説明

無人走行車両のエンジン制御機構

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、地中に埋設した誘導線等に沿って自動操行と停止を行う、無人走行車両のエンジン制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、ゴルフ場のカート等において、誘導線に沿って無人操行を可能とした技術は公知とされているのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明においては、オペレータが乗車した状態で、ペダルの踏込みにより操作可能なアクセルペダルとブレーキペダルを設け、該アクセルペダルの操作を、無線送信機による自動制御操作とバランス良く併立操作可能な如く、電気的に構成したアクセルセンサを操作して、電気信号として踏込み量を送信させるものである。
【0004】このように、電気信号により送信するアクセル信号と、機械操作によるアクセル操作との間の齟齬を無くす為に、アクセルセンサの電圧と目標車速とを関連させて制御したものである。また、アクセルペダルが車速を無視して踏込み操作された場合には、エンジンのスロットルが急に開閉されることにより、アフターバーンが発生するので、この不具合を解消する為に、アクセルセンサと車速センサとを関連制御し、齟齬している場合には機体を停止する制御を行うのである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に該課題を解決する為の手段を説明する。地中に埋設した誘導線を誘導センサにより検出して自動的に操行制御を行い、また発停は無線送信機により遠隔操縦でも、オペレータが乗車してアクセルペダルを操作することによっても可能とした無人走行車両において、手動走行において踏み込み操作するアクセルペダルを設け、該アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサを設け、該アクセルセンサの電圧により目標車速を制御すべく構成し、更に、該アクセルセンサの電圧に対して、車速を検出する車速センサからの電圧が一定の範囲内の電圧となっていない場合には、機体を停止すべく構成したものである。
【0006】
【作用】次に作用を説明する。本発明の無人走行車両は、離れた位置から無線送信機の操作により、発停を行うことができ、また通常の操行は地中に埋設された誘導線を、左右誘導センサにより検出して、該誘導線に沿って操行するのである。そして、オペレータが乗車することも可能であり、乗車した場合には、無線送信機による操作をしなくとも、アクセルペダル15とブレーキペダル13を踏込み操作により、発停と車速の調整が可能に構成している。このアクセルペダル15の踏込みをアクセルセンサ2により検出し、該アクセルセンサ2の電圧値により、目標車速を制御している。また、車速センサにより検出した速度と、アクセルセンサ2の電圧が異常に乖離している場合には、機体を停止するのである。
【0007】
【実施例】次に実施例を説明する。図1は本発明の無人走行可能車両の全体側面図、図2はブレーキペダル13とアクセルペダル15の部分の拡大側面図、図3は同じくブレーキペダル13とアクセルペダル15の部分の拡大平面図、図4は本発明の無人走行可能車両の制御機構のコントローラ入出力図、図5はアクセルセンサによる目標車速制御のフローチャート図、図6は車速センサによる車速と、アクセルセンサとの間の差が大きい場合の制御を示すフローチャート図、図7は自動始動時のオートチョーク制御を示すフローチャート図、図8はオルタネータの出力取出制御のフローチャート図である。
【0008】図1において、無人走行可能車両の構成を説明する。4輪の車輪10により走行する。手動走行時や誘導線の無い部分においては、ステアリングハンドル23により操行する。27は座席、25はレストバー、26は背凭れ、25はバッグフレーム、28はゴルフバック、24は無線送信機とは別に配置された発進・停止スイッチである。
【0009】次に図2・図3において、座席27の足元に構成されたブレーキペダル13とアクセルペダル15について説明する。通常の走行車両のブレーキペダル13は、リンクやアームを介して、ミッションケースの左右に設けられたブレーキ装置の摩擦板を作動すべく連結されているのが普通であるが、本発明の無人走行車両においては、無線送信機による遠隔操作を可能とする為に、ブレーキ装置は、ブレーキシリンダーと緊急ブレーキソレノイドと緊急制動スプリング等により、オペレータの力を入力することなく操作可能としている。
【0010】故に、ブレーキペダル13の踏込みも、直接にブレーキ装置を操作するのではなくて、ブレーキペダルセンサ14を操作することにより、デジタル信号を送信すべく構成している。このブレーキペダルセンサ14からのデジタル信号により、ブレーキシリンダまたは緊急ブレーキソレノイドを操作して制動を行うのである。
【0011】また、ブレーキペダル13と併設されているアクセルペダル15も、従来の走行車両においては、アクセルペダル15からのリンクやアームやワイヤーが、エンジンのスロットルレバーに連結されているのであるが、本構成においては、エンジンのスロットルレバーもスロットルアクチュエータにより電気的に操作されるので、アクセルペダル15の回動によりアクセルセンサ2を回動し、アクセルセンサ2が送信するアナログ信号により、スロットルアクチュエータを対応する角度だけ回動して、エンジンの回転数を変更し、車速を変更すべく構成している。
【0012】以上のような機械的構成に対して、図4に示すコントローラ入出力図の如く、電気的構成がなされている。制御信号入力としては、無線送信機からの信号と、機体の前部に設け、前方を行く他の無人走行可能車両との衝突を阻止する無接触センサと、センサフレームに設けた左右誘導センサと、マグネットセンサと、誘導線を巻いて構成した停止定点を検出する定点停止センサなどである。
【0013】また、アナログ入力として、アクセルペダル15のアクセルセンサ2と、舵角センサと、エンジン回転数センサと、機体の傾斜センサ等である。また、デジタル入力としては、自動手動切替操作スイッチと、発進・停止スイッチ24である。また、検出センサからの信号としては、車速センサと、ブレーキペダルセンサ14と、後進検出センサと、オイルレベルセンサと、障害物検出センサと、衝突センサと、温度センサ等である。これらの入力信号により、コントローラとリレーを介して、スタータとジェネレータを兼用すオルタネータと、エンジン点火ユニットと、緊急ブレーキソレノイドと、チョークソレノイドと、ステアリングソレノイドと、ブレーキシリンダーと、スロットルアクチュエータと、燃料供給ポンプと、バック警報ブザー等が操作される。
【0014】次に図5において、アクセルペダル15により目標車速制御について説明する。通常の車速は、無線送信機により発進信号を出すと、自動的に設定されるのである。しかし手動の場合に、オペレータが乗車してステアリングハンドル23を操作し、アクセルペダル15とブレーキペダル13を操作する場合には、アクセルペダル15の踏込み量により目標車速を決定するのである。そしてこの場合の目標車速は、アクセルペダル15を踏み込むことにより、アクセルセンサ2からの信号電圧の大きさにより決定される。
【0015】次に図6においては、アクセルペダル15により踏込み量が余りにも車速と掛け離れている場合の制御について説明する。この場合には、車速センサにより車速が、現在どの程度であるかの情報を得ておき、この車速に対して、アクセルペダル15の踏込み位置が大きく齟齬する場合には、一気にスロットル開度を調節することとなり、この瞬間にエンジンのシリンダ内に燃料が大量に供給されて、アフターバーン等を発生するので、このようなアクセルペダル15の異常の踏込みに際しては、機体を停止する「停止モード」にて制御すべく判定する。
【0016】次に図7において、始動時のオートチョーク機構について説明する。オペレータが無線送信機を持って、遠くに離れた位置から発進する場合には、それまで停止していたエンジンを始動し、目標車速に合致するような回転数まで上げる必要があるのである。このような始動に際し、低温やその他の理由でエンジンが掛からない場合には、オペレータは離れた位置から何度も、発進ボタンを押す必要があり、操作が面倒となるのである。
【0017】この不具合を解消する為に、本構成においては、発進信号の送信によりエンジンが始動されない場合には、始動モータを5秒間だけONし、3秒間だけOFFするという動作を繰り返すべく制御指示している。そしてこの繰り返しを5回行い、未だ始動しない場合には、「エラーモード」として表示する。そして該5回の始動モータの回転に対して、1回毎にオートチョークをONすべく構成している。そしてエンジンの回転数が1400回転以上となると、エンジン始動が完了したと判断する。
【0018】次に図8においては、始動モータとジェネレータを兼用したオルタネータの制御についてフローチャートを示している。該オルタネータと始動モータとジェネレータを兼用しており、始動時にはモータとして作用するが、その後にエンジンが定格回転となると、ジェネレータとして発電作用を行うのである。従来は始動モータとジェネレータとは別の部品が配置されていたので、不具合は発生しなかったのであるが、本構成の如く、モータとジェネレータと両方に使用する場合には、始動中に発電電力を取り出す作用も平行して出来るので、この電力取り出しを行うと、モータの始動力が低下するのである。本構成においては、図8に示す如く、エンジン回転数が一定回転数以上となるまでは、オルタネータからの電力取り出しを不可能とすべく制御したのである。この間はバッテリーに蓄電された電力を取り出すのである。
【0019】
【発明の効果】本発明は以上の如く構成したものであり、次のような効果を奏するものある。第1に、無線送信機のスイッチによる発停以外にアクセルペダル15の踏込み操作によっても発停を行うことが可能となり、該アクセルペダル15の操作によりアクセルセンサ2を回動し、該アクセルセンサ2からの電圧の変化により、スロットルアクチュエータを操作するので、無線送信機により操作する場合も、アクセルペダル15により操作する場合も、どちらも電気的な操作とすることが出来るのである。またアクセルペダル15により操作する手動制御の場合には、アクセルセンサ2の信号に併せて目標車速が決定されるので、通常の走行車両のアクセルペダル15と同じ感覚で操作することが出来るのである。
【0020】第2に、機械的なアクセルペダル15の踏込みと、電気的なスロットルアクチュエータの操作との間にタイムラグが発生し、そのギャップが極度に大きい場合には、急激にスロットル開度が変化し、エンジンからアフターバーンが発生する可能性がある。このような場合には、機体を停止する「停止モード」にて制御すべく構成したので、アフターバーンを回避し、エンジンの性能の低下を阻止することが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無人走行可能車両の全体側面図。
【図2】ブレーキペダル13とアクセルペダル15の部分の拡大側面図。
【図3】同じくブレーキペダル13とアクセルペダル15の部分の拡大平面図。
【図4】本発明の無人走行可能車両の制御機構のコントローラ入出力図。
【図5】アクセルセンサによる目標車速制御のフローチャート図。
【図6】車速センサによる車速と、アクセルセンサとの間の差が大きい場合の制御を示すフローチャート図。
【図7】自動始動時のオートチョーク制御を示すフローチャート図。
【図8】オルタネータの出力取出制御のフローチャート図。
【符号の説明】
2 アクセルセンサ
13 ブレーキペダル
14 ブレーキペダルセンサ
15 アクセルペダル
23 ステアリングハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 地中に埋設した誘導線を誘導センサにより検出して自動的に操行制御を行い、また発停は無線送信機により遠隔操縦でも、オペレータが乗車してアクセルペダルを操作することによっても可能とした無人走行車両において、手動走行において踏み込み操作するアクセルペダルを設け、該アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサを設け、該アクセルセンサの電圧により目標車速を制御すべく構成し、更に、該アクセルセンサの電圧に対して、車速を検出する車速センサからの電圧が一定の範囲内の電圧となっていない場合には、機体を停止すべく構成したことを特徴とする無人走行車両のエンジン制御機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【特許番号】特許第3095527号(P3095527)
【登録日】平成12年8月4日(2000.8.4)
【発行日】平成12年10月3日(2000.10.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−128947
【出願日】平成4年5月21日(1992.5.21)
【公開番号】特開平5−324071
【公開日】平成5年12月7日(1993.12.7)
【審査請求日】平成10年2月5日(1998.2.5)
【出願人】(000006781)ヤンマーディーゼル株式会社 (3,810)
【参考文献】
【文献】特開 昭63−121556(JP,A)
【文献】特開 昭63−177726(JP,A)
【文献】特開 昭62−35035(JP,A)
【文献】特開 昭61−171879(JP,A)
【文献】特開 昭50−42549(JP,A)
【文献】特開 昭61−66924(JP,A)
【文献】特開 昭63−219849(JP,A)
【文献】実開 昭58−161672(JP,U)