説明

点灯装置及び照明装置

【課題】比較的に簡単な回路構成で有機EL素子を調光可能とする。
【解決手段】制御手段5は、第1及び第4のスイッチング素子Q1,Q4をオンすると同時に第2及び第3のスイッチング素子Q2,Q3をオフする期間と、第1及び第4のスイッチング素子Q1,Q4をオフすると同時に第2及び第3のスイッチング素子Q2,Q3をオンする期間とを周期的に切り換えることで有機EL素子に矩形波電圧を印加する。制御手段5が矩形波電圧の周波数を変化させることで有機EL素子1に流れる電流の実効値Irmが変化して調光できる。故に直流電源手段3の出力を変えて調光する場合に比較して直流電源手段3の回路構成が簡単で済み、また、従来例のように順方向電圧の印加期間を変化させるようにオンデューティ比を制御する場合に比較して制御手段5の回路構成が簡単になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子を点灯する点灯装置、並びにかかる点灯装置と有機EL素子を有する照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、放電灯に比較して低い電圧(例えば、数V〜数十V程度)で駆動可能であるために点灯装置が安価に構成できることなどから有機EL(エレクトロルミネセンス)素子を光源とする照明装置の開発が盛んに行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
図8は特許文献1に開示されている点灯装置(照明装置)を示す回路図である。この従来装置は、商用交流電源ACをダイオードブリッジDBで全波整流するとともに平滑コンデンサC0で平滑することによって得た直流電圧を極性反転回路INVで極性反転することで有機EL素子に順方向の電圧と逆方向の電圧とを交互に印加して点灯するものである。極性反転回路INVは、バイポーラトランジスタからなるスイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3,Tr4を2つずつ直列接続するとともに平滑コンデンサC0の両端に互いに並列に接続したブリッジ回路からなり、スイッチング素子Tr1とTr2の接続点とスイッチング素子Tr3とTr4の接続点の間に有機EL素子1が接続される。ここで、スイッチング素子Tr3には検出抵抗Rが直列に接続されており、有機EL素子1に流れる電流を検出抵抗Rの両端電圧として検出し、低域通過フィルタLPFを介してスイッチング素子Trn(n=1,2,3,4)を駆動制御する制御手段CNTに検出電圧が入力されている。制御手段CNTは、スイッチング素子Tr1とTr3をオンすると同時にスイッチング素子Tr2とTr4をオフする期間と、スイッチング素子Tr1とTr3をオフすると同時にスイッチング素子Tr2とTr4をオンする期間とを周期的に切り換えることで有機EL素子に間欠的に順方向電圧を印加して点灯し、さらに、外部から与えられる調光信号に基づいて有機EL素子1に流れる電流の目標値を設定し、実際に有機EL素子1に流れる電流(検出電圧)を目標値に一致させるように順方向電圧の印加期間を変化させることで有機EL素子1の輝度(光出力)を調整、すなわち調光している。
【特許文献1】特開2005−78828号公報
【特許文献2】特許第3432986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例においては、極性反転回路INVの周波数(スイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3,Tr4をオン・オフする周波数)を一定としたままでオンデューティ比を変えて調光を行っているために制御手段の構成が複雑になってしまう。一方、極性反転回路INVのオンデューティ比を変える代わりに極性反転回路INVに入力する直流電圧を変化させて調光する方法も考えられるが、この場合には直流出力が可変である降圧コンバータ回路が必要となって直流電源の回路構成が複雑になってしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、比較的に簡単な回路構成で有機EL素子を調光できる点灯装置及び照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、有機EL(エレクトロルミネセンス)素子を点灯する点灯装置であって、有機EL素子の駆動電圧に略等しい直流電圧を出力する直流電源手段と、直流電源手段から出力する直流電圧の極性を周期的に反転させた矩形波電圧を有機EL素子に印加する極性反転手段と、極性反転手段を制御して矩形波電圧の周波数を変化させることで有機EL素子の光出力を調整する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、制御手段は、有機EL素子に流れる電流を検出し、当該検出値が目標とする電流値と一致するように矩形波電圧の周波数を変化させることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、上記目的を達成するために、有機EL素子と、請求項1または2記載の点灯装置とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1及び3の発明によれば、矩形波電圧の周波数を変化させることで有機EL素子に流れる電流の実効値が変化して調光できるため、従来例に比較して簡単な回路構成で有機EL素子を調光できる点灯装置及び照明装置を提供することができるという効果がある。
【0010】
請求項2の発明によれば、有機EL素子の特性ばらつきが容易に補正できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施形態1)
本実施形態の照明装置は、図1に示すように有機EL素子1と点灯装置2とで構成される。点灯装置2は、有機EL素子1の駆動電圧に略等しい直流電圧を出力する直流電源手段3と、直流電源手段3から出力する直流電圧の極性を周期的に反転させた矩形波電圧を有機EL素子1に印加する極性反転手段4と、極性反転手段4を制御して矩形波電圧の周波数を変化させることで有機EL素子1の光出力を調整する制御手段5とを備える。
【0012】
直流電源手段3は、商用交流電源ACの交流電圧を全波整流するダイオードブリッジDBと、ダイオードブリッジDBで全波整流された脈流電圧を平滑する平滑コンデンサC0と、平滑コンデンサC0の高電位側にドレインが接続されたMOSFETからなるスイッチング素子Q0と、スイッチング素子Q0のソースにカソードが接続されるとともにアノードが平滑コンデンサC0の低電位側に接続されたダイオードD0と、スイッチング素子Q0のソースに一端が接続されたインダクタL0と、インダクタL0の他端とダイオードD0のアノードの間に接続されたコンデンサC1とを備え、スイッチング素子Q0、ダイオードD0、インダクタL0、コンデンサC1によって従来周知の降圧コンバータ回路が構成されており、図示しない駆動回路でスイッチング素子Q0をPWM制御することによりコンデンサC1の両端に有機EL素子1の駆動電圧にほぼ等しい直流電圧を出力する。但し、このような降圧コンバータ回路は従来周知であるから、詳細な動作説明については省略する。
【0013】
極性反転手段4は、MOSFETからなる第1乃至第4のスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4を2つずつ直列接続するとともに直流電源手段3の出力端(コンデンサC1の両端)に互いに並列に接続したブリッジ回路からなり、第1及び第2のスイッチング素子Q1,Q2の接続点と第3及び第4のスイッチング素子Q3,Q4の接続点の間に、極性反転時の突入電流を限流するためのインダクタL1を介して有機EL素子1が接続される。制御手段5は、第1及び第4のスイッチング素子Q1,Q4をオンすると同時に第2及び第3のスイッチング素子Q2,Q3をオフする期間と、第1及び第4のスイッチング素子Q1,Q4をオフすると同時に第2及び第3のスイッチング素子Q2,Q3をオンする期間とを周期的に切り換えることで有機EL素子に矩形波電圧を印加する。
【0014】
ところで、有機EL素子1は、発光層(有機薄膜)を厚み方向に一対の電極で挟み込んだ構造を有し、一方の電極(カソード)から注入した電子と他方の電極(アノード)から注入した正孔(ホール)が発光層で再結合することによって発光するものであるから、その構造上容量成分を有しており、回路的に見ると有機EL素子1には容量成分が並列に接続されていることになる。そのため、極性反転手段4から出力される矩形波電圧が逆方向から順方向に反転する際に有機EL素子1に突入電流が流れるが、突入電流が流れる期間Δtは有機EL素子1の容量成分によってほぼ決まり、矩形波電圧の周波数には依存しない(図2参照)。但し、有機EL素子1と直列に接続されているインダクタL1の限流作用によって突入電流のピーク値は抑制される。
【0015】
ここで、本発明者が矩形波電圧の周波数fを変えて有機EL素子1に流れる電流の実効値Irmを測定したところ、図3に示すように矩形波電圧の周波数fが高くなるにつれて有機EL素子1に流れる電流の実効値Irmが徐々に減少する傾向にあることが判明した。その原因は、矩形波電圧の順方向期間Tと突入電流の流れる期間Δtとの比率に関係があると推測される。つまり、矩形波電圧の立ち上がりから電流値が安定するまでの期間Δtが矩形波電圧の周波数fに関わらずほぼ一定となっていたので、矩形波電圧の周波数fを高くしていくと、有機EL素子1に順方向の電流が流れる期間Tに対して突入電流の流れる期間Δtが無視できなくなって実効値Irmが減少するものと思われる。したがって、制御手段5により矩形波電圧の周波数fを変化させれば、有機EL素子1に流れる電流の実効値Irmをある程度変化させて輝度(発光量)を調整(調光)することが可能になる(図2及び図3参照)。
【0016】
上述のように本実施形態によれば、矩形波電圧の周波数を変化させることで有機EL素子1に流れる電流の実効値Irmが変化して調光できるため、直流電源手段3の出力を変えて調光する場合に比較して直流電源手段3の回路構成が簡単で済み、また、従来例のように順方向電圧の印加期間を変化させるようにオンデューティ比を制御する場合に比較して制御手段5の回路構成が簡単になるという利点がある。なお、図4に示すように2つの有機EL素子1,1を逆並列に接続し、極性反転手段4を構成する第1及び第2のスイッチング素子Q1,Q2をコンデンサC2,C3に置き換えれば、2つの有機EL素子1,1にそれぞれ交互に順方向電圧を印加して発光させることができて発光効率の向上が図れる。また、本実施形態では極性反転手段4を所謂フルブリッジ形のインバータ回路で構成しているが、図5に示すように2つのスイッチング素子Q5,Q6の直列回路とコンデンサC4からなるハーフブリッジ形のインバータ回路で構成してもよい。但し、このようなハーフブリッジ形のインバータ回路は従来周知であるから詳細な動作説明は省略する。
【0017】
ところで、有機EL素子も蛍光ランプと同様に累積点灯時間が増えるにつれて光出力が低下することが知られている。蛍光ランプを点灯する点灯装置においては、蛍光ランプを交換した初期には定格よりも低い電力を蛍光ランプに与えて調光状態とし、累積点灯時間が増加するに従って蛍光ランプへの供給電力を増やすことで初期から末期まで蛍光ランプの光出力がほぼ一定となるようにする機能(この機能を初期照度補正機能と呼ぶ。)が搭載されている場合がある。したがって、本実施形態においても有機EL素子1の使用初期に矩形波電圧の周波数fを相対的に高い周波数f2として電流の実効値Irmを低くしておき、累積発酵時間が増加するに従って矩形波電圧の周波数fを徐々に低い周波数f1,f0にして電流の実効値Irmを高くすることで上述の初期照度補正機能を実現することができる。
【0018】
(実施形態2)
本実施形態は、図6に示すように制御手段5’が有機EL素子1に流れる電流を検出し、当該検出値が目標とする電流値と一致するように極性反転手段4’を制御して矩形波電圧の周波数を変化させる点に特徴がある。但し、基本的な構成は実施形態1と共通であるから、機能的に共通の構成要素には同一の番号に’を付して説明を省略する。
【0019】
有機EL素子においては、図9に示すように駆動電圧Vの印加時に流れる電流Iにばらつきが生じることが知られている。例えば、図9に実線イで示すように駆動電圧V0に対して電流I0が流れるような電圧−電流特性を標準的な特性としたとき、破線ロや破線ハで示すように同じ駆動電圧V0に対して流れる電流がI1やI2となる特性を持った有機EL素子が存在し、かかる特性のばらつきは有機EL素子の輝度(光出力)のばらつきの原因ともなる。したがって、このような特性のばらつきを考慮すれば、破線ロやハの特性を有する有機EL素子に対しては、駆動電圧VをそれぞれV1,V2とすることで電流Iのばらつき、ひいては輝度(光出力)のばらつきを補正することができる。
【0020】
そこで本実施形態では、有機EL素子1に流れる電流Iの実効値Irmを検出抵抗Rxの電圧降下に変換した検出値として制御手段5’に取り込み、この検出値で示される電流実効値Irmが予め決められている目標値I0と一致するように制御手段5’が極性反転手段4’から出力される矩形波電圧の周波数を変化させている。例えば、図7に示すようにそれぞれ3通りの電圧−電流特性(A,B,C)の何れかを有する有機EL素子1があった場合、矩形波電圧の周波数f=f1のときに特性Aでは電流実効値Irm=I1、特性Bでは電流実効値Irm=I2、特性Cでは電流実効値Irm=I3になるとすれば、目標値I0=I1に設定したときに特性Aを有する有機EL素子1に対しては矩形波電圧の周波数f=f1、特性Bを有する有機EL素子1に対しては矩形波電圧の周波数f=f2、特性Cを有する有機EL素子1に対しては矩形波電圧の周波数f=f3となるように制御手段5’が極性反転手段4’を制御する。その結果、何れの特性A,B,Cを有する有機EL素子1に対してもほぼ一定の電流が流れるように補正することができる。なお、有機EL素子1が交換可能でなければ、製造時において個々の有機EL素子1の特性を検査しておき、検査で判明した特性に合わせて矩形波電圧の周波数fを設定しておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1を示す回路図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】同上の別の構成を示す回路図である。
【図5】同上のさらに別の構成を示す回路図である。
【図6】本発明の実施形態2を示すブロック図である。
【図7】同上の動作説明図である。
【図8】従来例を示す回路図である。
【図9】有機EL素子の電圧−電流特性を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 有機EL素子
2 点灯装置
3 直流電源手段
4 極性反転手段
5 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL(エレクトロルミネセンス)素子を点灯する点灯装置であって、有機EL素子の駆動電圧に略等しい直流電圧を出力する直流電源手段と、直流電源手段から出力する直流電圧の極性を周期的に反転させた矩形波電圧を有機EL素子に印加する極性反転手段と、極性反転手段を制御して矩形波電圧の周波数を変化させることで有機EL素子の光出力を調整する制御手段とを備えたことを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
制御手段は、有機EL素子に流れる電流を検出し、当該検出値が目標とする電流値と一致するように矩形波電圧の周波数を変化させることを特徴とする請求項1記載の点灯装置。
【請求項3】
有機EL素子と、請求項1または2記載の点灯装置とを有することを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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