説明

点群データの処理装置、処理方法、処理プログラム及び記録媒体

【課題】点群のグルーピング処理を効率よく実行できる点群データの処理方法、処理装置、処理プログラム及び記録媒体を提供する。
【解決手段】点群データの処理装置100は、複数の立体物の外表面の形状を表す点群データを、立体物毎にグループ化するための処理装置であり、記憶手段101と制御手段102とを有する。記憶手段101は、3次元座標を有する点データの集合である点群データ、及び少なくとも1つの立体物の輪郭形状を2次元の閉図形として表した2次元図形データを予め記憶する。制御手段102は、記憶手段から点群データ及び2次元図形データを取得し、点群データに含まれる点データのうち、2次元図形データを法線方向に押し出して生成される領域に含まれる点データを選択し、選択された点データをグループ化する処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点群データの処理装置、処理方法、処理プログラム及び記録媒体に関し、特にコンピュータによる点群データのグルーピング処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の立体形状を計測し、データとして記述するには、3次元レーザスキャナをはじめ、X線CT装置、表面計測プローブなどの3次元デジタイザが利用される。3次元デジタイザは、リバースエンジニアリングツールとも称される。これらの装置は、物体の表面を所定の密度でスキャンして、物体表面上のある点の3次元座標を含む点データを生成し、これらの点データの集合である点群データを出力する。
【0003】
これらの点群データを、前記物体の立体形状を示す3次元モデルに変換することができれば、3次元CADを用いてこの3次元モデルを取り扱うことが可能となる。例えば、特許文献1記載のデータ変換装置は、所定のアルゴリズムにより、点群データの一部をグルーピングし、このグルーピングされた点群に近似する平面や円柱面を定義し、これらの平面から3次元ソリッドモデルを生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−127544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のデータ変換装置においては、オペレータが点群の形状を見て、点群データから任意の基準点を指定し、さらに適切なグルーピングのアルゴリズムを選択することが必要であった。したがって、オペレータには、一定の熟練度や多大な工数が要求されていた。
【0006】
例えば、工場建屋内の生産設備等のレイアウト検討(設備同士及び設備と柱等との干渉がないこと、所定のクリアランスが確保されていること等を確認し、配置を検討すること)、及び改造工事検討(設備の搬出、搬入及び移動の順序やその際のルート等を検討すること)を行う場合、オペレータは以下の工程をこなす必要がある。
【0007】
オペレータは、まず、3次元レーザスキャナ等のリバースエンジニアリングツールを用いて生産設備等を測定し、点群データを得る。ついでオペレータは、点群データを、測定対象となった設備1台毎、工程毎、又はライン毎などの所定の単位にグルーピングする。この際、オペレータは、点群の形状を表示画面上で目視し、2次元CADで予め作成されたレイアウト図等を参照しながら、設備、工程、ラインなどの形状、取合い等を識別し、手作業で点群をグルーピングしなければならない。
【0008】
このように、従来の手法には、点群のグルーピングに多大な工数の手作業を要するという問題点があった。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、点群のグルーピング処理を効率よく実行できる点群データの処理装置、処理方法、処理プログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る点群データの処理装置は、複数の立体物の外表面の形状を表す点群データを、前記立体物毎にグループ化するための処理装置であって、3次元座標を有する点データの集合である前記点群データ、及び少なくとも1つの前記立体物の輪郭形状を2次元の閉図形として表した2次元図形データを予め記憶する記憶手段と、前記記憶手段から前記点群データ及び前記2次元図形データを取得し、前記点群データに含まれる前記点データのうち、前記2次元図形データを法線方向に押し出して生成される領域に含まれる前記点データを選択し、前記選択された点データをグループ化する制御手段とを有するものである。
【0011】
本発明においては、2次元図形を法線方向に押し出して生成される領域に含まれる点データをグループ化することにより、2次元図形を含むレイアウト図等を用いた効率的なグルーピングが可能である。
【0012】
また、本発明に係る他の点群データの処理装置は、前記2次元図形が複数存在する場合、異なる前記2次元図形より生成される前記領域に含まれる点データを、それぞれ異なるグループに属するものとしてグループ化する前記制御手段を有するものである。
【0013】
本発明においては、異なる2次元図形より生成される領域に含まれる点データをそれぞれ異なるグループに属させることにより、レイアウト図等において予め複数の設備が異なる2次元図形で描かれていれば、点データを設備毎に効率よくグルーピングすることが可能である。
【0014】
また、本発明に係る他の点群データの処理装置は、前記グループ化された点データそれぞれについて、他の点データとの距離を算出し、前記距離が所定の閾値以下である前記他の点データを、前記グループ化された点データと同じグループに属するものとしてグループ化する前記制御手段を有するものである。
【0015】
本発明においては、レイアウト図上で複数の設備が重畳している場合であっても、これらの設備が現実には一定のクリアランスをもって上下に重畳しているような場合であれば、点データを正しいグループに効率よく属させることが可能である。
【0016】
また、本発明に係る他の点群データの処理装置は、前記点データにグループ識別子を付与することにより前記グループ化を行う前記制御手段を有するものである。
【0017】
さらに、本発明に係る点群データの処理方法は、複数の立体物の外表面の形状を表す点群データであって、3次元座標を有する点データの集合である前記点群データより、少なくとも1つの前記立体物の輪郭形状を2次元の閉図形として表した2次元図形データを、法線方向に押し出して生成される領域に含まれる点データを選択し、前記選択された点データをグループ化するものである。
【0018】
さらに、本発明に係る点群データの処理プログラムは、所定の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、複数の立体物の外表面の形状を表す点群データであって、3次元座標を有する点データの集合である前記点群データより、少なくとも1つの前記立体物の輪郭形状を2次元の閉図形として表した2次元図形データを、法線方向に押し出して生成される領域に含まれる点データを選択し、前記選択された点データをグループ化するものである。
【0019】
さらに、本発明に係る点群データの処理プログラムが記憶された記録媒体は、所定の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、複数の立体物の外表面の形状を表す点群データであって、3次元座標を有する点データの集合である前記点群データより、少なくとも1つの前記立体物の輪郭形状を2次元の閉図形として表した2次元図形データを、法線方向に押し出して生成される領域に含まれる点データを選択し、前記選択された点データをグループ化するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、点群のグルーピング処理を効率よく実行できる、点群データの処理装置、処理方法、処理プログラム及び記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態1の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1の処理を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態1にかかる点群データの例を示す図である。
【図4】実施の形態1にかかる2次元図形データの例を示す図である。
【図5】実施の形態1の処理を示す模式図である。
【図6】実施の形態1の処理を示す模式図である。
【図7】実施の形態2の処理を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態2の処理を示す模式図である。
【図9】実施の形態2の処理を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明者は、測定対象の点群データをグルーピングする際、2次元CAD等で事前に作成された測定対象のレイアウト図等を利用することにより、点群のグルーピング処理を効率よく実行できることを見出した。
【0023】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
<実施の形態1>
まず、図1を用いて、本発明の実施の形態1にかかる装置100の構成について説明する。
【0025】
装置100は、記憶手段101及び制御手段102を含む。
【0026】
記憶手段101は、図示しない3次元デジタイザ等のリバースエンジニアリングツール等によって生成された点群データを予め記憶する。リバースエンジニアリングツールは、例えば複数の生産設備を含む生産ラインを測定対象とし、当該生産設備の表面を所定の密度でスキャンして、当該生産設備の立体形状を表す多数の点データを生成し、これらの点データの集合である点群データを出力する装置である。
【0027】
また、記憶手段101は、2次元図形データを予め記憶する。2次元図形データは、典型的には、2次元CADによって事前に作成された、上記生産設備のレイアウト図である。レイアウト図は、複数の生産設備をそれぞれ基準面(典型的には床面)に垂直投影した図面である。レイアウト図においては、各生産設備はそれぞれ1つの閉図形として表される。通常、この閉図形は、上述の垂直投影の像の輪郭線を表すものとなる。
【0028】
このように、レイアウト図は、各生産設備を明確に分別するための情報を予め内包している。一方、点群データはかかる情報を保持していない。そこで、本実施の形態では、レイアウト図のかかる情報を利用し、点群データのグルーピングを行う。
【0029】
記憶手段101は、典型的には、内部記憶装置(メモリ)であるが、点群データ及び2次元図形データを処理前に一時的に格納可能なものであればいかなるものであってもよい。例えば、記憶手段101は、外部記憶装置、記録媒体の読取装置、データ通信ポート又はキーボードやマウス等の入力装置等と接続された一時的記憶領域であってもよい。
【0030】
制御手段102は、記憶手段101にアクセスして点群データ及び2次元図形データを取得し、点データを所定のアルゴリズムに従ってグループ化(グルーピング)する処理を行う。ここで、グルーピングとは、点群データに含まれる点データの一部又は全部を、所定の基準に従って選択し、選択された点データを1つの共通した属性を有するものとして分類する処理をいう。具体的には、選択された点データに、グループを示す識別子(グループ識別子)を属性として付加することによりグルーピングを実施し得る。
【0031】
制御手段102は、典型的には、制御プログラムに基づいて、本装置内の各種処理を実行する中央制御装置(CPU)である。制御プログラムは、本装置に関する処理をCPUにより実行させるためのプログラムであり、ROM、RAM、ハードディスク等の内部又は外部記憶装置に格納されている。これらのプログラムは、遠隔に設けられた記憶手段から通信網を介して取得するようにしてもよい。
【0032】
このほか、装置100は、グルーピング処理にかかる指示をオペレータが入力するための入力装置、グルーピング処理にかかる処理経過をオペレータに示すための出力装置を備えることとしても良い。典型的には、入力装置はマウス等の指示装置、キーボード等の文字入力装置等を含み得、出力装置はディスプレイ等の表示装置を含み得る。
【0033】
つづいて、図2のフローチャートを用いて、本発明の実施の形態1にかかる装置の処理について説明する。
【0034】
S101:制御手段102は、記憶手段101から点群データ及び2次元図形データを読み出す。
【0035】
まず、点群データについて説明する。3次元デジタイザ等のリバースエンジニアリングツール等は、例えば複数の生産設備を含む生産ラインを測定し、当該生産設備の立体形状を表す多数の点データを生成し、これらの点データの集合である点群データを出力する。記憶手段101は、当該リバースエンジニアリングツール等から直接転送され、又は伝送路や記録媒体等を介して転送される点群データを予め記憶している。
【0036】
図3に、点群データの例を示す。本実施の形態では、点群データ200は、個々の点データ201、202及び203等をそれぞれ1レコードとし、これらの複数のレコードが集合したテーブルの形で表される。これらの点データはそれぞれ、少なくとも3次元の座標値(x,y,z)、及びグループ識別子を属性として保持し得る。座標値は、リバースエンジニアリングツール等により設定される測定値である。グループ識別子は、後述のグルーピングの結果を保持するための属性である。グループ識別子は、現段階で属性値は保持されておらず、後述するステップS105において登録される。なお、属性としてのグループ識別子は、本ステップ(S101)の段階において必ずしも備えている必要はなく、本ステップ以降の任意のステップにおいて点データに付加することとしても良い。
【0037】
つぎに、2次元図形データについて説明する。2次元図形データは、例えば複数の生産設備を含む生産ラインのレイアウト図であり、典型的には2次元CADによって作成、出力される。記憶手段101は、当該2次元CAD等から直接転送され、又は伝送路や記録媒体等を介して転送される2次元図形データを予め記憶している。
【0038】
図4に、2次元図形データの例を示す。本実施の形態では、2次元図形データとしてのレイアウト図300は、生産設備1、2及び3の基準面への垂直投影図である2次元の閉図形301、302及び303を含む。これらの2次元図形は、典型的には複数の頂点の2次元の座標値(x,y)を属性として保持している。
【0039】
S102:制御手段102は、点群データと2次元図形データの重ね合わせ処理を行う。
【0040】
重ね合わせ処理は、オペレータが、図示しない出力装置に表示される点群データ及び2次元図形データの像を見ながら、図示しない入力装置を用いて基準点を指定し、制御手段102が、前記基準点にしたがって点群データ及び2次元図形データを配置することにより実行し得る。ここで、基準点としては、点群データ及び2次元図形データに含まれる、柱などの座標を指定することが望ましい。
【0041】
あるいは、重ね合わせ処理は、制御手段102が、点群データ及び2次元図形データに含まれる基準点を自動的に認識することにより、オペレータの操作を要せずに実行し得る。基準点の自動認識は、例えば、基準点に予め特別の属性を保持させ、制御手段102がその属性を有する点を選択すること等により実行し得る。
【0042】
図5を用いて、重ね合わせ処理についてさらに説明する。重ね合わせ処理においては、図5に示すように、レイアウト図に含まれる2次元図形データの外形線と、点群データにより表される生産設備の外形のフロア面への垂直投影像とが一致するように、両者を配置することが望ましい。
【0043】
S103:制御手段102は、2次元図形を法線方向に押し出して、囲い面を生成する処理を行う。
【0044】
図6を用いて、囲い面の生成処理について説明する。図6に示すように、制御手段102は、2次元図形301、302及び303の外形線を、これらの図形の法線方向、すなわちz方向に押し出して、囲い面A1、A2及びA3を作成する。この処理は、例えば汎用の3次元CAD等が備える標準機能等により実現可能である。
【0045】
なお、本実施の形態のように、測定対象である生産設備がすべて基準面すなわちフロア面より上に存在する場合、外形線の押し出し方向は上方すなわち正のz方向のみで良い。ただし、測定対象が基準面より下にも存在する場合には、制御手段102は、外形線を下方すなわち負のz方向にも押し出す処理を行う必要がある。
【0046】
S104:制御手段102は、点群データに含まれるすべての点データのうち、最も高い位置に存在する点データ、すなわちzの値が最大である点データを特定する。つづいて、制御手段102は、当該特定された点データのz以上の高さを有する平面Tを生成する。つまり、図6に示すように、すべての点データが平面Tより下方に収まるような高さzを持つ平面Tを生成する処理を行う。
【0047】
なお、本実施の形態のように、測定対象である生産設備がすべて基準面すなわちフロア面より上に存在する場合、生成する平面は上記Tのみで良い。ただし、測定対象が基準面より下にも存在する場合には、制御手段102は、すべての点データが平面Uより上方に収まるような高さzを持つ平面Uも、併せて生成する必要がある。
【0048】
S105:制御手段102は、囲い面A1、A2又はA3と、平面T及び基準面(又は、平面Uを生成した場合は平面U)とで囲まれる領域E1、E2及びE3に含まれる点データを、それぞれ選択する。つづいて、制御手段102は、領域E1、E2及びE3に含まれる点データを、それぞれグループG1、G2及びG3に属するものとしてグルーピングする。
【0049】
グルーピングは、典型的には、制御手段102が、グルーピングの対象となる点データに対し、グループ識別子を付与することにより行い得る。図3に示すように、本実施の形態では、制御手段102は、点データを表すレコードに、グループ識別子を示す値を登録することにより、グルーピング処理を行う。例えば、IDが1である点データが、グループG1に分類された場合、当該点データのレコードのグループ識別子のカラムに、グループ識別子としてG1が登録される。
【0050】
本実施の形態においては、制御手段102が、2次元図形を法線方向に押し出して生成される領域に含まれる点データをグループ化することにより、2次元図形を含むレイアウト図等を用いた効率的なグルーピングが可能である。
【0051】
また、本実施の形態においては、制御手段102が、異なる2次元図形より生成される領域に含まれる点データをそれぞれ異なるグループに属させることにより、レイアウト図等において予め複数の設備が異なる2次元図形で描かれていれば、点データを設備毎に効率よくグルーピングすることが可能である。
【0052】
<実施の形態2>
上述の実施の形態1は、レイアウト図において、各生産設備の輪郭線がそれぞれ1つの閉図形として独立に存在している場合、すなわち輪郭線が互いに交錯等していない場合を前提としていた。しかしながら、生産設備が上下に交錯して、すなわち折り重なるように配置されている場合には、輪郭線も交錯してしまうため、実施の形態1に示した処理を単純に適用することができない。
【0053】
一方、レイアウト図においては、輪郭線が交錯する場合、オペレータにより、又はCADソフトウェア等による自動処理により陰線処理がなされるのが一般的である。この場合、下方に位置する生産設備の輪郭線は、上方に位置する生産設備の輪郭線によって一部切り欠かれた形状の閉図形として表される。このような処理が予め施されたレイアウト図を用いれば、各生産設備は不完全ながらも独立した閉図形として表されるため、実施の形態1の方法で一応のグルーピングを行うことができる。
【0054】
ただし、このような場合、実施の形態1として示した方法をそのまま適用したのでは、適切なグルーピング結果を得ることができない。そこで、以下に、本発明の実施の形態2として、かかる不適切なグルーピング結果を補正するための方法を示す。
【0055】
まず、本発明の実施の形態2にかかる装置100の構成について説明する。
【0056】
本実施の形態に係る装置100は、実施の形態1にかかる装置100と同等の構成を有する。すなわち、装置100は、2次元図形及び点群データの入力を受け付ける入力手段101、グルーピング処理を行う制御手段102、及び処理結果の出力先である出力手段103を含む。
【0057】
本実施の形態は、制御手段102が、上述の処理に加え、グルーピング処理に付随する補正処理を実行し得る点に特徴を有する。なお、補正処理の詳細については後述する。
【0058】
つづいて、図7を用いて、本発明の実施の形態2にかかる装置100における処理について説明する。
【0059】
ステップS101ないしS105における処理は、実施の形態1におけるものと同等である。
【0060】
すなわち、入力手段101は、点群データ及び2次元図形データの入力を受け付ける(S101)。つぎに、制御手段102は、入力手段101から点群データ及び2次元図形データを読み出し、点群データと2次元図形データの重ね合わせ処理を行う(S102)。つづいて、制御手段102は、2次元図形を法線方向に押し出して、囲い面を生成する処理を行う(S103)。さらに、制御手段102は、すべての点データが平面Tより下方に収まるような高さzを持つ平面Tを生成する処理を行う(S104)。そして、制御手段102は、上記囲い面、平面T及び基準面(又は、平面Uを生成した場合は平面U)で囲まれる領域に含まれる点データをグルーピングする(S105)。
【0061】
本実施の形態は、制御手段102が、上記処理に加えて、以下の補正処理(S106ないしS107)を実施し得る点に特徴を有する。
【0062】
S106:制御手段102は、点データそれぞれについて、他の点データとの距離をそれぞれ算出する。
【0063】
図3を用いて、これらの処理についてさらに説明する。本実施の形態では、点データは図3に示すようなテーブルに格納されたレコードとして表されている。制御手段102は、まず、処理対象となる1つのレコードを特定する。例えば、まずIDが1である点データを処理対象とする。
【0064】
つづいて、制御手段102は、IDが1である点データと、他の点データとの距離を算出する。具体的には、IDが2である点データとの距離、IDが3である点データの距離等を順次算出する。
【0065】
ここで、制御手段102は、処理対象の点データと、他のすべての点データとの距離を算出することが望ましい。ただし、計算量低減の観点から、他の点データを、グループ識別子がすでに付与されているものに限定しても差し支えない。
【0066】
S107:制御手段102は、ステップS106において算出された距離が所定の閾値以下である他の点データを、処理対象の点データと同じグループに属するものとみなしてグルーピングする処理を行う。
【0067】
図3を用いて、これらの処理についてさらに説明する。制御手段102は、処理対象の点データとの距離が所定の閾値以下であった他の点データのグループ識別子を、処理対象の点データのグループ識別子で更新する。例えば、IDが1である点データが処理対象であった場合、この点データとIDが2である点データとの距離が、所定の閾値以下であったならば、IDが2である点データのグループ識別子を、IDが1である点データのグループ識別子G1で更新する。
【0068】
ここで、所定の閾値は、図示しない記憶手段に予め保持されていても良く、入力手段101又は図示しない入力装置等を介して入力されるものでもよい。あるいは、制御プログラムが予め保持していても良い。
【0069】
制御手段102は、同様の処理を、すべての点データに対して実行する。すなわち、IDが1である点データを処理対象とした上記処理が終了したならば、IDが2である点データを処理対象として、同様の処理を繰り返す。かかる処理を、すべての点データが1度は処理対象となるまで、繰り返し実行する。ただし、計算量低減の観点から、処理対象となるべき点データを、グループ識別子がすでに付与されているものに限定しても差し支えない。
【0070】
ここで、図8及び図9を用いて、ステップS106ないしS107における処理の意義について説明する。
【0071】
生産設備等は、互いに干渉しないよう一定のクリアランスを保ちながらも、上下に交錯して配置される場合がある。一方、レイアウト図は、このような上下方向の交錯に関する情報を有しない。よって、ステップS105のように、単純にレイアウト図に基づいてグルーピングを行うと、不適当なグルーピングが行われてしまうことがある。
【0072】
図8に、不適当なグルーピングの一例を示す。この例では、実際の生産ラインでは、設備1の一部と設備2の一部とが上下に交錯した状態で配置されている。一方、レイアウト図では、設備2の投影図の一部を覆う形で、設備1の投影図が描かれている。このような場合、ステップS105のように、レイアウト図を押し出して得られる領域を用いて単純にグルーピングを行うと、本来設備2を表す(グループG2として分類される)はずの点データも、設備1を表すグループG1として認識されてしまう。
【0073】
発明者は、こうした問題を解決するため、以下の点に着目した。通常、生産設備は、互いに干渉しないよう一定以上のクリアランスを隔てて配置されている。具体的には、通常数10ないし数100ミリメートルのクリアランスが確保される。一方、点データのピッチは、通常数ミリメートルである。
【0074】
そこで、本実施の形態の制御手段102は、このクリアランスより小さく、かつ点データのピッチより十分大きい距離を閾値とし、当該閾値以内の距離にある点データ同士を同じグループに属するものとみなすような補正処理を行う(図9参照)。これにより、例えば設備2を表す点データであって、不適当にもグループG1にグルーピングされてしまった点データが存在しても、適切にグループG2にグルーピングされた他の点データからの距離が閾値以下であれば、補正処理の対象となり、順次適切なグループ識別子が付与される。
【0075】
本実施の形態においては、制御手段102は、レイアウト図上で複数の設備が重畳して描かれている場合であって、これらの設備が現実には一定のクリアランスをもって上下に交錯しているような場合であっても、点データを正しいグループに効率よく属させることが可能である。
【0076】
<その他の実施の形態>
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0077】
例えば、上述の実施の形態においては、生産設備を含む生産ラインが測定対象である場合を例として説明した。しかしながら、測定対象は、3次元レーザスキャナ、X線CT装置、及び表面計測プローブ等の3次元デジタイザ等を含むリバースエンジニアリングツールで測定可能なものであれば、いかなるものであってもよい。例えば、地形及び建造物等を測定対象とすることができる。
【0078】
また、上述の実施の形態においては、3次元デジタイザ等のリバースエンジニアリングツールにより出力される点データをグルーピング処理の対象とする場合を例として説明した。しかしながら、グルーピング処理の対象は、少なくとも3次元座標を有するデータであれば、いかなるものであっても良い。例えば、地形及び建造物等の3次元座標データを含む地理情報データ、恒星及び惑星等の座標データを含む天体情報データ等を処理対象とすることができる。また、処理対象は必ずしも点データである必要はなく、3次元座標データを含む2次元図形や3次元ソリッドデータであっても差し支えない。
【0079】
また、上述の実施の形態では、ハードウェアの構成として説明したが、これに限定されるものではなく、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0080】
100 点群データの処理装置
101 記憶手段
102 制御手段
200 点群データ
201 点データ
202 点データ
203 点データ
300 レイアウト図
301 2次元図形データ
302 2次元図形データ
303 2次元図形データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の立体物の外表面の形状を表す点群データを、前記立体物毎にグループ化するための処理装置であって、
3次元座標を有する点データの集合である前記点群データ、及び少なくとも1つの前記立体物の輪郭形状を2次元の閉図形として表した2次元図形データを予め記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から前記点群データ及び前記2次元図形データを取得し、前記点群データに含まれる前記点データのうち、前記2次元図形データを法線方向に押し出して生成される領域に含まれる前記点データを選択し、前記選択された点データをグループ化する制御手段とを有する
点群データの処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記2次元図形が複数存在する場合、
異なる前記2次元図形より生成される前記領域に含まれる点データを、それぞれ異なるグループに属するものとしてグループ化する
請求項1記載の点群データの処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記グループ化された点データそれぞれについて、
他の点データとの距離を算出し、
前記距離が所定の閾値以下である前記他の点データを、前記グループ化された点データと同じグループに属するものとしてグループ化する
請求項1ないし2いずれか1項記載の点群データの処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記点データにグループ識別子を付与することにより前記グループ化を行う
請求項1ないし3いずれか1項記載の点群データの処理装置。
【請求項5】
複数の立体物の外表面の形状を表す点群データであって、3次元座標を有する点データの集合である前記点群データより、
少なくとも1つの前記立体物の輪郭形状を2次元の閉図形として表した2次元図形データを、法線方向に押し出して生成される領域に含まれる点データを選択し、
前記選択された点データをグループ化する
点群データの処理方法。
【請求項6】
所定の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、
複数の立体物の外表面の形状を表す点群データであって、3次元座標を有する点データの集合である前記点群データより、
少なくとも1つの前記立体物の輪郭形状を2次元の閉図形として表した2次元図形データを、法線方向に押し出して生成される領域に含まれる点データを選択し、
前記選択された点データをグループ化する
点群データの処理プログラム。
【請求項7】
所定の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記プログラムは、
複数の立体物の外表面の形状を表す点群データであって、3次元座標を有する点データの集合である前記点群データより、
少なくとも1つの前記立体物の輪郭形状を2次元の閉図形として表した2次元図形データを、法線方向に押し出して生成される領域に含まれる点データを選択し、
前記選択された点データをグループ化する
点群データの処理プログラムが記憶された記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−97489(P2013−97489A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238338(P2011−238338)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】