説明

無人搬送台車

【課題】カセットとフリーローラの摩擦接触により発塵した場合でも、この塵埃によるカセット内部やクリーンルームの汚染を防止するようにした無人搬送台車を提供すること。
【解決手段】部品等を収容するカセット1と、カセット1を載置するフリーローラ2と、フリーローラ2とステーション3のフリーローラ2との間でカセット1を移動させるプッシュプル移載装置4とを備えた無人搬送台車において、フリーローラ2の下方に、フリーローラ2の上方から空気を取り込む空気清浄装置5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュプル移載式の無人搬送台車に関し、特に、カセットとフリーローラの摩擦接触により発塵した場合でも、この塵埃によるカセット内部やクリーンルームの汚染を防止するようにした無人搬送台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体や液晶の製造工場等のクリーンルームにおいては、半導体や液晶の製造設備を設置したクリーンルーム内で無人搬送台車を走行させ、部品を収容したカセットの搬送を行っている。
無人搬送台車は、前輪と後輪を有する自走式の箱状のものからなり、通常はステーションとの間でカセットの受け渡しを行うスライドフォークを備えているが、近年では、プッシュプル移載式の無人搬送台車も提案されている。
【0003】
プッシュプル移載式の無人搬送台車は、カセットを載置するフリーローラと、該フリーローラとステーションとの間でカセットを移動させるプッシュプル移載装置とを備えている。
プッシュプル移載装置は、移載方向に伸縮するアームに、カセットの前後に出没する可動ストッパを備え、この可動ストッパによりフリーローラで受けたカセットを押し引きし、別途フリーローラを備えたステーションとの間で移載を行う。
【0004】
このようなプッシュプル移載式の無人搬送台車は、カセットをフリーローラで支持するためモーメント荷重がかからず、カセット重量を支持するだけなので無人搬送台車の軽量化を図ることができる。
しかし、その一方で、カセットとフリーローラがベアリングの抵抗及びローライナーシャ分だけ摩擦接触することから、この接触部付近から発塵する可能性を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の無人搬送台車が有する問題点に鑑み、カセットとフリーローラの摩擦接触により発塵した場合でも、この塵埃によるカセット内部やクリーンルームの汚染を防止するようにした無人搬送台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の無人搬送台車は、部品等を収容するカセットと、該カセットを載置するフリーローラと、該フリーローラとステーションのフリーローラとの間でカセットを移動させるプッシュプル移載装置とを備えた無人搬送台車において、フリーローラの下方に、フリーローラの上方から空気を取り込む空気清浄装置を設けたことを特徴とする。
【0007】
この場合において、空気清浄装置がカセットの内部から空気を取り込むとともに、フリーローラに支持されるカセットの底桟の上に外部と連通する吸気孔を設け、該吸気孔の上に、吸い込まれた空気をフリーローラ側に下降させる風向板を設けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の無人搬送台車によれば、部品等を収容するカセットと、該カセットを載置するフリーローラと、該フリーローラとステーションのフリーローラとの間でカセットを移動させるプッシュプル移載装置とを備えた無人搬送台車において、フリーローラの下方に、フリーローラの上方から空気を取り込む空気清浄装置を設けることから、カセットとフリーローラの摩擦接触により発塵した場合でも、この塵埃を吸い込んで回収することができ、カセット内部やクリーンルームの汚染を防止することができる。
【0009】
この場合、空気清浄装置がカセットの内部から空気を取り込むとともに、フリーローラに支持されるカセットの底桟の上に外部と連通する吸気孔を設け、該吸気孔の上に、吸い込まれた空気をフリーローラ側に下降させる風向板を設けることにより、カセット側からフリーローラの下方へダウンフローを形成し、カセット底部における塵埃の巻き上げを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の無人搬送台車の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図4に、本発明の無人搬送台車の一実施例を示す。
この無人搬送台車は、例えば、大型液晶基板等を収容するカセット1と、該カセット1を載置するフリーローラ2と、該フリーローラ2とステーション3のフリーローラ2との間でカセット1を移動させるプッシュプル移載装置4とを備えている。
そして、この無人搬送台車は、フリーローラ2の下方に、フリーローラ2の上方からローラの間を通して空気を取り込む空気清浄装置5を設けている。
【0012】
カセット1は、フリーローラ2に支持される底桟11の上に外部と連通する吸気孔12を設けるとともに、該吸気孔12の上に、吸い込まれた空気をフリーローラ2側に下降させる風向板13を設けている。
これにより、空気清浄装置5による空気の流れを利用し、カセット側からフリーローラ2の下方へダウンフローを形成して、カセット底部における塵埃の巻き上げを防止するようにしている。
また、カセット1の底桟11の底面には、摩擦による粉塵の発生を防止する樹脂ライナー(図示省略)が固定されている。
一方、カセット1の底桟11は、変形や製作誤差等に起因して、フリーローラ2に乗り上げるように移動することが予想されるので、底桟11の端部は面取りを行い、ショックを吸収できるようにし、カセット1がフリーローラ2上をスムーズに移動できるようにしている。
また、カセット1は、フリーローラ2上での移動防止や位置決めのために、プッシュプル移載装置4の可動ストッパ42で固定されるが、可動ストッパ42の当たり部分には桟を入れて変形等を防止するようにしている。
【0013】
無人搬送台車のフリーローラ2は、カセット1の両側の底桟11を支持できるように2列のローラコンベアを形成し、その上でカセット1が押し引きされることにより自由に回転する。
金属同士の接触は粉塵が発生するので、フリーローラ2は樹脂製とされ、この樹脂製ローラで受けることによる静電気帯電が発生する場合は、除電ブラシやイオナイザ等の静電気防止対策を施すようにしている。
また、走行中のカセット1の横揺れによる発塵を防止するため、プッシュプル移載装置4の可動ストッパ42で、移載方向の前後から付勢した状態でカセット1を押さえ込むようにしている。
なお、移載方向の両側にカセットガイド(図示省略)は設けるが、通常運用では接触しない隙間を取り、目的は非常停止時のカセット落下防止としている。
【0014】
ステーション3は、例えば、ロード・アンロード置台からなり、無人搬送台車と同様の2列のフリーローラ2を備えている。
フリーローラ2は樹脂製とされ、この樹脂製ローラで受けることによる静電気帯電が発生する場合は、除電ブラシやイオナイザ等の静電気防止対策を施すようにしている。
加工処理設備側には固定ストッパ(図示省略)を設け、ロボットとの相対距離を一定に保つ。無人搬送台車側には、カセット1をばね付の可動ストッパ42で固定ストッパに押し付けて位置決めを行う。
このステーション3においても、フリーローラ2の下方には、フリーローラ2の上方から空気を取り込む空気清浄装置(図示省略)が設けられている。
【0015】
プッシュプル移載装置4は、2列のフリーローラ2の間に配設されており、移載方向に伸縮するアーム41に、カセット1の前後に出没する可動ストッパ42を備え、この可動ストッパ42によりフリーローラ2で受けたカセット1を押し引きし、別途フリーローラ2を備えたステーション3との間で移載を行う。
具体的には、無人搬送台車の上にカセット1があるときは、図3(a)に示すように、可動ストッパ42をカセット1の前後に突出させておき、走行中にカセット1がフリーローラ上を移動しないようにしている。
カセット1をステーション3に移載するときは、図3(b)〜(c)に示すように、可動ストッパ42が突出した状態でアーム41を伸ばし、カセット1を押してステーション3の所定位置まで移動させる。
そして、図4(a)〜(c)に示すように、可動ストッパ42を退入させ、カセット1をステーション3に残した状態でアーム41を元に縮める。
なお、プッシュプル移載装置4は、移載方向を180°変換するように、フリーローラ2と共に旋回可能に設けることもできる。
【0016】
空気清浄装置5は、無人搬送台車及びステーション3にそれぞれ設置されており、カセット1とフリーローラ2の接触部を局所的に吸気するように、フリーローラ2の周囲にダクト51を設け、該ダクト51を介して、フリーローラ2の上方から空気を取り込むようにしている。
各空気清浄装置5は、1列のフリーローラ2に対し、特に限定されるものではないが、例えば、3台のFFU(ファンフィルタユニット)を配設することにより構成されており、発塵を上部へ巻き上げないよう吸引するとともに、排気は無人搬送台車又はステーション3の下側にクリーンエアとして排気する。
また、各空気清浄装置5は、載置したカセット1の内外から空気を取り込むようにしており、フリーローラ2に支持されるカセット1の底桟11の上に外部と連通する吸気孔12を設け、該吸気孔12の上に、吸い込まれた空気をフリーローラ2側に下降させる風向板13を設けることにより、カセット側からフリーローラ2の下方へダウンフローを形成し、カセット底部における塵埃の巻き上げを防止している。
【0017】
かくして、本実施例の無人搬送台車によれば、部品等を収容するカセット1と、該カセット1を載置するフリーローラ2と、該フリーローラ2とステーション3のフリーローラ2との間でカセット1を移動させるプッシュプル移載装置4とを備えた無人搬送台車において、フリーローラ2の下方に、フリーローラ2の上方から空気を取り込む空気清浄装置5を設けることから、カセット1とフリーローラ2の摩擦接触により発塵した場合でも、この塵埃を吸い込んで回収することができ、カセット内部やクリーンルームの汚染を防止することができる。
【0018】
そして、空気清浄装置5がカセット1の内部から空気を取り込むとともに、フリーローラ2に支持されるカセット1の底桟11の上に外部と連通する吸気孔12を設け、該吸気孔12の上に、吸い込まれた空気をフリーローラ2側に下降させる風向板13を設けることにより、カセット側からフリーローラ2の下方へダウンフローを形成し、カセット底部における塵埃の巻き上げを防止することができる。
【0019】
以上、本発明の無人搬送台車について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の無人搬送台車は、カセットとフリーローラの摩擦接触により発塵した場合でも、この塵埃によるカセット内部やクリーンルームの汚染を防止するという特性を有していることから、クリーンルームで使用するプッシュプル移載式の無人搬送台車の用途に広く好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の無人搬送台車の一実施例を示し、(a)はフリーローラと空気清浄装置を移載方向の断面図、(b)は同移載方向に直交する断面図、(c)はカセットとフリーローラを示す拡大断面図である。
【図2】同無人搬送台車を示す斜視図である。
【図3】プッシュプル移載装置によるカセットの移載を示し、(a)はその第1工程図、(b)は第2工程図、(c)は第3工程図である。
【図4】プッシュプル移載装置によるカセットの移載を示し、(a)はその第4工程図、(b)は第5工程図、(c)は第6工程図である。
【符号の説明】
【0022】
1 カセット
11 底桟
12 吸気孔
13 風向板
2 フリーローラ
3 ステーション
4 プッシュプル移載装置
41 アーム
42 可動ストッパ
5 空気清浄装置
51 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品等を収容するカセットと、該カセットを載置するフリーローラと、該フリーローラとステーションのフリーローラとの間でカセットを移動させるプッシュプル移載装置とを備えた無人搬送台車において、フリーローラの下方に、フリーローラの上方から空気を取り込む空気清浄装置を設けたことを特徴とする無人搬送台車。
【請求項2】
空気清浄装置がカセットの内部から空気を取り込むとともに、フリーローラに支持されるカセットの底桟の上に外部と連通する吸気孔を設け、該吸気孔の上に、吸い込まれた空気をフリーローラ側に下降させる風向板を設けたことを特徴とする請求項1記載の無人搬送台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−265543(P2008−265543A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111600(P2007−111600)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】