説明

無光沢ポリアミド6繊維及びその製造方法

【課題】光沢が無く、ドレープ性も良好なポリアミド6繊維及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の繊維は、二酸化チタンが繊維の重量対比1.5〜2.5重量%含まれており、50mgの繊維内に存在する長軸長さ5μm以上の二酸化チタン粒子の数が35〜95個であり、燐酸塩(ウェッチング剤)が二酸化チタンの重量対比0.1〜0.5重量%含まれている。また、本発明の製造方法は、二酸化チタンスラリーの製造時、ウェッチング工程ではウェッチング剤として燐酸塩を二酸化チタンの重量対比0.1〜0.5重量%添加し、濃度補正工程では水と共にカプロラクタムを投入し、二酸化チタンスラリーをポリアミド6の重合反応工程に投入する時は、ナフタレンスルホン酸塩も共に投入することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維内に二酸化チタンが多量に含まれているため、光沢が無いと共に、重量感(以下“ドレープ性”とする)に優れた無光沢ポリアミド6繊維及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド6繊維は、その機械的性質に優れるので、天然繊維を代えて衣類用として広く使われているが、金属的な光沢のため、冷たい感じと過度に軽い感じを与え、かつ透明すぎて感覚的な特性を重視する市場の要求を充足させられない問題があった。
【0003】
このような問題点を解消するために、ポリアミド6繊維の重合工程に消光効果を発現する無機物質を投入して光沢を無くしてドレープ性を向上させる方法が広く使われている。しかし、前記方法は、無機物質の投入量を繊維(ポリマー)の重量対比1.5重量%と高く設定する場合、無機物質の不均一な分散によって操業性が低下されると共に繊維物性も悪くなる問題があった。
【0004】
従って、従来は無機物質をポリアミド6繊維内に1.5重量%以上含有させられない限界があり、これによって繊維の金属光沢を無くすか、ドレープ性を向上させるのには限界があった。
【0005】
繊維内に無機物質を含有させる従来方法をより詳細に説明する。無機物質スラリーは、無機物質を水に浸すウェッチング工程と、該ウェッチング工程で凝集された無機物質を粉砕する粉砕工程と、濃度補正工程及び沈澱工程を経て製造される。次に、該スラリーをポリアミド6の重合反応工程に投入して無光沢ポリアミド6繊維を製造する。この時、無機物質としては主に平均直径0.3〜0.4μm程度の二酸化チタンを使用する。
【0006】
前記方法では、二酸化チタン本来の粒径のみによっては操業性及び繊維物性が低下されないが、前記ウェッチング工程で二酸化チタンが急激に凝集されるため、操業性及び繊維物性が低下する問題が発生する。
【0007】
上記のような従来方法においては、ウェッチング工程での二酸化チタンの凝集は必然的であると考えられる。従って、二酸化チタンをポリアミド6の重合反応工程に投入する前に、粒子の大きい二酸化チタンを分離した後、粒子の小さい二酸化チタンのみを投入する方法によって、ウェッチング工程での二酸化チタンの凝集問題を解決してきた。
【0008】
これにより、二酸化チタンスラリーの製造工程の収率が低下され、かつ分離工程が追加されることにより工程が複雑になり、重合反応工程に投入される二酸化チタンの粒径も不均一であった。
【0009】
従って、前記従来方法では、二酸化チタンを繊維(ポリマー)の重量対比1.5重量%以上投入する場合、直径の大きい二酸化チタン粒子によってパック(紡糸口金)の圧力が急上昇するようになり、二酸化チタンの不均一な分散により、繊維の張力が不均一となるため、紡糸口金の直下部の繊維の屈曲及び糸切れが激しくなる問題が発生した。
【0010】
このような従来方法では、操業性及び物性低下の問題によって、二酸化チタンの投入量を一定水準以上に設定することができず、これによりポリアミド6繊維の無光沢性とドレープ性の改善も制限されざるを得なかった。
【0011】
一方、特許文献1は、ポリアミドの重合段階で、二酸化チタンを添加することによりモノフィラメントの繊度が1.0デニール以下であるポリアミド極細繊維を高速紡糸方法によって製造する工程において、紡糸口金の直下部を加熱雰囲気に維持させることを特徴とする高速紡糸法によるポリアミド繊維の製造方法が開示されている。
【0012】
特許文献1発明の詳細な説明には、ポリアミドの重合段階で二酸化チタン1〜3重量%を添加することが記載されているが、前記特許文献1のすべての実施例では、ポリアミドの重合段階で二酸化チタン1.5重量%を添加していることが記載されている。
【0013】
その理由は、ポリアミドの重合段階で二酸化チタンを1.5重量%より多く添加する場合には、前述のように、二酸化チタンの不均一な分散によって操業性が低下され、かつ繊維物性も悪くなる問題が発生するためである。
【0014】
さらに、前記特許文献1は、ポリアミドの重合段階で1.5重量%以上の二酸化チタンを投入する場合に発生する上記のような問題点を解決するための具体的な手段、例えば、二酸化チタンスラリーの製造条件なども全く提示していない。
【0015】
従って、前記特許文献1の発明も、二酸化チタンの添加量が1.5重量%を超過する場合には、二酸化チタンの不均一な分散によって操業性及び繊維物性が低下される既存の問題が発生せざるを得なかった。
【0016】
一方、ポリアミド中での二酸化チタンの分散性を向上させるための従来技術として、特許文献2では、既存の粘度安定剤である酢酸を使用し、その上、アミン類の物質を、モノマーであるカプロラクタム対比0.05〜0.2重量部併用投入する方法が開示されている。
【0017】
しかし、前記特許文献2は、重合工程において、pH調節による二酸化チタン粒子などの表面間の斥力の増加によって、二酸化チタンの再凝集の防止には効果があるが、活性酢酸と二酸化チタンが接触する可能性があるので、再凝集を抜本的に遮断することは難しいという短所がある。また、通常の重合反応は250℃以上の高温で進行するので、アミン類の化合物の場合、炭素数が10以下であると、発火点や粘度などの重合条件が適合しないため、その効果が発現されないという問題が起きることもある。
【0018】
そして、酸とアミンを併用するため、投入当量比により重合反応性が異なることがある。したがって、最終ポリマーにおける分子量の変化や末端基の変化が発生する要因になることがある。
【0019】
他の従来技術である特許文献3には、酢酸を使用せず、カプロラクタム対比0.05〜0.2重量部の芳香族アミン類を投入する方法を開示している。
【0020】
この方法は、重合工程内における二酸化チタンの分散性は良好に維持することができるが、反応器の一部で過量のアミン類によってゼータ電位が減少されるので、全体として二酸化チタンの分散性が却って悪化する。さらに末端アミン基の増加によって溶融前後の相対粘度(RV)の変更幅が増加し、かつ最終製品の強度管理が困難である短所がある。そして、この方法は、濃染あるいは染差の改善を主目的として実施する方法として当業者らに知られている。上記のような物性問題を補完するために、反応性が無く、染色座として活用可能なアミン類を使用して濃染及び溶融前後の相対粘度(RV)の変更幅を最小化する方法も広く使われている。
【0021】
また上記の従来技術などは、全て、二酸化チタンスラリーの製造に対する詳細な技術は言及せず、重合工程における二酸化チタンの分散性をスラリー水準に維持することだけを目標としている。これは、分散性の良好な二酸化チタンスラリーを、経済的で効率的に製造することが重要であることを示している。
【0022】
そして、通常低分子のアミン類の化合物を使用する場合には、アミンの反応性によって重合反応が加速化される可能性があり、これにより最終ポリマーの色相が不良になる傾向を示す。
【0023】
本発明の目的は、ウェッチング工程における二酸化チタンの再凝集を效果的に防止することにより、二酸化チタンをポリマー内に均一に分散させて、操業性及び物性を低下させることなく、繊維内に多量の二酸化チタンを含有させることができる方法を提供することにある。
【0024】
他の本発明の目的は、二酸化チタンを多量含有することにより、光沢が無く、ドレープ性も良好なポリアミド6繊維を提供することにある。
【特許文献1】韓国公開特許第1999−0060536号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2003−0012336号公報
【特許文献3】韓国公開特許第2003−0034845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、ポリアミド6の重合反応段階に投入される二酸化チタンの直径を最小化させて、投入された二酸化チタンを均一に分散させることにより、操業性及び繊維物性が低下することなく、多量の二酸化チタンを繊維(ポリマー)内に添加できる方法を提供する。また、本発明は、適切な直径を有する多量の二酸化チタンが繊維内に均一に含まれているため、光沢が無く、ドレープ性に優れたポリアミド6繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
このような課題を達成するための本発明は、二酸化チタンが繊維の重量対比1.5〜2.5重量%含まれており、50mgの繊維内に存在する長軸長さ5μm以上の二酸化チタン粒子の数が35〜95個であり、燐酸塩(ウェッチング剤)が二酸化チタンの重量対比0.1〜0.5重量%含まれていることを特徴とする無光沢ポリアミド6繊維を提供する。
【0027】
また、本発明は、ウェッチング工程、粉砕工程、濃度補正工程、沈澱工程及び貯蔵工程を経て二酸化チタンスラリーを製造した後、該二酸化チタンスラリーをポリアミド6の重合反応工程に投入して無光沢ポリアミド6繊維を製造する方法であって、該ウェッチング工程ではウェッチング剤として燐酸塩を二酸化チタンの重量対比0.1〜0.5重量%添加し、濃度補正工程では水と共にカプロラクタムを投入し、二酸化チタンスラリーをポリアミド6の重合反応工程に投入する時は、ナフタレンスルホン酸塩も共に投入することを特徴とする無光沢ポリアミド6繊維の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明から製造されたポリアミド6繊維は、適切な直径を有する多量の二酸化チタンを均一に分散しているので、操業性及び繊維物性の低下を防止することができる。また、本発明のポリアミド6繊維は、適切な直径の二酸化チタンが均一に含まれているので、金属性の光沢が無く、ドレープ性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0030】
まず、本発明は、ウェッチング工程、粉砕工程、濃度補正工程、沈澱工程及び貯蔵工程を経て二酸化チタンスラリーを製造する。該ウェッチング工程では、分散媒の水に二酸化チタン粉末を50:50の割合で浸す。それから、ウェッチング剤として、燐酸ナトリウムなどの燐酸塩を二酸化チタンの重量対比0.1〜0.5重量%添加して攪拌する。
【0031】
通常のポリアミド6の重合反応は、主原料であるカプロラクタムに一定量の水を投入して開環反応を経た後、最終ポリマーを製造する重縮合反応が進行する。このように、反応系内に水が一定量含まれている状態で反応が進行する。従って、二酸化チタンスラリーの製造工程においても、経済的な条件の下、粉末状に存在する二酸化チタンを液状にするための分散媒として水が利用可能である。
【0032】
前記ウェッチング剤は、水と二酸化チタンとの親和性を増加させるため、ウェッチング工程のサイクルを短くし、ウェッチング工程直後の粒径をできるだけ最小化するために投入される。
【0033】
ウェッチング剤は、イオン結合と共有結合が共存する状態の物質である。初めに、電荷を通じて、水と二酸化チタンとの親和性を増大させ、さらに、以後の二酸化チタンの製造工程における凝集に関連する電気的な引力を制御する役割をする。
【0034】
ウェッチング剤を二酸化チタンの重量対比0.1重量%未満に投入する場合は、その投入効果がほとんど発現出来ない。また、0.5重量%を超過して投入すると、0.5重量%を投入した場合に比べ、親和性の増加程度がより小さくなるので、製造原価のみが上昇するようになる。また、極端に多量投入すると、凝集側面で逆効果を示す。
【0035】
しかし、これは、ウェッチング工程で最終の二酸化チタンスラリーが完成されることを意味するものではない。ウェッチング工程の主目的は、粉末状の二酸化チタンを分散媒の水に最も効率的に浸すことであり、また、以後の二酸化チタンスラリーの製造工程で良好な分散性を提供できるようにすることである。
【0036】
平均粒径0.3〜0.4μmの二酸化チタン粉末が本発明のウェッチング工程を経ると、二酸化チタンの平均粒径は約0.6μm程度となる。
【0037】
攪拌は、ウェッチング工程で発生する二酸化チタンの物理的な凝集問題を解決するために、低速で1時間程度、高速で1時間以上実施することが好ましい。攪拌速度は、攪拌槽の幾何構造と連係して適正水準を選定して実施する。但し、初期から高速で攪拌する場合、過多な攪拌発熱などによってウェッチング効率が低下することがある。初期は低速で攪拌してから、一定時間が経過した時点から高速で攪拌することが望ましい。
【0038】
前記ウェッチング工程の後、粉砕工程で、ウェッチング工程で製造された二酸化チタンスラリーをより微細化させて均一に分散させる。粉砕工程は、ジルコニウム充填物が20重量%程度充填されたサンドグラインダーを使用して2回程度繰り返すことが好ましい。しかし、本発明は粉砕工程を特に限定するものではない。
【0039】
粉砕時、二酸化チタンスラリーの流速は5〜20kg/分の水準に維持し、粉砕される二酸化チタンスラリーの温度を35〜50℃に維持することが好ましい。
【0040】
前記粉砕工程の後、粉砕された二酸化チタンスラリーが最も安定した状態を維持できる濃度になるように、二酸化チタンスラリーの濃度を補正する。
【0041】
分散媒の水を用いて濃度を補正することが最も好ましい。しかし、水を増量して濃度を補正する場合は、二酸化チタンスラリーの見かけ粘度が低下し、二酸化チタンスラリーの分散安定性が低下するため、二酸化チタン粒子が再凝集する要因となることがある。
【0042】
また、後の重合反応工程で水量が増加することにより、過多な開環反応が起きることになり、さらには重合速度が低下する問題などを引き起こす。したがって、本発明では、濃度の補正時、主原料のカプロラクタムを水と一定比率で混合して投入することを特徴とする。
【0043】
投入されるカプロラクタムの量は、二酸化チタンスラリーの合計量の重量対比25〜35重量%にすることが好ましい。その理由は、濃度補正段階の後、4日間の沈澱段階を経て最終の二酸化チタンスラリーが製造されるが、沈澱の面から、カプロラクタムの量が少ないほど沈澱による二酸化チタンの分級効率が上がるためである。
【0044】
そして、カプロラクタムの量が増加するほど、スラリー系の誘電定数が低下し、凝集が増加する。このような側面からもカプロラクタムの量がより少ないほど好ましい。そして、濃度補正の直後、濃度補正槽で1日間簡易沈澱を実施して最終沈澱の負荷を減らす。
【0045】
次いで、上記のように濃度補正及び簡易沈澱を経た二酸化チタンスラリーを沈澱処理する。該沈澱工程では、4日間の長時間の沈澱を通じて平均粒径が最小化された最終の二酸化チタンスラリーを製造することになる。
【0046】
沈殿槽での沈澱速度(または沈降速度)は、分散媒の粘度及び沈殿槽の高さなどには反比例し、分散媒の温度、重力加速度及び二酸化チタンの密度などには比例する。これらの変数の中で、工程で調整可能な変数としては、沈殿槽の高さと分散媒の温度などがあり、これらの変数等の適切な条件は次の通り選定する。
【0047】
沈殿槽で4日間の沈澱を通じて分級された最終の二酸化チタンスラリーの平均粒径が所望の水準に一致するかを測定した後、その結果によって上記の変数を調整する。
【0048】
本発明では、最終の二酸化チタンスラリー内の二酸化チタン粒子の平均粒径は、粒径分析機で測定した結果、0.38μmであった。二酸化チタンスラリー中の二酸化チタン粒子の濃度は、20℃で標準比重計で測定した結果、18.5〜22.0重量%であった。
【0049】
次に、分級された二酸化チタンスラリーを貯蔵する。この貯蔵工程では、工程投入直前のスラリーを貯蔵することにあるため、滞留時間をできるだけ縮めることが重要である。また、滞留中の沈降を防止するために、温度は低く保つことが好ましい。
【0050】
以上のように製造された二酸化チタンスラリーは、分散性に優れるので、従来技術で投入した含量以上を投入することができる。
【0051】
次いで、上記のように製造された二酸化チタンスラリーをポリアミド6の重合反応系に供給して無光沢ポリアミド6繊維を製造する。この時、本発明では、分散剤としてナフタレンスルホン酸塩を共に投入することを特徴とする。
【0052】
つまり、二酸化チタンスラリーが重合反応に投入されると、凝集が発生する。本発明では分散剤としてナフタレンスルホン酸塩を投入して電位を調整することにより、ポリアミド重合反応工程における二酸化チタン粒子の再凝集を制御する。本発明で投入した分散剤の量は、二酸化チタン粒子1kg対比30〜60ccとすることが好ましい。
【0053】
このように製造した本発明のポリアミド6繊維(ポリマー)は、二酸化チタン粒子の分散性に非常に優れ、二酸化チタンが繊維の重量対比1.5〜2.5重量%と多量に含まれていて、無光沢性とドレープ性に非常に優れる。また、本発明のポリアミド6繊維(ポリマー)は、50mgの繊維(ポリマー)内に長軸長さ5μm以上の二酸化チタン粒子の数が35〜95個である。
【0054】
また、本発明のポリアミド6繊維(ポリマー)は、燐酸塩(ウェッチング剤)が二酸化チタンの重量対比0.1〜0.5重量%含まれている。
【0055】
本発明の繊維を製造する操業性は、二酸化チタンが0.3〜0.4重量%含まれた従来のポリアミド6繊維の製造工程の操業性と同じ水準で良好である。
【0056】
本発明において、繊維(ポリマー)の各種物性は以下の方法で評価した。
【0057】
・粗大粒子の数
50mgのポリアミド6繊維(ポリマー)内に含まれている長軸長さ5μm以上の二酸化チタンの凝集粒子の数を意味する。250℃のホットプレート上にスライドグラス1枚を載せ、その上にガラスフィルム1枚を載せた後、その上に50mgの繊維(ポリマー)を載せ、溶融した後、カバーグラスで覆う。次に、200gの分銅を用いて押さえて薄く広げた後、合計倍率200倍の光学顕微鏡にて試料の全領域を走査しながら、5μm以上の大きさを有する二酸化チタンの凝集粒子の数を測定する。
【0058】
二酸化チタンの凝集粒子の数を測定するための試料製造法として、前記ホットプレート法以外の試料製造法としては、T型の紡糸口金を使った小型押出機を使用する方法もある。この方法は、小型押出機を用いて未延伸フィルムを製造して、キャスティングドラムによって冷却してから、好適な大きさで切って延伸機に供する。切られた未延伸フィルムを同時二軸延伸した後、熱処理して測定用試料を製造する。この時、小型押出機の温度は、大略260〜280℃であり、紡糸口金以後のキャスティングドラムは10℃に維持しながら、未延伸フィルムを製造する。未延伸フィルムは、約55℃で横・縦を各々3倍になるように同時二軸延伸させてから、約200℃で30秒間熱固定して最終の測定試料を製造する。
【0059】
・ウェッチング剤の含量
ポリアミド6繊維を湿式炭化及び酸化剤投入による分解工程によって前処理した後、誘導結合プラズマ質量分析器(VG ELEMENTAL社製、モデル名:Plasma Quad 3)にて測定する。
【0060】
・二酸化チタンの分散性
ポリアミド6繊維(ポリマー)をマイクロトームのカッターにて薄く切断した試片をスライドグラスの上に載せて、パラフィンで浸漬させた後、その上にカバーグラスを覆ってから、10個所を倍率625倍の光学顕微鏡を用いて透過写真を撮影する。撮影した各々の写真から二酸化チタンの凝集粒子の大きさ及び数を整理する。整理した10個の結果の中、最も良好な結果と最も悪い結果を除いた残りの8個の結果から二酸化チタン分散性を判断する。前記8個の結果の中、7個以上が優れると◎とし、5〜6個が優れると○とし、4個以下が優れると△としてそれぞれ表した。
【0061】
・操業性(F/D率)
操業性は、紡糸工程で生産されたドラムの総数に対する、全量巻き取られたプールドラムの数の比率を示すF/D率として示す。
操業性(F/D率)=(プールドラムの数/ドラムの総数)×100(%)
【0062】
・無光沢性
繊維をチューブ−ニッティドした後、パネラーの官能テストによって評価した。7年以上の経歴を有するパネラー5人の中で、4名以上が優秀であると評価すると◎とし、2〜3人が優秀であると評価すると○とし、1人以下が優秀であると評価すると△としてそれぞれ表した。
【0063】
・ドレープ性
チューブ−ニッティドした繊維から製造された布を直径25cmの円状に切断してから、これを直径12.5cmのシリンダーの上に載せて、布が下へ垂れる程度(ドレープ係数:F)で評価した。ドレープ係数(F)が0.3未満であると、◎とし、ドレープ係数(F)が0.3以上であると、△として表した。ドレープ係数(F)は下式によって求める。
【0064】
ドレープ係数(F)=(r−rd)/(rD−rd
【0065】
式中、rDは完全強撚織物の半径で、rdは完全弱撚織物の半径で、rは試片の半径を表す。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
<実施例1>
【0067】
平均直径0.3μmの二酸化チタンを水に50:50の比率で浸してから、燐酸ナトリウム(ウェッチング剤)を二酸化チタンの重量対比0.3重量%添加して攪拌し、サンドグラインダーにて粉砕した。水と、二酸化チタンスラリーの重量対比30重量%のカプロラクタムを共に使用して二酸化チタンスラリーの濃度を補正した。これを4日間浸漬して最終の二酸化チタンスラリーを製造した。次に、前記二酸化チタンスラリーを20%水溶液状態のナフタレンスルホン酸ナトリウム塩(分散剤)と共にポリアミド6の重合反応工程に投入してポリアミド6ポリマーを製造した。ポリアミド6ポリマーの重合反応の投入組成は、カプロラクタム100重量部、水5.3重量部及び酢酸0.1重量部から構成された。ここで、二酸化チタンスラリーはカプロラクタム100重量部に対して二酸化チタンの粒子量が1.8重量部になるように投入した。また、分散剤は二酸化チタンの粒子量1kg当り40ccになるように投入した。このように製造されたポリアミド6ポリマーを通常の紡糸直接延伸条件で紡糸して、70デニール/36フィラメントのポリアミド6繊維を製造した。製造された繊維の物性及び操業性を評価した結果を表2に示した。
<実施例2〜実施例7及び比較1〜比較2>
【0068】
二酸化チタンの粒子量、分散剤の投入量及びウェッチング剤の投入量を表1のように変えたことを除いては、実施例1と同じの工程及び条件でポリアミド6ポリマー及び繊維を製造した。製造された繊維の物性及び操業性を評価した結果を表2に示した。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、適切な直径を有する多量の二酸化チタンをポリアミド6繊維内に均一に分散させることができるので、操業性及び繊維物性の低下を防止できる。また、本発明のポリアミド6繊維は、適切な直径の二酸化チタンが均一に含まれているので、金属性の光沢が無く、ドレープ性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタンが繊維の重量対比1.5〜2.5重量%含まれており、50mgの繊維内に存在する長軸長さ5μm以上の二酸化チタン粒子の数が35〜95個であり、燐酸塩(ウェッチング剤)が二酸化チタンの重量対比0.1〜0.5重量%含まれていることを特徴とする無光沢ポリアミド6繊維。
【請求項2】
ウェッチング工程、粉砕工程、濃度補正工程、沈澱工程及び貯蔵工程を経て二酸化チタンスラリーを製造した後、該二酸化チタンスラリーをポリアミド6の重合反応工程に投入して無光沢ポリアミド6繊維を製造する方法であって、該ウェッチング工程ではウェッチング剤として燐酸塩を二酸化チタンの重量対比0.1〜0.5重量%添加し、濃度補正工程では水と共にカプロラクタムを投入し、二酸化チタンスラリーをポリアミド6の重合反応工程に投入する時は、ナフタレンスルホン酸塩も共に投入することを特徴とする無光沢ポリアミド6繊維の製造方法。
【請求項3】
該カプロラクタムの投入量が二酸化チタンスラリーの重量対比25〜35重量%であることを特徴とする請求項2記載の無光沢ポリアミド6繊維の製造方法。
【請求項4】
該ナフタレンスルホン酸塩の投入量が二酸化チタン粒子1kg当たり30〜60ccであることを特徴とする請求項2記載の無光沢ポリアミド6繊維の製造方法。

【公表番号】特表2006−507422(P2006−507422A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555104(P2004−555104)
【出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002523
【国際公開番号】WO2004/048652
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】