説明

無停電電源装置、処理方法及びプログラム

【課題】鉛蓄電池の残存寿命を正確に予測することにより、鉛蓄電池寿命によるシステムの信頼性や運用性の低下を防止する。
【解決手段】バッテリ温度と期待寿命基準温度とを用いて算出される蓄電池の寿命劣化加速係数を用いて、蓄電池の実際の使用時間と換算使用時間との比となる使用時間加速係数を算出し、期待寿命時間と換算使用時間とを用いて算出される理想残存寿命時間を使用時間加速係数で除算することにより、蓄電池の実効残存寿命時間を算出し、実効残存寿命時間が第1の閾値以下である場合、蓄電池の寿命である旨を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置、処理方法及びプログラムに関し、特に、蓄電池の寿命を管理する機能を有する無停電電源装置、処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータを含む電子機器や情報処理システム、ハブ及びルータを含む通信機器やネットワークシステム等の信頼性及び運用性を向上させるために、様々な手段が考慮されている。そのような手段の1つとして効果の著しいものに、無停電電源装置がある。機器及びシステムの稼働には電源供給が必要不可欠であるため、無停電電源装置は機器及びシステムの信頼性や運用性の向上に大いに寄与している。
【0003】
無停電電源装置は蓄電池を有しているので、入力される交流電源が停電になった場合にも蓄電池に蓄えられた電力を所定の時間(以下、バッテリ保持時間と称する)、電子機器に供給できる。したがって、無停電電源装置は停電時間が短い場合、停電が復旧するまで電子機器に電力を供給することができる。一方、停電時間が長い場合、無停電電源装置は蓄電池の電力量(放電可能な容量)を考慮した上で電子機器の動作を再開できる状態で停止する(シャットダウンする)こともできる。
【0004】
無停電電源装置用の蓄電池として、メンテナンスフリー化、小型化、低価格化等の要求から、制御弁式鉛蓄電池が広く使用されている。
【0005】
ところで、鉛蓄電池に使用されている正極板は、鉛合金からなる正極格子に活物質として二酸化鉛が充填されたものであり、充電によって格子体の表面は酸化腐食されて体積が膨張し、活物質の脱落や内部応力の発生をもたらし、格子体の強度を低下させるとともに格子体を伸ばさせる。また一方、電解液中の水分減少が格子体の表面の酸化腐食とともに進行し、結果として鉛蓄電池の劣化を進行させ、バッテリ保持時間の短縮をもたらす。このように、鉛蓄電池は、使用経過とともに性能が寿命劣化し、同じ充放電条件でもバッテリ保持時間が短縮していくことが知られている。
【0006】
通常、鉛蓄電池は、ある温度までは、設置環境温度が低いと寿命が長く容量劣化が少なくなり、反対に設置環境温度が高くなると寿命が短く容量劣化が激しくなる。
【0007】
例えば、鉛蓄電池の周囲温度が25℃と35℃では温度差が10℃であるが、35℃における寿命は25℃の1/2程度になり、所謂10℃2倍則(あるいはアレニウスの法則として知られている化学反応の法則)で劣化が進行する。従って、例えば、周囲温度が25℃で通常の使用における期待寿命が5年の鉛蓄電池は、周囲温度が35℃では実効期待寿命が25℃の1/2の2.5年となり、周囲温度が45℃では実効期待寿命が25℃の1/4の1.25年になることが知られている。なお、一般に、満充電した状態で初期の放電容量の半分(50%)まで低下した状態を鉛蓄電池の寿命と呼んでいる。
【0008】
そこで、無停電電源装置の性能上や安全上のために、蓄電池の周囲温度を測定して蓄電池の寿命や劣化程度、あるいは蓄電池性能を検知する方法が種々提案されている。例えば、特許文献1には、蓄電池の劣化状態を診断する手段が記載されており、蓄電池の温度を監視するだけで蓄電池の劣化状態を診断し、蓄電池が寿命に至るまでの期間を予知することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−293539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の劣化診断手段では、実使用される蓄電池の周囲温度による寿命劣化加速を劣化診断に反映させることができるが、蓄電池が今後寿命に至るまでの予知には反映させることができないという問題点がある。
【0011】
例えば、周囲温度が25℃で通常の使用における期待寿命が5年の鉛蓄電池は、例えば平均周囲温度が夫々25℃、35℃、45℃で実使用時間として1年間使用した後の劣化診断結果に相当する温度加速使用時間は、夫々、1年、2年、4年となる。その場合の残存寿命は、期待寿命の5年から温度加速使用時間を減算した、夫々、4年、3年、1年と認識する。しかしながら、蓄電池の周囲温度は、その蓄電池を搭載する機器の移設や空調条件の大きな変更がないかぎり通常は大きく変化することはなく、使用1年後の実効残存寿命は夫々、4年、1.5年、0.25年となる。つまり、特許文献1に記載の劣化診断手段では、実使用される蓄電池の周囲温度による寿命劣化加速が劣化診断に反映されるが、蓄電池の残存寿命予知には反映できない。これは周囲温度が高くなるほど顕著になる。このことは、システムの信頼性、運用性の低下を防止するためには蓄電池が寿命に達する前にこの蓄電池の計画交換することが重要になるが、これを妨げる。
【0012】
本願発明は、上述した技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、鉛蓄電池の残存寿命を正確に予測することにより、鉛蓄電池寿命によるシステムの信頼性や運用性の低下を防止することができる無停電電源装置、処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、
表面温度もしくは周囲温度に応じて残存寿命時間が決まる蓄電池と、
前記蓄電池の表面温度もしくは周囲温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段にて検出された温度と、前記蓄電池の期待寿命時間が決まる期待寿命基準温度とを用いて10℃2倍則によって算出される前記蓄電池の寿命劣化加速係数を用いて、前記蓄電池の実際の使用時間と前記温度検出手段にて検出された温度によって換算された換算使用時間との比となる使用時間加速係数を算出し、前記期待寿命時間と前記換算使用時間とを用いて算出される理想残存寿命時間を前記使用時間加速係数で除算することにより、前記蓄電池の実効残存寿命時間を算出する制御手段と、
前記制御手段にて算出された前記実効残存寿命時間が第1の閾値以下である場合、蓄電池の寿命である旨を通知する通知手段とを有する。
【0014】
また、表面温度もしくは周囲温度に応じて残存寿命時間が決まる蓄電池を有する無停電電源装置における処理方法であって、
前記蓄電池の表面温度もしくは周囲温度を検出する処理と、
前記検出された温度と、前記蓄電池の期待寿命時間が決まる期待寿命基準温度とを用いて10℃2倍則によって算出される前記蓄電池の寿命劣化加速係数を用いて、前記蓄電池の実際の使用時間と前記検出された温度によって換算された換算使用時間との比となる使用時間加速係数を算出する処理と、
前記期待寿命時間と前記換算使用時間とを用いて算出される理想残存寿命時間を前記使用時間加速係数で除算することにより、前記蓄電池の実効残存寿命時間を算出する処理と、
前記算出された前記実効残存寿命時間が第1の閾値以下である場合、蓄電池の寿命である旨を通知する処理とを有する。
【0015】
表面温度もしくは周囲温度に応じて残存寿命時間が決まる蓄電池を有する無停電電源装置に実行させるためのプログラムであって、
前記蓄電池の表面温度もしくは周囲温度を検出する手順と、
前記検出された温度と、前記蓄電池の期待寿命時間が決まる期待寿命基準温度とを用いて10℃2倍則によって算出される前記蓄電池の寿命劣化加速係数を用いて、前記蓄電池の実際の使用時間と前記検出された温度によって換算された換算使用時間との比となる使用時間加速係数を算出する手順と、
前記期待寿命時間と前記換算使用時間とを用いて算出される理想残存寿命時間を前記使用時間加速係数で除算することにより、前記蓄電池の実効残存寿命時間を算出する手順と、
前記算出された前記実効残存寿命時間が第1の閾値以下である場合、蓄電池の寿命である旨を通知する手順とを実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、蓄電池の残存寿命を正確に予測することにより、この予測した残存寿命を通知することで、鉛蓄電池寿命によるシステムの信頼性や運用性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の無停電電源装置の実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示した記憶部内のROMの寿命劣化加速係数格納エリアに格納される数値の一例を示す図である。
【図3】図1に示した無停電電源装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】図1に示した無停電電源装置の動作の他の例を示すフローチャートである。
【図5】図1に示した無停電電源装置の動作の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の無停電電源装置の実施の一形態を示すブロック図である。
【0020】
本形態は図1に示すように、コンバータ11と、インバータ12と、鉛蓄電池13と、温度検出手段となるサーミスタ14及び蓄電池温度検出器15と、制御部16と、入力端子A及び出力端子Bとを備えている。
【0021】
入力端子Aは、商用電源等の入力電源(不図示)から交流電力を入力する。コンバータ11は、入力端子Aに接続され、入力端子Aに入力された交流電力を直流電力に変換して出力する。インバータ12は、出力端子Bに接続され、コンバータ11から出力された直流電力を、所定の交流電力に逆変換する。出力端子Bは、インバータ12から出力された交流電力を、接続された負荷機器(不図示)に供給する。
【0022】
コンバータ11とインバータ12の間には、鉛蓄電池13が接続されている。鉛蓄電池13は、コンバータ11から出力された直流電力が入力され、この直流電力によって充電される。サーミスタ14は、鉛蓄電池13の表面温度もしくは周囲温度(以下、バッテリ温度と称する)を測定する。蓄電池温度検出器15は、サーミスタ14にて測定された温度に対応する電圧値Vbtを算出するとともに、それを制御部16に供給する。
【0023】
制御部16は、蓄電池温度検出器15からのデータを取得するものであって、A/Dコンバータ21と、制御手段となるプロセッサ22と、記憶部23と、通知手段となる蓄電池寿命通知部24とを備える。
【0024】
記憶部23は、コンピュータ(ソフトウェア)・プログラム(以下、プログラムと称する)、データ等を保持する。読み書き可能な一次メモリまたはハードディスク装置等の不揮発性の記憶デバイス(記憶媒体)である。記憶部23は、無停電電源装置10の電源が切断された場合にもその内容を保持する。記憶部23は、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、電池等により電源をバックアップされたRAM(Random Access Memory)により実現できる。ただし、設定情報やデータはROM以外の記憶手段に格納される。記憶部23に格納されるプログラムは、後述する蓄電池寿命の判定及び通知を実行するプログラムと、その他公知の無停電電源装置10の動作を実行するプログラムを含む。
【0025】
A/Dコンバータ21は、蓄電池温度検出器15から取得したアナログデータである電圧値Vbtをデジタルデータであるバッテリ温度Tbに変換するとともに、そのバッテリ温度Tbをプロセッサ22に供給する。
【0026】
プロセッサ22は、記憶部23からプログラムを読み出して実行することにより、制御部16の動作を司る。本形態及び他の実施の形態において、プロセッサ22は、記憶部23を適宜参照しながら、制御部16が備える各機能(各部)のプログラムを実行する。具体的には、プロセッサ22は、記憶部23を適宜参照しながら、制御部16が備える蓄電池寿命通知部24及びその他公知の無停電電源装置10の動作を実行するプログラムを実行する。プロセッサ22は、プログラムの実行の結果、鉛蓄電池13の交換時期あるいは鉛蓄電池13の寿命を検出すると、蓄電池寿命通知部24に、鉛蓄電池13の交換時期を含む蓄電池交換時期情報あるいは鉛蓄電池13が寿命に至ったことを含む蓄電池寿命情報を通知する。
【0027】
蓄電池寿命通知部24は、プロセッサ22から蓄電池交換時期情報あるいは蓄電池寿命情報を取得すると、鉛蓄電池13の交換時期である旨や鉛蓄電池13が寿命である旨を知らせる異常ランプ(不図示)を点灯させたり、鉛蓄電池13の交換時期である旨や鉛蓄電池13が寿命である旨を知らせるブザー(不図示)を鳴動させたり、鉛蓄電池13の交換時期である旨や鉛蓄電池13が寿命である旨を負荷機器(不図示)や監視装置(不図示)に通知したりする。これにより、無停電電源装置10は、鉛蓄電池13が交換時期あるいは寿命に至ったことを管理者等に知らせる。
【0028】
なお、図1には、鉛蓄電池13に充電を行う充電回路を図示していないが、充電電圧を安定に保ったり、過充電を防止したりする公知の充電回路を備えることが望ましい。
【0029】
以下に、上記のように構成された無停電電源装置10の動作について説明する。
【0030】
定常時、無停電電源装置10は、入力端子Aを介して得られる商用電源等の入力電源からの交流電力を、コンバータ11によって所定の直流電力に変換して出力する。コンバータ11から出力された直流電力は、蓄積用直流エネルギーとして鉛蓄電池13に供給され、これにより鉛蓄電池13は充電される。コンバータ11から出力された直流電力はまた、インバータ12に入力され、インバータ12によって再び所定の交流電力に変換される。この交流電力は、出力端子Bを介して負荷機器(不図示)に供給される。
【0031】
停電が発生したとき、すなわち、入力端子Aに入力される交流電力が途絶えたとき、コンバータ11から出力される所定の直流電力は絶たれる。そして、鉛蓄電池13からインバータ12に直流電力が供給される。インバータ12は、鉛蓄電池13から供給された直流電力を所定の交流電力に変換して、出力端子Bを介して負荷機器に供給する。その結果、無停電電源装置10は、停電が発生したときにも、所定の出力の交流電力を、所定の時間(バッテリ保持時間)、出力端子Bを介して負荷機器に供給することができる。
【0032】
停電が回復(復電)したとき、無停電電源装置10は、入力端子Aを介して得られる商用電源等の入力電源からの交流電力をコンバータ11によって所定の直流電力に変換して出力し、コンバータ11から出力された蓄積用直流エネルギーは、鉛蓄電池13に供給され、これにより鉛蓄電池13は充電される。
【0033】
無停電電源装置10の作動中、サーミスタ14は鉛蓄電池13のバッテリ温度を常時測定し、測定したバッテリ温度を蓄電池温度検出器15に供給する。蓄電池温度検出器15は、サーミスタ14から供給されたバッテリ温度を、それに対応する電圧値Vbtに変換し、この電圧値VbtをA/Dコンバータ21に出力する。
【0034】
A/Dコンバータ21は、蓄電池温度検出器15から出力されたアナログデータである電圧値Vbtをデジタルデータであるバッテリ温度Tbに変換し、そのバッテリ温度Tbをプロセッサ22に出力する。
【0035】
一方、無停電電源装置10が使用する鉛蓄電池13の寿命情報を記憶部23に格納する。例えば、期待寿命基準温度T0=25℃における期待寿命時間L0=5年の鉛蓄電池の場合、L0=24×365×5=43800(時間)として記憶部23に格納する。無停電電源装置10が使用する鉛蓄電池13の寿命が、例えば、5年に固定される場合は、記憶部23内のROMの期待寿命格納エリア(不図示)に「43800」を格納しても良いし、例えば、期待寿命時間L0=5年、7年、10年のタイプから状況に応じて選択する場合は、記憶部23内のRAMの期待寿命格納エリア(不図示)に「43800」、「61320」、「87600」を選択設定してもよい。本形態では、鉛蓄電池13の期待寿命時間L0は5年で、記憶部23内のROMの期待寿命格納エリアに「43800」を予め格納しているものとする。
【0036】
また、交換通知時間L5を記憶部23に格納する。例えば、鉛蓄電池13の計画交換に必要な期間が3ヶ月(90日)の場合、L5=24×90=2160(時間)として記憶部23に格納する。例えば、交換通知時間L5=3ヶ月、6ヶ月(180日)の中から運用状況に応じて選択する場合は、記憶部23内のRAMの交換通知時間格納エリア(不図示)に「2160」、「4320」を選択設定してもよい。本形態では、鉛蓄電池13の計画交換に必要な期間が3ヶ月で、記憶部23内のROMの交換通知時間格納エリアに「2160」を予め格納しているものとする。
【0037】
他方、バッテリ温度Tbから一義的に算出される寿命劣化加速係数αを、10℃2倍則を用いてα=2[(Tb-T0)/10]として算出し、記憶部23内のROMの寿命劣化加速係数格納エリア(不図示)に格納する。
【0038】
図2は、図1に示した記憶部23内のROMの寿命劣化加速係数格納エリアに格納される数値の一例を示す図である。
【0039】
プロセッサ22は、A/Dコンバータ21から出力されるバッテリ温度Tbを1分毎に計測し、計測データを記憶部23内のRAMのバッテリ温度Tb積算エリア(不図示)に格納する。プロセッサ22は、1時間経過する毎に、記憶部23内のRAMの使用時間L1積算エリアの数値を1カウント加算するとともに、バッテリ温度Tb積算エリアに積算される値を60で除算することにより、平均温度Tbmを算出する。そして、平均温度Tbmを算出する毎に、記憶部23内のRAMの換算使用時間L2積算エリアの数値を、寿命劣化加速係数格納エリア内の平均温度Tbmに対応する寿命劣化加速係数であるαカウントを加算する。ある1時間における使用時間L1積算エリアの数値は1カウント加算するが、換算使用時間L2積算エリアに対しては、その間の平均温度が、例えば、30℃の場合は、1.41カウント加算し、例えば、35℃の場合は、2.00カウント加算することになる。
【0040】
図2に示すように、記憶部23内のROMの寿命劣化加速係数格納エリアには、バッテリ温度Tbの平均値Tbmに対応して、バッテリ温度Tbから一義的に算出される寿命劣化加速係数αが格納されている。なお、本形態では、プロセッサ22の負荷を軽減するため、小数点以下3桁目を四捨五入した値を用いている。
【0041】
プロセッサ22は、使用時間加速係数βを、換算使用時間L2を蓄電池使用時間L1で除算し、β=L2/L1として算出する。
【0042】
次に、プロセッサ22は、鉛蓄電池13の理想残存寿命時間L3を、期待寿命時間L0から換算使用時間L2を減算し、L3=L0−L2として算出する。
【0043】
次に、プロセッサ22は、鉛蓄電池13の実効残存寿命時間L4を、理想残存寿命時間L3を使用時間加速係数βで除算し、L4=L3/βとして算出する。
【0044】
プロセッサ22は、蓄電池13の交換時期を、蓄電池13の寿命の例えば3ヶ月前とする場合は、第2の閾値としてL5=2160を設定し、L4≦L5=2160で蓄電池交換フラグをオンする。蓄電池交換フラグとは、プロセッサ22が内部に保持するフラグである。
【0045】
プロセッサ22は、蓄電池交換フラグをオンにすると、蓄電池寿命通知部24に対し、蓄電池13の交換時期である旨を知らせる異常ランプを点灯させたり、蓄電池13の交換時期である旨を知らせるブザーを鳴動させたり、蓄電池13の交換時期を負荷機器や監視装置に通知したりする。これにより、無停電電源装置10は、蓄電池13が交換時期に至ったことを管理者等に知らせる。
【0046】
鉛蓄電池13を交換しないで継続使用する場合は、プロセッサ22は、第1の閾値を0として、鉛蓄電池13の実効残存寿命時間L4≦0で蓄電池寿命フラグをオンする。蓄電池寿命フラグとは、プロセッサ22が内部に保持するフラグである。
【0047】
プロセッサ22は、蓄電池寿命フラグをオンにすると、蓄電池交換フラグをオフするとともに蓄電池寿命通知部24に対し、蓄電池13が寿命である旨を知らせる異常ランプを点灯させたり、蓄電池13が寿命である旨を知らせるブザーを鳴動させたり、蓄電池13が寿命である旨を負荷機器や監視装置に通知したりする。これにより、無停電電源装置10は、蓄電池13が寿命に至ったことを管理者等に知らせる。
【0048】
以下に、図1に示した無停電電源装置10の鉛蓄電池13の残存寿命を正確に予測するとともに寿命に至る前に通知する動作についてフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0049】
図3は、図1に示した無停電電源装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
【0050】
無停電電源装置10の作動中、サーミスタ14は鉛蓄電池13のバッテリ温度を常時測定し、測定した値を蓄電池温度検出器15に出力する。蓄電池温度検出器15は、サーミスタ14から出力されたバッテリ温度を、それに対応する電圧値Vbtに変換し、この電圧値VbtをA/Dコンバータ21に出力する。
【0051】
A/Dコンバータ21は、蓄電池温度検出器15から出力されたアナログデータである電圧値Vbtをデジタルデータであるバッテリ温度Tbに変換し、このバッテリ温度Tbをプロセッサ22に出力する。
【0052】
無停電電源装置10を初めて起動する際、Tb積算エリア、L1積算エリア、L2積算エリアの数値を「0」にイニシャライズし、L0設定エリアに数値「43800」をセットし、L3積算エリア、L4積算エリアに期待寿命時間L0をセットし、L5設定エリアに数値「2160」をセットする(ステップ100)。
【0053】
プロセッサ22は、内蔵タイマ(不図示)をスタートさせ(ステップ101)、1分間を計測する(ステップ102)。
【0054】
1分経過しない場合は、鉛蓄電池13の実効残存寿命L4が0以下か否かを判定するステップ115に移行する。
【0055】
1分経過すると、プロセッサ22は、A/Dコンバータ21からバッテリ温度Tbを取得する(ステップ103)。例えば、プロセッサ22は、バッテリ温度Tbを1秒間隔で5回サンプリングし、その最大値と最小値を切り捨て、3回分の値の平均をバッテリ温度Tbとしてもよい。
【0056】
プロセッサ22は、A/Dコンバータ21から取得したバッテリ温度Tbを、記憶部23内のRAMのバッテリ温度Tb積算エリアに加算する(ステップ104)。
【0057】
こうして、1分ごとに取得したバッテリ温度Tbを、1時間分取得したか否かをチェックする(ステップ105)。
【0058】
1時間経過しない場合は、鉛蓄電池13の実効残存寿命L4が0以下か否かを判定するステップ115に移行する。
【0059】
1時間経過すると、プロセッサ22は、記憶部23内のRAMの使用時間L1積算エリアの数値を1カウント加算する(ステップ106)。
【0060】
さらに、プロセッサ22は、バッテリ温度Tb積算エリアに積算される値を60で除算することにより、平均温度Tbmを算出する(ステップ107)。
【0061】
そして、プロセッサ22は、算出した平均温度Tbmが25℃未満か否かを判定する(ステップ108)。
【0062】
算出した平均温度Tbmが25℃未満の場合は、プロセッサ22は、平均温度Tbmを25℃にセットする(ステップ109)。
【0063】
プロセッサ22は、平均温度Tbmに対応する寿命劣化加速係数αを、記憶部23内のROMの寿命劣化加速係数格納エリア内から取得する(ステップ110)。
【0064】
プロセッサ22は、取得した寿命劣化加速係数αを、記憶部23内のRAMの換算使用時間L2積算エリアに加算する(ステップ111)。
【0065】
次に、プロセッサ22は、平均温度Tbmによって換算された換算使用時間L2を、蓄電池13の実際の使用時間L1で除算し、β=L2/L1として算出する(ステップ112)。
【0066】
次に、プロセッサ22は、鉛蓄電池13の理想残存寿命時間L3を、記憶部23内のROMの期待寿命格納エリアに格納されている期待寿命時間L0(本形態では、「43800」)から換算使用時間L2を減算して、L3=L0−L2として算出する(ステップ113)。
【0067】
そして、プロセッサ22は、鉛蓄電池13の実効残存寿命時間L4を、理想残存寿命L3を使用時間加速係数βで除算して、L4=L3/βとして算出する(ステップ114)。
【0068】
その後、プロセッサ22は、鉛蓄電池13の実効残存寿命L4が0以下か否かを判定する(ステップ115)。
【0069】
鉛蓄電池13の実効残存寿命時間L4が0以下の場合は、プロセッサ22は、蓄電池寿命フラグをオンにし、蓄電池13が寿命である旨を蓄電池寿命通知部24を介して通知する(ステップ116)。
【0070】
鉛蓄電池13の実効残存寿命時間L4が0以下でない場合は、プロセッサ22は、実効残存寿命時間L4が交換通知時間L5以下か否かを判定する(ステップ117)。
【0071】
実効残存寿命時間L4が交換通知時間L5以下の場合は、プロセッサ22は、蓄電池交換時期フラグをオンにし、蓄電池13の交換時期である旨を、蓄電池寿命通知部24を介して通知する(ステップ118)。
【0072】
その後、プロセッサ22は、バッテリ温度Tb積算エリアの数値を「0」にイニシャライズし、ステップ102に戻る(ステップ119)。
【0073】
プロセッサ22は、蓄電池交換フラグをオンにすると、蓄電池寿命通知部24に対し、蓄電池13の交換時期である旨を知らせる異常ランプを点灯させたり、蓄電池13の交換時期である旨を知らせるブザーを鳴動させたり、蓄電池13の交換時期を負荷機器や監視装置に通知したりする。これにより、無停電電源装置10は、蓄電池が交換時期に至ったことを管理者等に知らせる。
【0074】
鉛蓄電池13を交換しないで継続使用する場合、プロセッサ22は、鉛蓄電池13の実効残存寿命時間L4≦0で蓄電池寿命フラグをオンする。蓄電池寿命フラグとは、プロセッサ22が内部に保持するフラグである。
【0075】
プロセッサ22は、蓄電池寿命フラグをオンにすると、蓄電池交換フラグをオフするとともに蓄電池寿命通知部24に対し、蓄電池13が寿命である旨を知らせる異常ランプを点灯させたり、蓄電池13が寿命である旨を知らせるブザーを鳴動させたり、蓄電池13が寿命である旨を負荷機器や監視装置に通知したりする。これにより、無停電電源装置10は、蓄電池が寿命に至ったことを管理者等に知らせる。
【0076】
以上説明したように、本形態によれば、蓄電池13の残存寿命を正確に予測するとともに、寿命に至る前に通知することにより、鉛蓄電池寿命によるシステムの信頼性や運用性の低下を防止することができる効果が得られる。
【0077】
(他の実施の形態)
図4は、図1に示した無停電電源装置10の動作の他の例を示すフローチャートである。
【0078】
本例は、図3に示したものに対して、ステップ102及びステップ105の分岐とステップ114とが交わる点と、ステップ115との間に、交換通知時間L5を読み込むステップ120を備える点が異なる。また、交換通知時間L5を変更するか否かを判断するステップ121と、交換通知時間L5を変更すると判断した場合に交換通知時間L5を設定変更するステップ122とを備える点が異なる。
【0079】
本例によれば、蓄電池13の残存寿命を正確に予測するとともに、ある時点での交換用蓄電池の手配から入手までの所用期間に合わせ、寿命に至る前に通知する交換通知時間を適宜設定できるように構成したことにより、鉛蓄電池寿命によるシステムの信頼性や運用性の低下をさらに防止することができる効果が得られる。
【0080】
図5は、図1に示した無停電電源装置10の動作の他の例を示すフローチャートである。
【0081】
本例は、図3に示したものに対して、残寿命を表示するか否かを判断するステップ123と、残寿命を表示すると判断した場合に理想残存寿命時間L3と実効残存寿命時間L4とを表示するステップ124を備える点が異なる。
【0082】
本例によれば、蓄電池の残存寿命を正確に予測するとともに、これまでの使用温度環境を継続した場合の実効残存寿命時間と、使用温度環境を25℃以下の理想的環境にした場合の実効残存寿命を適宜参照できるように構成したことにより、鉛蓄電池寿命延命のための改善が図れ、もって鉛蓄電池寿命によるシステムの信頼性や運用性の低下をさらに防止することができる効果が得られる。
【0083】
以上、本発明についていくつかの実施例を例に挙げて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。例えば、無停電電源装置の構成や制御方式に関しては、直流出力無停電電源装置を含めて他の無停電電源装置の構成や制御方式、処理フローチャート等を用いる場合にも本発明を適用することができる。また、上記実施形態では、無停電電源装置用の蓄電池として制御弁式鉛蓄電池を使用しているが、ニッケル水素蓄電池等、使用環境により寿命劣化する特性を持つ他のタイプの蓄電池を使用する場合にも本発明を適用することができる。
【0084】
なお、本発明においては、無停電電源装置内の処理は上述の専用のハードウェアにより実現されるもの以外に、その機能を実現するためのプログラムを無停電電源装置にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを無停電電源装置に読み込ませ、実行するものであっても良い。無停電電源装置にて読取可能な記録媒体とは、ICカードやメモリカード、あるいは、フロッピーディスク(登録商標)、光磁気ディスク、DVD、CD等の移設可能な記録媒体の他、無停電電源装置に内蔵されたHDD等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、例えば、制御ブロックにて読み込まれ、制御ブロックの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。
【符号の説明】
【0085】
10 無停電電源装置
11 コンバータ
12 インバータ
13 鉛蓄電池
14 サーミスタ
15 蓄電池温度検出器
16 制御部
21 A/Dコンバータ
22 プロセッサ
23 記憶部
24 蓄電池寿命通知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面温度もしくは周囲温度に応じて残存寿命時間が決まる蓄電池と、
前記蓄電池の表面温度もしくは周囲温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段にて検出された温度と、前記蓄電池の期待寿命時間が決まる期待寿命基準温度とを用いて10℃2倍則によって算出される前記蓄電池の寿命劣化加速係数を用いて、前記蓄電池の実際の使用時間と前記温度検出手段にて検出された温度によって換算された換算使用時間との比となる使用時間加速係数を算出し、前記期待寿命時間と前記換算使用時間とを用いて算出される理想残存寿命時間を前記使用時間加速係数で除算することにより、前記蓄電池の実効残存寿命時間を算出する制御手段と、
前記制御手段にて算出された前記実効残存寿命時間が第1の閾値以下である場合、蓄電池の寿命である旨を通知する通知手段とを有する無停電電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無停電電源装置において、
前記通知手段は、前記制御手段にて算出された前記実効残存寿命時間が前記第1の閾値よりも大きな第2の閾値以下である場合、蓄電池の交換時期である旨を通知する無停電電源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無停電電源装置において、
前記温度検出手段にて検出された温度が積算して格納される記憶手段を有し、
前記制御手段は、前記記憶手段に積算して格納された温度の平均値を算出し、該平均値と前記期待寿命基準温度とを用いて算出される前記蓄電池の寿命劣化加速係数を用いて、前記蓄電池の実際の使用時間と前記平均値によって換算された換算使用時間との比となる使用時間加速係数を算出する無停電電源装置。
【請求項4】
表面温度もしくは周囲温度に応じて残存寿命時間が決まる蓄電池を有する無停電電源装置における処理方法であって、
前記蓄電池の表面温度もしくは周囲温度を検出する処理と、
前記検出された温度と、前記蓄電池の期待寿命時間が決まる期待寿命基準温度とを用いて10℃2倍則によって算出される前記蓄電池の寿命劣化加速係数を用いて、前記蓄電池の実際の使用時間と前記検出された温度によって換算された換算使用時間との比となる使用時間加速係数を算出する処理と、
前記期待寿命時間と前記換算使用時間とを用いて算出される理想残存寿命時間を前記使用時間加速係数で除算することにより、前記蓄電池の実効残存寿命時間を算出する処理と、
前記算出された前記実効残存寿命時間が第1の閾値以下である場合、蓄電池の寿命である旨を通知する処理とを有する処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の処理方法において、
前記算出された前記実効残存寿命時間が前記第1の閾値よりも大きな第2の閾値以下である場合、蓄電池の交換時期である旨を通知する処理を有する処理方法。
【請求項6】
表面温度もしくは周囲温度に応じて残存寿命時間が決まる蓄電池を有する無停電電源装置に、
前記蓄電池の表面温度もしくは周囲温度を検出する手順と、
前記検出された温度と、前記蓄電池の期待寿命時間が決まる期待寿命基準温度とを用いて10℃2倍則によって算出される前記蓄電池の寿命劣化加速係数を用いて、前記蓄電池の実際の使用時間と前記検出された温度によって換算された換算使用時間との比となる使用時間加速係数を算出する手順と、
前記期待寿命時間と前記換算使用時間とを用いて算出される理想残存寿命時間を前記使用時間加速係数で除算することにより、前記蓄電池の実効残存寿命時間を算出する手順と、
前記算出された前記実効残存寿命時間が第1の閾値以下である場合、蓄電池の寿命である旨を通知する手順とを実行させるためのプログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムにおいて、
前記算出された前記実効残存寿命時間が前記第1の閾値よりも大きな第2の閾値以下である場合、蓄電池の交換時期である旨を手順を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−61225(P2013−61225A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199513(P2011−199513)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000232140)NECフィールディング株式会社 (373)
【出願人】(000180025)山洋電気株式会社 (170)
【Fターム(参考)】