説明

無口金電球

【課題】信頼性が高く低コストで、かつ、電球として高効率な無口金電球を提供すること。
【解決手段】透光性気密容器3の圧潰封止ネック絞り部4により圧潰封止されている境界に、圧潰封止ネック絞り部4に絞り込まれて周方向に異なった湾曲に形成されたネック絞り部9を有し、該ネック絞り部9の肉厚は、湾曲が最大部では変更無く、湾曲が最小部では圧潰封止ネック絞り部4の側へ向かって徐々に肉厚を増加させて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の各種機器類の照明・表示用に使用されている小型の無口金電球に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から白熱電球で無口金電球は、自動車など車両の制動灯、方向指示灯あるいは尾灯などとして広く実用に供されている。(例えば、特許文献1参照)
近年、自動車の耐用年数が長期化しており、しかも、路線バスや陸送業者等にみられるように昼間点灯(DRL)に代表される長時間点灯も常用化されている。そのため、高効率で長寿命の白熱電球が要望されている。自動車用の白熱電球としては形状的には、ウエッジベース形ランプ(無口金電球)が採用されている場合が多い。
【0003】
ウエッジベース形ランプの形状と構造の一例については、図5(a)に側面透視図を、(b)に正面透視図をそれぞれ示している。図5(a)および(b)において、ウエッジベース形ランプ21は、ガラスバルブ22の一端部にガラスバルブ22を加熱し対向する一対のピンチャにより押圧圧潰して形成した圧潰封止ネック絞り部24が設けられている。また、ガラスバルブ22の内部には、圧潰封止ネック絞り部4により中間部が圧潰封止されて固定された一対のリード線25a、25bが、ガラスバルブ22の内部にガラス製の固定部材26を介して立設されている。
【0004】
また、ガラスバルブ22の内部にはキセノンやクリプトンなどの不活性ガスが封入されているとともに、ガラスバルブ22の内部に立設しているリード線25a、25bの先端間には光源を構成するフィラメント27が継線して張架されている。また、圧潰封止ネック絞り部24は横断面が中央に膨出状の排気管28が形成されて略矩形状をなしている。
【0005】
ウエッジベース形ランプ21の製造方法は次のとおりである。すなわち、バルブ22の内部にはキセノンやアルゴンなどの不活性ガスが封入されているとともに、バルブ22の内部に装着されるマウント部材(リード線25a、25b等)を一端が封止され他端に開口部を有する円筒ガラス製のバルブの内部に挿入し、リード線25a、25bの他端をバルブ22の開口部から導出し、ガラス製の排気管28をバルブ22の開口部の所定の位置に配置して、その後、バルブ22の開口部両側をガスバーナーで加熱し、両側から圧潰し気密に封止して圧潰封止ネック絞り部24を形成している。
【0006】
その後に、排気管28を介して封止したバルブ22の内部の空気を排気し、排気したバルブ22の内部に不活性ガス等を封入し、排気管28を加熱溶融して封止した。その後、排気管28の不要な部分を取り除き、さらに、バルブ22の圧潰封止ネック絞り部24から導出された一対のリード線25a、25bを折り曲げて電気的な端子部を形成しウエッジベース形ランプ21としての管球製品を形成している。
【0007】
自動車用白熱電球については、国際規格で基本形状も規定されている。したがって、輸出等を考慮すると基本形状については、国際規格の規定内での変更しか許容されない。そのため、高効率で長寿命の白熱電球の要望に対して、基本形状の大幅変更による効率向上を目指すことは好ましくない。
【0008】
そこで、長寿命化、高輝度化の要求をランプの基本形状を変更せずに実現するためには、ハロゲンランプ等で従来から一般的に知られているように、ランプの内部圧力を高く設定することがおこなわれている。それにより、光量アップのために高電流を流しても、フィラメント27の高温化による金属素材の蒸発が抑制されてフィラメント7断線が防止できる。その結果、高輝度化と同時に長寿命化の実現が可能となった。
【0009】
さらに、より低い熱伝導率のガスを使用すること、より不活性ガスの封入量を多くすることが行われ、一層の高輝度化と同時に長寿命化の向上が図られている。
【特許文献1】特開昭62−10854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のウエッジベース形ランプを含む白熱電球はバルブの材質として軟質ガラスを使用しているため、バルブの内部がガスを封入した状態で、大気圧以下に封入圧力が抑えられているのが一般である。そのため、バルブの内部に高圧ガスを封入すると、機械的強度の低い軟質ガラスは高圧に耐えられず、破裂してしまう場合が生じていた。
【0011】
一方、バルブの材質として、軟質ガラスよりも機械的強度の強い半硬質ガラス、あるいは、硬質ガラスと用いれば、バルブの破裂の問題は回避することができる。ただし、半硬質ガラス、あるいは、硬質ガラスの採用は、コスト高になり経済性を考慮すると好ましくない。
【0012】
本発明は、これらの事情に対処してなされたもので、信頼性が高く低コストで、かつ、電球として高効率な無口金電球を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、先端が封止され他端が開放している筒状の透光性容器の開放側近傍の側面を対向する2方向より圧潰封止し、内部に大気圧以上の不活性ガスが封入されている透光性気密容器と、前記圧潰封止ネック絞り部により中間部が圧潰封止されて一端側が前記透光性気密容器の内部に延在し他端側が前記透光性気密容器の外部に延在している一対のリード線と、前記透光性気密容器の内部で前記一対のリード線の先端部間に電気的に接続して張架されているフィラメントと、前記透光性気密容器の内部で前記一対のリード線間を固定保持する固定部材とを具備した無口金電球であって、前記透光性気密容器の前記圧潰封止ネック絞り部により圧潰封止されている境界には前記圧潰封止ネック絞り部に絞り込まれて周方向に異なった湾曲に形成されたネック絞り部を有し、該ネック絞り部の肉厚は、前記湾曲が最大部では変更が無く、前記湾曲が最小部では前記圧潰封止ネック絞り部側へ向かって徐々に肉厚を増加させて形成されていることを特徴とする無口金電球である。
【0014】
またこの無口金電球では、前記ネック絞り部は、前記圧潰封止ネック絞り部側へ向かっての肉厚の増加は、前記圧潰封止ネック絞り部側へ向かって徐々に肉厚を3倍まで増加させていることを特徴とする。
【0015】
またこの無口金電球では、前記ネック絞り部の前記湾曲が最小部は、前記圧潰封止ネック絞り部がプレス成型された両端部であることを特徴とする。
【0016】
またこの無口金電球では、前記ネック絞り部は、前記湾曲が最小部の外側の平均半径をRaとし、前記湾曲が最小部の内側の平均半径をRa1とした場合、前記Ra1の湾曲の開始位置は、前記Rbの湾曲の開始位置よりも管軸方向で上位にあり、かつ、Ra1>Raの関係であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、信頼性が高く低コストで、かつ、電球として高効率な無口金電球が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の無口金電球であるウエッジベース形ランプについて、実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
図1(a)は、本発明の実施形態の一例を示すウエッジベース形ランプの側面断面図で、(b)は、その正面断面図である。ウエッジベース形ランプ1は無口金の電球で、ガラスバルブ2(以下、単にバルブと略す)の透光性気密容器3の外径の直径は、原則としてφ30mm以下であり、例えば、φ20mmである。
【0020】
バルブ2の透光性気密容器3の底部側にはバルブ2を加熱し対向する一対のピンチャ(不図示)により押圧圧潰して形成された圧潰封止ネック絞り部4が設けられている。
【0021】
また、透光性気密容器3の内部には、圧潰封止ネック絞り部4により中間部が圧潰封止されて固定された一対のリード線5a、5bが、透光性気密容器3の内部にガラス製の固定部材6(ブリッジガラス)を介して立設されている。
【0022】
また、バルブ2の内部にはキセノンやアルゴンなどの不活性ガスが封入されているとともに、バルブ2の透光性気密容器3の内部に立設しているリード線5a、5bの先端間には光源を構成するフィラメント7が継線して張架されている。また、圧潰封止ネック絞り部4は横断面の中央に膨出状の排気管8が形成され、また、圧潰封止ネック絞り部4の横断面は長手方向に略矩形状をなしている。この圧潰封止ネック絞り部4の長手方向(図1(a)に示された面)の寸法は16mm程度である。また、短手方向(図1(b)に示された面で、横断面と直角になる厚さ方向)の寸法は3mm程度である。
【0023】
バルブ2は、ソーダライムガラスやアルカリ・アルカリ土類ケイ酸ガラス(通称:鉛フリーガラス)などの軟質ガラスで形成されている。組成の一例を重量比で例示すれば、SiO→70%、Al→2%、B→2%、RO(アルカリ土類金属酸化物)→11%、RO(アルカリ金属酸化物)→15%である。
【0024】
また、軟質ガラスの主な物理的特性は、一例を挙げれば、軟化点が665℃、徐冷点が480℃、歪点が440℃、熱伝導率(100℃)が1.1(W/m/k)で、熱膨張係数(30〜380℃)は、50×10−7/℃以上で、例えば、94.5×10−7/℃である。
【0025】
また、バルブ2の形状は、A形、G形、PS形、R形、T形やこれらの複合形あるいは板状体や皿状体などからなる平板形を任意に用いることができる。また、バルブ2は無色透明であったり着色、反射や散光などの光変換処理(生地自体によったり、表面に着色膜、反射膜、散光膜や蛍光体膜などの被膜や蝕刻などの処理などによる)がなされていても差し支えない。
【0026】
バルブ2の透光性気密容器3の内部には、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)またはこれらの混合物、及び窒素(N)、ハロゲン、ハロゲン化合物を含んだ不活性ガスが大気圧(約1.0MPa)以上の圧力で封入されている。
【0027】
すなわち、透光性気密容器3の内部の不活性ガスは熱伝導率が200×10−4w/mk以下で、ガス圧は1.0〜3.0MPaに規定されている。したがって、透光性気密容器3の内部の真空または不活性ガスが大気圧以上に封入されていているので、ランプとしての効率向上が図られている。
【0028】
なお、バルブ2の透光性気密容器3の肉厚については後で詳述するが、透光性気密容器3が圧潰封止ネック絞り部4へ連続している部位であるネック絞り部9の肉厚は、透光性気密容器3の他の部位に比べて厚く形成されている。
【0029】
バルブ2の内部のリード線5a、5bはジュメット線等が用いられ、気密を要するビーズやガラスバルブ21との封着部分(圧潰封止ネック絞り部4)では、バルブ2の材料である軟質ガラスと同じか近似した熱膨張係数になるようにしている。
【0030】
なお、バルブ2の内部のリード線5a、5bの中間位置の表面にはゲッター(不図示)が設けられている。このゲッターは、酸素を吸着したり、電球製造過程で混入した不純ガスを除去する。この不純ガスの除去は、この不純ガスとフィラメント7との化学反応によるフィラメント7の断線事故を防止することができる。
【0031】
これらの構成により、ウエッジベース形ランプ1は、バルブ2の外側に延在したリード線5a、5bの端部に電圧を印加することにより、フィラメント7に発光電流を流す。この発光電流によりコイル状フィラメント7は加熱されて発熱および発光する。
【0032】
ウエッジベース形ランプ1の製造方法は次のとおりである。すなわち、リード線5a、5b、フィラメント7、固定部材6等が一体化したマウント部材を一端が封止され他端に開口部を有する円筒ガラス製のバルブ2の内部に挿入し、リード線5a、5bの他端をバルブ24の開口部から導出し、ガラス製の排気管8をバルブ2の開口部の所定の位置に配置する。その後、バルブ24の開口部両側をガスバーナーで加熱し、両側(図1(a)で、矢印D1、D2方向)からプレス(不図示)により圧潰して気密に封止した圧潰封止ネック絞り部4により透光性気密容器3を形成する。
【0033】
その後に、排気管8を介して封止した透光性気密容器3の内部の空気を排気し、排気したバルブ2内に不活性ガス等を封入する。
【0034】
大気圧以上の不活性ガスを封入する方法は、フィラメント7、リード線5a、5bなどを成形した封止球に、バルブ2をヒータによって軟質ガラスの変形する温度までベーキングしながら排気管8を通して管内を真空にし、その後水素ガスを充満し雰囲気ガス中でフィラメント7に通電した後、液体窒素に漬す。バルブ2の内部を十分に冷却した後、キセノンガスを封入する。
【0035】
冷却状態において、ボイル・シャルルの法則により、封入ガスの体積は少なくなるので、透光性気密容器3の容積以上のガスを封入できる。しかる後、排気管8の不要な部分をバーナーで焼き切り、排気管8をアニールして封止する。その後、常温環境で放置し、常温に戻された透光性気密容器3の内部の封入ガスは、通常状態にもどり高圧封入が可能になる。
【0036】
さらに、バルブ2の封止部6から導出された一対のリード線5a、5bを折り曲げて電気的な端子部を形成しウエッジベース形ランプ1としての管球製品を形成している。
【0037】
次に、ウエッジベース形ランプ1における損傷として、バルブ2の破損とその対策について説明する。
【0038】
上述のように、軟質ガラスで形成された透光性気密容器3の内部に、不活性ガスが高圧封入されているので、点灯時のガスの応力増加に耐え切れず、ネック絞り部9分を基点にして破断してバルブ2の破裂が発生する場合が生じている。
【0039】
以下に、ネック絞り部9での破断の発生と原因について説明する。図2(a)は、バルブ2の透光性気密容器3のネック絞り部9について説明するためのウエッジベース形ランプ1の透光性気密容器の肉厚を示す側面断面図で、(b)は、その正面断面図である。
【0040】
また、図3(a)〜(c)は、図2(b)における透光性気密容器3の断面での膨張時の各部の応力負荷を模式的に示した説明図である。
【0041】
図3(a)は、図2(b)に示したA部の説明図である。すなわち、A部においては断面の交点A1は、90度で直交状態になっており、その交点A1に小さなR(例えば、外側が、2.5R、内側が4.5R)が形成されている。したがって、交点A1がほぼ直交点になる。この直交点には垂直方向および水平方向から共に、集中応力P1、P2が加わり、異なる方向の集中応力P1、P2同士が交差することになる。そのため、交点A1での透光性気密容器3の断面の負荷はきわめて大きくなり破断しやすい。
【0042】
図3(b)は、図2(b)に示したC部の説明図である。すなわち、C部においては断面の交点A2は、一方が垂直方向の直線であり、他方は曲線(例えば、曲率半径が10R)である。その交点A2の応力負荷は、直線側は集中応力P3になるが、一方の曲線側は無数の分散応力p1・・・pnなる。したがって、透光性気密容器3の断面の交点A2に加わる負荷はA部に比べれば少なくなり、A部よりは破断しにくい。
【0043】
図3(c)は、図2(b)に示したD部の説明図である。すなわち、D部においては断面の交点A3は、双方が曲線(例えば、曲率半径が10R)である。その交点の応力負荷は、双方の曲線はいずれも無数の分散応力p1・・・pnなる。したがって、透光性気密容器3の断面の交点A3に加わる負荷はA部は勿論、C部に比べても少なくなり、A部やC部よりも破断しにくい。
【0044】
従って、最も破断しやすいA部の機械的な強度を強化することが、透光性気密容器3の破断による破裂を防止する方策になる。したがって、ネック絞り部9での破裂の対策として、通常の工程以上に焼きこみを強くし、ネック絞り部9の湾曲形状に応じて、肉量を圧潰封止ネック絞り部4に近づくに従って徐々に増すことによって、問題の解決を図ることができた。
【0045】
以下にバルブ2の透光性気密容器3のネック絞り部9について、先に示した図2(a)および(b)により説明する。
【0046】
透光性気密容器3のネック絞り部9の肉厚は、前述のように、基本的には、図2(b)にA部として示したとおり、湾曲(曲率半径)が最小部である一例である圧潰封止ネック絞り部4の長手方向(フィラメント7が張架されている方向)は、記圧潰封止ネック絞り部4がプレス成型された両端部である。この湾曲の最小部では、透光性気密容器3の他の部位に比べて、1.0〜3.0倍ほどの範囲で、圧潰封止ネック絞り部4に近くなるに従って徐々に厚く形成されている。
【0047】
なお、湾曲が最小部であるのが、圧潰封止ネック絞り部4の長手方向になるのは、圧潰封止ネック絞り部4を両側からプレスして成型した結果が長手方向になる製造工程による。
【0048】
一方、図2(a)にB部として示した、湾曲が最大部である一例である圧潰封止ネック絞り部4の短手方向(フィラメント7が張架されている方向と直角方向)になる。このB部では、透光性気密容器3のネック絞り部9の肉厚は、透光性気密容器3のストレートの部位と同じで特に変化はしていない。
【0049】
なお、上述の説明で、圧潰封止ネック絞り部4の長手方向(短手方向)と、フィラメント7が張架されている方向とを関連付けて説明したが、それは、説明の便宜上で、あくまでもフィラメント7が水平方向に張架されている場合に限る。なお、フィラメント7は垂直方向に張架される場合もあるので、本質的には圧潰封止ネック絞り部4の長手方向(短手方向)とフィラメント7の張架方向とは直接的な関係はない。
【0050】
また、透光性気密容器3のネック絞り部9の肉厚は、湾曲が最小部である圧潰封止ネック絞り部4の長手方向と、湾曲が最大部である圧潰封止ネック絞り部4の短手方向との間で徐々に変化している。
【0051】
次に、ネック絞り部9の異なる湾曲間の関係について、図2(a)および(b)を参照して説明する。
【0052】
側面断面の湾曲であるB部は、(例えば、開度は130度で、内側は2.5R)の外側曲げの半径(平均r);Rbである。
【0053】
また、正面断面の湾曲であるA部の外側の半径(平均;)Raと、正面断面の湾曲であるA部の内側の半径(平均);Ra1との関係は、
Ra1の湾曲の開始位置は、Rbの湾曲の開始位置よりも透光性気密容器3の管軸方向(ウエッジベース形ランプ1の管軸方向)で上位にあり、かつ、Ra1>Raの関係になっている。
【0054】
すなわち、正面断面の湾曲であるA部の外側曲げ半径;Ra(平均)は、正面断面の湾曲であるA部の外側曲げ半径;Ra(平均)より小さく設定している。しかも、Ra1の湾曲の開始位置は、Rbの湾曲の開始位置よりも透光性気密容器3の管軸方向で上位にあるように形成されている。
【0055】
次に、上述の構成によるウエッジベース形ランプ1と従来のウエッジベース形ランプ1との比較試験結果について説明する。
【0056】
なお、本実施形態で説明したウエッジベース形ランプ1は、透光性気密容器3のストレート部位の肉厚は0.8mmとし、ネック絞り部9の肉厚は、2.4mmで3倍に調整した場合の試験結果を示す。
【0057】
試験では、室温下でウエッジベース形ランプ1に内圧が作用する場合の耐圧性能特性を調べる方法として、静水圧試験を用いた。
【0058】
静水圧試験を用いた主たる理由は、点灯時破壊の場合
1.ランプ破片が周囲と衝突して2次的な破面を形成する。
2.破片が1mm以下とかなり小さくなる事が多いなどの問題があり、破断面解析から破壊開始位置や破壊原因を調べることは困難な場合が多い。
それに対して、静水圧試験では、水の膨張率がガスよりもかなり小さいため、破壊後の破片の飛散が抑制され、ランプの破壊位置から、室温下における耐圧性の最も低い場所を調べることが容易であるためである。
【0059】
具体的には封止球を用い排気管8から水圧を加えて破壊応力を調査して規定した。
【0060】
図4(a)および(b)は試験結果を示すグラフで、(a)は、本発明の場合であり、(b)は、従来の場合である。図4(a)および(b)のグラフで、縦軸は、負荷圧力(Mpa)であり、横軸はサンプル数である。なお、サンプル数はそれぞれ20個である。
【0061】
すなわち、試験の結果、本発明の実施形態で示した開発品のネック絞り部9の肉厚を3倍にしたときは、従来品よりも耐圧強度が上がることを示している。
【0062】
なお、ネック絞り部9の肉厚を厚くすれば強度が増す方向であると考察できるが、ネック絞り部9の肉厚を4.0mm以上にした場合は、電球リード線5a、5bを支えるブリッジガラス(固定部材6)に干渉するので、構造的にネック絞り部9の肉厚は従来品の3倍までが適切であるといえる。
【0063】
また、図3(a)に示したように、今回の実験で開発品の耐圧は3.1MPaである。
【0064】
なお、ガス量の増大と共に経済性が悪化するため、透光性気密容器3のストレート部位の外径がφ20mmで、肉厚が0.8mmのランプに使用できる。
【0065】
したがって、上述の実施形態の形状のウエッジベース形ランプ1は、従来の形状のウエッジベース形ランプに比べて、耐圧強度が増したことを実証できた。
【0066】
なお、本発明は上記の実施形態のそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(a)は、本発明の実施形態の一例を示すウエッジベース形ランプの側面断面図、(b)は、その正面断面図。
【図2】(a)は、本発明の実施形態の一例を示すウエッジベース形ランプの透光性気密容器のネック絞り部について説明するための、透光性気密容器の肉厚を示す側面断面図、(b)は、その正面断面図。
【図3】(a)〜(c)は、図2(b)における透光性気密容器の断面での膨張時の各部の応力負荷を模式的に示した説明図。
【図4】(a)および(b)は試験結果を示すグラフで、(a)は、本発明の場合の試験結果を示すグラフ、(b)は、従来の場合の試験結果を示すグラフ。
【図5】(a)は、従来のウエッジベース形ランプの側面透視図、(b)は、その正面透視図。
【符号の説明】
【0068】
1…ウエッジベース形ランプ、2…ガラスバルブ、3…透光性気密容器、4…圧潰封止ネック絞り部、5a、5b…リード線、6…固定部材、7…フィラメント、8…排気管、9…ネック絞り部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が封止され他端が開放している筒状の透光性容器の開放側近傍の側面を対向する2方向より圧潰封止し、内部に大気圧以上の不活性ガスが封入されている透光性気密容器と、前記圧潰封止ネック絞り部により中間部が圧潰封止されて一端側が前記透光性気密容器の内部に延在し他端側が前記透光性気密容器の外部に延在している一対のリード線と、前記透光性気密容器の内部で前記一対のリード線の先端部間に電気的に接続して張架されているフィラメントと、前記透光性気密容器の内部で前記一対のリード線間を固定保持する固定部材とを具備した無口金電球であって、
前記透光性気密容器の前記圧潰封止ネック絞り部により圧潰封止されている境界には前記圧潰封止ネック絞り部に絞り込まれて周方向に異なった湾曲に形成されたネック絞り部を有し、該ネック絞り部の肉厚は、前記湾曲が最大部では変更が無く、前記湾曲が最小部では前記圧潰封止ネック絞り部側へ向かって徐々に肉厚を増加させて形成されていることを特徴とする無口金電球。
【請求項2】
前記ネック絞り部は、前記圧潰封止ネック絞り部側へ向かっての肉厚の増加は、前記圧潰封止ネック絞り部側へ向かって徐々に肉厚を3倍まで増加させていることを特徴とする請求項1記載の無口金電球。
【請求項3】
前記ネック絞り部の前記湾曲が最小部は、前記圧潰封止ネック絞り部がプレス成型された両端部であることを特徴とする請求項1または2記載の無口金電球。
【請求項4】
前記ネック絞り部は、前記湾曲が最小部の内側の平均半径をRa1とし、前記湾曲が最大部の外側の平均半径をRbとした場合、
前記Ra1の湾曲の開始位置は、前記Rbの湾曲の開始位置よりも前記透光性気密容器の管軸方向で上位にあり、かつ、Ra1>Raの関係であることを特徴とする請求項1または3のいずれか1項に記載の無口金電球。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−266725(P2009−266725A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117204(P2008−117204)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)