説明

無メガネ方式の2次元/3次元ディスプレイ用レンチキュラーユニット

【課題】ポリマー物質からモールドされた複数のレンズアレイを必要としないレンチキュラーユニット及びレンチキュラーレンズシートを提供する。
【解決手段】本発明の実施形態に係るレンチキュラーユニットは、透明な基板と、前記透明な基板上に配置された透明な第1電極と、透明で伸縮可能な第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、前記第1電極と前記第2電極との間に印加された電位に応じて、レンズ状又は前記レンズ状から変形可能な物質層と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無メガネ方式の3次元ディスプレイを実現するレンチキュラーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の立体感は、両眼視差(binocular disparity)により観察者の左眼と右眼の網膜を通して互いに異なる方向から同時にその物体を見て、脳の認識により得られる。従って、3D映像を表示するため、両眼視差の原理を利用して観察者の左眼と右眼に別々の映像を見せることで、観察者が3D映像を認識することができる。
【0003】
3Dディスプレイ技術は、一般に、観察者にシャッターメガネ又は偏光メガネのような、特別なメガネの着用を要求する、いわゆるメガネ方式(stereoscopic)と、メガネの使用を必要としない、いわゆる無メガネ方式(auto−stereoscopic)とにわけられる。
【0004】
無メガネ方式のディスプレイ装置は、一般に、パララックスバリア型3Dディスプレイ装置及びレンチキュラー3Dディスプレイ装置に分類される。パララックスバリア型3Dディスプレイ装置は、複数の行と列のマトリックス状に配列された画素を有するディスプレイスクリーン又はパネルの前方に設置された縦格子状の多数の開口又はスリットを有するパララックスバリアを含む。パララックスバリアは、ディスプレイパネル上の互いに異なる映像間に両眼視差を発生するように、観察者の右眼と左眼についての右側映像と左側映像を分離し、これにより観察者が立体映像を認識できる。しかしながら、パララックスバリア型3Dディスプレイ装置は、多数のスリットによる回折現象の欠点を有する。一方、レンチキュラー3Dディスプレイ装置は、縦格子状のパララックスバリアの代わりに、複数の半円柱形レンズの列方向に配列されたレンチキュラースクリーン又はレンチキュラーレンズシートを用いて、ディスプレイスクリーン又はパネル上の一つの映像を左眼映像と右眼映像に分離し、これにより観察者は立体映像を認識できる。このようなレンチキュラースクリーン又はレンチキュラーレンズシートは、特許文献2に開示されている。
【0005】
最近、2Dモードと3Dモードとの間に切り替え可能な立体ディスプレイ装置への需要が高まり、このタイプの立体ディスプレイ装置は、ディスプレイスクリーン又はパネルより供給された映像信号に応じて2D映像と3D映像の中のいずれか一つを選択的に表示する。このような需要を充たすため、様々な無メガネ方式の2D/3D切り替え可能なディスプレイ装置が開発されてきた。例えば、特許文献1には、電気光学媒体(electro−optical medium)を用いて2Dモードと3Dモードとを切り替える無メガネ方式のディスプレイ装置が開示されている。
【0006】
図1は、特許文献1に開示された無メガネ方式のディスプレイ装置の断面図である。図1を参照すると、従来の無メガネ方式のディスプレイ装置は、バックライトユニット14、液晶ディスプレイ(LCD)パネル10、及び2Dモードと3Dモードとを切り替えるレンチキュラー手段15を含む。LCDパネル10には、複数の行と列で配列された画素12のアレイが配置されている。LCDパネル10は、バックライトユニット14の光源により照射される。LCDパネル10上に入射される光は、所望の映像を表示するように、適切な駆動電圧の印加に応じてそれぞれの画素12により変化させる。
【0007】
レンチキュラー手段15は、LCDパネル10上に配置される。レンチキュラー手段15は、透明なレンチキュラーシート又はレンチキュラーレンズシート30とこの上に並列に配置された複数の円柱状レンズ16、レンチキュラーレンズシート30と対向する平坦な表面の透明板36、レンチキュラーレンズシート30と平坦な表面の板36の内側面上に設けられた透明電極34、37、及び透明電極34、37間の空間内の電気光学媒体38を含む。電気光学媒体38は、適切な液晶物質、即ち、一般にネマティック液晶を含んでもよい。レンチキュラーレンズシート30の一面は、光学的に透明なポリマー物質からモールド(又は加工)されることにより平坦に形成され、その画面は、レンズの輪郭により決められる凸型リブ(convex−ribbed)状に形成される。この構造によれば、透明電極34、37の間に印加電位がない場合、レンチキュラー手段15は、レンチキュラーレンズシート30と同様に動作することで、LCDパネル10上の一つの映像を観察者の左眼映像と右眼映像に分離し、これにより立体映像を見ることができるようにする。反対に、透明電極34、37の間に適切な電位の印加がある場合、見る方向で電気光学媒体38の屈折率は、レンチキュラーレンズシート30の屈折率と実質的に同一となり、これによりレンチキュラーレンズ16のレンズ作用がなくなる。この場合において、レンチキュラー手段15は、LCDパネル10から2D映像を通過する透過板として動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6069650号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第2196166号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ポリマー物質からモールドされた複数のレンズアレイを必要としないレンチキュラーユニット及びレンチキュラーレンズシートを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、ポリマー物質からモールドされた複数のレンズアレイだけではなく、屈折率の調整を要求する電気光学媒体を必要としない無メガネ方式の2D/3D切り替え可能なディスプレイに使用するレンチキュラーユニット及びレンチキュラーレンズシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係るレンチキュラーユニットは、透明な基板と、透明な基板上に配置された透明な第1電極と、透明で伸縮可能な第2電極と、第1電極と第2電極との間に配置され、第1電極と第2電極との間に印加された電位に応じてレンズ状またはレンズ状に変形可能な物質層と、を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の実施形態に係る無メガネ方式の2次元(2D)/3次元(3D)に切り替え可能なディスプレイ装置は、映像を表示するディスプレイ装置と、ディスプレイ装置の前方に配置されたレンチキュラーユニットと、を含み、レンチキュラーユニットは、透明な基板と、透明な基板上に形成された透明な第1電極と、透明で伸縮可能な第2電極と、第1電極と第2電極との間に配置され、第1電極と第2電極との間に印加された電位に応じて変形可能な物質層と、を含み、2Dディスプレイモード中または3Dディスプレイモードの中のいずれかで、第1電極と第2電極との間に電位の印加されないことにより、レンチキュラーユニットの物質層は、変形されず、2Dディスプレイモード中または3Dディスプレイモード中のいずれかで、第1電極と第2電極との間に電位の印加されることにより、レンチキュラーユニットの物質層が変形されることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の実施形態に係るレンチキュラーレンズシートは、透明な基板と、基板上の透明な第1電極と、透明で伸縮可能な第2電極と、第1電極と第2電極との間に配置され、第1電極と第2電極との間に印加された電位に応じて、凸型リブ状を有する円柱形レンズのアレイに変形可能な物質層と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の他の実施形態に係る映像表示方法は、ディスプレイパネルと、ディスプレイパネルの前方に配置されたレンチキュラーユニットを用いて映像を表示する映像表示方法であって、2D映像中または3D映像中のいずれか一つを表示する第1ディスプレイモードでは、表示された映像が通過するレンチキュラーユニットの物質層が変形せず、2D映像中または3D映像中のいずれかを表示する第2ディスプレイモードでは、表示された映像が通過するレンチキュラーユニットの物質層が変形させ、レンチキュラーユニットの物質層を変形することは、物質層の平坦な表面を円柱形レンズのアレイに変形するように、物質層に電位を印加する、又は円柱形レンズアレイを形成する物質層の表面を平坦な表面に変形するように、物質層に電位を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電圧又は電位の印加に応じて膨張及び収縮できる電気活性ポリマー(Electro−Active Polymer:EAP)物質をレンチキュラーレンズシートとして用いるため、ポリマー物質からモールドされた凸型リブ状を有し、並列に配置された複数の円柱形レンズの使用が不要となる。さらに、無メガネ方式の2D/3Dに切り替えて表示するため、電圧又は電位の印加に応じて膨張と収縮できる電気活性ポリマー物質をレンチキュラーシートとして用いるため、電気光学媒体の使用が不要である。従って、構造だけではなく、形成方法の容易性を有する無メガネ方式の3次元ディスプレイ装置用のみならず、無メガネ方式の2D/3Dに切り替え可能なディスプレイ装置用レンチキュラーユニット及びレンチキュラーレンズシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の無メガネ方式のディスプレイ装置を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による電圧の印加に応じて2Dディスプレイモードから3Dディスプレイモードに切り替え可能なレンチキュラーユニットを示す一部拡大斜視図である。
【図3】図2に示すI−I’線の無メガネ方式による2Dレンチキュラーユニットの動作を示す断面図である。
【図4】図2に示すI−I’線の無メガネ方式による3Dレンチキュラーユニットの動作を示す断面図である。
【図5】図4に示す無メガネ方式による3Dレンチキュラーユニットの動作を示す拡大斜視図である。
【図6A】本発明の一実施形態によるレンチキュラーユニットの製造方法を示す図である。
【図6B】本発明の一実施形態によるレンチキュラーユニットの製造方法を示す図である。
【図6C】本発明の一実施形態によるレンチキュラーユニットの製造方法を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態による電圧の印加に応じて2Dディスプレイモードから3Dディスプレイモードに切り替え可能なレンチキュラーユニットの拡大断面図である。
【図8】図7に示す2D/3Dに切り替え可能なレンチキュラーユニットの動作を示す断面図である。
【図9】図7に示す2D/3Dに切り替え可能なレンチキュラーユニットの動作を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態による電圧の印加に応じて3Dディスプレイモードから2Dディスプレイモードに切り替え可能なレンチキュラーユニットの拡大断面図である。
【図11】図10及び図13にそれぞれ示したレンチキュラーユニットの動作を示す断面図である。
【図12】図10及び図13にそれぞれ示したレンチキュラーユニットの動作を示す断面図である。
【図13】本発明の一実施形態による電圧の印加に応じて3Dディスプレイモードから2Dディスプレイモードに切り替え可能なレンチキュラーユニットの拡大断面図である。
【図14】図10及び図13にそれぞれ示したレンチキュラーユニットの動作を示す断面図である。
【図15】図10及び図13にそれぞれ示したレンチキュラーユニットの動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態によるレンチキュラーユニット又はレンチキュラーレンズシートを形成して、用いる方法について詳細に説明する。本発明の実施形態において、様々な数値が開示されているが、このような数値は、特許請求の範囲に記載されていない場合、かかる数値はその特許請求の範囲を限定しないことに留意すべきである。本実施形態において、図面に付された同一の番号は、同一の部品又は同一の構成要素を示す。
【0018】
本発明の一実施形態によるレンチキュラーユニットは、図1に示したレンチキュラー手段15と交替して用いてもよい。
【0019】
図2を参照すると、レンチキュラーユニット又はレンチキュラーレンズシート50は、透明な基板52を含む。例えば、透明な基板52は、透明なガラス又はプラスチックであってもよく、その厚さは約7mmであってもよく、適切な厚さを有していればよい。透明な基板52上には、透明な電極、即ち、第1電極54、56が設けられる。透明電極54、56は、IZO(indium zinc oxide)及びITO(indium tin oxide)などの材料からなってもよい。この透明電極54、56の厚さは、約550Åであるのが好ましい。第1電極54、56は、後述するレンズのレンズ周期又はピッチを決めるように、列方向と平行に延びるストライプ状を有する。第1電極54、56と透明な基板52の上には、厚さ約500Å〜600Åの絶縁層58が形成される。絶縁層58は、シリコン酸化膜SiOx又はシリコン窒化膜SiNxのような絶縁材であってもよい。絶縁層58上には、印加された電位に応じてレンズ状に、又はレンズ状から変形可能な、実質的に平坦な表面を有する物質層60が配置される。この物質層60は、電界により活性化される電気活性ポリマー(field−activated electro−active polymers:field−activated EAPs)から選ばれた物質を含んでもよい。このような物質は軽量、高い圧電係数、機械的性質として良好な柔軟性と高い強度の性質などを有する。例えば、物質層60のEAPは、ポリフッ化ビニリデン(即ち、polyvinylidene fluoride:「PVDF」、フッ化ビニリデンのホモポリマー)、PVDF−TrFE(PVDF−trifluoroethylene、PVDFの共重合体)、シリコン、及びポリウレタンであってもよい。物質層60上には、第2電極又は共通電極62が設けられる。第2電極62は、高い強度、高い柔軟性又は伸縮性、及び低抵抗性を有する透明物質を含んでも良い。例えば、第2電極62は、グラフェン(graphene)層からなっても良い。
【0020】
グラフェンは、ベンゼン環の構造内に粗密に充たされた黒鉛の炭素原子の一層に与えられた名称である。炭素原子の一層は、約1.3Åの厚さを有する。しかしながら、用語「グラフェン」は、ベンゼン環の構造内に充たされた炭素原子の薄膜(1〜40層)をいう。
【0021】
第2電極62を構成するグラフェン層は、1層〜5層を有してもよい。層の数が増加するにともない、層の抵抗は減少する。しかしながら、多層になるほど、透明性の低下を招く。従って、透明性の低下を避けるため、第2電極62は、5層のグラフェン層を超えてはいけない。
【0022】
図示していないが、複数の電極56は、上段又は下段で相互に接続されてもよく、複数の電極54は、複数の電極56と反対の段で相互に接続されてもよい。
【0023】
第1電極54、56は、IZO又はITOの代わりに、グラフェンを含んでもよい。この場合において、グラフェンがIZO又はITO層の厚さよりも薄いために、全体的に厚さが薄くでき、全体的に柔軟性が向上される。
【0024】
図3と図4を参照すると、第1電極54、56と、第2電極又は共通電極62との間に印加された電圧に応じるレンチキュラーユニットの作動又は使用方法が説明される。
【0025】
図3を参照すると、2Dディスプレイモードにおいて、第1電極54、56と第2電極62の間に電圧の印加がない。そうすると、ディスプレイ装置(図示せず)から2D映像は、透明な基板52、第1電極54、56、絶縁層58、物質層60、及び第2電極62を透過し、これにより2D映像を見ることができるようになる。
【0026】
図4を参照すると、3Dディスプレイモードにおいて、電極54に第2電極62に関して+V電圧が印加され、電極56に第2電極62に関して−V電圧が印加される。そうすると、圧電効果により、電極54上の圧電物質は、厚さ方向に膨張し、電極56上の圧電物質は、厚さ方向に収縮する変位が発生する。結局、レンチキュラーユニットの前面は、凸型リブ状を有する、長く延びる平行のレンズアレイに変形される。従って、レンチキュラーユニット50におけるレンズアレイは、ディスプレイ装置上の一つの映像を観察者の左眼映像と右眼映像に分離し、これにより立体映像を見ることができるようになる。言い換えれば、図5に示したように、レンチキュラーユニット50は、従来のレンチキュラーレンズシートのような形状に変形される。
【0027】
図5に示したレンズの特性、即ち、焦点距離F、レンズの周期(又はピッチ)Pとディスプレイ装置上の画素(又は、カラーディスプレイにおいて副画素)からレンチキュラーユニット50のレンズまでの層の数を意味する積層の厚さTは、下記の数式(1)〜(3)により決められる。
【0028】
【数1】

【0029】
【数2】

【0030】
【数3】

【0031】
ここで、Mは倍率であり、VLは明視距離、Nは視点数、PLは行又は水平方向における画素の周期又はピッチであり、rは基板52の屈折率を表す。一方、倍率Mは、「視点の周期又はピッチ」/「水平方向における画素の周期又はピッチ」である。
【0032】
従って、視点の数と配置、視点の中央位置からレンチキュラーユニットの表面までの距離を表す明視距離とディスプレイ装置の画素のアレイが決定されると、レンズの特性は、上記数式(1)〜(3)により決定され、レンチキュラーユニットの設計が可能となる。各レンズのピッチは、視点の数と同一な数の行方向の画素を含む。
【0033】
レンチキュラーユニット50の凸型リブ状のレンズの一連の列は、垂直方向又は列方向に互いに平行に配列される。本発明の一実施形態において、レンチキュラーユニット50の凸型リブ状のレンズは、ディスプレイ装置の画素の列と平行に配列されてもよい。その代わりに、レンチキュラーユニット50の凸型リブ状のレンズは、ディスプレイ装置上の画素の列に対して傾いても良い。レンズの列と画素の列との間の傾斜角の決定方法は、Cornelis van Berkelらによって発明された米国特許第6,064,424号明細書に開示されている。
【0034】
本発明の一実施形態によるレンチキュラーユニット50の作製方法は、図6A〜図6Cを参照して説明する。
【0035】
図6Aを参照すると、ガラス又はプラスチックのような透明な材質を有する透明な基板52、透明な基板52上には、IZO、ITO又はグラフェンのような透明な導電性物質を有する透明な電極54、56のパターンが形成される。複数の電極56の間隔は、レンズピッチであってよい。IZO又はITOの透明電極は、スパッタリング(sputtering)技術による蒸着(deposition)とフォトリソグラフィ(photolithography)技術から形成されてもよい。
【0036】
透明な電極54、56がグラフェンからなる場合、グラフェン(1層〜5層)は適切な方法を用いて形成すればよい。例えば、グラフェンは、マイクロ波プラズマCVD(microwave plasma enhanced Chemical Vapor Depositon)法を用いて透明な基板52上にグラフェンを蒸着する。このとき、CH、C、又はCなどの炭化水素前駆物質(hydrocarbon precursor)と水素(H)ガスとアルゴン(Ar)ガスを用いる。
【0037】
グラフェンの厚さを得るため、マイクロ波パワーを適切に調整しながら、適切な時間の間、約300℃〜400℃の低温で、約300SCCM(Standard Cubic Centimeters per Minute)のCHと、約10SCCMのHガスと、約20SCCMのArガスを適用する。グラフェンの厚さは、上述のように、1層〜5層であってもよい。
【0038】
グラフェンの形成後、電極54、56をストライプ状に形成するため、エッチングをが行う。グラフェン上には、フォトレジストが塗布される。フォトレジストをパターン化するため、遠紫外線(deep UV)フォトレジストのようなリソグラフィ技術を用いてもよい。グラフェンの露出部は、例えば、O反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)工程でエッチングしてもよい。エッチングされないグラフェン上のフォトレジストは、除去溶液(strip slovent)で溶解し、除去する。
【0039】
電極54、56をストライプ状にパターニングした後、図6Bに示したように、SiOx又はSiNxのような絶縁物質からなる絶縁層58が、露出された透明な基板52と電極54、56上にCVD法のような適切な処理により蒸着される。
【0040】
図6Cを参照すると、厚さ方向の電界により厚さの変位を発生する圧電物質層60が絶縁層58上に形成される。本実施形態において、物質層60の材質は、PVDFである。PVDFの圧電性質は、厚さ方向の圧電係数D=13pC/V〜22pC/Vと、相対的誘電率=10〜12を有する。PVDFの機械的性質として、厚さ方向の弾性係数は1600MPa〜2000MPaである。物質層60は、適切な処理により形成される。例えば、PVDFは、上記特性を有するPVDFの圧電フィルムを付着することにより、又は溶液状態のPVDFのスリットノズルを通して、絶縁層58の全面上にコートした後、加熱焼成(baking)により硬化することにより形成できる。PVDFは、適切な印加電圧又は電位により、厚さ方向に変位する。従って、レンズの厚さが与えられると、PVDFに印加される電圧が決定される。
【0041】
PVDFの形成後、PVDFの上に共通電極又は第2電極62を構成するグラフェンが上述したように形成されてもよい。
【0042】
図7は、本発明の他の実施形態による電圧の印加に応じて2Dディスプレイモードから3Dディスプレイモードに切り替え可能なレンチキュラーユニットの拡大断面図である。図7に示す本発明の他の実施形態は、図2に示した第1電極54,56と第2電極62の位置が、図7に示した第1電極74、76と第2電極72の位置にそれぞれ対応するように、再配置が行われたこと以外には、図2に示した実施形態と同様である。
【0043】
第1電極74、76の電圧印加のための配線は、図2の電極54,56を参照して説明したように、第1電極74が上段又は下段で相互に接続され、電極第1電極76は、第1電極74の反対の段で相互に接続される。
【0044】
図7に示したレンチキュラーユニットは、図6A〜図6Cを参照して説明した形成方法と同様の方法により形成できることは、当該技術分野における通常の知識を有する者に理解されるだろう。
【0045】
図8と図9は、図7に示したレンチキュラーユニットの2Dディスプレイモードと3Dディスプレイモードそれぞれにおける動作を示す。
【0046】
図8のレンチキュラーユニットは、電圧Vの印加が無いために、図3を参照して説明した2Dディスプレイモードと同様に動作する。
【0047】
図9に示したように、レンチキュラーユニットを3Dディスプレイモードで動作させるため、共通電極72に関して電極76に−Vの電圧が印加される反面、共通電極72に関して、電極74に+Vの電圧が印加される。そうすると、圧電効果により、電極76下の圧電物質は厚さ方向に収縮し、電極74下の圧電物質は厚さ方向に膨張し、これにより、凸型リブ状の平行な円柱形レンズが生成される。その結果、レンチキュラーユニットは、ディスプレイ装置から一つの映像を左眼映像と右眼映像に分離して、立体映像を見ることができるようになる。
【0048】
本発明の他の実施形態は、3Dディスプレイモードから2Dディスプレイモードに切り替え可能なレンチキュラーユニットを提供する。
【0049】
図10と図13を参照すると、変形可能な物質層60は、3Dディスプレイのため、凸型リブ状を有する平行な円柱形レンズを有する。従って、図10と図13に示したレンチキュラーユニットは、立体映像を表示するためのものであるが、後述するように、2Dディスプレイモードでも動作する。さらに、図10に示した電極54、56、62と図13に示した電極72、74、76は、図6A〜図6C及び図7を参照して説明した形成方法と同様の方法を用いて形成することができる。
【0050】
図11は、図10に示した3Dディスプレイ用レンチキュラーユニットを3Dディスプレイのためのレンチキュラーユニットとして用いる配線図である。図12は、図10の3Dディスプレイ用レンチキュラーユニットを2Dディスプレイのためのレンチキュラーユニットに変形する配線図である。
【0051】
図11を参照すると、第1電極54、56と第2電極62には、電圧の印加がないので、レンチキュラーユニットは、通常のレンチキュラーレンズシートのように動作する。従って、図10のレンチキュラーユニットは、無メガネ方式の3Dディスプレイが可能となる。
【0052】
図12を参照すると、電極54と電極56にはそれぞれ、共通電極62に関して各々−V電圧と+V電圧が印加される。そのような電圧の印加により、電極54上の物質層60は厚さ方向に収縮し、電極56上の物質層60は厚さ方向に膨張することにより、物質層60の表面は平坦になる。従って、この場合において、レンチキュラーユニットはディスプレイ装置から2D映像を通過する透過板として作用する。
【0053】
図13を参照すると、図13に示すレンチキュラーユニットは、電極の配置を除いて、図10に示したレンチキュラーユニットと同様である。
【0054】
図14を参照すると、上述のように、3Dディスプレイのため、電極に電圧の印加がない。この場合において、図13のレンチキュラーユニットは、無メガネ方式の3Dディスプレイが可能となる。
【0055】
図15を参照すると、電極76と電極74の各々には、共通電極72に関して、各々+V電圧と−V電圧が印加される。そうすると、電極76下の物質層60は厚さ方向に膨張し、電極74下の物質層60は厚さ方向に収縮し、結局、物質層60の表面が平坦になる。従って、レンチキュラーユニットは、ディスプレイ装置からの2D映像を通過する透過板として作用する。その結果、図13に示したレンチキュラーユニットは、3Dディスプレイモードから2Dディスプレイモードに切り替えられる。
【0056】
上述した本発明の実施形態において、+V電圧及び−V電圧が物質層60に電位を生成するために使用され、これにより物質層60で凸型リブ状の平行な円柱形レンズ又は実質的に平坦な表面が形成される。これらの電圧値は、電位を生成するために用いてもよい電圧の一例に過ぎないことは、当該技術分野における通常の知識を有する者には理解できる。例えば、第1電極54、56又は74、76に異なる大きさの電圧を印加することにより、第1電極54、56と共通電極62、又は第1電極74、76と共通電極72に異なる大きさの電圧を印加することにより(この時、共通電極62と72は接地する必要はない)、図3、4、8、9、11、12、14及び15に示した場合と同様の効果を得ることができる。
【0057】
本発明の実施形態によるレンチキュラーレンズユニットは、任意の適切なディスプレイ装置と共に使用してもよい。例えば、本発明の実施形態によるレンチキュラーレンズユニットは、プラズマディスプレイパネル、LCDパネル、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、エレクトロウェッティングディスプレイ(EWD)パネルなどと共に使用してもよい。
【0058】
以上、本発明を具体的な実施形態を参照して詳細に説明してきたが、本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく様々な変更が可能であるということは、当業者には明らかである。従って、本発明は、かかる修正と変更が添付の特許請求の範囲とその均等物の範疇に属すれば、そのような修正と変更も全て包括されることを留意すべきである。
【符号の説明】
【0059】
50: レンチキュラーユニット又はレンチキュラーレンズシート
52: 基板
54、56、74、76: 透明電極又は第1電極
58: 絶縁層
60: 電界により変形可能な物質層
62,72: 第2電極又は共通電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基板と、
前記透明な基板上に配置された透明な第1電極と、
透明で伸縮可能な第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、前記第1電極と前記第2電極との間に印加された電位に応じて、レンズ状又は前記レンズ状から変形可能な物質層と、を含むことを特徴とするレンチキュラーユニット。
【請求項2】
前記第2電極は、グラフェンフィルムを含むことを特徴とする請求項1に記載のレンチキュラーユニット。
【請求項3】
前記第1電極は、グラフェンフィルムを含むことを特徴とする請求項2に記載のレンチキュラーユニット。
【請求項4】
前記変形可能な物質層は、圧電効果を有する電気活性ポリマー物質を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のレンチキュラーユニット。
【請求項5】
前記電気活性ポリマー物質が、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むことを特徴とする請求項4に記載のレンチキュラーユニット。
【請求項6】
前記レンズ状は、凸型であることを特徴とする請求項5に記載のレンチキュラーユニット。
【請求項7】
映像を表示するディスプレイ装置と、
前記ディスプレイ装置の前方に配置されたレンチキュラーユニットと、を含み、
前記レンチキュラーユニットは、
透明な基板と、
前記透明な基板上に配置された透明な第1電極と、
透明で伸縮可能な第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、前記第1電極と前記第2電極との間の電位に応じて変形可能な物質層と、を含み、
2Dディスプレイモード中または3Dディスプレイモード中のいずれかで、前記第1電極と前記第2電極との間に電位が印加されないことにより、前記レンチキュラーユニットの前記物質層は変形されず、
前記2Dディスプレイモード中または前記3Dディスプレイモード中のいずれかで、前記第1電極と前記第2電極との間に電位が印加されることにより、前記レンチキュラーユニットの前記物質層が変形されることを特徴とする無メガネ方式の2D/3D切り替え可能なディスプレイ装置。
【請求項8】
前記変形可能な物質は、圧電効果を有する電気活性ポリマー物質を含むことを特徴とする請求項7に記載の無メガネ方式の2D/3D切り替え可能なディスプレイ装置。
【請求項9】
前記第2電極は、グラフェンフィルムを含むことを特徴とする請求項8に記載の無メガネ方式の2D/3D切り替え可能なディスプレイ装置。
【請求項10】
前記第1電極は、グラフェンフィルムを含むことを特徴とする請求項9に記載の無メガネ方式の2D/3D切り替え可能なディスプレイ装置。
【請求項11】
前記電気活性ポリマー物質が、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むことを特徴とする請求項8に記載の無メガネ方式の2D/3D切り替え可能なディスプレイ装置。
【請求項12】
前記レンズ状は、凸型であることを特徴とする請求項11に記載の無メガネ方式の2D/3D切り替え可能なディスプレイ装置。
【請求項13】
透明な基板と、
前記透明な基板上に配置された透明な第1電極と、
透明で伸縮可能な第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、前記第1電極と前記第2電極との間の電位に応じて、凸型リブ状を有する円柱形レンズのアレイ又は前記円柱形レンズのアレイから変形可能な物質層と、を含むことを特徴とするレンチキュラーレンズシート。
【請求項14】
前記変形可能な物質層は、圧電効果を有する電気活性ポリマー物質を含むことを特徴とする請求項13に記載のレンチキュラーレンズシート。
【請求項15】
前記電気活性ポリマー物質は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むことを特徴とする請求項14に記載のレンチキュラーレンズシート。
【請求項16】
前記第2電極がグラフェンフィルムを含む又は前記第1電極及び前記第2電極がグラフェンフィルムを含むことを特徴とする請求項15に記載のレンチキュラーレンズシート。
【請求項17】
ディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネルの前方に配置されたレンチキュラーユニットを用いて映像を表示する映像表示方法であって、
2D映像中または3D映像中のいずれか一つを表示する第1ディスプレイモードでは、表示された映像が通過する前記レンチキュラーユニットの物質層が変形せず、
前記2D映像中または前記3D映像中のいずれか一つを表示する第2ディスプレイモードでは、表示された映像が通過する前記レンチキュラーユニットの物質層を変形させ、
前記レンチキュラーユニットの物質層を変形することは、前記物質層の平坦な表面を円柱形レンズアレイに変形するように、前記物質層に電位を印加する、又は前記円柱形レンズアレイを形成する前記物質層の表面を平坦な表面に変形するように、前記物質層に電位を印加することを特徴とする映像表示方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−215871(P2012−215871A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−73013(P2012−73013)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】