点火プラグ検査装置
【課題】ノイズの発生し難い点火プラグの開発や、実際の生産現場で不具合品の除去、内燃機関の燃焼制御の補正等に応用可能な点火プラグ固有のノイズ特性を検出するノイズ検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】点火プラグ検査装置100は、被測定物である点火プラグ7を装着する燃焼室を模した圧力室30を区画した圧力容器3と、圧力室30内の圧力PCYLを変化させる圧力増減手段1〜5と、圧力室30内の圧力PCYLを検出する圧力検出手段8と、点火プラグ7に高電圧を印加する高電圧印加手段8と、点火プラグ7から発生するイオン電流IIONを検出するイオン電流検出手段9と、入出力を制御する入出力制御手段11とによって構成する。
【解決手段】点火プラグ検査装置100は、被測定物である点火プラグ7を装着する燃焼室を模した圧力室30を区画した圧力容器3と、圧力室30内の圧力PCYLを変化させる圧力増減手段1〜5と、圧力室30内の圧力PCYLを検出する圧力検出手段8と、点火プラグ7に高電圧を印加する高電圧印加手段8と、点火プラグ7から発生するイオン電流IIONを検出するイオン電流検出手段9と、入出力を制御する入出力制御手段11とによって構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に装着され混合気の点火を行う点火プラグの検査を行う点火プラグ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車エンジン等の内燃機関の点火には、長軸状に形成した中心電極と、その外周を覆う略筒状の絶縁碍子と、該絶縁碍子を覆う略筒状のハウジングと、該ハウジングに延設して上記中心電極に対して所定の放電ギャップを設けて対向する接地電極とを具備し、高電圧の印加により上記中心電極と上記接地電極との間に火花放電を発生させて点火を行う点火プラグが広く用いられている。また、内燃機関において点火時には、燃焼室内にイオンが発生し、点火プラグを介して点火毎に流れるイオン電流を検出して、失火やノッキング等を検出して燃焼制御に利用する技術について種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照)。
【0003】
実際の内燃機関においては、図8(a)に示すような、機関を制御する電子制御装置から機関の運転状態に応じて発信される点火信号IGtに従って、図8(b)に示すように点火コイルの1次電流IPRが遮断され、図8(c)に示すように、電磁誘導によって高い2次電圧VSCが発生し、点火プラグに高電圧が印加され、対向する中心電極と接地電極との間の耐電圧を超えるとその間に火花放電が発生し、燃焼室内の混合気に着火され火炎燃焼が爆発的に広がり、図8(d)に示すように正常な燃焼が発生した場合には、燃焼室内圧力PCYLが大きく変化する。このとき、混合気の燃焼爆発により燃焼室内にはイオンが発生する。点火コイルの2次側コイルをイオン電流検出用コイルとして利用して、図8(e)に示すように、燃焼室内に発生したイオンに起因するイオン電流IIONを検出することができる。また、図8(f)に示すように、何らかの異常により失火がおこり、燃焼室内圧力PCYLが上昇しない場合には、燃焼に伴うイオン電流が発生しないので失火検出に利用できると期待されているが、実際には、図8(f)、(g)に示すように、外乱により発生するノイズがイオン電流IIONに重畳して検出される。
【0004】
そこで、特許文献2にあるような従来のイオン電流を検出して燃焼制御に利用する装置では、予め特定されたノック信号周期と対比する等の補正手段を設けてノイズの影響を少なくしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、実際の燃焼機関においては、予め特定されたノックノイズだけでなく、外部からの振動や、点火プラグからのスパークノイズ等の様々な外乱によるノイズが重畳的に発生し、さらに、点火プラグの固有の特性により発生するノイズが個々の点火プラグによって異なる虞もあるため、必ずしも補正が十分になされるとは限らず燃焼制御の誤作動を引き起こす虞がある。
また、失火検出以外の場合、例えば、空燃比検出等を行うべくイオン電流出力の大きさを検出する機能を持たせようとする場合、よりノイズの影響が出やすく、確実にノイズを除去する必要がある。
さらに、通常のイオン電流を利用した制御においては、イオン電流の波形によって判断するのではなく、特許文献1や特許文献2等にあるように検出された出力と所定の閾値との比較によって、失火やノッキングの有無を検知している。
このため、確実にノイズが排除されなければ、従来のイオン電流検出手段を設けた制御装置では、ノイズと正常な出力との区別が困難となっている。
また、現状において、点火プラグ固有のノイズ特性について必ずしも明確とはなっていない。
【0006】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、ノイズの発生し難い点火プラグの開発や、実際の生産現場で不具合品の除去、内燃機関の燃焼制御の補正等に応用可能な点火プラグ固有のノイズ特性を検出する点火プラグ検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、点火プラグを検査する点火プラグ検査装置であって、被測定物である該点火プラグを装着する燃焼室を模した圧力室を区画した圧力容器と、上記圧力室内の圧力を変化させる圧力増減手段と、上記圧力室内の圧力を検出する圧力検出手段と、上記点火プラグに高電圧を印加する高電圧印加手段と、上記点火プラグから発生するイオン電流を検出するイオン電流検出手段と、入出力を制御する入出力制御手段とからなることを最も主要な特徴とする(請求項1)。
このような構成とすることにより、上記入出力制御手段によって上記圧力増減手段と上記高電圧印加手段とを任意のタイミングで制御することが可能となり、上記圧力室内の圧力を一定の条件で変化させることが可能であると共に、上記圧力室内の圧力変化に対して任意のタイミングで上記点火プラグへ高電圧の印加を行うことが可能となり、外乱を排除した一定の条件下で上記点火プラグから発生する固有のイオン電流を上記イオン電流検出手段により検出することができる。また、発生するイオン電流の波形を観察することにより点火プラグ固有のノイズ特性を視覚的に捉えることもできる。
得られた点火プラグ固有のノイズ特性を新規な点火プラグの開発や、実際に生産された製品の良否判定や、燃焼機関に搭載された場合に燃焼制御の補正等に利用することができる。また、実際の内燃機関や実験用燃焼機関に点火プラグを装着して燃焼爆発を起こしてイオン電流を検出する場合に比べ、遙かに簡便である。
【0008】
第2の発明では、上記燃焼室内を観察する画像情報検出手段を具備することを特徴とする(請求項2)。
上記画像情報検出手段により、直接的、視覚的に点火プラグからノイズが発生する様子を観察できる。
本発明の点火プラグ検出装置によって、点火プラグ固有のノイズは、上記高電圧印加手段によって上記点火プラグに高電圧が印加された後、上記圧力増減手段によって減圧されたときに、上記点火プラグの中心電極と側面電極とによって形成された浮遊容量に蓄積された電界が、減圧によって上記圧力室内の耐電圧が低下したときに上記圧力室内の気体の絶縁耐圧を超えたときに発生するコロナ放電により発生していることが確認され、さらに、上記画像情報検出手段により、実際にコロナ放電が発生している状態を観察することができた。したがって、ノイズの原因となるコロナ放電の発生しやすい位置を特定し、よりノイズ発生の少ない点火プラグの開発に役立てることができる。
【0009】
第3の発明では、上記圧力増減手段によって減圧前の圧力を所定時間保つと共に、その間に上記高電圧印加手段によって上記点火プラグに高電圧を印加してスパーク放電を行い、その後に減圧作動を生じさせることを特徴とする(請求項3)。
本発明者等の鋭意試験により、上記圧力増減手段と上記高電圧印加手段との制御タイミングにかかり、点火プラグ固有のノイズ特性を検出するのに最適な条件についての知見が得られた。
【0010】
第4の発明では、上記減圧前の圧力を所定時間保つ間に行うスパーク放電は、40回以上行うことを特徴とする(請求項4)。
これにより、エンジン実機における連続点火状態により確実に近づけることができ、点火プラグ固有のノイズ特性を検出するのに最適な条件とすることができる。
【0011】
第5の発明では、上記圧力増減手段の減圧速度は、増圧完了時における圧力の90%の圧力から10%の圧力まで低下する時間が0.05s以内であることを特徴とする(請求項5)。
このような減圧速度に設定することにより、実機と同様なノイズ発生状態の再現が可能となり、点火プラグの良否判断をより確実に行うことができることが判明した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の点火プラグ検査装置によれば、外乱を排除し、点火プラグ固有のノイズ特性を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態における点火プラグ検査装置。
【図2】本発明の第1の実施形態における点火プラグ検査装置の検査方法を示すタイムチャート。
【図3】本発明の第1の実施形態における点火プラグ検査装置に用いられる制御フローチャート。
【図4】本発明の第1の実施形態における点火プラグ検査装置の他の検査方法を示すタイムチャート。
【図5】本発明の第2の実施形態における点火プラグ検査装置。
【図6】(a)本発明の検査対象となる点火プラグの要部断面図、(b)コロナ放電の様子を示す模式図。
【図7】本発明の第2の実施形態における点火プラグ検査装置で観察したコロナ放電の様子を示す模式図。
【図8】内燃機関における点火時期のタイムチャートを示し、(a)は、点火信号、(b)は、1次電流、(c)は、2次電圧の変化を示し、(d)は筒内圧力の変化を示し、(e)は、点火時に検出されるイオン電流の状態を示し、(f)は失火時の筒内圧力の変化を示し、(g)は、従来のイオン電流検出装置の問題点を示し、失火時に検出されるイオン電流を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の点火プラグ検査装置について図を参照して説明する。本発明の点火プラグ検査装置は、測定対象である内燃機関の点火に用いられる点火プラグに所定の条件下で高電圧を印加したときに、発生するノイズを検出して点火プラグ固有のノイズ特性を検査するものである。
【0015】
図1に、本発明の第1の実施形態における点火プラグ検査装置100の構成概要を示す。点火プラグ検査装置100は、被測定物である点火プラグ7を装着する燃焼室を模した圧力室30を区画した圧力容器3と、圧力室30内の圧力PCYLを変化させる圧力増減手段(1〜5)と、圧力室30内の圧力PCYLを検出する圧力検出手段6と、点火プラグ7に高電圧を印加する高電圧印加手段8と、点火プラグ7から発生するイオン電流IIONを検出するイオン電流検出手段9と、これらの手段(1〜6、8、9)の入出力を制御する入出力制御手段11とによって構成されている。
【0016】
圧力増減手段(1〜5)は、高圧を発生する高圧源1と高圧源1から圧力容器3への高圧の供給を開閉し圧力室30内の増圧速度を調整する増圧バルブ2と、圧力容器3から開放端5への圧力の排出を開閉し圧力室30内の減圧速度を調整する減圧バルブ4とによって構成されている。
圧力室30内の圧力PCYLは、圧力検出手段6によって検出され入出力制御手段11へ伝達される。
高圧源1として、例えば、圧縮空気を供給可能なコンプレッサ、又は、高圧窒素を供給可能な窒素ボンベ、膜分離式窒素発生装置、PSA方式窒素発生装置等を用いることができる。
圧力容器3は、内燃機関の燃焼室を模したものであるが、正常燃焼が起こった場合のような高い圧力を想定する必要はなく、失火時の燃焼室内の圧力が再現できれば良いので、圧力室30内の圧力PCYLは、少なくとも0.8MPa以上に設定できれば良い。圧力室30内の圧力PCYLをこのような値とすることにより、実機と同様なノイズ発生状態を再現することが可能である。
【0017】
入出力手段11から増圧バルブ開閉信号MV1が増圧バルブ開閉回路20に発信され、増圧バルブ開閉信号MV1に応じて圧力室30内の圧力PCYLと増圧速度とが所定の範囲となるように増圧バルブ2の開閉が制御される。
入出力手段11から減圧バルブ開閉信号MV2が減圧バルブ開閉回路40に発信され、減圧バルブ開閉信号MV2に応じて圧力室30内の圧力PCYLと減圧速度とが所定の範囲となるように減圧バルブ4の開閉が制御される。
【0018】
点火プラグ7は、略長軸状の中心電極71とこれを覆う略筒状の絶縁碍子72と絶縁碍子72を覆う略筒状のハウジング73とで構成され、高圧室30内で中心電極71の先端に設けた中心電極放電部711とハウジング73に連なって設けた接地電極放電部731とが対向している。
【0019】
高電圧印加手段8は、入出力制御手段11から発信される点火信号IGtに従って電源電圧+Bを昇圧する点火コイル80と点火コイル80を開閉するスイッチング素子を含む点火回路駆動回路81を有している。
点火コイル80の1次側コイルは一端が入出力制御手段11に設けられた電源供給端に接続され、他端が点火コイル駆動回路81を介して接地されている。
点火コイル80の2次側コイルは、一端が点火プラグ7の中心電極端子に接続され、他端がイオン電流検出手段9に接続されている。
【0020】
イオン電流検出手段9は、互いに逆向きに直列接続された2つのツェナダイオード90、91と一方のダイオード90に並列接続されたコンデンサ92と他方のツェナダイオード91に並列接続されたイオン電流検出用抵抗93とコンデンサ92とイオン電流検出抵抗93との間の電位が抵抗94を介して反転(−)入力されるコンパレータ96とコンパレータ96の反転(−)端子と出力端子との間に並列接続されたゲイン設定用抵抗95とによって構成されている。
【0021】
入出力制御装置11は、点火プラグ検査装置100の作動を開始するスタート信号STR、増圧バルブ2の駆動を制御する増圧信号MV1、減圧バルブ4の駆動を制御する減圧信号MV2、高電圧印加手段8を制御する点火信号IGtを出力信号とし出力手段14と、圧力検出手段6によって検出された圧力室30内の圧力PCYLを入力信号とする圧力モニタ13と、イオン電流検出手段9によって検出されたイオン電流IIONを入力信号とするイオン電流モニタ12とによって構成されている。
圧力モニタ13とイオン電流モニタ12とに入力されたデータを基に、出力手段14から発信された出力信号によって高圧源1、増圧バルブ2、減圧バルブ3、高電圧印加手段8の駆動を制御して、所望の条件下で点火プラグ7から発生される固有のノイズに起因するイオン電流IIONを検出することができる。
また、検出されたイオン電流IIONから、点火プラグ7の良否を判定することも可能となる。さらに、検出されたイオン電流IIONをコード化して、点火プラグ7に印字する等して実際の失火検出やノック検出のノイズ補正に役立てることも可能となる。
【0022】
図2を参照して、本実施形態における点火プラグ100の作動について説明する。点火プラグ検査装置100の起動が開始されスタート信号STRが発信されると、高圧源1から高圧気体の供給が開始される。これと同時、又は、これに次いで、増圧信号MV1が発信され増圧バルブ2が開弁される。圧力室30内の圧力PCYLが上昇し、所定の圧力となると増圧バルブ2が閉弁され、圧力室30内の圧力PCYLが一定に保持される。次いで、点火信号IGtに従って点火プラグ7に高電圧を印加し、火花放電を発生させる。この時、点火ノイズとして、瞬間的にイオン電流IIONが発生する。
次いで減圧信号MV2に従って減圧バルブ4が所定の減圧速度となるように開弁されると、高圧室30内の絶縁耐圧が低下し点火プラグ7に蓄積された電荷の放出によりコロナ放電が発生する。この時、コロナ放電による放電ノイズがイオン電流IIONとして検出される。なお、図2は、本発明の点火プラグ検査装置100の作動をタイムチャートで示したものである。
【0023】
図3は、本発明の点火プラグ検査装置100の作動をフローチャートで示した実施例である。図3に示すように、S1で点火プラグ検査装置100が起動され、スタート信号STRがONとなると、S2で増圧信号MV1がONとなり、増圧バルブ2が開弁され、高圧源1から高圧気体の供給が開始され、S3で、圧力室30内の圧力PCYLが所定の範囲(例えば、0.8MPa以下)か否かが判断され、所定の圧力に達するまではすれば、高圧気体の供給が維持され、所定の圧力に達するとS4に移り、増圧信号MV1がOFFとなり、圧力室30内の圧力PCYLが一定の値に保持される。S5でイオン電流IIONのモニタが開始され、S6で所定のタイミングで点火信号IGtがON、OFFされ、S7で点火信号IGtに従って点火プラグ7に高電圧が印加される。S8で減圧信号MV2がONとなり、減圧バルブ4が開かれ、圧力室30内の圧力PCYLが低下していく。このとき、S9で減圧速度がモニタされ、所定の減圧速度(例えば初期圧力の90%から10%まで低下するまでの時間が0.05sとなる減圧速度)で減圧されるように減圧信号MV2が調整され、所定の圧力(例えば0.1MPa)以下まで減圧されるとS10で減圧信号がOFFとなり、減圧バルブ4が閉じられ、S10でイオン電流IIONの測定が終了する。
【0024】
また、本発明者等の鋭意試験により、点火プラグ固有のノイズ特性を検出する条件として、減圧速度を増圧速度より速く設定するのが望ましく、より具体的には、減圧速度が、初期圧の90%の圧力から10%の圧力まで低下する時間は、0.3s以内であれば、点火プラグの良否判断が可能であり、0.05s以内がより好ましいことが本発明者等の鋭意試験により確認された。
このような速度範囲で減圧すれば、実機と同様なノイズ発生状態を再現可能であり点火プラグ7の良否判断を確実に行うことができる。
なお、0.05sとは、エンジンアイドル時における圧力の低下スピードとほぼ同等の値である。
【0025】
また、図4に示すように、圧力室30内の圧力PCYLを一定に保った状態で、点火プラグ7に周期的に高電圧を印加したのち、減圧して発生するイオン電流IIONを検出する。本発明者等の鋭意試験により、周期的な高電圧の印加を40回程度繰り返すと、減圧したときに検出されるイオン電流IIONは、徐々に一定の値に漸近し、高電圧印加を125回繰り返した後、減圧したときに発生するイオン電流IIONを検出することにより点火プラグ固有のノイズ特性を検出できることが判明した。
エンジン実機における連続点火状態を、模擬したものであり、少なくとも40回以上の周期的な高電圧の印加によるスパーク放電を行えば、実機のノイズ発生状態により確実に近づけることが可能であることが試験的に確認された。
【0026】
図5を参照して、本発明の第2の実施形態における点火プラグ検査装置100aについて説明する。本実施形態においては、上記実施形態と同様の構成に加え、圧力容器3aに耐圧性のある観察窓31を設け、高感度カメラ等の画像情報検出手段32を設けてある。なお、本実施形態に用いられる観察窓31は耐圧性が必要であるが、高圧室30内で燃焼が起こるわけではないので、観察窓31や画像情報検出手段32には耐熱性は必要なく、従来の燃焼試験用の内燃機関を用いて点火試験を行う場合に比べ遥かに簡便で、より精度の高い観察を廉価で実現可能となる。
【0027】
本実施形態において入出力制御手段11aには、上記実施形態と同様の構成に加え、出力手段14aは、所定のタイミングで画像情報検出手段32を駆動する撮影信号SHTを発信すると共に、入力手段として画像情報検出手段32から出力された画像情報Imgを取り込む画像モニタ15が設けられている。
このような構成とすることにより、点火プラグ7aで実際に起こっている現象を直接観察し、画像情報Imgとして、取り込みこれを保存、解析することにより、さらなる点火プラグ品質向上に役立てることも可能となる。
【0028】
本実施形態における点火プラグ検査装置100aを用いて実際のコロナ放電発生の様子を観察することにより、点火プラグ固有のコロナ放電ノイズは、図6(a)に示すように、中心電極71と側面電極732を形成するハウジング73との間に形成された浮遊容量Csに蓄積された電荷が減圧によって空隙部740の絶縁耐圧が低下したときに、図6(b)及び図7に示すように、絶縁碍子72の表面と側面電極732との間でコロナ放電となって放出していることが確認された。なお、本実施形態においては、測定対象である点火プラグ7aのハウジング73の一部を切り欠いて観察し易くしたものを用いた。
また、コロナ放電は絶縁碍子72とハウジング73との距離が狭い部分で多く発生していることが判明した。また、絶縁碍子72は、絶縁体であると同時に誘電体としても作用し、火花放電の終了後も、中心電極71とハウジング73間に電荷が残留するためであることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の点火プラグ検査装置は、新規な点火プラグを開発すべく試験研究のために利用するだけではなく、実際の製品を全数検査しノイズ特性の良否を判定し、不具合品を除去して品質を向上することや、得られたノイズ特性データをコード化又はチップ化して、個々の点火プラグに印字又は添付する等して、実際の内燃機関に搭載されたときに、失火検出装置やノック検出装置に個別の補正用データを提供し、信頼性の高い燃焼制御を行うようにすることも可能となり、極めて産業上の利用可能性は高い。
上記実施形態においては、測定対象である点火プラグの高圧容器への取付け方法について螺結により固定することを図示しているが、これに限定するものではなく、測定時の高圧室内の圧力が比較的低いので、より着脱容易な構造によって点火プラグを高圧容器に装着可能とすることによって量産設備への転用できる。
【符号の説明】
【0030】
100 点火プラグ検査装置
1 高圧源(1〜5 圧力増減手段)
10 高圧源作動回路
2 増圧バルブ
20 増圧バルブ開閉回路
3 圧力容器
30 圧力室(模擬燃焼室)
4 減圧バルブ
40 減圧バルブ開閉回路
5 大気開放端
6 圧力検出手段
7 点火プラグ(測定対象)
71 中心電極
711 中心電極放電部
712 中心電極中軸
713 中心電極端子部
72 絶縁碍子
73 ハウジング
731 接地電極放電部
732 側面電極部
734 ネジ部
8 高電圧印加手段
80 点火コイル(昇圧手段)
81 イグナイタ(点火コイル駆動手段)
9 イオン電流検出手段
11 制御装置
12 イオン電流検出結果
13 圧力室内圧力検出結果
14 制御信号
+B 電源電圧
STR 開始信号
MV1 増圧バルブ開閉信号
MV2 減圧バルブ開閉信号
IGt 点火信号
PCYL 圧力室内圧力
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開平10−318885号公報
【特許文献2】特開2007−270830号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に装着され混合気の点火を行う点火プラグの検査を行う点火プラグ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車エンジン等の内燃機関の点火には、長軸状に形成した中心電極と、その外周を覆う略筒状の絶縁碍子と、該絶縁碍子を覆う略筒状のハウジングと、該ハウジングに延設して上記中心電極に対して所定の放電ギャップを設けて対向する接地電極とを具備し、高電圧の印加により上記中心電極と上記接地電極との間に火花放電を発生させて点火を行う点火プラグが広く用いられている。また、内燃機関において点火時には、燃焼室内にイオンが発生し、点火プラグを介して点火毎に流れるイオン電流を検出して、失火やノッキング等を検出して燃焼制御に利用する技術について種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照)。
【0003】
実際の内燃機関においては、図8(a)に示すような、機関を制御する電子制御装置から機関の運転状態に応じて発信される点火信号IGtに従って、図8(b)に示すように点火コイルの1次電流IPRが遮断され、図8(c)に示すように、電磁誘導によって高い2次電圧VSCが発生し、点火プラグに高電圧が印加され、対向する中心電極と接地電極との間の耐電圧を超えるとその間に火花放電が発生し、燃焼室内の混合気に着火され火炎燃焼が爆発的に広がり、図8(d)に示すように正常な燃焼が発生した場合には、燃焼室内圧力PCYLが大きく変化する。このとき、混合気の燃焼爆発により燃焼室内にはイオンが発生する。点火コイルの2次側コイルをイオン電流検出用コイルとして利用して、図8(e)に示すように、燃焼室内に発生したイオンに起因するイオン電流IIONを検出することができる。また、図8(f)に示すように、何らかの異常により失火がおこり、燃焼室内圧力PCYLが上昇しない場合には、燃焼に伴うイオン電流が発生しないので失火検出に利用できると期待されているが、実際には、図8(f)、(g)に示すように、外乱により発生するノイズがイオン電流IIONに重畳して検出される。
【0004】
そこで、特許文献2にあるような従来のイオン電流を検出して燃焼制御に利用する装置では、予め特定されたノック信号周期と対比する等の補正手段を設けてノイズの影響を少なくしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、実際の燃焼機関においては、予め特定されたノックノイズだけでなく、外部からの振動や、点火プラグからのスパークノイズ等の様々な外乱によるノイズが重畳的に発生し、さらに、点火プラグの固有の特性により発生するノイズが個々の点火プラグによって異なる虞もあるため、必ずしも補正が十分になされるとは限らず燃焼制御の誤作動を引き起こす虞がある。
また、失火検出以外の場合、例えば、空燃比検出等を行うべくイオン電流出力の大きさを検出する機能を持たせようとする場合、よりノイズの影響が出やすく、確実にノイズを除去する必要がある。
さらに、通常のイオン電流を利用した制御においては、イオン電流の波形によって判断するのではなく、特許文献1や特許文献2等にあるように検出された出力と所定の閾値との比較によって、失火やノッキングの有無を検知している。
このため、確実にノイズが排除されなければ、従来のイオン電流検出手段を設けた制御装置では、ノイズと正常な出力との区別が困難となっている。
また、現状において、点火プラグ固有のノイズ特性について必ずしも明確とはなっていない。
【0006】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、ノイズの発生し難い点火プラグの開発や、実際の生産現場で不具合品の除去、内燃機関の燃焼制御の補正等に応用可能な点火プラグ固有のノイズ特性を検出する点火プラグ検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、点火プラグを検査する点火プラグ検査装置であって、被測定物である該点火プラグを装着する燃焼室を模した圧力室を区画した圧力容器と、上記圧力室内の圧力を変化させる圧力増減手段と、上記圧力室内の圧力を検出する圧力検出手段と、上記点火プラグに高電圧を印加する高電圧印加手段と、上記点火プラグから発生するイオン電流を検出するイオン電流検出手段と、入出力を制御する入出力制御手段とからなることを最も主要な特徴とする(請求項1)。
このような構成とすることにより、上記入出力制御手段によって上記圧力増減手段と上記高電圧印加手段とを任意のタイミングで制御することが可能となり、上記圧力室内の圧力を一定の条件で変化させることが可能であると共に、上記圧力室内の圧力変化に対して任意のタイミングで上記点火プラグへ高電圧の印加を行うことが可能となり、外乱を排除した一定の条件下で上記点火プラグから発生する固有のイオン電流を上記イオン電流検出手段により検出することができる。また、発生するイオン電流の波形を観察することにより点火プラグ固有のノイズ特性を視覚的に捉えることもできる。
得られた点火プラグ固有のノイズ特性を新規な点火プラグの開発や、実際に生産された製品の良否判定や、燃焼機関に搭載された場合に燃焼制御の補正等に利用することができる。また、実際の内燃機関や実験用燃焼機関に点火プラグを装着して燃焼爆発を起こしてイオン電流を検出する場合に比べ、遙かに簡便である。
【0008】
第2の発明では、上記燃焼室内を観察する画像情報検出手段を具備することを特徴とする(請求項2)。
上記画像情報検出手段により、直接的、視覚的に点火プラグからノイズが発生する様子を観察できる。
本発明の点火プラグ検出装置によって、点火プラグ固有のノイズは、上記高電圧印加手段によって上記点火プラグに高電圧が印加された後、上記圧力増減手段によって減圧されたときに、上記点火プラグの中心電極と側面電極とによって形成された浮遊容量に蓄積された電界が、減圧によって上記圧力室内の耐電圧が低下したときに上記圧力室内の気体の絶縁耐圧を超えたときに発生するコロナ放電により発生していることが確認され、さらに、上記画像情報検出手段により、実際にコロナ放電が発生している状態を観察することができた。したがって、ノイズの原因となるコロナ放電の発生しやすい位置を特定し、よりノイズ発生の少ない点火プラグの開発に役立てることができる。
【0009】
第3の発明では、上記圧力増減手段によって減圧前の圧力を所定時間保つと共に、その間に上記高電圧印加手段によって上記点火プラグに高電圧を印加してスパーク放電を行い、その後に減圧作動を生じさせることを特徴とする(請求項3)。
本発明者等の鋭意試験により、上記圧力増減手段と上記高電圧印加手段との制御タイミングにかかり、点火プラグ固有のノイズ特性を検出するのに最適な条件についての知見が得られた。
【0010】
第4の発明では、上記減圧前の圧力を所定時間保つ間に行うスパーク放電は、40回以上行うことを特徴とする(請求項4)。
これにより、エンジン実機における連続点火状態により確実に近づけることができ、点火プラグ固有のノイズ特性を検出するのに最適な条件とすることができる。
【0011】
第5の発明では、上記圧力増減手段の減圧速度は、増圧完了時における圧力の90%の圧力から10%の圧力まで低下する時間が0.05s以内であることを特徴とする(請求項5)。
このような減圧速度に設定することにより、実機と同様なノイズ発生状態の再現が可能となり、点火プラグの良否判断をより確実に行うことができることが判明した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の点火プラグ検査装置によれば、外乱を排除し、点火プラグ固有のノイズ特性を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態における点火プラグ検査装置。
【図2】本発明の第1の実施形態における点火プラグ検査装置の検査方法を示すタイムチャート。
【図3】本発明の第1の実施形態における点火プラグ検査装置に用いられる制御フローチャート。
【図4】本発明の第1の実施形態における点火プラグ検査装置の他の検査方法を示すタイムチャート。
【図5】本発明の第2の実施形態における点火プラグ検査装置。
【図6】(a)本発明の検査対象となる点火プラグの要部断面図、(b)コロナ放電の様子を示す模式図。
【図7】本発明の第2の実施形態における点火プラグ検査装置で観察したコロナ放電の様子を示す模式図。
【図8】内燃機関における点火時期のタイムチャートを示し、(a)は、点火信号、(b)は、1次電流、(c)は、2次電圧の変化を示し、(d)は筒内圧力の変化を示し、(e)は、点火時に検出されるイオン電流の状態を示し、(f)は失火時の筒内圧力の変化を示し、(g)は、従来のイオン電流検出装置の問題点を示し、失火時に検出されるイオン電流を示す特性図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の点火プラグ検査装置について図を参照して説明する。本発明の点火プラグ検査装置は、測定対象である内燃機関の点火に用いられる点火プラグに所定の条件下で高電圧を印加したときに、発生するノイズを検出して点火プラグ固有のノイズ特性を検査するものである。
【0015】
図1に、本発明の第1の実施形態における点火プラグ検査装置100の構成概要を示す。点火プラグ検査装置100は、被測定物である点火プラグ7を装着する燃焼室を模した圧力室30を区画した圧力容器3と、圧力室30内の圧力PCYLを変化させる圧力増減手段(1〜5)と、圧力室30内の圧力PCYLを検出する圧力検出手段6と、点火プラグ7に高電圧を印加する高電圧印加手段8と、点火プラグ7から発生するイオン電流IIONを検出するイオン電流検出手段9と、これらの手段(1〜6、8、9)の入出力を制御する入出力制御手段11とによって構成されている。
【0016】
圧力増減手段(1〜5)は、高圧を発生する高圧源1と高圧源1から圧力容器3への高圧の供給を開閉し圧力室30内の増圧速度を調整する増圧バルブ2と、圧力容器3から開放端5への圧力の排出を開閉し圧力室30内の減圧速度を調整する減圧バルブ4とによって構成されている。
圧力室30内の圧力PCYLは、圧力検出手段6によって検出され入出力制御手段11へ伝達される。
高圧源1として、例えば、圧縮空気を供給可能なコンプレッサ、又は、高圧窒素を供給可能な窒素ボンベ、膜分離式窒素発生装置、PSA方式窒素発生装置等を用いることができる。
圧力容器3は、内燃機関の燃焼室を模したものであるが、正常燃焼が起こった場合のような高い圧力を想定する必要はなく、失火時の燃焼室内の圧力が再現できれば良いので、圧力室30内の圧力PCYLは、少なくとも0.8MPa以上に設定できれば良い。圧力室30内の圧力PCYLをこのような値とすることにより、実機と同様なノイズ発生状態を再現することが可能である。
【0017】
入出力手段11から増圧バルブ開閉信号MV1が増圧バルブ開閉回路20に発信され、増圧バルブ開閉信号MV1に応じて圧力室30内の圧力PCYLと増圧速度とが所定の範囲となるように増圧バルブ2の開閉が制御される。
入出力手段11から減圧バルブ開閉信号MV2が減圧バルブ開閉回路40に発信され、減圧バルブ開閉信号MV2に応じて圧力室30内の圧力PCYLと減圧速度とが所定の範囲となるように減圧バルブ4の開閉が制御される。
【0018】
点火プラグ7は、略長軸状の中心電極71とこれを覆う略筒状の絶縁碍子72と絶縁碍子72を覆う略筒状のハウジング73とで構成され、高圧室30内で中心電極71の先端に設けた中心電極放電部711とハウジング73に連なって設けた接地電極放電部731とが対向している。
【0019】
高電圧印加手段8は、入出力制御手段11から発信される点火信号IGtに従って電源電圧+Bを昇圧する点火コイル80と点火コイル80を開閉するスイッチング素子を含む点火回路駆動回路81を有している。
点火コイル80の1次側コイルは一端が入出力制御手段11に設けられた電源供給端に接続され、他端が点火コイル駆動回路81を介して接地されている。
点火コイル80の2次側コイルは、一端が点火プラグ7の中心電極端子に接続され、他端がイオン電流検出手段9に接続されている。
【0020】
イオン電流検出手段9は、互いに逆向きに直列接続された2つのツェナダイオード90、91と一方のダイオード90に並列接続されたコンデンサ92と他方のツェナダイオード91に並列接続されたイオン電流検出用抵抗93とコンデンサ92とイオン電流検出抵抗93との間の電位が抵抗94を介して反転(−)入力されるコンパレータ96とコンパレータ96の反転(−)端子と出力端子との間に並列接続されたゲイン設定用抵抗95とによって構成されている。
【0021】
入出力制御装置11は、点火プラグ検査装置100の作動を開始するスタート信号STR、増圧バルブ2の駆動を制御する増圧信号MV1、減圧バルブ4の駆動を制御する減圧信号MV2、高電圧印加手段8を制御する点火信号IGtを出力信号とし出力手段14と、圧力検出手段6によって検出された圧力室30内の圧力PCYLを入力信号とする圧力モニタ13と、イオン電流検出手段9によって検出されたイオン電流IIONを入力信号とするイオン電流モニタ12とによって構成されている。
圧力モニタ13とイオン電流モニタ12とに入力されたデータを基に、出力手段14から発信された出力信号によって高圧源1、増圧バルブ2、減圧バルブ3、高電圧印加手段8の駆動を制御して、所望の条件下で点火プラグ7から発生される固有のノイズに起因するイオン電流IIONを検出することができる。
また、検出されたイオン電流IIONから、点火プラグ7の良否を判定することも可能となる。さらに、検出されたイオン電流IIONをコード化して、点火プラグ7に印字する等して実際の失火検出やノック検出のノイズ補正に役立てることも可能となる。
【0022】
図2を参照して、本実施形態における点火プラグ100の作動について説明する。点火プラグ検査装置100の起動が開始されスタート信号STRが発信されると、高圧源1から高圧気体の供給が開始される。これと同時、又は、これに次いで、増圧信号MV1が発信され増圧バルブ2が開弁される。圧力室30内の圧力PCYLが上昇し、所定の圧力となると増圧バルブ2が閉弁され、圧力室30内の圧力PCYLが一定に保持される。次いで、点火信号IGtに従って点火プラグ7に高電圧を印加し、火花放電を発生させる。この時、点火ノイズとして、瞬間的にイオン電流IIONが発生する。
次いで減圧信号MV2に従って減圧バルブ4が所定の減圧速度となるように開弁されると、高圧室30内の絶縁耐圧が低下し点火プラグ7に蓄積された電荷の放出によりコロナ放電が発生する。この時、コロナ放電による放電ノイズがイオン電流IIONとして検出される。なお、図2は、本発明の点火プラグ検査装置100の作動をタイムチャートで示したものである。
【0023】
図3は、本発明の点火プラグ検査装置100の作動をフローチャートで示した実施例である。図3に示すように、S1で点火プラグ検査装置100が起動され、スタート信号STRがONとなると、S2で増圧信号MV1がONとなり、増圧バルブ2が開弁され、高圧源1から高圧気体の供給が開始され、S3で、圧力室30内の圧力PCYLが所定の範囲(例えば、0.8MPa以下)か否かが判断され、所定の圧力に達するまではすれば、高圧気体の供給が維持され、所定の圧力に達するとS4に移り、増圧信号MV1がOFFとなり、圧力室30内の圧力PCYLが一定の値に保持される。S5でイオン電流IIONのモニタが開始され、S6で所定のタイミングで点火信号IGtがON、OFFされ、S7で点火信号IGtに従って点火プラグ7に高電圧が印加される。S8で減圧信号MV2がONとなり、減圧バルブ4が開かれ、圧力室30内の圧力PCYLが低下していく。このとき、S9で減圧速度がモニタされ、所定の減圧速度(例えば初期圧力の90%から10%まで低下するまでの時間が0.05sとなる減圧速度)で減圧されるように減圧信号MV2が調整され、所定の圧力(例えば0.1MPa)以下まで減圧されるとS10で減圧信号がOFFとなり、減圧バルブ4が閉じられ、S10でイオン電流IIONの測定が終了する。
【0024】
また、本発明者等の鋭意試験により、点火プラグ固有のノイズ特性を検出する条件として、減圧速度を増圧速度より速く設定するのが望ましく、より具体的には、減圧速度が、初期圧の90%の圧力から10%の圧力まで低下する時間は、0.3s以内であれば、点火プラグの良否判断が可能であり、0.05s以内がより好ましいことが本発明者等の鋭意試験により確認された。
このような速度範囲で減圧すれば、実機と同様なノイズ発生状態を再現可能であり点火プラグ7の良否判断を確実に行うことができる。
なお、0.05sとは、エンジンアイドル時における圧力の低下スピードとほぼ同等の値である。
【0025】
また、図4に示すように、圧力室30内の圧力PCYLを一定に保った状態で、点火プラグ7に周期的に高電圧を印加したのち、減圧して発生するイオン電流IIONを検出する。本発明者等の鋭意試験により、周期的な高電圧の印加を40回程度繰り返すと、減圧したときに検出されるイオン電流IIONは、徐々に一定の値に漸近し、高電圧印加を125回繰り返した後、減圧したときに発生するイオン電流IIONを検出することにより点火プラグ固有のノイズ特性を検出できることが判明した。
エンジン実機における連続点火状態を、模擬したものであり、少なくとも40回以上の周期的な高電圧の印加によるスパーク放電を行えば、実機のノイズ発生状態により確実に近づけることが可能であることが試験的に確認された。
【0026】
図5を参照して、本発明の第2の実施形態における点火プラグ検査装置100aについて説明する。本実施形態においては、上記実施形態と同様の構成に加え、圧力容器3aに耐圧性のある観察窓31を設け、高感度カメラ等の画像情報検出手段32を設けてある。なお、本実施形態に用いられる観察窓31は耐圧性が必要であるが、高圧室30内で燃焼が起こるわけではないので、観察窓31や画像情報検出手段32には耐熱性は必要なく、従来の燃焼試験用の内燃機関を用いて点火試験を行う場合に比べ遥かに簡便で、より精度の高い観察を廉価で実現可能となる。
【0027】
本実施形態において入出力制御手段11aには、上記実施形態と同様の構成に加え、出力手段14aは、所定のタイミングで画像情報検出手段32を駆動する撮影信号SHTを発信すると共に、入力手段として画像情報検出手段32から出力された画像情報Imgを取り込む画像モニタ15が設けられている。
このような構成とすることにより、点火プラグ7aで実際に起こっている現象を直接観察し、画像情報Imgとして、取り込みこれを保存、解析することにより、さらなる点火プラグ品質向上に役立てることも可能となる。
【0028】
本実施形態における点火プラグ検査装置100aを用いて実際のコロナ放電発生の様子を観察することにより、点火プラグ固有のコロナ放電ノイズは、図6(a)に示すように、中心電極71と側面電極732を形成するハウジング73との間に形成された浮遊容量Csに蓄積された電荷が減圧によって空隙部740の絶縁耐圧が低下したときに、図6(b)及び図7に示すように、絶縁碍子72の表面と側面電極732との間でコロナ放電となって放出していることが確認された。なお、本実施形態においては、測定対象である点火プラグ7aのハウジング73の一部を切り欠いて観察し易くしたものを用いた。
また、コロナ放電は絶縁碍子72とハウジング73との距離が狭い部分で多く発生していることが判明した。また、絶縁碍子72は、絶縁体であると同時に誘電体としても作用し、火花放電の終了後も、中心電極71とハウジング73間に電荷が残留するためであることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の点火プラグ検査装置は、新規な点火プラグを開発すべく試験研究のために利用するだけではなく、実際の製品を全数検査しノイズ特性の良否を判定し、不具合品を除去して品質を向上することや、得られたノイズ特性データをコード化又はチップ化して、個々の点火プラグに印字又は添付する等して、実際の内燃機関に搭載されたときに、失火検出装置やノック検出装置に個別の補正用データを提供し、信頼性の高い燃焼制御を行うようにすることも可能となり、極めて産業上の利用可能性は高い。
上記実施形態においては、測定対象である点火プラグの高圧容器への取付け方法について螺結により固定することを図示しているが、これに限定するものではなく、測定時の高圧室内の圧力が比較的低いので、より着脱容易な構造によって点火プラグを高圧容器に装着可能とすることによって量産設備への転用できる。
【符号の説明】
【0030】
100 点火プラグ検査装置
1 高圧源(1〜5 圧力増減手段)
10 高圧源作動回路
2 増圧バルブ
20 増圧バルブ開閉回路
3 圧力容器
30 圧力室(模擬燃焼室)
4 減圧バルブ
40 減圧バルブ開閉回路
5 大気開放端
6 圧力検出手段
7 点火プラグ(測定対象)
71 中心電極
711 中心電極放電部
712 中心電極中軸
713 中心電極端子部
72 絶縁碍子
73 ハウジング
731 接地電極放電部
732 側面電極部
734 ネジ部
8 高電圧印加手段
80 点火コイル(昇圧手段)
81 イグナイタ(点火コイル駆動手段)
9 イオン電流検出手段
11 制御装置
12 イオン電流検出結果
13 圧力室内圧力検出結果
14 制御信号
+B 電源電圧
STR 開始信号
MV1 増圧バルブ開閉信号
MV2 減圧バルブ開閉信号
IGt 点火信号
PCYL 圧力室内圧力
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開平10−318885号公報
【特許文献2】特開2007−270830号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火プラグの検査装置であって、被測定物である点火プラグを装着する燃焼室を模した圧力室を区画した圧力容器と、上記圧力室内の圧力を変化させる圧力増減手段と、上記圧力室内の圧力を検出する圧力検出手段と、上記点火プラグに高電圧を印加する高電圧印加手段と、上記点火プラグから発生するイオン電流を検出するイオン電流検出手段と、入出力を制御する入出力制御手段とからなることを特徴とする点火プラグ検査装置。
【請求項2】
上記燃焼室内を観察する画像情報検出手段を具備することを特徴とする請求項1の点火プラグ検査装置。
【請求項3】
上記圧力増減手段によって減圧前の圧力を所定時間保つと共に、その間に上記高電圧印加手段によって上記点火プラグに高電圧を印加してスパーク放電を行い、その後に減圧作動を生じさせることを特徴とする請求項1又は2に記載の点火プラグ検査装置。
【請求項4】
上記減圧前の圧力を所定時間保つ間に行うスパーク放電は、40回以上行うことを特徴とする請求項3に記載の点火プラグ検査装置。
【請求項5】
上記圧力増減手段の減圧速度は、増圧完了時における圧力の90%の圧力から10%の圧力まで低下する時間が0.05s以内であることを特徴とする請求項3又は4に記載の点火プラグ検査装置。
【請求項1】
点火プラグの検査装置であって、被測定物である点火プラグを装着する燃焼室を模した圧力室を区画した圧力容器と、上記圧力室内の圧力を変化させる圧力増減手段と、上記圧力室内の圧力を検出する圧力検出手段と、上記点火プラグに高電圧を印加する高電圧印加手段と、上記点火プラグから発生するイオン電流を検出するイオン電流検出手段と、入出力を制御する入出力制御手段とからなることを特徴とする点火プラグ検査装置。
【請求項2】
上記燃焼室内を観察する画像情報検出手段を具備することを特徴とする請求項1の点火プラグ検査装置。
【請求項3】
上記圧力増減手段によって減圧前の圧力を所定時間保つと共に、その間に上記高電圧印加手段によって上記点火プラグに高電圧を印加してスパーク放電を行い、その後に減圧作動を生じさせることを特徴とする請求項1又は2に記載の点火プラグ検査装置。
【請求項4】
上記減圧前の圧力を所定時間保つ間に行うスパーク放電は、40回以上行うことを特徴とする請求項3に記載の点火プラグ検査装置。
【請求項5】
上記圧力増減手段の減圧速度は、増圧完了時における圧力の90%の圧力から10%の圧力まで低下する時間が0.05s以内であることを特徴とする請求項3又は4に記載の点火プラグ検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2010−217068(P2010−217068A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65559(P2009−65559)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (研究集会名) 可視化情報学会全国講演会(釧路2008) (主催者名) 社団法人 可視化情報学会 (開催日) 平成20年10月11日、12日 (開催場所) 釧路市生涯教育センター
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (研究集会名) 可視化情報学会全国講演会(釧路2008) (主催者名) 社団法人 可視化情報学会 (開催日) 平成20年10月11日、12日 (開催場所) 釧路市生涯教育センター
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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