無傷の細胞壁を有する単一懸濁細胞としての植物細胞株の誘導および維持、ならびにその形質転換のためのインビトロ方法
本発明は、懸濁細胞凝集体を無傷の一次細胞壁を有する単一細胞へ分解するためのシンプルかつ一貫した方法を提供する。本発明は、ペクチン分解酵素またはコルヒチンを含むチューブリン脱重合化合物を含有する培地において培養された懸濁細胞凝集体の細胞分離に、一部関する。本発明はまた、このような目的のための化合物の新規の使用に関する。本発明の別の局面は、本発明の単離細胞の形質転換に関する。このようなプロセスは、単一細胞に基づく形質転換および選択プロセスを、トランスジェニックおよびトランスプラストミックイベントを産生する作業プロセスへと単純化および一体化する。本発明はまた、技術的制約を取り除き、動物薬(animal health)、生物薬剤(biopharma)、ならびに形質および作物保護プラットフォームの種々の必要性を支援するために、ハイスループット様式で、マーカーフリーかつ均一発現性のトランスジェニック株を作製する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年12月29日に出願された仮出願第60/878,028号の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、植物細胞を単一細胞として懸濁液中において増殖させる方法を含む、植物細胞株の増殖の分野に、一部関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
過去20年にわたって、有用な二次代謝産物の産生のための大規模植物細胞培養プロセスの開発における大幅な改善と一体となった、植物遺伝子工学技術の急速な出現があった。1995年から(Moffat,1995年;Maら,2003年)、このような植物細胞懸濁培養物は、組換えタンパク質の発現のための価値ある宿主細胞系としてますます使用されている。
【0004】
オーキシン誘導されたカルス組織または懸濁液は、それらは単一の組織起源であるにもかかわらず、通常、種々の表現型を有する細胞を含有する。従って、このような細胞タイプから開発されたトランスジェニック株は、通常、発現レベルに一貫性がなく非常に不均質である。従って、多くの有用な二次代謝産物を産生するクローンは、単一のプロトプラストから得られている;即ち、ムラサキ(Lithospermum erythrorhizon)プロトプラストから作製された高シコニン産生細胞クローン(Maedaら,1983年)。
【0005】
今まで、細胞選択のためだけでなく、培養植物細胞のエレクトロポレーション/PEG媒介形質転換のためにも、プロトプラストを形成し細胞を解離させることが必要であった。プロトプラスト作製は、植物組織から単一の細胞クローンを単離するために必要とされてきた。しかし、単離されたプロトプラストは、通常、静止状態にあって分裂し難いため(HahneおよびHoffmann,1984年)、プロトプラストがそれらの正常な細胞壁を再生することは通常困難である。培養プロトプラストについての多くの研究において、産生される第1の、かつ主要な多糖類はカロースであり、これは、1,3-,8-グルコピラノースから構成される(Kleinら,1981年)。
【0006】
損傷またはストレスを受けた植物は、しばしば、ペリプラズム空間中へこのグルカンを多量に分泌する(Currier,1957年)。細胞壁再生の初期段階の間、セルロースとキシログルカンとの結合は、無傷の植物におけるものほど強力でない(Hayashiら,1986年)。一次細胞壁中のキシログルカンおよびセルロースの高分子構成が強度および伸展性を担うようであるので(HayashiおよびMaclachlan,1984年)、プロトプラストの周囲におけるキシログルカンならびにセルロースの堆積は、それらの分裂能および成長能に重要であるようである。この前提条件は、プロトプラストの分裂を失速させ、従って、親株の細胞特性を有する正常細胞へ再生する時間を増加させる。
【0007】
従って、植物細胞培養の分野における進行中の技術的挑戦は、培養中の植物組織からクローニングされ得る単一の生存可能な細胞を単離することである(Bourgin,1983年;Tabataら,1976年)。懸濁培養において、不均一細胞凝集体が常に形成され、各々のこのような凝集体は、100個までの細胞を含有する。これら凝集細胞間の結合については何ら公知でなく、細胞凝集体を分離し、かつそれらをインビトロで無傷の細胞壁を有する単一細胞として維持することができる単一の酵素を同定した報告はない。
【0008】
細胞接着性におけるペクチンの役割が、いくつかの報告において示唆されたが、このような関連性は、比較的より最近になって確立された(Boutonら,2002年)。さらに、細胞接着性の大きな低下が報告された(Sterlingら,2006年)。
【0009】
qua1-1突然変異体は、分離した単一の根細胞を示した(Boutonら,2002)。ペクチン含有量の低下が、特異的ペクチンエピトープに対して産生された抗体を使用した免疫蛍光実験によってさらに実証された。これらの観察は、コードされた酵素はペクチン多糖類の合成に関与し得ることを示唆し、ペクチンは植物細胞の接着性に関与していることを明らかに示した。
【0010】
従って、ペクチン合成を妨害し細胞接着性を取り除くことは、細胞分離を促進し得る。1回のペクチン分解酵素処理での単一細胞の単離(Naill,2005年)が、イチイ細胞懸濁培養物における単一細胞の単離を助けることが報告された。このようなイチイ単一細胞は、より高いレベルでタキソールを産生する優良クローン株をスクリーニングするために使用される。しかし、この方法は、培地中における前記酵素の連続的な存在下における単一懸濁細胞の維持において有用ではない。また、酵素または酵素の組み合わせのこのような短パルス処理での最高単一細胞収率は、わずか17.1%〜34.4%であった(Naill,2005年)。イネ懸濁液中における連続ペクチナーゼ処理は、0.005%濃度で微細な懸濁凝集体を生じさせただけであり、しかし単一細胞としての懸濁液の維持を促進しなかった(Leeら,2004年)。酵素の組み合わせ、ペクチナーゼおよびセルラーゼの8時間を超える長時間の処理によって、細胞溶解が生じた(Naill,2005年)。
【0011】
ダイズ細胞の懸濁培養物における細胞分離の亢進は、コルヒチンの存在下において亢進されることが報告された(Umetsuら,1975年)。細胞分離のために、前記アルカロイドが、染色体倍数性の産生のための濃度(5〜20 mM)よりも低い濃度(0.1〜1.0 mM)で培養培地へ添加された。にもかかわらず、コルヒチンは、植物および動物細胞における有糸分裂を阻害する(Lewin,1980年)。コルヒチンはチューブリンへ結合し、微小管の集合を防止する。従って、細胞分離を得るために、コルヒチン濃度および処理時間は、できる限り低くするべきである。
【0012】
コルヒチンアルカロイドは、培養動物細胞における増殖の同調化のために使用され、ここで、該アルカロイドは通常0.5 mMで添加され、細胞は、有糸分裂前に、数時間以内、静止状態となる。形態形成効果は動物細胞におけるそれに非常に類似しているが、植物細胞は、0.1 mMのコルヒチンの存在下で、増殖の間、分裂し得る(Umetsuら,1975年)。細胞生存能は、1 mMコルヒチン中のダイズ懸濁細胞の培養の4日後に減少した。さらに、前記細胞のわずか44.8%がこれらの処理において生存可能であったが、しかし動物細胞における場合とは異なり、それらを分裂させておくことが可能であった。
【0013】
植物インビトロ培養物中における単一細胞懸濁液の維持におけるチューブリン脱重合阻害剤またはオリゴサッカリンの使用が研究された。文献は、細胞分離のためのコルヒチンの使用に関して早くも1975年にいくつかの情報を有する;下記の参考文献の項を参照のこと。除草剤としてのチューブリン阻害剤もまた研究された。
【0014】
優良トランスジェニックイベント(event)の作製およびリカバリーは、実現する技術(enabling technology)の開発に大いに依存する。懸濁細胞凝集体の形質転換のために実施されている現在の方法は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)およびウィスカー(whisker)媒介法である。アグロバクテリウム法は、67〜90%までのバックボーン組込み率を示し、このため、それは非常に非効率的なプロセスであり、一方、WHISKERS(商標)媒介形質転換は、ハイスループットプロセス(HTP)として役立たない。PEG媒介法が使用され、プロトプラストで常に実証され、タバコのプロトプラストは形質転換し易いが、それは、細胞壁再生の問題に起因して、HTP形質転換プロセスについて容易には適用できない。
【0015】
前記技術は、単一細胞懸濁培養に基づく形質転換についてのプロトコルに関して言及していないようである。プロトプラストに基づくプロトコルについていくつかの報告が存在するが、これらは、以下において議論する植物細胞の単一細胞懸濁液とは異なり、細胞壁を欠いている。
【発明の概要】
【0016】
簡単な概要
本発明は、懸濁細胞凝集体を無傷の一次細胞壁を有する単一細胞へ分解するためのシンプルかつ一貫した方法を提供する。以下の開示においては、ペクチン分解酵素またはコルヒチンを含むチューブリン脱重合化合物を含有する培地中において培養された懸濁細胞凝集体の細胞分離を述べる。
【0017】
本発明はまた、このような目的のための、化合物の新規の使用に関する。
【0018】
本発明の一つの局面は、本発明の単離細胞の形質転換に関する。このようなプロセスは、単一細胞に基づく形質転換および選択プロセスを単純化し、かつトランスジェニックおよびトランスプラストミック(transplastomic)イベント産生作業プロセスへ統合する。本発明はまた、技術的制約を取り除き、動物薬(animal health)、生物薬剤(biopharma)、ならびに形質および作物の保護プラットフォームという種々の必要性を支援するために、ハイスループット様式で、マーカーフリーかつ均一発現性のトランスジェニック株を作製する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】連続ペクトリアーゼ処理下において、培地中で7日間継代培養された、無傷の細胞壁を有するJTNT1懸濁細胞の単一細胞の単離。A−通常のBY2懸濁液;B−Aと同一であるが、細胞の凝集を示すためにI2KIで染色した細胞;CおよびD−連続酵素処理6日後の分離された細胞;EおよびF−I2KI染色有りまたは無しでの分離された単一細胞。通常の細胞分裂(F)に注意のこと。
【図2】連続ペクトリアーゼ処理6日後のBY2細胞の生存能(細胞をFDAおよびPIで処理する)および単一細胞の収率。A:BY2細胞凝集体;B:培地中ペクトリアーゼ存在下、5日間、接種物1 mlでのBY2;C:培地中に酵素を有する接種物6 mlでの5日目;D、E、およびF:Cの顕微鏡視野スナップショット;G:BAPおよび12%スクロース中において発育したBY2細胞変異体を有する対照凝集塊;HおよびI:G由来の5日間連続酵素処理した単一細胞。細胞をFDAおよびPIで染色した。PI中の死細胞は赤色に染色されたことに注意のこと。
【図3】BY2およびXanthiタバコ懸濁液の細胞凝集体懸濁液からの、培地中7日間のコルヒチン処理からの単一細胞懸濁液の誘導。A:通常のBY2懸濁凝集体(カルカフロール(Calcafluor)染色した);B:7日間の1 mMコルヒチン中の単一細胞BY2懸濁液;C:Bと同一であるが、無傷の細胞壁を有する単一細胞を示すために拡大した;D:Xanthiの懸濁凝集体;E:0.5 mMコルヒチン中において7日間処理したXanthi懸濁凝集体。0.5 mMにおける単一細胞の部分的放出に注意のこと;およびF:1 mMコルヒチン中のXanthiの分離された単一細胞。
【図4】BY2およびXanthiタバコ懸濁凝集体からの、コルヒチン処理における無傷の細胞壁を伴う単一細胞の放出。A:通常のBY2懸濁凝集体;B:7日間の1 mMコルヒチン中における単一細胞BY2懸濁液;CおよびD:コルヒチンの除去後の凝集体への細胞の回復(コルヒチン処理の1培養サイクルを伴う継代培養の4日後);E:Xanthiの懸濁凝集体;F:1 mMコルヒチン中において7日間処理されたXanthi懸濁凝集体。BY2およびXanthi培養物中における放出された単一細胞、ならびに、蛍光増白剤、カルカフロールの存在下で見られるように無傷の細胞壁の存在に注意のこと。(全てのサンプルを0.1%のカルカフロールで処理し、Leica蛍光顕微鏡下で調べた)。
【図5】BY2変異体タバコ(EP 12%スクロース培地中において馴化した)およびシロバナヨウシュチョウセンアサガオ懸濁凝集体からのコルヒチン処理における無傷の細胞壁を伴う単一の生存可能な細胞の放出。A:通常のBY2-V懸濁凝集体;B:未処理凝集体のより接近した図;C、DおよびE:7日間の1 mMコルヒチン中における単一細胞BY2懸濁液の誘導(10×、20×および40×の倍率下での細胞);F:7日間の1 mMコルヒチン処理におけるシロバナヨウシュチョウセンアサガオ懸濁液中の単一細胞の誘導。全てのサンプルをFDAおよびPIで処理し、Leica蛍光顕微鏡下で調べた。ここでFDA染色において細胞の高い生存能が見られ、PIにおいてごくわずかな細胞が赤色に染色されたことに注意のこと。
【図6】NT1タバコ細胞増殖に対する、Dow AgroSciences(DAS)専売のメチルインドール誘導体でありかつ強力な微小管阻害剤除草剤である、DAS-PMTI-1の効果。細胞を、唯一の炭素源として3%グリセロールを含むNT1B培地において、25または50 nM DAS-PMTI-1の非存在下または存在下において増殖させた。全ての生重量値は、複製サンプルからの平均値±0.18を示す。
【図7】DAS GAD1762-034懸濁株からの単一細胞およびコロニーの作製。
【図8】図8A、8B、および8Cは、DAS GAD 1762-034単一細胞からのコロニーの2〜6週間の増殖を示す。
【図9】4を超える継代培養サイクルについて7および13日でサンプルを回収し、発現分析を行った。得られた発現データをプロットした。
【図10】DAS-PMTI-1を使用して単離される単一細胞BY2細胞。20〜50 nM濃度を使用し、継代培養の5日後に単一細胞を作製した。細胞は単一細胞であり(ペアは、重複するエッジを有する)、写真を、共焦点イメージングシステムへ接続された微分干渉コントラスト顕微鏡下で撮影したことに注意のこと。
【図11】72時間PEG処理後のYFP発現(Ubi10-YFPプラスミド)。焦点面における小さな娘(分裂)細胞の1つがGFP発現を示し、発現が安定であり得ることを示している。
【図12】左:100 mg/Lカナマイシンによって阻害された未処理対照組織。右:選択培地上で増殖している、単一細胞由来の推定トランスプラストミック分離株。
【図13】ニンジン単一細胞懸濁液からのクローン株の作製。未処理の懸濁凝集体をプレーティングしたM培地上における芝生のような増殖(パネルA)。単一細胞をプレーティングした培地上における分離したコロニーの増殖(パネルB)。
【図14】液体培地中における0.5〜1 mMコルヒチン処理および継代培養開始の14日(第2継代培養サイクルの終了)後に分析した培養物。A:単一細胞がクラスターから放出される;B:FDA生体染色で染色された、密にパッキングされた細胞凝集体;CおよびD:それぞれ1および0.5 mM処理において放出された、懸濁液を濾過した(100 um直径の細孔を有するフィルターを使用)後の、FDA染色された単一細胞;EおよびF:Dからの単一細胞の、より接近した図。
【図15】MTIに応答した、JTNT1単一細胞の増殖曲線。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
単一細胞を単離し増殖させる能力は、多くの可能性のある適用性を有する。例えば、本明細書において概説する方法は、動物薬への適用のための植物細胞培養物の生産性に関する方法の改善において有用性を有する。
【0021】
従って、本発明の方法は、植物細胞に基づく動物薬および生物薬剤産物のプロセス効率を高めるために有用である。本発明の態様は、トランスジェニック細胞株優良クローンのスクリーニングにおいて、例えば、凝集体における非トランスジェニック細胞を最小化または排除するための単一細胞に基づく形質転換系についての標準作業手順(SOP)を開発するために、バッチごとのばらつきを最小化する少量懸濁細胞培養開始を支援することができる。要約すると、本発明の局面は、動物薬のHTP(ハイスループットプロセス)スクリーニングおよび宿主細胞株改善プログラムにおいて有用である。
【0022】
本発明はまた、細胞消光性蛍光プローブと組み合わされたRNA発現に基づいて安定発現細胞を同定するための、単一細胞に基づくアッセイおよび細胞選別プロセスのさらなる開発を例示し、これを可能にする。
【0023】
このような単一細胞は、現在のプロトプラストに基づく一過性系に代わる、部位特異的相同組換え一過性スクリーニングにおいても有用である。例えば、ブラックメキシカンスイート(Black Mexican Sweet)(BMS)トウモロコシ懸濁液およびキャノーラ懸濁液は、このような適用について単一系を提供し得る。従って、例えば、標的相同組換えが、本発明の態様において使用され得る。このタイプの技術は、例えば、標的組換えのためのジンクフィンガーの使用に関する、WO 03/080809 A2およびそれと対応する公開された米国出願(USPA 20030232410)の主題である。リコンビナーゼ(例えば、cre-loxおよびflp-frt)の使用もまた、当技術分野において公知である。
【0024】
インビトロ植物発現系は、有用な医薬および動物薬組換えタンパク質を産生するために使用することができる。このような植物発現系の重要な利点は、それらは性質上、真核生物であり、哺乳動物細胞のものと類似する内膜系および分泌経路を有することである。従って、複合タンパク質は、一般的に、適切な翻訳後修飾を伴って効率的に折り畳まれ、組み立てられる。
【0025】
植物産生系の別の利益は、スケールアップについての可能性である。事実上無限の量の組換えタンパク質を、含有する緑色組織において増殖させることも、優良発現クローンをスクリーニングし、そのような均質発現細胞株をバルク化した後で発酵またはバイオリアクターシステムを使用する産業施設においてスケールアップさせることもできるであろう。
【0026】
単一細胞を産生するための2つの戦略を本明細書に例示する。両方とも、生存可能な単一細胞を分離するために首尾良く機能した。しかし、少なくとも2つの懸濁細胞タイプにおいて無傷の細胞壁を有する大量の単一細胞懸濁液を得る点で、コルヒチン法が酵素分解法よりも好ましい。酵素法は、細胞増殖の阻害だけでなく、より高い程度の死亡率を示した。また、生存可能な細胞を、使用した培地を除去またはリンスすることなくゲル培地上にプレーティングした場合、細胞は死滅し、コロニー増殖は観察されなかった。酵素分解法によって作製されるそのような単一細胞懸濁液を使用してもよいが、さらなる最適化を必要とすることが、推奨される。
【0027】
逆に、この研究においてテストしたコルヒチンなどのチューブリン阻害剤の添加は、植物細胞を分離し単一細胞を選択するために非常に有用であるようである。この方法は、継代培養段階における液体培地への適切な量のコルヒチン添加のみを含むというように、シンプルである。これは、スターター細胞として生存能力の高い細胞の均一な接種物による少量懸濁培養の開始などのプロセスにおける所定の懸濁液について非常に重要な中心的ツールであるだろう。前記技術は、エレクトロポレーション、Whiskers(商標)、およびアグロバクテリウム媒介形質転換の効率を高め得る。このような単一細胞調製法は、トランスジェニック懸濁凝集体から組換えタンパク質産生株の優良クローンを単離するためにも使用され得る。
【0028】
プロトプラスト法は単一細胞単離のために使用されてきたが、本発明のコルヒチン法は、より容易であり、より効果的である。コルヒチン法によって得られた単一細胞は、細胞壁の存在のために、プロトプラストよりも安定であり、かつ細胞壁の再生を必要としない。前記細胞は、キシログルカン/セルロース網状構造の通常の組成を有する細胞壁を有する(HayashiおよびMaclachlan,1984年)。コルヒチンの存在下において伸長するマツの実生細胞は、異常な細胞壁肥厚は有さないが、放射状に拡張する(Itoh,1976年)という観察において見られるように、前記細胞は細胞増殖および細胞分離の間にカロースを産生しない。細胞の増殖は、コルヒチンを含有しない培地における継代培養後において正常であり、一方、大抵のプロトプラストは、静止状態にあり、分裂し難い(4)。コルヒチン培養細胞は、ある程度の倍数性を有し得るが、この研究において使用されたコルヒチンの濃度(0.1〜1.0 mM)は、倍数性の誘導に必要な濃度(5〜20 mM)よりも10〜100倍低かった。単一細胞のリカバリーは、プロトプラストによるものに比べ、コルヒチン法で遥かにより良好であった(HyashiおよびYoshida,1988年)。本発明の細胞は、倍数性レベルおよびゲノム安定性を評価するためにフローサイトメトリーを使用してさらにテストされ得る。さらに、増加した倍数性レベルは、形質転換細胞のコピー数の増加による組換えタンパク質レベルの増強というさらなる利益を提供し得る。
【0029】
ガラクツロナン活性は、ダイズ懸濁細胞中における細胞分離の生物学的機能を示し、オリゴサッカリンとして報告されたが、それは、細胞分離についての生物学的機能を示したためである(AlbersheimおよびDarvill,1985年)。従って、本明細書で報告される単一細胞懸濁液においてコルヒチン誘導性の倍数性変化が観察される場合には、倍数性変化を伴わない細胞分離を達成するために、ガラクツロン酸もまたこれらの懸濁細胞においてテストされる。従って、ガラクツロナンおよび他の類似のオリゴサッカリンの直接使用が、細胞接着性を破壊することによって細胞を分離する効率を比較するために、さらに評価されている。従って、本発明は、同時に細胞がゲノム安定性を維持しながら、懸濁細胞サイクルのいくつかの継代にわたって再現可能であり一貫しているシンプルな方法を提供する。
【0030】
本明細書で例示する一つの好ましい化合物は、DAS-PMTI-1である。この化合物は、非常に強力であるようである(培養物の増殖に影響を与えることにおいて、コルヒン(colchine)と比べ約100〜1000倍)。処理の7日後、0.5 mM濃度においてはかなりの細胞死が存在するが、これらの培養物がDAS-PMTI-1の非存在下で継代培養されると、PH懸濁細胞は、2週間後に低い頻度で単一細胞として回復した。単一細胞の分離についての好ましい適用(例えば、細胞のタイプなど)に応じてこの化合物の好ましい濃度を決定するために、さらなる最適化が行われ得る。類似の機能を有する他のMTI阻害剤が、ペクチン合成を妨害することによる本発明の細胞分離において使用され得る。本開示を考慮して、追加のMTI阻害剤およびそれらのアナログが、単一細胞を作製および維持することにおけるそれらの効率についてテストおよびスクリーニングされ得る。
【0031】
4-クロロ-1,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)-酢酸エチルエステルとしても公知である、DAS-PMTI-1の化学構造は、以下の通りである。
【0032】
本発明に従う使用についての化合物の好ましい種類は、DAS-PMTI-1タイプの化合物である。このような化合物は、上記で提供した一般構造に適合し得、その(本発明に従う使用についての)機能的な誘導体およびアナログを含み得る。
【0033】
以下は、本発明に従う使用に関するいくつかの公知のマイクロチューブリン阻害剤についての一般的化学式である。DAS-PMTI-1が好ましい態様であるが、事実上任意のマイクロチューブリン阻害剤が、本発明に従って使用され得る。ある好ましい態様において、下記のジアリールピラゾール類の1つまたは複数のメンバーが、コルヒチンと組み合わせて使用される:
式中、
X=CO2R、CH2CO2R、CH2CH2CO2R、(CH2)3CO2R、OCH2CO2R、OCH(CH3)CO2R、OC(CH3)2CO2R、CH2OCH2CO2R、CH2CH(CO2CH2CH3)CO2R、OCH(CO2CH2CH3)CO2R
Y=CN、Cl、Br、F、NO2
Ar1=非置換フェニル、非置換ピリジン、1〜3置換フェニル、1〜3置換ピリジン、ハロゲンまたはCNで置換されている
Ar2=非置換フェニル、非置換ピリジン、1〜3置換フェニル、1〜3置換ピリジン、ハロゲンまたはCNで置換されている
R=H、または炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖エステル。
【0034】
従って、単一細胞植物懸濁培養物を、微小管阻害剤を使用して作製し、それらを、少なくとも2継代培養サイクルの間の培養において維持することができる。これらの単一細胞懸濁液は、それらは無傷の細胞壁を有するが互いに離れて存在する点で、独特である。
【0035】
「トランスジェニック」植物、植物細胞などは(特に明記しない限り)、同一種の未改変の非トランスジェニック植物細胞中には本来存在しない、実験技術によって導入された外来DNAを含有する、植物全体、植物細胞、植物細胞培養物、植物細胞株、植物組織培養物、下等植物、単子葉植物細胞培養物、双子葉植物細胞培養物、または形質転換植物細胞(または、プロトプラストなど)に由来するそれらの子孫である。「トランスジェニック植物」および「形質転換植物」という用語は、そのDNAが外因性DNA分子を含有する植物を定義するための同義語として当技術分野において使用されることがある。トランスジェニック植物は、植物のゲノムDNA内で機能し、かつそこへ組み込まれている外来DNAを含有するように安定的に形質転換されてもよく、または、ウイルスに基づくベクターによって形質転換され、外来DNAを一過性発現する、トランスジェニック植物である。
【0036】
「単離された」および「精製された」は、「人の手」を暗示し、かつポリヌクレオチドおよびタンパク質へ適用され得る。例えば、クローニングされたポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドである。
【0037】
形質転換法
核形質転換についてはアグロバクテリウムおよびポリエチレングリコール(PEG)を使用し、ならびにプラスチド形質転換については微粒子銃を使用して、これらの単一細胞を、核およびプラスチド形質転換についてテストした。核形質転換の試みにおいて、プラスミドDNAの送達および黄色蛍光タンパク質の一過性発現が実証された。細胞はプラスチド形質転換においてリカバーされ、かつ安定な形質転換がPCR分析によって示された。トランスプラストミックカルス分離株はバルク化され、ELISAによって選択マーカー、nptII遺伝子発現について分析されている。
【0038】
本明細書に記載の形質転換方法論は、動物薬プロセスへ適用することができる。しかし、ナノ粒子送達を含む新規の送達方法による、単一細胞に基づく形質転換は、組換えタンパク質産生のために使用される細胞タイプの宿主に加えて、作物を形質転換するための独特なアプローチを提供することもできる。
【0039】
PEG法および/またはエレクトロポレーション法による本発明の単一細胞形質転換の開発は、無傷の細胞壁を有する単一細胞を、細菌/哺乳動物細胞系と同程度に適用可能にし、かつ、それらの細胞タイプについてのハイスループット形質転換システムにおいても有用である。
【0040】
単一細胞を形質転換する能力は、多くの可能性のある適用性を有する。例えば、本明細書において概説する方法は、動物薬への適用のための植物細胞培養物の生産性に関連するプロセスの改善において有用性を有する。また、本発明のプロセスは、動物薬および生物薬剤の、植物細胞に基づく産物のプロセス効率を高めるために有用である。本発明のプロセスは、トランスジェニック細胞株の優良クローンをスクリーニングすることも支援することができる。このような適用を、バッチごとの発現のばらつきを最小化する少量懸濁細胞培養開始のために、および、凝集体における複数のイベントの存在または非トランスジェニック細胞を最小化または排除するためのSOPを開発するために、使用することができる。
【0041】
背景技術の項において議論したように、アグロバクテリウム法は非常に非効率的であり、WHISKERS(商標)媒介形質転換はハイスループットプロセスとして役立たない。PEG媒介法は、プロトプラストを用いて使用される。タバコプロトプラストは形質転換するのが容易であるが、それらは、細胞壁再生の問題のために、HTP形質転換プロセスについては容易には適用できない。
【0042】
対照的に、本発明は、無傷の細胞壁を提供する。PEG媒介法は、無傷の細胞壁を有する単一細胞の最初の報告である。本発明の方法はまた非常に効率的でもある。また、この方法は、トランスフェクションのためにフラグメント精製したプラスミドを使用することによって、バックボーン組込みを排除する。蛍光活性化細胞選別(FACS)などのプロセスによる、単一植物細胞に関する迅速な形質転換プロトコルが、費用、資源およびスケジュールを削減して適切なイベントをスクリーニングするためのプロセスの小型化および自動化のために理想的である。これは、セルソーターにより形質転換細胞をスクリーニングし、均質発現優良イベントを判定することによって、現在のカルスまたは懸濁凝集体の選択プロセスを劇的に改善し、産業的研究または生産パイプラインをさらに進歩させることができる。
【0043】
従って、本発明のプロセスは、例えば、動物薬の必要性および宿主細胞株の改善のためのHTPスクリーニングについて、新規のバイオプロセス研究開発についての基本的な土台を提供する。
【0044】
本発明は、細胞消光性蛍光プローブと組み合わされたRNA発現に基づいて安定発現細胞を同定するための、単一細胞に基づくアッセイおよび細胞選別プロセスのさらなる開発を可能にする。
【0045】
このような単一細胞は、形質および作物保護プラットフォームについての目的の遺伝子(GOI)の一過性および/または安定スクリーニングにおいても有用である。
【0046】
特に記載または暗示しない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語は、本明細書において使用される場合、「少なくとも1つの」を意味する。
【0047】
本明細書において言及または引用される全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、それらが本明細書の明白な開示と矛盾しない程度に、参照によりそれらの全体が組み入れられる。
【0048】
実施例1−材料および方法
BY2懸濁培養細胞を日本たばこ産業から得て、7日サイクルでLSBY2培地において維持した。シロバナヨウシュチョウセンアサガオ懸濁液およびPettite Havanaタバコ懸濁液をDASで起こしたカルスから起こし、Xanthi懸濁液をUIUC, ILのJack Widholm教授からサンプルとして入手した。7日サイクルでNT1B培地において維持される、ワシントン大学から得たJTNT1懸濁細胞は、細胞を単一細胞へ分離するためのペクチン分解酵素研究についてのみ使用した。前記細胞を、150 rpmでオービタルシェーカーにおいて、暗所中、25〜28℃で、振盪フラスコ中において培養した。コルヒチンをFlukaから得、DAS-PMTI-1(Martinら,2001年;Smithら,2001年)をDAS CRSから得、ペクチン分解酵素(ペクトリアーゼYおよびペクチナーゼ)をSigmaから得た。本研究において使用した両方のチューブリン重合阻害剤のストック濃縮物をDMSOに溶解し、0.5 Mストック溶液を調製した。ペクチナーゼおよびペクトリアーゼ酵素について試験した濃度は、0.0005%〜0.005%の範囲内であった。例えば、タバコ懸濁細胞株NT-1およびBY-2は、本発明の実施に適切である。BY-2細胞は、市販されており、例えばNagataら(Nagata, T., Nemoto, Y., and Hasezawa. S. [1992], Tobacco BY-2 cell line as the "HeLa" cell in the cell biology of higher plants. Int. Rev. Cytol. 132: 1-30)に従って入手可能である。NT-1細胞は、初めは、Nicotiana tabacum L. cv. bright yellow 2から開発された。NT-1細胞株が広く使用されており、容易に入手可能であるが、任意のタバコ懸濁細胞株が、本発明の実施と合致する。NT-1細胞株の起源が不明確であることは、注目に値する。さらに、前記細胞株は、可変であるようであり、培養条件に応答して変化する傾向がある。下記の実施例における使用に適切なNT-1細胞は、アクセッション番号ATCC No. 74840でAmerican Type Culture Collectionから入手可能である。米国特許第6,140,075号も参照のこと。
【0049】
実施例2−顕微鏡観察
細胞増殖および分離を光学顕微鏡検査によって(Nomarski顕微鏡および暗視野光学顕微鏡で)観察した。球状細胞および単一細胞を、血球計を使用してカウントし、細胞増殖および分離の程度をそれぞれ測定した。凝集体中の細胞数を、16時間5%(重量/体積)三酸化クロムで処理し、細胞をカウントすることによって、測定した(Henshawら,1966年)。細胞生存能を、フルオレセインジアセテート(FDA)およびヨウ化プロピジウム(PI)で細胞を染色し、蛍光顕微鏡(Zeiss Photomicroscope)を使用することによって測定した(Yokoyamaら,1997年)。この単一細胞培養物中の細胞壁の存在を測定するために、蛍光増白剤を使用した。セルロースについての特異的蛍光色素である、Sigmaから得たカルカフロールを本研究において使用し、セルロース−カルカフロール複合体化を蛍光顕微鏡検査(Zeiss Photomicroscope)によって観察した。カルコフロール(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.)を、PBS緩衝液中の0.1%(重量/体積)溶液として調製し、室温で暗所中において保存した(Kwokら,2003)。使用前に、カルカフロール染料を15,000 gで2分間遠心分離し、沈殿物を除去した。1滴または2滴のカルカフロール溶液を、分離された細胞へ添加した。室温で2または3分後、細胞懸濁液を水でリンスし、TBS(pH 7.2)中の0.1%エバンスブルー(Sigma;E-2129)で室温で1分間、対比染色し、395〜415 nmの波長でUV顕微鏡下にて観察した(455 nmの観察光)。細胞壁が、青みがかった白色または青緑色の楕円形ハローとして現れた。
【0050】
実施例3−培地における連続ペクチナーゼ処理およびペクトリアーゼ処理の結果
Petite Havana、BY2およびNT1タバコ懸濁液を使用し、種々の濃度でのペクチン分解酵素、ペクチナーゼおよびペクトリアーゼの効果を調べた。対をなすもう一方の酵素と比べ、JT-NT1懸濁液はペクチナーゼ処理に対してよりよく反応し、BY2懸濁液はペクトリアーゼ酵素処理に対してよりよく反応した。しかし、前記細胞タイプについて、生体染色によって視覚化されたような細胞死、および増殖阻害が存在した。継代培養段階での細胞の接種物の体積は12倍まで増加され、適度な収量の単一細胞を有した。PH細胞およびBY2細胞は、ペクトリアーゼを伴う培養において、少なくとも7日間培養され得た。低濃度ペクトリアーゼ酵素(3活性単位)におけるこれらの細胞の連続培養は、好ましくないようであった。接種物の体積が6 ml(定常期でのスターター接種物の体積)であり、該酵素と共に50 mlの新鮮な培地中において培養した場合、細胞は、培養の第6日に、高収率の単一細胞を産出した。これらの細胞は、培養の6日後にFDAおよびPIでテストした場合、より高い程度の生存可能な単一細胞を示した(図1および2)。懸濁培養物の増殖は前記酵素処理において劇的に影響され、同一の酵素を含有する培地において細胞を継代培養することは好ましくないようであった。細胞を、最大で培養7日間までの間は新鮮な状態で処理することができ、次いで、これらの細胞を、前記酵素を含有しない培地へ移し、増殖を回復させることが、推奨される。せいぜい、この方法は、不均質な凝集体中の優良トランスジェニッククローンをスクリーニングするため、または、均一な細胞ボリュームを有するハイスループット懸濁培養を開始するために、使用され得る。
【0051】
図1:連続ペクトリアーゼ処理下において、培地中で7日間継代培養された、無傷の細胞壁を有するJTNT1懸濁細胞の単一細胞の単離。
A−通常のBY2懸濁液;B−Aと同一であるが、細胞の凝集を示すためにI2KIで染色した細胞;CおよびD−連続酵素処理6日後の分離された細胞;EおよびF−I2KI染色有りまたは無しでの分離された単一細胞。通常の細胞分裂(F)に注意のこと。
【0052】
図2:連続ペクトリアーゼ処理6日後のBY2細胞の生存能(細胞をFDAおよびPIで処理する)および単一細胞の収率。
A:BY2細胞凝集体;B:培地中ペクトリアーゼ存在下、5日間、接種物1 mlでのBY2;C:培地中に酵素を有する接種物6 mlでの5日目;D、E、およびF:Cの顕微鏡視野スナップショット;G:BAPおよび12%スクロース中において発育したBY2細胞変異体を有する対照凝集塊;HおよびI:G由来の5日間連続酵素処理した単一細胞。細胞をFDAおよびPIで染色した。PI中の死細胞は赤色に染色されたことに注意のこと。
【0053】
実施例4−BY2、NT1、Petite Havana(PH)およびXanthi(Xan)およびシロバナヨウシュチョウセンアサガオ(JM)懸濁細胞の増殖に対するコルヒチンの効果
培養7日後、BY2、Xan、およびJM細胞の細胞数は、0.5 mMおよび1 mM濃度のコルヒチンで応答した(図3、4、および5)。しかし、高度の単一懸濁細胞が、1 mMのBY2懸濁細胞およびJM細胞中において見られた。JM細胞増殖は0.5 mMコルヒチンにおいてでさえ劇的に影響され、増殖は同一培地における増殖のさらに1週間後でさえ回復され得なかったことに注意することが、重要である。これは、細胞分裂がJM細胞中においてコルヒチンによって阻害され、より低い濃度が、培養物密度または増殖が低下することなく細胞分裂を最適化するためにさらにテストされる必要があることを示している。興味深いことに、このような増殖阻害は、BY2懸濁細胞によって観察されず、これは、1 mMコルヒチンの存在下において少なくとも14日間連続して増殖され得た。細胞膨張が第3日に初めて観察され、培養をBY2懸濁細胞中において継続するにつれ、細胞は球状の形状となった。球状細胞は凝集体から徐々に放出されたので、細胞分離には細胞増殖が伴うと推定された。対照培養物中におけるのとほぼ等量のBY2細胞が、7日後、1 mMコルヒチンを含有する培地中に存在する。1 mMコルヒチン中において7日間培養した細胞を、コルヒチンを含有しない培地へ継代培養した場合、凝集体として増殖する能力は、完全には回復されず、その代わりに、約90%の懸濁細胞が、単一の無傷の細胞として見られた。細胞増殖および分離はまた、0.5 mMコルヒチンを含有する培地中においてテストした全ての他の細胞懸濁液の細胞懸濁凝集体中において、部分的に生じた。JT-NT1およびJM懸濁細胞中において、阻害的細胞増殖応答が観察される。NT1懸濁細胞は、1 mMコヒチン(Cochicine)中において、増殖のほぼ50%の低下を記録した。
【0054】
これらの細胞において、qua1-1ペクチン突然変異体(Bouton,2002年)において報告された分離された表皮根細胞のものと類似した、大きな分離された細胞が観察された。一般的な球状の形状を有する細胞の同様の部分的な分離が、DAS-PMTI-1でテストした全ての細胞懸濁液タイプにおいて観察された。しかし、細胞増殖が、0.5 mM濃度でのDAS-PMTI-1で処理された懸濁液中において、非常に顕著に影響された。この化合物での細胞分離の条件を最適化し、細胞阻害増殖を最小限にするために、さらなる実験が行われ得る。FDAおよびPI染色テストによって実証されるように、テストしたBY2およびJM細胞懸濁液中に高度の細胞生存能が存在する。細胞は非常に丸く、多くの細胞において、恐らく細胞分裂前に、活性のある細胞の細胞壁伸長を示すくちばし様の突出部を示した。分離された細胞は大きく、拡大されており、プロトプラストに特有である球状の形状を有した。カルカフロール染料を使用し、無傷の細胞壁の存在または非存在を測定した。図4は、これらの円形細胞の周りに細胞壁が明らかに存在することを示す。顕微鏡の暗視野集光器下でのこれらの細胞の観察によって、細胞の周りの厚い細胞壁が示された(図3:パネルC)。これらの単一細胞は、振盪培養において回復力に富み、これは、ペクチンの非存在および生体染色テストにおいて見られる大きな細胞の存在に起因する死細胞が存在しなかったためである(図5)。このパネルにおいて見られるように、非常に高いパーセンテージの生きている正常な細胞が見られた。従って、正確な数の細胞を含む接種物として振盪培養またはマイクロウェルプレートにおいてこれらの細胞を使用することが可能である。
【0055】
図3:BY2およびXanthiタバコ懸濁液の細胞凝集体懸濁液からの、培地中7日間のコルヒチン処理からの単一細胞懸濁液の誘導。
A:通常のBY2懸濁凝集体(カルカフロール(Calcafluor)染色した);B:7日間の1 mMコルヒチン中の単一細胞BY2懸濁液;C:Bと同一であるが、無傷の細胞壁を有する単一細胞を示すために拡大した;D:Xanthiの懸濁凝集体;E:0.5 mMコルヒチン中において7日間処理したXanthi懸濁凝集体。0.5 mMにおける単一細胞の部分的放出に注意のこと;およびF:1 mMコルヒチン中のXanthiの分離された単一細胞。
【0056】
図4:BY2およびXanthiタバコ懸濁凝集体からの、コルヒチン処理における無傷の細胞壁を伴う単一細胞の放出。
A:通常のBY2懸濁凝集体;B:7日間の1 mMコルヒチン中における単一細胞BY2懸濁液;CおよびD:コルヒチンの除去後の凝集体への細胞の回復(コルヒチン処理の1培養サイクルを伴う継代培養の4日後);E:Xanthiの懸濁凝集体;F:1 mMコルヒチン中において7日間処理されたXanthi懸濁凝集体。BY2およびXanthi培養物中における放出された単一細胞、ならびに、蛍光増白剤、カルカフロールの存在下で見られるように無傷の細胞壁の存在に注意のこと。(全てのサンプルを0.1%のカルカフロールで処理し、Leica蛍光顕微鏡下で調べた)。
【0057】
図5:BY2変異体タバコ(EP 12%スクロース培地中において馴化した)およびシロバナヨウシュチョウセンアサガオ懸濁凝集体からのコルヒチン処理における無傷の細胞壁を伴う単一の生存可能な細胞の放出。
A:通常のBY2-V懸濁凝集体;B:未処理凝集体のより接近した図;C、DおよびE:7日間の1 mMコルヒチン中における単一細胞BY2懸濁液の誘導(10×、20×および40×の倍率下での細胞);F:7日間の1 mMコルヒチン処理におけるシロバナヨウシュチョウセンアサガオ懸濁液中の単一細胞の誘導。全てのサンプルをFDAおよびPIで処理し、Leica蛍光顕微鏡下で調べた。ここでFDA染色において細胞の高い生存能が見られ、PIにおいてごくわずかな細胞が赤色に染色されたことに注意のこと。
【0058】
実施例5−唯一の炭素源としてグリセロールを含有する培地中における単一細胞の作製およびDAS-PMTI-1の影響
本実施例は、新規のグリセロール増殖培地およびDAS-PMTI-1低濃度効果、ならびに増殖特徴に関する別の議論を提供する。本結果は非常に顕著であり、これは、グリセロールはダイズ微小管を破壊することにおけるコルヒチン効果を弱めるという文献における先の報告が存在したためであり、従って、前記技術は、本適用についての培地におけるグリセロールの使用に対して逆方向に開示した。例えば、Hayashi and Yoshida, 85 PNAS 2618-22 (1988)を参照のこと。さらに、本グリセロールデータは、植物細胞について新規であり、このような結果は、以前には報告されていない。タバコ急速培養物の3つの異なる遺伝子型が、唯一の炭素源として3%グリセロールを使用して数ヶ月間首尾よく増殖している。
【0059】
この実施例はまた、DAS-PMTI-1の2つの異なる濃度における培養挙動を描写する増殖曲線グラフを提供し、それと未処理とを比較する。
【0060】
微小管を破壊するいくつかのクラスの化合物は、単一細胞を作製する。化合物としては、以下に分類される微小管破壊剤または阻害剤(α-およびβ-チューブリン結合性化合物)が挙げられる:(i)ジニトロアニリン(コルヒチン、オリザリン、トリフルアラリン(Trifluaralin)、クロラリン(Chloralin))および(ii)N-フェニルカルバメート、例えば、ベンズアミド、プロナミド、リン酸アミド、アミプロホスメチル(MorejohnおよびFoskett,1986年;Akashiら,1988年)、ならびに抗真菌剤、ベンズアミド ザリラミド(Young,1991年)、(iii)抗癌剤、パクリタキセル(MorejohnおよびFoskett,1986年)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ならびに(iv)微小管およびまたは細胞壁特性の両方を破壊する他の化合物、例えば、セルロース合成阻害剤、および細胞骨格阻害剤、例えば、アルミニウムおよびクマリンもまた、小核形成を伴わないかまたほとんど伴わない単一細胞を作製するそれらの能力についてテストされる。表層微小管および有糸分裂微小管は、異なる感受性を有し、しかし、上記に列挙される異なるクラスからまたは該クラスのうち1つからの化合物の組み合わせは、細胞分裂は影響されないが細胞接着性が十分に破壊される程度に微小管を選択的に破壊し、ゲノム不安定性を有さないかまたはほとんど有さない単一細胞段階の細胞を達成し維持する。
【0061】
懸濁培養におけるタバコ細胞増殖に対する微小管阻害剤(MTI)の効果を調べた。第7日定常期細胞(1 ml)を、異なる濃度(25〜1000 nM)のMTIを含有する250 ml振盪フラスコ(Bokrosら,1993年)中の培地(50 ml)へ移し、25℃で暗所中7日間の培養において増殖させた。対照およびMTI含有フラスコは両方とも、最終濃度0.5〜0.1%(v/v)DMSOを含有した。これらの化学物質の増殖を、BY2細胞についてはEP12培地において、BTI-NT1細胞についてはNT1B培地において評価し、炭素源を3%グリセロールで置換する。これらの生物の応答を、炭素源として3%スクロースを含むこと以外は同一の培地組成と比較した。グリセロールは微小管安定剤であることが公知であるため、グリセロール培地を使用し、3%グリセロール中において馴化されたタバコ細胞は、ストレス下でフェノール類を示さなかった。
【0062】
1日間隔で、細胞の三重のサンプル(0.5 ml)を、風袋を計ったマイクロチューブ中における短時間遠心分離によって沈殿させ、生重量を測定した。図6に示される結果は、2日ラグフェーズ後、対照細胞は4日間迅速に増殖し、第6日までに定常期に入ったことを示している。25 nM DAS-PMTl-1と共に増殖されたタバコ細胞は、対照培養のものと類似した増殖動態を示した。しかし、これらの培養物の生重量は、定常期の間の対照よりも僅かに重く、このことは、50 nM DAS-PMTI-1での増殖の促進を示唆している。0.5〜1.0 mM DAS-PMTI-1と共に増殖された細胞は、FDAおよびヨウ化プロピジウム処理した細胞を蛍光顕微鏡下で調べた場合、培養開始の3日以内に完全な阻害および細胞死を示した。データは、50 nMの閾値付近でタバコ細胞増殖が阻害され、しかし、100 nMを超える濃度は有糸分裂の阻害、および細胞死を引き起こすことを実証している。
【0063】
0.25〜0.5 mM濃度が有効である、単一細胞の作製についての効力が低いジニトロアニリンである、コルヒチンとは異なり、DAS-PMTI-1は、NT1およびBY2細胞の両方について、総炭素源としてのグリセロールの存在下でおいてさえ5〜25 nMという低い濃度で非常に有効である。25 nM濃度範囲は、単一細胞を放出することにおいて有効であるだけでなく、10日間にわたって細胞の増殖速度を低下させないことにおいても非常に効率的である(図6)。実際に、これらの単一細胞が増殖するという事実のために、増殖の定常期でバイオマスがわずかに増加する。しかし、顕微鏡観察は、これらの細胞における小核の存在を示さなかった。
【0064】
図6: NT1タバコ細胞増殖に対するDAS-PMTI-1の効果。細胞を、唯一の炭素源として3%グリセロールを含むNT1B培地において、25または50 nM DAS-PMTI-1の非存在下または存在下において増殖させた。全ての生重量値は、複製サンプルからの平均値±0.18を示す。
【0065】
DAS-PMTI-1によって作製された細胞の単一細胞状態を、共焦点顕微鏡下で分析し、細胞が付着していないとわかったので、それらは単一細胞であることが明白に確認された。
【0066】
実施例6−トランスジェニック懸濁株およびクローン株作製のデコンヴォルーション
タバコ懸濁液は、通常、凝集体または小さなクラスターで細胞を含有し、それらは非常に不均質である。培養における細胞は、遺伝子的に同一(均質な集団)であり得、またはいくらかの遺伝的変異を示し得る(不均質な集団)。単一の親細胞から誘導された細胞の均質な集団は、クローンと呼ばれる。従って、クローン集団内の全ての細胞は、遺伝子的に同一であり、細胞特徴の点で非常に均質である。BY2およびNT1タバコ細胞懸濁液は、多くの研究室においてモデル系として慣用的に使用されている。
【0067】
これらの細胞は、直接、粒子ボンバードメントまたはアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)との共培養によって(An,1985年;Kleinら,1988年;RempelおよびNelson,1995年)、細胞壁の除去(MathurおよびKoncz,1998年)後に容易に形質転換される。A. tumefaciens媒介BY-2形質転換は多くの研究所において慣用的に行われるが、本発明者は、トランスジェニックカルスを得ることにおける効率は、実験ごとに異なり、主にBY-2細胞培養物の質に依存することを見出した。同期化、M期およびG1初期におけるBY-2細胞は、G2にある細胞よりも、安定A. tumefaciens媒介形質転換について10倍感受性が高い。さらに、virG遺伝子を構成的に発現するアグロバクテリウム株LBA4404(van der Fitsら,2000年)は、トランスジェニックカルスを作製することにおいて2〜5倍より効率的である。典型的に、約500個のトランスジェニックカルスが、このアグロバクテリウム株と共培養された4 mLのBY-2細胞から得られ得、表現型スクリーニングプログラムが行われることを可能にする。しかし、形質転換懸濁株のクラスターまたは凝集体は、不均質な複数のトランスジェニックイベントを有するようである。結果として、1つのバッチ培養と別のものとで一貫しない発現レベルが存在する。単一細胞法は、クラスター中の細胞のキメラ混合物をデコンヴォルーションし、個々の細胞としてそれらを分離し、クローンイベントを同定するために使用される。単一細胞を、PAT選択マーカー遺伝子で形質転換されたキメラトランスジェニック懸濁液NT1タバコ株(GAD1762-034)から作製した(図7および8)。
【0068】
図7:DAS GAD1762-034懸濁株からの単一細胞およびコロニーの作製。図8A、8Bおよび8C:DAS GAD 1762-034単一細胞からのコロニーの2〜6週の増殖。
【0069】
約20個の別個のコロニーを無作為に選び、新鮮な選択培地においてさらにバルク化した。懸濁株をこれらのコロニーから作製し、迅速に増殖する株を各々7日の6継代培養サイクルによって得た。これらのコロニーのバイオマス産生は、これらの株にわたってかなり均一であり、さらなるタンパク質分析のために19株を進めた。
【0070】
4を超える継代培養サイクルについて7および13日でサンプルを回収し、発現分析を行った。得られた発現データをプロットした(図9)。
【0071】
対照懸濁凝集体株番号34と比較した場合、いくつかの継代培養サイクルにわたってタイトな発現を伴ういくつかのクローン株を得ることができたことが、データ分析から明らかである。さらに、亜株17は発現レベルにおいて対照株より性能が優れており、このことは、このプロセスが集団中のクローン優良株を選択することを示しており、さらに改善されたデコンヴォルーションは、均一発現優良株を得ることに役立ち得る。
【0072】
実施例7−単一細胞懸濁培養物の形質転換
材料および方法
植物細胞材料の作製
形質転換の3〜4日前に、1週齢の懸濁培養を、250mLフラスコ中の40 mlのNT1BまたはLSBY2倍地へ2 mlのNT1またはBY2培養物を移すによって、新鮮な培地へ継代培養する。微小管阻害剤(MTI)の濃度は、単一細胞を作製するために上記に記載されたように使用した。単一細胞を、MTI処理の4日後または7日後に回収した。
【0073】
図10:DAS専有メチルインドール誘導体でありかつ強力な微小管阻害剤除草剤である、DAS-PMTI-1を使用して単離されるBY2細胞の単一細胞。20〜50 nM濃度を使用し、継代培養の5日後に単一細胞を作製した。細胞は単一細胞であり(ペアは、重複するエッジを有する)、写真を、共焦点イメージングシステムへ接続された微分干渉コントラスト顕微鏡下で撮影したことに注意のこと。
【0074】
BY2単一細胞をBeckmanフローサイトメーターによって処理した場合、658250個の生存可能な細胞/培地1 mlが存在し、生存可能な細胞は平均直径10.43 umおよび体積593.8 um3を有した。
【0075】
アグロバクテリウム作製
YFP遺伝子(pDAB4613)構築物を含有するアグロバクテリウム・ツメファシエンス株LBA4404を、-80℃で50%グリセロール中に保存する。前記発現ベクターを含有する、ストック培養物20〜500μlアリコートを使用し、10 g/L酵母抽出物、10 g/Lペプトン、5 g/L NaCl、10 g/Lスクロースおよび50 mg/Lスペクチノマイシンを含有する30 ml YEP液体培地へ20〜500μlを添加することによって直接、液体培養を開始した。続いて、培養物が1.5であるca. OD600の密度に到達するまで、28℃および150〜200 rpmで暗所中において18〜20時間インキュベートした。
【0076】
核形質転換のための単一細胞の共培養
形質転換の際に、1.0 mlのアグロバクテリウム懸濁液を、4または7日齢のタバコ単一細胞懸濁液40 ml(MTIを除去するために培地中において予め洗浄)を含有するフラスコへ添加し、10 ml広口径ピペットを使用して5回ピペットで上下させることによって混合する。次いで、均一な懸濁液を、パラフィルムに包まれた24ウェルプレート中へ250μlアリコートで移し、3日間、振盪せずに25℃で暗所中において培養する。顕微鏡スライド上にそれを置き、黄色蛍光タンパク質(YFP)一過性発現を探索することによって、懸濁液の約50μlのアリコートをテストする。
【0077】
核形質転換のための単一細胞のPEG/DNA処理
JT-NT1細胞凝集体懸濁液を、継代培養開始において、NT1 B培地中における1 mM最終濃度のコルヒチン(Fluka)で処理し、オービタルシェーカー上において125 rpmで7日間培養した。懸濁液を25℃で培養した。第7日の終わりに、1 ml(0.6 OD600)の単一細胞をフラスコから回収し、14 ml無菌チューブ中へ分散させた。10 mlのMaMg培地(組成については下記の表1を参照のこと)を添加し、約1000 RPMで5分スピンさせた。
【0078】
(表1)MaMg培地組成(PEG媒介形質転換)
【0079】
液体をデカントし、細胞を300μlのMaMg中に再懸濁させ、約50μgプラスミドDNAを添加した。この単一細胞およびDNA混合物へ、300μlのPEG 3350(40%PEG 3350 w/v、0.4Mマンニトール、0.1 M Ca (NO3)2 pH 5-6、最終)を徐々に添加し、それを穏やかに混合した。単一細胞、DNAおよびPEG混合物を室温で20分間インキュベートし、次いで、10 ml W5(洗浄媒体)を添加し、約1000 RPMで5分スピンさせた。液体をデカントし、2 mlベース液体培地(NT1B)を添加し、細胞懸濁液をマルチウェルプレートに移した。いくつかの複製を24ウェルプレートのウェル中へこのようにして移すことができた。50μl体積の細胞懸濁液を顕微鏡スライド上に取り、次いで、それらを好適なフィルター(励起500/20 nm、ジアクロム(diachrome)、放射535/30 nm)を備える蛍光顕微鏡下で調べることによって、YFP一過性発現について20〜24時間でアッセイした。
【0080】
プラスチド形質転換のための単一細胞の微粒子銃処理
BY2細胞をEP12%培地中の20〜50 nM DAS-PMTI-1中において処理し、プラスチドの数を増加させ、2,4-D無しでまたはBAPを添加して、7日間プラスチドのサイズを増大させた。第7日の終わりに、単一細胞を回収し、2 ml懸濁液を濾紙へ移した。細胞を乾燥のために2時間LS BY2ゲル培地上に維持した。2,4-D欠損単一細胞株およびBAP処理細胞株各々からの5つのプレートに撃った。これらの細胞を2週間50 nM DAS-PMTI-1で処理し、第3週目にそれらを20 nm DAS-PMTI-1中に置いた。細胞は良質であり相対的に健全であった。
【0081】
微粒子銃(BioRad)を使用し標準プロトコルに従って、0.6μm金粒子上のpDAB3969を細胞にボンバードした。選択剤を含まない培地上における回復の2日後、LS-BY2 12%スクロース+100 mg/Lカナマイシン選択へそれらを移した。
【0082】
結果および考察
核形質転換の試み
PEG(図11)およびAgro形質転換(図3)における試みは、互いに類似した発現頻度を明確に示した。分析した細胞50μlアリコートにおいて、2〜3のYFP発現細胞が存在した。従って、各10970単一細胞のバッチにおいて1個の形質転換細胞が存在し、前記プロセスがあまり効率的ではない場合があることを大雑把に示している。細胞から残りのコルヒチンが除去されなかった可能性があり、並行実験において、細胞は、より高い頻度のコロニーを伴ってより迅速かつより健全なコロニーへ回復された。これは、洗浄工程が、最適化実験において形質転換頻度を増加させることを示している。たった1つのイベントが単一細胞から得られる場合、これらの形質転換法の両方においてマイクロウェルプレート中に単一細胞1 ml当たり少なくとも50〜60個の形質転換細胞が存在する。しかし、形質転換についての条件はさらに最適化され得、さらなる安定形質転換コロニーが単離され得る。
【0083】
図11:72時間PEG処理後のYFP発現(Ubi10-YFPプラスミド)。焦点面における小さな娘(分裂)細胞の1つがGFP発現を示し、発現が安定であり得ることを示している。
【0084】
プラスチド形質転換
培養の6週間後、5つの盛んに増殖しているコロニーを選択培地において同定した。しかし、対照、非処理細胞は、100 mg/Lカナマイシン選択において死滅した(図12)。盛んに増殖しているコロニーをサンプル化し、PCRによって分析し、プラスミドの組込みを測定した。5個のコロニーのうち2つは明確なPCR産物を示し、このことは、導入遺伝子がプラスチド中に組込まれていることを示している。
【0085】
図12:左:100 mg/Lカナマイシンによって阻害された未処理対照組織。右:選択培地上で増殖している、単一細胞由来の推定トランスプラストミック分離株。
【0086】
ハイスループット核およびプラスチド形質転換プロトコルをさらに開発するために、さらなる実験が行われている。
【0087】
プロトコルを最適化し、新規のバイオプロセッシング研究開発についてのHTPおよびバックボーンフリー(フラグメント精製プラスミドを使用する)形質転換プロトコルをさらに開発するために、さらなる形質転換実験が行われている。
【0088】
実施例8−グリセロール培地における懸濁培養物の順化
材料および方法
同期化についての培養物のコンディショニング
同期化を改善するために、全ての培養を、継代培養なしで2週間連続し、続いて50 mlの新鮮な培地中に1 mlの古い培養物を希釈した。その継代培養の2日後に、未分化および分裂細胞をカウントし(40%までの無糸分裂指数が観察された)、培養の10日後に、分化した非分裂細胞を観察した。懸濁液0.5 mlのサンプルを、ホールマウント手順について使用した。
【0089】
細胞培養物
ロングターム・ブライト・イエロー-2(Long-term Bright Yellow-2)(BY-2)をLSGS-BY2培地(付記I)において培養し、NT1細胞およびショートターム・ペティー・ハバナ(short-term Petite Havana)(PHL)タバコ懸濁細胞をLSG-BY-2培地(付記II)またはG-NT1培地(付記III)において培養した。培地がグリセロールに加えて1%スクロースを有したレギュラーのBY2培養物の場合を除き、全ての培地は、増殖培地中においてスクロースの代わりに用いられる炭素源としてグリセロールを有する。懸濁培養物を、250 mlエルレンマイヤーフラスコ中において1週間間隔で希釈した(新鮮な培地50 ml中に古い培養物1 ml)。細胞懸濁物を、100 rpmでロータリーシェーカーにおいて撹拌し、25℃で暗所中において維持した。Vos et al., “Microtubules become more dynamic but not shorter during preprophase band formation: a possible 'Search-and-Capture' mechanism for microtubules translocation,” Cell Motil Cytoskeleton 57:246-258, 2004)。
【0090】
グリセロール培地において増殖された細胞培養物の特徴
全ての培養物の全般的な増殖は、ショ糖増殖された対照培養物と比較した場合、減少された。しかし、培養接種物の初期レベルを増加する場合、通常の増殖速度が得られた。細胞は正常であり、ショ糖対照培養中において観察される細胞の典型的な褐色化なしに、培養において2週間までそれらを増殖させ続けることが可能であった。グリセロール培養において増殖された細胞は、それらのショ糖培養対照物と比較した場合、懸濁液単位において細胞のより高い凝集を有した。これらの細胞を実験において使用し、MTI化合物をテストし、凝集されたサブユニットの細胞接着性を破壊し、これは、グリセロールは膜の安定性を弱めるためである。
【0091】
付記I
LSGS-BY2培地は、30 mlグリセロール(v/v)および10 gスクロース(w/v)、100 mg/lミオイノシトール、200 mg/l KH2PO4、1 mg/lチアミンおよび0.2μg/l 2,4-ジクロロフェノキシ酢酸が補充された、MurashigeおよびSkoogのマクロおよびミクロ塩(MurashigeおよびSkoog 1962年)からなる。培地を加圧滅菌前にpH 5.8へ調節する。
【0092】
付記II
LSG-BY2培地は、30 mlグリセロール(v/v)、100 mg/lミオイノシトール、200 mg/l KH2PO4、1 mg/lチアミンおよび0.2μg/l 2,4-ジクロロフェノキシ酢酸が補充された、MurashigeおよびSkoogのマクロおよびミクロ塩(MurashigeおよびSkoog 1962年)からなる。培地を加圧滅菌前にpH 5.8へ調節する。
【0093】
付記III
G-NT1培地は、30 mlグリセロール(v/v)、100 mg/lミオイノシトール、180 mg/l KH2PO4、1 mg/lチアミンおよび2 mg/l 2,4-ジクロロフェノキシ酢酸が補充された、MurashigeおよびSkoogのマクロおよびミクロ塩(MurashigeおよびSkoog 1962年)からなる。培地を加圧滅菌前にpH 5.8へ調節する。
【0094】
実施例9−双子葉植物(タバコ(BY2、NT1、Petite Havana、Xanthi))、ニンジン(Daucus carota L. ssp. sativus cv Sativa)の懸濁培養物からの単一細胞作製
ニンジン懸濁培養物
ニンジンカルス培養を、インビトロで維持されたDaucus carota L. ssp. sativus cv Sativa植物から開始した。単離した葉柄外植片を、半固体培地において培養した(Mashayekhi-Nezamabadi,2000年)。50 mgの砕けやすいカルスを24マイクロウェルプレート中の1.5 mlのLSBY2培地(付記I)へ移すことによって、カルスから懸濁培養を開始した。次いで、最も速く増殖する懸濁液を、LSBY2液体培地35 ml中懸濁液1 mlでフラスコへ移した。培養物を、7日継代培養サイクルで散光中に維持した。これらの培養物は再生可能であり、懸濁単位は、コンパクトに配置された細胞を伴って塊状であった。継代培養の懸濁開始段階において0.5 mM〜1 mMコルヒチンでまたは25 nM〜0.5 mM DAS-PMTI-1((4-クロロ-1,5ジフェニル-1H-ピラゾール-3イルオキシ)-酢酸エチルエステル)で処理した場合、前記単位からの細胞は、培養開始の第3日以内に分離し、培地へ放出される。細胞培養物は、コルヒチン処理において単一細胞の均質な作製を示したが、DAS-PMTI-1においては、単一細胞作製を示したものの、丸いよりはむしろ多種多様の細胞形状を伴った。細胞は、蛍光顕微鏡下でカラカフロール(calacafluor)染色によって分析した場合、無傷の細胞壁を有する。
【0095】
ニンジン単一細胞懸濁液のクローン株作製
増殖の定常期にある単一細胞懸濁液を、0.5 Mコルヒチン処理における培養開始の7日後、LSBY2新鮮培地を使用して0.6 OD660へ希釈した。1.5 mlの希釈した単一細胞培養物を、15X100ペトリ皿中のM培地(付記II)上に播種し、ループを使用して広げた。未処理ニンジン懸濁凝集体もまた、同一の密度へ希釈し、同様に播種してプレーティングし、これらの培養物間の増殖応答を比較した。暗所中での4週間増殖後、単一細胞を有するプレートはいくつかの別個のクローンを産生し、このことは、クローン株がこれらの細胞から得ることができたことを示している。しかし、未処理懸濁液は、プレートの表面上においてカルスの芝生のような増殖を示した(図13)。従って、ニンジンの単離細胞は、クローン株を作製するために個々の細胞から誘導されるコロニーを作製することができることを示すことが可能である。
【0096】
図13:ニンジン単一細胞懸濁液からのクローン株の作製。未処理の懸濁凝集体をプレーティングしたM培地上における芝生のような増殖(パネルA)。単一細胞をプレーティングした培地上における分離したコロニーの増殖(パネルB)。
【0097】
実施例10−単子葉植物(トウモロコシ、イネ(T309)、カモガヤ、コムギ(Anza))の懸濁培養物からの単一細胞作製
全能性葉緑素入りトウモロコシ細胞培養
トウモロコシ光合成無機栄養培養を開始し、7日培養サイクルで維持した(Jayakumarら 2005年)。培養物を、継代培養時に、25 nM〜0.5 mMのDAS-PMTI-1((4-クロロ-1,5ジフェニル-1H-ピラゾール-3イルオキシ)-酢酸エチルエステル)または10 nM〜0.5 mMのトリフルラリンで処理し、凝集体から単一細胞を分離させた。コルヒチンは、0.5 mMを超えて約1 mMの濃度においてのみ活性であり、単一細胞を放出した(図14)。トウモロコシ懸濁単位は、分析した双子葉植物細胞と比較した場合、硬い細胞凝集体へと密にパッキングされる。しかし、緑色トウモロコシ細胞懸濁液が、最も硬い懸濁単位を有し、前記処理は、7日で50%までの生存可能な単一細胞放出を示し、これは、100 rpmでの短時間のスピンによって、または75〜100 uM直径の範囲の細孔を有する篩いでの濾過によって、分離することができた。
【0098】
図14:液体培地中における0.5〜1 mMコルヒチン処理および継代培養開始の14日(第2継代培養サイクルの終了)後に分析した培養物。A:単一細胞がクラスターから放出される;B:FDA生体染色で染色された、密にパッキングされた細胞凝集体;CおよびD:それぞれ1および0.5 mM処理において放出された、懸濁液を濾過した(100 um直径の細孔を有するフィルターを使用)後の、FDA染色された単一細胞;EおよびF:Dからの単一細胞の、より接近した図。
【0099】
カモガヤおよびイネ(T309)懸濁培養
カモガヤおよびT309のカルスを、半固体培地上における成熟種子(DAS種子コレクション)から開始した。懸濁培養を、Fauquetら,1996年によって記載されたプロトコルを使用して、この種子由来カルスから開始した。懸濁細胞培養物を、暗所中、150 rpmで振盪フラスコ中において、7日継代培養サイクルに維持した。トウモロコシについて記載したもの(上記)と同様のMTI化合物を、同様の濃度範囲で使用した。カモガヤおよびイネ単一細胞が培養開始の3〜5日後に放出された。
【0100】
コムギ(cv. Anza)懸濁培養
Anzaコムギカルスを、胚盤組織(scultellum tissue)から半固体MS2-Dコムギ培地(付記III)上において開始した。胚盤組織を、滅菌し浸漬した組織から単離し、種々の組織から誘導したカルスを、液体MS-2Dコムギ培地(付記III)へ移した。1つの速く増殖する懸濁株を単離し、MS2D液体培地上において7日の継代培養サイクルで7年間さらに継代培養し、長期間(7年)維持した。単一細胞作製のために、培養物を先ずNBジカンバ液体培地(付記IV)中に馴化した。Anzaコムギ培養物を、均一なサイズの細胞凝集体単位を伴ってこの培地中に良質な懸濁液を作製するようにコンディショニングすることができた。コルヒチン、トリフルアラリン(Trifluaralin)またはDAS-PMTI-1を、25 nM〜1 mM濃度範囲で、前記培地中へ継代培養開始段階で前記接種物へ添加した。懸濁液は、培養開始後3日から、培地中へ単一細胞を放出した。単一細胞は小さくかつ均一であった。
【0101】
付記I
LSBY2培地は、30 gスクロース(w/v)、100 mg/lミオイノシトール、200 mg/l KH2PO4、1 mg/lチアミンおよび0.2μg/l 2,4-ジクロロフェノキシ酢酸が補充された、MurashigeおよびSkoogのマクロおよびミクロ塩(MurashigeおよびSkoog 1962年)からなる。培地を120℃での加圧滅菌前にpH 5.8へ調節する。定常期での、培養の第7日での懸濁液体積を、培養を開始するために使用した。1ml体積のニンジン懸濁液接種物を、50 mlのLSBY2培地中へ移し、次いで、培養物を28℃で暗所中において150 rpmでシェーカー上に配置した。使用したMTI化合物を、培養開始サイクルで新鮮な培地と共に添加した。
【0102】
付記II
M培地は、LS基本塩およびB5ビタミン、30 gのグルコース、各々1 uMの2,4-Dおよびカイネチンからなり、該培地をpH 5.8へ調節し、その後、8 gm/L Noble寒天を該培地へ添加した。次いで、培地を加圧滅菌し、15X100ペトリ皿へ注ぐ。
【0103】
付記III
MS2D培地は、2 mgの2,4-D、0.5 mgのチアミン、30 gのスクロース、400 mgのミオイノシトール、400 mgのカゼイン加水分解物(ECH)が補充された、MS塩(MurashigeおよびSkoog 1962年)およびErikssonビタミンからなる。培地をpH 5.8へ調節した後、培養物を加圧滅菌した。懸濁培養物を7日間隔でルーチンに継代培養し(新鮮な培地54 ml中、使用した懸濁液の初期接種物6 ml)、28℃で暗所中150 rpmで振盪しながら増殖させた。これらの条件下で、細胞集団は、接種後2日〜6日の間、常に指数増殖状態にあった。ゲル培地に成熟種子胚盤からカルスを誘導させるために、MS2D培地に2.5 g/Lで追加成分Gelriteを含有させ、これは、pHを調節した後に添加する。
【0104】
付記IV
NBジカンバ培地は、NB基本塩、スクロース30g/L、ミオイノシトール100mg/L、ECHカゼイン加水分解物(ECH)300mg/L、L-プロリン(2.5M)1.7ml/L、L-グルタミン500mg/L、および6.6 mg/Lジカンバからなる。培地をpH 5.8へ調節し、その後、濾過滅菌する。
【0105】
実施例11−ニンジン単一細胞作製およびニンジン単一細胞懸濁培養物のSi-C Whiskers媒介遺伝子形質転換
ニンジン単一細胞懸濁液の開始
再生可能なニンジン凍結保存株(D2-40-018)を解凍し、Linsmeier-Skoog(LS)培地(Nagata, T., Nemoto, Y., and Hasezawa, S. (1992) Int. Rev. Cyto 132, 1-30)において培養した。培地塩は、Phyto Technology Laboratories、カタログ番号L689から購入した。盛んに増殖する懸濁株が1週間以内に得られ、7日培養サイクルで散光下にて125rpmでのオービタルシェーカー(Innova-3300)上に28℃でLS BY2懸濁培地58 mlへ2ml PCVを移すことによって、前記維持株を継代培養した。単一細胞作製のために、定常期での1 ml PCVのニンジン懸濁液を、1 mMコルヒチン(Sigma、カタログ番号C3915)を含む30 mlのLS懸濁培地へ添加し、7日間培養した。単一細胞が、培養の3〜7日に作製され、形質転換実験が直ぐに出来る状態である。ニンジンの単一細胞は、新鮮なLS BY2液体培地60 mlを添加することにより14日での培養物を希釈することによって、28日まで定常期で維持され得た。
【0106】
ニンジン単一細胞のWHISKERS(商標)媒介遺伝子形質転換
1 mMコルヒチンを用いてLSBY2培地において作製した単一細胞を、培養開始の4日後および11日後に観察した。フルオレセインジアセテート染色によって測定した場合、単一細胞は非常に活性であり生存可能である。黄色蛍光タンパク質を発現するカルスイベントが、グルホシネートアンモニウムプレートにおける選択の10日後および25日後に、単一細胞由来のコロニーから観察された。
【0107】
遺伝子形質転換ニンジン単一細胞
改変されたWHISKERS(商標)形質転換プロトコル[Petolino, Welter and Cai (2003) Molecular Methods of Plant Analysis, Vol.23, 147-158, Chater9, Genetic Transformation of Plants, ISBN 3540002928]を形質転換実験において使用した。単一細胞処理および培養開始の4日後および11日後の単一細胞ニンジン懸濁液25mlを滅菌250ml IEC遠心分離機ボトル(Fisher Scientificカタログ番号05-433B)中へ移すことによって、実験を開始した。8.1mlの新たに調製した5%Whiskers Suspension(Silar SC-9, Advanced Composit Materilas Corp, Greer, SC)ならびにPAT遺伝子を駆動するAtUbi10プロモーターおよびYFP遺伝子を駆動するCSVMSプロモーターを含有する170ugのpDAB3831を添加することによって、形質転換を行った。各形質転換は1つのボトルからなり、これを、改変されたペイントミキサー(Red Devil Equipment Co, Minneapolis, MN)中に配置し、10秒間高速で撹拌し、その後、細胞を500 ml回復フラスコへ戻し、100mlの新鮮なLSBY2液体培地を添加した。細胞を、28℃および125rpmでロータリーシェーカー上において1時間回復させた。
【0108】
回復に続いて、細胞懸濁液の3 mlアリコートを、Buchner漏斗上に置いた滅菌55 mmナンバー4濾紙ディスク(Whatman International Ltd.)上へ等しく分配し、液体培地を吸引除去した。次いで、細胞を含む濾紙を、ゲル化剤としての0.8% TC寒天および15 mg/l グルホシネートアンモニウムを含む半固体LSBY2-B15培地を含有する60 x 20mmペトリ皿上に配置した。プレートを暗所中28℃でインキュベートした。10日後、GFPを発現するイベントを濾紙から取り、LSBY2-B15半固体の個々のプレート上に配置した。残りのフィルターおよび細胞を、新鮮な半固体LSBY2-B15培地へ移し、28℃で暗所中においてインキュベートした。
【0109】
単一細胞コロニーイベントの分析
形質転換実験の開始の25日後、Leica倒立蛍光顕微鏡下で均一に蛍光を発していた推定トランスジェニックイベントを、「EnviroLogix LibertyLink(登録商標)PAT/pat Plate Kit」を使用して高感度ELISAアッセイによって機能的選択可能PATマーカータンパク質について分析した。EnviroLogix LibertyLink(登録商標)PAT/pat Plate Kitは、「サンドイッチ」酵素免疫測定法(ELISA)である。カルス組織をマイクロ遠心分離チューブ中に配置し、250 ulの抽出緩衝液を添加した。抽出緩衝液は、PBS(Fisherカタログ番号BP665-1)および0.05% Tween-20(Sigma-Aldrichカタログ番号P1379)であった。組織をマイクロ遠心分離チューブ中において小さな携帯型乳棒ですりつぶした。サンプル抽出物を1分間11,000 rcfで遠心分離し、上澄みを、以下の希釈1:1、1:2、1:4、1:8、1:16、1:32、および1:64でELISAにおいて使用した。ELISA法は、Envirologixキットカタログ番号AP014に記載される通りに従った。テストにおいて、サンプル抽出物を、pat遺伝子由来のPATに対して産生された抗体でコーティングされたテストウェルへ添加する。サンプル抽出物中に存在する残留物が抗体へ結合し、次いで、酵素(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)標識PAT/pat抗体の添加によって検出される。サンプル洗浄工程後、アッセイの結果を着色工程で視覚化する。着色は、サンプル抽出物中のPAT/pat濃度に比例する。
【0110】
結果は、143mg/250 ul抽出緩衝液のサンプル比率での陰性対照組織は、PAT ELISAにおいて値を生じなかったことを示した。63mg/250 ulのサンプル比率でのイベント001Bは83 ng/mlのELISA値を生じ、これはカルス1 mg当たり330 pgのPATに等しく、従って、期待された範囲内で蛍光を発するPhiYFPとさらにPAT選択マーカー遺伝子との両方で実際に形質転換されている鮮やな蛍光を発するイベントを示している。
【0111】
実施例12−微小管阻害剤の化学的クラスおよび植物単一細胞作製
微小管と細線維との類似は、因果関係よりもむしろ未知の分極原理に対しての相関応答を示している(Emonsら,1992年)。これはいくつかの例によって支持されており、ここで、水ストレスを与えられたトウモロコシ(Zea mays)根の成熟領域内の大抵の細胞は、右巻きらせんの微小管アレイを有するが、左巻きらせんの細線維を有する(Baskinら,1999年)。同様に、シロイヌナズナ(アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana))突然変異体である、微小管構築1(microtubule organization 1)(mor1)は、異常な微小管アレイを有するが、外見上は変わらない細線維アラインメントを有する(Himmelspachら,2003年;Sugimotoら,2003年)。単一細胞懸濁液は、本発明者の実験において、対照のそれと類似した増殖応答を示し、ここで、乾燥重量は細胞継代培養サイクルにわたって増加し、このことは、それらが放射状拡大を伴う等方性増殖を示す細胞を有するという事実にもかかわらず、細胞がより低濃度のマイクロチューブリン阻害剤(MTI)において分裂することを示している。さらに、培地組成を変更することによって、写真撮影された等方性増殖を伴うこのような単一細胞中において細胞板を見ることが可能であり、このことはさらに、これらの細胞が実際に低レベルのMTI濃度において分裂しているという事実を支持している。従って、低濃度の微小管阻害剤で処理し、培地中において最適なレベルに維持された植物細胞は、変化しないままである表層微小管の実質的な集団を有し得た。これは、単一細胞が、細胞分裂について重要な前提条件である、隔膜形成体構築を含む正常な細胞壁構築プロセスを行い続けることを可能する。
【0112】
微小管機能を部分的に阻害し、低レベルでそれらを破壊することにおいて選択的である化合物を選択するために、種々のクラスの化合物をスクリーニングした。植物チューブリンとのMTI相互作用は、十分に特徴づけされた(HugdahlおよびMorejohn,1993年)。にもかかわらず、いずれの阻害剤を用いても、非特異的効果が存在する(VaughnおよびLehnen,1991年)。従って、この実施例において、種々の化学を有する微小管阻害剤クラスの比較を評価し、非特異的効果を伴わない単一細胞の増殖を維持し得る化合物を同定した。放射状拡大を刺激するために必要とされるよりも低い濃度で伸長を阻害することが公知である、クロルプロファムなどの化合物が存在し、これは、それらは表層微小管よりも盛んに有糸分裂微小管に影響を与えたためである(HoffmanおよびVaughn,1994年)。従って、この研究の目的は、低い最適な濃度で、等方性増殖を維持しつつ正常な細胞機能を行うに十分な表層微小管を保持するが、同時に非特異的阻害効果を伴わないかまたはほとんど伴わない、化合物を選択することであった。
【0113】
コルヒチンはトロポロン誘導体であり、その立体化学構造および作用機序は十分に確立されており(KeatsおよびMason,1981年;MargolisおよびWilson,1977年;RaughおよびWilson,1980年;Murgulis,1974年)、それは、チューブリン二量体からの微小管の形成を妨げる。プロピザミドおよび他のベンズアミドは、植物細胞中の核紡錘体に作用し(Akashiら,1988年;Bartels PGおよびHilton JL.,1973年;Carlsonら,1975年)、一年草および広葉雑草に対して有効である発芽前除草剤として開発された(Ayaら,1975年)。リン酸アミドの用途は、オリザリン(スルフラン)およびトリフルラリン(トレフラン)を含むジニトロアニリン除草剤のそれと類似している(AshtonおよびCrafts,1981年)。トリフルラリンは、ジニトロアニリン除草剤ファミリーの最もよく知られている代表物の1つであり;それは植物微小管を破壊するが、動物細胞においては無効である(HessおよびBayer,1974年;HessおよびBayer,1977年)。ピリジンは、炭素の1つが窒素によって置換されているベンゼン環を有する。除草剤として使用されるいくつかの置換ピリジンが存在する。このグループには、ジチオピル(Dimension(登録商標))およびチアゾピル(Visor(登録商標))がある。ジチオピルは、多種多様の雑草を制御するために芝地においてのみ使用される、選択的な発芽前および発芽後の物質である。それは、しばしば、他の除草剤と共に肥料において配合される。チアゾピルは、事実上全ての雑草について、ならびに柑橘類、綿、トウモロコシ、落花生、ダイズおよびジャガイモを含む多種多様の作物に対して十分に作用する選択的な発芽前化合物である。従って、ピリジンは、機能的に微小管構築阻害剤であるようである。
【0114】
材料および方法
JTNT1タバコ懸濁培養物
JTNT1タバコ細胞懸濁培養物を、1 mlの充填細胞容積(PCV)を20 mlのタバコ培地(MS塩、ミオイノシトール、チアミンHCl(1 mg/ml)、リン酸水素二カリウム(無水)、MES、2,4-D(10 mg/ml)および3%グリセロール(NT1B培地)へ継代培養することによって維持した。細胞株を7日毎に継代培養し、試験のために必要である場合にはバルク化した。1 Mスクロースは、タキソール誘導植物チューブリン重合の速度および程度の両方を阻害した(Bokrosら,1993年)。1 Mスクロースの存在下での植物チューブリン重合の研究(両方ともAPM、アミプロホスメチル、およびオリザリン)は、植物微小管の長さを濃度依存的に短縮させた(MorejohnおよびFosket,1984年;Morejohnら,1987年)。さらに、Sucは、前もって形成された微小管を安定化させ、前もって形成された微小管に対するMTIの効果の試験を実行不可能とする。さらに、スクロースは溶液粘度を実質的に増加させ、チューブリン重合は、減速された二量体およびポリマー拡散速度によって少なくとも一部分変更される。従って、単一細胞作製の場合、培地中にはスクロースを有さないかまたはほとんど有さないことが重要であった。従って、グリセロール中において馴化した新規のJTNT1株をこの研究について開発した。
【0115】
処理のために、十分な細胞分配を可能にするためにしばしば渦を巻かせながら(懸濁凝集体は沈殿する傾向にあるため)、懸濁株を培地20 ml中PCV 1 mlで調製し、次いで、24ウェルマイクロタイタープレートのウェル中へ移した。24ウェルの各々はJTNT1懸濁液1 mlを含有した。24ウェルプレートを、6プレートの高さまでのプレートの積載を可能にするために特別なクランプおよびハーネスでInnova 4900 Multi Environmental Shaker上に維持した。プレートを暗所中25℃および130 rpmの速度で回転した。
【0116】
単一細胞作製
各化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、0.5モル濃度ストック溶液を得た。1 mlのJTNT1懸濁液(1 ml PCV/20 mlタバコ培地)を、24ウェルプレートの各々のウェルへ添加した。各ウェルへ個々の化学物質を添加し、所望の濃度(1μM、3μM、および10μM)を達成した。培養物をInnova Shaker上において7日間増殖させた。毎日、濁度測定を、Molecular devices製のSpectraMax M2e(600吸光度で設定し、1ウェル当たり5回の読み取りを行う)を使用することによって、各ウェルについて行った。第7日に、単一細胞の形成および細胞生存能について、Leica 5000倒立共焦点顕微鏡を使用して、細胞を観察した。
【0117】
LSBY2グリセロール培地中におけるBY2単一細胞によるクローンカルスイベント作製
タバコBY-2細胞(Nagataら,1992年)を、Shaulら,1996年によって記載された修飾プロトコルに従ってpDAB1590によって形質転換し、共培養の4日後にLSBY15上において選択した。緑色蛍光タンパク質を発現するカルスイベントをリカバーし、カルスをLSBY2 B15培地上において維持した。1ヶ月以内に、カルスイベントが直径数cmへ増殖し、小さいが鮮やかに蛍光を発する断片(約2〜5 mm2凝集塊)を、新鮮な固体培地へ移し、新鮮な選択剤中に栄養素が供給された細胞を維持し、均質にGFPを発現するカルスを選択した。500 mg断片のカルスを、250 ml振盪フラスコ(暗所中25℃で130 rpm)中、炭素源として3%グリセロールおよび1%スクロースを含む改変LSBY2液体培地である、50 mlのLSBY2-Gly-B15へ移した。毎週、0.5 mlの充填細胞容積(PCV)の細胞を使用し、懸濁培養を開始した。従って、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するカルスおよび懸濁凝集体を、それぞれ1ヶ月および7日サイクルに維持した。
【0118】
GFP発現単一細胞の作製
定常期での0.5 mlの充填細胞容積(PCV)のGFP発現懸濁凝集体の添加と共に、LSBY2-Gly-B15培地中において7日培養サイクルの開始の間1 uM濃度の化合物DDP(ジフェニルピラゾール)を添加することによって、単一細胞を作製した。または、DMSO中に溶解した1Mジフェニルピラゾールストック溶液50 ulを添加し、懸濁液中1uM最終濃度を提供することによって、25mlの懸濁凝集体を25mlの新鮮なLSBY2-Gly-B15懸濁培地へ移した。従って、わずか3.5日の遥かにより短いサイクルで単一細胞を作製することができた。LSBY215培地は、選択のために15 mg/lグルホシネートアンモニウムを常に含有する。
【0119】
GFPが3.5または7日培養サイクルにわたって単一細胞中においてキメラタンパク質として発現され、細胞内の部位に存在し、これは、キメラ構築物のGFP発現が、Leica顕微鏡を使用し、Zeiss Axiovision共焦点レーザースキャンニング顕微鏡も使用し、従来の落射蛍光を使用して、生きている細胞中において観察されたためである。発現は、核および細胞質繊維を含む細胞内区画の多くにおいて見られた。
【0120】
結果および考察
細胞は、グリセロールを含有するタバコ培養培地中において非常に健全であり、細胞クラスターが非常に明らかであった。細胞は、7日の期間にわたって良好なバイオマス増加を示し、しかし、ショ糖を含む対照と比べてバイオマスが約50%減少した。DMSOが誘導する効果がないことを確実にするために、対照培養物はまた0.1%DMSOを有した。スクロースまたはグリセロール培地のいずれかへの1 uM 4-クロル-1,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)-酢酸エチルエステル(ジフェニルピラゾール)の添加は、それぞれの対照から顕著には細胞のバイオマスを減少させず、このことは、ジフェニルピラゾールの存在下において対照と類似した単一細胞の活性増殖が存在することを示している。増殖曲率は、培養物を2サブサイクルまたは3.5日にわたってとった場合、類似している。グリセロール培地中における単一細胞作製はまた、対照と比較して、非常に高い生存可能な細胞を示す。
【0121】
トリフルラリン、オリザリン、およびマイクロチューブリン安定剤クラス化合物、例えば、タキソールを含む、いくつかの他の化合物を、唯一の炭素源として3%グリセロールを含むNT1B培地中において培養したタバコJTNT1懸濁培養物から単一細胞を作製するそれらの効率について研究した。これらは、コルヒチン、N-(1,1-ジメチルプロピニル)3-クロロベンズアミド、プロピザミドおよびトリフルラリンであった。これらの研究において、前記化合物は、それらの単一細胞作製効率および用量反応曲線の急勾配で相違した。オリザリンは、テストした他の化合物と同様に、単一細胞の直径を少なくとも4倍増加させ、閾値の約10倍の飽和濃度を有した。コルヒチンは、直径を5倍増加させ、より急勾配の用量反応曲線を有し、このことは、これらの2つの化合物は高い用量での作用について好ましい場合があることを示している。
【0122】
単一細胞を作製するために必要な濃度は、コルヒチンについては50 uM〜2 mMの範囲内、プロピザミド、N-(1,1-ジメチルプロピニル)3-クロロベンズアミドについては10 nM〜100 uMであった。しかし、最適な単一細胞作製についてのオリザリンおよびトリフルアラリン(Trifluarlin)の濃度は、100 nM〜1 mMであった。しかし、高濃度のこれらの化合物において、タンパク質合成が増加し、処理された細胞中においてプラスチドおよびミトコンドリア分裂が生じ、21日間培養したニンジン細胞において見られたように、核倍数性を伴って直径300uMまでの巨細胞の形成に至った。これらの結果は、有糸分裂阻害は、研究した高濃度でのこれらの化合物の基本的な効果であることを示唆している。従って、MTIの最適濃度だけでなく、化合物の化学(これは、小管に対して非常に選択的な機能を有し、細胞分裂機能に類似する非選択的機能を有さない)を維持することが重要であるようであった。目的に従って、前述したジフェニルピラゾールに加えて、他の化合物を以下に記載する。
【0123】
BY2懸濁凝集体が観察された:LSBY2糖培地において;改変LSBY2培地中において細胞板を示す1 uMジフェニルピラゾール中において作製された分裂するBY2単一細胞;デコンヴォルーションされたBY2 GFPトランスジェニック細胞およびLSBY2-15ゲル培地上における単一クローンコロニーイベント。
【0124】
LSBY2グリセロール培地中におけるタバコBY2単一細胞作製の概要
凝集体懸濁液から1 uMジフェニルピラゾール中において作製された単一細胞は、培養の3.5日にて細胞の90%において1または2個の核小体を有する単一の核を示す。これらの細胞は、選択剤としての15 mg/lグルホシネートアンモニウムおよび0.8%TC寒天を含むLSBY2ゲルプレート上にプレーティングされ得、これは、凝集体懸濁液を形質転換するために使用したpDAB1590プラスミドは、選択マーカーとしてPATを有したためである。細胞を、1:4希釈で液体培地中に希釈し、ゲル培地上にプレーティングし、プレーティングの21日後にクローンイベントを選択した。
【0125】
JTNT1懸濁液へ添加した場合のアミプロホスメチル(APM)について、単一細胞が1〜10μM濃度で形成され;より高い濃度で、増殖の顕著な減少および細胞分裂阻害が存在する。丸い分離した細胞が、DMSOのみを有する対照と比べて、1μMおよび3μMのAPMの写真において見られ得る。JTNT1タバコ細胞は、1μMおよび3μM APMの存在下において、健全な黄色であり、十分に増殖した。フルオレセインジアセテートおよびヨウ化プロピジウム(Propidium Iodine)染色によって測定した場合、細胞生存能は、70%までの生存能を示した。
【0126】
さらに、グリセロール培地におけるJTNT1タバコ細胞のAPM誘導単一細胞作製を観察した。JTNT1対照懸濁凝集体を、グリセロールおよび0.1%DMSOを含む培地中において観察し;JTNT1単一細胞を、1、3、および10 uM APMを含むNT1Bグリセロール培地中において観察した。
【0127】
ジチオピルは、微小管を破壊する置換ピリジン除草剤のクラスに属する。1μM、3μM、および10 μMの濃度でJTNT1懸濁液へ添加した場合、単一細胞は、1μMおよび3μM濃度(写真EおよびF)を使用して形成されたが、10μM濃度は単一細胞を有した(細胞の濃度は低かった)。タバコ細胞は、テストした全ての濃度でジチオピルを使用して、健全であり、増殖性であり色が黄色であった。1μMおよび3μMジチオピルでの処理後の細胞生存能は70〜80%であり、より高い生存能を示している。
【0128】
コルヒチン模倣物(Evansら,2003年)、(±)-4S,5R-4-ニトロ-5-(2,3,4-トリメトキシフェニル)-シクロヘキセン(トリメトキシフェニルシクロヘキセン)を、その単一細胞作製効率についてJTNT1タバコ培養物においてテストした。細胞中に軽い漂白が存在したが(それらは僅かによりくすんだ黄色であった)、細胞はプレート上において非常によく増殖した。この化学物質は、1μM、3μM、および10μMで単一細胞の形成を促進した。細胞は丸く、全てのレベルにわたって細胞生存能は、80〜90%の範囲であった。細胞増殖阻害は、テストした濃度間でかなり類似しており、細胞は、高い生存能およびより低い細胞傷害性を伴って健全であった。
【0129】
従って、JTNT1タバコ細胞の、誘導された単一細胞作製が、10 uM濃度のトリメトキシフェニルシクロヘキセンで誘導されたグリセロール培地において観察された。
【0130】
スーパー単一細胞
ニンジン懸濁凝集体が、60 mlのLSBY2液体培地中の1 mMコルヒチンにおいて培養され得、28日までの間、同一の培地中において維持した。第2継代培養後の増殖は、14日後に減少し、しかし、細胞は、増殖し続け、生存しており健全であるスーパー単一細胞を形成した(しかし、広範囲の分葉化した核を示し、このことは、核の倍数性の発生を示している)。いくつかの核を有するニンジンスーパー単一細胞が、LSBY2培地中において連続的1 mMコルヒチンで21日齢の細胞において観察された。
【0131】
結論
これらのテストレベルにおける細胞増殖を、目視観察、乾燥重量(第7日にのみ測定)、および濁度読み取りによって観察した。図15は、7日期間で測定した濁度読み取りを描写した。濁度読み取りは、培地(3%グリセロールを含む)のみならびに1μM、3μM、および10μM濃度の微小管阻害剤を含有するプレートに関した。予想されるように、対照は最良の増殖パターンを有するが、試験した化学物質はいずれも、1μMおよび3μMの割合で細胞株を死滅させない。全ての処理における細胞が、同時点(第3日)あたりで増殖速度の増加を示し、細胞体積は第7日で依然として増加していた。これは、化学処理した細胞が、少なくとも7日間生存可能のままであったことを示している。
【0132】
実施例12の参考文献
【0133】
実施例13−MTI作製された単一細胞の細胞内構造、細胞発生、および分子ゲノム不安定性評価についての比較研究
組織培養物由来の植物における全体のゲノム安定性が、いくつかの植物種において細胞遺伝学レベルで研究された(Shoyamaら 1995年;Zoriniantsら 2003年)。エンブリング(embling)由来の植物の安定性について、細胞遺伝学的研究は、対照的な観察を明らかにした。Odakeら(1993年)は、それぞれ、ジェランガム固体培地および液体培地から得られたアスパラガス・オフィシナリス(Asparagus officinalis)L.の66.7%および100%のエンブリングにおける染色体倍加(二倍体から四倍体へ)を報告した。対照的に、Mamiyaら(2001年)は、A.オフィシナリス(A. officinalis)において、体細胞胚形成の間に、倍数性変化が無かったことを報告した。培養培地において使用された、合成オーキシン、例えば、2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)およびNAA(ナフタレン酢酸)は、ソマクローナル変異と関連することが報告された(Karp 1989年;Phillipsら 1994年)。実際に、倍数性の減少が、2,4-Dが使用されたニンジン(Ronchiら 1992年)およびポプラ(Rughら 1993年)体細胞胚形成系の両方において報告された。マイクロチューブリン阻害剤(MTI)もまた、植物細胞中において倍数性を増加させる。しかし、濃度およびMTI化合物クラスは、倍数性の性質または倍数性の非存在を決定する。例えば、オリザリンは、TBY2細胞において核の倍数性を誘導するが、同様の濃度でプロパザミド(propazamide)は誘導しない(Ehsanら,1999年)。同様に、ニンジン懸濁細胞の長期間の曝露は、より高濃度のコルヒチンで、核の倍数性を誘導する。ニンジン懸濁細胞は、連続処理の14〜21日から、1 mMコルヒチン培養単一細胞中において核の倍数性を示した。しかし、このような倍数性レベルの頻度は、14日までは培養物中において遥かに低く、<1%であり、これは、オーキシン培養対照懸濁液について報告された対照と類似している(Karp 1989年;Phillipsら 1994年)。しかし、この研究においてテストされた化合物の中でも、4-クロル-1,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)-酢酸エチルエステルおよび4S,5R-4-ニトロ-5-(2,3,4-トリメトキシフェニル)シクロヘキセンが、連続処理の14日間において、核倍数性パーセンテージを伴わうかまたはほとんど伴わない、効率的な単一細胞作製を示した。
【0134】
いずれにしても、このような低細胞傷害性MTIを使用しての細胞凝集体からの単一細胞誘導プロセスは、異なる遺伝子発現プロフィールを伴って単一細胞の現存の遺伝子発現パターンを依然として変更し得た。DNAメチル化は、インビトロでソマクローナル変異へ至る望ましくない結果を誘発することが周知である。さらに、MTIは、分子改変または不安定性を生じさせ得る変化を誘導する。1.09%という多型割合が、エラグロスティス・クルブラ(Eragrostis curvula)の四倍体におけるコルヒチン誘導染色体倍加において報告された(Mecchiaら 2007年)。E.クルブラ(E. curvula)種子を処理するために使用されたコルヒチンの濃度レベルは0.05%である。本研究の目的は、1 uM 4-クロル-1,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)-酢酸エチルエステル中で作製されたJTNT1単一細胞中のゲノム安定性を評価することであった。
【0135】
種々の分子アプローチ、例えば、AFLP、RAPD(迅速増幅多型(rapid amplified polymorphic)DNA)、RFLP(制限断片長多型)が、組織培養物由来の植物におけるソマクローナル変異のレベルを同定および測定するために試みられてきた(Devarumathら 2002年;Martinsら 2004年;Sanchez-Teyerら 2003年;HaleおよびMiller 2005年)。しかし、使用した方法論にかかわらず、技術が豊富であるにせよ、非常に低いパーセンテージの(1%よりも遥かに低い)ゲノムしかアッセイされ得ない(サンプル化した座の数の点で)。利用可能な種々の技術のうち、AFLPが最も非常に多重であり、典型的に、1プライマー対当たり50〜100座アッセイされる。これらの座はゲノムの全体にわたって多かれ少なかれランダムに散在すると考えられ、従ってAFLPは、組織培養誘導された変化を検出するための最良の機会を提供する。さらに、AFLPはまた、品種同定および変動分析についてのより強力な分子技術の1つである(HaleおよびMiller 2005年)。従って、この評価方法を本研究において使用するために選択した。
【0136】
材料および方法
JTNT1タバコ単一細胞開始およびサンプル収集
JTNT1タバコ単一細胞を、3.5日培養サイクルにおいて、2つの異なる培地、3%スクロースを含むNT1B(NT1B-Suc)および3%グリセロールを含むNT1B(NT1B-Gly)中で開始した。それぞれの培養培地中に維持された定常期培養物での12.5ml懸濁凝集体を添加することによって培養を開始し、1 uM 4-クロル-1,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)-酢酸エチルエステル(ジフェニルピラゾール)を含有する125ml振盪フラスコ中の12.5mlの新鮮な培養培地へ移した。フラスコをフォームストッパーで閉じ、25〜28℃で暗所中130 rpmでオービタルシェーカー上において培養した。培養物を、14日の期間まで3.5日毎に継代培養した。培養物の4つのサンプル(Suc/Gly増殖細胞および0.2%DMSOを含むSuc/Gly培地における対照培養物)を、5分間3000 rpmで懸濁液をスピンすることによって3.5d毎に採取した。サンプルを直ちに凍結乾燥し、細胞酸化を防ぎ、採取後に導入されるサンプルに対する悪影響を最小限にした。単一細胞をHoechst核染色で1時間染色し、2培養サイクルまで核異常について顕微鏡下で観察した。
【0137】
単一細胞の細胞学的特徴づけ
細胞生存能および細胞壁
確立されたJTNT1単一細胞を使用し、酵母中における生存能テストについて使用されるFUNl(F-7030, Molecular Probes, Invitrogen Inc)細胞染色で染色し、これは、2つのカラー蛍光プローブを含有する。第3のものである、細胞壁を染色するCalcofluor White M2Rを、細胞を染色するために使用した。JTNT1単一細胞について、20μmのFUNl染料を添加し、培養物を室温で20分間インキュベートした。1 mLの新鮮な培養培地を添加し、過剰な染料を洗浄し、3000rpmで遠心分離し;上澄みを捨てた。Zeiss ApoTome顕微鏡において細胞を調べ、画像化した。
【0138】
形質膜
JTNT1細胞を、5分間、5μm FM4-64(スチリル色素)と共にインキュベートし、新鮮な培地で洗浄した。培養物を3000 rpmで遠心分離し、新鮮な培地を添加した。細胞をZeiss ApoTome顕微鏡上において視覚化した。
【0139】
核
単一細胞をHoechst核染色で1時間染色し、2培養サイクルまで核異常についてZeiss Apo Tome下で観察した。クリスタルバイオレット染色もまた、倍数性特徴づけについて核構造を観察するために生存核染色として使用した。
【0140】
細胞骨格
ファロトキシンはアクチンフィラメントへ結合する。Alex Fluor 488ファロイジン(A 12379 Invtrogen Inc)を使用し、単一細胞を染色した。6.6umのAlex fluorを単一細胞へ添加し、30分間インキュベートし、顕微鏡上において画像化した。
【0141】
ゲノム不安定性についての分子評価
DNA抽出
代表サンプルからのゲノムDNAを3.5、7、10.5、および14日に採取した。SucおよびGly培養物ならびに対照(10サンプル)を、CTABプロトコル(実施例12の付記を参照のこと)を使用して抽出した。DNAを、Molecular Probes, Inc.(Eugene, Oregon)製のPicoGreen(登録商標)色素を使用して定量した。マイクロタイタープレートの各ウェルは、90μlの200倍ピコグリーンならびに10 μlの40倍希釈でのDNAサンプルまたはLambda DNA標準(0、2.5、5および10 ng/μl)を含有した。標準的なプレートシェーカーを使用してプレートを短時間振盪し、Molecular Devices(Sunnyvale, California)製のSpectra Max GeminiXS蛍光光度計を使用して蛍光を読み取った(励起約480 nm、放射約520 nm)。各サンプルを三重で定量し、3つの結果の平均値を続いての希釈のために使用した。DNAサンプル濃度を、滅菌水を用いて91 ng/μlの実施濃度まで希釈した。
【0142】
AFLP分析
増幅断片長多型(AFLP)アッセイを、Bryanら(2002年)に記載されるように、Vosら(1995年)のプロトコルの修飾を使用して行った。6塩基対切断制限酵素EcoRIを、4塩基対切断制限酵素MseIと組み合わせて使用した。EcoRI蛍光標識およびMseI非標識AFLPプライマーを、Applied Biosystems (Foster City, CA)に注文した。AFLP分析を、1つの修飾を伴う選択的増殖反応によって、Applied BiosystemsのAFLP Plant Mapping Protocolを使用して行った。改変点は、消化/連結反応物を37℃で一晩インキュベートしたことであった。選択的に増幅された産物を、滅菌脱イオン水中に2倍希釈した。0.5 ulの希釈産物を、5 ulのローディングバッファー(500 ul ABI HiDiホルムアミドと混合された5 ul GeneScan 500 bp LIZサイズ標準)と合わせた。標準条件を使用し、G5-RCTスペクトルマトリクスを備えるAB3730XL DNAアナライザーにおいて、サンプルを分析した。次いで、データをGeneMapper(登録商標)バージョン4.0(Applied Biosystems, 2005)へインポートした。PCRフラグメントサイズに従って、対立遺伝子に数値を割り当てた。
【0143】
結果および考察
単一細胞の細胞学および他の細胞内評価
細胞壁および細胞分裂。細胞培養の間、増殖および分化が生じ、細胞の形状および構造は細胞壁に依存する。単一細胞は、典型的な円形の細胞を示す3〜10倍のサイズ増加を伴う等方性増殖を示した。細胞壁構造を理解するために、カルコフロール(セルロースへの結合親和性を有する白色化剤)を使用した。単一細胞において、別個の円形細胞壁が観察された。細胞壁は動的構造であり、これは、細胞形状を決定することにおいて重要な役割を果たし、環境因子と相互作用する。観察した単一細胞の大部分は球状細胞を示したが、壁板を伴って分裂する細胞を見ることができた。乾燥重量の増加は、これらの単一細胞において細胞分裂が生じることの別の表示である。MTIにおける培養の14日後、単一細胞をMTIフリー培地へ移した場合、細胞は凝集体懸濁液を再構築し、これは等方性増殖の可逆性を示している。
【0144】
形質膜
形質膜は、全ての細胞内容物を封入する細胞の重要な成分の1つである。それは細胞壁の輪郭を描き、細胞内部と環境との間に最終フィルターを提供する。両親媒性FMスチリル色素は、生きている真核細胞における細胞小器官構成および小胞輸送を研究するために有用である(Bolteら,2004)。最初、FM色素は形質膜(PM)へ集中し、次いで液胞および小胞中へ次いでエンドソーム中へエンドサイトーシスによって取り込まれる。FM4-64(膜選択的蛍光色素)は形質膜を染色し、次いで、細胞内の他の細胞小器官へインターナリゼーションされる(Uedaら,2001年)。染色の5分後、単一細胞蛍光発光が形質膜において観察され、構造的欠陥は存在しない。100 nMイソキセベン(Isoxeben)がセルロース網状構造を除去するために使用される単一サンプルにおいて、FM4-64は、表面に対して広範囲な小胞を示した。膜は、5分以内に能動的なエンドサイトーシスを示した。
【0145】
核
MTI処理植物細胞中における核構成は、複雑であると報告され、核倍数性は、より高濃度で一般的であることが示される。サンプルを1 uM濃度のジフェニルピラゾールおよびトリメトキシフェニルシクロヘキセンにおいて7日まで調べた。核細胞小器官構造を種々の染料(Hoechst3325)を使用することによって分析した。JTNT1において、単一細胞は、3.5日培養において、1 uM濃度のジフェニルピラゾールおよびトリメトキシフェニルシクロヘキセンにおいて、1つの核または2つの核小体を有する単一の核を含有する。しかし、高濃度のこれらの化合物は、21日間培養されたニンジン細胞において見られたように、核倍数性を伴う、直径150〜300 uMまでの巨細胞を形成させる。これらの結果は、有糸分裂阻害は、研究した高濃度でのこれらの化合物の基本的な効果であることを示唆している。従って、MTIの最適濃度だけでなく、化合物の化学(これは、小管に対して非常に選択的な機能を有し、細胞分裂機能に類似する非選択的機能を有さない)を維持することが重要である。
【0146】
細胞骨格
細胞骨格は、いくつかの構造タンパク質、例えば、細胞構造の構造的完全性に関与するFアクチンおよびチューブリンからなる。細胞骨格インビボ動力学を、より鮮やかでありかつよりpH依存性でない緑色蛍光Alexa flour 488アクチンコンジュゲート(A12373)を使用して研究した。微小管およびアクチンフィラメントは、植物細胞の増殖および分化および生存について、植物細胞中における細胞骨格構造の維持のために必須の構造である(Kostら,2002年)。ファロイジンで染色された単一細胞は、アクチンフィラメント細胞骨格を示し、細胞構造は正常であって、フィラメントの欠陥のあるポジショニングは存在しなかった。
【0147】
分子解析
AFLP分析は、EcoRI(メチル化非感受性制限酵素)の使用に基づく10個のプライマー組み合わせを含んだ。プライマー対のうちの2つは、増幅せず(p6、およびp10)、プライマー対のうちの2つは、フラグメントのいずれに対しても相違を示さなかった(3pおよび8p)。プライマー対1p、2p、3p、4p、5p、7p、8p、9pについての明確に分離されたフラグメントの数は、それぞれ、47、39、31、42、47、32、7、および46であった。AFLP多型性は、JTNT1(第4継代培養サイクル)の14日グリセロール培養サンプルを除いて、メチル化非感受性(即ち、EcoRI-MseI)プライマー組み合わせで処理した全てのサンプルにおいて検出されなかった。対照的に、グリセロール培養サンプルについての全ての他のサンプルにおいて、多型フラグメントは同定されなかった。スクロース処理されたサンプルは、テストしたプライマー組み合わせのいずれについてもフラグメントについての多型性を示さなかった。予想されるように、少なくとも3継代培養サイクルについて、単一細胞サンプルにおける差異は存在しなかった。しかし、4継代培養サイクル、グリセロール培養における多型性は、スクロースの欠如によって課せられたストレス(これは、不安定性を誘発したようである)に加えて前記化合物の連続存在に起因し得る。多型性を示さないJTNT1単一細胞培養物における差異は、シンプルな炭素源グリセロールは、微小管を安定化させることが公知であるが、特にマイクロチューブリン阻害剤(MTI)の長期間の存在下において、多くの細胞機能を支持できない場合があることを示唆している。いずれにしても、単一細胞処理を、ゲノム不安定性問題なしに、少なくとも4継代培養サイクルの間、ジフェニルピラゾールで、テストした濃度範囲内で首尾よく行うことができた。
【0148】
プライマー5pについての2多型のスナップショットをとった。継代培養物4は、130 bpフラグメント挿入および131 bpフラグメント欠失を有した。
【0149】
プライマー対組み合わせを伴うメチル化非感受性酵素EcoRIおよびMseIの使用を含むAFLPプロフィールを測定した。4継代培養サイクルについての全てのサンプルは、単形性であったが、第4継代培養サイクルでのグリセロールのプロフィールは、種々の座で多形性であった。
【0150】
(表2)使用したAFLPプライマー組み合わせの詳細および観察された対応のバンド数を提供する。Suc-X、NT1B-スクロース培地中における単一細胞;Gly-X、NT1B-グリセロール培地中における単一細胞;Cont-Suc、スクロース中における対照JTNT1懸濁凝集体;Cont-Gly、グリセロール中における対照JTNT1懸濁凝集体
【0151】
均一性の分子遺伝学的評価
AFLP多型性(使用した10プライマー組み合わせのうち9プライマー組み合わせについてのグリセロール増殖単一細胞懸濁液の第4継代培養サイクルにおいて)が、この研究において見られた。全ての観察した可変性は、EcoRI/MseIを使用することによって作製されたフラグメントに関する。組織培養の間のメチル化状態の増加が、葉(Smuldersら 1995年)およびエンドウの組織培養再生物(Cecchiniら 1992年)と比較した場合の、トマトカルスについて以前報告された。従って、メチル化に基づく変化をさらに評価するために、メチル化感受性PStI/MseI組み合わせでのさらなる評価が行われ得る。
【0152】
付記−実施例13
タバコ細胞懸濁液/カルス組織からのCTAB DNA抽出
1.約25 mgの凍結乾燥組織を2mlエッペンドルフチューブ中へ量り分ける。
2.組織を含むチューブ中へステンレススチールビーズを配置し、geno-グラインダーまたはペイントシェーカー上で約1分間振盪する。(Geno-グラインダーは500ストローク/分に設定)。ビーズを除去し、穏やかにチューブを軽くたたき、組織凝集を減少させる。
3.1 ml抽出緩衝液を添加し、チューブを軽くたたき、組織凝集を減少させ、組織を緩衝液へ入れ、65℃で2時間、両側に穏やかに混合しながらインキュベートする。室温へ冷却する(約10分)。
抽出緩衝液(250ml)
Tris-HCl 25ml
NaCl 29.2g
Na EDTA 12.5ml
CTAB 6.25g
PVP 3.75g
水(250 mlの最終量まで添加する)
4.0.75 mlの25:24:1フェノ(Pheno)/クロロホルム/イソアミルアルコールpH 8を抽出緩衝液へ添加し、5分間手で穏やかに揺する。10,000 rpmで5分間遠心分離し、相を分離させる。注意深く水相を新しいチューブへ移す。
5.フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール混合物の代わりに24:1クロロホルム/オクタノールを使用して、工程4を繰り返す。
6.等体積で上澄みへイソプロパノールを添加し、室温で1時間静置する。
7.10,000 rpmで10分間チューブを遠心分離し、チューブの底にペレットを維持するように注意しながら上澄みを捨てる。
8.0.5mlの70%エタノールおよびRNアーゼ混合物を添加し、DNAペレットを洗浄し、10,000 rpmで1分間遠心分離する。(1:1000 Rnアーゼ/エタノール)。
9.上澄みを注意深く捨て、70%エタノールのみでの洗浄を繰り返す。室温で3時間静置するかまたは約5分間サンプルをエバポレーションする(rotovap)ことによって、完全にペレットを乾燥させる。
10.アルコールが1滴も存在しなくなってから、65℃へ予め温めた0.2ml 1X Tris EDTA緩衝液にペレットを溶解する。サンプルを室温で一晩静置し、完全に再懸濁させる。
11.翌朝、チューブを穏やかに揺すり、混合する。サンプルをアガロースゲルにおいて泳動させ、RNAの分解および存在を確認し、定量する。
【0153】
実施例13の参考文献
【0154】
実施例14−タバコBY2単一細胞のプラスチド形質転換
プラスチド形質転換のための準備における単一細胞の開始
4 mlのタバコBY2懸濁液(7日サイクルに維持した定常期増殖における)を、フォームストッパーを備えた125 mL振盪フラスコ中に含有された培地A[LS塩(Phyto Technology Laboratories, L689)、120 g/Lスクロース、1 mg/Lニコチン酸、1 mg/LピリドキシンHCl、10 mg/LチアミンHCl、および20 nMジフェニルピラゾール(DPP)]または培地B[LS塩、120 g/Lスクロース、1 mg/Lニコチン酸、1 mg/LピリドキシンHCl、10 mg/LチアミンHCl、2.5 mg/Lベンジルアミノプリン(BAP)および20 nM DPP]のいずれかから構成された新鮮な培地26 mLへ添加した。フラスコを、7日間、28℃の温度で、暗所中、125 rpmの速度でロータリーシェーカー上に置いた。
【0155】
形質転換実験
BY2懸濁培養物(上述したように増殖)を新鮮な培地で1.0のOD650へ希釈することによって、形質転換実験を開始した。各形質転換標的について、1.5 mlの希釈懸濁液を、真空濾過装置の上部に配置された滅菌濾紙上にピペットで取った。懸濁細胞を、濾紙の表面にわたって等しく堆積させた。濾紙および細胞を、ボンバードメント培地[MS基本塩、ビタミンB5、18.2 g/lマンニトール、18.2 g/Lソルビトール、30 g/Lスクロース、1 mg/L BAP、0.1 mg/L 1-ナフタレン酢酸(NAA)、8 g/L TC寒天(PhytoTechnology Laboratories, A175)へ移した。
【0156】
単一細胞プラスチド形質転換のためのプラスミド構築物
この実験において使用したDNA構築物をpDAB3969と呼んだ。構築物エレメントは、タバコ葉緑体ゲノム由来の16S trnIおよびtrnA配列に隣接した。2つの遺伝子、aphA-6およびnptIIを、それぞれ、Prrn plus T7遺伝子10およびPpsbAプロモーターによって駆動される選択マーカーとして使用した。T7遺伝子10もまた、関心対象の遺伝子、TurboGFPを駆動する。
【0157】
BY2単一細胞の微粒子銃処理
細胞を、ボンバードメント前の4時間、ボンバードメント培地上に置いておいた。作製した標的に、Bio-Rad PDS-1000/He Delivery Systemを使用してボンバードした。金粒子(0.4 μm、Inbio Gold Melbourne, Australia)を作製し、DNAを、標準方法を使用してそれらの表面上に沈殿させた。
【0158】
標的プレートに、ストッピングスクリーンから9 cmの距離で、28インチ水銀真空と共に、1100 psiでボンバードした。次いで、プレートを1日回復期間の間、静置した。次いで、濾紙および組織を培地C[LS塩、120 g/Lスクロース、170 mg/Lリン酸一カリウム,無水、0.6 mg/Lチアミン-HCl、0.2 mg/L 2,4-D、8 g/L TC寒天および100 mg/Lカナマイシン]へ移し、耐性コロニーが現れるまで元の選択プレート上に置いた。耐性コロニーが直径4〜5 mmに増殖した時点で、それらをゲル培地Cを含む個々のプレート上へ単離し、PCR分析についてサンプル化されるのに十分にそれらが大きくなるまでバルク化した。
【0159】
結果および考察
BY2懸濁株を、7日間、培地Aおよび培地B中において培養した。5つの標的プレートを、培地Aにおいて増殖させた細胞から作製し、5つのさらなるプレートを、培地Bにおいて増殖させた細胞から作製した。これらの2つの培地を、スクロース含有量を増加させ、オーキシン2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)を除去し、培地Bにおいて、サイトカイニンBAP(1, 2)を添加することによって、大きなアミロプラストを作製するように設計した。大きなアミロプラストは、微粒子銃形質転換についてのより大きな標的として役立った。20 nM DPPを含有した培地は両方とも単一細胞を作製した。ボンバードされたプレートは、培地A処理細胞から3個のカナマイシン耐性コロニーを作製し、培地B処理細胞から2個の耐性コロニーを作製した。
【0160】
各コロニーからのサンプルを、分子解析のためにサンプル化した。DNaseyプロトコルを使用してDNAを抽出し、以下のプライマーセットを使用するPCRによってアリコートを分析した。
【0161】
形質転換構築物のプライマー増幅されたセグメント。プライマーMAS401は、trnAフランクの末端を越えてネイティブタバコプラスチドDNA 83塩基対においてランディングし、プラスチドゲノムへの組込みを実証する。
【0162】
プライマーセット2、3、4、および5についてのPCR反応は、5個全てのサンプルについて陽性反応を生じさせた。野生型(非形質転換)BY2懸濁細胞またはタバコ植物対照由来のDNAは、バンドを生じさせなかった。従って、PCR結果は、3つ全ての導入遺伝子の存在およびプラスチドゲノム中への組込みを示している。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年12月29日に出願された仮出願第60/878,028号の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、植物細胞を単一細胞として懸濁液中において増殖させる方法を含む、植物細胞株の増殖の分野に、一部関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
過去20年にわたって、有用な二次代謝産物の産生のための大規模植物細胞培養プロセスの開発における大幅な改善と一体となった、植物遺伝子工学技術の急速な出現があった。1995年から(Moffat,1995年;Maら,2003年)、このような植物細胞懸濁培養物は、組換えタンパク質の発現のための価値ある宿主細胞系としてますます使用されている。
【0004】
オーキシン誘導されたカルス組織または懸濁液は、それらは単一の組織起源であるにもかかわらず、通常、種々の表現型を有する細胞を含有する。従って、このような細胞タイプから開発されたトランスジェニック株は、通常、発現レベルに一貫性がなく非常に不均質である。従って、多くの有用な二次代謝産物を産生するクローンは、単一のプロトプラストから得られている;即ち、ムラサキ(Lithospermum erythrorhizon)プロトプラストから作製された高シコニン産生細胞クローン(Maedaら,1983年)。
【0005】
今まで、細胞選択のためだけでなく、培養植物細胞のエレクトロポレーション/PEG媒介形質転換のためにも、プロトプラストを形成し細胞を解離させることが必要であった。プロトプラスト作製は、植物組織から単一の細胞クローンを単離するために必要とされてきた。しかし、単離されたプロトプラストは、通常、静止状態にあって分裂し難いため(HahneおよびHoffmann,1984年)、プロトプラストがそれらの正常な細胞壁を再生することは通常困難である。培養プロトプラストについての多くの研究において、産生される第1の、かつ主要な多糖類はカロースであり、これは、1,3-,8-グルコピラノースから構成される(Kleinら,1981年)。
【0006】
損傷またはストレスを受けた植物は、しばしば、ペリプラズム空間中へこのグルカンを多量に分泌する(Currier,1957年)。細胞壁再生の初期段階の間、セルロースとキシログルカンとの結合は、無傷の植物におけるものほど強力でない(Hayashiら,1986年)。一次細胞壁中のキシログルカンおよびセルロースの高分子構成が強度および伸展性を担うようであるので(HayashiおよびMaclachlan,1984年)、プロトプラストの周囲におけるキシログルカンならびにセルロースの堆積は、それらの分裂能および成長能に重要であるようである。この前提条件は、プロトプラストの分裂を失速させ、従って、親株の細胞特性を有する正常細胞へ再生する時間を増加させる。
【0007】
従って、植物細胞培養の分野における進行中の技術的挑戦は、培養中の植物組織からクローニングされ得る単一の生存可能な細胞を単離することである(Bourgin,1983年;Tabataら,1976年)。懸濁培養において、不均一細胞凝集体が常に形成され、各々のこのような凝集体は、100個までの細胞を含有する。これら凝集細胞間の結合については何ら公知でなく、細胞凝集体を分離し、かつそれらをインビトロで無傷の細胞壁を有する単一細胞として維持することができる単一の酵素を同定した報告はない。
【0008】
細胞接着性におけるペクチンの役割が、いくつかの報告において示唆されたが、このような関連性は、比較的より最近になって確立された(Boutonら,2002年)。さらに、細胞接着性の大きな低下が報告された(Sterlingら,2006年)。
【0009】
qua1-1突然変異体は、分離した単一の根細胞を示した(Boutonら,2002)。ペクチン含有量の低下が、特異的ペクチンエピトープに対して産生された抗体を使用した免疫蛍光実験によってさらに実証された。これらの観察は、コードされた酵素はペクチン多糖類の合成に関与し得ることを示唆し、ペクチンは植物細胞の接着性に関与していることを明らかに示した。
【0010】
従って、ペクチン合成を妨害し細胞接着性を取り除くことは、細胞分離を促進し得る。1回のペクチン分解酵素処理での単一細胞の単離(Naill,2005年)が、イチイ細胞懸濁培養物における単一細胞の単離を助けることが報告された。このようなイチイ単一細胞は、より高いレベルでタキソールを産生する優良クローン株をスクリーニングするために使用される。しかし、この方法は、培地中における前記酵素の連続的な存在下における単一懸濁細胞の維持において有用ではない。また、酵素または酵素の組み合わせのこのような短パルス処理での最高単一細胞収率は、わずか17.1%〜34.4%であった(Naill,2005年)。イネ懸濁液中における連続ペクチナーゼ処理は、0.005%濃度で微細な懸濁凝集体を生じさせただけであり、しかし単一細胞としての懸濁液の維持を促進しなかった(Leeら,2004年)。酵素の組み合わせ、ペクチナーゼおよびセルラーゼの8時間を超える長時間の処理によって、細胞溶解が生じた(Naill,2005年)。
【0011】
ダイズ細胞の懸濁培養物における細胞分離の亢進は、コルヒチンの存在下において亢進されることが報告された(Umetsuら,1975年)。細胞分離のために、前記アルカロイドが、染色体倍数性の産生のための濃度(5〜20 mM)よりも低い濃度(0.1〜1.0 mM)で培養培地へ添加された。にもかかわらず、コルヒチンは、植物および動物細胞における有糸分裂を阻害する(Lewin,1980年)。コルヒチンはチューブリンへ結合し、微小管の集合を防止する。従って、細胞分離を得るために、コルヒチン濃度および処理時間は、できる限り低くするべきである。
【0012】
コルヒチンアルカロイドは、培養動物細胞における増殖の同調化のために使用され、ここで、該アルカロイドは通常0.5 mMで添加され、細胞は、有糸分裂前に、数時間以内、静止状態となる。形態形成効果は動物細胞におけるそれに非常に類似しているが、植物細胞は、0.1 mMのコルヒチンの存在下で、増殖の間、分裂し得る(Umetsuら,1975年)。細胞生存能は、1 mMコルヒチン中のダイズ懸濁細胞の培養の4日後に減少した。さらに、前記細胞のわずか44.8%がこれらの処理において生存可能であったが、しかし動物細胞における場合とは異なり、それらを分裂させておくことが可能であった。
【0013】
植物インビトロ培養物中における単一細胞懸濁液の維持におけるチューブリン脱重合阻害剤またはオリゴサッカリンの使用が研究された。文献は、細胞分離のためのコルヒチンの使用に関して早くも1975年にいくつかの情報を有する;下記の参考文献の項を参照のこと。除草剤としてのチューブリン阻害剤もまた研究された。
【0014】
優良トランスジェニックイベント(event)の作製およびリカバリーは、実現する技術(enabling technology)の開発に大いに依存する。懸濁細胞凝集体の形質転換のために実施されている現在の方法は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)およびウィスカー(whisker)媒介法である。アグロバクテリウム法は、67〜90%までのバックボーン組込み率を示し、このため、それは非常に非効率的なプロセスであり、一方、WHISKERS(商標)媒介形質転換は、ハイスループットプロセス(HTP)として役立たない。PEG媒介法が使用され、プロトプラストで常に実証され、タバコのプロトプラストは形質転換し易いが、それは、細胞壁再生の問題に起因して、HTP形質転換プロセスについて容易には適用できない。
【0015】
前記技術は、単一細胞懸濁培養に基づく形質転換についてのプロトコルに関して言及していないようである。プロトプラストに基づくプロトコルについていくつかの報告が存在するが、これらは、以下において議論する植物細胞の単一細胞懸濁液とは異なり、細胞壁を欠いている。
【発明の概要】
【0016】
簡単な概要
本発明は、懸濁細胞凝集体を無傷の一次細胞壁を有する単一細胞へ分解するためのシンプルかつ一貫した方法を提供する。以下の開示においては、ペクチン分解酵素またはコルヒチンを含むチューブリン脱重合化合物を含有する培地中において培養された懸濁細胞凝集体の細胞分離を述べる。
【0017】
本発明はまた、このような目的のための、化合物の新規の使用に関する。
【0018】
本発明の一つの局面は、本発明の単離細胞の形質転換に関する。このようなプロセスは、単一細胞に基づく形質転換および選択プロセスを単純化し、かつトランスジェニックおよびトランスプラストミック(transplastomic)イベント産生作業プロセスへ統合する。本発明はまた、技術的制約を取り除き、動物薬(animal health)、生物薬剤(biopharma)、ならびに形質および作物の保護プラットフォームという種々の必要性を支援するために、ハイスループット様式で、マーカーフリーかつ均一発現性のトランスジェニック株を作製する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】連続ペクトリアーゼ処理下において、培地中で7日間継代培養された、無傷の細胞壁を有するJTNT1懸濁細胞の単一細胞の単離。A−通常のBY2懸濁液;B−Aと同一であるが、細胞の凝集を示すためにI2KIで染色した細胞;CおよびD−連続酵素処理6日後の分離された細胞;EおよびF−I2KI染色有りまたは無しでの分離された単一細胞。通常の細胞分裂(F)に注意のこと。
【図2】連続ペクトリアーゼ処理6日後のBY2細胞の生存能(細胞をFDAおよびPIで処理する)および単一細胞の収率。A:BY2細胞凝集体;B:培地中ペクトリアーゼ存在下、5日間、接種物1 mlでのBY2;C:培地中に酵素を有する接種物6 mlでの5日目;D、E、およびF:Cの顕微鏡視野スナップショット;G:BAPおよび12%スクロース中において発育したBY2細胞変異体を有する対照凝集塊;HおよびI:G由来の5日間連続酵素処理した単一細胞。細胞をFDAおよびPIで染色した。PI中の死細胞は赤色に染色されたことに注意のこと。
【図3】BY2およびXanthiタバコ懸濁液の細胞凝集体懸濁液からの、培地中7日間のコルヒチン処理からの単一細胞懸濁液の誘導。A:通常のBY2懸濁凝集体(カルカフロール(Calcafluor)染色した);B:7日間の1 mMコルヒチン中の単一細胞BY2懸濁液;C:Bと同一であるが、無傷の細胞壁を有する単一細胞を示すために拡大した;D:Xanthiの懸濁凝集体;E:0.5 mMコルヒチン中において7日間処理したXanthi懸濁凝集体。0.5 mMにおける単一細胞の部分的放出に注意のこと;およびF:1 mMコルヒチン中のXanthiの分離された単一細胞。
【図4】BY2およびXanthiタバコ懸濁凝集体からの、コルヒチン処理における無傷の細胞壁を伴う単一細胞の放出。A:通常のBY2懸濁凝集体;B:7日間の1 mMコルヒチン中における単一細胞BY2懸濁液;CおよびD:コルヒチンの除去後の凝集体への細胞の回復(コルヒチン処理の1培養サイクルを伴う継代培養の4日後);E:Xanthiの懸濁凝集体;F:1 mMコルヒチン中において7日間処理されたXanthi懸濁凝集体。BY2およびXanthi培養物中における放出された単一細胞、ならびに、蛍光増白剤、カルカフロールの存在下で見られるように無傷の細胞壁の存在に注意のこと。(全てのサンプルを0.1%のカルカフロールで処理し、Leica蛍光顕微鏡下で調べた)。
【図5】BY2変異体タバコ(EP 12%スクロース培地中において馴化した)およびシロバナヨウシュチョウセンアサガオ懸濁凝集体からのコルヒチン処理における無傷の細胞壁を伴う単一の生存可能な細胞の放出。A:通常のBY2-V懸濁凝集体;B:未処理凝集体のより接近した図;C、DおよびE:7日間の1 mMコルヒチン中における単一細胞BY2懸濁液の誘導(10×、20×および40×の倍率下での細胞);F:7日間の1 mMコルヒチン処理におけるシロバナヨウシュチョウセンアサガオ懸濁液中の単一細胞の誘導。全てのサンプルをFDAおよびPIで処理し、Leica蛍光顕微鏡下で調べた。ここでFDA染色において細胞の高い生存能が見られ、PIにおいてごくわずかな細胞が赤色に染色されたことに注意のこと。
【図6】NT1タバコ細胞増殖に対する、Dow AgroSciences(DAS)専売のメチルインドール誘導体でありかつ強力な微小管阻害剤除草剤である、DAS-PMTI-1の効果。細胞を、唯一の炭素源として3%グリセロールを含むNT1B培地において、25または50 nM DAS-PMTI-1の非存在下または存在下において増殖させた。全ての生重量値は、複製サンプルからの平均値±0.18を示す。
【図7】DAS GAD1762-034懸濁株からの単一細胞およびコロニーの作製。
【図8】図8A、8B、および8Cは、DAS GAD 1762-034単一細胞からのコロニーの2〜6週間の増殖を示す。
【図9】4を超える継代培養サイクルについて7および13日でサンプルを回収し、発現分析を行った。得られた発現データをプロットした。
【図10】DAS-PMTI-1を使用して単離される単一細胞BY2細胞。20〜50 nM濃度を使用し、継代培養の5日後に単一細胞を作製した。細胞は単一細胞であり(ペアは、重複するエッジを有する)、写真を、共焦点イメージングシステムへ接続された微分干渉コントラスト顕微鏡下で撮影したことに注意のこと。
【図11】72時間PEG処理後のYFP発現(Ubi10-YFPプラスミド)。焦点面における小さな娘(分裂)細胞の1つがGFP発現を示し、発現が安定であり得ることを示している。
【図12】左:100 mg/Lカナマイシンによって阻害された未処理対照組織。右:選択培地上で増殖している、単一細胞由来の推定トランスプラストミック分離株。
【図13】ニンジン単一細胞懸濁液からのクローン株の作製。未処理の懸濁凝集体をプレーティングしたM培地上における芝生のような増殖(パネルA)。単一細胞をプレーティングした培地上における分離したコロニーの増殖(パネルB)。
【図14】液体培地中における0.5〜1 mMコルヒチン処理および継代培養開始の14日(第2継代培養サイクルの終了)後に分析した培養物。A:単一細胞がクラスターから放出される;B:FDA生体染色で染色された、密にパッキングされた細胞凝集体;CおよびD:それぞれ1および0.5 mM処理において放出された、懸濁液を濾過した(100 um直径の細孔を有するフィルターを使用)後の、FDA染色された単一細胞;EおよびF:Dからの単一細胞の、より接近した図。
【図15】MTIに応答した、JTNT1単一細胞の増殖曲線。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
単一細胞を単離し増殖させる能力は、多くの可能性のある適用性を有する。例えば、本明細書において概説する方法は、動物薬への適用のための植物細胞培養物の生産性に関する方法の改善において有用性を有する。
【0021】
従って、本発明の方法は、植物細胞に基づく動物薬および生物薬剤産物のプロセス効率を高めるために有用である。本発明の態様は、トランスジェニック細胞株優良クローンのスクリーニングにおいて、例えば、凝集体における非トランスジェニック細胞を最小化または排除するための単一細胞に基づく形質転換系についての標準作業手順(SOP)を開発するために、バッチごとのばらつきを最小化する少量懸濁細胞培養開始を支援することができる。要約すると、本発明の局面は、動物薬のHTP(ハイスループットプロセス)スクリーニングおよび宿主細胞株改善プログラムにおいて有用である。
【0022】
本発明はまた、細胞消光性蛍光プローブと組み合わされたRNA発現に基づいて安定発現細胞を同定するための、単一細胞に基づくアッセイおよび細胞選別プロセスのさらなる開発を例示し、これを可能にする。
【0023】
このような単一細胞は、現在のプロトプラストに基づく一過性系に代わる、部位特異的相同組換え一過性スクリーニングにおいても有用である。例えば、ブラックメキシカンスイート(Black Mexican Sweet)(BMS)トウモロコシ懸濁液およびキャノーラ懸濁液は、このような適用について単一系を提供し得る。従って、例えば、標的相同組換えが、本発明の態様において使用され得る。このタイプの技術は、例えば、標的組換えのためのジンクフィンガーの使用に関する、WO 03/080809 A2およびそれと対応する公開された米国出願(USPA 20030232410)の主題である。リコンビナーゼ(例えば、cre-loxおよびflp-frt)の使用もまた、当技術分野において公知である。
【0024】
インビトロ植物発現系は、有用な医薬および動物薬組換えタンパク質を産生するために使用することができる。このような植物発現系の重要な利点は、それらは性質上、真核生物であり、哺乳動物細胞のものと類似する内膜系および分泌経路を有することである。従って、複合タンパク質は、一般的に、適切な翻訳後修飾を伴って効率的に折り畳まれ、組み立てられる。
【0025】
植物産生系の別の利益は、スケールアップについての可能性である。事実上無限の量の組換えタンパク質を、含有する緑色組織において増殖させることも、優良発現クローンをスクリーニングし、そのような均質発現細胞株をバルク化した後で発酵またはバイオリアクターシステムを使用する産業施設においてスケールアップさせることもできるであろう。
【0026】
単一細胞を産生するための2つの戦略を本明細書に例示する。両方とも、生存可能な単一細胞を分離するために首尾良く機能した。しかし、少なくとも2つの懸濁細胞タイプにおいて無傷の細胞壁を有する大量の単一細胞懸濁液を得る点で、コルヒチン法が酵素分解法よりも好ましい。酵素法は、細胞増殖の阻害だけでなく、より高い程度の死亡率を示した。また、生存可能な細胞を、使用した培地を除去またはリンスすることなくゲル培地上にプレーティングした場合、細胞は死滅し、コロニー増殖は観察されなかった。酵素分解法によって作製されるそのような単一細胞懸濁液を使用してもよいが、さらなる最適化を必要とすることが、推奨される。
【0027】
逆に、この研究においてテストしたコルヒチンなどのチューブリン阻害剤の添加は、植物細胞を分離し単一細胞を選択するために非常に有用であるようである。この方法は、継代培養段階における液体培地への適切な量のコルヒチン添加のみを含むというように、シンプルである。これは、スターター細胞として生存能力の高い細胞の均一な接種物による少量懸濁培養の開始などのプロセスにおける所定の懸濁液について非常に重要な中心的ツールであるだろう。前記技術は、エレクトロポレーション、Whiskers(商標)、およびアグロバクテリウム媒介形質転換の効率を高め得る。このような単一細胞調製法は、トランスジェニック懸濁凝集体から組換えタンパク質産生株の優良クローンを単離するためにも使用され得る。
【0028】
プロトプラスト法は単一細胞単離のために使用されてきたが、本発明のコルヒチン法は、より容易であり、より効果的である。コルヒチン法によって得られた単一細胞は、細胞壁の存在のために、プロトプラストよりも安定であり、かつ細胞壁の再生を必要としない。前記細胞は、キシログルカン/セルロース網状構造の通常の組成を有する細胞壁を有する(HayashiおよびMaclachlan,1984年)。コルヒチンの存在下において伸長するマツの実生細胞は、異常な細胞壁肥厚は有さないが、放射状に拡張する(Itoh,1976年)という観察において見られるように、前記細胞は細胞増殖および細胞分離の間にカロースを産生しない。細胞の増殖は、コルヒチンを含有しない培地における継代培養後において正常であり、一方、大抵のプロトプラストは、静止状態にあり、分裂し難い(4)。コルヒチン培養細胞は、ある程度の倍数性を有し得るが、この研究において使用されたコルヒチンの濃度(0.1〜1.0 mM)は、倍数性の誘導に必要な濃度(5〜20 mM)よりも10〜100倍低かった。単一細胞のリカバリーは、プロトプラストによるものに比べ、コルヒチン法で遥かにより良好であった(HyashiおよびYoshida,1988年)。本発明の細胞は、倍数性レベルおよびゲノム安定性を評価するためにフローサイトメトリーを使用してさらにテストされ得る。さらに、増加した倍数性レベルは、形質転換細胞のコピー数の増加による組換えタンパク質レベルの増強というさらなる利益を提供し得る。
【0029】
ガラクツロナン活性は、ダイズ懸濁細胞中における細胞分離の生物学的機能を示し、オリゴサッカリンとして報告されたが、それは、細胞分離についての生物学的機能を示したためである(AlbersheimおよびDarvill,1985年)。従って、本明細書で報告される単一細胞懸濁液においてコルヒチン誘導性の倍数性変化が観察される場合には、倍数性変化を伴わない細胞分離を達成するために、ガラクツロン酸もまたこれらの懸濁細胞においてテストされる。従って、ガラクツロナンおよび他の類似のオリゴサッカリンの直接使用が、細胞接着性を破壊することによって細胞を分離する効率を比較するために、さらに評価されている。従って、本発明は、同時に細胞がゲノム安定性を維持しながら、懸濁細胞サイクルのいくつかの継代にわたって再現可能であり一貫しているシンプルな方法を提供する。
【0030】
本明細書で例示する一つの好ましい化合物は、DAS-PMTI-1である。この化合物は、非常に強力であるようである(培養物の増殖に影響を与えることにおいて、コルヒン(colchine)と比べ約100〜1000倍)。処理の7日後、0.5 mM濃度においてはかなりの細胞死が存在するが、これらの培養物がDAS-PMTI-1の非存在下で継代培養されると、PH懸濁細胞は、2週間後に低い頻度で単一細胞として回復した。単一細胞の分離についての好ましい適用(例えば、細胞のタイプなど)に応じてこの化合物の好ましい濃度を決定するために、さらなる最適化が行われ得る。類似の機能を有する他のMTI阻害剤が、ペクチン合成を妨害することによる本発明の細胞分離において使用され得る。本開示を考慮して、追加のMTI阻害剤およびそれらのアナログが、単一細胞を作製および維持することにおけるそれらの効率についてテストおよびスクリーニングされ得る。
【0031】
4-クロロ-1,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)-酢酸エチルエステルとしても公知である、DAS-PMTI-1の化学構造は、以下の通りである。
【0032】
本発明に従う使用についての化合物の好ましい種類は、DAS-PMTI-1タイプの化合物である。このような化合物は、上記で提供した一般構造に適合し得、その(本発明に従う使用についての)機能的な誘導体およびアナログを含み得る。
【0033】
以下は、本発明に従う使用に関するいくつかの公知のマイクロチューブリン阻害剤についての一般的化学式である。DAS-PMTI-1が好ましい態様であるが、事実上任意のマイクロチューブリン阻害剤が、本発明に従って使用され得る。ある好ましい態様において、下記のジアリールピラゾール類の1つまたは複数のメンバーが、コルヒチンと組み合わせて使用される:
式中、
X=CO2R、CH2CO2R、CH2CH2CO2R、(CH2)3CO2R、OCH2CO2R、OCH(CH3)CO2R、OC(CH3)2CO2R、CH2OCH2CO2R、CH2CH(CO2CH2CH3)CO2R、OCH(CO2CH2CH3)CO2R
Y=CN、Cl、Br、F、NO2
Ar1=非置換フェニル、非置換ピリジン、1〜3置換フェニル、1〜3置換ピリジン、ハロゲンまたはCNで置換されている
Ar2=非置換フェニル、非置換ピリジン、1〜3置換フェニル、1〜3置換ピリジン、ハロゲンまたはCNで置換されている
R=H、または炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖エステル。
【0034】
従って、単一細胞植物懸濁培養物を、微小管阻害剤を使用して作製し、それらを、少なくとも2継代培養サイクルの間の培養において維持することができる。これらの単一細胞懸濁液は、それらは無傷の細胞壁を有するが互いに離れて存在する点で、独特である。
【0035】
「トランスジェニック」植物、植物細胞などは(特に明記しない限り)、同一種の未改変の非トランスジェニック植物細胞中には本来存在しない、実験技術によって導入された外来DNAを含有する、植物全体、植物細胞、植物細胞培養物、植物細胞株、植物組織培養物、下等植物、単子葉植物細胞培養物、双子葉植物細胞培養物、または形質転換植物細胞(または、プロトプラストなど)に由来するそれらの子孫である。「トランスジェニック植物」および「形質転換植物」という用語は、そのDNAが外因性DNA分子を含有する植物を定義するための同義語として当技術分野において使用されることがある。トランスジェニック植物は、植物のゲノムDNA内で機能し、かつそこへ組み込まれている外来DNAを含有するように安定的に形質転換されてもよく、または、ウイルスに基づくベクターによって形質転換され、外来DNAを一過性発現する、トランスジェニック植物である。
【0036】
「単離された」および「精製された」は、「人の手」を暗示し、かつポリヌクレオチドおよびタンパク質へ適用され得る。例えば、クローニングされたポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドである。
【0037】
形質転換法
核形質転換についてはアグロバクテリウムおよびポリエチレングリコール(PEG)を使用し、ならびにプラスチド形質転換については微粒子銃を使用して、これらの単一細胞を、核およびプラスチド形質転換についてテストした。核形質転換の試みにおいて、プラスミドDNAの送達および黄色蛍光タンパク質の一過性発現が実証された。細胞はプラスチド形質転換においてリカバーされ、かつ安定な形質転換がPCR分析によって示された。トランスプラストミックカルス分離株はバルク化され、ELISAによって選択マーカー、nptII遺伝子発現について分析されている。
【0038】
本明細書に記載の形質転換方法論は、動物薬プロセスへ適用することができる。しかし、ナノ粒子送達を含む新規の送達方法による、単一細胞に基づく形質転換は、組換えタンパク質産生のために使用される細胞タイプの宿主に加えて、作物を形質転換するための独特なアプローチを提供することもできる。
【0039】
PEG法および/またはエレクトロポレーション法による本発明の単一細胞形質転換の開発は、無傷の細胞壁を有する単一細胞を、細菌/哺乳動物細胞系と同程度に適用可能にし、かつ、それらの細胞タイプについてのハイスループット形質転換システムにおいても有用である。
【0040】
単一細胞を形質転換する能力は、多くの可能性のある適用性を有する。例えば、本明細書において概説する方法は、動物薬への適用のための植物細胞培養物の生産性に関連するプロセスの改善において有用性を有する。また、本発明のプロセスは、動物薬および生物薬剤の、植物細胞に基づく産物のプロセス効率を高めるために有用である。本発明のプロセスは、トランスジェニック細胞株の優良クローンをスクリーニングすることも支援することができる。このような適用を、バッチごとの発現のばらつきを最小化する少量懸濁細胞培養開始のために、および、凝集体における複数のイベントの存在または非トランスジェニック細胞を最小化または排除するためのSOPを開発するために、使用することができる。
【0041】
背景技術の項において議論したように、アグロバクテリウム法は非常に非効率的であり、WHISKERS(商標)媒介形質転換はハイスループットプロセスとして役立たない。PEG媒介法は、プロトプラストを用いて使用される。タバコプロトプラストは形質転換するのが容易であるが、それらは、細胞壁再生の問題のために、HTP形質転換プロセスについては容易には適用できない。
【0042】
対照的に、本発明は、無傷の細胞壁を提供する。PEG媒介法は、無傷の細胞壁を有する単一細胞の最初の報告である。本発明の方法はまた非常に効率的でもある。また、この方法は、トランスフェクションのためにフラグメント精製したプラスミドを使用することによって、バックボーン組込みを排除する。蛍光活性化細胞選別(FACS)などのプロセスによる、単一植物細胞に関する迅速な形質転換プロトコルが、費用、資源およびスケジュールを削減して適切なイベントをスクリーニングするためのプロセスの小型化および自動化のために理想的である。これは、セルソーターにより形質転換細胞をスクリーニングし、均質発現優良イベントを判定することによって、現在のカルスまたは懸濁凝集体の選択プロセスを劇的に改善し、産業的研究または生産パイプラインをさらに進歩させることができる。
【0043】
従って、本発明のプロセスは、例えば、動物薬の必要性および宿主細胞株の改善のためのHTPスクリーニングについて、新規のバイオプロセス研究開発についての基本的な土台を提供する。
【0044】
本発明は、細胞消光性蛍光プローブと組み合わされたRNA発現に基づいて安定発現細胞を同定するための、単一細胞に基づくアッセイおよび細胞選別プロセスのさらなる開発を可能にする。
【0045】
このような単一細胞は、形質および作物保護プラットフォームについての目的の遺伝子(GOI)の一過性および/または安定スクリーニングにおいても有用である。
【0046】
特に記載または暗示しない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語は、本明細書において使用される場合、「少なくとも1つの」を意味する。
【0047】
本明細書において言及または引用される全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、それらが本明細書の明白な開示と矛盾しない程度に、参照によりそれらの全体が組み入れられる。
【0048】
実施例1−材料および方法
BY2懸濁培養細胞を日本たばこ産業から得て、7日サイクルでLSBY2培地において維持した。シロバナヨウシュチョウセンアサガオ懸濁液およびPettite Havanaタバコ懸濁液をDASで起こしたカルスから起こし、Xanthi懸濁液をUIUC, ILのJack Widholm教授からサンプルとして入手した。7日サイクルでNT1B培地において維持される、ワシントン大学から得たJTNT1懸濁細胞は、細胞を単一細胞へ分離するためのペクチン分解酵素研究についてのみ使用した。前記細胞を、150 rpmでオービタルシェーカーにおいて、暗所中、25〜28℃で、振盪フラスコ中において培養した。コルヒチンをFlukaから得、DAS-PMTI-1(Martinら,2001年;Smithら,2001年)をDAS CRSから得、ペクチン分解酵素(ペクトリアーゼYおよびペクチナーゼ)をSigmaから得た。本研究において使用した両方のチューブリン重合阻害剤のストック濃縮物をDMSOに溶解し、0.5 Mストック溶液を調製した。ペクチナーゼおよびペクトリアーゼ酵素について試験した濃度は、0.0005%〜0.005%の範囲内であった。例えば、タバコ懸濁細胞株NT-1およびBY-2は、本発明の実施に適切である。BY-2細胞は、市販されており、例えばNagataら(Nagata, T., Nemoto, Y., and Hasezawa. S. [1992], Tobacco BY-2 cell line as the "HeLa" cell in the cell biology of higher plants. Int. Rev. Cytol. 132: 1-30)に従って入手可能である。NT-1細胞は、初めは、Nicotiana tabacum L. cv. bright yellow 2から開発された。NT-1細胞株が広く使用されており、容易に入手可能であるが、任意のタバコ懸濁細胞株が、本発明の実施と合致する。NT-1細胞株の起源が不明確であることは、注目に値する。さらに、前記細胞株は、可変であるようであり、培養条件に応答して変化する傾向がある。下記の実施例における使用に適切なNT-1細胞は、アクセッション番号ATCC No. 74840でAmerican Type Culture Collectionから入手可能である。米国特許第6,140,075号も参照のこと。
【0049】
実施例2−顕微鏡観察
細胞増殖および分離を光学顕微鏡検査によって(Nomarski顕微鏡および暗視野光学顕微鏡で)観察した。球状細胞および単一細胞を、血球計を使用してカウントし、細胞増殖および分離の程度をそれぞれ測定した。凝集体中の細胞数を、16時間5%(重量/体積)三酸化クロムで処理し、細胞をカウントすることによって、測定した(Henshawら,1966年)。細胞生存能を、フルオレセインジアセテート(FDA)およびヨウ化プロピジウム(PI)で細胞を染色し、蛍光顕微鏡(Zeiss Photomicroscope)を使用することによって測定した(Yokoyamaら,1997年)。この単一細胞培養物中の細胞壁の存在を測定するために、蛍光増白剤を使用した。セルロースについての特異的蛍光色素である、Sigmaから得たカルカフロールを本研究において使用し、セルロース−カルカフロール複合体化を蛍光顕微鏡検査(Zeiss Photomicroscope)によって観察した。カルコフロール(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.)を、PBS緩衝液中の0.1%(重量/体積)溶液として調製し、室温で暗所中において保存した(Kwokら,2003)。使用前に、カルカフロール染料を15,000 gで2分間遠心分離し、沈殿物を除去した。1滴または2滴のカルカフロール溶液を、分離された細胞へ添加した。室温で2または3分後、細胞懸濁液を水でリンスし、TBS(pH 7.2)中の0.1%エバンスブルー(Sigma;E-2129)で室温で1分間、対比染色し、395〜415 nmの波長でUV顕微鏡下にて観察した(455 nmの観察光)。細胞壁が、青みがかった白色または青緑色の楕円形ハローとして現れた。
【0050】
実施例3−培地における連続ペクチナーゼ処理およびペクトリアーゼ処理の結果
Petite Havana、BY2およびNT1タバコ懸濁液を使用し、種々の濃度でのペクチン分解酵素、ペクチナーゼおよびペクトリアーゼの効果を調べた。対をなすもう一方の酵素と比べ、JT-NT1懸濁液はペクチナーゼ処理に対してよりよく反応し、BY2懸濁液はペクトリアーゼ酵素処理に対してよりよく反応した。しかし、前記細胞タイプについて、生体染色によって視覚化されたような細胞死、および増殖阻害が存在した。継代培養段階での細胞の接種物の体積は12倍まで増加され、適度な収量の単一細胞を有した。PH細胞およびBY2細胞は、ペクトリアーゼを伴う培養において、少なくとも7日間培養され得た。低濃度ペクトリアーゼ酵素(3活性単位)におけるこれらの細胞の連続培養は、好ましくないようであった。接種物の体積が6 ml(定常期でのスターター接種物の体積)であり、該酵素と共に50 mlの新鮮な培地中において培養した場合、細胞は、培養の第6日に、高収率の単一細胞を産出した。これらの細胞は、培養の6日後にFDAおよびPIでテストした場合、より高い程度の生存可能な単一細胞を示した(図1および2)。懸濁培養物の増殖は前記酵素処理において劇的に影響され、同一の酵素を含有する培地において細胞を継代培養することは好ましくないようであった。細胞を、最大で培養7日間までの間は新鮮な状態で処理することができ、次いで、これらの細胞を、前記酵素を含有しない培地へ移し、増殖を回復させることが、推奨される。せいぜい、この方法は、不均質な凝集体中の優良トランスジェニッククローンをスクリーニングするため、または、均一な細胞ボリュームを有するハイスループット懸濁培養を開始するために、使用され得る。
【0051】
図1:連続ペクトリアーゼ処理下において、培地中で7日間継代培養された、無傷の細胞壁を有するJTNT1懸濁細胞の単一細胞の単離。
A−通常のBY2懸濁液;B−Aと同一であるが、細胞の凝集を示すためにI2KIで染色した細胞;CおよびD−連続酵素処理6日後の分離された細胞;EおよびF−I2KI染色有りまたは無しでの分離された単一細胞。通常の細胞分裂(F)に注意のこと。
【0052】
図2:連続ペクトリアーゼ処理6日後のBY2細胞の生存能(細胞をFDAおよびPIで処理する)および単一細胞の収率。
A:BY2細胞凝集体;B:培地中ペクトリアーゼ存在下、5日間、接種物1 mlでのBY2;C:培地中に酵素を有する接種物6 mlでの5日目;D、E、およびF:Cの顕微鏡視野スナップショット;G:BAPおよび12%スクロース中において発育したBY2細胞変異体を有する対照凝集塊;HおよびI:G由来の5日間連続酵素処理した単一細胞。細胞をFDAおよびPIで染色した。PI中の死細胞は赤色に染色されたことに注意のこと。
【0053】
実施例4−BY2、NT1、Petite Havana(PH)およびXanthi(Xan)およびシロバナヨウシュチョウセンアサガオ(JM)懸濁細胞の増殖に対するコルヒチンの効果
培養7日後、BY2、Xan、およびJM細胞の細胞数は、0.5 mMおよび1 mM濃度のコルヒチンで応答した(図3、4、および5)。しかし、高度の単一懸濁細胞が、1 mMのBY2懸濁細胞およびJM細胞中において見られた。JM細胞増殖は0.5 mMコルヒチンにおいてでさえ劇的に影響され、増殖は同一培地における増殖のさらに1週間後でさえ回復され得なかったことに注意することが、重要である。これは、細胞分裂がJM細胞中においてコルヒチンによって阻害され、より低い濃度が、培養物密度または増殖が低下することなく細胞分裂を最適化するためにさらにテストされる必要があることを示している。興味深いことに、このような増殖阻害は、BY2懸濁細胞によって観察されず、これは、1 mMコルヒチンの存在下において少なくとも14日間連続して増殖され得た。細胞膨張が第3日に初めて観察され、培養をBY2懸濁細胞中において継続するにつれ、細胞は球状の形状となった。球状細胞は凝集体から徐々に放出されたので、細胞分離には細胞増殖が伴うと推定された。対照培養物中におけるのとほぼ等量のBY2細胞が、7日後、1 mMコルヒチンを含有する培地中に存在する。1 mMコルヒチン中において7日間培養した細胞を、コルヒチンを含有しない培地へ継代培養した場合、凝集体として増殖する能力は、完全には回復されず、その代わりに、約90%の懸濁細胞が、単一の無傷の細胞として見られた。細胞増殖および分離はまた、0.5 mMコルヒチンを含有する培地中においてテストした全ての他の細胞懸濁液の細胞懸濁凝集体中において、部分的に生じた。JT-NT1およびJM懸濁細胞中において、阻害的細胞増殖応答が観察される。NT1懸濁細胞は、1 mMコヒチン(Cochicine)中において、増殖のほぼ50%の低下を記録した。
【0054】
これらの細胞において、qua1-1ペクチン突然変異体(Bouton,2002年)において報告された分離された表皮根細胞のものと類似した、大きな分離された細胞が観察された。一般的な球状の形状を有する細胞の同様の部分的な分離が、DAS-PMTI-1でテストした全ての細胞懸濁液タイプにおいて観察された。しかし、細胞増殖が、0.5 mM濃度でのDAS-PMTI-1で処理された懸濁液中において、非常に顕著に影響された。この化合物での細胞分離の条件を最適化し、細胞阻害増殖を最小限にするために、さらなる実験が行われ得る。FDAおよびPI染色テストによって実証されるように、テストしたBY2およびJM細胞懸濁液中に高度の細胞生存能が存在する。細胞は非常に丸く、多くの細胞において、恐らく細胞分裂前に、活性のある細胞の細胞壁伸長を示すくちばし様の突出部を示した。分離された細胞は大きく、拡大されており、プロトプラストに特有である球状の形状を有した。カルカフロール染料を使用し、無傷の細胞壁の存在または非存在を測定した。図4は、これらの円形細胞の周りに細胞壁が明らかに存在することを示す。顕微鏡の暗視野集光器下でのこれらの細胞の観察によって、細胞の周りの厚い細胞壁が示された(図3:パネルC)。これらの単一細胞は、振盪培養において回復力に富み、これは、ペクチンの非存在および生体染色テストにおいて見られる大きな細胞の存在に起因する死細胞が存在しなかったためである(図5)。このパネルにおいて見られるように、非常に高いパーセンテージの生きている正常な細胞が見られた。従って、正確な数の細胞を含む接種物として振盪培養またはマイクロウェルプレートにおいてこれらの細胞を使用することが可能である。
【0055】
図3:BY2およびXanthiタバコ懸濁液の細胞凝集体懸濁液からの、培地中7日間のコルヒチン処理からの単一細胞懸濁液の誘導。
A:通常のBY2懸濁凝集体(カルカフロール(Calcafluor)染色した);B:7日間の1 mMコルヒチン中の単一細胞BY2懸濁液;C:Bと同一であるが、無傷の細胞壁を有する単一細胞を示すために拡大した;D:Xanthiの懸濁凝集体;E:0.5 mMコルヒチン中において7日間処理したXanthi懸濁凝集体。0.5 mMにおける単一細胞の部分的放出に注意のこと;およびF:1 mMコルヒチン中のXanthiの分離された単一細胞。
【0056】
図4:BY2およびXanthiタバコ懸濁凝集体からの、コルヒチン処理における無傷の細胞壁を伴う単一細胞の放出。
A:通常のBY2懸濁凝集体;B:7日間の1 mMコルヒチン中における単一細胞BY2懸濁液;CおよびD:コルヒチンの除去後の凝集体への細胞の回復(コルヒチン処理の1培養サイクルを伴う継代培養の4日後);E:Xanthiの懸濁凝集体;F:1 mMコルヒチン中において7日間処理されたXanthi懸濁凝集体。BY2およびXanthi培養物中における放出された単一細胞、ならびに、蛍光増白剤、カルカフロールの存在下で見られるように無傷の細胞壁の存在に注意のこと。(全てのサンプルを0.1%のカルカフロールで処理し、Leica蛍光顕微鏡下で調べた)。
【0057】
図5:BY2変異体タバコ(EP 12%スクロース培地中において馴化した)およびシロバナヨウシュチョウセンアサガオ懸濁凝集体からのコルヒチン処理における無傷の細胞壁を伴う単一の生存可能な細胞の放出。
A:通常のBY2-V懸濁凝集体;B:未処理凝集体のより接近した図;C、DおよびE:7日間の1 mMコルヒチン中における単一細胞BY2懸濁液の誘導(10×、20×および40×の倍率下での細胞);F:7日間の1 mMコルヒチン処理におけるシロバナヨウシュチョウセンアサガオ懸濁液中の単一細胞の誘導。全てのサンプルをFDAおよびPIで処理し、Leica蛍光顕微鏡下で調べた。ここでFDA染色において細胞の高い生存能が見られ、PIにおいてごくわずかな細胞が赤色に染色されたことに注意のこと。
【0058】
実施例5−唯一の炭素源としてグリセロールを含有する培地中における単一細胞の作製およびDAS-PMTI-1の影響
本実施例は、新規のグリセロール増殖培地およびDAS-PMTI-1低濃度効果、ならびに増殖特徴に関する別の議論を提供する。本結果は非常に顕著であり、これは、グリセロールはダイズ微小管を破壊することにおけるコルヒチン効果を弱めるという文献における先の報告が存在したためであり、従って、前記技術は、本適用についての培地におけるグリセロールの使用に対して逆方向に開示した。例えば、Hayashi and Yoshida, 85 PNAS 2618-22 (1988)を参照のこと。さらに、本グリセロールデータは、植物細胞について新規であり、このような結果は、以前には報告されていない。タバコ急速培養物の3つの異なる遺伝子型が、唯一の炭素源として3%グリセロールを使用して数ヶ月間首尾よく増殖している。
【0059】
この実施例はまた、DAS-PMTI-1の2つの異なる濃度における培養挙動を描写する増殖曲線グラフを提供し、それと未処理とを比較する。
【0060】
微小管を破壊するいくつかのクラスの化合物は、単一細胞を作製する。化合物としては、以下に分類される微小管破壊剤または阻害剤(α-およびβ-チューブリン結合性化合物)が挙げられる:(i)ジニトロアニリン(コルヒチン、オリザリン、トリフルアラリン(Trifluaralin)、クロラリン(Chloralin))および(ii)N-フェニルカルバメート、例えば、ベンズアミド、プロナミド、リン酸アミド、アミプロホスメチル(MorejohnおよびFoskett,1986年;Akashiら,1988年)、ならびに抗真菌剤、ベンズアミド ザリラミド(Young,1991年)、(iii)抗癌剤、パクリタキセル(MorejohnおよびFoskett,1986年)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ならびに(iv)微小管およびまたは細胞壁特性の両方を破壊する他の化合物、例えば、セルロース合成阻害剤、および細胞骨格阻害剤、例えば、アルミニウムおよびクマリンもまた、小核形成を伴わないかまたほとんど伴わない単一細胞を作製するそれらの能力についてテストされる。表層微小管および有糸分裂微小管は、異なる感受性を有し、しかし、上記に列挙される異なるクラスからまたは該クラスのうち1つからの化合物の組み合わせは、細胞分裂は影響されないが細胞接着性が十分に破壊される程度に微小管を選択的に破壊し、ゲノム不安定性を有さないかまたはほとんど有さない単一細胞段階の細胞を達成し維持する。
【0061】
懸濁培養におけるタバコ細胞増殖に対する微小管阻害剤(MTI)の効果を調べた。第7日定常期細胞(1 ml)を、異なる濃度(25〜1000 nM)のMTIを含有する250 ml振盪フラスコ(Bokrosら,1993年)中の培地(50 ml)へ移し、25℃で暗所中7日間の培養において増殖させた。対照およびMTI含有フラスコは両方とも、最終濃度0.5〜0.1%(v/v)DMSOを含有した。これらの化学物質の増殖を、BY2細胞についてはEP12培地において、BTI-NT1細胞についてはNT1B培地において評価し、炭素源を3%グリセロールで置換する。これらの生物の応答を、炭素源として3%スクロースを含むこと以外は同一の培地組成と比較した。グリセロールは微小管安定剤であることが公知であるため、グリセロール培地を使用し、3%グリセロール中において馴化されたタバコ細胞は、ストレス下でフェノール類を示さなかった。
【0062】
1日間隔で、細胞の三重のサンプル(0.5 ml)を、風袋を計ったマイクロチューブ中における短時間遠心分離によって沈殿させ、生重量を測定した。図6に示される結果は、2日ラグフェーズ後、対照細胞は4日間迅速に増殖し、第6日までに定常期に入ったことを示している。25 nM DAS-PMTl-1と共に増殖されたタバコ細胞は、対照培養のものと類似した増殖動態を示した。しかし、これらの培養物の生重量は、定常期の間の対照よりも僅かに重く、このことは、50 nM DAS-PMTI-1での増殖の促進を示唆している。0.5〜1.0 mM DAS-PMTI-1と共に増殖された細胞は、FDAおよびヨウ化プロピジウム処理した細胞を蛍光顕微鏡下で調べた場合、培養開始の3日以内に完全な阻害および細胞死を示した。データは、50 nMの閾値付近でタバコ細胞増殖が阻害され、しかし、100 nMを超える濃度は有糸分裂の阻害、および細胞死を引き起こすことを実証している。
【0063】
0.25〜0.5 mM濃度が有効である、単一細胞の作製についての効力が低いジニトロアニリンである、コルヒチンとは異なり、DAS-PMTI-1は、NT1およびBY2細胞の両方について、総炭素源としてのグリセロールの存在下でおいてさえ5〜25 nMという低い濃度で非常に有効である。25 nM濃度範囲は、単一細胞を放出することにおいて有効であるだけでなく、10日間にわたって細胞の増殖速度を低下させないことにおいても非常に効率的である(図6)。実際に、これらの単一細胞が増殖するという事実のために、増殖の定常期でバイオマスがわずかに増加する。しかし、顕微鏡観察は、これらの細胞における小核の存在を示さなかった。
【0064】
図6: NT1タバコ細胞増殖に対するDAS-PMTI-1の効果。細胞を、唯一の炭素源として3%グリセロールを含むNT1B培地において、25または50 nM DAS-PMTI-1の非存在下または存在下において増殖させた。全ての生重量値は、複製サンプルからの平均値±0.18を示す。
【0065】
DAS-PMTI-1によって作製された細胞の単一細胞状態を、共焦点顕微鏡下で分析し、細胞が付着していないとわかったので、それらは単一細胞であることが明白に確認された。
【0066】
実施例6−トランスジェニック懸濁株およびクローン株作製のデコンヴォルーション
タバコ懸濁液は、通常、凝集体または小さなクラスターで細胞を含有し、それらは非常に不均質である。培養における細胞は、遺伝子的に同一(均質な集団)であり得、またはいくらかの遺伝的変異を示し得る(不均質な集団)。単一の親細胞から誘導された細胞の均質な集団は、クローンと呼ばれる。従って、クローン集団内の全ての細胞は、遺伝子的に同一であり、細胞特徴の点で非常に均質である。BY2およびNT1タバコ細胞懸濁液は、多くの研究室においてモデル系として慣用的に使用されている。
【0067】
これらの細胞は、直接、粒子ボンバードメントまたはアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)との共培養によって(An,1985年;Kleinら,1988年;RempelおよびNelson,1995年)、細胞壁の除去(MathurおよびKoncz,1998年)後に容易に形質転換される。A. tumefaciens媒介BY-2形質転換は多くの研究所において慣用的に行われるが、本発明者は、トランスジェニックカルスを得ることにおける効率は、実験ごとに異なり、主にBY-2細胞培養物の質に依存することを見出した。同期化、M期およびG1初期におけるBY-2細胞は、G2にある細胞よりも、安定A. tumefaciens媒介形質転換について10倍感受性が高い。さらに、virG遺伝子を構成的に発現するアグロバクテリウム株LBA4404(van der Fitsら,2000年)は、トランスジェニックカルスを作製することにおいて2〜5倍より効率的である。典型的に、約500個のトランスジェニックカルスが、このアグロバクテリウム株と共培養された4 mLのBY-2細胞から得られ得、表現型スクリーニングプログラムが行われることを可能にする。しかし、形質転換懸濁株のクラスターまたは凝集体は、不均質な複数のトランスジェニックイベントを有するようである。結果として、1つのバッチ培養と別のものとで一貫しない発現レベルが存在する。単一細胞法は、クラスター中の細胞のキメラ混合物をデコンヴォルーションし、個々の細胞としてそれらを分離し、クローンイベントを同定するために使用される。単一細胞を、PAT選択マーカー遺伝子で形質転換されたキメラトランスジェニック懸濁液NT1タバコ株(GAD1762-034)から作製した(図7および8)。
【0068】
図7:DAS GAD1762-034懸濁株からの単一細胞およびコロニーの作製。図8A、8Bおよび8C:DAS GAD 1762-034単一細胞からのコロニーの2〜6週の増殖。
【0069】
約20個の別個のコロニーを無作為に選び、新鮮な選択培地においてさらにバルク化した。懸濁株をこれらのコロニーから作製し、迅速に増殖する株を各々7日の6継代培養サイクルによって得た。これらのコロニーのバイオマス産生は、これらの株にわたってかなり均一であり、さらなるタンパク質分析のために19株を進めた。
【0070】
4を超える継代培養サイクルについて7および13日でサンプルを回収し、発現分析を行った。得られた発現データをプロットした(図9)。
【0071】
対照懸濁凝集体株番号34と比較した場合、いくつかの継代培養サイクルにわたってタイトな発現を伴ういくつかのクローン株を得ることができたことが、データ分析から明らかである。さらに、亜株17は発現レベルにおいて対照株より性能が優れており、このことは、このプロセスが集団中のクローン優良株を選択することを示しており、さらに改善されたデコンヴォルーションは、均一発現優良株を得ることに役立ち得る。
【0072】
実施例7−単一細胞懸濁培養物の形質転換
材料および方法
植物細胞材料の作製
形質転換の3〜4日前に、1週齢の懸濁培養を、250mLフラスコ中の40 mlのNT1BまたはLSBY2倍地へ2 mlのNT1またはBY2培養物を移すによって、新鮮な培地へ継代培養する。微小管阻害剤(MTI)の濃度は、単一細胞を作製するために上記に記載されたように使用した。単一細胞を、MTI処理の4日後または7日後に回収した。
【0073】
図10:DAS専有メチルインドール誘導体でありかつ強力な微小管阻害剤除草剤である、DAS-PMTI-1を使用して単離されるBY2細胞の単一細胞。20〜50 nM濃度を使用し、継代培養の5日後に単一細胞を作製した。細胞は単一細胞であり(ペアは、重複するエッジを有する)、写真を、共焦点イメージングシステムへ接続された微分干渉コントラスト顕微鏡下で撮影したことに注意のこと。
【0074】
BY2単一細胞をBeckmanフローサイトメーターによって処理した場合、658250個の生存可能な細胞/培地1 mlが存在し、生存可能な細胞は平均直径10.43 umおよび体積593.8 um3を有した。
【0075】
アグロバクテリウム作製
YFP遺伝子(pDAB4613)構築物を含有するアグロバクテリウム・ツメファシエンス株LBA4404を、-80℃で50%グリセロール中に保存する。前記発現ベクターを含有する、ストック培養物20〜500μlアリコートを使用し、10 g/L酵母抽出物、10 g/Lペプトン、5 g/L NaCl、10 g/Lスクロースおよび50 mg/Lスペクチノマイシンを含有する30 ml YEP液体培地へ20〜500μlを添加することによって直接、液体培養を開始した。続いて、培養物が1.5であるca. OD600の密度に到達するまで、28℃および150〜200 rpmで暗所中において18〜20時間インキュベートした。
【0076】
核形質転換のための単一細胞の共培養
形質転換の際に、1.0 mlのアグロバクテリウム懸濁液を、4または7日齢のタバコ単一細胞懸濁液40 ml(MTIを除去するために培地中において予め洗浄)を含有するフラスコへ添加し、10 ml広口径ピペットを使用して5回ピペットで上下させることによって混合する。次いで、均一な懸濁液を、パラフィルムに包まれた24ウェルプレート中へ250μlアリコートで移し、3日間、振盪せずに25℃で暗所中において培養する。顕微鏡スライド上にそれを置き、黄色蛍光タンパク質(YFP)一過性発現を探索することによって、懸濁液の約50μlのアリコートをテストする。
【0077】
核形質転換のための単一細胞のPEG/DNA処理
JT-NT1細胞凝集体懸濁液を、継代培養開始において、NT1 B培地中における1 mM最終濃度のコルヒチン(Fluka)で処理し、オービタルシェーカー上において125 rpmで7日間培養した。懸濁液を25℃で培養した。第7日の終わりに、1 ml(0.6 OD600)の単一細胞をフラスコから回収し、14 ml無菌チューブ中へ分散させた。10 mlのMaMg培地(組成については下記の表1を参照のこと)を添加し、約1000 RPMで5分スピンさせた。
【0078】
(表1)MaMg培地組成(PEG媒介形質転換)
【0079】
液体をデカントし、細胞を300μlのMaMg中に再懸濁させ、約50μgプラスミドDNAを添加した。この単一細胞およびDNA混合物へ、300μlのPEG 3350(40%PEG 3350 w/v、0.4Mマンニトール、0.1 M Ca (NO3)2 pH 5-6、最終)を徐々に添加し、それを穏やかに混合した。単一細胞、DNAおよびPEG混合物を室温で20分間インキュベートし、次いで、10 ml W5(洗浄媒体)を添加し、約1000 RPMで5分スピンさせた。液体をデカントし、2 mlベース液体培地(NT1B)を添加し、細胞懸濁液をマルチウェルプレートに移した。いくつかの複製を24ウェルプレートのウェル中へこのようにして移すことができた。50μl体積の細胞懸濁液を顕微鏡スライド上に取り、次いで、それらを好適なフィルター(励起500/20 nm、ジアクロム(diachrome)、放射535/30 nm)を備える蛍光顕微鏡下で調べることによって、YFP一過性発現について20〜24時間でアッセイした。
【0080】
プラスチド形質転換のための単一細胞の微粒子銃処理
BY2細胞をEP12%培地中の20〜50 nM DAS-PMTI-1中において処理し、プラスチドの数を増加させ、2,4-D無しでまたはBAPを添加して、7日間プラスチドのサイズを増大させた。第7日の終わりに、単一細胞を回収し、2 ml懸濁液を濾紙へ移した。細胞を乾燥のために2時間LS BY2ゲル培地上に維持した。2,4-D欠損単一細胞株およびBAP処理細胞株各々からの5つのプレートに撃った。これらの細胞を2週間50 nM DAS-PMTI-1で処理し、第3週目にそれらを20 nm DAS-PMTI-1中に置いた。細胞は良質であり相対的に健全であった。
【0081】
微粒子銃(BioRad)を使用し標準プロトコルに従って、0.6μm金粒子上のpDAB3969を細胞にボンバードした。選択剤を含まない培地上における回復の2日後、LS-BY2 12%スクロース+100 mg/Lカナマイシン選択へそれらを移した。
【0082】
結果および考察
核形質転換の試み
PEG(図11)およびAgro形質転換(図3)における試みは、互いに類似した発現頻度を明確に示した。分析した細胞50μlアリコートにおいて、2〜3のYFP発現細胞が存在した。従って、各10970単一細胞のバッチにおいて1個の形質転換細胞が存在し、前記プロセスがあまり効率的ではない場合があることを大雑把に示している。細胞から残りのコルヒチンが除去されなかった可能性があり、並行実験において、細胞は、より高い頻度のコロニーを伴ってより迅速かつより健全なコロニーへ回復された。これは、洗浄工程が、最適化実験において形質転換頻度を増加させることを示している。たった1つのイベントが単一細胞から得られる場合、これらの形質転換法の両方においてマイクロウェルプレート中に単一細胞1 ml当たり少なくとも50〜60個の形質転換細胞が存在する。しかし、形質転換についての条件はさらに最適化され得、さらなる安定形質転換コロニーが単離され得る。
【0083】
図11:72時間PEG処理後のYFP発現(Ubi10-YFPプラスミド)。焦点面における小さな娘(分裂)細胞の1つがGFP発現を示し、発現が安定であり得ることを示している。
【0084】
プラスチド形質転換
培養の6週間後、5つの盛んに増殖しているコロニーを選択培地において同定した。しかし、対照、非処理細胞は、100 mg/Lカナマイシン選択において死滅した(図12)。盛んに増殖しているコロニーをサンプル化し、PCRによって分析し、プラスミドの組込みを測定した。5個のコロニーのうち2つは明確なPCR産物を示し、このことは、導入遺伝子がプラスチド中に組込まれていることを示している。
【0085】
図12:左:100 mg/Lカナマイシンによって阻害された未処理対照組織。右:選択培地上で増殖している、単一細胞由来の推定トランスプラストミック分離株。
【0086】
ハイスループット核およびプラスチド形質転換プロトコルをさらに開発するために、さらなる実験が行われている。
【0087】
プロトコルを最適化し、新規のバイオプロセッシング研究開発についてのHTPおよびバックボーンフリー(フラグメント精製プラスミドを使用する)形質転換プロトコルをさらに開発するために、さらなる形質転換実験が行われている。
【0088】
実施例8−グリセロール培地における懸濁培養物の順化
材料および方法
同期化についての培養物のコンディショニング
同期化を改善するために、全ての培養を、継代培養なしで2週間連続し、続いて50 mlの新鮮な培地中に1 mlの古い培養物を希釈した。その継代培養の2日後に、未分化および分裂細胞をカウントし(40%までの無糸分裂指数が観察された)、培養の10日後に、分化した非分裂細胞を観察した。懸濁液0.5 mlのサンプルを、ホールマウント手順について使用した。
【0089】
細胞培養物
ロングターム・ブライト・イエロー-2(Long-term Bright Yellow-2)(BY-2)をLSGS-BY2培地(付記I)において培養し、NT1細胞およびショートターム・ペティー・ハバナ(short-term Petite Havana)(PHL)タバコ懸濁細胞をLSG-BY-2培地(付記II)またはG-NT1培地(付記III)において培養した。培地がグリセロールに加えて1%スクロースを有したレギュラーのBY2培養物の場合を除き、全ての培地は、増殖培地中においてスクロースの代わりに用いられる炭素源としてグリセロールを有する。懸濁培養物を、250 mlエルレンマイヤーフラスコ中において1週間間隔で希釈した(新鮮な培地50 ml中に古い培養物1 ml)。細胞懸濁物を、100 rpmでロータリーシェーカーにおいて撹拌し、25℃で暗所中において維持した。Vos et al., “Microtubules become more dynamic but not shorter during preprophase band formation: a possible 'Search-and-Capture' mechanism for microtubules translocation,” Cell Motil Cytoskeleton 57:246-258, 2004)。
【0090】
グリセロール培地において増殖された細胞培養物の特徴
全ての培養物の全般的な増殖は、ショ糖増殖された対照培養物と比較した場合、減少された。しかし、培養接種物の初期レベルを増加する場合、通常の増殖速度が得られた。細胞は正常であり、ショ糖対照培養中において観察される細胞の典型的な褐色化なしに、培養において2週間までそれらを増殖させ続けることが可能であった。グリセロール培養において増殖された細胞は、それらのショ糖培養対照物と比較した場合、懸濁液単位において細胞のより高い凝集を有した。これらの細胞を実験において使用し、MTI化合物をテストし、凝集されたサブユニットの細胞接着性を破壊し、これは、グリセロールは膜の安定性を弱めるためである。
【0091】
付記I
LSGS-BY2培地は、30 mlグリセロール(v/v)および10 gスクロース(w/v)、100 mg/lミオイノシトール、200 mg/l KH2PO4、1 mg/lチアミンおよび0.2μg/l 2,4-ジクロロフェノキシ酢酸が補充された、MurashigeおよびSkoogのマクロおよびミクロ塩(MurashigeおよびSkoog 1962年)からなる。培地を加圧滅菌前にpH 5.8へ調節する。
【0092】
付記II
LSG-BY2培地は、30 mlグリセロール(v/v)、100 mg/lミオイノシトール、200 mg/l KH2PO4、1 mg/lチアミンおよび0.2μg/l 2,4-ジクロロフェノキシ酢酸が補充された、MurashigeおよびSkoogのマクロおよびミクロ塩(MurashigeおよびSkoog 1962年)からなる。培地を加圧滅菌前にpH 5.8へ調節する。
【0093】
付記III
G-NT1培地は、30 mlグリセロール(v/v)、100 mg/lミオイノシトール、180 mg/l KH2PO4、1 mg/lチアミンおよび2 mg/l 2,4-ジクロロフェノキシ酢酸が補充された、MurashigeおよびSkoogのマクロおよびミクロ塩(MurashigeおよびSkoog 1962年)からなる。培地を加圧滅菌前にpH 5.8へ調節する。
【0094】
実施例9−双子葉植物(タバコ(BY2、NT1、Petite Havana、Xanthi))、ニンジン(Daucus carota L. ssp. sativus cv Sativa)の懸濁培養物からの単一細胞作製
ニンジン懸濁培養物
ニンジンカルス培養を、インビトロで維持されたDaucus carota L. ssp. sativus cv Sativa植物から開始した。単離した葉柄外植片を、半固体培地において培養した(Mashayekhi-Nezamabadi,2000年)。50 mgの砕けやすいカルスを24マイクロウェルプレート中の1.5 mlのLSBY2培地(付記I)へ移すことによって、カルスから懸濁培養を開始した。次いで、最も速く増殖する懸濁液を、LSBY2液体培地35 ml中懸濁液1 mlでフラスコへ移した。培養物を、7日継代培養サイクルで散光中に維持した。これらの培養物は再生可能であり、懸濁単位は、コンパクトに配置された細胞を伴って塊状であった。継代培養の懸濁開始段階において0.5 mM〜1 mMコルヒチンでまたは25 nM〜0.5 mM DAS-PMTI-1((4-クロロ-1,5ジフェニル-1H-ピラゾール-3イルオキシ)-酢酸エチルエステル)で処理した場合、前記単位からの細胞は、培養開始の第3日以内に分離し、培地へ放出される。細胞培養物は、コルヒチン処理において単一細胞の均質な作製を示したが、DAS-PMTI-1においては、単一細胞作製を示したものの、丸いよりはむしろ多種多様の細胞形状を伴った。細胞は、蛍光顕微鏡下でカラカフロール(calacafluor)染色によって分析した場合、無傷の細胞壁を有する。
【0095】
ニンジン単一細胞懸濁液のクローン株作製
増殖の定常期にある単一細胞懸濁液を、0.5 Mコルヒチン処理における培養開始の7日後、LSBY2新鮮培地を使用して0.6 OD660へ希釈した。1.5 mlの希釈した単一細胞培養物を、15X100ペトリ皿中のM培地(付記II)上に播種し、ループを使用して広げた。未処理ニンジン懸濁凝集体もまた、同一の密度へ希釈し、同様に播種してプレーティングし、これらの培養物間の増殖応答を比較した。暗所中での4週間増殖後、単一細胞を有するプレートはいくつかの別個のクローンを産生し、このことは、クローン株がこれらの細胞から得ることができたことを示している。しかし、未処理懸濁液は、プレートの表面上においてカルスの芝生のような増殖を示した(図13)。従って、ニンジンの単離細胞は、クローン株を作製するために個々の細胞から誘導されるコロニーを作製することができることを示すことが可能である。
【0096】
図13:ニンジン単一細胞懸濁液からのクローン株の作製。未処理の懸濁凝集体をプレーティングしたM培地上における芝生のような増殖(パネルA)。単一細胞をプレーティングした培地上における分離したコロニーの増殖(パネルB)。
【0097】
実施例10−単子葉植物(トウモロコシ、イネ(T309)、カモガヤ、コムギ(Anza))の懸濁培養物からの単一細胞作製
全能性葉緑素入りトウモロコシ細胞培養
トウモロコシ光合成無機栄養培養を開始し、7日培養サイクルで維持した(Jayakumarら 2005年)。培養物を、継代培養時に、25 nM〜0.5 mMのDAS-PMTI-1((4-クロロ-1,5ジフェニル-1H-ピラゾール-3イルオキシ)-酢酸エチルエステル)または10 nM〜0.5 mMのトリフルラリンで処理し、凝集体から単一細胞を分離させた。コルヒチンは、0.5 mMを超えて約1 mMの濃度においてのみ活性であり、単一細胞を放出した(図14)。トウモロコシ懸濁単位は、分析した双子葉植物細胞と比較した場合、硬い細胞凝集体へと密にパッキングされる。しかし、緑色トウモロコシ細胞懸濁液が、最も硬い懸濁単位を有し、前記処理は、7日で50%までの生存可能な単一細胞放出を示し、これは、100 rpmでの短時間のスピンによって、または75〜100 uM直径の範囲の細孔を有する篩いでの濾過によって、分離することができた。
【0098】
図14:液体培地中における0.5〜1 mMコルヒチン処理および継代培養開始の14日(第2継代培養サイクルの終了)後に分析した培養物。A:単一細胞がクラスターから放出される;B:FDA生体染色で染色された、密にパッキングされた細胞凝集体;CおよびD:それぞれ1および0.5 mM処理において放出された、懸濁液を濾過した(100 um直径の細孔を有するフィルターを使用)後の、FDA染色された単一細胞;EおよびF:Dからの単一細胞の、より接近した図。
【0099】
カモガヤおよびイネ(T309)懸濁培養
カモガヤおよびT309のカルスを、半固体培地上における成熟種子(DAS種子コレクション)から開始した。懸濁培養を、Fauquetら,1996年によって記載されたプロトコルを使用して、この種子由来カルスから開始した。懸濁細胞培養物を、暗所中、150 rpmで振盪フラスコ中において、7日継代培養サイクルに維持した。トウモロコシについて記載したもの(上記)と同様のMTI化合物を、同様の濃度範囲で使用した。カモガヤおよびイネ単一細胞が培養開始の3〜5日後に放出された。
【0100】
コムギ(cv. Anza)懸濁培養
Anzaコムギカルスを、胚盤組織(scultellum tissue)から半固体MS2-Dコムギ培地(付記III)上において開始した。胚盤組織を、滅菌し浸漬した組織から単離し、種々の組織から誘導したカルスを、液体MS-2Dコムギ培地(付記III)へ移した。1つの速く増殖する懸濁株を単離し、MS2D液体培地上において7日の継代培養サイクルで7年間さらに継代培養し、長期間(7年)維持した。単一細胞作製のために、培養物を先ずNBジカンバ液体培地(付記IV)中に馴化した。Anzaコムギ培養物を、均一なサイズの細胞凝集体単位を伴ってこの培地中に良質な懸濁液を作製するようにコンディショニングすることができた。コルヒチン、トリフルアラリン(Trifluaralin)またはDAS-PMTI-1を、25 nM〜1 mM濃度範囲で、前記培地中へ継代培養開始段階で前記接種物へ添加した。懸濁液は、培養開始後3日から、培地中へ単一細胞を放出した。単一細胞は小さくかつ均一であった。
【0101】
付記I
LSBY2培地は、30 gスクロース(w/v)、100 mg/lミオイノシトール、200 mg/l KH2PO4、1 mg/lチアミンおよび0.2μg/l 2,4-ジクロロフェノキシ酢酸が補充された、MurashigeおよびSkoogのマクロおよびミクロ塩(MurashigeおよびSkoog 1962年)からなる。培地を120℃での加圧滅菌前にpH 5.8へ調節する。定常期での、培養の第7日での懸濁液体積を、培養を開始するために使用した。1ml体積のニンジン懸濁液接種物を、50 mlのLSBY2培地中へ移し、次いで、培養物を28℃で暗所中において150 rpmでシェーカー上に配置した。使用したMTI化合物を、培養開始サイクルで新鮮な培地と共に添加した。
【0102】
付記II
M培地は、LS基本塩およびB5ビタミン、30 gのグルコース、各々1 uMの2,4-Dおよびカイネチンからなり、該培地をpH 5.8へ調節し、その後、8 gm/L Noble寒天を該培地へ添加した。次いで、培地を加圧滅菌し、15X100ペトリ皿へ注ぐ。
【0103】
付記III
MS2D培地は、2 mgの2,4-D、0.5 mgのチアミン、30 gのスクロース、400 mgのミオイノシトール、400 mgのカゼイン加水分解物(ECH)が補充された、MS塩(MurashigeおよびSkoog 1962年)およびErikssonビタミンからなる。培地をpH 5.8へ調節した後、培養物を加圧滅菌した。懸濁培養物を7日間隔でルーチンに継代培養し(新鮮な培地54 ml中、使用した懸濁液の初期接種物6 ml)、28℃で暗所中150 rpmで振盪しながら増殖させた。これらの条件下で、細胞集団は、接種後2日〜6日の間、常に指数増殖状態にあった。ゲル培地に成熟種子胚盤からカルスを誘導させるために、MS2D培地に2.5 g/Lで追加成分Gelriteを含有させ、これは、pHを調節した後に添加する。
【0104】
付記IV
NBジカンバ培地は、NB基本塩、スクロース30g/L、ミオイノシトール100mg/L、ECHカゼイン加水分解物(ECH)300mg/L、L-プロリン(2.5M)1.7ml/L、L-グルタミン500mg/L、および6.6 mg/Lジカンバからなる。培地をpH 5.8へ調節し、その後、濾過滅菌する。
【0105】
実施例11−ニンジン単一細胞作製およびニンジン単一細胞懸濁培養物のSi-C Whiskers媒介遺伝子形質転換
ニンジン単一細胞懸濁液の開始
再生可能なニンジン凍結保存株(D2-40-018)を解凍し、Linsmeier-Skoog(LS)培地(Nagata, T., Nemoto, Y., and Hasezawa, S. (1992) Int. Rev. Cyto 132, 1-30)において培養した。培地塩は、Phyto Technology Laboratories、カタログ番号L689から購入した。盛んに増殖する懸濁株が1週間以内に得られ、7日培養サイクルで散光下にて125rpmでのオービタルシェーカー(Innova-3300)上に28℃でLS BY2懸濁培地58 mlへ2ml PCVを移すことによって、前記維持株を継代培養した。単一細胞作製のために、定常期での1 ml PCVのニンジン懸濁液を、1 mMコルヒチン(Sigma、カタログ番号C3915)を含む30 mlのLS懸濁培地へ添加し、7日間培養した。単一細胞が、培養の3〜7日に作製され、形質転換実験が直ぐに出来る状態である。ニンジンの単一細胞は、新鮮なLS BY2液体培地60 mlを添加することにより14日での培養物を希釈することによって、28日まで定常期で維持され得た。
【0106】
ニンジン単一細胞のWHISKERS(商標)媒介遺伝子形質転換
1 mMコルヒチンを用いてLSBY2培地において作製した単一細胞を、培養開始の4日後および11日後に観察した。フルオレセインジアセテート染色によって測定した場合、単一細胞は非常に活性であり生存可能である。黄色蛍光タンパク質を発現するカルスイベントが、グルホシネートアンモニウムプレートにおける選択の10日後および25日後に、単一細胞由来のコロニーから観察された。
【0107】
遺伝子形質転換ニンジン単一細胞
改変されたWHISKERS(商標)形質転換プロトコル[Petolino, Welter and Cai (2003) Molecular Methods of Plant Analysis, Vol.23, 147-158, Chater9, Genetic Transformation of Plants, ISBN 3540002928]を形質転換実験において使用した。単一細胞処理および培養開始の4日後および11日後の単一細胞ニンジン懸濁液25mlを滅菌250ml IEC遠心分離機ボトル(Fisher Scientificカタログ番号05-433B)中へ移すことによって、実験を開始した。8.1mlの新たに調製した5%Whiskers Suspension(Silar SC-9, Advanced Composit Materilas Corp, Greer, SC)ならびにPAT遺伝子を駆動するAtUbi10プロモーターおよびYFP遺伝子を駆動するCSVMSプロモーターを含有する170ugのpDAB3831を添加することによって、形質転換を行った。各形質転換は1つのボトルからなり、これを、改変されたペイントミキサー(Red Devil Equipment Co, Minneapolis, MN)中に配置し、10秒間高速で撹拌し、その後、細胞を500 ml回復フラスコへ戻し、100mlの新鮮なLSBY2液体培地を添加した。細胞を、28℃および125rpmでロータリーシェーカー上において1時間回復させた。
【0108】
回復に続いて、細胞懸濁液の3 mlアリコートを、Buchner漏斗上に置いた滅菌55 mmナンバー4濾紙ディスク(Whatman International Ltd.)上へ等しく分配し、液体培地を吸引除去した。次いで、細胞を含む濾紙を、ゲル化剤としての0.8% TC寒天および15 mg/l グルホシネートアンモニウムを含む半固体LSBY2-B15培地を含有する60 x 20mmペトリ皿上に配置した。プレートを暗所中28℃でインキュベートした。10日後、GFPを発現するイベントを濾紙から取り、LSBY2-B15半固体の個々のプレート上に配置した。残りのフィルターおよび細胞を、新鮮な半固体LSBY2-B15培地へ移し、28℃で暗所中においてインキュベートした。
【0109】
単一細胞コロニーイベントの分析
形質転換実験の開始の25日後、Leica倒立蛍光顕微鏡下で均一に蛍光を発していた推定トランスジェニックイベントを、「EnviroLogix LibertyLink(登録商標)PAT/pat Plate Kit」を使用して高感度ELISAアッセイによって機能的選択可能PATマーカータンパク質について分析した。EnviroLogix LibertyLink(登録商標)PAT/pat Plate Kitは、「サンドイッチ」酵素免疫測定法(ELISA)である。カルス組織をマイクロ遠心分離チューブ中に配置し、250 ulの抽出緩衝液を添加した。抽出緩衝液は、PBS(Fisherカタログ番号BP665-1)および0.05% Tween-20(Sigma-Aldrichカタログ番号P1379)であった。組織をマイクロ遠心分離チューブ中において小さな携帯型乳棒ですりつぶした。サンプル抽出物を1分間11,000 rcfで遠心分離し、上澄みを、以下の希釈1:1、1:2、1:4、1:8、1:16、1:32、および1:64でELISAにおいて使用した。ELISA法は、Envirologixキットカタログ番号AP014に記載される通りに従った。テストにおいて、サンプル抽出物を、pat遺伝子由来のPATに対して産生された抗体でコーティングされたテストウェルへ添加する。サンプル抽出物中に存在する残留物が抗体へ結合し、次いで、酵素(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)標識PAT/pat抗体の添加によって検出される。サンプル洗浄工程後、アッセイの結果を着色工程で視覚化する。着色は、サンプル抽出物中のPAT/pat濃度に比例する。
【0110】
結果は、143mg/250 ul抽出緩衝液のサンプル比率での陰性対照組織は、PAT ELISAにおいて値を生じなかったことを示した。63mg/250 ulのサンプル比率でのイベント001Bは83 ng/mlのELISA値を生じ、これはカルス1 mg当たり330 pgのPATに等しく、従って、期待された範囲内で蛍光を発するPhiYFPとさらにPAT選択マーカー遺伝子との両方で実際に形質転換されている鮮やな蛍光を発するイベントを示している。
【0111】
実施例12−微小管阻害剤の化学的クラスおよび植物単一細胞作製
微小管と細線維との類似は、因果関係よりもむしろ未知の分極原理に対しての相関応答を示している(Emonsら,1992年)。これはいくつかの例によって支持されており、ここで、水ストレスを与えられたトウモロコシ(Zea mays)根の成熟領域内の大抵の細胞は、右巻きらせんの微小管アレイを有するが、左巻きらせんの細線維を有する(Baskinら,1999年)。同様に、シロイヌナズナ(アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana))突然変異体である、微小管構築1(microtubule organization 1)(mor1)は、異常な微小管アレイを有するが、外見上は変わらない細線維アラインメントを有する(Himmelspachら,2003年;Sugimotoら,2003年)。単一細胞懸濁液は、本発明者の実験において、対照のそれと類似した増殖応答を示し、ここで、乾燥重量は細胞継代培養サイクルにわたって増加し、このことは、それらが放射状拡大を伴う等方性増殖を示す細胞を有するという事実にもかかわらず、細胞がより低濃度のマイクロチューブリン阻害剤(MTI)において分裂することを示している。さらに、培地組成を変更することによって、写真撮影された等方性増殖を伴うこのような単一細胞中において細胞板を見ることが可能であり、このことはさらに、これらの細胞が実際に低レベルのMTI濃度において分裂しているという事実を支持している。従って、低濃度の微小管阻害剤で処理し、培地中において最適なレベルに維持された植物細胞は、変化しないままである表層微小管の実質的な集団を有し得た。これは、単一細胞が、細胞分裂について重要な前提条件である、隔膜形成体構築を含む正常な細胞壁構築プロセスを行い続けることを可能する。
【0112】
微小管機能を部分的に阻害し、低レベルでそれらを破壊することにおいて選択的である化合物を選択するために、種々のクラスの化合物をスクリーニングした。植物チューブリンとのMTI相互作用は、十分に特徴づけされた(HugdahlおよびMorejohn,1993年)。にもかかわらず、いずれの阻害剤を用いても、非特異的効果が存在する(VaughnおよびLehnen,1991年)。従って、この実施例において、種々の化学を有する微小管阻害剤クラスの比較を評価し、非特異的効果を伴わない単一細胞の増殖を維持し得る化合物を同定した。放射状拡大を刺激するために必要とされるよりも低い濃度で伸長を阻害することが公知である、クロルプロファムなどの化合物が存在し、これは、それらは表層微小管よりも盛んに有糸分裂微小管に影響を与えたためである(HoffmanおよびVaughn,1994年)。従って、この研究の目的は、低い最適な濃度で、等方性増殖を維持しつつ正常な細胞機能を行うに十分な表層微小管を保持するが、同時に非特異的阻害効果を伴わないかまたはほとんど伴わない、化合物を選択することであった。
【0113】
コルヒチンはトロポロン誘導体であり、その立体化学構造および作用機序は十分に確立されており(KeatsおよびMason,1981年;MargolisおよびWilson,1977年;RaughおよびWilson,1980年;Murgulis,1974年)、それは、チューブリン二量体からの微小管の形成を妨げる。プロピザミドおよび他のベンズアミドは、植物細胞中の核紡錘体に作用し(Akashiら,1988年;Bartels PGおよびHilton JL.,1973年;Carlsonら,1975年)、一年草および広葉雑草に対して有効である発芽前除草剤として開発された(Ayaら,1975年)。リン酸アミドの用途は、オリザリン(スルフラン)およびトリフルラリン(トレフラン)を含むジニトロアニリン除草剤のそれと類似している(AshtonおよびCrafts,1981年)。トリフルラリンは、ジニトロアニリン除草剤ファミリーの最もよく知られている代表物の1つであり;それは植物微小管を破壊するが、動物細胞においては無効である(HessおよびBayer,1974年;HessおよびBayer,1977年)。ピリジンは、炭素の1つが窒素によって置換されているベンゼン環を有する。除草剤として使用されるいくつかの置換ピリジンが存在する。このグループには、ジチオピル(Dimension(登録商標))およびチアゾピル(Visor(登録商標))がある。ジチオピルは、多種多様の雑草を制御するために芝地においてのみ使用される、選択的な発芽前および発芽後の物質である。それは、しばしば、他の除草剤と共に肥料において配合される。チアゾピルは、事実上全ての雑草について、ならびに柑橘類、綿、トウモロコシ、落花生、ダイズおよびジャガイモを含む多種多様の作物に対して十分に作用する選択的な発芽前化合物である。従って、ピリジンは、機能的に微小管構築阻害剤であるようである。
【0114】
材料および方法
JTNT1タバコ懸濁培養物
JTNT1タバコ細胞懸濁培養物を、1 mlの充填細胞容積(PCV)を20 mlのタバコ培地(MS塩、ミオイノシトール、チアミンHCl(1 mg/ml)、リン酸水素二カリウム(無水)、MES、2,4-D(10 mg/ml)および3%グリセロール(NT1B培地)へ継代培養することによって維持した。細胞株を7日毎に継代培養し、試験のために必要である場合にはバルク化した。1 Mスクロースは、タキソール誘導植物チューブリン重合の速度および程度の両方を阻害した(Bokrosら,1993年)。1 Mスクロースの存在下での植物チューブリン重合の研究(両方ともAPM、アミプロホスメチル、およびオリザリン)は、植物微小管の長さを濃度依存的に短縮させた(MorejohnおよびFosket,1984年;Morejohnら,1987年)。さらに、Sucは、前もって形成された微小管を安定化させ、前もって形成された微小管に対するMTIの効果の試験を実行不可能とする。さらに、スクロースは溶液粘度を実質的に増加させ、チューブリン重合は、減速された二量体およびポリマー拡散速度によって少なくとも一部分変更される。従って、単一細胞作製の場合、培地中にはスクロースを有さないかまたはほとんど有さないことが重要であった。従って、グリセロール中において馴化した新規のJTNT1株をこの研究について開発した。
【0115】
処理のために、十分な細胞分配を可能にするためにしばしば渦を巻かせながら(懸濁凝集体は沈殿する傾向にあるため)、懸濁株を培地20 ml中PCV 1 mlで調製し、次いで、24ウェルマイクロタイタープレートのウェル中へ移した。24ウェルの各々はJTNT1懸濁液1 mlを含有した。24ウェルプレートを、6プレートの高さまでのプレートの積載を可能にするために特別なクランプおよびハーネスでInnova 4900 Multi Environmental Shaker上に維持した。プレートを暗所中25℃および130 rpmの速度で回転した。
【0116】
単一細胞作製
各化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、0.5モル濃度ストック溶液を得た。1 mlのJTNT1懸濁液(1 ml PCV/20 mlタバコ培地)を、24ウェルプレートの各々のウェルへ添加した。各ウェルへ個々の化学物質を添加し、所望の濃度(1μM、3μM、および10μM)を達成した。培養物をInnova Shaker上において7日間増殖させた。毎日、濁度測定を、Molecular devices製のSpectraMax M2e(600吸光度で設定し、1ウェル当たり5回の読み取りを行う)を使用することによって、各ウェルについて行った。第7日に、単一細胞の形成および細胞生存能について、Leica 5000倒立共焦点顕微鏡を使用して、細胞を観察した。
【0117】
LSBY2グリセロール培地中におけるBY2単一細胞によるクローンカルスイベント作製
タバコBY-2細胞(Nagataら,1992年)を、Shaulら,1996年によって記載された修飾プロトコルに従ってpDAB1590によって形質転換し、共培養の4日後にLSBY15上において選択した。緑色蛍光タンパク質を発現するカルスイベントをリカバーし、カルスをLSBY2 B15培地上において維持した。1ヶ月以内に、カルスイベントが直径数cmへ増殖し、小さいが鮮やかに蛍光を発する断片(約2〜5 mm2凝集塊)を、新鮮な固体培地へ移し、新鮮な選択剤中に栄養素が供給された細胞を維持し、均質にGFPを発現するカルスを選択した。500 mg断片のカルスを、250 ml振盪フラスコ(暗所中25℃で130 rpm)中、炭素源として3%グリセロールおよび1%スクロースを含む改変LSBY2液体培地である、50 mlのLSBY2-Gly-B15へ移した。毎週、0.5 mlの充填細胞容積(PCV)の細胞を使用し、懸濁培養を開始した。従って、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するカルスおよび懸濁凝集体を、それぞれ1ヶ月および7日サイクルに維持した。
【0118】
GFP発現単一細胞の作製
定常期での0.5 mlの充填細胞容積(PCV)のGFP発現懸濁凝集体の添加と共に、LSBY2-Gly-B15培地中において7日培養サイクルの開始の間1 uM濃度の化合物DDP(ジフェニルピラゾール)を添加することによって、単一細胞を作製した。または、DMSO中に溶解した1Mジフェニルピラゾールストック溶液50 ulを添加し、懸濁液中1uM最終濃度を提供することによって、25mlの懸濁凝集体を25mlの新鮮なLSBY2-Gly-B15懸濁培地へ移した。従って、わずか3.5日の遥かにより短いサイクルで単一細胞を作製することができた。LSBY215培地は、選択のために15 mg/lグルホシネートアンモニウムを常に含有する。
【0119】
GFPが3.5または7日培養サイクルにわたって単一細胞中においてキメラタンパク質として発現され、細胞内の部位に存在し、これは、キメラ構築物のGFP発現が、Leica顕微鏡を使用し、Zeiss Axiovision共焦点レーザースキャンニング顕微鏡も使用し、従来の落射蛍光を使用して、生きている細胞中において観察されたためである。発現は、核および細胞質繊維を含む細胞内区画の多くにおいて見られた。
【0120】
結果および考察
細胞は、グリセロールを含有するタバコ培養培地中において非常に健全であり、細胞クラスターが非常に明らかであった。細胞は、7日の期間にわたって良好なバイオマス増加を示し、しかし、ショ糖を含む対照と比べてバイオマスが約50%減少した。DMSOが誘導する効果がないことを確実にするために、対照培養物はまた0.1%DMSOを有した。スクロースまたはグリセロール培地のいずれかへの1 uM 4-クロル-1,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)-酢酸エチルエステル(ジフェニルピラゾール)の添加は、それぞれの対照から顕著には細胞のバイオマスを減少させず、このことは、ジフェニルピラゾールの存在下において対照と類似した単一細胞の活性増殖が存在することを示している。増殖曲率は、培養物を2サブサイクルまたは3.5日にわたってとった場合、類似している。グリセロール培地中における単一細胞作製はまた、対照と比較して、非常に高い生存可能な細胞を示す。
【0121】
トリフルラリン、オリザリン、およびマイクロチューブリン安定剤クラス化合物、例えば、タキソールを含む、いくつかの他の化合物を、唯一の炭素源として3%グリセロールを含むNT1B培地中において培養したタバコJTNT1懸濁培養物から単一細胞を作製するそれらの効率について研究した。これらは、コルヒチン、N-(1,1-ジメチルプロピニル)3-クロロベンズアミド、プロピザミドおよびトリフルラリンであった。これらの研究において、前記化合物は、それらの単一細胞作製効率および用量反応曲線の急勾配で相違した。オリザリンは、テストした他の化合物と同様に、単一細胞の直径を少なくとも4倍増加させ、閾値の約10倍の飽和濃度を有した。コルヒチンは、直径を5倍増加させ、より急勾配の用量反応曲線を有し、このことは、これらの2つの化合物は高い用量での作用について好ましい場合があることを示している。
【0122】
単一細胞を作製するために必要な濃度は、コルヒチンについては50 uM〜2 mMの範囲内、プロピザミド、N-(1,1-ジメチルプロピニル)3-クロロベンズアミドについては10 nM〜100 uMであった。しかし、最適な単一細胞作製についてのオリザリンおよびトリフルアラリン(Trifluarlin)の濃度は、100 nM〜1 mMであった。しかし、高濃度のこれらの化合物において、タンパク質合成が増加し、処理された細胞中においてプラスチドおよびミトコンドリア分裂が生じ、21日間培養したニンジン細胞において見られたように、核倍数性を伴って直径300uMまでの巨細胞の形成に至った。これらの結果は、有糸分裂阻害は、研究した高濃度でのこれらの化合物の基本的な効果であることを示唆している。従って、MTIの最適濃度だけでなく、化合物の化学(これは、小管に対して非常に選択的な機能を有し、細胞分裂機能に類似する非選択的機能を有さない)を維持することが重要であるようであった。目的に従って、前述したジフェニルピラゾールに加えて、他の化合物を以下に記載する。
【0123】
BY2懸濁凝集体が観察された:LSBY2糖培地において;改変LSBY2培地中において細胞板を示す1 uMジフェニルピラゾール中において作製された分裂するBY2単一細胞;デコンヴォルーションされたBY2 GFPトランスジェニック細胞およびLSBY2-15ゲル培地上における単一クローンコロニーイベント。
【0124】
LSBY2グリセロール培地中におけるタバコBY2単一細胞作製の概要
凝集体懸濁液から1 uMジフェニルピラゾール中において作製された単一細胞は、培養の3.5日にて細胞の90%において1または2個の核小体を有する単一の核を示す。これらの細胞は、選択剤としての15 mg/lグルホシネートアンモニウムおよび0.8%TC寒天を含むLSBY2ゲルプレート上にプレーティングされ得、これは、凝集体懸濁液を形質転換するために使用したpDAB1590プラスミドは、選択マーカーとしてPATを有したためである。細胞を、1:4希釈で液体培地中に希釈し、ゲル培地上にプレーティングし、プレーティングの21日後にクローンイベントを選択した。
【0125】
JTNT1懸濁液へ添加した場合のアミプロホスメチル(APM)について、単一細胞が1〜10μM濃度で形成され;より高い濃度で、増殖の顕著な減少および細胞分裂阻害が存在する。丸い分離した細胞が、DMSOのみを有する対照と比べて、1μMおよび3μMのAPMの写真において見られ得る。JTNT1タバコ細胞は、1μMおよび3μM APMの存在下において、健全な黄色であり、十分に増殖した。フルオレセインジアセテートおよびヨウ化プロピジウム(Propidium Iodine)染色によって測定した場合、細胞生存能は、70%までの生存能を示した。
【0126】
さらに、グリセロール培地におけるJTNT1タバコ細胞のAPM誘導単一細胞作製を観察した。JTNT1対照懸濁凝集体を、グリセロールおよび0.1%DMSOを含む培地中において観察し;JTNT1単一細胞を、1、3、および10 uM APMを含むNT1Bグリセロール培地中において観察した。
【0127】
ジチオピルは、微小管を破壊する置換ピリジン除草剤のクラスに属する。1μM、3μM、および10 μMの濃度でJTNT1懸濁液へ添加した場合、単一細胞は、1μMおよび3μM濃度(写真EおよびF)を使用して形成されたが、10μM濃度は単一細胞を有した(細胞の濃度は低かった)。タバコ細胞は、テストした全ての濃度でジチオピルを使用して、健全であり、増殖性であり色が黄色であった。1μMおよび3μMジチオピルでの処理後の細胞生存能は70〜80%であり、より高い生存能を示している。
【0128】
コルヒチン模倣物(Evansら,2003年)、(±)-4S,5R-4-ニトロ-5-(2,3,4-トリメトキシフェニル)-シクロヘキセン(トリメトキシフェニルシクロヘキセン)を、その単一細胞作製効率についてJTNT1タバコ培養物においてテストした。細胞中に軽い漂白が存在したが(それらは僅かによりくすんだ黄色であった)、細胞はプレート上において非常によく増殖した。この化学物質は、1μM、3μM、および10μMで単一細胞の形成を促進した。細胞は丸く、全てのレベルにわたって細胞生存能は、80〜90%の範囲であった。細胞増殖阻害は、テストした濃度間でかなり類似しており、細胞は、高い生存能およびより低い細胞傷害性を伴って健全であった。
【0129】
従って、JTNT1タバコ細胞の、誘導された単一細胞作製が、10 uM濃度のトリメトキシフェニルシクロヘキセンで誘導されたグリセロール培地において観察された。
【0130】
スーパー単一細胞
ニンジン懸濁凝集体が、60 mlのLSBY2液体培地中の1 mMコルヒチンにおいて培養され得、28日までの間、同一の培地中において維持した。第2継代培養後の増殖は、14日後に減少し、しかし、細胞は、増殖し続け、生存しており健全であるスーパー単一細胞を形成した(しかし、広範囲の分葉化した核を示し、このことは、核の倍数性の発生を示している)。いくつかの核を有するニンジンスーパー単一細胞が、LSBY2培地中において連続的1 mMコルヒチンで21日齢の細胞において観察された。
【0131】
結論
これらのテストレベルにおける細胞増殖を、目視観察、乾燥重量(第7日にのみ測定)、および濁度読み取りによって観察した。図15は、7日期間で測定した濁度読み取りを描写した。濁度読み取りは、培地(3%グリセロールを含む)のみならびに1μM、3μM、および10μM濃度の微小管阻害剤を含有するプレートに関した。予想されるように、対照は最良の増殖パターンを有するが、試験した化学物質はいずれも、1μMおよび3μMの割合で細胞株を死滅させない。全ての処理における細胞が、同時点(第3日)あたりで増殖速度の増加を示し、細胞体積は第7日で依然として増加していた。これは、化学処理した細胞が、少なくとも7日間生存可能のままであったことを示している。
【0132】
実施例12の参考文献
【0133】
実施例13−MTI作製された単一細胞の細胞内構造、細胞発生、および分子ゲノム不安定性評価についての比較研究
組織培養物由来の植物における全体のゲノム安定性が、いくつかの植物種において細胞遺伝学レベルで研究された(Shoyamaら 1995年;Zoriniantsら 2003年)。エンブリング(embling)由来の植物の安定性について、細胞遺伝学的研究は、対照的な観察を明らかにした。Odakeら(1993年)は、それぞれ、ジェランガム固体培地および液体培地から得られたアスパラガス・オフィシナリス(Asparagus officinalis)L.の66.7%および100%のエンブリングにおける染色体倍加(二倍体から四倍体へ)を報告した。対照的に、Mamiyaら(2001年)は、A.オフィシナリス(A. officinalis)において、体細胞胚形成の間に、倍数性変化が無かったことを報告した。培養培地において使用された、合成オーキシン、例えば、2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)およびNAA(ナフタレン酢酸)は、ソマクローナル変異と関連することが報告された(Karp 1989年;Phillipsら 1994年)。実際に、倍数性の減少が、2,4-Dが使用されたニンジン(Ronchiら 1992年)およびポプラ(Rughら 1993年)体細胞胚形成系の両方において報告された。マイクロチューブリン阻害剤(MTI)もまた、植物細胞中において倍数性を増加させる。しかし、濃度およびMTI化合物クラスは、倍数性の性質または倍数性の非存在を決定する。例えば、オリザリンは、TBY2細胞において核の倍数性を誘導するが、同様の濃度でプロパザミド(propazamide)は誘導しない(Ehsanら,1999年)。同様に、ニンジン懸濁細胞の長期間の曝露は、より高濃度のコルヒチンで、核の倍数性を誘導する。ニンジン懸濁細胞は、連続処理の14〜21日から、1 mMコルヒチン培養単一細胞中において核の倍数性を示した。しかし、このような倍数性レベルの頻度は、14日までは培養物中において遥かに低く、<1%であり、これは、オーキシン培養対照懸濁液について報告された対照と類似している(Karp 1989年;Phillipsら 1994年)。しかし、この研究においてテストされた化合物の中でも、4-クロル-1,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)-酢酸エチルエステルおよび4S,5R-4-ニトロ-5-(2,3,4-トリメトキシフェニル)シクロヘキセンが、連続処理の14日間において、核倍数性パーセンテージを伴わうかまたはほとんど伴わない、効率的な単一細胞作製を示した。
【0134】
いずれにしても、このような低細胞傷害性MTIを使用しての細胞凝集体からの単一細胞誘導プロセスは、異なる遺伝子発現プロフィールを伴って単一細胞の現存の遺伝子発現パターンを依然として変更し得た。DNAメチル化は、インビトロでソマクローナル変異へ至る望ましくない結果を誘発することが周知である。さらに、MTIは、分子改変または不安定性を生じさせ得る変化を誘導する。1.09%という多型割合が、エラグロスティス・クルブラ(Eragrostis curvula)の四倍体におけるコルヒチン誘導染色体倍加において報告された(Mecchiaら 2007年)。E.クルブラ(E. curvula)種子を処理するために使用されたコルヒチンの濃度レベルは0.05%である。本研究の目的は、1 uM 4-クロル-1,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)-酢酸エチルエステル中で作製されたJTNT1単一細胞中のゲノム安定性を評価することであった。
【0135】
種々の分子アプローチ、例えば、AFLP、RAPD(迅速増幅多型(rapid amplified polymorphic)DNA)、RFLP(制限断片長多型)が、組織培養物由来の植物におけるソマクローナル変異のレベルを同定および測定するために試みられてきた(Devarumathら 2002年;Martinsら 2004年;Sanchez-Teyerら 2003年;HaleおよびMiller 2005年)。しかし、使用した方法論にかかわらず、技術が豊富であるにせよ、非常に低いパーセンテージの(1%よりも遥かに低い)ゲノムしかアッセイされ得ない(サンプル化した座の数の点で)。利用可能な種々の技術のうち、AFLPが最も非常に多重であり、典型的に、1プライマー対当たり50〜100座アッセイされる。これらの座はゲノムの全体にわたって多かれ少なかれランダムに散在すると考えられ、従ってAFLPは、組織培養誘導された変化を検出するための最良の機会を提供する。さらに、AFLPはまた、品種同定および変動分析についてのより強力な分子技術の1つである(HaleおよびMiller 2005年)。従って、この評価方法を本研究において使用するために選択した。
【0136】
材料および方法
JTNT1タバコ単一細胞開始およびサンプル収集
JTNT1タバコ単一細胞を、3.5日培養サイクルにおいて、2つの異なる培地、3%スクロースを含むNT1B(NT1B-Suc)および3%グリセロールを含むNT1B(NT1B-Gly)中で開始した。それぞれの培養培地中に維持された定常期培養物での12.5ml懸濁凝集体を添加することによって培養を開始し、1 uM 4-クロル-1,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)-酢酸エチルエステル(ジフェニルピラゾール)を含有する125ml振盪フラスコ中の12.5mlの新鮮な培養培地へ移した。フラスコをフォームストッパーで閉じ、25〜28℃で暗所中130 rpmでオービタルシェーカー上において培養した。培養物を、14日の期間まで3.5日毎に継代培養した。培養物の4つのサンプル(Suc/Gly増殖細胞および0.2%DMSOを含むSuc/Gly培地における対照培養物)を、5分間3000 rpmで懸濁液をスピンすることによって3.5d毎に採取した。サンプルを直ちに凍結乾燥し、細胞酸化を防ぎ、採取後に導入されるサンプルに対する悪影響を最小限にした。単一細胞をHoechst核染色で1時間染色し、2培養サイクルまで核異常について顕微鏡下で観察した。
【0137】
単一細胞の細胞学的特徴づけ
細胞生存能および細胞壁
確立されたJTNT1単一細胞を使用し、酵母中における生存能テストについて使用されるFUNl(F-7030, Molecular Probes, Invitrogen Inc)細胞染色で染色し、これは、2つのカラー蛍光プローブを含有する。第3のものである、細胞壁を染色するCalcofluor White M2Rを、細胞を染色するために使用した。JTNT1単一細胞について、20μmのFUNl染料を添加し、培養物を室温で20分間インキュベートした。1 mLの新鮮な培養培地を添加し、過剰な染料を洗浄し、3000rpmで遠心分離し;上澄みを捨てた。Zeiss ApoTome顕微鏡において細胞を調べ、画像化した。
【0138】
形質膜
JTNT1細胞を、5分間、5μm FM4-64(スチリル色素)と共にインキュベートし、新鮮な培地で洗浄した。培養物を3000 rpmで遠心分離し、新鮮な培地を添加した。細胞をZeiss ApoTome顕微鏡上において視覚化した。
【0139】
核
単一細胞をHoechst核染色で1時間染色し、2培養サイクルまで核異常についてZeiss Apo Tome下で観察した。クリスタルバイオレット染色もまた、倍数性特徴づけについて核構造を観察するために生存核染色として使用した。
【0140】
細胞骨格
ファロトキシンはアクチンフィラメントへ結合する。Alex Fluor 488ファロイジン(A 12379 Invtrogen Inc)を使用し、単一細胞を染色した。6.6umのAlex fluorを単一細胞へ添加し、30分間インキュベートし、顕微鏡上において画像化した。
【0141】
ゲノム不安定性についての分子評価
DNA抽出
代表サンプルからのゲノムDNAを3.5、7、10.5、および14日に採取した。SucおよびGly培養物ならびに対照(10サンプル)を、CTABプロトコル(実施例12の付記を参照のこと)を使用して抽出した。DNAを、Molecular Probes, Inc.(Eugene, Oregon)製のPicoGreen(登録商標)色素を使用して定量した。マイクロタイタープレートの各ウェルは、90μlの200倍ピコグリーンならびに10 μlの40倍希釈でのDNAサンプルまたはLambda DNA標準(0、2.5、5および10 ng/μl)を含有した。標準的なプレートシェーカーを使用してプレートを短時間振盪し、Molecular Devices(Sunnyvale, California)製のSpectra Max GeminiXS蛍光光度計を使用して蛍光を読み取った(励起約480 nm、放射約520 nm)。各サンプルを三重で定量し、3つの結果の平均値を続いての希釈のために使用した。DNAサンプル濃度を、滅菌水を用いて91 ng/μlの実施濃度まで希釈した。
【0142】
AFLP分析
増幅断片長多型(AFLP)アッセイを、Bryanら(2002年)に記載されるように、Vosら(1995年)のプロトコルの修飾を使用して行った。6塩基対切断制限酵素EcoRIを、4塩基対切断制限酵素MseIと組み合わせて使用した。EcoRI蛍光標識およびMseI非標識AFLPプライマーを、Applied Biosystems (Foster City, CA)に注文した。AFLP分析を、1つの修飾を伴う選択的増殖反応によって、Applied BiosystemsのAFLP Plant Mapping Protocolを使用して行った。改変点は、消化/連結反応物を37℃で一晩インキュベートしたことであった。選択的に増幅された産物を、滅菌脱イオン水中に2倍希釈した。0.5 ulの希釈産物を、5 ulのローディングバッファー(500 ul ABI HiDiホルムアミドと混合された5 ul GeneScan 500 bp LIZサイズ標準)と合わせた。標準条件を使用し、G5-RCTスペクトルマトリクスを備えるAB3730XL DNAアナライザーにおいて、サンプルを分析した。次いで、データをGeneMapper(登録商標)バージョン4.0(Applied Biosystems, 2005)へインポートした。PCRフラグメントサイズに従って、対立遺伝子に数値を割り当てた。
【0143】
結果および考察
単一細胞の細胞学および他の細胞内評価
細胞壁および細胞分裂。細胞培養の間、増殖および分化が生じ、細胞の形状および構造は細胞壁に依存する。単一細胞は、典型的な円形の細胞を示す3〜10倍のサイズ増加を伴う等方性増殖を示した。細胞壁構造を理解するために、カルコフロール(セルロースへの結合親和性を有する白色化剤)を使用した。単一細胞において、別個の円形細胞壁が観察された。細胞壁は動的構造であり、これは、細胞形状を決定することにおいて重要な役割を果たし、環境因子と相互作用する。観察した単一細胞の大部分は球状細胞を示したが、壁板を伴って分裂する細胞を見ることができた。乾燥重量の増加は、これらの単一細胞において細胞分裂が生じることの別の表示である。MTIにおける培養の14日後、単一細胞をMTIフリー培地へ移した場合、細胞は凝集体懸濁液を再構築し、これは等方性増殖の可逆性を示している。
【0144】
形質膜
形質膜は、全ての細胞内容物を封入する細胞の重要な成分の1つである。それは細胞壁の輪郭を描き、細胞内部と環境との間に最終フィルターを提供する。両親媒性FMスチリル色素は、生きている真核細胞における細胞小器官構成および小胞輸送を研究するために有用である(Bolteら,2004)。最初、FM色素は形質膜(PM)へ集中し、次いで液胞および小胞中へ次いでエンドソーム中へエンドサイトーシスによって取り込まれる。FM4-64(膜選択的蛍光色素)は形質膜を染色し、次いで、細胞内の他の細胞小器官へインターナリゼーションされる(Uedaら,2001年)。染色の5分後、単一細胞蛍光発光が形質膜において観察され、構造的欠陥は存在しない。100 nMイソキセベン(Isoxeben)がセルロース網状構造を除去するために使用される単一サンプルにおいて、FM4-64は、表面に対して広範囲な小胞を示した。膜は、5分以内に能動的なエンドサイトーシスを示した。
【0145】
核
MTI処理植物細胞中における核構成は、複雑であると報告され、核倍数性は、より高濃度で一般的であることが示される。サンプルを1 uM濃度のジフェニルピラゾールおよびトリメトキシフェニルシクロヘキセンにおいて7日まで調べた。核細胞小器官構造を種々の染料(Hoechst3325)を使用することによって分析した。JTNT1において、単一細胞は、3.5日培養において、1 uM濃度のジフェニルピラゾールおよびトリメトキシフェニルシクロヘキセンにおいて、1つの核または2つの核小体を有する単一の核を含有する。しかし、高濃度のこれらの化合物は、21日間培養されたニンジン細胞において見られたように、核倍数性を伴う、直径150〜300 uMまでの巨細胞を形成させる。これらの結果は、有糸分裂阻害は、研究した高濃度でのこれらの化合物の基本的な効果であることを示唆している。従って、MTIの最適濃度だけでなく、化合物の化学(これは、小管に対して非常に選択的な機能を有し、細胞分裂機能に類似する非選択的機能を有さない)を維持することが重要である。
【0146】
細胞骨格
細胞骨格は、いくつかの構造タンパク質、例えば、細胞構造の構造的完全性に関与するFアクチンおよびチューブリンからなる。細胞骨格インビボ動力学を、より鮮やかでありかつよりpH依存性でない緑色蛍光Alexa flour 488アクチンコンジュゲート(A12373)を使用して研究した。微小管およびアクチンフィラメントは、植物細胞の増殖および分化および生存について、植物細胞中における細胞骨格構造の維持のために必須の構造である(Kostら,2002年)。ファロイジンで染色された単一細胞は、アクチンフィラメント細胞骨格を示し、細胞構造は正常であって、フィラメントの欠陥のあるポジショニングは存在しなかった。
【0147】
分子解析
AFLP分析は、EcoRI(メチル化非感受性制限酵素)の使用に基づく10個のプライマー組み合わせを含んだ。プライマー対のうちの2つは、増幅せず(p6、およびp10)、プライマー対のうちの2つは、フラグメントのいずれに対しても相違を示さなかった(3pおよび8p)。プライマー対1p、2p、3p、4p、5p、7p、8p、9pについての明確に分離されたフラグメントの数は、それぞれ、47、39、31、42、47、32、7、および46であった。AFLP多型性は、JTNT1(第4継代培養サイクル)の14日グリセロール培養サンプルを除いて、メチル化非感受性(即ち、EcoRI-MseI)プライマー組み合わせで処理した全てのサンプルにおいて検出されなかった。対照的に、グリセロール培養サンプルについての全ての他のサンプルにおいて、多型フラグメントは同定されなかった。スクロース処理されたサンプルは、テストしたプライマー組み合わせのいずれについてもフラグメントについての多型性を示さなかった。予想されるように、少なくとも3継代培養サイクルについて、単一細胞サンプルにおける差異は存在しなかった。しかし、4継代培養サイクル、グリセロール培養における多型性は、スクロースの欠如によって課せられたストレス(これは、不安定性を誘発したようである)に加えて前記化合物の連続存在に起因し得る。多型性を示さないJTNT1単一細胞培養物における差異は、シンプルな炭素源グリセロールは、微小管を安定化させることが公知であるが、特にマイクロチューブリン阻害剤(MTI)の長期間の存在下において、多くの細胞機能を支持できない場合があることを示唆している。いずれにしても、単一細胞処理を、ゲノム不安定性問題なしに、少なくとも4継代培養サイクルの間、ジフェニルピラゾールで、テストした濃度範囲内で首尾よく行うことができた。
【0148】
プライマー5pについての2多型のスナップショットをとった。継代培養物4は、130 bpフラグメント挿入および131 bpフラグメント欠失を有した。
【0149】
プライマー対組み合わせを伴うメチル化非感受性酵素EcoRIおよびMseIの使用を含むAFLPプロフィールを測定した。4継代培養サイクルについての全てのサンプルは、単形性であったが、第4継代培養サイクルでのグリセロールのプロフィールは、種々の座で多形性であった。
【0150】
(表2)使用したAFLPプライマー組み合わせの詳細および観察された対応のバンド数を提供する。Suc-X、NT1B-スクロース培地中における単一細胞;Gly-X、NT1B-グリセロール培地中における単一細胞;Cont-Suc、スクロース中における対照JTNT1懸濁凝集体;Cont-Gly、グリセロール中における対照JTNT1懸濁凝集体
【0151】
均一性の分子遺伝学的評価
AFLP多型性(使用した10プライマー組み合わせのうち9プライマー組み合わせについてのグリセロール増殖単一細胞懸濁液の第4継代培養サイクルにおいて)が、この研究において見られた。全ての観察した可変性は、EcoRI/MseIを使用することによって作製されたフラグメントに関する。組織培養の間のメチル化状態の増加が、葉(Smuldersら 1995年)およびエンドウの組織培養再生物(Cecchiniら 1992年)と比較した場合の、トマトカルスについて以前報告された。従って、メチル化に基づく変化をさらに評価するために、メチル化感受性PStI/MseI組み合わせでのさらなる評価が行われ得る。
【0152】
付記−実施例13
タバコ細胞懸濁液/カルス組織からのCTAB DNA抽出
1.約25 mgの凍結乾燥組織を2mlエッペンドルフチューブ中へ量り分ける。
2.組織を含むチューブ中へステンレススチールビーズを配置し、geno-グラインダーまたはペイントシェーカー上で約1分間振盪する。(Geno-グラインダーは500ストローク/分に設定)。ビーズを除去し、穏やかにチューブを軽くたたき、組織凝集を減少させる。
3.1 ml抽出緩衝液を添加し、チューブを軽くたたき、組織凝集を減少させ、組織を緩衝液へ入れ、65℃で2時間、両側に穏やかに混合しながらインキュベートする。室温へ冷却する(約10分)。
抽出緩衝液(250ml)
Tris-HCl 25ml
NaCl 29.2g
Na EDTA 12.5ml
CTAB 6.25g
PVP 3.75g
水(250 mlの最終量まで添加する)
4.0.75 mlの25:24:1フェノ(Pheno)/クロロホルム/イソアミルアルコールpH 8を抽出緩衝液へ添加し、5分間手で穏やかに揺する。10,000 rpmで5分間遠心分離し、相を分離させる。注意深く水相を新しいチューブへ移す。
5.フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール混合物の代わりに24:1クロロホルム/オクタノールを使用して、工程4を繰り返す。
6.等体積で上澄みへイソプロパノールを添加し、室温で1時間静置する。
7.10,000 rpmで10分間チューブを遠心分離し、チューブの底にペレットを維持するように注意しながら上澄みを捨てる。
8.0.5mlの70%エタノールおよびRNアーゼ混合物を添加し、DNAペレットを洗浄し、10,000 rpmで1分間遠心分離する。(1:1000 Rnアーゼ/エタノール)。
9.上澄みを注意深く捨て、70%エタノールのみでの洗浄を繰り返す。室温で3時間静置するかまたは約5分間サンプルをエバポレーションする(rotovap)ことによって、完全にペレットを乾燥させる。
10.アルコールが1滴も存在しなくなってから、65℃へ予め温めた0.2ml 1X Tris EDTA緩衝液にペレットを溶解する。サンプルを室温で一晩静置し、完全に再懸濁させる。
11.翌朝、チューブを穏やかに揺すり、混合する。サンプルをアガロースゲルにおいて泳動させ、RNAの分解および存在を確認し、定量する。
【0153】
実施例13の参考文献
【0154】
実施例14−タバコBY2単一細胞のプラスチド形質転換
プラスチド形質転換のための準備における単一細胞の開始
4 mlのタバコBY2懸濁液(7日サイクルに維持した定常期増殖における)を、フォームストッパーを備えた125 mL振盪フラスコ中に含有された培地A[LS塩(Phyto Technology Laboratories, L689)、120 g/Lスクロース、1 mg/Lニコチン酸、1 mg/LピリドキシンHCl、10 mg/LチアミンHCl、および20 nMジフェニルピラゾール(DPP)]または培地B[LS塩、120 g/Lスクロース、1 mg/Lニコチン酸、1 mg/LピリドキシンHCl、10 mg/LチアミンHCl、2.5 mg/Lベンジルアミノプリン(BAP)および20 nM DPP]のいずれかから構成された新鮮な培地26 mLへ添加した。フラスコを、7日間、28℃の温度で、暗所中、125 rpmの速度でロータリーシェーカー上に置いた。
【0155】
形質転換実験
BY2懸濁培養物(上述したように増殖)を新鮮な培地で1.0のOD650へ希釈することによって、形質転換実験を開始した。各形質転換標的について、1.5 mlの希釈懸濁液を、真空濾過装置の上部に配置された滅菌濾紙上にピペットで取った。懸濁細胞を、濾紙の表面にわたって等しく堆積させた。濾紙および細胞を、ボンバードメント培地[MS基本塩、ビタミンB5、18.2 g/lマンニトール、18.2 g/Lソルビトール、30 g/Lスクロース、1 mg/L BAP、0.1 mg/L 1-ナフタレン酢酸(NAA)、8 g/L TC寒天(PhytoTechnology Laboratories, A175)へ移した。
【0156】
単一細胞プラスチド形質転換のためのプラスミド構築物
この実験において使用したDNA構築物をpDAB3969と呼んだ。構築物エレメントは、タバコ葉緑体ゲノム由来の16S trnIおよびtrnA配列に隣接した。2つの遺伝子、aphA-6およびnptIIを、それぞれ、Prrn plus T7遺伝子10およびPpsbAプロモーターによって駆動される選択マーカーとして使用した。T7遺伝子10もまた、関心対象の遺伝子、TurboGFPを駆動する。
【0157】
BY2単一細胞の微粒子銃処理
細胞を、ボンバードメント前の4時間、ボンバードメント培地上に置いておいた。作製した標的に、Bio-Rad PDS-1000/He Delivery Systemを使用してボンバードした。金粒子(0.4 μm、Inbio Gold Melbourne, Australia)を作製し、DNAを、標準方法を使用してそれらの表面上に沈殿させた。
【0158】
標的プレートに、ストッピングスクリーンから9 cmの距離で、28インチ水銀真空と共に、1100 psiでボンバードした。次いで、プレートを1日回復期間の間、静置した。次いで、濾紙および組織を培地C[LS塩、120 g/Lスクロース、170 mg/Lリン酸一カリウム,無水、0.6 mg/Lチアミン-HCl、0.2 mg/L 2,4-D、8 g/L TC寒天および100 mg/Lカナマイシン]へ移し、耐性コロニーが現れるまで元の選択プレート上に置いた。耐性コロニーが直径4〜5 mmに増殖した時点で、それらをゲル培地Cを含む個々のプレート上へ単離し、PCR分析についてサンプル化されるのに十分にそれらが大きくなるまでバルク化した。
【0159】
結果および考察
BY2懸濁株を、7日間、培地Aおよび培地B中において培養した。5つの標的プレートを、培地Aにおいて増殖させた細胞から作製し、5つのさらなるプレートを、培地Bにおいて増殖させた細胞から作製した。これらの2つの培地を、スクロース含有量を増加させ、オーキシン2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)を除去し、培地Bにおいて、サイトカイニンBAP(1, 2)を添加することによって、大きなアミロプラストを作製するように設計した。大きなアミロプラストは、微粒子銃形質転換についてのより大きな標的として役立った。20 nM DPPを含有した培地は両方とも単一細胞を作製した。ボンバードされたプレートは、培地A処理細胞から3個のカナマイシン耐性コロニーを作製し、培地B処理細胞から2個の耐性コロニーを作製した。
【0160】
各コロニーからのサンプルを、分子解析のためにサンプル化した。DNaseyプロトコルを使用してDNAを抽出し、以下のプライマーセットを使用するPCRによってアリコートを分析した。
【0161】
形質転換構築物のプライマー増幅されたセグメント。プライマーMAS401は、trnAフランクの末端を越えてネイティブタバコプラスチドDNA 83塩基対においてランディングし、プラスチドゲノムへの組込みを実証する。
【0162】
プライマーセット2、3、4、および5についてのPCR反応は、5個全てのサンプルについて陽性反応を生じさせた。野生型(非形質転換)BY2懸濁細胞またはタバコ植物対照由来のDNAは、バンドを生じさせなかった。従って、PCR結果は、3つ全ての導入遺伝子の存在およびプラスチドゲノム中への組込みを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無傷の細胞壁を含む、単離された単一の植物細胞。
【請求項2】
グリセロールと、ペクチン分解酵素およびチューブリン脱重合化合物からなる群より選択される分離剤とを含有する培地中において、無傷の細胞壁を含む植物細胞を培養する工程を含む、請求項1記載の細胞を産生するための方法。
【請求項3】
前記培地が液体培地であり、前記細胞が懸濁液中にある、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記分離剤がチューブリン脱重合化合物である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記チューブリン脱重合化合物がコルヒチンおよびジニトロアニリンからなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記チューブリン脱重合化合物が以下の式に合致する、請求項4記載の方法:
式中、
X=CO2R、CH2CO2R、CH2CH2CO2R、(CH2)3CO2R、OCH2CO2R、OCH(CH3)CO2R、OC(CH3)2CO2R、CH2OCH2CO2R、CH2CH(CO2CH2CH3)CO2R、またはOCH(CO2CH2CH3)CO2R
Y=CN、Cl、Br、F、またはNO2
Ar1=非置換フェニル、非置換ピリジン、1〜3置換フェニル、1〜3置換ピリジン、またはハロゲンもしくはCNで置換されている
Ar2=非置換フェニル、非置換ピリジン、1〜3置換フェニル、1〜3置換ピリジン、またはハロゲンもしくはCNで置換されている
R=H、または炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖エステル。
【請求項7】
前記チューブリン脱重合化合物が、4-クロロ-1,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)-酢酸エチルエステルである、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記チューブリン脱重合化合物が、
である、請求項4記載の方法。
【請求項9】
前記分離剤が、ペクチナーゼおよびペクトリアーゼからなる群より選択される酵素である、請求項2記載の方法。
【請求項10】
藻類細胞、双子葉植物細胞、単子葉植物細胞、下等導管細胞(lowever vascular cell)、および非導管細胞(non-vascular cell)からなる群より選択される、請求項1記載の細胞。
【請求項11】
請求項2記載の方法で単離細胞を調製する工程、該細胞を異種ポリヌクレオチドで形質転換する工程、および形質転換された細胞を選択する工程を含む、請求項1記載の細胞を形質転換するための方法。
【請求項12】
前記選択工程が、マーカーフリーの選択を使用する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項1記載の細胞から増殖させた複数の細胞の培養物であって、該複数の細胞が均一発現性である、培養物。
【請求項14】
トランスジェニックである、請求項1記載の細胞。
【請求項15】
トランスプラストミック(transplastomic)である、請求項1記載の細胞。
【請求項16】
ハイスループットプロセス法である、請求項2記載の方法。
【請求項17】
前記形質転換工程が、ポリエチレングリコール、エレクトロポレーション、微粒子銃(biolistic)、およびナノ粒子からなる群より選択される方法を使用して行われる、請求項10記載の方法。
【請求項18】
タバコ細胞、ニンジン細胞、トウモロコシ細胞、およびシロバナヨウシュチョウセンアサガオ細胞からなる群より選択される、請求項1記載の細胞。
【請求項19】
前記培地がゲルおよび半固体培地からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項1】
無傷の細胞壁を含む、単離された単一の植物細胞。
【請求項2】
グリセロールと、ペクチン分解酵素およびチューブリン脱重合化合物からなる群より選択される分離剤とを含有する培地中において、無傷の細胞壁を含む植物細胞を培養する工程を含む、請求項1記載の細胞を産生するための方法。
【請求項3】
前記培地が液体培地であり、前記細胞が懸濁液中にある、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記分離剤がチューブリン脱重合化合物である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記チューブリン脱重合化合物がコルヒチンおよびジニトロアニリンからなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記チューブリン脱重合化合物が以下の式に合致する、請求項4記載の方法:
式中、
X=CO2R、CH2CO2R、CH2CH2CO2R、(CH2)3CO2R、OCH2CO2R、OCH(CH3)CO2R、OC(CH3)2CO2R、CH2OCH2CO2R、CH2CH(CO2CH2CH3)CO2R、またはOCH(CO2CH2CH3)CO2R
Y=CN、Cl、Br、F、またはNO2
Ar1=非置換フェニル、非置換ピリジン、1〜3置換フェニル、1〜3置換ピリジン、またはハロゲンもしくはCNで置換されている
Ar2=非置換フェニル、非置換ピリジン、1〜3置換フェニル、1〜3置換ピリジン、またはハロゲンもしくはCNで置換されている
R=H、または炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖エステル。
【請求項7】
前記チューブリン脱重合化合物が、4-クロロ-1,5-ジフェニル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)-酢酸エチルエステルである、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記チューブリン脱重合化合物が、
である、請求項4記載の方法。
【請求項9】
前記分離剤が、ペクチナーゼおよびペクトリアーゼからなる群より選択される酵素である、請求項2記載の方法。
【請求項10】
藻類細胞、双子葉植物細胞、単子葉植物細胞、下等導管細胞(lowever vascular cell)、および非導管細胞(non-vascular cell)からなる群より選択される、請求項1記載の細胞。
【請求項11】
請求項2記載の方法で単離細胞を調製する工程、該細胞を異種ポリヌクレオチドで形質転換する工程、および形質転換された細胞を選択する工程を含む、請求項1記載の細胞を形質転換するための方法。
【請求項12】
前記選択工程が、マーカーフリーの選択を使用する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項1記載の細胞から増殖させた複数の細胞の培養物であって、該複数の細胞が均一発現性である、培養物。
【請求項14】
トランスジェニックである、請求項1記載の細胞。
【請求項15】
トランスプラストミック(transplastomic)である、請求項1記載の細胞。
【請求項16】
ハイスループットプロセス法である、請求項2記載の方法。
【請求項17】
前記形質転換工程が、ポリエチレングリコール、エレクトロポレーション、微粒子銃(biolistic)、およびナノ粒子からなる群より選択される方法を使用して行われる、請求項10記載の方法。
【請求項18】
タバコ細胞、ニンジン細胞、トウモロコシ細胞、およびシロバナヨウシュチョウセンアサガオ細胞からなる群より選択される、請求項1記載の細胞。
【請求項19】
前記培地がゲルおよび半固体培地からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2010−514449(P2010−514449A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544268(P2009−544268)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/088970
【国際公開番号】WO2008/083233
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(505412443)ダウ アグロサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/088970
【国際公開番号】WO2008/083233
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(505412443)ダウ アグロサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (10)
【Fターム(参考)】
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