説明

無塩味噌若しくは減塩味噌又はこれらの抽出物含有機能性組成物

【課題】無塩味噌若しくは減塩味噌又はこれらの抽出物を主成分とする機能性組成物を提供することである。
【解決手段】無塩味噌若しくは減塩味噌又はこれらの抽出物を主成分とするトリプシン活性阻害組成物及びキモトリプシン阻害促進組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無塩味噌若しくは減塩味噌又はこれらの抽出物を主成分とする機能性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
味噌は、基本的に、蒸したり煮たりした大豆に、麹と塩を加えて容器に仕込み、熟成させた調味料である。古くは大宝令(701年)にその原型の記載があり、鎌倉時代には、味噌汁として食されていた。それ以降、米を主食とする日本人にとって米飯の対となる国民食となり、日本全国においては、地域ごと特色ある味噌文化が生まれている。味噌は、麹の種類により、米味噌、麦味噌、豆味噌及び調合味噌に分類される。近年、大豆に含まれる有用な栄養機能について注目され、味噌についても研究されており、味噌には、抗癌性、抗酸化性、コレステロール低下能など様々な効用があることが確認されている。また、大豆には、イソフラボンという物質が含まれており、エストロゲン作用、抗酸化作用、抗癌作用、骨粗しょう症予防作用などの様々の生理作用があることが知られている。このイソフラボンは、発酵過程により人体への吸収に優れるアグリコン型のイソフラボンに変換されることが知られており、味噌の方が大豆よりもその効果が期待されている。
【0003】
このように味噌には様々な機能があるが、信州味噌や仙台味噌を代表とする辛口の米味噌、西日本に多い麦味噌、愛知・岐阜の豆味噌など、味噌には、塩分が11〜13重量%含まれており、含有量の多い食品である。五訂日本食品標準成分表においては、食塩摂取量を成人の場合10g/日以下にすることを目標にしているが、味噌汁1杯を食することにより2.4g前後の食塩を摂取することになるので、味噌に有用な機能が含まれているにも拘らず、塩分が多いことから多くの味噌を摂取するのが好ましくないとされている。
【0004】
このように味噌に含まれている塩分が多いため、特に腎臓疾患、高血圧、又は心臓疾患などのナトリウム摂取制限を必要とする病者用に、ナトリウム量として通常の味噌の半分以下の減塩味噌が特別用途食品(病者用食品)として規格されている。また、病者用でない一般食品として、ナトリウム量が通常の味噌より15重量%以上カットされた減塩味噌や低塩味噌(みその表示に関する公正競争規約施行規則第2条(4)に記載されている。)などが市販されている。さらに、特許文献1には、無塩味噌や無塩味噌をカプセルやペーストにしたものも提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平13−346536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、無塩味噌や減塩味噌の効能については、ほとんど研究されておらず、無塩味噌や減塩味噌がどのような効用を有するかが解明されていないのが現状である。
【0007】
そこで、本発明は、無塩味噌若しくは減塩味噌又はこれらの抽出物を主成分とする機能性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、トリプシン活性阻害作用及びキモトリプシン活性阻害作用などの新しい機能を有することを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、無塩味噌若しくは減塩味噌又はこれらの抽出物を主成分とするトリプシン活性阻害組成物及びキモトリプシン活性阻害組成物など機能性組成物である。また、本発明は、無塩味噌若しくは減塩味噌又はこれらの抽出物を主成分とするトリプシン活性阻害剤及びキモトリプシン活性阻害剤である。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、無塩味噌若しくは減塩味噌又はこれらの抽出物を主成分とする機能性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る機能性組成物の主成分である無塩味噌とは、大豆と麹を原料として作られるものであって、その製造過程において敢えて塩類を加えないものをいう。また、減塩味噌とは、大豆と麹を原料とし、その製造過程において、含塩率が5重量%以下となるように塩類が加えられたものをいう。これら無塩味噌及び減塩味噌には、摂取によって人体に害を及ぼさない範囲内の塩類を含んでも良い。
【0012】
本発明に係る機能性組成物の主成分である無塩味噌若しくは減塩味噌は、保存性を高めるためにアルコール(酒精)などの保存料を必要により加えることができる。また、水分活性を低くすることにより、例えば、水分活性が0.8以下の固形物又は半固形物にすることにより、日持ちを向上させることができる。水分活性は、乾燥工程によって低くすることができ、乾燥工程としては、特に限定されないが、ドラムドライ、連続真空ベルト、フリーズドライなどがある。このうち、味の変化がより少ない方法として、フリーズドライが好ましい。さらに、水分活性を低下させるため、カルシウム塩、カリウム塩などの塩類や、砂糖、デキストリン、澱粉などの糖類などを加えることができる。
【0013】
本発明に係る機能性組成物は、トリプシン及びキモトリプシンの阻害活性を有するプロテアーゼインヒビターとしての作用があり、糖尿病の予防に効果がある。
【0014】
本発明に係る機能性組成物に使用される無塩味噌は、大豆と麹を1:0.1〜10の割合で混合した後、4〜80℃で30分〜120日間発酵又は分解させることにより得ることができる。また、本発明に係る機能性組成物に使用される減塩味噌は、大豆と麹を1:0.1〜10の割合で混合した後、塩分が5重量%以下となるように、4〜80℃で30分〜120日間発酵又は分解させることにより得ることができる。
【0015】
本発明に係る機能性組成物は、錠剤、クッキーなどの菓子類、パン、スープ、飲料、及び高齢者用食品など様々な食品に含ませて利用することができる。
【実施例】
【0016】
次に、本発明に係る無塩味噌の実施例について説明する。先ず、表1に示す配合で大豆及び麹を混合し、表1に示す発酵分解条件で混合物を発酵分解させることによって、実施例1乃至6に係る無塩味噌を得た。また、比較例1として大豆粉末、比較例2として市販の赤味噌、比較例3として市販の田舎味噌をそれぞれ用意した。
【0017】
【表1】

【0018】
実験例1
次に、実施例1乃至6に係る無塩味噌、比較例1に係る大豆粉末、並びに比較例2及び3に係る味噌について、トリプシン及びキモトリプシンの活性を調べた。各試料5gを表2に示す各酵素反応用緩衝溶液10gに添加することにより各酵素反応用緩衝溶液のpHに調整した後に、蒸留水によって容量を50mlに調整し、10000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを濾過したものを試料溶液とした。
【0019】
【表2】

【0020】
0.04重量%のトリプシン又はキモトリプシンを0.1MPB溶液(pH7.6)に溶解したもの0.5mlに試料溶液0.5ml(ブランクとして、0.1MPB0.5ml)を加えて37℃で10分間インキュベートした。次いで、基質の蛋白質として4重量%カゼイン溶液0.5mlを加えて37℃で15分間、酵素反応させた。その後、12重量%TCA溶液2.5mlを加えて反応停止させ、37℃で20分間、さらに室温20分間放置した後に濾過を行ない、濾液をLowry法で発色させて750nmの吸収を測定し、数1に基づいて各酵素の阻害活性を求めた。トリプシンの阻害活性の結果を表3に、キモトリプシンの阻害活性の結果を表4に示す。
【0021】
【数1】

【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
表3及び4に示すように実施例1乃至6に係る無塩味噌は、比較例2及び3に係る味噌と同等のトリプシン及びキモトリプシンの阻害活性効果を有することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無塩味噌若しくは減塩味噌又はこれらの抽出物を主成分とする機能性組成物であって、トリプシン活性阻害組成物及びキモトリプシン活性阻害組成物のいずれかであることを特徴とする機能性組成物。
【請求項2】
水分活性が0.8以下の固形物又は半固形物であることを特徴とする請求項1記載の機能性組成物。



【公開番号】特開2006−143678(P2006−143678A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337886(P2004−337886)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【出願人】(391019049)宮坂醸造株式会社 (8)
【Fターム(参考)】