形態においては、本図(a)に示すように、鍔部101aの長辺を2分割する中心軸C/Lに沿った分割線PLによって2分割した分割型D1a、D2aを用いると共に、鍔部101aの長辺側に分割型D1a、D2aを短辺に直交する方向へ離型可能とするための抜きテーパを設け、さらに、コネクタソケット11aとして、鍔部101aを短辺側から挿入する開口部112aを設けたことを特徴とする。
本実施形態によれば、本図(b)に示すように、鍔部101aと分割型D1a、D2aを短辺に直交する方向へ離型する際に、鍔部101aの長辺側面と分割型D1a、D2aの内周壁との摩擦が小さくなり、速やかに離型することができる。
一方、本実施形態によらず、鍔部101aの長辺を直線状に形成しままで、長辺を2分する中心軸C/Lに沿って単純に2分割したのでは、鍔部101aの長辺側面と分割型D1、D2の内周壁との摩擦が大きくなり、離型時に鍔部101aの破損を招く虞がある。
さらに、本実施形態によれば、本図(c)に示すように、中心コア10aに残留するバリBRは、鍔部101aの長辺を2分する中心軸C/Lに沿った位置に2カ所表れる。
しかし、本図(d)に示すように、コネクタソケット11aの短辺側から鍔部101aを挿入すれば、開口部112aからバリBRが露出することがなく、巻線体12が傷つく虞がない。
【0025】
図11を参照して、本発明に第3の実施形態における点火コイル1bの要部である中心コア10aについて説明する。
上記実施形態においては、鍔部101の特定の対角線方向に沿って、2分割した分割型D1、D2を用いた場合について説明したが、本実施形態においては、本図(a)に示すように、鍔部101bの短辺を2分割する中心軸C/Lに沿った分割線PLによって2分割した分割型D1b、D2bを用いると共に、鍔部101bの短辺側に分割型D1b、D2bを長辺に直交する方向へ離型可能とするための抜きテーパを設けたことを特徴とする。本実施形態によれば、本図(b)に示すように、鍔部101bと分割型D1b、D2bを短辺に直交する方向へ離型する際に、鍔部101aの長辺側面と分割型D1b、D2bの内周壁との摩擦が小さくなり、速やかに離型することができる。
一方、本実施形態によらず、鍔部101aの短辺を直線状に形成したのでは、短辺側面と分割型D1b、D2bの内周壁との摩擦が大きくなり、離型時に鍔部101bの破損を招く虞がある。
さらに、本実施形態によれば、本図(c)に示すように、中心コア10bに残留するバリBRは、鍔部101bの短辺を2分する中心軸C/Lに沿った位置に2カ所表れる。
しかし、本図(d)に示すように、コネクタソケット11に鍔部101bを挿入すれば、開口部112からバリBRが露出することがなく、巻線体12が傷つく虞がない。
【符号の説明】
【0026】
10 中心コア(圧粉コア)
101 鍔部
102 小径部
103 大径部
11 コネクタソケット
12 一次巻線体
100 点火コイル
D1,D2 2分割成形型
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関において点火プラグに印加する高電圧を発生させる点火コイルに係り、特に磁性粉末を圧縮成形した圧粉コアを中心コアとして用いた点火コイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、点火コイルには、一次コイルと二次コイルとによる相互誘導作用の効果を高めるために、これらのコイルの内側に中心コアが配設されている。
中心コアには、珪素鋼板を積層してなる積層コアと、絶縁被覆を施した磁性粉末を圧縮成形した圧粉コアとがある。
圧粉コアは、積層コアに比べて表面が滑らかであることから、近年、点火コイルの小型化のため、巻枠を介さず巻線体を圧粉コアに直接巻回したものが用いられるようになっている。
また、圧粉コアは、積層コアに比べて複雑な形状に成形することが容易で、巻胴部を段付き形状とすることによって全体の体格を大きくすることなく巻線体の巻回数を多くすることもできる。
【0003】
特許文献1には、水アトマイズ法により製造された磁性粉末原料に機械的衝撃を加えて球状化した後、焼鈍により歪みを除去し、シリコン樹脂等の耐熱性有機樹脂成分からなる絶縁被覆を施して個々に絶縁した磁性粉末を温間で潤滑金型を用いて圧縮成型することにより鉄損の少ない圧粉コアを製造する方法が開示されている。
点火コイルの中心コアとして用いられる圧粉コアは、小径部と大径部とを有する段付き円柱状に形成された巻胴部と、巻胴部の小径側の先端において巻胴部の中心軸に対して直交方向に広がり、略矩形に形成された鍔部とによって構成されている。
鍔部は、巻線体の巻始めと巻き終わりとを係止すると共に中心コアを保持固定するためのコネクタソケットに挿入固定されて使用されている。
【0004】
点火コイルに用いられる圧粉コアは、このような段付き形状を呈しているため、一体型の成形型を用いたのでは、圧粉コアを離型することができず、通常、成形型を複数に分割した分割型が用いられている。
ところが、分割型によって磁性粉末を圧縮成形する場合、各分割型が当接する当接面には、金型の欠け・割れの防止を図るために施したC面や、使用による摩耗によって形成される微少な間隙が存在し、そこに磁性粉末が侵入し加圧されることによって、成形型の分割線に沿って圧粉コアの外周表面に不可避的にバリが発生する。
バリのある圧粉コアに巻線体を直接巻回すると、バリによってコイルの絶縁被覆が傷つき、一次コイルの短絡を招く虞がある。
このため、研磨等により、圧粉コアの表面に形成されたバリを除去する必要がある。
圧粉コアの段付き円柱状の巻胴部の外周面に発生するバリは、バフ研磨、ブラスト研磨等の公知の方法により比較的容易に除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−324270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、圧粉コアの巻胴部と鍔部とが直交する根本部に発生するバリを簡易な方法により完全に除去することは困難で、僅かにバリが残る虞がある。
一方、圧粉コアは靱性が低いので、インサート成形によりコネクタソケットとの一体化を図ろうとすると、鍔部の割れを招く虞がある。
このため、圧粉コアの巻胴部を挿通すべく筐体側壁の一部を切り欠いて開口部を設けたコネクタソケットに鍔部を挿入固定するアウトサート成形によりコネクタソケットとの一体化を図る必要がある。
ところが、アウトサート成形により圧粉コアとコネクタソケットとの一体化を図った場合、コネクタソケットの開口部から鍔部と巻胴部とが直交する根本部に残ったバリが露出することになる。
コネクタソケットの開口部は側壁が切り欠かれているので、巻胴部に巻線体を巻回したときに、一段目の巻線体の内、最も鍔部に近い巻線体とその隣の巻線体との間に二段目の巻線体が押し付けられると、側壁によって支持されていない鍔部に最も近い巻線体が撓んで鍔部に当接することがある。
このとき、鍔部と巻線体とが当接する位置にバリが残っていると、巻線体の絶縁被覆が傷つき、一次コイルの短絡を招く虞がある。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたものであり、磁性粉末を圧縮成形した圧粉コアを用いた点火コイルであって、一次コイルの短絡が生じ難く信頼性の高い点火コイルとその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明では、少なくとも、分割型に充填した磁性粉末を圧縮して小径部と大径部とを有する略段付き円柱状に形成した巻胴部と上記小径部の端部から外径方向に向かって略矩形に広がる鍔部とを設けた圧粉コアを中心コアとし、
一端が開口し、他端が閉塞する略有底筒状で、側壁の一部を切り欠いて開口端から上記巻胴部を挿通する開口部を設けたコネクタソケットに上記中心コアの鍔部を挿入固定すると共に、上記コネクタソケットの側壁に巻始端末線係止部と巻終端末線係止部とを設けて、これらの係止部に端末線を絡めて係止せしめた巻線体を上記巻胴部に巻回して一次コイルとして設けた点火コイルであって、上記分割型として上記鍔部の頂点を結ぶ対角線の内、巻始側の対角線が上記開口部から露出し、巻終側の対角線が上記開口部から露出しない方向となる対角線に沿った分割線によって2分割した分割型を用いて、上記鍔部と上記小径部との交わる巻胴部の根本部の表面に残留し上記開口部から露出するバリを巻始側に配置せしめる(請求項1)。
【0009】
第1の発明によれば、上記開口部から露出するバリは巻始側の一カ所のみとなり、巻始端末線は上記コネクタソケットの側壁に設けた巻始端末線係止部に係止され、巻始め位置まで上記コネクタソケットの側壁に支持された状態であるので、上記巻胴部に巻線体を巻回したときに、上記鍔部に最も近い側の巻線体が上記開口部で撓んでも、上記巻始端末線によって持ち上げられた状態となり上記開口部から露出するバリに当接することがなく、巻終側に発生するバリは上記コネクタソケットの側壁に覆われた状態である。
したがって、巻線体の絶縁被覆がバリによって傷つき難くなり、上記中心コアとの間で短絡を生じがたくなる。
【0010】
第2の発明では、少なくとも、分割型に充填した磁性粉末を圧縮して小径部と大径部とを有する略段付き円柱状に形成した巻胴部と上記小径部の端部から外径方向に向かって略矩形に広がる鍔部とを設けた圧粉コアを中心コアとし、
一端が開口し、他端が閉塞する略有底筒状で、側壁の一部を切り欠いて開口端から上記巻胴部を挿通する開口部を設けたコネクタソケットに上記中心コアの鍔部を挿入固定すると共に、上記コネクタソケットの側壁に巻始端末線係止部と巻終端末線係止部とを設けて、これらの係止部に端末線を絡めて係止せしめた巻線体を上記巻胴部に巻回して一次コイルとして設けた点火コイルであって、
上記分割型として上記鍔部を上記コネクタソケットに挿入する挿入方向に対して、直交し、上記鍔部を2分する中心軸に沿った分割線によって2分割した分割型を用いて、上記鍔部と上記小径部との交わる巻胴部の根本部の表面に残留するバリを上記中心軸に沿った位置に配置せしめる(請求項2)。
【0011】
第2の発明によれば、上記コネクタソケットの側壁によって上記バリが覆われるので、巻線体を中心コアに巻回したときに、最も鍔部に近い位置の巻線体と上記バリとが当接することがなく、上記巻線体と上記中心コアとの間の短絡を生じ難くなる。
【0012】
一方、本発明によらず、上記分割型を3分割以上に分割した場合には、除去すべきバリも3カ所以上に形成されるので、バリ除去のための工数が増加するのに加え、除去不十分なバリが上記コネクタソケットの開口部から露出している場合に、巻始端末線によって支えきれず、鍔部に最も近い位置の巻線体がバリに当接して傷つき上記中心コアとの間で短絡を生じる虞がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態における点火コイルの全体概要を示す縦断面図、(b)は、その点火コイルに用いられ、本発明の要部である一次コイルの概要を示す外観上面図。
【図2】本発明の第1の実施形態における一次コイルに用いられる圧粉コアの概要を示し、(a)は、鍔部を上にしたときの下面図、(b)は、その正面図。
【図3】本発明の効果を組み付け順を追って説明するための説明図であって、(a)は、本発明に係る圧粉コアをコネクタソケットに装着した状態を示す上面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った矢視断面図、(c)は、一次コイルを巻回した状態を示す一部切り欠き上面図、(d)は、本図(c)中A−Aに沿った矢視断面図。
【図4】本発明の点火コイルに係る圧粉コアの製造方法について圧縮成形行程を(a)から(e)の順を追って示す断面図。
【図5】本発明の点火コイルに係る圧粉コアの製造方法について、(a)は、成形型の概要を示す下面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った矢視断面図、(c)は、本発明の第1の実施形態に係る成形型の分割方向を示す下面図、(d)は、バリの発生状態を示す本図(c)中B−Bに沿った矢視断面図。
【図6】本発明の第1の実施形態における点火コイルに係る圧粉コアの概要を示し、(a)は、成形直後の状態を示す側面図、(b)は、上面図、(c)は、バリ除去後の状態を示す側面図、(d)は、その上面図。
【図7】(a)は、比較例における成形型の概要を示す下面図、(b)は、分割方向を示す下面図、(c)は、比較例における圧粉コアの概要を示す側面図、(d)は、その下面図。
【図8】比較例における問題点を説明するための説明図であって、(a)は、比較例に係る圧粉コアをコネクタソケットに装着した状態を示す上面図、(b)は本図(a)中A−Aに沿った一部断面図、(c)は、一次コイルを巻回した状態を示す一部切り欠き上面図、(d)、(e)は、本図(c)中B−Bに沿った矢視断面図。
【図9】比較例における問題点を説明するための説明図であって、(a)は、比較例に係る圧粉コアの挿入向きを変えてコネクタソケットに装着した状態を示す一部断面図、(b)は、本図(a)中A方向から見た上面図、(c)は、コネクタソケットの開口方向を変えた場合の一部断面図、(d)は、本図(c)中B方向から見た側面図。
【図10】(a)は、第2の実施例における成形型の概要を示す下面図、(b)は、当該実施例における成形型の分割方向を示す下面図、(c)は、第2の実施例における圧粉コアの概要を示す下面図、(d)は、本実施例の圧粉コアをコネクタソケットに装着した状態を示す一部断面図。
【図11】(a)は、本発明の第3の実施例における成形型の概要を示す下面図、(b)は、当該実施例における成形型の分割方向を示す下面図、(c)は、第3の実施例における圧粉コアをコネクタソケットに装着した状態を示す一部断面面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、内燃機関において点火プラグに印加する高電圧を発生させる点火コイル100であって、特定の方向に2分割した分割型D1、D2を用いて磁性粉末を圧縮成形した中心コア10の表面に不可避的に発生する分割線痕PLが鍔部101対して特定の方向に位置するようにして、中心コア10に一次巻線体12を直接巻回した一次コイル1の短絡を防止するようにしたものである。
【0015】
図1を参照して、本発明の第1の実施形態における点火コイル100及び、本発明の要部であり、点火コイル100に用いられる一次コイル1の概要について説明する。
図1(a)は、本実施形態における点火コイル100の部分断面図であり、本図(b)は、点火コイル100に用いられる一次コイル1の外観を示す上面図である。
図1(a)に示すように、点火コイル100は、概ね一次コイル1と二次コイル20とイグナイタ30とこれらを収容するハウジング40と入力コネクタ50と固定部60とによって構成されている。
一次コイル1は、小径部102と大径部103とを有する略段付き円柱状に形成された中心コア10と、中心コア10の小径部102と大径部103とを巻胴部として巻回された一次巻線体12と、中心コア10の端部に設けられ外径方向に向かって略矩形に広がる鍔部101を固定すると共に一次巻線体12の巻始端末線121と巻終端末線122とを係止するコネクタソケット11とによって構成されている。
鍔部101は、中心コア10に巻回された巻線体12の巻崩れを防ぐと共に、コネクタソケット11に挿入され、ハウジング40内の所定位置への中心コア10の固定を担っている。
コネクタソケット11は、一端が開口し他端が閉塞する略有底筒状に形成され、開口端から鍔部101が挿入され、開口端から側壁111の一部を切り欠いて小径部102が挿通される開口部112が形成されており、コネクタソケット11に鍔部101を挿入固定した状態では、開口部112以外は鍔部101の表面を覆っている。
なお、中心コア10を略段付き円柱状に形成することによって、一次コイル1の体格を大きくすることなく、小径部102へ巻回する回数を増やしている。
二次コイル20は、一次コイル1と同軸に配設され、二次巻線体202を巻回する略筒状の二次巻線用巻枠201と、二次巻線体202と、外周コア203とによって構成されている。
一次巻線体12の巻終端末線122に接続して、二次巻線体202が二次巻線用巻枠201の外周に巻回されている。
中心コア10と外周コア203とによって点火コイル100の磁気回路が構成されている。
イグナイタ30は、コネクタ50内に収容された接続端子51を介して、図略の電源及び電子制御装置に接続され、電子制御装置から発信される点火信号にしたがって電源から一次コイル1へ印加する電圧を開閉して所定の点火時期に相互誘導作用により二次コイル20に高電圧を発生させる。
二次コイル20に発生した高電圧は、二次巻線端末204、高圧線21、高圧端子22、雑防抵抗23、接続スプリング24等を介して、図略の点火プラグに印加される。
ハウジング40内には、熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の絶縁材料410が満たされている。
固定部60は、点火コイル100を図略のエンジンヘッドに固定している。
【0016】
中心コア10は、水アトマイズ法により略球状に製造された磁性粉末を、後述する特徴を有する分割型に充填して圧縮成形した圧粉コアである。磁性粉末として、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の磁性金属単体、又は、これら金属単体を主とする合金を用いることができる。
中心コア10は、珪素鋼板等の電磁鋼板を積層して形成した従来の積層コアとは異なり、外周面にエッジが存在しておらず、全体に亘って滑らかな外周面を有しているため、中心コア10の巻胴部102、103に巻線体12が直接巻回されている。
中心コア10の表面において、分割型の分割線PLに沿った位置に発生したバリを除去した後に、本図(b)に示すように、鍔部101の特定の位置に配置されたバリBRが残っていたとしても、コネクタソケット11に設けられた巻始端末線係止部113から中心コア10の巻胴部102に巻回される巻始WSTRの位置まで巻始端末線121が、コネクタソケット11の側壁111に支持された状態となっており、小径部102に巻回された巻線体12の内最も鍔部101の表面に近い巻線体12は巻始端末線121に支えられており、コネクタソケット11の開口部112の巻終WEND側には、バリが発生してないので、巻線体12の落ち込みによりバリBRと接触して絶縁被覆が損傷する虞がない。
【0017】
図2を参照して、本実施形態における中心コア10の特徴についてさらに詳述する。
中心コア10は、小径部102と大径部103とを有する段付き円柱状に形成された巻胴部と、巻胴部の小径側の先端で略矩形に形成された鍔部101とによって構成されている。
小径部101と大径部103との間の径変部105は、連続的に径変するテーパ状に形成されている。
中心コア10は、水アトマイズ法によって略球状に製造された磁性粉末原料を用い、焼鈍により歪みを除去した後、シリコン樹脂等の耐熱性有機樹脂成分からなる絶縁コーティングを施して個々に絶縁した磁性粉末を後述する特定方向に分割した分割型D(D1、D2)を用いて圧縮成形されている。
本実施形態における中心コア10は、本図(a)に示すように、鍔部101をコネクタソケット11への挿入方向と平行な中心軸C/Lに対して、巻線体12の巻始側となる頂点P1から巻線体の巻終側となる頂点P2を結んだ特定の対角線に沿って分割線圧PLが位置している。
また、本図(b)に示すようにバリ除去後に残留するバリBR1、BR2は、中心コア10の巻胴部と鍔部101とが直交する根本部104であって、鍔部101の巻始側から巻終側に向かう対角線上に発生する虞がある。
【0018】
次いで図3を参照して本発明の効果について説明する。
図3(a)、(b)は、図2に示した中心コア10を、コネクタソケット11に装着した状態を示し、図3(c)、(d)は、これに、巻線体12を巻回した状態を示す。
コネクタソケット11は、絶縁性の樹脂からなり、鍔部101を挿入可能とする一端が開放し他端が閉塞する有底筒状に形成された側壁111を有し、側壁111の一部を切り欠いて中心コア10の小径部102を挿通するための開口部112が設けられている。
また、コネクタソケット11の周壁111の上面には、巻線体12の巻始めの端末線121を絡めて固定するための巻始端末係止部113と、巻線体12の巻終わりの端末線122を絡めて固定するための巻終端末線係止部114とが設けられている。
コネクタソケット11に鍔部101を挿入すると、本図(b)に示すように、鍔部101の対角線上で、開口部112の中心軸C/Lに対して巻始側となる位置には、上述の如く鍔部101の巻始側の対角線上に残存したバリBR1が露出するが、巻終側の対角線上に残存したバリBR2は、コネクタソケット11の周壁111によって覆われ、開口部112には露出しない。
さらに、本図(c)、(d)に示すように、巻線体12の巻始端末線121をコネクタソケット11に設けられた巻始端末係止部113に絡めて、巻始端末線係止部113から中心コア10の巻胴部102に巻回される巻始WSTRの位置まで巻始端末線121が、コネクタソケット11の側壁111に支持された状態となっており、小径部102に巻回された巻線体12の内最も鍔部101の表面に近い巻線体12は巻始端末線121に支えられているので、鍔部101の巻始側のバリBR1が残っていたとしても、巻線体12が当接して損傷する虞がない。
一方、巻終側に発生するバリBR2は、コネクタソケット11の側壁111に覆われており、開口部112には露出しないので、巻線体12の落ち込みによりバリBRと接触して絶縁被覆が損傷する虞がない。
したがって、信頼性の高い点火コイル100が実現できる。
【0019】
図4を参照して、本発明の要部である中心コア10の製造方法の一例について説明する。本図(a)から(e)は、磁性粉末MGPを圧縮成形して中心コア10を成形する工程順を追って示す断面図である。
本発明に用いられる分割型Dは、本図(a)に示すように、中心コア10の鍔部101を形成するための第1の空間部CV101、小径部102を形成するための第2の空間部CV102、大径部103を形成するための第3の空間部CV103が形成され、第2の空間部CV102を区画する周壁は、他の周壁より狭くなった縮径部BN102を設けた略筒状に形成され、特定の分割線に沿って2分割された分割型D1、D2によって構成されている。
さらに、第3の空間部CV103は、下方から下パンチPLが摺動可能に挿入され、下端が閉じられている。
本図(a)に示すように、材料供給手段FDから第3の空間部103第2の空間部CV102、第1の空間部CV101、に水アトマイズ法等の公知の方法により製造された略球状の磁性粉末MGPが供給され、本図(b)に示すように、所定量の磁性粉末MGPが充填されると、本図(c)に示すように、上パンチPUと下パンチPLとによって圧縮され、圧粉コアが形成される。
次いで、本図(d)に示すように、分割型Dが、外側に向かって2分割され、圧粉コア10が離型され、本図(e)に示すように、圧粉コア10が取り出される。
なお、一般的には、加圧工程は温間で処理され、分割型Dを潤滑剤によって潤滑したり、磁性粉末MGPに離型剤を混合したりすることによって、分割型Dと圧粉コア10との離型性の向上が図られている。
さらに、磁性粉末MGPは、個々の粉末粒子がシリコン系樹脂、リン酸ガラス、絶縁性有機材料等の公知の絶縁材料によって絶縁コーティングされている。
【0020】
図5を参照して、本発明の点火コイル1に係る圧粉コア10を圧縮成形するための分割型Dの特徴について詳述する。
本実施形態において、分割型Dは、本図(a)に示すように、鍔部101を形成するための第1の空間部CV101の特定の方向の対角線に沿った分割線PLによって2分割された分割型D1、D2によって構成されている。
さらに、本図(b)に示すように、分割型D1、D2が互いに当接する面には、分割型D1、D2の欠け、割れを防ぐためにC面が全周に渡って施されている。
また、本図(c)に示すように、分割型D1、D2は、分割線PLに直交する方向に分離される。このため、成形された中心コア10の鍔部101の側面、及び表面と分割型D1、D2の第1の空間部CV101の内周側面及び底面との摩擦が少なく、速やかに離型することができる。
さらに、離型後の中心コア10の外表面には、本図(d)に示すように、分割型D1、D2に施されたC面内に充填された磁性粉末MGPが加圧されて分割線PLに沿って、バリBRが発生する。
【0021】
図6(a)、(b)に示すように、本実施形態においては、中心コア10の巻胴部102、103の表面及び鍔部101の表面に鍔部101の特定の対角線に沿った位置にバリが発生する。
これらのバリは、本図(c)、(d)に示すように、バフ研磨や、ブラスト研磨等の公知の方法によりバリ除去処理がされ、巻胴部102、103、径変部105の表面及び鍔部101の平らな面は比較的容易にバリ取りができるが、鍔部101と小径部102とが直交する根本部の近傍のバリを完全に除去するのは困難で、僅かにバリが残留する虞がある。
しかし、本実施形態によれば、バリは、鍔部101の特定の対角線上に表れ、上述の如く、コネクタソケット11に挿入したときに、開口部112から露出するのは、巻始側のバリBR1の一カ所のみとなり、上述の効果を発揮できる。
また、本実施形態によれば、鍔部101の表面に発生するバリを除去せずとも同様の効果が発揮されるので、バリ除去作業を簡略化することもできる。
【0022】
図7、図8、図9を参照して、比較例として図7(a)に示す、成形型DZを分割型D1Z、D2Z、D3Zの3分割した場合の問題点について説明する。
成形型DZを3分割する場合、図7(b)に示すように、鍔部101zの長辺を含む分割型D1Zは、必然的に鍔部101zの長辺に直交する方向へ離型する必要があり、その他の分割型D2Z、D3Zは、それぞれ、120°の角度で、離型されることになる。
このため、比較例の中心コア10Zには、図7(c)、(d)に示すように、バリBR1、BR2、BR3の3カ所にバリが残留する虞がある。
これを図8(a)、(b)に示すように、コネクタソケット11に挿入すると、バリBR2は側壁111に覆われるが、バリBR1、BR3の2カ所のバリが開口部112から、露出することになる。
このような状態で、巻線体12を中心コア10Zに巻回すると、図8(c)に示すように、巻始側のバリBR1には、巻線体12は当接しないが、巻終側のバリBR2の上を通過する巻線体12は、これを支える側壁111がないため、一段目の最も鍔部101Zに近い位置の巻線体とコネクタソケットの開口部は側壁が切り欠かれているので、巻胴部102Zに巻線体12を巻回したときに、図8(d)に示すように、一段目の巻線体の内、最も鍔部101Zに近い巻線体12とその隣の巻線体12との間に二段目の巻線体12が押し込まれると、図8(e)に示すように側壁111Zによって巻線体12を支持することができず、鍔部101Zに最も近い巻線体12が鍔部101Zに当接することになる。このとき、バリBR3によって、巻線体12の絶縁被覆が傷つき、中心コア10Zと巻線体12との間に導通を生じ一次コイル1の短絡を招く虞がある。
【0023】
また、図9(a)に示すように、3分割した分割型DZを用いて形成した中心コア10Zを上述の比較例とは挿入方向を変えてコネクタソケット11に挿入した場合、バリBR2が、開口部12の中心に露出することになり、このような状態で、巻線体12を中心コア10Zに巻回すると、図9(b)に示すように、鍔部101Zに最も近い巻線体12が撓んでバリBR2に当接し、損傷する虞がある。
さらに、図9(c)に示すように、中心コア10Zを挿入方向を変えたコネクタソケット11Yに挿入した場合でも、バリBR1が開口部112Yに露出し、さらに、巻線体12の巻始WSTRが開口部112Y内に位置するため、端末線121がコネクタソケット112Yの側壁111によって支持されなくなる。このため、図9(d)に示すように、巻線体12がバリBR1に当接し、損傷する虞がある。
以上のように、本発明によらず、中心コアを圧縮成形するための成形型を3分割した場合には、コネクタソケット11への挿入向きを変えたり、コネクタソケット11Yのように開口部112Yの開口方向を変えたりしても、残留するバリに巻線体12が当接するのを防ぐことが困難となり、一次コイルの短絡を招く虞がある。
【0024】
図10を参照して本発明の第2の実施形態における点火コイル1aの要部である中心コア10aについて説明する。
上記実施形態においては、鍔部101の特定の対角線方向に沿って、2分割した分割型D1、D2を用いた場合について説明したが、本実施形態においては、本図(a)に示すように、鍔部101aの長辺を2分割する中心軸C/Lに沿った分割線PLによって2分割した分割型D1a、D2aを用いると共に、鍔部101aの長辺側に分割型D1a、D2aを短辺に直交する方向へ離型可能とするための抜きテーパを設け、さらに、コネクタソケット11aとして、鍔部101aを短辺側から挿入する開口部112aを設けたことを特徴とする。
本実施形態によれば、本図(b)に示すように、鍔部101aと分割型D1a、D2aを短辺に直交する方向へ離型する際に、鍔部101aの長辺側面と分割型D1a、D2aの内周壁との摩擦が小さくなり、速やかに離型することができる。
一方、本実施形態によらず、鍔部101aの長辺を直線状に形成しままで、長辺を2分する中心軸C/Lに沿って単純に2分割したのでは、鍔部101aの長辺側面と分割型D1、D2の内周壁との摩擦が大きくなり、離型時に鍔部101aの破損を招く虞がある。
さらに、本実施形態によれば、本図(c)に示すように、中心コア10aに残留するバリBRは、鍔部101aの長辺を2分する中心軸C/Lに沿った位置に2カ所表れる。
しかし、本図(d)に示すように、コネクタソケット11aの短辺側から鍔部101aを挿入すれば、開口部112aからバリBRが露出することがなく、巻線体12が傷つく虞がない。
【0025】
図11を参照して、本発明に第3の実施形態における点火コイル1bの要部である中心コア10aについて説明する。
上記実施形態においては、鍔部101の特定の対角線方向に沿って、2分割した分割型D1、D2を用いた場合について説明したが、本実施形態においては、本図(a)に示すように、鍔部101bの短辺を2分割する中心軸C/Lに沿った分割線PLによって2分割した分割型D1b、D2bを用いると共に、鍔部101bの短辺側に分割型D1b、D2bを長辺に直交する方向へ離型可能とするための抜きテーパを設けたことを特徴とする。本実施形態によれば、本図(b)に示すように、鍔部101bと分割型D1b、D2bを短辺に直交する方向へ離型する際に、鍔部101aの長辺側面と分割型D1b、D2bの内周壁との摩擦が小さくなり、速やかに離型することができる。
一方、本実施形態によらず、鍔部101aの短辺を直線状に形成したのでは、短辺側面と分割型D1b、D2bの内周壁との摩擦が大きくなり、離型時に鍔部101bの破損を招く虞がある。
さらに、本実施形態によれば、本図(c)に示すように、中心コア10bに残留するバリBRは、鍔部101bの短辺を2分する中心軸C/Lに沿った位置に2カ所表れる。
しかし、本図(d)に示すように、コネクタソケット11に鍔部101bを挿入すれば、開口部112からバリBRが露出することがなく、巻線体12が傷つく虞がない。
【符号の説明】
【0026】
10 中心コア(圧粉コア)
101 鍔部
102 小径部
103 大径部
11 コネクタソケット
12 一次巻線体
100 点火コイル
D1,D2 2分割成形型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、分割型に充填した磁性粉末を圧縮して小径部と大径部とを有する略段付き円柱状に形成した巻胴部と上記小径部の端部から外径方向に向かって略矩形に広がる鍔部とを設けた圧粉コアを中心コアとし、
一端が開口し、他端が閉塞する略有底筒状で、側壁の一部を切り欠いて開口端から上記巻胴部を挿通する開口部を設けたコネクタソケットに上記中心コアの鍔部を挿入固定すると共に、上記コネクタソケットの側壁に巻始端末線係止部と巻終端末線係止部とを設けて、これらの係止部に端末線を絡めて係止せしめた巻線体を上記巻胴部に巻回して一次コイルとして設けた点火コイルであって、
上記分割型として上記鍔部の頂点を結ぶ対角線の内、巻始側の対角線が上記開口部から露出し、巻終側の対角線が上記開口部から露出しない方向となる対角線に沿った分割線によって2分割した分割型を用いて、上記鍔部と上記小径部との交わる巻胴部の根本部の表面に残留し上記開口部から露出するバリを巻始側に配置せしめたことを特徴とする点火コイル。
【請求項2】
少なくとも、分割型に充填した磁性粉末を圧縮して小径部と大径部とを有する略段付き円柱状に形成した巻胴部と上記小径部の端部から外径方向に向かって略矩形に広がる鍔部とを設けた圧粉コアを中心コアとし、
一端が開口し、他端が閉塞する略有底筒状で、側壁の一部を切り欠いて開口端から上記巻胴部を挿通する開口部を設けたコネクタソケットに上記中心コアの鍔部を挿入固定すると共に、上記コネクタソケットの側壁に巻始端末線係止部と巻終端末線係止部とを設けて、これらの係止部に端末線を絡めて係止せしめた巻線体を上記巻胴部に巻回して一次コイルとして設けた点火コイルであって、
上記分割型として上記鍔部を上記コネクタソケットに挿入する挿入方向に対して、直交し、上記鍔部を2分する中心軸に沿った分割線によって2分割した分割型を用いて、上記鍔部と上記小径部との交わる巻胴部の根本部の表面に残留するバリを上記中心軸に沿った位置に配置せしめたことを特徴とする点火コイル。
【請求項1】
少なくとも、分割型に充填した磁性粉末を圧縮して小径部と大径部とを有する略段付き円柱状に形成した巻胴部と上記小径部の端部から外径方向に向かって略矩形に広がる鍔部とを設けた圧粉コアを中心コアとし、
一端が開口し、他端が閉塞する略有底筒状で、側壁の一部を切り欠いて開口端から上記巻胴部を挿通する開口部を設けたコネクタソケットに上記中心コアの鍔部を挿入固定すると共に、上記コネクタソケットの側壁に巻始端末線係止部と巻終端末線係止部とを設けて、これらの係止部に端末線を絡めて係止せしめた巻線体を上記巻胴部に巻回して一次コイルとして設けた点火コイルであって、
上記分割型として上記鍔部の頂点を結ぶ対角線の内、巻始側の対角線が上記開口部から露出し、巻終側の対角線が上記開口部から露出しない方向となる対角線に沿った分割線によって2分割した分割型を用いて、上記鍔部と上記小径部との交わる巻胴部の根本部の表面に残留し上記開口部から露出するバリを巻始側に配置せしめたことを特徴とする点火コイル。
【請求項2】
少なくとも、分割型に充填した磁性粉末を圧縮して小径部と大径部とを有する略段付き円柱状に形成した巻胴部と上記小径部の端部から外径方向に向かって略矩形に広がる鍔部とを設けた圧粉コアを中心コアとし、
一端が開口し、他端が閉塞する略有底筒状で、側壁の一部を切り欠いて開口端から上記巻胴部を挿通する開口部を設けたコネクタソケットに上記中心コアの鍔部を挿入固定すると共に、上記コネクタソケットの側壁に巻始端末線係止部と巻終端末線係止部とを設けて、これらの係止部に端末線を絡めて係止せしめた巻線体を上記巻胴部に巻回して一次コイルとして設けた点火コイルであって、
上記分割型として上記鍔部を上記コネクタソケットに挿入する挿入方向に対して、直交し、上記鍔部を2分する中心軸に沿った分割線によって2分割した分割型を用いて、上記鍔部と上記小径部との交わる巻胴部の根本部の表面に残留するバリを上記中心軸に沿った位置に配置せしめたことを特徴とする点火コイル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−114244(P2012−114244A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262015(P2010−262015)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
[ Back to top ]