説明

無接点電力伝送装置

【課題】構成を簡素化し、製造コストを低減した無接点電力伝送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】交流電力を供給するための電力伝送回路51と、電力伝送回路51から交流電力が供給される複数の送電コイル11〜1Nと、複数の送電コイル11〜1Nから電磁誘導を用いて非接触で電力伝送される受電コイル10とを備える。送電コイルには、交流電力を供給するか否かを切り替えるスイッチ手段と、送電コイルの近傍に受電コイルの有無を検出する位置検出手段とを備える。
【効果】送電コイルと同じ数だけの制御回路や電力伝送回路を設ける必要が無いため、製造コストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の送電コイルを備える無接点電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチ出力の無接点電力伝送を実現するため、複数の送電コイルを使用した無接点電力伝送装置が用いられていた。図1にその一例を示す。
【0003】
図1は、2つの送電コイル11、12を備える送電側ユニット101と、送電コイル11、12から電磁誘導を用いて非接触で電力伝送される受電コイル10を備える受電側ユニット100とを構成する無接点電力伝送装置である。
【0004】
送電側ユニット101内の電力伝送回路51には、直流電源Vinより直流電圧が供給されている。電力伝送回路51は制御回路61により制御され、交流電力を出力する。電力伝送回路51の出力部には、送電コイル11と共振コンデンサ31が直列に接続されている。また、受電側ユニット100の位置を検出するための手段として、ホール素子41が送電コイル11の近傍に配置されている。また、ホール素子41の出力である検出信号S1は、制御回路61に供給されている。一方、電力伝送回路52、制御回路62、送電コイル12、共振コンデンサ32およびホール素子42についても同様に構成されている。
【0005】
受電コイル10を内蔵している受電側ユニット100には、位置検出手段として永久磁石40が設けられている。永久磁石40は、受電コイル10の近傍に配置されている。また、共振コンデンサ30が受電コイル10と並列に接続されている。受電コイル10の出力は、整流平滑回路50を介して二次電池などの負荷に供給される。
【0006】
送電コイル11に受電コイル10が近接すると、ホール素子41が永久磁石40の磁束を検出する。すると、制御回路61は検出信号S1に基づいて、電力伝送回路51の動作を開始させる。そして、電力伝送回路51から直列に接続された送電コイル11と共振コンデンサ31に交流電力が供給され、送電コイル11から受電コイル10に電力が伝送される。ホール素子41が永久磁石40の磁束を検出しない場合、すなわち受電コイル10が送電コイル11の近接する位置に無い場合、制御回路61は電力伝送回路51の動作を停止させる。
【0007】
一方、送電コイル12に受電コイル10が近接すると、ホール素子42が永久磁石40の磁束を検出する。すると、制御回路62は検出信号S2に基づいて、電力伝送回路52の動作を開始させる。そして、電力伝送回路52から直列に接続された送電コイル12と共振コンデンサ32に交流電力が供給され、送電コイル12から受電コイル10に電力が伝送される。ホール素子42が永久磁石40の磁束を検出しない場合、すなわち受電コイル10が送電コイル12の近接する位置に無い場合、制御回路62は電力伝送回路52の動作を停止させる。
【0008】
送電コイルを3つ以上用いる場合、電力伝送回路、制御回路、共振コンデンサおよびホール素子は送電コイルと同じ数だけ設けられ、同様に接続される。
【0009】
このように、各電力伝送回路の出力部にそれぞれ送電コイルを接続し、各送電コイルと近接する位置にホール素子を配置する。そして、ホール素子が永久磁石の磁束を検知したとき、制御回路は受電コイルと近接している送電コイルに交流電力を供給するように電力伝送回路を制御する。すなわち、所望の送電コイルに受電コイルが近接したときだけ、対応する電力伝送回路から交流電力が供給される。このようにして、送電側ユニット101から受電側ユニット100に対して電力伝送がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−87214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、このような無接点電力伝送装置では、制御回路や電力伝送回路が送電コイルと同じ数だけ必要となり、製造コストが高くなるという問題があった。
【0012】
本発明は以上の問題を考慮してなされたものであり、製造コストを低減し、なおかつ低損失、低発熱の無接点電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、このような目的を達成するために、交流電力を供給するための電力伝送回路と、該電力伝送回路から該交流電力が供給される複数の送電コイルと、該複数の送電コイルから電磁誘導を用いて非接触で電力伝送される少なくとも1つ以上の受電コイルとを備える無接点電力伝送装置において、該送電コイルには、該交流電力を供給するか否かを切り替えるスイッチ手段と、該送電コイルの近傍に該受電コイルの有無を検出する位置検出手段とを備えることを特徴とする無接点電力伝送装置。
【0014】
また本発明は、交流電力を供給するための電力伝送回路と、該電力伝送回路から該交流電力が供給される複数の送電コイルと、該複数の送電コイルから電磁誘導を用いて非接触で電力伝送される少なくとも1つ以上の受電コイルとを備える無接点電力伝送装置において、該送電コイルには、該送電コイルの近傍に該受電コイルの有無を検出する位置検出手段を備え、該送電コイルと該電力伝送回路との間にスイッチ手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、前記スイッチ手段は第1および第2のN型MOSFETを備え、該第1および該第2のN型MOSFETのソース同士が接続され、該第1および該第2のN型MOSFETのゲート同士が接続されていることを特徴とする。
【0016】
また、前記位置検出手段は前記複数の送電コイルのそれぞれの近傍に配置する磁気検出素子と、前記受電コイルの近傍に配置する永久磁石からなることを特徴とする。もしくは、前記位置検出手段は前記複数の送電コイルのそれぞれの近傍に配置する受光素子と、前記受電コイルの近傍に配置する発光素子からなることを特徴とする。もしくは、前記位置検出手段は前記複数の送電コイルのそれぞれの近傍に配置する受信回路と、前記受電コイルの近傍に配置する発振回路からなることを特徴とする。
【0017】
また、前記電力伝送回路はフルブリッジ構成またはハーフブリッジ構成または1石式インバータからなることを特徴とする。
【0018】
また、前記送電コイルにさらに共振コンデンサを備えることを特徴とする。
【0019】
また、前記送電コイルと前記電力伝送回路との間に共振コンデンサを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、送電コイルと同じ数だけの制御回路や電力伝送回路を必要とせず、構成を簡素化することでき、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の無接点電力伝送装置の例
【図2】本発明の無接点電力伝送装置の第1の実施形態
【図3】本発明の無接点電力伝送装置の第2の実施形態
【図4】本発明の無接点電力伝送装置の具体的な内部構成の一例を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2は、本発明に係る無接点電力伝送装置の第1の実施形態を示す。図2に示す無接点電力伝送装置は送電側ユニット111と受電側ユニット100とを備える。
【0023】
送電側ユニット111は、電力伝送回路51、制御回路61、N個(Nは2以上の自然数)の受電コイル11〜1N、N個のスイッチ手段21〜2N、N個の共振コンデンサ31〜3NおよびN個のホール素子41〜4Nとを備える。
【0024】
電力伝送回路51には、直流電源Vinより直流電圧が供給されている。電力伝送回路51の出力は制御回路61により制御され、交流電力を出力する。電力伝送回路51の出力部には、送電コイル11、スイッチ手段21および共振コンデンサ31が直列に接続されている。また、送電コイル12、スイッチ手段22および共振コンデンサ32が、電力伝送回路51の出力部に直列接続されている。同じく、N個目の送電コイル1N、スイッチ手段2Nおよび共振コンデンサ3Nが、電力伝送回路51の出力部に直列接続されている。ホール素子41は送電コイル11の近傍に配置されている。また、ホール素子42は送電コイル12の近傍に配置されている。同様に、ホール素子4Nは送電コイル1Nの近傍に配置されている。このように、電力伝送回路51の出力部には、送電コイル11〜1Nが並列に接続されている。また、複数の送電コイル11〜1Nのそれぞれに対して、交流電力を供給するか否かを切り替えるスイッチ手段21〜2Nが設けられている。
【0025】
受電側ユニット100は、送電コイルから電磁誘導を用いて非接触で電力伝送される受電コイル10、共振コンデンサ30、永久磁石40および整流平滑回路50とを備える。永久磁石40は、受電コイル10の近傍に配置されている。また、共振コンデンサ30は受電コイル10と並列に接続されており、その出力は整流平滑回路50を介して、二次電池などの負荷に供給される。
【0026】
次に、スイッチ手段21〜2Nの動作について説明する。送電コイル11に受電コイル10が近接すると、ホール素子41が永久磁石40の磁束を検出する。すると、ホール素子41の検出信号S1によって、スイッチ手段21はオンに切り替わり、電力伝送回路51から直列に接続された送電コイル11と共振コンデンサ31に交流電力が供給される。そして、電磁誘導により送電コイル11から受電コイル10に対して電力伝送される。送電コイル11と対向する位置に受電コイル10が配置されていない場合、ホール素子41は永久磁石40の磁束を検出できない。このとき、スイッチ手段21はオフとなり、電力伝送回路51から直列に接続された送電コイル11と共振コンデンサ31に交流電力は供給されない。スイッチ手段22〜2Nについても、それぞれホール素子42〜4Nの検出信号S2〜SNに基づいて同様に動作する。
【0027】
このように、位置検出手段として用いた永久磁石40およびホール素子41〜4Nは、受電コイル10が送電コイル11〜1Nから電力伝送される位置に配置されたのを検出する。つまり、位置検出手段は、送電コイル11〜1Nのそれぞれの近傍に受電コイル10があるかないかを検出する。スイッチ手段21〜2Nは、それぞれホール素子41〜4Nの検出信S1〜SNに基づいて、受電コイル10が近接している所望の送電コイルからのみ電力伝送されるように切り替えられる。
【0028】
本実施形態では、電力伝送回路51の出力側に並列接続されているそれぞれの送電コイル11〜1Nに対して、電力供給を行うか否かを切り替えるスイッチ手段21〜2Nを電力伝送回路51の出力側に設けている。そして、受電コイル10が近接した送電コイルにのみ電力伝送回路51から交流電力を供給するようにスイッチ手段21〜2Nを切り替える。受電コイル10が近接する所望の送電コイルのみを動作させて電力伝送を可能とすることで、消費電力を低減できる。このような構成とすることで、送電コイルと同じ数だけの制御回路と電力伝送回路を設ける必要が無くなるため、構成を簡素化でき、製造コストを低減できる。
【0029】
なお、受電側ユニット100を複数台用いて、複数の送電コイルから同時に電力伝送を行ってもよい。また本実施形態において、各送電コイルには、各送電コイルに交流電力を供給するか否かを切り替えるスイッチ手段と、各送電コイルの近傍に受電コイルの有無を検出する位置検出手段とをそれぞれ一体に備えた構成としている。各送電コイルには、各送電コイルの近傍に受電コイルの有無を検出する位置検出手段をそれぞれ備え、各送電コイルと電力伝送回路との間にスイッチ手段を備えた構成としてもよい。
【0030】
次に、第2の実施形態について説明する。図3は、本発明に係る無接点電力伝送装置の第2の実施形態を示す。ここで、図2に示す無接点電力伝送装置と同一の要素については同一の符号を記し、その説明を省略する。
【0031】
図3に示す無接点電力伝送装置は、共振コンデンサを1個のみ使用する構成としたものである。送電側ユニット121内の電力伝送回路51の出力部には、直列に接続された送電コイル11およびスイッチ手段21が、共振コンデンサ31を介して接続されている。また、直列に接続された送電コイル12およびスイッチ手段22が、電力伝送回路51の出力部に共振コンデンサ31を介して接続されている。同様に、直列に接続されたN個目の送電コイル1Nおよびスイッチ手段2Nが、電力伝送回路51の出力部に共振コンデンサ31を介して接続されている。
【0032】
スイッチ手段21〜2Nの動作は、基本的に第1の実施形態と同じである。第1の実施形態では、各送電コイルにさらに共振コンデンサを備えた構成としているが、第2の実施形態のように、送電コイルと電力伝送回路との間に共振コンデンサを備えた構成とすることで、使用する共振コンデンサを1個のみとすることができる。本実施形態では、送電コイルと同じ数だけの共振コンデンサが必要ないため、より簡素な構成とすることができ、製造コストをより低減できる。
【0033】
第1および第2の実施形態において、同時に2つ以上の送電コイルに交流電力を供給することがないようにスイッチ手段21〜2Nを制御してもよい。この場合、受電コイル10と近接しているいずれか一つの送電コイルにのみ交流電力を供給するようにスイッチ手段を制御すればよい。例えば、マイコンなどを用いて、ホール素子の検出信号S1〜SNに基づいて各スイッチ手段を制御するスイッチ制御部を設ければよい。受電側ユニット100を複数台用いて、複数の送電コイルにそれぞれ各受電コイルが近接した場合でも、スイッチ制御部によって、いずれか一つの送電コイルのみを順番に動作させるようにスイッチ手段を制御すればよい。例えば、一方の送電コイルにより、一方の受電側ユニットの充電が完了したら、他方の送電コイルにより、他方の受電側ユニットの充電を開始するなどの制御を行えばよい。他にも、リニア出力のホール素子を用いて検出信号S1〜SNを比較して、受電コイル10と最も近接している送電コイルを優先的に動作させるようにしてもよい。また、複数のホール素子41〜4Nが同時に永久磁石40の磁束を検出してスイッチ手段21〜2Nが同時にオンしないよう、各ホール素子41〜4Nを配置してもよい。このようにスイッチ手段21〜2Nを制御することで、いずれの送電コイルを選択しても、送電コイル11〜1Nのインダクタンス値を同一にしたときに、同一の共振周波数を得ることができる。
【0034】
第1および第2の実施形態では、位置検出素子として永久磁石とホール素子を用いた。受電コイルと送電コイルの位置関係を検出できるものであれば、この実施形態に限定されない。例えば、ホール素子の代わりに磁気検出素子として、磁気抵抗素子や位置検出コイルなどを用いてもよい。磁気検出素子以外にも位置検出素子として、近接センサや光電発光素子と受光素子、発振回路と受信回路などを用いてもよい。また、送電側ユニット内の共振コンデンサは、送電コイルと直列共振回路を形成するだけでなく、並列共振回路を形成するように接続してもよい。
【0035】
次に、図4を用いて第2の実施形態における本発明の無接点電力伝送装置の具体的な内部構成の一例について説明する。図4は、送電コイルを2つとした場合の送電側ユニット121’の構成である。電力伝送回路51はフルブリッジ構成であり、制御回路61のプッシュプル出力信号により駆動されている。また、ホール素子41、42の検出信号S1、S2に基づいて、スイッチ手段21、22を制御するスイッチ制御部71を設けている。スイッチ制御部71は、対向する位置に受電コイル10が配置されていない送電コイルの動作を停止させ、また、複数の送電コイルが同時に動作しないようにスイッチ手段21、22を制御する。
【0036】
スイッチ手段21は、2個のN型MOSFET21a、21bを備える。MOSFET21aと21bはソース同士、ゲート同士が接続されており、寄生ダイオードのアノード同士が接続されている。そのため、MOSFET21a、21bがオフ時に各MOSFETの寄生ダイオードを通して電流が流れないように構成されている。また、MOSFET21aのゲート−ソース間には、ゲート−ソース抵抗が接続されている。MOSFET21aのゲートには、ゲート抵抗を介してダイオード81のアノードが接続されている。ダイオード81のカソードには、PNP型のデジタルトランジスタ91のコレクタが接続されている。デジタルトランジスタ91のエミッタには、直流電源Vinから直流電圧が供給されている。
【0037】
スイッチ手段22内の2個のN型MOSFET22a、22b、ダイオード82およびPNP型のデジタルトランジスタ92についても同様に接続されている。ゲート抵抗と直列にダイオード81、82が接続されているのは、逆バイアスによりMOSFET21a、21b、22a、22bが誤動作するのを防止するためである。
【0038】
また、スイッチ制御部71には、ホール素子41、42から検出信号S1、S2が供給されている。デジタルトランジスタ91のベースには、スイッチ制御部71から制御信号S1’が供給されている。同様に、デジタルトランジスタ92のベースには、スイッチ制御部71から制御信号S2’が供給されている。スイッチ制御部71から供給される制御信号S1’、S2’によりデジタルトランジスタ91、92をオンオフすることで、スイッチ手段21、22内のMOSFET21a、21b、22a、22bがオンオフされる。また、スイッチ制御部71は、検出信号S1、S2のほか、受電側ユニット100のID認証や充電状態などに基づいて、スイッチ手段21、22を制御する。
【0039】
次に、送電側ユニット121’の具体的な動作について説明する。ここでは、出力部に二次電池を備える2台の受電側ユニット100を用いるとする。送電側ユニット121’は、各受電側ユニット100に対して電力伝送を行う。
【0040】
まず、受電側ユニット100が送電コイル11と12のいずれの対向する位置にも配置されていない場合の動作について説明する。このとき、送電コイル11および送電コイル12のいずれにも受電コイル10は所定の距離まで近接しておらず、ホール素子41および42は永久磁石40の磁束を検出しない。すると、スイッチ制御部71は、デジタルトランジスタ91および92をオフに切り替え、MOSFET21a、21b、22a、22bのいずれもオフにする。そのため、送電コイル11および送電コイル12に対して交流電力は供給されない。
【0041】
次に、受電側ユニット100が送電コイル11に対向する位置にのみ配置された場合の動作について説明する。このとき、送電コイル11にのみ受電コイル10が所定の距離まで近接し、ホール素子41のみ永久磁石40の磁束を検出する。すると、スイッチ制御部71は、デジタルトランジスタ91をオンに、デジタルトランジスタ92をオフに切り替える。MOSFET21a、21bはオンとなり、電力伝送回路51から送電コイル11に対して交流電力が供給される。そして、送電コイル11から受電コイル10に対して電力が伝送される。一方、ホール素子42は、永久磁石40の磁束を検出せず、MOSFET22a、22bはオフとなる。そのため、送電コイル12に対して交流電力は供給されない。
【0042】
次に、受電側ユニット100が送電コイル12に対向する位置にのみ配置された場合の動作について説明する。このとき、送電コイル12にのみ受電コイル10が所定の距離まで近接し、ホール素子42のみ永久磁石40の磁束を検出する。すると、スイッチ制御部71は、デジタルトランジスタ92をオンに、デジタルトランジスタ91をオフに切り替える。MOSFET22a、22bはオンとなり、電力伝送回路51から送電コイル12に対して交流電力が供給される。そして、送電コイル12から受電コイル10に対して電力が伝送される。一方、ホール素子41は、永久磁石40の磁束を検出せず、MOSFET21a、21bはオフとなる。そのため、送電コイル11に対して交流電力は供給されない。
【0043】
次に、各受電側ユニット100が送電コイル11と12のそれぞれに対向する位置に配置された場合の動作について説明する。このとき、送電コイル11と12のそれぞれに各受電コイル10が所定の距離まで近接し、ホール素子41および42は永久磁石40の磁束を検出する。この場合、スイッチ制御部71は、送電コイル11と12の両方からではなく、どちらか一方のみから電力伝送を行うようにスイッチ手段を制御する。ここでは、まず送電コイル11を優先させて動作させるとする。ホール素子41および42のいずれも永久磁石40の磁束を検出した場合、まず、デジタルトランジスタ91のみをオンに切り替える。そして、送電コイル11から一方の受電側ユニット100内の受電コイル10に対して電力伝送される。このとき、送電コイル12から他方の受電側ユニット100に対して電力伝送は行われない。その後、一方の受電側ユニット100内の二次電池が満充電されたのを検出すると、スイッチ制御部71は、デジタルトランジスタ91をオフに切り替えるとともに、デジタルトランジスタ92をオンに切り替える。そして、送電コイル12から他方の受電側ユニット100内の受電コイル10に対して電力伝送される。そして、他方の受電側ユニット100内の二次電池が満充電されたのを検出すると、デジタルトランジスタ92もオフに切り替える。
【0044】
このように、スイッチ制御部71は、受電側ユニット100の充電状態やホール素子の検出信号S1、S2に基づいて、所望の送電コイルのみを動作させることができる。また、同時に2つ以上の送電コイルを動作させないようにスイッチ手段を制御することで、送電側ユニット121’において使用する共振コンデンサを一つとすることができる。そのため、より簡素な構成とすることができる。また、複数の受電側ユニット100を用いて、2つの送電コイルに対してそれぞれ受電コイルが近接した場合でも、スイッチ制御部71によりいずれか一つの送電コイルのみを順番に駆動させることができる。スイッチ制御部71は、マイコン等を用いてシーケンスを構成することできる。
【0045】
上記説明では、同時に2つ以上の送電コイルを動作させないようにスイッチ手段を制御している。送電コイル11と12のそれぞれに対向する位置に受電側ユニット100を配置された際に、一方の送電コイルを優先させて動作させている。スイッチ手段の制御方法については、この実施例に限定されるものではなく、位置検出素子の検出結果に基づいて
任意の送電コイルを動作させることができる。他の動作例として、先に置かれた受電側ユニット100に対向する送電コイルを優先させて動作させるようにスイッチ手段を制御してもよい。
【0046】
また、位置検出素子として、永久磁石40の代わりに発光素子、ホール素子41、42の代わりに受光素子を用いてもよい。この場合、受電側ユニット100の位置検出時にスイッチ制御部71は送電コイルを間欠動作させる。送電コイルに受電コイル10が所定の距離まで近接すると、間欠発振モードで駆動された送電コイルから受電コイルに対して、わずかな期間電力伝送され、発光素子は所定のパルス信号を発生する。そして、受光素子がそのパルスを検出し、スイッチ制御部71は、受光素子から供給される信号が所定のパルス信号であるか否かを照合する。このようにして、送電コイルと近接する場所に受電コイルが位置しているかを検出する。他にも、位置検出素子として、永久磁石40の代わりに発振回路、ホール素子41、42の代わりに受信回路を用いて同様に動作させ、位置検出を行うことができる。
【0047】
これら場合、受電側ユニット100内の二次電池が放電された状態では、発光素子や発振回路の信号動力源を得ることができない。そのため、位置検出を行うときに送電コイルを間欠動作させることで、受電側ユニット100内の位置検出素子に信号駆動用の電力を供給している。そして、受電側ユニット100内の位置検出素子から得られた信号をスイッチ制御部71で認証することで、送電コイルから電力伝送される場所に、受電コイルが位置しているかを検出することができる。なお、位置検出素子として永久磁石とホール素子を用いた場合は、信号動力源は必要なく、このような間欠発振は不要である。
【0048】
また、スイッチ手段として、オン抵抗の低いN型のMOSFETを用いた。そして、電力伝送回路51から供給される交流電力をスイッチングするために、2個のN型MOSFETのソース同士を接続した逆直列接続とした。このような構成とすることで、スイッチ手段における電圧降下を低く抑えることができ、低損失、低発熱とすることができる。なお、スイッチ手段として、双方向に電流を流せるトライアックやリレーを用いる構成としてもよい。
【0049】
また、PNP型のデジタルトランジスタ91、92を用いてスイッチ手段21、22の接続を切り替えることにより、マイコン等の信号で直接ドライブすることが可能である。また、アイソレーションしたい場合はデジタルトランジスタ91、92の代わりにフォトトランジスタを挿入しても同等の制御が可能である。
【0050】
また、電力伝送回路51としてフルブリッジ回路を用いたが、ハーフブリッジ回路もしくは1石式インバータとしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 受電コイル
11〜1N 送電コイル
21〜2N スイッチ手段
21a、21b、22a、22b MOSFET
30 共振コンデンサ
31〜3N 共振コンデンサ
40 永久磁石
41〜4N ホール素子
50 整流平滑回路
51 電力伝送回路
61 制御回路
71 スイッチ制御部
81、82 ダイオード
91、92 PNP型デジタルトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を供給するための電力伝送回路と、該電力伝送回路から該交流電力が供給される複数の送電コイルと、該複数の送電コイルから電磁誘導を用いて非接触で電力伝送される少なくとも1つ以上の受電コイルとを備える無接点電力伝送装置において、
該送電コイルには、該交流電力を供給するか否かを切り替えるスイッチ手段と、該送電コイルの近傍に該受電コイルの有無を検出する位置検出手段とを備えることを特徴とする無接点電力伝送装置。
【請求項2】
交流電力を供給するための電力伝送回路と、該電力伝送回路から該交流電力が供給される複数の送電コイルと、該複数の送電コイルから電磁誘導を用いて非接触で電力伝送される少なくとも1つ以上の受電コイルとを備える無接点電力伝送装置において、
該送電コイルには、該送電コイルの近傍に該受電コイルの有無を検出する位置検出手段を備え、該送電コイルと該電力伝送回路との間にスイッチ手段を備えることを特徴とする無接点電力伝送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無接点電力伝送装置において、前記スイッチ手段は第1および第2のN型MOSFETを備え、該第1および該第2のN型MOSFETのソース同士が接続され、該第1および該第2のN型MOSFETのゲート同士が接続されていることを特徴とする無接点電力伝送装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の無接点電力伝送装置において、前記位置検出手段は前記複数の送電コイルのそれぞれの近傍に配置する磁気検出素子と、前記受電コイルの近傍に配置する永久磁石からなることを特徴とする無接点電力伝送装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の無接点電力伝送装置において、前記位置検出手段は前記複数の送電コイルのそれぞれの近傍に配置する受光素子と、前記受電コイルの近傍に配置する発光素子からなることを特徴とする無接点電力伝送装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の無接点電力伝送装置において、前記位置検出手段は前記複数の送電コイルのそれぞれの近傍に配置する受信回路と、前記受電コイルの近傍に配置する発振回路からなることを特徴とする無接点電力伝送装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の無接点電力伝送装置において、前記電力伝送回路はフルブリッジ構成からなることを特徴とする無接点電力伝送装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の無接点電力伝送装置において、前記電力伝送回路はハーフブリッジ構成からなることを特徴とする無接点電力伝送装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の無接点電力伝送装置において、前記電力伝送回路は1石式インバータからなることを特徴とする無接点電力伝送装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の無接点電力伝送装置において、前記送電コイルにさらに共振コンデンサを備えることを特徴とする無接点電力伝送装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の無接点電力伝送装置において、前記送電コイルと前記電力伝送回路との間に共振コンデンサを備えることを特徴とする無接点電力伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−130569(P2011−130569A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286115(P2009−286115)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)