説明

無人走行体を用いた環境情報の取得システム

【課題】粉塵、煙又は水蒸気が立ち込める劣悪な環境下においても鮮明な環境情報を取得可能な無人走行体を用いた環境情報の取得システムを提供する。
【解決手段】遠隔操縦装置305を用いてオペレータにより遠隔操縦される無人走行体5に、走査式二次元測距装置105と、前方監視用の光学カメラ(メインカメラ)113を搭載する。また、安全な場所には、遠隔操縦装置305を備えた制御装置本体301を設置する。制御装置本体301は、遠隔操縦装置305の操作内容に応じた制御信号を出力して無人走行体5の走行制御を行いながら、走査式二次元測距装置105の検出データを1走査毎に、制御装置本体301に接続されたUSBメモリ306に記憶する。また、光学カメラ113の撮影映像もUSBメモリ306に記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人走行体を用いて人が立ち入り難い危険な現場の環境情報を取得するシステムに係り、特に、粉塵、煙又は水蒸気が立ち込める劣悪な環境下においても鮮明な環境情報を安全に取得する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害や事故で破壊された構築物、例えばビルディングやトンネル内の被害状況を確認するための手段としては、作業員の安全を確保するため、光学カメラを搭載した無人走行体が用いられている。無人走行体は、走行機構にクローラを備えるなど、悪路を走行可能な構成になっており、光学カメラが撮影した映像を安全な場所に設置された表示装置に無線送信する。無人走行体のオペレータは、表示装置に表示された映像を見ることによって、構築物内の環境情報を得ることができる。光学カメラを搭載した無人走行体としては、特許文献1,2に開示されたものを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−341937号公報
【特許文献2】特許第3679375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
言うまでもなく、構築物内の正確な被害状況を把握するためには、鮮明な環境情報を取得することが不可欠である。しかしながら、災害や事故で破壊された構築物内は、多くの場合、粉塵、煙又は水蒸気が立ち込めているため、光学カメラによっては鮮明な環境情報を取得することが困難である。したがって、光学カメラを搭載した無人走行体は、適用可能な現場が限定されるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、粉塵、煙又は水蒸気が立ち込める劣悪な環境下においても鮮明な環境情報を取得可能な無人走行体を用いた環境情報の取得システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するため、遠隔操縦装置を用いてオペレータにより遠隔操縦される無人走行体と、該無人走行体に搭載された走査式二次元測距装置及び光学カメラと、前記走査式二次元測距装置の検出データ及び前記光学カメラの撮影映像を記憶する情報記憶装置と、前記遠隔操縦装置、前記無人走行体及び前記情報記憶装置の駆動を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記遠隔操縦装置の操作内容に応じた制御信号を出力して前記無人走行体の走行制御を行いながら、前記走査式二次元測距装置の検出データを1走査毎に前記情報記憶装置に記憶すると共に、前記光学カメラの撮影映像を前記情報記憶装置に記憶すること特徴とする。
【0007】
走査式二次元測距装置は、光学式カメラと異なり、粉塵、煙又は水蒸気が立ち込める劣悪な環境下においても鮮明な環境情報を取得可能であるので、これを無人走行体に搭載することにより、無人走行体を用いた環境情報の取得システムの適用範囲を拡げることができる。また、走査式二次元測距装置と光学式カメラの双方を備えるので、粉塵、煙又は水蒸気のない環境下では鮮明なカメラ映像が得られると共に、当該カメラ画像と走査式二次元測距装置の検出データの双方を参照することによって、より詳細な環境情報を取得することができる。
【0008】
また本発明は、前記構成の無人走行体を用いた環境情報の取得システムにおいて、前記走査式二次元測距装置は、光源から出射されたレーザ光を回転ミラーで反射して透明窓から放射状に照射し、前記無人走行体の周囲に存在する床面、壁面及び天井面等で反射されて前記透明窓に戻った反射光を、集光レンズを用いて受光素子に集光すると共に、内蔵された信号処理部が、前記光源からのレーザ光の出射タイミングと前記受光素子への反射光の入射タイミングの差から、レーザ光の走査方向に沿った二次元距離データを算出するものであることを特徴とする。
【0009】
本構成の走査式二次元測距装置は、信号処理部を内蔵するので、制御装置の負担を小さくでき、表示装置への三次元画像の表示を円滑に行うことができる。
【0010】
また本発明は、前記構成の無人走行体を用いた環境情報の取得システムにおいて、前記制御装置は、前記情報記憶装置に記憶された1走査毎の前記走査式二次元測距装置の検出データをその値に応じた複数のゾーンに分類し、各ゾーン毎に輝点の濃淡やカラーを割り当てると共に、これら輝点の濃淡やカラーが割り当てられた1走査毎の前記走査式二次元測距装置の検出データを時間軸に沿って合成し、距離の変化が輝点の濃淡やカラーで表現された三次元画像を表示装置に表示することを特徴とする。
【0011】
かかる構成によると、走査式二次元測距装置から構築物の床面、壁面又は天井面までの距離の変化を輝点の濃淡やカラーで知ることができるので、表示装置に表示された三次元画像から構築物内の環境情報を明瞭に認識することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る無人走行体を用いた環境情報の取得システムは、無人走行体に走査式二次元測距装置を搭載したので、粉塵、煙又は水蒸気が立ち込める劣悪な環境下においても、走査式二次元測距装置の検出データから鮮明な環境情報を取得することができる。また、無人走行体に走査式二次元測距装置と光学式カメラの双方を搭載したので、粉塵、煙又は水蒸気のない環境下では鮮明なカメラ映像が得られると共に、当該カメラ画像と走査式二次元測距装置の検出データの双方を参照することによって、より詳細な環境情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る無人走行体の遠隔操縦システムの第1例を示す図である。
【図2】実施形態に係る無人走行体の遠隔操縦システムの第2例を示す図である。
【図3】実施形態に係る無人走行体の遠隔操縦システムの第3例を示す図である。
【図4】実施形態に係る無人走行体の本体部分の斜視図である。
【図5】実施形態に係る無人走行体のサブクローラ、クローラベルト及び蓋体を取り外した状態の斜視図である。
【図6】実施形態に係る無人走行体のサブクローラを取り外した状態の側面図である。
【図7】実施形態に係る蓋体及び取付台の斜視図である。
【図8】実施形態に係る駆動プーリの要部断面図である。
【図9】実施形態に係るサブクローラの分解斜視図である。
【図10】搭載機器が搭載された実施形態に係る有線無人走行体の斜視図である。
【図11】搭載機器が搭載された実施形態に係る無線無人走行体の斜視図である。
【図12】無線無人走行体に搭載される搭載機器の他の例を示す模式図である。
【図13】走査式二次元測距装置の検出データから求められる立体画像の一例を示す図である。
【図14】走査式三次元測距装置の検出データから求められる立体画像の一例を示す図である。
【図15】実施形態に係る第1及び第2の操作卓の構成図である。
【図16】第1操作卓に表示される有線無人走行体の駆動制御画面を示す図である。
【図17】第2操作卓に表示される無線無人走行体の駆動制御画面を示す図である。
【図18】無人走行体の運用時における第1及び第2の操作卓の配列を示す図である。
【図19】手持ちコントローラの斜視図である。
【図20】走査式二次元測距装置の検出データを示す表図である。
【図21】走査式二次元測距装置の検出データから求められる立体画像と放射線検出器の検出データの合成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係る無人走行体の遠隔操縦システムにつき、図面を用いて項目ごとに説明する。
【0015】
〈遠隔操縦システムのシステム構成〉
図1に、本発明に係る無人走行体遠隔操縦システムの第1例を示す。この図から明らかなように、本例の遠隔操縦システムは、LANケーブル1を介して接続された第1及び第2の操作卓2,3と、第1操作卓2から出力される制御信号により遠隔操縦される有線無人走行体4と、第2操作卓3から出力される制御信号により遠隔操縦される無線無人走行体5と、第2操作卓3と有線無人走行体4とを接続する通信ケーブル6,7と、通信ケーブル6と通信ケーブル7との間に配置された無線中継装置8と、有線無人走行体4と無線無人走行体5とを接続する無線通信装置9と、通信ケーブル6を巻回したケーブルリール10とから主に構成されている。なお、無線中継装置8は、通信ケーブル6の一端に接続された親機8aと、通信ケーブル7の一端に接続された子機8bとからなる。また、無線通信装置9は、有線無人走行体4に搭載された親機9aと、無線無人走行体5に搭載された子機9bとからなる。有線無人走行体4は、通信ケーブル6、無線中継装置8及び通信ケーブル7を介して第1操作卓2から伝送される制御信号により遠隔操縦される。また、無線無人走行体5は、通信ケーブル6、無線中継装置8、通信ケーブル7及び無線通信装置9を介して第2操作卓3から伝送される制御信号により遠隔操縦される。
【0016】
このように、第1操作卓2と有線無人走行体4とをつなぐ信号経路の一部、及び第2操作卓3と無線無人走行体5とをつなぐ信号経路の一部を有線化すると、有線部分においては信号の伝送を安定に行うことができるので、トータル的に第1操作卓2と有線無人走行体4との間、及び第2操作卓3と無線無人走行体5との間の遠距離通信を安定なものにすることができる。また、通信ケーブル6と通信ケーブル7との間に親機8aと子機8bとからなる無線中継装置8を備えたので、例えば原子力発電プラントに設置されるエアロックALのように、通信ケーブルを直接配線することができない部位を有する現場にも、当該部位の内外に無線中継装置8の親機8aと子機8bを配置することにより、本システムの適用が可能になる。
【0017】
通信ケーブル6,7としては、ツイストペアケーブルや光ファイバケーブルを用いることができる。ツイストペアケーブルは、電線を2本ずつ撚り合わせて対にしたものであり、平行型の電線を用いる場合に比べてノイズの影響を抑制することができる。また、通信ケーブル6,7として光ファイバケーブルを用いると、電線を用いる場合よりも、第1操作卓2と有線無人走行体4との間、及び第2操作卓3と無線無人走行体5との間の信号伝送速度を高速化することができる。なお、通信ケーブル6,7として共通のものを用いる必要はなく、例えば通信ケーブル6として光ファイバケーブルを用い、通信ケーブル7としてツイストペアケーブルを用いるなど、適宜使い分けることができる。通信ケーブル6については、信号伝送方式による制限を受け、後述するVDSL(Very high-bit-rate Digital Subscriber Line)方式を用いる場合、最大伝送距離が500〜800m程度に制限される。一方、通信ケーブル7の長さについては、有線無人走行体4に搭載可能な重量による制限を受ける。本実施形態では、500mの通信ケーブル7を搭載した。
【0018】
第1操作卓2と有線無人走行体4との間、及び第2操作卓3と無線無人走行体5との間の信号伝送方式としては、VDSL方式が好適である。VDSLは、1対の信号ケーブルを用いて通信を行う非対称速度型の通信方式であり、有線無人走行体4から第1操作卓2への信号の送信及び無線無人走行体5から第2操作卓3への信号の送信を高速で行うことができるからである。このように、ツイストペアケーブルとVDSLの組み合わせを用いて無人走行体4,5の遠隔操縦システムを構築することにより、操作卓2,3と無人走行体4,5との間の通信を安定かつ高速で行うことができる。
【0019】
無線通信装置9の親機9a及び子機9bとしては、無線LAN(Local Area Network)用の無線通信機器が用いられる。無線LAN用の通信機器は、安価にして汎用性に優れ、かつ電波法令の規制を受けない特定小電力無線局に分類されるので、これを用いることにより、有線無人走行体4と無線無人走行体5との間の無線通信系を簡易に構築できると共に、その使い勝手を良好なものにすることができる。
【0020】
図2に、本発明に係る無人走行体遠隔操縦システムの第2例を示す。この図から明らかなように、本例の無人走行体遠隔操縦システムは、無線中継装置8を省略したことを特徴とする。通信ケーブル6と通信ケーブル7とは、中継器11を介して接続される。その他については、第1例に係る無人走行体遠隔操縦システムと同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。本例の無人走行体遠隔操縦システムは、例えば原子力発電プラントに設置されるエアロックのように、通信ケーブルを直接通すことができない部位を有しない現場に適用することができる。また、現場に搬入する前の練習用にも利用することができる。
【0021】
図3に、本発明に係る無人走行体遠隔操縦システムの第3例を示す。この図から明らかなように、本例の無人走行体遠隔操縦システムは、第1例に係る無人走行体遠隔操縦システムにおいて、第2操作卓3と無線無人走行体5との間に無線LAN12を追加すると共に、第2操作卓3側に、第2操作卓3と無線無人走行体5との間の通信ルートを、通信ケーブル6,7側又は無線LAN12側に切り換えるための通信切換スイッチ13を備えたことを特徴とする。その他については、第1例に係る無人走行体遠隔操縦システムと同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。本構成によると、通信切換スイッチ13を無線LAN12側に切り換えることにより、有線無人走行体4を介さずに無線無人走行体5を第2操作卓3をからの指令によって直接走行させることができる。よって、例えば制御装置の設置位置からの見通りが可能な現場における無線無人走行体の短距離活動や操作訓練などに利用することができ、無人走行体の遠隔操縦システムの実用性を高めることができる。
【0022】
〈無人走行体の機体構成〉
次に、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の機体構成につき、図4乃至図9を用いて説明する。有線無人走行体4及び無線無人走行体5とも、機体の基本構造については同一である。
【0023】
図4乃至図9に示すように、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の機体は、箱型に形成された本体部21と、本体部21の前方左側、前方右側、後方左側及び後方右側にそれぞれ配置される第1乃至第4の走行用プーリ22,23,24,25と、本体部21の後部に取り付けられる第3及び第4の走行用プーリ24,25を回転駆動する第1及び第2のインホイールモータ26,27と、本体部21の左側前方、右側前方、左側後方及び右側後方にそれぞれ取り付けられる第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31と、これらの各サブクローラ28〜31を個別に回転駆動する第1乃至第4の電動モータ32,33,34,35と、本体部21の上面開口部を覆う蓋体36と、蓋体36に連結される搭載機器の取付台37と、第1走行プーリ22と第3走行プーリ24に巻き掛けられる無端状の第1クローラベルト38と、第2走行プーリ23と第4走行プーリ25に巻き掛けられる無端状の第2クローラベルト39とから主に構成されている。第1及び第2のインホイールモータ26,27並びに第1乃至第4の電動モータ32,33,34,35には、それぞれ出力軸(ロータ)の回転数及び回転方向を検出するエンコーダ26a,27a,32a,33a,34a,35aが備えられる。
【0024】
本体部21は、過酷な運用にも耐えられるように、アルミニウム等の金属材料や、ガラス繊維強化プラスチック又は炭素繊維強化プラスチック等の繊維強化プラスチックをもって作製される。図5に示すように、本体部21は、底面板41と、該底面板41から垂直に起立された前面板42、後面板43及び左右側面板44,45と、左右側面板44,45の外側部分に設けられた左右の上面パネル46,47をもって形成されており、前面板42及び後面板43の外面には、第1乃至第4の走行用プーリ22,23,24,25を支持するための4組のセンターフレーム48及びサイドフレーム49が外向きに突設されている。金属材料を用いて本体部21を形成する場合、これらの各部材41〜49は、本体部21の剛性を高めるため、蟻と蟻溝とから構成される継手構造を用いて組み立てることが望ましい。また、本体部21がアルミニウムからなる場合には、底面板41の下面には、ガラス繊維強化プラスチックや炭素繊維強化プラスチックなどからなる補強板を裏打ちすることが望ましい。
【0025】
図5及び図6に示すように、底面板41の下面には、第1及び第2のクローラベルト38,39を案内するための案内部材50が設けられる。案内部材50の中央部は、複数のローラを並列してなるローラ連結体51をもって構成されており、このローラ連結体51は、案内部材の前後部よりも下方に配置されている。したがって、図6に示すように、第1及び第2のクローラベルト38,39は、ローラ連結体51に案内されて、本体部21の中央部において下向きに湾曲する。これにより、第1及び第2のクローラベルト38,39の接地面積を小さくすることができるので、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の旋回性能を高めることができる。
【0026】
本体部21の中央空間52、即ち、底面板41、前面板42、後面板43、左右側面板44,45及び蓋体36をもって形成される空間内には、有線無人走行体4及び無線無人走行体5を遠隔操縦するに必要な制御回路及び通信回路や、ジャイロセンサ、電圧計及び温度計などのセンサ類が収納される。センサ類の出力信号は、操作卓2,3に送信される。なお、ジャイロセンサは、本体部21の傾斜を計測する機器であり、中央空間52の中央部の底面板41上に設定される。また、本体部21の側面空間53、即ち、底面板41、前面板42、後面板43、左右側面板44,45及び上面パネル46,47をもって形成される空間内には、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の電源である電池パック等が収納される。上面パネル46,47は、側面空間53の放熱を確保するため、メッシュボードや有孔ボードを用いて形成される。これに対して、蓋体36は、本体部21の剛性を高めるため、アルミニウム板等の高剛性の板材をもって形成される。なお、側面空間53の開放端部には、収納物を保護するためのカバー部材を取り付けることもできる。
【0027】
図7に示すように、蓋体36の上面には、蟻状のセンターバー36aが形成されており、蟻溝状の連結部37aを有する取付台37を着脱可能に連結できるようになっている。蓋体36と取付台37は、図示しないビスをもって着脱可能に固定される。また、蓋体36と本体部21も、図示しないビスをもって着脱可能に固定される。このように、ビスを用いて蓋体36を本体部21の上面に固定すると、中央空間52内の機密性を高めることができるので、中央空間52内に収納された制御回路等の保護効果を高めることができる。
【0028】
第1乃至第4の走行用プーリ22,23,24,25のうち、本体部21の前面板42側に配置される第1及び第2の走行用プーリ22,23は、インホイールモータ26,27を内蔵しない従動プーリである。図5に示すように、これら第1及び第2の走行用プーリ22,23は、金属製円筒体からなる回転軸61の外面に、1つの金属製プーリ62と2つのゴム製プーリ63,64とを所定の間隔を隔てて、キー嵌合又は圧入等の手段により固定した構成になっている。かかる構成とすることにより、回転軸61の外面に金属製プーリ62とゴム製プーリ63,64とを容易かつ強固に固定することができる。
【0029】
金属製プーリ62は、主として第1及び第2のクローラベルト38,39に適度の張力を付与するもので、第1及び第2のクローラベルト38,39の駆動力を受ける機能を有する。したがって、金属製プーリ62の外周面には、図5に示すように、クローラベルト38,39の内面に形成された図示しない係合歯と噛み合わされる係合突起62aが一定ピッチで形成される。これに対して、ゴム製プーリ63,64は、本体部21に作用する衝撃力の緩和、クローラベルト38,39の脱落防止、及び走行用プーリ22,23とクローラベルト38,39との間に巻き込まれた砂泥等の排出を行う機能を果たしている。したがって、ゴム製プーリ63,64の外周面には、図5に示すように、クローラベルト38,39の内面に形成された図示しない係合歯と噛み合わされる係合突起63a,64aが一定ピッチで形成されると共に、砂泥等を排出するための凹溝63b,64bが形成される。
【0030】
これら第1及び第2の走行用プーリ22,23は、図5に示すように、両端部に固定された円板状の連結板65及び連結板65の中心部に固定された支持軸66を介して、本体部21の前面板42に設けられたセンターフレーム48及びサイドフレーム49に回転自在に取り付けられる。
【0031】
一方、本体部21の後面板43側に配置される第3及び第4のプーリ24,25は、インホイールモータ26,27により回転駆動される原動プーリである。これら第3及び第4のプーリ24,25も、基本的な構造に関しては上述した第1及び第2のプーリ22,23と同じであるので、重複を避けるため、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。図8に示すように、原動プーリである第3及び第4のプーリ24,25の回転軸61内には、インホイールモータ26,27が内蔵されている。インホイールモータ26,27のステータ26b,27bは、本体部21のセンターフレーム48に固定され、ロータ26c,27cは、第3及び第4の走行用プーリ24,25の端部に設けられた連結板65に連結される。したがって、インホイールモータ26,27の回転は、連結板65を介して第3及び第4の走行用プーリ24,25に伝達され、それぞれ第1及び第2のクローラベルト38,39を駆動する。なお、図8には、インナロータ型のインホイールモータを用いた例を示したが、アウタロータ型のインホイールモータを用いることもできる。
【0032】
また、図5の例においては、第1乃至第4の走行用プーリ22,23,24,25として、回転軸61の外面に1つの金属製プーリ62と2つのゴム製プーリ63,64とを所定の間隔を隔てて固定したものを用いたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、他の構成のものを用いることもできる。例えば、クローラベルト38,39の幅全体にわたる幅を備えた1つの金属製プーリからなるものを用いることもできるし、クローラベルト38,39の幅全体にわたる幅を備えた1つのゴム製プーリからなるものを用いることもできる。
【0033】
第1及び第2のクローラベルト38,39は、ゴム製あるいは金属製のものを用いることができるが、ゴム製プーリ63,64のダメージを小さくできること、案内部材50の摩耗を抑制できること、及び接地圧を小さくできて本体部21の保護効果が高いことから、ゴム製ベルトを用いる方が好ましい。また、クローラベルト38,39は、大きな駆動力を走行路に伝達できること、脱輪しにくいこと、及び悪路においても本体部21を安定に保持しやすいことから、幅が広いものを用いることが望ましい。本実施形態においては、図4に示すように、本体部21のほぼ半分を覆う幅のクローラベルト38,39を用いている。
【0034】
上述したように、第1及び第2のクローラベルト38,39の内面には、第1乃至第4の走行用プーリ22,23,24,25に形成された係合突起62a,63a,64aと噛み合わされる係合歯が形成されており、各走行用プーリ22,23,24,25との間の滑りを防止している。したがって、インホイールモータ26,27に内蔵されたエンコーダ26a,27aの出力信号をカウントすることにより、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の走行距離を正確に求めることができる。また、サブクローラベルト78の外面には、悪路又は坂路における走行性を高めるためのスタッド(図示省略)が形成される。なお、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の走行速度は、障害物への衝突を容易に回避できるようにするため、仮に障害物に衝突した際にも故障を回避できるようにするため、さらには必要な作業効率が得られるようにするため、平坦な良路での歩行速度が0.5〜1.7m/秒程度となるように設計される。なお、人間の歩行速度は、1.2m/秒以内(時速4Km程度)である。
【0035】
第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31は、悪路や坂路を走行する際におけるクローラベルト38,39の補助動力として用いられるものであり、図9に示すように、電動モータ32,33,34,35のロータ32b,33b,34b,35bに固着された第1プーリ71と、支持軸66の先端部に軸受72を介して回転自在に取り付けられた第2プーリ73と、第1及び第2のプーリ71,73に掛け回された無端状の動力伝達ベルト74と、一端が第2プーリ73に固着された旋回アーム75と、支持軸66の先端部に固着された第3プーリ76と、旋回アーム75の先端部に回転自在に取り付けられた第4プーリ77と、第3及び第4のプーリ76,77に掛け回された無端状のサブクローラベルト78とから主に構成される。
【0036】
第1乃至第4の電動モータ32,33,34,35は、それぞれセンターフレーム48とサイドフレーム49の間の底面板41上に固定される。第1及び第2のプーリ71,73の外周面とこれに掛け回される動力伝達ベルト74の内面には、図示しない係合歯が形成されており、互いに接動する各部材間の滑りを防止している。また、第3及び第4のプーリ76,77の外周面とこれに掛け回されるサブクローラベルト78の内面についても図示しない係合歯が形成されており、両者間の滑りを防止している。さらに、サブクローラベルト78の外面には、悪路又は坂路における走行性を高めるための図示しないスタッドが形成されている。したがって、本例のサブクローラ28,29,30,31は、第1乃至第4の電動モータ32,33,34,35の駆動力を確実に路面に伝達することができ、クローラベルト38,39の駆動力だけでは走行不可能な悪路又は坂路における有線無人走行体4及び無線無人走行体5の走行を可能にすることができる。
【0037】
第1乃至第4の電動モータ32,33,34,35のいずれかを駆動すると、駆動された電動モータの回転力が第1プーリ71、動力伝達ベルト74及び第2プーリ73を介して旋回アーム75に伝達され、旋回アーム75が支持軸66を中心として当該駆動された電動モータの回転方向に、その回転量だけ旋回する。したがって、第1乃至第4の電動モータ32,33,34,35の駆動を個々に制御することにより、本体部21に対する各サブクローラ28,29,30,31の姿勢を適宜変更することができる。また、インホイールモータ26,27を回転すると、その回転力が支持軸66及び第3プーリ76を介してサブクローラベルト78に伝達され、サブクローラベルト78が回転駆動される。したがって、サブクローラベルト78が走行路に接するまで第1乃至第4の電動モータ32,33,34,35を駆動し、かつインホイールモータ26,27を回転することにより、悪路や坂路における有線無人走行体4及び無線無人走行体5の安定走行が可能になる。第1及び第2のインホイールモータ26,27並びに第1乃至第4の電動モータ32,33,34,35の回転量は、内蔵されたエンコーダ26a,27a,32a,33a,34a,35aにより検出され、後に詳述する制御卓2,3に出力される。
【0038】
なお、これら第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31としては、同形同大のものを備えることもできるし、本体部21の前方側と後方側とで形状やサイズが異なるものを備えることもできる。同形同大のサブクローラを備えた場合には、本体部21の前進時又は後退時に拘わらず、各サブクローラ28,29,30,31を同一感触で操作できるので、無人走行体4,5の操作性を良好なものにすることができる。一方、本体部21の前方側と後方側とでサイズが異なるサブクローラを備えた場合には、悪路や坂道の状況に応じて最適なサブクローラを適宜駆動するという操作方法をとることができるので、悪路や坂道の走行性を高めることができる。
【0039】
〈有線無人走行体4の搭載機器〉
有線無人走行体4の搭載機器につき、図10を用いて説明する。
【0040】
図10に示すように、有線無人走行体4に備えられた取付台37の略中央部には、外管とその内部に回転可能に収納された内管とからなる回転ポール81Aが垂直に取り付けられ、その近傍には固定ポール81Bが垂直に取り付けられている。回転ポール81Aの上端部には、図示しない回転継手を介してクレーンアーム82が連結される。該回転継手の回転部には、回転ポール81Aの外管に取り付けられたクレーン仰伏モータ83が連結されており、該クレーン仰伏モータ83を駆動することにより、回転継手を中心としてクレーンアーム82の先端部を上下方向に旋回できるようになっている。また、内管の下端部には、取付台37上に取り付けられたクレーン旋回モータ84が直接又は所要の動力伝達機構を介して連結されており、該クレーン旋回モータ84を駆動することにより、回転ポール81Aを中心とする円周方向にクレーンアーム82を旋回できるようになっている。
【0041】
回転ポール81Aには往路前方カメラ85が所要のブラケットを介して取り付けられ、固定ポール81Bには復路前方カメラ86、有線無人走行体4と無線無人走行体5とを接続する無線通信装置9(図1〜図3参照)の親機9a、通信ケーブル巻き取りモータ87及び俯瞰カメラ88が、所要のブラケットを介して取り付けられる。また、通信ケーブル巻き取りモータ87の近傍には、管状体からなる通信ケーブルガイド89の一端が水平面内で旋回可能に取り付けられる。さらに、クレーンアーム82の先端部には、アーム先端カメラ90及びLED照明装置91が光軸を下向きにして取り付けられる。LED照明装置91は、取付台37上に搭載されたバッテリ92から電源の供給を受けて点灯する。
【0042】
取付台37上には、通信ケーブル7(図1〜図3参照)を巻回したケーブルドラム93が、通信ケーブル巻き取りモータ87の回転軸と同心に搭載される。ケーブルドラム93には通信ケーブル7の挿通管94が付設されており、該挿通管94の上端は通信ケーブル巻き取りモータ87の回転軸に連結されている。ケーブルドラム93に巻回された通信ケーブル7の端部は、挿通管94及び通信ケーブルガイド89を通って外部に導出され、図1に示す無線中継装置の子機8bに接続される。通信ケーブル巻き取りモータ87を一方向に回転駆動すると、挿通管94がその上端部を中心として一方向に回転し、ケーブルドラム93から通信ケーブル7を繰り出す。反対に、通信ケーブル巻き取りモータ87を他の一方向に回転駆動すると、挿通管94がその上端部を中心として他の一方向に回転し、ケーブルドラム93に通信ケーブル7を巻き付ける。よって、有線無人走行体4の走行に合わせて通信ケーブル巻き取りモータ87を適宜の方向に回転駆動することにより、有線無人走行体4と子機8bとの間に、適度の長さの通信ケーブルを配線することができる。
【0043】
なお、通信ケーブル巻き取りモータ87の駆動及び停止、並びに回転方向及び回転速度は、オペレータが手動で制御することもできるが、オペレータの負担を軽減し、かつ有線無人走行体4の走行を円滑なものにするため、インホイールモータ26,27の駆動及び停止、並びに回転方向及び回転速度に同期させて自動的に制御することが望ましい。即ち、往路前方カメラ85の向きに有線無人走行体4を走行する際には、その走行速度に応じた量の通信ケーブル7をケーブルドラム87から繰り出すように通信ケーブル巻き取りモータ84の駆動を制御し、復路前方カメラ86の方向に有線無人走行体4を走行する際には、その走行速度に応じた量の通信ケーブル7をケーブルドラム93に巻き付けるように通信ケーブル巻き取りモータ84の駆動を制御する。また、有線無人走行体4の旋回時には、インホイールモータ26とインホイールモータ27の回転数差に応じた量の通信ケーブル7をケーブルドラム93から繰り出す。
【0044】
往路前方カメラ85は、本体部21の前面板42を前方にして有線無人走行体4を走行する際の前方監視カメラであり、復路前方カメラ86は、本体部21の後面板43を前方にして有線無人走行体4を走行する際の前方監視カメラであって、180度の位相差をもって取り付けられる。これらの前方カメラ85,86としては、鮮明な映像を得るため、画素数が高く、かつズーム機能を備えたカメラを備えることができる。また、俯瞰カメラ88は、サブクレーム28,29,30,31及びクローラベルト38,39の駆動状況を上方から監視するカメラである。さらに、アーム先端カメラ90は、有線無人走行体4の走行方向の路面状態を監視するカメラである。これらの各カメラ85,86,88,90が撮影した映像は、通信ケーブル6,7を介して第1操作卓2に伝送され、主としてオペレータが有線無人走行体4を遠隔操縦する際の視覚情報として利用される。なお、有線無人走行体4に搭載される各カメラは、光学カメラである。
【0045】
〈無線無人走行体5の搭載機器〉
無線無人走行体5の搭載機器につき、図11を用いて説明する。なお、以下においては、環境情報検出センサとして放射線検出器を搭載する場合を例にとって説明するが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、放射線検出器に代えて、又は放射線検出器と共に、温度センサ、湿度センサ、ガスセンサ等の他の環境情報検出センサを搭載することもできる。
【0046】
図11に示すように、無線無人走行体5に備えられた取付台37の略中央部には、外管とその内部に回転可能に収納された内管とからなる回転ポール101Aが垂直に取り付けられ、その近傍には固定ポール101Bが垂直に取り付けられている。回転ポール101Aの上端部には、図示しない回転継手を介してクレーンアーム102が連結される。該回転継手の回転部には、回転ポール101Aの外管に取り付けられたクレーン仰伏モータ103が連結されており、該クレーン仰伏モータ103を駆動することにより、回転継手を中心としてクレーンアーム102の先端部を上下に旋回できるようになっている。また、内管の下端部には、取付台37上に取り付けられたクレーン旋回モータ104が連結されており、該クレーン旋回モータ104を駆動することにより、回転ポール101Aを中心とする円周方向にクレーンアーム102を旋回できるようになっている。さらに、無線無人走行体5に備えられた取付台37には、走査式二次元測距装置105と、これを用いた走査式三次元測距装置106とが搭載される。走査式二次元測距装置105及び走査式三次元測距装置106は、無線無人走行体5の走行経路に沿った建屋内部等の状況を検出するものであり、それぞれ取付台37に対して所要の角度で取り付けられる。
【0047】
回転ポール101Aの外管には、水位計ケーブル送り機構111、往路前方カメラ112、メインカメラ113及び水位計読み取りカメラ114が、所要のブラケットを介して取り付けられる。また、固定ポール101Bには、復路前方カメラ115、有線無人走行体4と無線無人走行体5とを接続する無線通信装置9(図1〜図3参照)の子機9b、放射線検出器116、放射線検出器読み取りカメラ117及び俯瞰カメラ118が、所要のブラケットを介して取り付けられる。また、クレーンアーム103の先端部には、水位計ケーブル122を案内する滑車120が所要のブラケットを介して取り付けられる。なお、回転ポール101Aやクレーンアーム102等には、暗所でのカメラ撮影を可能にするための照明装置を備えることもできる。
【0048】
往路前方カメラ112は、本体部21の前面板42を前方にして無線無人走行体5を走行する際の前方監視カメラであり、復路前方カメラ115は、本体部21の後面板43を前方にして無線無人走行体5を走行する際の前方監視カメラであって、180度の位相差をもって取り付けられる。また、俯瞰カメラ118は、サブクレーム28,29,30,31及びクローラベルト38,39の駆動状況を上方から監視するカメラである。これらの各カメラ112,113,117が撮影した映像は、無線通信装置9及び通信ケーブル6,7を介して操作卓3に伝送され、主としてオペレータが無線無人走行体5を遠隔操縦する際の視覚情報として利用される。これに対して、メインカメラ113は、観察地点の鮮明な映像を得るためのものであり、広角レンズを備えた高解像度のズーム機能付きカメラが用いられる。メインカメラ113が撮影した映像も、無線通信装置9及び通信ケーブル6,7を介して第2操作卓3に伝送される。なお、無線無人走行体5に搭載される各カメラも、光学カメラである。
【0049】
放射線検出器116としては、ガイガーカウンタ(ガイガーミュラー計数管)、シンチレーションカウンタ又はスペクトロメータを適宜用いることができる。本例の放射線検出器116は、検出器の本体部に備えられた表示部に検出値をデジタル表示又はアナログ表示するもので、この表示は、放射線検出器読み取りカメラ117により読み取られ、無線通信装置9及び通信ケーブル6,7を介して第2操作卓3に伝送される。なお、放射線検出器116としては、無線送信方式のものを用いることも勿論可能であり、この場合には、放射線検出器読み取りカメラ117を省略することができる。
【0050】
取付台37上には、水位計ケーブル122を巻回したケーブルリール123が搭載されており、水位計ケーブル122の先端部には、水位計センサ部124が取り付けられている。水位計センサ部124としては、例えば圧力センサを用いることができる。ケーブルリール123から引き出された水位計ケーブル122は、水位計ケーブル送り機構111を通して、その先端側が滑車120に巻回される。水位計センサ部124は、自重により滑車120から垂下される。
【0051】
水位の計測は、以下の手順で行うことができる。即ち、無線無人走行体5をトレンチ(排水縦孔)等の計測対象池の直近まで接近させた状態でクレーン仰伏モータ103及びクレーン旋回モータ104を駆動し、センサ部124を計測対象池の上方に差し出す。しかる後に、水位計ケーブル送り機構111を駆動してケーブルリール123から水位計ケーブル122を所定量だけ引き出し、水位計センサ部124を計測対象池に水没させる。水位計センサ部124として圧力センサを用いた場合には、当該センサ部124を計測対象池の底面まで下降したときの圧力値と大気圧との差圧から、水深、即ち底面から水面までの水位を計測することができる。水位計センサ部124の計測値は、ケーブルリール123上に取り付けられた水位計表示部125に表示され、この表示は水位計読み取りカメラ114により読み取られる。この水位計読み取りカメラ114が撮影した映像も、無線通信装置9及び通信ケーブル6,7を介して第2操作卓3に伝送される。
【0052】
なお、原子力発電プラントに適用される無線無人走行体5には、上述した水位を計測するための設備に代えて、又は当該設備と共に、計測対象池に溜まった水を採取するサンプル採取設備を備えることもできる。このサンプル採取設備は、図12に模式的に示すように、取付台37上に搭載された電動リール131及びサンプル回収ポット132と、電動リール131から引き出された吊り糸133と、吊り糸133を回転ポール101A及びクレーンアーム102に沿って案内する滑車134,135と、吊り糸133の先端部に取り付けられたサンプル採取瓶136とから構成される。サンプル採取瓶136は、水没可能な重量を有しており、サンプル回収ポット132の垂直上方に配置される。
【0053】
サンプル水の採取は、以下の手順で行うことができる。即ち、無線無人走行体5を計測対象池の直近まで接近させた状態でクレーン仰伏モータ103及びクレーン旋回モータ104を駆動し、サンプル採取瓶136を計測対象池の上方に差し出す。しかる後に、電動リール131を駆動して吊り糸133を所定量だけ繰り出し、サンプル採取瓶136を計測対象池に水没させる。次いで、電動リール131を駆動してサンプル採取瓶136を計測対象池から引き上げた後、クレーン仰伏モータ103及びクレーン旋回モータ104を駆動して、サンプル採取瓶136をサンプル回収ポット132の直上まで移動する。次いで、電動リール131を駆動してサンプル採取瓶136を下降させ、サンプル回収ポット132内に収納する。これにより、サンプル水をこぼすことなく、オペレータの元まで搬送することができる。
【0054】
〈走査式二次元測距装置及び走査式三次元測距装置の構成〉
以下、無線無人走行体5に搭載される走査式二次元測距装置105及び走査式三次元測距装置106について説明する。本例の走査式二次元測距装置105及び走査式三次元測距装置106としては、特許第4059911号公報に開示されたものを用いることができる。
【0055】
当該文献に開示されているように、本例の走査式二次元測距装置105は、光源から出射されたレーザ光を回転ミラーで反射して透明窓から放射状に照射し、無線無人走行体5の周囲に存在する床面、壁面及び天井面等で反射されて透明窓に戻った反射光を、集光レンズを用いて受光素子に集光すると共に、内蔵された信号処理部が、光源からのレーザ光の出射タイミングと受光素子への反射光の入射タイミングの差から、レーザ光の走査方向に沿った二次元距離データを算出する構成になっている。この二次元距離データは、無線通信装置9及び通信ケーブル6,7を介して第2操作卓3に伝送される。無線無人走行体5を走行させながら走査式二次元測距装置105を連続的に駆動すると、無線無人走行体5の走行方向及びレーザ光の照射方向に沿う1走査毎の二次元距離データが連続的に得られるので、制御装置本体301は、1走査毎の走査式二次元測距装置105の検出データを距離が異なる複数のゾーンに分類し、各ゾーン毎に輝点の濃淡やカラーを割り当てると共に、これら輝点の濃淡やカラーが割り当てられた1走査毎の走査式二次元測距装置105の検出データを時間軸に沿って合成することにより、図13に示すように、距離の変化が輝点の濃淡やカラーで表現された鮮明な三次元画像を表示装置302に表示することができる。また、この立体画像中には、無線無人走行体5の移動経路が白線等で表示される。したがって、この立体画像は、建屋内の現況等を示す環境観察情報として利用することができる。
【0056】
これに対して、走査式三次元測距装置106は、上述した走査式二次元測距装置105を三次元揺動機構に取り付け、三次元揺動機構をモータにより駆動して、走査式二次元測距装置105を三次元揺動機構の回転中心の周りに歳差運動(すりこぎ運動)させるものである。本例の走査式三次元測距装置106は、三次元揺動機構を駆動することによってレーザ光の走査方向が三次元的に変化するので、無線無人走行体5が停止状態にあるときにも、図14に示すような立体画像が得られる。この走査式三次元測距装置106の立体画像は、走査式二次元測距装置105の立体画像よりも不鮮明になるので、建屋内の現況を示す環境観察情報として利用することには必ずしも適さないが、無線無人走行体5を運行するための視覚情報として利用することができる。この走査式三次元測距装置106の立体画像についても、無線通信装置9及び通信ケーブル6,7を介して第2操作卓3に伝送される。
【0057】
なお、前記実施形態においては、無線無人走行体5をデータ収集用の作業機として使用し、有線無人走行体4を作業地点まで無線無人走行体5を案内する案内機として使用する場合を例にとって説明したが、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の双方にデータ収集用のセンサ機器を搭載して、データ収集を行うこともできる。かかる構成によると、収集されるデータの種類及びデータの収集エリアを拡大することができるので、より広範なデータを高能率に収集することができる。
【0058】
〈操作卓2,3の構成〉
以下、操作卓2,3の構成を、図16乃至図19を用いて説明する。第1操作卓2は有線無人走行体4を遠隔操縦するための制御装置であり、第2操作卓3は無線無人走行体5を遠隔操縦するための制御装置であって、それぞれ個別のオペレータにより操作される。
【0059】
図15(a)に示すように、第1操作卓2は、図示しないCPU、ROM、RAM及び入出力端子等からなる制御装置本体201と、制御装置本体201の前面に配置され、制御装置本体201により駆動制御される表示装置202と、制御装置本体201に接続されかつ表示装置202の前面に配置されたタッチパネル入力装置203と、制御装置本体201に接続されたマウス型入力装置204と、制御装置本体201に接続された手持ちコントローラ205と、制御装置本体201に接続されたUSBメモリ206と、これらを一体に収納するキャリアボックス207とから主に構成されている。第2操作卓3もこれと同様構成であって、図15(b)に示すように、図示しないCPU、ROM、RAM及び入出力端子等からなる制御装置本体301と、制御装置本体301の前面に配置され、制御装置本体301により駆動制御される表示装置302と、制御装置本体301に接続されかつ表示装置301の前面に設けられたタッチパネル入力装置303と、制御装置本体301に接続されたマウス型入力装置304と、制御装置本体301に接続された手持ちコントローラ305と、制御装置本体301に接続されたUSBメモリ306と、これらを一体に収納するキャリアボックス307とから主に構成されている。このように、本例の操作卓2,3は、同一構成のものを用いたので、全体の設備構成を簡単なものにすることができ、安価に実施することができる。また、本例の操作卓2,3は、各構成機材を1つのキャリアボックス207,307内に全て収納するので、搬送及び設置を容易なものにすることができる。なお、搬送及び設置をさらに容易にするため、第1及び第2の操作卓2,3を1つのキャリアボックス内に収納することもできる。
【0060】
キャリアボックス207,307の少なくともいずれか一方には、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の稼働時間を計測するタイマー308が付設される。オペレータはタイマー308の表示を監視することにより、本体部21に搭載された電池パックのおよその寿命を推定できるので、電池切れによって有線無人走行体4及び無線無人走行体5が走行不能状態に陥ることを防止できる。
【0061】
第1操作卓2は、図示しない電源スイッチをオンに切り換えると、制御装置本体201にインストールされたOS(Operating System)が起動し、表示装置202に初期画面が表示される。しかる後に、オペレータがマウス型入力装置204を操作して表示装置202に表示された初期画面から「有線無人走行体」を選択すると、有線無人走行体4を駆動制御するためのアプリケーションが起動して、図16に示す有線無人走行体4の駆動制御画面210が表示装置202に表示される。
【0062】
第2操作卓3もこれと同様であって、図示しない電源スイッチをオンに切り換えると、制御装置本体301にインストールされたOS(Operating System)が起動し、表示装置302に初期画面が表示される。しかる後に、オペレータがマウス型入力装置304を操作して表示装置302に表示された初期画面から「無線無人走行体」を選択すると、無線無人走行体5を駆動制御するためのアプリケーションが起動して、図17に示す無線無人走行体5の駆動制御画面310が表示装置302に表示される。
【0063】
第1操作卓2の駆動制御画面210には、図16に示すように、往路前方カメラ85の撮影映像を表示する往路前方カメラ映像表示部211、復路前方カメラ86の撮影映像を表示する復路前方カメラ映像表示部212、俯瞰カメラ88の撮影映像を表示する俯瞰カメラ映像表示部213、アーム先端カメラ90の撮影映像を表示する先端カメラ映像表示部214、本体部21に対するクレーンアーム102の姿勢を表示するクレーンアーム姿勢表示部215、本体部21に搭載された電圧計及び温度計の検出データを表示するデータ表示部216、路面に対する本体部21の姿勢並びに本体部21に対するサブクローラ28〜31の姿勢を表示する姿勢表示部217が設けられる。これらの各表示部211〜217に表示される各画像データは、第1操作卓2の電源スイッチがオンに切り換えられてからオフに切り換えられるまで、所定の時間間隔、例えば0.5秒毎にUSBメモリ206に連続的に記録される。したがって、USBメモリ206を回収した後、USBメモリ206の記録画像を再生することにより、建屋内部の状況を目視により繰り返し確認することができる。
【0064】
往路前方カメラ映像表示部211の近傍には、往路前方カメラ85の機能切換ボタン表示部218が表示されている。該機能切換ボタン表示部218内には、往路前方カメラ85の機能を通常モードに設定するホーム(Home)ボタン218a、往路前方カメラ85の映像を拡大するズームイン(Zoom in)ボタン218b、往路前方カメラ85の映像を縮小するズームアウト(Zoom out)ボタン218c、及び往路前方カメラ85の映像を鮮明にするエッジモード(Edge Mode)ボタン218dが表示されており、オペレータが各ボタンを押圧操作することによって、所望の機能を発揮できるようになっている。復路前方カメラ映像表示部212の近傍にも、これと同様に、ホームボタン219a、ズームインボタン219b、ズームアウトボタン219c及びエッジモードボタン219dを備えた復路前方カメラ86の機能切換ボタン表示部219が表示される。
【0065】
さらに、駆動制御画面210の上辺部には、LED照明装置91をオンオフするためのオン(ON)ボタン220a及びオフ(OFF)ボタン220bと、サブクローラ28〜31の駆動状態を表示するサブクローラ状態表示部(Quince Subcrawler)223とが表示される。また、サブクローラ状態表示部223には、サブクローラ28〜31を予め制御装置本体201に設定されたホームポジション、例えば本体部21に対してサブクローラ28〜31が逆ハの字形となる所定の角度位置に移動させるホーム(Home)ボタン223aと、サブクローラ28〜31を本体部21と平行にするフラット(Flat)ボタン223bと、サブクローラ28〜31の駆動モードを同期モード又は独立モードに変更する駆動モード切換ボタン223cとが表示される。駆動モード切換ボタン223cの表示は、押圧操作する毎に、同期モードを示す(Sync)又は独立モードを示す(Indiv)に切り換わる。サブクローラ状態表示部223の近傍には、有線無人走行体4の進行方向を往路方向又は復路方向に切り換えるための走行モード切換ボタン223dが表示されており、走行モード切換ボタン223dの表示は、押圧操作する毎に、前進駆動を示す(Forward)又は後進駆動を示す(Reverse)に切り換わる。オペレータは、これらの各ボタンを適宜操作することにより、有線無人走行体4及びその搭載機器を遠隔操作することができる。また、駆動制御画面210の上辺部には、メインカメラが撮影した高解像度の映像のUSBメモリ206への取り込みを指示する情報取得(Save Main Camera)ボタン221と、前回の情報取得からの経過時間を表示する経過時間表示部(Elapsed Time since last save)222が表示される。なお、有線無人走行体4においては、復路前方カメラ86がメインカメラとして機能する。
【0066】
第2操作卓3の駆動制御画面310には、図17に示すように、メインカメラ113の撮影映像を表示するメインカメラ映像表示部311、俯瞰カメラ118の撮影映像を表示する俯瞰カメラ映像表示部312、往路前方カメラ112の撮影映像を表示する往路前方カメラ映像表示部313、復路前方カメラ115の撮影映像を表示する復路前方カメラ映像表示部314、放射線検出器読み取りカメラ117の撮影映像を表示する放射線検出器カメラ映像表示部315、水位計読み取りカメラ114の撮影映像を表示する水位計カメラ映像表示部316、走査式三次元測距装置106の検出データを表示する3Dスキャナ表示部317、及び、路面に対する本体部21の姿勢並びに本体部21に対するサブクローラ28〜31の姿勢を表示する姿勢表示部318が設けられる。これらの各表示部311〜318に表示される各画像データは、第2操作卓3の電源スイッチがオンに切り換えられてからオフに切り換えられるまで、所定の時間間隔、例えば0.5秒毎にUSBメモリ306に連続的に記録される。したがって、USBメモリ306を回収した後、USBメモリ306の記録画像を再生することにより、建屋内部の状況及び放射線検出器116のデータを目視により繰り返し確認することができる。
【0067】
メインカメラ映像表示部311の近傍には、メインカメラ113の機能切換ボタン表示部319が表示されている。該機能切換ボタン表示部319内には、メインカメラ113の機能を通常モードに設定するホーム(Home)ボタン319a、メインカメラ113の映像を拡大するズームイン(Zoom in)ボタン319b、メインカメラ113の映像を縮小するズームアウト(Zoom out)ボタン319c、及びメインカメラ113の映像を鮮明にするエッジモード(Edge Mode)ボタン319dが表示されており、オペレータが各ボタンを操作することによって、所望の映像が得られるようになっている。
【0068】
さらに、駆動制御画面310の上辺部には、LED照明装置をオンオフするためのオン(ON)ボタン320a及びオフ(OFF)ボタン320bと、メインカメラ113が撮影した高解像度の映像のUSBメモリ306への取り込みを指示する情報取得(Save Main Camera)ボタン321と、前回の情報取得からの経過時間を表示する経過時間表示部(Elapsed Time since last save)322と、サブクローラ28〜31の駆動状態を表示するサブクローラ状態表示部(Quince Subcrawler)323とが表示される。サブクローラ状態表示部323には、サブクローラ28〜31を予め制御装置本体301に設定されたホームポジション、例えば本体部21に対してサブクローラ28〜31が逆ハの字形となる所定の角度位置に移動させるホーム(Home)ボタン323aと、サブクローラ28〜31を本体部21と平行にするフラット(Flat)ボタン323bと、サブクローラ28〜31の駆動モードを同期モード又は独立モードに変更する駆動モード切換ボタン323cが表示される。駆動モード切換ボタン323cの表示は、押圧操作する毎に、同期モードを示す(Sync)又は独立モードを示す(Indiv)に切り換わる。サブクローラ状態表示部323の近傍には、無線無人走行体5の進行方向を往路方向又は復路方向に切り換えるための走行モード切換ボタン323dが表示されており、走行モード切換ボタン323dの表示は、押圧操作する毎に、前進駆動を示す(Forward)又は後進駆動を示す(Reverse)に切り換わる。オペレータは、これらの各ボタンを適宜操作することにより、無線無人走行体5及びその搭載機器を遠隔操作することができる。
【0069】
図16に示すように、第1操作卓2の往路前方カメラ映像表示部211は、駆動制御画面210の右端部に表示される。また、図17に示すように、第2操作卓3のメインカメラ映像表示部311は、駆動制御画面310の左端部に表示される。したがって、図18に示すように、第1操作卓2の右側に第2操作卓3を設置したとき、有線無人走行体4のオペレータは、メインカメラ映像表示部311に表示されたメインカメラ113の撮影映像を目視で確認しやすく、無線無人走行体5のオペレータは、往路前方カメラ映像表示部211に表示された往路前方カメラ85の撮影映像を目視で確認しやすいので、それぞれ有線無人走行体4及び無線無人走行体5の駆動操作を適切に行いやすくなる。即ち、有線無人走行体4のオペレータは、メインカメラ113の撮影映像を見ることによって、有線無人走行体4の前方部分の状況を把握できるので、有線無人走行体4の駆動操作を適切に行うことができる。また、ほとんどの場合、往路前方カメラ映像表示部211には、先行する無線無人走行体5の後姿が写っているので、無線無人走行体5のオペレータは、往路前方カメラ映像表示部211に表示された往路前方カメラ85の撮影映像を確認することにより、無線無人走行体5と有線無人走行体4との距離を把握しやすく、無線無人走行体5の遠隔操縦を容易かつ適正なものにすることができる。
【0070】
姿勢表示部217に表示されるアニメーションは、路面に対する本体部21の姿勢及び本体部21に対するサブクローラ28,29,30,31の姿勢を表示するもので、第1操作卓2の制御装置本体201に記憶された本体部21及び各サブクローラ28,29,30,31の形状を図形化したエレメント(部品図)と、有線無人走行体4の本体部21に搭載されたジャイロセンサの出力信号、及び電動モータ32,33,34,35に付設されたエンコーダ32a,33a,34a,35aの出力信号とから、第1操作卓2の制御装置本体201にて生成される。即ち、姿勢表示部217には、本体部21のエレメントと第1乃至第4のサブクローラのエレメントとが実機と同一の配列で合成されて表示される。そして、本体部21のエレメントは、ジャイロセンサの出力信号に応じた角度で姿勢表示部217に表示され、第1乃至第4のサブクローラのエレメントは、電動モータ32,33,34,35に付設された各エンコーダ32a,33a,34a,35aの出力信号に応じた角度で姿勢表示部217に表示される。姿勢表示部318に表示される画像についても同様である。なお、ジャイロセンサの出力信号は、本体部21を水平に保持したときの出力値を基準値とすることができ、エンコーダ32a,33a,34a,35aの出力信号は、サブクローラ28,29,30,31をホームポジションに置いたときの出力値を基準値とすることができる。
【0071】
このように本実施形態に係る第1及び第2の操作卓2,3は、表示装置202,302のそれぞれに、複数のカメラにより撮影された複数の映像と、有線無人走行体4又は無線無人走行体5の姿勢を示すアニメーションとを表示するので、有線無人走行体4又は無線無人走行体5の走行状態をオペレータが確実に把握することができ、第1及び第2の手持ちコントローラ205,305を用いて、これら有線無人走行体4又は無線無人走行体5の走行操作を容易かつ確実に行うことができる。特に、第2操作卓3については、走査式三次元測距装置106の検出画像を表示装置302に表示するので、カメラの撮影映像が不鮮明である場合にも、有線無人走行体4又は無線無人走行体5の走行状態をオペレータが確実に把握することができ、無線無人走行体5の走行操作を容易かつ確実に行うことができる。また、第1及び第2の操作卓2,3は、表示装置202,302のそれぞれに、有線無人走行体4又は無線無人走行体5に搭載された各種機器を操作するためのボタンを表示したので、オペレータが表示装置202,302を目視しながら、必要なボタン操作を迅速に行うことができる。
【0072】
〈手持ちコントローラ205,305の構成〉
次に、手持ちコントローラ205,305の構成を、図19を用いて説明する。手持ちコントローラ205は有線無人走行体4を駆動操作するものであり、手持ちコントローラ305は無線無人走行体5を駆動操作するものである。これら2つの手持ちコントローラ205,305は、外観上同一構成であり、ケーシング400の左右両部には、オペレータが把持しやすい形状に左把持部401及び右把持部402が形成されていて、上面の左把持部401寄りには十字キー403が配置され、上面の右把持部402側には、第1乃至第4の押釦スイッチ(より正確には押釦スイッチを操作するためのキートップ。以下同じ)404,405,406,407が円周上に等間隔に配置されている。また、上面の中間位置には、第1及び第2のジョイスティック408,409と、第9乃至第12の押釦スイッチ414,415,416,417が配置されている。さらに、ケーシング400の前面側には、第5乃至第8の押釦スイッチ410,411,412,413が配置されている。上述の各操作部403〜417は、左右の把持部401,402を両手で把持した状態で、両手の親指と人差し指をもって操作できるようにケーシング400上に配置される。なお、これらの各手持ちコントローラ205,305としては、実施を容易なものとするため、テレビゲーム機用の手持ちコントローラを転用することができる。また、手持ちコントローラ205と制御装置本体201、及び手持ちコントローラ305と制御装置本体301とは、有線で接続することもできるし、無線で接続することもできる。
【0073】
有線無人走行体4の駆動操作に用いられる手持ちコントローラ205については、以下のように、各操作部と有線無人走行体4に備えられた各装置とが関連付けられる。即ち、第1ジョイスティック408は、第1及び第2のインホイールモータ26,27と接続されており、第1ジョイスティック408を前方に傾転操作すると、第1及び第2のインホイールモータ26,27がその傾転量に応じた速度で正転し、有線無人走行体4を前進駆動する。また、第1ジョイスティック408を手前側に傾転操作すると、第1及び第2のインホイールモータ26,27がその傾転量に応じた速度で逆転し、有線無人走行体4を後進駆動する。さらに、第1ジョイスティック408を左方向に傾転操作すると、第2インホイールモータ27のみがその傾転量に応じた速度で正転し、有線無人走行体4がその場で左旋回する。また、第1ジョイスティック408を右方向に傾転操作すると、第1インホイールモータ26のみがその傾転量に応じた速度で正転し、有線無人走行体4がその場で右旋回する。
【0074】
有線無人走行体4の走行速度及び旋回速度は、第2及び第3の押釦スイッチ405,406を操作することによって切り換えることができる。即ち、第2押釦スイッチ405を押圧操作しながら第1ジョイスティック408を傾転操作すると、第2押釦スイッチ405を押圧操作しない場合よりも、第1ジョイスティック408の傾転量を同一としたときの有線無人走行体4の走行速度又は旋回速度が低速になる。また、第3押釦スイッチ406を押圧操作しながら第1ジョイスティック408を傾転操作すると、第3押釦スイッチ406を押圧操作しない場合よりも、第1ジョイスティック408の傾転量を同一としたときの有線無人走行体4の走行速度又は旋回速度が高速になる。このように、本例の手持ちコントローラ205は、第2及び第3の押釦スイッチ405,406を押圧操作することによって、有線無人走行体4に対する走行指示のダイナミックレンジを切り換えることができるので、路面等の状況に合わせて有線無人走行体4を適正かつ効率的に稼動させることができる。例えば、平坦な良路で有線無人走行体4を走行させる場合には、第3押釦スイッチ406を押圧操作することによって有線無人走行体4を高速移動させることができるので、作業効率を高めることができる。また、例えば悪路で有線無人走行体4を走行させる場合には、第2押釦スイッチ405を押圧操作することによって有線無人走行体4を低速移動させることができるので、有線無人走行体4に作用する衝撃力を抑制でき、作業の安全性を高めることができる。さらに、第2押釦スイッチ405を押圧操作しながら第1ジョイスティック408を右方向又は左方向に傾転した場合には、有線無人走行体4を低速で旋回させることができるので、例えば階段の踊り場での有線無人走行体4の方向転換等の作業を安全に行うことができる。
【0075】
第4押釦スイッチ407は、通信ケーブル巻き取りモータ87に接続されており、これを押圧操作することにより、ケーブルドラム93への通信ケーブル7の巻き取りが行われる。
【0076】
第5乃至第8の押釦スイッチ410,411,412,413は、第1乃至第4の電動モータ32,33,34,35のそれぞれと接続されており、これらの各押釦スイッチを押圧操作することにより、第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31の駆動状態を切り換える。各押釦スイッチ414,415,416,417に割り当てられる機能は、サブクローラ28,29,30,31の駆動モードが、同期モード(Sync)に切り換えられた場合と、独立モード(Indiv)に切り換えられた場合とで、以下のように変更される。なお、駆動モードの切り換えは、駆動制御画面210に表示された駆動モード切換ボタン223cを押圧操作することにより行うこともできるし、後述するように第9及び第10の押釦スイッチ414,415を操作することによっても行うことができる。
【0077】
即ち、サブクローラ28,29,30,31の駆動モードが同期モード(Sync)に切り換えられている場合には、第5押釦スイッチ410を押圧操作することにより、本体部21の左側後方及び右側後方に備えられた第3及び第4のサブクローラ30,31が同時に上げ操作され、第7押釦スイッチ412を押圧操作することにより、これら第3及び第4のサブクローラ30,31が同時に下げ操作される。また、同様の場合において、第6押釦スイッチ411を押圧操作することにより、本体部21の左側前方及び右側前方に備えられた第1及び第2のサブクローラ28,29が同時に上げ操作され、第8押釦スイッチ413を押圧操作することにより、これら第1及び第2のサブクローラ28,291が同時に下げ操作される。
【0078】
これに対して、サブクローラ28,29,30,31の駆動モードが独立モード(Indiv)に切り換えられている場合には、第5乃至第8の押釦スイッチ410,411,412,413による駆動しようとするサブクローラの選択と、第2ジョイスティック409によるサブクローラの駆動との組み合わせにより、第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31の駆動操作が行われる。即ち、第5押釦スイッチ410を押圧操作すると、本体部21の左側前方に備えられた第1サブクローラ28が選択され、この状態において第2ジョイスティック409を前方に傾転すると、第1サブクローラ28の先端が本体部21の前方に向けて旋回操作され、手前側に傾転すると、第1サブクローラ28の先端が本体部21の上方に向けて旋回操作される。また、第6押釦スイッチ411を押圧操作すると、本体部21の右側前方に備えられた第2サブクローラ29が選択され、この状態において第2ジョイスティック409を前方に傾転すると、第2サブクローラ29の先端が本体部21の前方に向けて旋回操作され、手前側に傾転すると、第2サブクローラ29の先端が本体部21の上方に向けて旋回操作される。同様に、第7押釦スイッチ416を押圧操作すると、本体部21の左側後方に備えられた第3サブクローラ30が選択され、この状態において第2ジョイスティック409を前方に傾転すると、第3サブクローラ30の先端が本体部21の前方に向けて旋回操作され、手前側に傾転すると、第3サブクローラ30の先端が本体部21の上方に向けて旋回操作される。また、第8の押釦スイッチ413を押圧操作すると、本体部21の右側後方に備えられた第4サブクローラ31が選択され、この状態において第2ジョイスティック409を前方に傾転すると、第4サブクローラ31の先端が本体部21の前方に向けて旋回操作され、手前側に傾転すると、第4サブクローラ31の先端が本体部21の上方に向けて旋回操作される。
【0079】
手持ちコントローラ205の上面に配置された第9及び第10の押釦スイッチ414,415には、サブクローラ28,29,30,31の駆動モード切換と、有線無人走行体4の前後進切換が割り当てられる。即ち、サブクローラ28,29,30,31の駆動モードが同期モードになっている状態において第9押釦スイッチ414を押圧操作すると、サブクローラ28,29,30,31の駆動モードが独立モードに切り換えられると共に、有線無人走行体4の走行モードが往路走行モードになる。また、この状態で再度第9押釦スイッチ414を押圧操作すると、有線無人走行体4の走行モードが復路走行モードに切り換えられる。一方、サブクローラ28,29,30,31の駆動モードが独立モードになっている状態において第10押釦スイッチ415を押圧操作すると、サブクローラ28,29,30,31の駆動モードが同期モードに切り換えられると共に、有線無人走行体4の走行モードが往路走行モードになる。また、この状態で再度第10押釦スイッチ415を押圧操作すると、有線無人走行体4の走行モードが復路走行モードに切り換えられる。
【0080】
有線無人走行体4の走行モードが往路走行モードに切り換えられた場合、表示装置202に表示された駆動制御画面210の前方カメラ映像表示部211には往路前方カメラ85の撮影映像が表示され、後方カメラ映像表示部212には復路前方カメラ86の撮影映像が表示される。また、この場合には、上述したように、手持ちコントローラ205に備えられた第1ジョイスティック408を前方に傾転することにより、往路前方カメラ85の向きに有線無人走行体4を走行させることができ、手前側に傾転することにより、復路前方カメラ86の向きに有線無人走行体4を走行させることができる。
【0081】
一方、有線無人走行体4の走行モードが復路走行モードに切り換えられた場合には、表示装置202に表示された駆動制御画面210の前方カメラ映像表示部211に復路前方カメラ86の撮影映像が表示されると共に、後方カメラ映像表示部212に往路前方カメラ85の撮影映像が表示される。また、この場合には、手持ちコントローラ205に備えられた第1ジョイスティック408を前方に傾転することにより、復路前方カメラ86の向きに有線無人走行体4を走行させることができ、手前側に傾転することにより、往路前方カメラ85の向きに有線無人走行体4を走行させることができる。このような表示装置202の表示切換や手持ちコントローラ205の機能切換は、制御装置本体201に記憶されたプログラムに従って実行される。
【0082】
したがって、往路走行モードにおける表示装置202の表示内容及び第1手持ちコントローラ205の操作内容と、復路走行モードにおける表示装置202の表示内容及び第1手持ちコントローラ205の操作内容とを共通化できるので、有線無人走行体4の走行モードに拘わらず無線無人走行体4の遠隔操縦を同一の感触で行うことができ、無線無人走行体4の遠隔操縦性を良好なものにすることができる。
【0083】
手持ちコントローラ205に備えられた第2ジョイスティック409は、クレーン仰伏モータ83及びクレーン旋回モータ84と接続されており、第2ジョイスティック409を前方に傾転するとクレーンアーム82の先端が上昇し、手前側に傾転するとクレーンアーム82の先端部が下降する。また、第2ジョイスティック409を左方に傾転するとクレーンアーム82の先端が左旋回し、右方に傾転するとクレーンアーム82の先端部が右旋回する。なお、クレーンアーム82の操作は、サブクローラ28,29,30,31の駆動モードが同期モードである場合のみ可能となる。
【0084】
無線無人走行体5の駆動操作に用いられる手持ちコントローラ305についても、基本的には、有線無人走行体4の駆動操作に用いられる手持ちコントローラ205と同様に各機能が割り振られる。手持ちコントローラ305に特有の機能としては、十字キー403を水位計ケーブル送り機構111及び/又は電動リール131と接続し、十字キー403の前ボタンを押圧操作することにより水位計ケーブル122及び/又は吊り糸133の巻上げを行い、十字キー403の後ボタンを押圧操作することにより水位計ケーブル122及び/又は吊り糸133の繰り出しを行うことが挙げられる。その他については、有線無人走行体4の駆動操作に用いられる手持ちコントローラ205と同様であるので、重複を避けるために説明を省略する。
【0085】
このように、本例の手持ちコントローラ205,305は、第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31をホームポジションに戻す操作、及び第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31をフラットポジションまで展伸する操作を除く全ての操作を行えるようにしたので、各種の操作機器を使い分ける必要が無く、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の駆動制御を容易に行うことができる。また、本例の手持ちコントローラ205,305によっては、第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31をホームポジションに戻す操作、及び第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31をフラットポジションまで展伸する操作を行えないようにしたので、手持ちコントローラ205,305の操作中に誤って第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31がホームポジション又はフラットポジションに移動するということが無く、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の駆動制御を安定に行うことができる。即ち、悪路等を走行するために第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31が所要に姿勢に操作されている状態において、これら第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31がいきなりホームポジション又はフラットポジションまで移動されると、バランスを失って有線無人走行体4及び無線無人走行体5が転倒する虞がある。そこで、上述のように、手持ちコントローラ205,305によっては第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31をホームポジション又はフラットポジションに移動する操作を行えないようにすれば、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の転倒を防止でき、有線無人走行体4及び無線無人走行体5を安定に走行させることが可能になる。
【0086】
なお、前記実施形態においては、手持ちコントローラ205,305に備えられた押釦スイッチに、第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31をホームポジションに戻す操作、及び第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31をフラットポジションまで展伸する操作を除く全ての機能を割り付けたが、有線無人走行体4の遠隔操縦に適用される手持ちコントローラ205については、有線無人走行体4の走行モードを往路走行モード又は復路走行モードに切り換える操作についても、押釦スイッチへの割り付けを行わない構成とすることもできる。かかる構成によれば、手持ちコントローラ205の誤操作によって有線無人走行体4が予期せぬ方向に走行するということがないので、通信ケーブルの切断等の不都合の発生を防止できる。
【0087】
但し、手持ちコントローラ205,305に備えられた比較的操作しにくい押釦スイッチに機能を割り振る等の工夫をした場合には、第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31をホームポジションに戻す操作、第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31をフラットポジションまで展伸する操作、及び有線無人走行体4の走行モードを往路走行モード又は復路走行モードに切り換える操作のうちの1つか2つについては、手持ちコントローラ205,305に備えられた押釦スイッチに割り付けることも可能である。即ち、上述の各操作を全て手持ちコントローラ205,305の割り付けから外せば、無人走行体4,5の誤操作が防止され、安全性が高められるが、その反面、これらの操作を行うためには、手持ちコントローラ205,305から手を離してタッチパネル303を操作するという動作が必要になるので、無人走行体4,5の操作性が悪くなるからである。いくつの操作を手持ちコントローラ205,305に割り付けるかは、無人走行体4,5の安全性と操作性を考慮して定めることができる。
【0088】
〈有線無人走行体4及び無線無人走行体5の運用方法〉
以下、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の運用方法につき、原子力発電プラントのエアロック内で有線無人走行体4及び無線無人走行体5を運用する場合を例にとって説明する。
【0089】
有線無人走行体4及び無線無人走行体5の運用に際しては、図1に示すように、安全が確保されている場所に第1及び第2の操作卓2,3を設置すると共に、エアロックALの外部と内部とに無線中継装置8の親機8aと子機8bを設置する。第2操作卓3は図18に示すように第1操作卓2の右側に隣接して設置される。また、無線中継装置8の設置と同時に、又はそれと前後して、ケーブルドラム93に巻回された通信ケーブル7の一端が無線中継装置8の子機8bに接続された有線無人走行体4と無線無人走行体5を、エアロックALの内部に搬入する。次いで、有線無人走行体4、無線無人走行体5及び無線中継装置8の電源を投入し、無線中継装置8の親機8aと子機8bの間、及び無線通信装置9の親機9aと子機9bの間の通信状態を確認する。通信状態が良好である場合には、エアロックALを閉じる。
【0090】
その後、有線無人走行体4のオペレータは、第1手持ちコントローラ205を用いて有線無人走行体4の遠隔操縦を行い、無線無人走行体5のオペレータは、第2手持ちコントローラ305を用いて無線無人走行体5の遠隔操縦を行う。本例においては、無線無人走行体5を有線無人走行体4よりも先行させ、通信ケーブル7の長さ制限により有線無人走行体4が到達し得ない作業エリアまで無線無人走行体5を走行させて、各種データの収集を行う。
【0091】
このため、まず無線無人走行体5のオペレータは、第2手持ちコントローラ305に備えられた第9押釦スイッチ414を操作して、サブクローラ28,29,30,31の駆動モードを独立モードに切り換えると共に、無線無人走行体5の走行モードを往路モードに切り換える。次いで、オペレータは第1ジョイスティック408を前方に傾転し、無線無人走行体5を所要の速度で前進させる。ここで、無線無人走行体5の走行を低速で行いたい場合には第2押釦スイッチ405を押圧操作し、高速で行いたい場合には第3押釦スイッチ406を押圧操作する。また、無線無人走行体5の走行方向を変更したい場合には、第1ジョイスティック408を左方向、右方向又は手前側に傾転操作する。上述したように、実施形態に係る無線無人走行体5は、本体部21の下面中央部にローラ連結体51を備えていて旋回性能に優れるので、エアロックAL内の狭い通路や階段の踊り場等においても、無線無人走行体5の進行方向を容易に変更することができる。このような操作を適宜行うことにより、無線無人走行体5を所定の経路に沿って移動することができる。無線無人走行体5の走行状態は、第2操作卓3の表示装置302に表示される駆動制御画面310を目視することにより確認することができる。
【0092】
次いで、有線無人走行体4のオペレータは、無線無人走行体5との間の無線通信が途切れる前に、第1手持ちコントローラ205を操作して有線無人走行体4を前進させる。第1手持ちコントローラ205の操作も、上述した第2手持ちコントローラ305の操作と同様の方法で行われる。有線無人走行体4の走行状態は、第1操作卓2の表示装置202に表示される駆動制御画面210を目視することにより確認することができる。また、有線無人走行体4のオペレータは、第2操作卓3の表示装置302に表示される駆動制御画面310を目視することによって無線無人走行体5の走行状態を確認することができ、無線無人走行体5のオペレータは、第1操作卓2の表示装置202に表示される駆動制御画面210を目視することによって有線無人走行体4の走行状態を確認することができる。これにより、有線無人走行体4と無線無人走行体5とが適正な間隔で走行されているか否かを確認することができる。
【0093】
なお、建屋内部の状況によっては、有線無人走行体4と無線無人走行体5との間隔がさほど離れていない場合にも、有線無人走行体4と無線無人走行体5との間の無線通信が途切れ、無線無人走行体5の遠隔操縦が不能になることがあり得る。しかし、この場合にも有線無人走行体4の前進操作は可能であるので、有線無人走行体4の前進操作を続行し、有線無人走行体4を無線無人走行体5に接近させる。有線無人走行体4と無線無人走行体5との間の無線通信が回復した段階で、無線無人走行体5の遠隔操縦が再度可能になる。
【0094】
急峻な坂路、例えば階段を上り下りする場合や、悪路、例えば堆積した瓦礫を乗り越える等の場合には、手持ちコントローラ205,305に備えられた第9押釦スイッチ414又は第10押釦スイッチ415を押圧操作して、第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31の駆動モードを、独立モード又は同期モードに切り換える。第9押釦スイッチ414を押圧操作した場合には、第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31の駆動モードが独立モードとなり、第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31がそれぞれ路面に接地するように個別に駆動できるので、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の悪路走行が容易になる。また、第10押釦スイッチ415を押圧操作した場合には、第1乃至第4のサブクローラ28,29,30,31の駆動モードが同期モードとなり、傾斜面の傾斜角に応じて、本体部21の前方側に配置された第1及び第2のサブクローラ28,29と本体部21の後方側に配置された第3及び第4のサブクローラ30,31とを同一方向に同量だけ旋回させることができるので、例えば階段に対する有線無人走行体4及び無線無人走行体5の上り下り走査を容易に行うことができる。
【0095】
有線無人走行体4及び無線無人走行体5の現在位置は、表示装置202,302に表示された各カメラの撮影映像に基づいて判断できるほか、第1及び第2のインホイールモータ26,27に付設されたエンコーダ26a,27aの出力信号、金属製プーリ62の直径及びクローラベルト38,39の厚みから算出される有線無人走行体4及び無線無人走行体5の走行距離と、エンコーダ26a,27aの出力信号差から算出される有線無人走行体4及び無線無人走行体5の走行方向とからも求めることができる。また、建屋内の設計図面が入手できる場合には、上述のようにして求められた有線無人走行体4及び無線無人走行体5の走行距離及び走行方向と建屋内の設計図面とを照らし合わせることによっても判断することができる。なお、無線無人走行体5については、走査式三次元測距装置106の出力信号から求められる三次元画像に基づいても、現在位置を判断することができる。
【0096】
有線無人走行体4及び無線無人走行体5に搭載された各カメラの撮影映像は、一定時間毎、例えば0.5秒毎にUSBメモリ206,306に記録される。したがって、USBメモリ206,306を回収した後に、USBメモリ206,306の記録データを時間軸に沿って再生することにより、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の走行経路に沿った環境情報を得ることができる。特に、USBメモリ306には、建屋内の状況を撮影した映像と放射線検出器116の検出データを撮影した映像とが記録されているので、これを再生することにより、無線無人走行体5の走行経路に沿った線量データ等も得ることができる。
【0097】
また、USBメモリ306には、走査式二次元測距装置105から出力される二次元距離データも記録される。この二次元距離データは、図20に示すように、受光素子への反射光の入射順501に、光源からのレーザ光の走査範囲に相当する受光素子への反射光の入射角度範囲502毎に、信号処理部で算出された距離データ503が、ミリメータ単位で順次記録されたものとなる。図20の例においては、レーザ光の入射角度範囲502が多数の小角度範囲502a,502b,502c,〜502nに分割され、これらの各小角度範囲502a,502b,502c,〜502n毎に距離データ503が記録されている。このように、本例においては、走査式二次元測距装置105から出力される二次元距離データが、受光素子への反射光の入射順501でリンクされた状態でUSBメモリ306に記録されているので、入射順501を適宜指定して連続的に再生することにより、図13に示すような三次元画像が得られる。
【0098】
また、走査式二次元測距装置105の検出データは、受光素子への反射光の入射時刻でリンクさせることもできる。一方、放射線検出器116として無線送信方式のものを用いた場合には、その検出データにタイムスタンプを自動的に付与することができる。したがって、走査式二次元測距装置105の検出データ及び放射線検出器116の検出データを時間でリンクさせ、時間を適宜指定して連続的に再生することにより、図21に示すような放射線検出器116の検出データが合成された三次元画像が得られる。なお、図21中に記載の数値は、無線無人走行体5の走行経路に沿った放射線検出器116の検出データの変化を模式的に示したものであり、特別な単位に基づく数値を表すものではない。
【0099】
無線無人走行体5が、水位の計測を行おうとする計測対象池の直近まで接近したら、クレーン仰伏モータ103及びクレーン旋回モータ104を駆動して、水位計124を計測対象池の上方に差し出す。しかる後に、水位計ケーブル送り機構111を駆動してケーブルリール123から水位計ケーブル122を所定量だけ引き出し、水位計124を計測対象池に水没させる。水位計124として圧力センサを用いた場合の水位の計測方法は、上述の通りである。水位計124の計測値は、ケーブルリール123上に取り付けられた水位計表示部125に表示され、この表示は水位計読み取りカメラ117により読み取られて、第2操作卓3に伝送される。
【0100】
また、サンプル水の採取を行う場合には、無線無人走行体5を計測対象池の直近まで接近させた状態でクレーン仰伏モータ103及びクレーン旋回モータ104を駆動し、サンプル採取瓶136を計測対象池の上方に差し出す。しかる後に、電動リール131を駆動して吊り糸133を所定量だけ繰り出し、サンプル採取瓶136を計測対象池に水没させる。しかる後に、電動リール131を駆動してサンプル採取瓶136を計測対象池から引き上げ、クレーン仰伏モータ103及びクレーン旋回モータ104を駆動してサンプル採取瓶136をサンプル回収ポット132の直上まで移動する。最後に、電動リール131を駆動してサンプル採取瓶136を下降させ、サンプル回収ポット132内に収納する。
【0101】
予定されたデータ測定やサンプル採取が終了した後は、有線無人走行体4及び無線無人走行体5を逆走し、エアロックALの近傍まで戻す。この際、オペレータは、手持ちコントローラ205,305に備えられた第9押釦スイッチ414又は第10押釦スイッチ415を押圧操作して、有線無人走行体4及び無線無人走行体5の走行モードを往路モードから復路モードに切り換える。これにより、手持ちコントローラ205,305の機能及び表示部202,302の表示内容が復路走行モードに切り換えられ、往路走行モードにおける有線無人走行体4及び無線無人走行体5の前進操作と同一感触で、有線無人走行体4及び無線無人走行体5を前進操作することが可能になる。このように、往路と復路とで有線無人走行体4及び無線無人走行体5の走行方向を変更する構成にすると、有線無人走行体4及び無線無人走行体5をUターンさせる必要が無いので、狭い作業エリア内での有線無人走行体4及び無線無人走行体5の運用が容易になる。また、手持ちコントローラ205,305に備えられた第9及び第10の押釦スイッチを操作することにより、往路における有線無人走行体4及び無線無人走行体5の運用と、復路における有線無人走行体4及び無線無人走行体5の運用とを同一の操作感触で行えるようにしたので、操作の不慣れによる無駄が無く、有線無人走行体4及び無線無人走行体5を高能率に運用することができる。
【0102】
なお、前記実施形態においては、有線無人走行体4及び無線無人走行体5を1台ずつ用いた場合を例にとって説明したが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、必要な数の操作卓を備えることにより、1台の有線無人走行体4を介して複数台の無線無人走行体5を走行させる構成とすることもできる。また、複数台の有線無人走行体4を用い、各有線無人走行体4を介してそれぞれ1台乃至複数台の無線無人走行体5を走行させる構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の無人走行体の遠隔操縦システムは、震災、洪水、地滑り、噴火などの被災地や倒壊した建物内部などの調査に適用される無人走行体の運用に利用できる。
【符号の説明】
【0104】
1…LANケーブル、2,3…操作卓、4…有線無人走行体、5…無線無人走行体、6,7…通信ケーブル、8…無線中継装置、8a…親機、8b…子機、9…無線通信装置、9a…親機、9b…子機、10…ケーブルリール、11…中継器、12…無線LAN、13…通信切換スイッチ、21…本体部、22,23,24,25…走行用プーリ、26,27…インホイールモータ、26a,27a…エンコーダ、28,29,30,31…サブクローラ、32,33,34,35…電動モータ、32a,33a,34a,35a…エンコーダ、36…蓋体、36a…センターバー、37…取付台、38,39…クローラベルト、41…底面板、42…前面板、43…後面板、44,45…側面板、46,47…上面パネル、48…センターフレーム、49…サイドフレーム、50…案内部材、51…ローラ連結体、52…中央空間、53…側面空間、61…回転軸、62…金属製プーリ、62a…係合突起、63,64…ゴム製プーリ、63a,64a…係合突起、63b,64b…凹溝、65…連結板、66…支持軸、71…第1プーリ、72…軸受、73…第2プーリ、74…動力伝達ベルト、75…旋回アーム、76…第3プーリ、77…第4プーリ、78…サブクローラベルト、81A…回転ポール、81B…固定ポール、82…クレーンアーム、83…クレーン仰伏モータ、84…クレーン旋回モータ、85…往路前方カメラ、86…復路前方カメラ、87…通信ケーブル巻き取りモータ、88…俯瞰カメラ、89…通信ケーブルガイド、90…アーム先端カメラ、91…LED照明装置、92…バッテリ、93…ケーブルドラム、94…挿通管、101A…回転ポール、101B…固定ポール、102…クレーンアーム、103…クレーン仰伏モータ、104…クレーン旋回モータ、105…走査式二次元測距装置、106…走査式三次元測距装置、111…水位計ケーブル送り機構、112…往路前方カメラ、113…メインカメラ、114…水位計読み取りカメラ、115…復路前方カメラ、116…放射線検出器、117…放射線検出器読み取りカメラ、118…俯瞰カメラ、120…滑車、122…水位計ケーブル、123…ケーブルリール、124…水位計センサ部、125…水位計表示部、131…電動リール、132…サンプル回収ポット、133…吊り糸、134,135…滑車、136…サンプル採取瓶、201…制御装置本体、202…表示装置、203…タッチパネル入力装置、204…マウス型入力装置、205…手持ちコントローラ、206…USBメモリ、207…キャリアボックス、210…駆動制御画面、211…往路前方カメラ映像表示部、212…復路前方カメラ映像表示部、213…俯瞰カメラ映像表示部、214…先端カメラ映像表示部、215…クレーンアーム姿勢表示部、216…データ表示部、217…姿勢表示部、218,219…機能切換ボタン表示部、218a,219a…ホームボタン、218b,219b…ズームインボタン、218c,219c…ズームアウトボタン、218d,219d…エッジモードボタン、220a…オンボタン、220b…オフボタン、221…情報取得ボタン、222…経過時間表示部、223…サブクローラ駆動表示部、223a…ホームボタン、223b…フラットボタン、223c…駆動モード切換ボタン、223d…走行モード切換ボタン、301…制御装置本体、302…表示装置、303…タッチパネル入力装置、304…マウス型入力装置、305…手持ちコントローラ、306…USBメモリ、307…キャリアボックス、308…タイマー、310…駆動制御画面、311…メインカメラ映像表示部、312…俯瞰カメラ映像表示部、313…往路前方カメラ映像表示部、314…復路前方カメラ映像表示部、315…放射線検出器カメラ映像表示部、316…水位計カメラ映像表示部、317…3Dスキャナ表示部、318…機能切換ボタン表示部、318a…ホームボタン、318b…ズームインボタン、318c…ズームアウトボタン、318d…エッジモードボタン、320a…オンボタン、320b…オフボタン、321…情報取得ボタン、322…経過時間表示部、323…サブクローラ状態表示部、323a…ホームボタン、323b…フラットボタン、323c…駆動モード切換ボタン、323d…走行モード切換ボタン、400…ケーシング、401,402…把持部、403…十字キー、404〜407,410〜417…押釦スイッチ、408,409…ジョイスティック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操縦装置を用いてオペレータにより遠隔操縦される無人走行体と、該無人走行体に搭載された走査式二次元測距装置及び光学カメラと、前記走査式二次元測距装置の検出データ及び前記光学カメラの撮影映像を記憶する情報記憶装置と、前記遠隔操縦装置、前記無人走行体及び前記情報記憶装置の駆動を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記遠隔操縦装置の操作内容に応じた制御信号を出力して前記無人走行体の走行制御を行いながら、前記走査式二次元測距装置の検出データを1走査毎に前記情報記憶装置に記憶すると共に、前記光学カメラの撮影映像を前記情報記憶装置に記憶すること特徴とする無人走行体を用いた環境情報の取得システム。
【請求項2】
前記走査式二次元測距装置は、光源から出射されたレーザ光を回転ミラーで反射して透明窓から放射状に照射し、前記無人走行体の周囲に存在する床面、壁面及び天井面等で反射されて前記透明窓に戻った反射光を、集光レンズを用いて受光素子に集光すると共に、内蔵された信号処理部が、前記光源からのレーザ光の出射タイミングと前記受光素子への反射光の入射タイミングの差から、レーザ光の走査方向に沿った二次元距離データを算出するものであることを特徴とする請求項1に記載の無人走行体を用いた環境情報の取得システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記情報記憶装置に記憶された1走査毎の前記走査式二次元測距装置の検出データをその値に応じた複数のゾーンに分類し、各ゾーン毎に輝点の濃淡やカラーを割り当てると共に、これら輝点の濃淡やカラーが割り当てられた1走査毎の前記走査式二次元測距装置の検出データを時間軸に沿って合成し、距離の変化が輝点の濃淡やカラーで表現された三次元画像を表示装置に表示することを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の無人走行体を用いた環境情報の取得システム。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−111672(P2013−111672A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257754(P2011−257754)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(598163064)学校法人千葉工業大学 (101)
【Fターム(参考)】