説明

点眼ノズル、用時溶解型点眼容器キット及び用時溶解方法

【課題】 用時において使用者に特別な操作を強いることなく、固形薬剤の液体への溶解を自動的に完了させ、誤操作・誤使用・溶解忘れを回避し得る用時溶解を実現させる。
【解決手段】 予め内部に液体Lを収容させて口部21をキャップ22で密封した容器本体2と、口部21に装着可能な装着部321及び点眼孔324を有するノズル部322からなるノズル本体32に対し錠剤Sを収容したホルダ部31を連結しアルミピロー包装4にて防湿密封包装した点眼ノズル3と、を併せて1つの包装5にして提供する。用時には、アルミピロー包装を破って取り出した点眼ノズル3を、キャップ22を取り外した容器本体2の口部21に装着するだけで、点眼容器が組み立てられると同時に、ホルダ部の錠剤が液体中に浸漬して溶解が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品状態から流通段階及び保管段階等の使用が開始されるまでの間は、固形薬剤と、この固形薬剤を溶解させるための液体とに分離させておき、使用するとき(用時)に初めて上記固形薬剤を液体に溶解させるという用時溶解型の薬品等を収容し取り扱うために用いられる点眼ノズル、用時溶解型点眼容器キット及び用時溶解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用するまでは、溶解用の容器とは別に溶解用の薬剤(錠丸剤)を包装材中に収容保管しておき、用時においては、包装材を破って薬剤を容器内に落とし込み、その容器内に予め入れておいた希釈液等の液体に溶解させるという用時溶解型の医薬品が、従来より提供されている。
【0003】
かかる用時溶解型の医薬品を取り扱うための容器等として、予め液体が入れられた点眼容器(眼科用点滴容器)内に後から錠剤を落とし込むときにガイドするために、錠剤を保持させた状態で包装されて点眼容器とは別に提供されるようにしたU字状のガイド部品(例えば特許文献1参照)や、錠剤を保持させた錠剤ホルダを容器本体の口部位置において錠剤と内部の液体との接触が遮断されるようにキャップ内に収容させて提供し、用時において錠剤ホルダを天地逆転させて錠剤を液体に臨んで露出させかつキャップ内の針状突起で突いて点眼用孔を開けるようにした点眼容器(例えば特許文献2参照)、あるいは、予め液体が入れられたキャップ付き容器と、錠剤を保持させた中栓とを別々に提供するようにして、用時において上記中栓を容器の口部にセットし上からキャップの突部で突くことにより中栓から錠剤を外して容器内の液体中に落下させるようにした中栓と容器とのセット(例えば特許文献3参照)が知られている。
【0004】
【特許文献1】実公昭61−25794号公報
【特許文献2】実公昭60−18350号公報
【特許文献3】特開平9−328173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1で提案のものでは、包装を破ってガイド部品から取り出した錠剤を経口にて摂取し錠剤が未溶解の液体を点眼容器から点眼したり、上記ガイド部品から取り出した錠剤を口に含んで点眼容器内の液体と共に飲み込んだり、というような誤操作や誤使用が発生するおそれがあり、あるいは、用法が分からず錠剤を溶解させることなく点眼容器内の液体のみを点眼してしまうという溶解忘れが発生するおそれがある。又、たとえガイド部品を用いて正しい使用法に沿って操作しようとしても、点眼容器自体やその口部が小さいため錠剤が口部の手前から又は口部を飛び越えて容器外に落下してしまい手で錠剤を扱わざるを得なくなったりするおそれがあり、確実性に欠けるところもある。
【0006】
又、特許文献2で提案のものでは、用時においてキャップを外し錠剤ホルダを容器から取り外して天地を逆転させた上で、その逆転させた姿勢で容器に対し再度装着させてキャップの針で孔開けする必要があり、かかる操作手順を単なる説明書等の記載だけで使用者に理解させるのは容易ではなく、使用者が途方に暮れるおそれがある。その上に、たとえ正しい操作を行ったとしても、錠剤ホルダの錠剤と容器内との液体とは互いに離れているため、そのままでは溶解せず、容器全体を積極的に振るなどの混合溶解のための作業をしないと溶解させ得ない、というように取り扱いの煩雑さを招く上に、確実性や利便性に欠ける面を有している。
【0007】
更に、特許文献3で提案のものでも、用時においてキャップを外し中栓を容器の口部に対し所定の向きに装着した上で上記キャップをねじ込んで錠剤が中栓から外れて下方に落下するまで強く押し下げる必要があり、上記と同様に、かかる操作手順を単なる説明書等の記載だけで使用者に理解させるのは容易ではなく、使用者が途方に暮れるおそれがある。そして、たとえ正しい操作を行ったとしても、錠剤が容器内の液体内に落とし込まれるだけで錠剤は液体中を漂うことになるため、容器全体を振っても液体と錠剤とが一緒に揺れることになり溶解促進は図られない。その上に、そのままでは点眼容器として使用することはできず、点眼用にするためにさらに何らかの操作が必要になる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、用時において、例えば上記の天地逆転した上での再装着や、キャップ押し下げによる錠剤の落とし込み等の特別な操作を使用者に強いることなく、固形薬剤の液体への溶解操作が自動的に完了するようにすることにより、誤操作・誤使用・溶解忘れの発生を回避しつつ、容易な取り扱いで、かつ、確実性に富んだ用時溶解を実現させ得る点眼容器や、用時溶解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明では、液体成分が収容される容器本体に装着されることにより用時溶解型点眼容器を構成する点眼ノズルを対象として、次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記容器本体の口部に対しこの口部を密封するよう装着される装着部と、固体成分を少なくともその一部を露出させた状態で収容するホルダ部とを備えるものとする。そして、上記装着部により上記容器本体の口部に装着されてその口部を密封した装着状態では、先端側に開口する点眼孔を通してのみ上記容器本体内と外部とが連通され、かつ、上記ホルダ部が容器本体内に向けて上記液体成分の収容予定液位よりも下方位置まで突出されてその突出端部位に上記固体成分が収容される構成とする(請求項1)。
【0010】
この第1の発明の場合、ホルダ部に固体成分(錠剤等の固形薬剤)を収容させた状態の点眼ノズルを容器本体とは別に独立させて保管し、用時においてこの点眼ノズルを容器本体の口部に装着させることにより用時溶解が自動的に行われることになる。すなわち、予め液体成分(希釈駅等の液体)を収容させた容器本体の口部に対し点眼ノズルの装着部にて点眼ノズルを装着させると、ホルダ部に収容された固体成分が上記容器本体内の液体成分中に露出状態で浸漬されるため、その固体成分が液体成分中に溶解されることになる。もちろん容器本体を振るなどすれば溶解促進が図られるが、その際、固体成分は容器本体に対し相対移動しないため、流動する液体成分に対し固体成分の溶解促進が効果的に図られることになる。又、上記の点眼ノズルを容器本体に装着することにより点眼ノズルの点眼孔からの点眼が可能となるため、使用者が容器本体に対し点眼ノズルを装着させて点眼容器を組み立てるという必然的な作業を行うだけで、固体成分の液体成分に対する用時溶解が自動的に完了することになる。これにより、誤操作・誤使用・溶解忘れの発生を回避しつつ、容易な取り扱いで、かつ、確実性に富んだ用時溶解を実現させ得る点眼ノズルを提供し得ることになる。
【0011】
上記の第1の発明の点眼ノズルにおいて、次のような特定事項を付加又は具体化することにより、さらなる作用が得られる。すなわち、第1としては、点眼ノズルに、上記点眼孔の先端側開口を着脱自在に密閉する保護キャップをさらに備えるようにする(請求項2)。これにより、点眼孔を衛生的に保ち得る。第2としては、点眼ノズルを、上記装着部及び点眼孔を有するノズル本体と、このノズル本体に対し着脱可能に連結されたホルダ部とから構成する(請求項3)。ホルダ部を例えば孔付き・スリット付きの筒状体等により構成する場合には、ホルダ部をノズル本体から外して錠剤等の固体成分をホルダ部内に入れ、その後、ホルダ部をノズル本体に取り付けることにより、固体成分を収容した点眼ノズルを容易に構成し得ることになる。第3としては、上記点眼ノズルのホルダ部として、一対の挟持片を備え、この一対の挟持片間に固体成分を挟持することにより固体成分の収容が行われる構成とする(請求項4)。この場合には、ホルダ部をより具体化して明確化した一構成例が特定される。すなわち、一対の挟持片間に錠剤等の固体成分を挟持させ、挟持された状態で容器本体内の液体成分中に浸漬させれば、液体成分に露出した部分の固体成分から容易に溶解が始まることになる。
【0012】
又、用時溶解型点眼容器キットに係る第2の発明では、以上のいずれかの点眼ノズルと、この点眼ノズルの装着部が装着可能な口部を有する容器本体と、この容器本体の口部を密封状態に仮栓するキャップとを備えることとし、内部に液体成分を収容させて上記口部がキャップにより密閉された状態の容器本体と、ホルダ部に固体成分を収容させて全体を密封包装した状態の上記点眼ノズルとの双方を併せて提供する構成とした(請求項5)。
【0013】
この第2の発明の場合、流通過程から医院へ、又は、医院から使用者へ、上記所定の状態にされた容器本体と点眼ノズルとが併せてセットで提供されるため、用時には点眼ノズルを容器本体に装着させるだけで、点眼容器への組み立てと、液体成分に対する固体成分の溶解とが同時に完了する。すなわち、容器本体を密封していたキャップを口部から取り外した後、その口部に対し点眼ノズルの装着部を装着すれば、容器本体内は点眼孔のみを通して内外が連通して全体で点眼容器が完成し、併せて、点眼ノズルのホルダ部の突出端部位の固体成分が容器本体内の液体成分中に浸漬して液体成分への溶解が自動的に行われることになる。要するに、キットとして容器本体と点眼ノズルとが併せて提供されるため、使用者は点眼容器を組み立てるには点眼ノズルを容器本体に対し装着させればよいという必然的な操作手順を容易に理解して、点眼容器への組立が完了する。そして、この組立が完了すれば、他の特別な操作を要することなく、固体成分の液体成分への用時溶解が自動的に行われる。これにより、誤操作・誤使用・溶解忘れの発生を回避しつつ、容易な取り扱いで、かつ、確実性に富んだ用時溶解が実現されることになる。なお、上記の「双方を併せて提供する構成」としては、例えば上記所定の状態の容器本体と点眼ノズルとの双方を1つの包装体にて包装したような包装形態にするなどが挙げられる。
【0014】
更に、第3の発明では、上述のいずれかの点眼ノズルと、口部を有し内部に液体成分が収容される容器本体とを用いた用時溶解方法を対象として、次の特定事項を備えるようにした。すなわち、内部に液体成分を収容させて上記口部をキャップにより密封状態に仮栓した状態の上記容器本体と、ホルダ部に固体成分を収容させて全体を密封包装した状態の上記点眼ノズルとの双方を併せた状態で提供した後、用時において、上記口部からキャップを取り外し、このキャップの代わりにその口部に対し上記密封包装から取り出した点眼ノズルを上記装着部により装着することによって、上記ホルダ部に収容された固体成分を容器本体内の液体成分中に浸漬させるようにする(請求項6)。
【0015】
この第3の発明の場合、上記の第2の発明にて特定された用時溶解型点眼容器キットを用いて用時溶解させる操作手順が明確に特定されることになり、かかる点眼容器キットを用いた場合の作用をより確実に得られることになる。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように、請求項1〜請求項4のいずれかの点眼ノズルによれば、ホルダ部に固体成分を収容させた状態の点眼ノズルを容器本体とは別に独立させて保管し、用時においては、この点眼ノズルを容器本体の口部に装着させるだけで、点眼容器の組立完了と共に、液体成分に対する固体成分の用時溶解を自動的に実行させることができる。これにより、誤操作・誤使用・溶解忘れの発生を回避しつつ、容易な取り扱いで、かつ、確実性に富んだ用時溶解を実現させ得る点眼ノズルを提供することができる。
【0017】
又、請求項5の用時溶解型点眼容器キットによれば、所定状態の容器本体と点眼ノズルとがキットにして併せて提供されるため、使用者に対し、点眼ノズルを容器本体に対し装着させればよいという点眼容器を組み立てるための必然的な操作手順を容易に理解させることができる上に、点眼ノズルを容器本体に対し装着させるだけという容易な操作によって点眼容器への組立をも容易に行うことができる。しかも、このような点眼容器への必然的かつ容易な組立操作だけで、他の特別な操作を要することなく、点眼ノズル側の固体成分を容器本体内の液体成分に対し自動的に用時溶解させることができる。これにより、誤操作・誤使用・溶解忘れの発生を回避しつつ、容易な取り扱いで、かつ、確実性に富んだ用時溶解を実現させることができる。
【0018】
更に、請求項6の用時溶解方法によれば、上記の用時溶解型点眼容器キットを用いて用時溶解させる操作手順を明確に特定することができ、用時溶解型点眼容器キットを用いた場合の上述の効果をより確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る点眼ノズル又は点眼ノズルを含めた用時溶解型点眼容器キットを用いた用時溶解型医薬品の納入形態を示す。この納入形態で製造完了から流通及び保管等の段階を経て、医師,看護士又は患者等の使用者が実際に使用する時(用時)まで上記の納入形態のままにされる。
【0021】
すなわち、上記納入形態においては、内部に液体成分として希釈液等の液体Lを所定量(収容予定液位まで)収容させて口部21がキャップ22により密閉された状態の容器本体2と、ホルダ部31に固体成分として錠剤Sを収容させて全体をアルミピロー包装4により密封包装した状態の点眼ノズル3との双方を併せて1つの包装材5により包装されている。
【0022】
上記容器本体2は、所定の合成樹脂成形によりその胴部が柔軟性を有するボトル状に形成されたものであり、口部21の外周面に螺ねじ部が形成されている。キャップ22も合成樹脂成形により形成され、口部21の螺ねじ部にねじ込みにより着脱可能とされている。そして、このキャップ22は、口部21にねじ込まれた閉栓状態(図1に示す状態)では口部21の開口縁の内周面、先端周面及び外周面のいずれか一以上と密着して容器本体2内を密封し得るようになっている。
【0023】
上記点眼ノズル3は、その分解状態を図2にも示すように、ノズル本体(ノズルキャップ)32と、このノズル本体32に対し着脱可能に連結された上記ホルダ部31と、保護キャップ33とからなる。上記ノズル本体32は、上記容器本体2の口部21に対しねじ込みにより密封状態に装着可能なキャップ状の装着部321と、この装着部321からその中心軸上を上方に突出するノズル部322と、装着部321から中心軸上を下方に突出する係合部323とが合成樹脂成形により一体形成されたものである。上記装着部321は、下方に開口するように周壁と頂壁とからキャップ状に形成されており、頂壁上面から上記ノズル部322が突出し、周壁の内周面には上記口部21の螺ねじ部にねじ込み可能な螺ねじ部が形成されている。ノズル部322は、基端側が装着部321において下方に開口し、先端側が点眼孔324にて開口され、外周面に上記保護キャップ33をねじ込みにより着脱自在にするための螺ねじ部が形成されている。又、上記係合部323は、上記装着部321の頂壁下面から突出して下端側に係止突部を有する複数(図例では4つ)の係合片323a,323a,…からなり、これら複数の係合片323a,323a,…は上記ノズル部322の基端側開口を囲む円周位置において所定間隔を隔てて配設されている。
【0024】
上記ホルダ部31は、有底で上面が開口された細長い円筒部材311の周壁にスリット開口部312,312,…を形成し、上端部内周面に上記係合部323に対し係合し得る係止凸条313を周方向に延びるように形成したものである。上記スリット開口部312は錠剤Sを露出させるために少なくとも1つあればよく、図1又は図2には周方向に4つ形成したものを例示している。上記係止凸条313を上記装着部321の係合部323に対し下から上に押し込むことにより両者が互いに係合され、ホルダ部31のノズル本体32に対する連結が行われるようになっている。連結された状態では、ホルダ部31が装着部321の内方位置から下方に突出した状態となる。この連結を外すにはホルダ部31をノズル本体32に対し下方に引き下げることにより上記係合が外れ、ホルダ部31がノズル本体32から外れるようになっている。このようにしてホルダ部31をノズル本体32から外した状態で、円筒部材311内に錠剤Sを投入し、突出端部位である底部位に錠剤Sを収容させる。なお、円筒部材311の内径は錠剤Sのサイズに応じて定めればよく、又、円筒部材311ではなくて角筒部材を用いてホルダ部31を構成してもよい。
【0025】
上記のホルダ部31の突出長さは、後述の如く装着部321を容器本体2の口部21に装着させた状態で、底部位が内部の液体Lの収容予定液位よりも下に位置するように定めればよい。要するに、口部21に点眼ノズル3を装着させた状態において、ホルダ部31に収容された錠剤Sが液体L中に浸漬し得るように設定した錠剤Sの収容又は保持の位置と、その際に液体Lに錠剤Sが接触して溶解し得るように少なくとも一部を露出させた状態での収容又は保持の形態とが重要であって、これらが達成できればその余の構成は種々のものを採用することができるのである。
【0026】
又、上記保護キャップ33は、ノズル部322の外周面の螺ねじ部に対しねじ込みにより着脱可能な螺ねじ部を内周面に有し、上部内面には点眼孔324の先端側開口に嵌り込んで密閉し得る球状凸部331が形成されている。
【0027】
次に、以上の納入形態の用時溶解型点眼容器キットを使用する際には、使用者が上記の点眼ノズル3を容器本体2に装着して点眼容器に組み立てるだけで、錠剤Sの液体Lに対する用時溶解が行われることになる。
【0028】
すなわち、包装材5を破り、キャップ22付き容器本体2と、アルミピロー包装4にて包装された点眼ノズル3とを取り出す。次いで、容器本体2からキャップ22を取り外す一方、アルミニウムピロー包装4を破って内から点眼ノズル3を取り出し(図3参照)、取り出した点眼ノズル3をキャップ22が取り外された容器本体2の口部21に装着させる(図4参照)。この装着は、ホルダ部31を下に保護キャップ33を上にした点眼ノズル3を、先ず、そのホルダ部31から口部21に入れ容器本体2内を下向きに入れ込んでいき、次に、装着部321を口部21の螺ねじ部に対し最後までねじ込むことにより、完了する。
【0029】
点眼ノズル3を容器本体2に装着した状態では、ホルダ部31の底部位が液体Lの液面よりも下方位置まで沈み、これにより、錠剤Sが液体L中に浸漬された状態になる。この浸漬された状態のままでも液体Lに対する錠剤Sの溶解は進行するが、全体を振るなどすることにより溶解が促進される。一方、上記の点眼ノズル3を容器本体2に装着した状態では、容器本体2の口部21が上記装着部321により密封されるため、上下を逆転させて容器本体2の胴部を押圧すれば錠剤Sの溶解後の薬液が点眼孔324を通して外部に滴下するという点眼容器となる。すなわち、上記の点眼ノズル3の容器本体2に対する装着という操作又は作業を行うことにより、点眼容器の組立が完了すると共に、錠剤Sの液体Lに対する用時溶解が自動的に行われることになる。
【0030】
以上の用時溶解型点眼容器キットの場合には、点眼容器を組み立てる操作手順が点眼ノズル3を容器本体2に装着させればよいという必然的かつ常識的な操作手順であるため、使用者をして誤使用・誤操作を招くことなく点眼容器の組立を確実に完了させることができ、その組立完了により錠剤Sの液体Lに対する用時溶解をも自動的に開始させることができる。これにより、用時溶解のために特別な操作又は特別な操作手順を経ないと用時溶解を行わせることができないという従来の部品又は容器と比べ、本実施形態の場合には何ら特別な操作を行うことなく、用時溶解を容易かつ確実に行わせることがてきるようになる。加えて、点眼容器に組立てないと点眼をすることはできず、点眼容器に組み立てれば用時溶解が自動的に行われるため、溶解忘れという事態が生じる余地はなく、用時溶解型の医薬品としての用法を確実に遵守させることができる。
【0031】
又、アルミピロー包装4により錠剤S付きの点眼ノズル3を密封包装しているため、その錠剤Sの防湿を図ることができ、水分吸着も防止することができる。さらに、上記の容器本体2への装着作業は保護キャップ33又は装着部321を掴んで行われる一方、錠剤Sはホルダ部31内に収容されているため、錠剤Sが使用者の手に直接に触れることはないため、錠剤Sを衛生的に保持することができる上に、容器本体2又はその口部21がたとえ極めて小さいサイズのものであったとしても錠剤Sを落下させるというような事態も起こり得ない。
【0032】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、ホルダ部31として円筒部材311を用いてノズル本体32に対し着脱可能にしたものを示したが、これに限らず、装着部321等と一体に形成するようにしてもよい。すなわち、錠剤Sをある一定位置(突出端部位)に一部を露出させた状態に収容させ得ればよく、例えばホルダ部を装着部321と一体形成した一対の挟持片により構成するようにしてもよい。例えば図5に示す点眼ノズル3aのように、装着部321の頂壁の内下面から一対の挟持片341,341を下方に突出させ、これら一対の挟持片によりホルダ部34を構成するようにすればよい。この場合、好ましくは上記一対の挟持片341の各先端部の内面に錠剤Sの外面形状に対応した凹アール部を形成し、下方から錠剤Sを一対の挟持片341,341間に押し込むことにより、各挟持片の素材の有する弾力性に基づき撓ませて上記の相対向する凹アール部間に錠剤Sを挟持させるようにすればよい。
【0033】
上記実施形態におけるホルダ部31に錠剤Sの一部を露出させて液体Lと接触させるためにスリット開口部312を形成しているが、スリット開口部312の代わりに錠剤Sが飛び出さない程度のサイズの連通孔等の孔又は開口を形成し、これにより錠剤Sの一部を露出させて液体Lと接触可能な状態に収容させるようにしてもよい。又、納入形態における点眼ノズル3を密封包装する手段は、防湿機能を維持させ得ればアルミピロー以外でもよい。
【0034】
また、上記実施形態では固体成分として錠剤Sを示したが、錠剤Sではなく顆粒状の薬剤を固体成分としてもよい。この場合には、その顆粒状の薬剤をネット袋等に一旦収容させた上で、その薬剤入りネット袋をホルダ部31内に収容させたり、あるいは、スリット開口部312のスリット幅又は連通孔の孔径をその顆粒状薬剤の外径よりも小さく設定した上で顆粒状薬剤をホルダ部に直接に収容させたり、すればよい。
【0035】
一方、上記の点眼ノズル3をノズル部322つまり点眼孔324を有さない単なるキャップと把握し、このキャップが本願発明のホルダ部を備えているようにすることにより、点眼容器には用途限定されない他の用途の容器における用時溶解型容器又は用時溶解型容器キットとしても、本件技術を把握することもできる。以下においては、参考のために図6に図示した符号を付して表現するが、かかる符号により図6記載のものに限定されるものではない。すなわち、口部21を有し内部に液体成分Lが収容される容器本体2と、この容器本体2の口部21を着脱可能に密閉する第1キャップ22及び第2キャップ6とを備え、上記第2キャップ6は、上記口部21に装着されるキャップ本体61と、このキャップ本体61の内面から上記容器本体2内に向けて突出しその突出端部位に固体成分Sをその一部を露出させた状態で収容するホルダ部62を備えており、内部に液体成分Lを収容させて上記口部21が第1キャップ22により密閉された状態の容器本体2と、上記ホルダ部62に固体成分Sを収容させて全体を密封包装した状態の上記第2キャップ6との双方が併せて提供されるように構成されてなる、用時溶解型容器キット、となる。
【0036】
あるいは、上記第1キャップ22と上記第2キャップ6と、口部21を有し内部に液体成分Lが収容される容器本体2とを用いた用時溶解方法であって、内部に液体成分Lを収容させて上記口部21を第1キャップ22により密封状態に仮栓した状態の上記容器本体2と、ホルダ部62に固体成分Sを収容させて全体を密封包装した状態の上記第2キャップ6との双方を併せた状態で提供した後、用時において、上記口部21から第1キャップ22を取り外し、この第1キャップ22の代わりにその口部21に対し上記密封包装から取り出した第2キャップ6を上記キャップ本体61により装着することによって、上記ホルダ部62に収容された固体成分Sを容器本体2内の液体成分L中に浸漬させるようにする、ことを特徴とする用時溶解方法、としても把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態の納入形態を示す断面説明図である。
【図2】点眼ノズルを分解状態で示す断面説明図である。
【図3】図1の納入形態から中身を取り出す状況を示す説明図である。
【図4】点眼ノズルの容器本体への装着状態を示す断面説明図である。
【図5】図1の実施形態と異なる点眼ノズルの断面説明図である。
【図6】図1の実施形態とは異なる形態における装着前の状態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0038】
2 容器本体
3 点眼ノズル
4 アルミピロー包装(密封包装)
21 口部
22 キャップ
31,34 ホルダ部
32 ノズル本体
33 保護キャップ
321 装着部
324 点眼孔
S 錠剤(固体成分)
L 液体(液体成分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体成分が収容される容器本体に装着されることにより用時溶解型点眼容器を構成する点眼ノズルであって、
上記容器本体の口部に対しこの口部を密封するよう装着される装着部と、固体成分を少なくともその一部を露出させた状態で収容するホルダ部とを備え、
上記装着部により上記容器本体の口部に装着されてその口部を密封した装着状態では、先端側に開口する点眼孔を通してのみ上記容器本体内と外部とが連通され、かつ、上記ホルダ部が容器本体内に向けて上記液体成分の収容予定液位よりも下方位置まで突出されてその突出端部位に上記固体成分が収容されるように構成されている
ことを特徴とする点眼ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載の点眼ノズルであって、
上記点眼孔の先端側開口を着脱自在に密閉する保護キャップをさらに備えている、点眼ノズル。
【請求項3】
請求項1に記載の点眼ノズルであって、
上記装着部及び点眼孔を有するノズル本体と、このノズル本体に対し着脱可能に連結されたホルダ部とから構成されている、点眼ノズル。
【請求項4】
請求項1に記載の点眼ノズルであって、
上記ホルダ部は、一対の挟持片を備え、この一対の挟持片間に固体成分を挟持することにより固体成分の収容が行われるように構成されている、点眼ノズル。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の点眼ノズルと、この点眼ノズルの装着部が装着可能な口部を有する容器本体と、この容器本体の口部を密封状態に仮栓するキャップとを備え、
内部に液体成分を収容させて上記口部がキャップにより密閉された状態の容器本体と、ホルダ部に固体成分を収容させて全体を密封包装した状態の上記点眼ノズルとの双方が併せて提供されるように構成されてなる、
用時溶解型点眼容器キット。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の点眼ノズルと、口部を有し内部に液体成分が収容される容器本体とを用いた用時溶解方法であって、
内部に液体成分を収容させて上記口部をキャップにより密封状態に仮栓した状態の上記容器本体と、ホルダ部に固体成分を収容させて全体を密封包装した状態の上記点眼ノズルとの双方を併せた状態で提供した後、
用時において、上記口部からキャップを取り外し、このキャップの代わりにその口部に対し上記密封包装から取り出した点眼ノズルを上記装着部により装着することによって、上記ホルダ部に収容された固体成分を容器本体内の液体成分中に浸漬させるようにする
ことを特徴とする用時溶解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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