説明

無接点電力伝送装置

【課題】 破損しにくく、小型化、薄型化が容易で携帯性に優れる無接点電力伝送装置を提供する。
【解決手段】 無接点電力伝送装置1は、樹脂またはエラストマー製の基材20と、基材20の表裏少なくとも一面に配置されエラストマーおよび導電材を含む平面渦巻き状のコイル部21と、を有する柔軟電力伝送ユニット2と、コイル部21の端部210、211と外部端子とを接続しエラストマーおよび導電材を含む配線部30、31と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導を利用して携帯電話等のモバイル機器への充電を行うための無接点電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、タブレットPC(Personal Computer)、小型ゲーム機器、電子ペーパー等のモバイル機器が普及拡大している。これらに内蔵された二次電池を充電するため、電磁誘導を利用した無接点電力伝送システムの開発が進められている(例えば、特許文献1〜4参照)。無接点電力伝送システムにおいては、充電器に配置される送電側コイルに通電し、送電側コイルと、モバイル機器に配置される受電側コイルと、の間で電磁誘導を生じさせ、受電側コイルに誘起された電圧により二次電池を充電する。送電側コイル、受電側コイルとしては、電線を同一平面において巻回した平面コイルが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−172872号公報
【特許文献2】特開2008−205215号公報
【特許文献3】特開2011−109546号公報
【特許文献4】特開2009−4513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の無接点電力伝送システムにおいて、充電器は、一つまたは複数の平面コイルを、硬質のケース内に収容して構成される。このため、落下等により、充電器が破損しやすい。また、平面コイルの厚さ等に規制され、ケースの薄型化は難しい。さらに、受電側コイルとの位置決めを容易にするために、平面コイルを重ね合わせて複数配置したり、ケース内を移動可能に配置する場合には、その分だけケースを大きくする必要がある。よって、充電器が大型化しやすく、重くなる。このため、持ち運びが不便である。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、破損しにくく、小型化、薄型化が容易で携帯性に優れる無接点電力伝送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するため、本発明の無接点電力伝送装置は、樹脂またはエラストマー製の基材と、該基材の表裏少なくとも一面に配置されエラストマーおよび導電材を含む平面渦巻き状のコイル部と、を有する柔軟電力伝送ユニットと、該コイル部の端部と外部端子とを接続しエラストマーおよび導電材を含む配線部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の無接点電力伝送装置において、柔軟電力伝送ユニットを構成する基材は、樹脂またはエラストマー製である。コイル部は、エラストマーを母材とする。このため、柔軟電力伝送ユニットは、全体として柔軟である。また、後に(6)の構成において説明するように、表出するコイル部については、エラストマー製のカバー層で被覆することができる。よって、従来のように、コイル部を収容する硬質のケースは必要ない(但し、硬質のケースに収容される態様を排除するものではない)。この場合、本発明の無接点電力伝送装置は、落下した場合においても、破損しにくい。なお、本明細書において、エラストマーは、ゴムおよび熱可塑性エラストマーを含む。
【0008】
また、本発明の無接点電力伝送装置においては、配線部も、エラストマーを母材とする。このため、コイル部および配線部は、基材の弾性変形に追従して、伸縮することができる。また、従来の銀ペーストとは異なり、伸長されても、電気抵抗が増加しにくい。したがって、例えば、本発明の無接点電力伝送装置を、充電器として用いた場合には、無接点電力伝送装置そのものを筒状に巻くことができる。すなわち、本発明の無接点電力伝送装置は、収納しやすく、持ち運びに便利である。加えて、配線部が柔軟であるため、接続される外部端子の形状に沿いやすい。よって、配線部と外部端子との接合性が、良好である。すなわち、硬質な物同士を接合する場合と比較して、配線部における面精度が要求されない。
【0009】
ちなみに、上記特許文献1〜3においては、平面コイルとして、絶縁基板の表面に導電パターンを形成したものが開示されている。しかし、通常、導電パターンは、バインダー樹脂に銀粉末を高充填した銀ペーストから形成される。このため、伸縮性に乏しい。また、伸長されると、導電パターンにクラックが発生し、著しく電気抵抗が増加してしまう。また、絶縁基板も、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂を基材とする。このため、絶縁基板は、屈曲性を有するものの伸縮性に乏しい。
【0010】
また、本発明の無接点電力伝送装置によると、電線を巻回した平面コイルと比較して、コイル部の厚さを薄くすることができる。このため、無接点電力伝送装置を薄型化しやすい。また、コイル部が軽量化されると共に硬質のケースが必須ではないため、無接点電力伝送装置を軽量にすることができる。また、基材の大きさを、充電する電子機器の大きさに応じて調整しやすい。このため、無接点電力伝送装置を小型化しやすい。これらの点においても、本発明の無接点電力伝送装置は、収納性および携帯性に優れる。
【0011】
本発明の無接点電力伝送装置は、送電側の充電器にも、受電側の電子機器にも適用することができる。例えば、電子機器に搭載した場合、電子機器の薄型化、軽量化を図ることができる。
【0012】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記コイル部および前記配線部は、前記エラストマーおよび前記導電材を含む塗料から形成される構成とする方がよい。
【0013】
塗料は、エラストマーおよび導電材の他、必要に応じて分散剤、補強剤、可塑剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。塗料は、エラストマー成分のポリマー(エラストマーが架橋ゴムの場合には、架橋前のポリマー)を、所定の添加剤と共に溶剤に溶解した溶液に、導電材を分散させて調製される。そして、調製した塗料を、基材等に塗布し、乾燥させて、コイル部および配線部を形成する。必要に応じて、乾燥時に架橋反応を進行させればよい。塗料の固形分濃度は、採用する塗布方法に適した粘度になるように、適宜、調整すればよい。例えば、塗料の固形分濃度を大きくすると、塗布した時の、溶剤による基材等の膨潤を、抑制することができる。本構成によると、薄膜状のコイル部および配線部を、容易に形成することができる。
【0014】
塗料の塗布方法としては、既に公知の種々の方法を採用することができる。例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、パッド印刷、リソグラフィー等の印刷法の他、ディップ法、スプレー法、バーコート法等が挙げられる。例えば、印刷法を採用すると、塗布する部分と塗布しない部分との塗り分けを、容易に行うことができる。また、大きな面積、細線、複雑な形状の印刷も容易である。印刷法の中でも、高粘度の塗料が使用でき、塗膜厚さの調整が容易であるという理由から、スクリーン印刷法が好適である。
【0015】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記コイル部および前記配線部の前記導電材は、金属粒子を含む構成とする方がよい。
【0016】
一般に、金属の体積抵抗率は小さい。よって、本構成によると、コイル部および配線部の体積抵抗率を、小さくすることができる。換言すると、コイル部および配線部の導電性を高くすることができる。金属粒子としては、銀、銅、金、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金等が挙げられる。これらの一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。なかでも銀、銅は、体積抵抗率が小さいため好適である。したがって、導電材として、銀粉末、銅粉末、銀合金粉末、銅合金粉末を用いるとよい。
【0017】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記基材の切断時伸びは、5%以上である構成とする方がよい。
【0018】
上述したように、柔軟電力伝送ユニットを構成する基材は、樹脂またはエラストマー製である。本構成によると、基材の常温下での伸縮性を、確保することができる。これにより、例えば、基材を筒状に巻くことができる。したがって、本発明の無接点電力伝送装置を、充電器として用いた場合に、収納性および携帯性が向上する。なお、本明細書においては、切断時伸びとして、JIS K6251(2010)の引張り試験により求められた値を採用する。
【0019】
(4−1)好ましくは、上記(4)の構成において、前記基材の前記樹脂は、ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂(ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等)、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、変性セルロース類(セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)等)等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂から選ばれる一種以上である構成とする方がよい。また、前記基材の前記エラストマーは、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム等の架橋ゴム、およびスチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系等の熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上である構成とする方がよい。
【0020】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記基材、前記コイル部、および前記配線部の前記エラストマーは、硫黄、硫黄化合物、有機過酸化物を用いずに架橋された架橋ゴム、および熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上である構成とする方がよい。
【0021】
ゴムポリマーを架橋する場合、架橋剤として、硫黄や硫黄化合物、あるいは有機過酸化物を用いることが多い。これらの架橋剤残渣が架橋ゴム中に残存すると、コイル部等に導電材として金属粒子が含まれる場合に、当該金属粒子が酸化されたり硫化されるおそれがある。金属粒子が酸化、硫化されると、金属粒子の表面の電気抵抗が増加して、コイル部等の導電性が低下してしまう。
【0022】
この点、本構成によると、基材、コイル部、および配線部のエラストマーは、硫黄、硫黄化合物、有機過酸化物を含まない。このため、導電材として金属粒子が含まれていても、金属粒子が、酸化や硫化により劣化しにくい。したがって、長期間使用しても、コイル部および配線部の導電性が、低下しにくい。つまり、本構成によると、無接点電力伝送装置の耐久性が向上する。
【0023】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、さらに、前記コイル部を覆うように配置されるエラストマー製のカバー層を備える構成とする方がよい。
【0024】
本構成によると、コイル部を外部から絶縁することができる。このため、安全性が向上する。また、コイル部に導電材として金属粒子が含まれる場合には、当該金属粒子の酸化を抑制することができる。さらに、基材とカバー層との間にコイル部が挟装されるため、コイル部の変形は、基材およびカバー層により拘束される。つまり、カバー層は、コイル部を補強し保護する役割をも果たす。
【0025】
カバー層のエラストマーは、基材等のエラストマーと同じでも異なっていてもよい。また、基材やコイル部の伸縮を阻害しないという観点から、カバー層の切断時伸びは、5%以上であることが望ましい。
【0026】
(7)好ましくは、上記(6)の構成において、前記カバー層の前記エラストマーは、硫黄、硫黄化合物、有機過酸化物を用いずに架橋された架橋ゴム、および熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上である構成とする方がよい。
【0027】
上記(5)の構成において説明したように、カバー層に架橋剤残渣が残存すると、コイル部に含まれる金属粒子が、酸化されたり硫化されるおそれがある。本構成によると、コイル部に導電材として金属粒子が含まれていても、金属粒子が、酸化や硫化により劣化しにくい。したがって、長期間使用しても、コイル部の導電性が、低下しにくい。つまり、本構成によると、無接点電力伝送装置の耐久性が向上する。
【0028】
(8)好ましくは、上記(6)または(7)の構成において、前記コイル部は、前記基材の表面に配置され、前記カバー層は、該コイル部の内周端部との導通を確保するための導通孔を有し、前記外部端子は、第一外部端子と第二外部端子とを有し、前記配線部は、該カバー層の表面に配置され該導通孔を介して該内周端部と該第一外部端子とを接続する内周側配線部と、該基材の表面に配置され該コイル部の外周端部と該第二外部端子とを接続する外周側配線部と、を有する構成とする方がよい。
【0029】
本構成においては、カバー層に導通孔を穿設し、内周側配線部をカバー層の表面に配置して、コイル部の巻き始めの内周端部−導通孔−内周側配線部を導通させる。これにより、内周端部を、コイル部を構成する線条と重なることなく、第一外部端子に接続することができる。なお、内周側配線部は、コイル部の内周端部と第一外部端子とを、コイル部の形成領域においてはカバー層の表面を利用して、接続できればよい。したがって、内周側配線部の全てが、カバー層の表面に配置されていなくてもよい。すなわち、内周側配線部の第一外部端子側の端部は、カバー層ではなく基材の表面に配置されていてもよい。
【0030】
(9)好ましくは、上記(1)ないし(8)のいずれかの構成において、複数の前記柔軟電力伝送ユニットを備え、該柔軟電力伝送ユニットは、表裏方向に積層される構成とする方がよい。
【0031】
本構成の無接点電力伝送装置においては、コイル部が表裏方向に積層される。コイル部を積層することにより、コイル部の巻き数や線径(線条の幅)を変更することなく、インダクタンスやインピーダンスを調整することができる。コイル部で発生する磁束は、コイル部を流れる電流およびコイル部の巻き数に比例する。例えば、コイル部を直列に接続すると、巻き数を増加したのと同等の効果を得ることができる。すなわち、コイル部で発生する磁束を、増加させることができる。一方、コイル部を並列に接続すると、線径を大きくしたのと同等の効果を得ることができる。すなわち、インピーダンスを小さくし、コイル部を流れる電流を大きくすることができる。これにより、コイル部で発生する磁束を、増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第一実施形態の充電器の斜視図である。
【図2】同充電器の上面図である。
【図3】同充電器の分解斜視図である。
【図4】第二実施形態の充電器の分解斜視図である。
【図5】第三実施形態の充電器の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の無接点電力伝送装置の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の無接点電力伝送装置を、携帯電話の充電器として具現化したものである。
【0034】
<第一実施形態>
[構成]
まず、本実施形態の充電器の構成について説明する。図1に、本実施形態の充電器の斜視図を示す。図2に、同充電器の上面図を示す。図3に、同充電器の分解斜視図を示す。なお、図1においては、携帯電話を充電している状態を示す。図2においては、説明の便宜上、携帯電話を一点鎖線で示す。また、上下方向に積層される部材を透過して示す。
【0035】
図1〜図3に示すように、充電器1は、柔軟電力伝送ユニット2と、内周側配線部30と、外周側配線部31と、カバー層40と、配線部カバー層41と、制御部50と、接続ケーブル51と、を備えている。
【0036】
充電器1の制御部50を除く上面全体には、携帯電話9が載置されている。携帯電話9には、二次電池(図略)と、受電側コイル90と、が内蔵されている。受電側コイル90は、リッツ線を同一平面において渦巻き状に巻回したものである。
【0037】
柔軟電力伝送ユニット2は、基材20と、コイル部21と、を備えている。基材20は、シリコーンゴム製であり、長方形のシート状を呈している。基材20の切断時伸びは、400%である。コイル部21は、アミン架橋アクリルゴムと銀粒子とを含んでいる。銀粒子の含有量は、コイル部21の体積を100vol%とした場合の38vol%である。コイル部21は、平面渦巻き状を呈している。コイル部21は、内周端部210を巻き始めとして、反時計回りに巻回されている。コイル部21は、基材20の上面(表面)に配置されている。コイル部21は、基材20の上面における前方の中央付近に、配置されている。コイル部21と受電側コイル90とは、対向している。
【0038】
カバー層40は、基材20と同じシリコーンゴム製であり、円形状を呈している。カバー層40は、コイル部21の上面を被覆している。カバー層40の大きさは、コイル部21の外周よりやや大きい。カバー層40には、導通孔400が穿設されている。導通孔400は、コイル部21の内周端部210に対応する位置に、配置されている。導通孔400には、内周側配線部30の一部が進入している。
【0039】
内周側配線部30の材質は、コイル部21の材質と同じである。すなわち、内周側配線部30は、アミン架橋アクリルゴムと銀粒子とを含んでいる。内周側配線部30は、直線状を呈している。内周側配線部30は、カバー層40の上面において、導通孔400から前方に延在している。内周側配線部30の後半分は、カバー層40の上面(表面)に配置され、前半分は、基材20の上面に配置されている。内周側配線部30の前端には、内周側端子部300が配置されている。内周側端子部300は、制御部50に配置された第一外部端子(図略)に接続されている。このようにして、内周側配線部30は、導通孔400を介して、内周端部210と第一外部端子とを接続している。
【0040】
外周側配線部31の材質も、コイル部21の材質と同じである。すなわち、外周側配線部31は、アミン架橋アクリルゴムと銀粒子とを含んでいる。外周側配線部31は、直線状を呈している。外周側配線部31は、基材20の上面に配置されている。外周側配線部31の後端は、コイル部21の巻き終わりの外周端部211に接続されている。外周側配線部31の前端には、外周側端子部310が配置されている。外周側端子部310は、制御部50に配置された第二外部端子(図略)に接続されている。このようにして、外周側配線部31は、外周端部211と第二外部端子とを接続している。
【0041】
配線部カバー層41は、カバー層40と同じシリコーンゴム製であり、長方形状を呈している。配線部カバー層41は、制御部50に覆われない内周側配線部30および外周側配線部31の上面を覆うように、配置されている。
【0042】
制御部50は、基材20の上面前端に配置されている。制御部50は、樹脂製のケース500と、回路基板(図略)と、を備えている。回路基板は、ケース500の内部に収容されている。回路基板には、第一外部端子と、第二外部端子と、制御回路部(図略)と、が配置されている。上述したように、第一外部端子は、内周側端子部300に接続されている。第二外部端子は、外周側端子部310に接続されている。第一外部端子、第二外部端子を介して、コイル部21への通電が行われる。また、制御回路部は、コイル部21の電圧値、携帯電話9の充電状況等に基づいて、通電のON/OFFを制御する。
【0043】
接続ケーブル51は、制御部50の左端から導出されている。接続ケーブル51は、制御部50の回路基板に、電気的に接続されている。接続ケーブル51は、USB(Universal Serial Bus)コネクタを備えており、パソコン等に接続可能である。
【0044】
[製造方法]
次に、充電器1の製造方法について説明する。まず、基材20として、シリコーンゴムシートを準備する。次に、コイル部21および外周側配線部31を形成する。すなわち、アクリルゴムポリマーおよび架橋剤の安息香酸アンモニウムを、溶剤のエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに溶解して、ポリマー溶液を調製する。そして、ポリマー溶液に、銀粉末を混合、分散させて、塗料を調製する。続いて、調製した塗料を、基材20の上面にスクリーン印刷する。その後、加熱により塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させる。このようにして、コイル部21および外周側配線部31を形成する。
【0045】
次に、カバー層40を形成する。液状のシリコーンゴムポリマーを、コイル部21を覆うように、基材20の上面にスクリーン印刷する。この際、コイル部21の内周端部210の上面には、シリコーンゴムポリマーを印刷しない。そして、塗膜を加熱することにより、架橋反応を進行させる。このようにして、導通孔400を有するカバー層40を形成する。
【0046】
次に、内周側配線部30を形成する。外周側配線部31を形成したのと同じ塗料を、導通孔400を含むカバー層40および基材20の上面に、スクリーン印刷する。この際、塗料を導通孔400の内部にも進入させる。そして、加熱により塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させる。このようにして、内周側配線部30を形成する。
【0047】
次に、配線部カバー層41を形成する。カバー層40を形成したのと同じ液状のシリコーンゴムポリマーを、内周側配線部30および外周側配線部31の上面を覆うように、スクリーン印刷する。そして、塗膜を加熱することにより、架橋反応を進行させる。このようにして、配線部カバー層41を形成する。
【0048】
次に、制御部50の回路基板を、基材20の表面に配置して、第一外部端子と内周側端子部300、第二外部端子と外周側端子部310、を各々電気的に接続する。そして、接続ケーブル51を導出した状態で、回路基板を含む基材20の前端を、ケース500で封止することにより、制御部50を形成する。このようにして、充電器1は製造される。
【0049】
[動作]
次に、充電器1の動作について説明する。まず、制御部50の制御回路部において、接続ケーブル51を通して供給される直流電圧から、所定の交流電圧を生成する。生成された交流電圧は、内周側配線部30および外周側配線部31を介して、コイル部21に印加される。これにより、コイル部21に電流が流れ、磁束が発生する。コイル部21の磁束が変化すると、コイル部21に対向して配置されている携帯電話9の受電側コイル90に、交流電圧が誘起される。誘起された交流電圧は、携帯電話9に内蔵された制御回路部により、直流電圧に変換され、これにより二次電池が充電される。
【0050】
[作用効果]
次に、充電器1の作用効果について説明する。充電器1によると、基材20、コイル部21、内周側配線部30、外周側配線部31、カバー層40、および配線部カバー層41の全てが、エラストマー製あるいはエラストマーを母材とする。このため、柔軟電力伝送ユニット2を含む充電器1全体が、柔軟である。また、コイル部21等が硬質のケースに収容されていない。したがって、充電器1は、落下した場合においても、破損しにくい。
【0051】
基材20の切断時伸びは、400%である。基材20は、伸縮可能である。そして、コイル部21、内周側配線部30、および外周側配線部31は、基材20の弾性変形に追従して、伸縮可能である。また、伸長されても、電気抵抗が増加しにくい。したがって、充電器1を、筒状に巻くことができる。このように、充電器1は、収納しやすく、持ち運びに便利である。
【0052】
柔軟電力伝送ユニット2によると、従来の電線を巻回した平面コイルと比較して、コイル部21の厚さを薄くすることができる。このため、充電器1を薄型化しやすい。また、コイル部21自体の軽量化と、コイル部21等を収容する硬質のケースが不要になることから、充電器1の軽量化を図ることができる。また、基材20の大きさを、携帯電話9の大きさと、略同じにすることができる。このため、充電器1の小型化を図ることができる。これらの点においても、充電器1は、収納性および携帯性に優れる。
【0053】
内周側配線部30および外周側配線部31は、柔軟である。このため、内周側端子部300、外周側端子部310は、各々、第一外部端子、第二外部端子の形状に沿いやすい。よって、端子間の接合性が良好である。
【0054】
基材20、コイル部21、内周側配線部30、外周側配線部31、カバー層40、および配線部カバー層41のエラストマーは、硫黄、硫黄化合物、有機過酸化物のいずれも用いずに架橋された架橋ゴムである。つまり、これらの部材には、硫黄、硫黄化合物、有機過酸化物が含まれない。このため、コイル部21等に含まれる銀粒子は、酸化や硫化しにくい。したがって、長期間使用しても、コイル部21、内周側配線部30、および外周側配線部31の導電性が、低下しにくい。つまり、充電器1は、耐久性に優れる。
【0055】
コイル部21、内周側配線部30、および外周側配線部31は、塗料をスクリーン印刷して形成されている。よって、薄膜状のコイル部21等の形成が、容易である。また、導電材として、銀粉末を使用している。このため、コイル部21、内周側配線部30、および外周側配線部31の導電性は高い。また、コイル部21、内周側配線部30、および外周側配線部31は、カバー層40や配線部カバー層41で被覆されている。このため、絶縁性を確保することができ、安全性が高い。また、コイル部21等に含まれる銀粒子の酸化も、抑制される。
【0056】
カバー層40には、導通孔400が穿設されている。コイル部21の内周端部210は、導通孔400を介して、カバー層40の上面に形成された内周側配線部30に、接続されている。これにより、コイル部21の内周端部210を、コイル部21を構成する線条と重ねずに、第一外部端子に接続することができる。
【0057】
<第二実施形態>
本実施形態の充電器と、第一実施形態の充電器と、の主な相違点は、基材の下面(裏面)にもコイル部を配置した点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0058】
[構成]
まず、本実施形態の充電器の構成について説明する。図4に、本実施形態の充電器の分解斜視図を示す。図4中、図3と対応する部材については、同じ符合で示す。図4においては、携帯電話を省略して示す。
【0059】
図4に示すように、充電器1は、柔軟電力伝送ユニット2と、表側配線部32uと、裏側配線部32dと、表側カバー層42uと、裏側カバー層42dと、磁性体層43と、制御部50と、接続ケーブル51と、を備えている。
【0060】
柔軟電力伝送ユニット2は、基材20と、表側コイル部22uと、裏側コイル部22dと、を備えている。表側コイル部22uは、基材20の上面(表面)に配置されている。裏側コイル部22dは、基材20の下面(裏面)に配置されている。表側コイル部22u、裏側コイル部22dは、基材20を挟んで対向している。表側コイル部22u、裏側コイル部22dの構成は、第一実施形態のコイル部21の構成と同じである。表側コイル部22uは、内周端部220uを巻き始めとして、反時計回りに巻回されている。一方、裏側コイル部22dは、内周端部220dを巻き始めとして、時計回りに巻回されている。
【0061】
基材20には、二つの導通孔200、201が穿設されている。導通孔200は、表側コイル部22uの内周端部220uと、裏側コイル部22dの内周端部220dと、の間に介在している。導通孔200には、上方から内周端部220uの一部が、下方から内周端部220dの一部が、各々進入している。これにより、導通孔200を介して、内周端部220u、220d同士が、導通している。導通孔201は、後述する裏側配線部32dの前端に対応する位置に配置されている。基材20の上面には、導通孔201を囲むように、裏側端子部320dが形成されている。裏側端子部320dの材質は、裏側配線部32dの材質と同じである。導通孔201には、下方から裏側配線部32dの一部が、上方から裏側端子部320dの一部が、各々進入している。
【0062】
表側配線部32uの材質は、第一実施形態の外周側配線部31の材質と同じ(つまり、表側コイル部22uの材質と同じ)である。表側配線部32uは、直線状を呈している。表側配線部32uは、基材20の上面に配置されている。表側配線部32uの後端は、表側コイル部22uの巻き終わりの外周端部221uに接続されている。表側配線部32uの前端には、表側端子部320uが配置されている。表側端子部320uは、制御部50に配置された第一外部端子(図略)に接続されている。このようにして、表側配線部32uは、外周端部221uと第一外部端子とを接続している。
【0063】
裏側配線部32dは、基材20の下面に配置されている。裏側配線部32dの構成は、表側配線部32uの構成と同じである。すなわち、裏側配線部32dの後端は、裏側コイル部22dの巻き終わりの外周端部221dに接続されている。裏側配線部32dの前端は、導通孔201を介して、基材20の上面に形成された裏側端子部320dに接続されている。裏側端子部320dは、制御部50に配置された第二外部端子(図略)に接続されている。このようにして、裏側配線部32dは、外周端部221dと第二外部端子とを接続している。
【0064】
表側カバー層42u、裏側カバー層42dの材質は、第一実施形態のカバー層40の材質と、同じである。表側カバー層42uは、本体部420uと、凸部421uと、を有している。本体部420uは、円形状を呈している。本体部420uは、表側コイル部22uの上面を被覆している。凸部421uは、長方形状を呈しており、本体部420uの外周縁から前方に突出している。凸部421uは、表側配線部32uの上面を被覆している。裏側カバー層42dも、同様に、本体部420dと、凸部421dと、を有している。本体部420dは、円形状を呈している。本体部420dは、裏側コイル部22dの下面を被覆している。凸部421dは、長方形状を呈しており、本体部420dの外周縁から前方に突出している。凸部421dは、裏側配線部32dの下面を被覆している。
【0065】
磁性体層43は、シリコーンゴムと磁性体粒子とを含んでおり、円形状を呈している。磁性体層43の大きさは、裏側カバー層42dの本体部420dの大きさと、同じである。磁性体層43は、本体部420dの下面を被覆している。
【0066】
制御部50は、基材20の前端に配置されている。制御部50は、樹脂製のケース500u、500dと、回路基板(図略)と、を備えている。回路基板は、ケース500uの内部に収容されている。回路基板には、第一外部端子と、第二外部端子と、制御回路部(図略)と、が配置されている。上述したように、第一外部端子は、表側端子部320uに接続されている。第二外部端子は、裏側端子部320dに接続されている。第一外部端子、第二外部端子を介して、表側コイル部22u、裏側コイル部22dへの通電が行われる。
【0067】
[製造方法]
次に、充電器1の製造方法について説明する。まず、基材20として、シリコーンゴムシートを準備する。当該シリコーンゴムシートには、予め、二つの導通孔200、201を穿設しておく。次に、表側コイル部22u、表側配線部32u、および裏側端子部320dを形成する。すなわち、第一実施形態と同じ塗料を、基材20の上面にスクリーン印刷する。この際、塗料を導通孔200、201の内部にも進入させる。その後、加熱により塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させる。このようにして、表側コイル部22u、表側配線部32u、および裏側端子部320dを形成する。
【0068】
次に、表側カバー層42uを形成する。液状のシリコーンゴムポリマーを、表側コイル部22uおよび表側配線部32uを覆うように、基材20の上面にスクリーン印刷する。そして、塗膜を加熱することにより、架橋反応を進行させる。このようにして、表側カバー層42uを形成する。
【0069】
次に、基材20を裏返して、裏側コイル部22dおよび裏側配線部32dを形成する。すなわち、第一実施形態と同じ塗料を、基材20の下面(図4における下面。印刷時には上向きに配置する。)にスクリーン印刷する。この際、塗料を導通孔200、201の内部にも進入させる。その後、加熱により塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させる。このようにして、裏側コイル部22dおよび裏側配線部32dを形成する。
【0070】
次に、裏側カバー層42dを形成する。液状のシリコーンゴムポリマーを、裏側コイル部22dおよび裏側配線部32dを覆うように、基材20の下面にスクリーン印刷する。そして、塗膜を加熱することにより、架橋反応を進行させる。このようにして、裏側カバー層42dを形成する。
【0071】
次に、磁性体層43を形成する。すなわち、液状のシリコーンゴムポリマーに、磁性体粉末を混合、分散させて、磁性塗料を調製する。続いて、調製した磁性塗料を、裏側カバー層42dの下面にスクリーン印刷する。その後、塗膜を加熱することにより、架橋反応を進行させる。このようにして、磁性体層43を形成する。
【0072】
次に、制御部50の回路基板を、基材20の表面に配置して、第一外部端子と表側端子部320u、第二外部端子と裏側端子部320d、を各々電気的に接続する。そして、接続ケーブル51を導出した状態で、回路基板を含む基材20の上部前端をケース500uで、基材20の下部前端をケース500dで封止することにより、制御部50を形成する。このようにして、充電器1は製造される。
【0073】
[動作]
次に、充電器1の動作について説明する。まず、制御部50の制御回路部において、接続ケーブル51を通して供給される直流電圧から、所定の交流電圧を生成する。生成された交流電圧は、表側配線部32uおよび裏側配線部32dを介して、表側コイル部22uおよび裏側コイル部22dに印加される。これにより、表側コイル部22uおよび裏側コイル部22dに電流が流れ、磁束が発生する。表側コイル部22uおよび裏側コイル部22dの磁束が変化すると、これらに対向して配置されている携帯電話9の受電側コイル90に、交流電圧が誘起される(前出図3参照)。誘起された交流電圧は、携帯電話9に内蔵された制御回路部により、直流電圧に変換され、これにより二次電池が充電される。
【0074】
[作用効果]
本実施形態の充電器1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の充電器1と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の充電器1によると、基材20の上下両面に、表側コイル部22u、裏側コイル部22dを配置している。そして、これらのコイル部22u、22dを、直列に接続している。このため、第一実施形態のコイル部21の巻き数を、約2倍に増加したのと同等の効果を得ることができる。すなわち、コイル部22u、22dにおいて、第一実施形態の約2倍の磁束を、発生させることができる。これにより、携帯電話9の受電側コイル90において、より大きな電圧を発生させることができる。
【0075】
また、内周端部220u、220d同士を、導通孔200を介して導通させている。このため、内周端部220u、220dを、各々、外部端子に接続する必要はない。したがって、配線構造が単純である。また、表側配線部32uは表側カバー層42uにより、裏側配線部32dは裏側カバー層42dにより、各々被覆されている。このため、第一実施形態のように、別途、配線部カバー層41を配置する必要はない。よって、部品点数を減らすことができる。
【0076】
充電器1は、磁性体層43を備えている。これにより、表側コイル部22u、裏側コイル部22dの領域に、磁束を集中させて、磁束漏れを抑制することができる。
【0077】
<第三実施形態>
本実施形態の充電器と、第一実施形態の充電器と、の主な相違点は、柔軟電力伝送ユニットを三つ積層させた点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0078】
[構成]
まず、本実施形態の充電器の構成について説明する。図5に、本実施形態の充電器の分解斜視図を示す。図5中、図3と対応する部材については、同じ符合で示す。図5においては、携帯電話を省略して示す。
【0079】
図5に示すように、充電器1は、柔軟電力伝送ユニットとしての第一ユニット2a、第二ユニット2b、および第三ユニット2cと、内周側配線部30と、外周側配線部31と、カバー層40と、配線部カバー層41と、制御部50と、接続ケーブル51と、を備えている。
【0080】
第一ユニット2a、第二ユニット2b、および第三ユニット2cは、この順に下から上方に積層されている。第一ユニット2aは、第一基材20aと、第一コイル部23aと、を備えている。第一コイル部23aは、第一基材20aの上面に配置されている。第一コイル部23aの巻き終わりの形状を除いて、第一ユニット2aの構成は、第一実施形態のコイル部21の構成と同じである。すなわち、第一ユニット2aにおいて、第一コイル部23aの外周端部231aは、円形状を呈している。
【0081】
第二ユニット2bは、第二基材20bと、第二コイル部23bと、を備えている。第二基材20bの前後方向長さは、制御部50の分だけ、第一基材20aよりも短くなっている。第二基材20bには、二つの導通孔200b、201bが穿設されている。導通孔200bは、第二コイル部23bの内周端部230bと、第一コイル部23aの内周端部230aと、の間に介在している。導通孔200bには、内周端部230bの一部が進入している。これにより、導通孔200bを介して、内周端部230a、230b同士が、導通している。導通孔201bは、第二コイル部23bの外周端部231bと、第一コイル部23aの外周端部231aと、の間に介在している。導通孔201bには、外周端部231bの一部が進入している。これにより、導通孔201bを介して、外周端部231a、231b同士が、導通している。第二コイル部23bは、第二基材20bの上面に配置されている。第二基材20b以外については、第二ユニット2bの構成は、第一ユニット2aの構成と同じである。
【0082】
第三ユニット2cは、第三基材20cと、第三コイル部23cと、を備えている。第三ユニット2cの構成は、第二ユニット2bの構成と同じである。すなわち、第三基材20cには、二つの導通孔200c、201cが穿設されている。導通孔200cは、第三コイル部23cの内周端部230cと、第二コイル部23bの内周端部230bと、の間に介在している。導通孔200cには、内周端部230cの一部が進入している。これにより、導通孔200cを介して、内周端部230b、230c同士が、導通している。導通孔201cは、第三コイル部23cの外周端部231cと、第二コイル部23bの外周端部231bと、の間に介在している。導通孔201cには、外周端部231cの一部が進入している。これにより、導通孔201cを介して、外周端部231b、231c同士が、導通している。
【0083】
カバー層40は、円形状を呈しており、第三コイル部23cの上面を被覆している。カバー層40の大きさは、第三コイル部23cの外周よりやや大きい。カバー層40には、導通孔400が穿設されている。導通孔400は、第三コイル部23cの内周端部230cに対応する位置に、配置されている。導通孔400には、内周側配線部30の一部が進入している。
【0084】
内周側配線部30は、直線状を呈している。内周側配線部30は、カバー層40の上面において、導通孔400から前方に延在している。内周側配線部30の後半分は、カバー層40の上面に配置され、前半分は、第三基材20cの上面から第一基材20aの上面に亘って配置されている。内周側配線部30の前端には、内周側端子部300が配置されている。内周側端子部300は、制御部50に配置された第一外部端子(図略)に接続されている。内周側配線部30は、導通孔200b、200c、400を介して、三つの内周端部230a〜230cと第一外部端子とを接続している。
【0085】
外周側配線部31は、直線状を呈している。外周側配線部31は、第一基材20aの上面に配置されている。外周側配線部31の後端は、第一コイル部23aの外周端部231aに接続されている。外周側配線部31の前端には、外周側端子部310が配置されている。外周側端子部310は、制御部50に配置された第二外部端子(図略)に接続されている。外周側配線部31は、導通孔201b、201cを介して、三つの外周端部231a〜231cと第二外部端子とを接続している。
【0086】
配線部カバー層41は、長方形状を呈している。配線部カバー層41は、制御部50に覆われない内周側配線部30の上面を覆うように、配置されている。
【0087】
制御部50は、基材20の上面前端に配置されている。制御部50は、樹脂製のケース500と、回路基板(図略)と、を備えている。回路基板は、ケース500の内部に収容されている。回路基板には、第一外部端子と、第二外部端子と、制御回路部(図略)と、が配置されている。接続ケーブル51は、制御部50の左端から導出されている。接続ケーブル51は、制御部50の回路基板に、電気的に接続されている。
【0088】
[製造方法]
次に、充電器1の製造方法について説明する。まず、第一〜第三基材20a〜20cとして、シリコーンゴムシートを準備する。第二基材20bには、予め、二つの導通孔200b、201bを穿設しておく。同様に、第三基材20cにも、予め、二つの導通孔200c、201cを穿設しておく。
【0089】
次に、第一基材20aの上面に、第一コイル部23aおよび外周側配線部31を形成する。すなわち、第一実施形態と同じ塗料を、基材20の上面にスクリーン印刷する。その後、加熱により塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させる。このようにして、第一コイル部23aおよび外周側配線部31を形成する。
【0090】
同様にして、第二基材20bの上面に、第二コイル部23bを形成する。この際、塗料を導通孔200b、201bの内部にも進入させる。また、第三基材20cの上面に、第三コイル部23cを形成する。この際、塗料を導通孔200c、201cの内部にも進入させる。
【0091】
次に、第三コイル部23cの上面に、カバー層40を形成する。液状のシリコーンゴムポリマーを、第三コイル部23cを覆うように、第三基材20cの上面にスクリーン印刷する。この際、第三コイル部23cの内周端部230cの上面には、シリコーンゴムポリマーを印刷しない。そして、塗膜を加熱することにより、架橋反応を進行させる。このようにして、導通孔400を有するカバー層40を形成する。
【0092】
次に、各コイル部が形成された第二基材20b、第三基材20cを、この順に、第一基材20aの上側に積層させる。それから、内周側配線部30を形成する。上記塗料を、導通孔400を含むカバー層40、第三基材20cおよび第一基材20aの上面に、スクリーン印刷する。この際、塗料を導通孔400の内部にも進入させる。そして、加熱により塗膜を乾燥させると共に、架橋反応を進行させる。このようにして、内周側配線部30を形成する。
【0093】
次に、配線部カバー層41を形成する。液状のシリコーンゴムポリマーを、内周側配線部30の上面を覆うように、スクリーン印刷する。そして、塗膜を加熱することにより、架橋反応を進行させる。このようにして、配線部カバー層41を形成する。
【0094】
次に、制御部50の回路基板を、第一基材20aの表面に配置して、第一外部端子と内周側端子部300、第二外部端子と外周側端子部310、を各々電気的に接続する。そして、接続ケーブル51を導出した状態で、回路基板を含む第一基材20aの前端を、ケース500で封止することにより、制御部50を形成する。このようにして、充電器1は製造される。
【0095】
[動作]
次に、充電器1の動作について説明する。まず、制御部50の制御回路部において、接続ケーブル51を通して供給される直流電圧から、所定の交流電圧を生成する。生成された交流電圧は、内周側配線部30および外周側配線部31を介して、第一コイル部23a〜第三コイル部23cに印加される。これにより、第一コイル部23a〜第三コイル部23cに電流が流れ、磁束が発生する。第一コイル部23a〜第三コイル部23cの磁束が変化すると、これらに対向して配置されている携帯電話9の受電側コイル90に、交流電圧が誘起される(前出図3参照)。誘起された交流電圧は、携帯電話9に内蔵された制御回路部により、直流電圧に変換され、これにより二次電池が充電される。
【0096】
[作用効果]
本実施形態の充電器1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の充電器1と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の充電器1によると、三つの柔軟電力伝送ユニット(第一ユニット2a、第二ユニット2b、第三ユニット2c)が積層されている。個々のユニット2a、2b、2cは、柔軟である。よって、積層させても、充電器1の柔軟性を維持することができる。また、第一コイル部23a、第二コイル部23b、第三コイル部23cは、並列に接続されている。よって、コイル部23a、23b、23cにおけるインピーダンスは小さくなり、流れる電流が大きくなる。これにより、コイル部23a、23b、23cで発生する磁束を、増加させることができる。その結果、携帯電話9の受電側コイル90において、より大きな電圧を発生させることができる。
【0097】
また、内周端部230a〜230c同士を、導通孔200b、200cを介して導通させている。このため、内周端部230a〜230cを、個々に外部端子に接続する必要はない。同様に、外周端部231a〜231c同士を、導通孔201b、201cを介して導通させている。このため、外周端部231a〜231cを、個々に外部端子に接続する必要はない。したがって、配線構造が単純である。
【0098】
<その他>
以上、本発明の無接点電力伝送装置の実施形態について説明した。しかしながら、本発明の無接点電力伝送装置の実施形態は上記形態に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0099】
例えば、上記実施形態においては、本発明の無接点電力伝送装置を、送電側の充電器として具現化した。しかし、本発明の無接点電力伝送装置は、例えば携帯電話、タブレットPC等の受電側の電子機器に用いてもよい。例えば、本発明の無接点電力伝送装置を受電側の電子機器に搭載した場合、電子機器の薄型化、軽量化を図ることができる。
【0100】
基材、カバー層等の形状、厚さ等は、特に限定されない。カバー層を配置しなくてもよい。また、コイル部の巻き数、線径、ピッチ、配線部との接続形態等についても、特に限定されない。基材、コイル部、配線部、カバー層のエラストマーの種類は、上記実施形態に限定されない。これらのエラストマーは、同じでも異なっていてもよい。エラストマーは、可塑剤、加工助剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、老化防止剤、軟化剤、着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0101】
コイル部や配線部を塗料の印刷等により形成可能で、常温下で伸縮性を有するエラストマーとしては、上記実施形態のシリコーンゴム、アクリルゴムの他、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム等の架橋ゴム、およびスチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0102】
また、コイル部や配線部を塗料の印刷等により形成可能で、常温下で伸縮性を有すれば、基材として樹脂製のシートを用いても構わない。この場合、樹脂としては、ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂(ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等)、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、変性セルロース類(セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)等)が挙げられる。
【0103】
また、導電材として金属粒子を用いる場合、金属粒子の酸化および硫化を抑制するという観点から、エラストマーには、硫黄、硫黄化合物、有機過酸化物のいずれも含まれないことが望ましい。この場合、エラストマーとしては、硫黄、硫黄化合物、有機過酸化物を用いずに架橋された架橋ゴム、および熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上を用いることが望ましい。
【0104】
前者の架橋ゴムは、硫黄を含む加硫剤や加硫促進剤、あるいは過酸化物系架橋剤を用いずに架橋されたゴムであればよい。このような架橋ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、ヒドロシリル架橋エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、アミン架橋アクリルゴム、イソシアネート架橋ウレタンゴム、イソシアネート架橋液状ブタジエンゴムが挙げられる。後者の熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、スチレン系ブロックコポリマー系熱可塑性エラストマー(SIS、SBS等)が挙げられる。
【0105】
コイル部、配線部の導電材の種類は、特に限定されない。上記実施形態の銀粉末の他、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金等の金属粉末の一種、あるいは二種以上を用いることができる。また、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料を用いてもよい。また、金属以外の粒子の表面を金属で被覆した被覆粒子を使用してもよい。この場合、金属だけで構成する場合と比較して、導電材の比重を小さくすることができる。よって、塗料化した場合に、導電材の沈降が抑制されて、分散性が向上する。また、粒子を加工することにより、様々な形状の導電材を容易に製造することができる。また、導電材のコストを低減することができる。被覆する金属としては、先に列挙した銀等の金属材料を用いればよい。また、金属以外の粒子としては、カーボンブラック等の炭素材料、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物、シリカ等の無機物、アクリルやウレタン等の樹脂等を用いればよい。
【0106】
導電材の含有量は、導電性と柔軟性とを両立できるように、適宜決定すればよい。例えば、導電性を確保するという観点から、導電材の含有量は、コイル部または配線部の体積を100vol%とした場合の10vol%以上であることが望ましい。15vol%以上であるとより好適である。一方、導電材の含有量が多くなると柔軟性が低下する。このため、導電材の含有量は、コイル部または配線部の体積を100vol%とした場合の40vol%以下であることが望ましい。25vol%以下であるとより好適である。
【0107】
上記実施形態においては、コイル部、配線部、カバー層等を、スクリーン印刷法により形成した。塗料の塗布方法は、特に限定されず、例えば、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、パッド印刷、リソグラフィー等の印刷法の他、ディップ法、スプレー法、バーコート法等を用いてもよい。
【0108】
また、上記第二実施形態のように、磁性体層を配置してもよい。磁性体層は、柔軟電力伝送ユニットの裏面側(相手部材と反対側)に配置すればよい。磁性体層を配置することにより、コイル部の領域に磁束を集中させて、磁束漏れを抑制することができる。磁性体層の材質は、特に限定されない。例えば、エラストマーおよび磁性体粉末を含む態様が、伸縮性を有するため好適である。
【0109】
コイル部を複数備える場合、コイル部の接続形態(直列つなぎ、並列つなぎ)は、限定されない。柔軟電力伝送ユニットを複数備える場合、柔軟電力伝送ユニットの積層数は、特に限定されない。この場合、柔軟電力伝送ユニットごとに、コイル部と外部端子との接続を行ってもよい。無接点電力伝送装置の接続ケーブルは、家庭用電源に接続可能なACアダプタを備えるものでもよい。
【符号の説明】
【0110】
1:充電器(無接点電力伝送装置)
2:柔軟電力伝送ユニット、2a:第一ユニット、2b:第二ユニット、2c:第三ユニット。
20:基材、20a:第一基材、20b:第二基材、20c:第三基材、21:コイル部、22u:表側コイル部、22d:裏側コイル部、23a:第一コイル部、23b:第二コイル部、23c:第三コイル部、200、200b、200c、201、201b、201c:導通孔、210、220u、220d、230a、230b、230c:内周端部、211、221u、221d、231a、231b、231c:外周端部。
30:内周側配線部、31:外周側配線部、32u:表側配線部、32d:裏側配線部、300:内周側端子部、310:外周側端子部、320u:表側端子部、320d:裏側端子部。
40:カバー層、41:配線部カバー層、42u:表側カバー層、42d:裏側カバー層、43:磁性体層、400:導通孔、420u、420d:本体部、421u、421d:凸部。
50:制御部、51:接続ケーブル、500、500u、500d:ケース。
9:携帯電話、90:受電側コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂またはエラストマー製の基材と、該基材の表裏少なくとも一面に配置されエラストマーおよび導電材を含む平面渦巻き状のコイル部と、を有する柔軟電力伝送ユニットと、
該コイル部の端部と外部端子とを接続しエラストマーおよび導電材を含む配線部と、を備えることを特徴とする無接点電力伝送装置。
【請求項2】
前記コイル部および前記配線部は、前記エラストマーおよび前記導電材を含む塗料から形成される請求項1に記載の無接点電力伝送装置。
【請求項3】
前記コイル部および前記配線部の前記導電材は、金属粒子を含む請求項1または請求項2に記載の無接点電力伝送装置。
【請求項4】
前記基材の切断時伸びは、5%以上である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の無接点電力伝送装置。
【請求項5】
前記基材、前記コイル部、および前記配線部の前記エラストマーは、硫黄、硫黄化合物、有機過酸化物を用いずに架橋された架橋ゴム、および熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の無接点電力伝送装置。
【請求項6】
さらに、前記コイル部を覆うように配置されるエラストマー製のカバー層を備える請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の無接点電力伝送装置。
【請求項7】
前記カバー層の前記エラストマーは、硫黄、硫黄化合物、有機過酸化物を用いずに架橋された架橋ゴム、および熱可塑性エラストマーから選ばれる一種以上である請求項6に記載の無接点電力伝送装置。
【請求項8】
前記コイル部は、前記基材の表面に配置され、
前記カバー層は、該コイル部の内周端部との導通を確保するための導通孔を有し、
前記外部端子は、第一外部端子と第二外部端子とを有し、
前記配線部は、該カバー層の表面に配置され該導通孔を介して該内周端部と該第一外部端子とを接続する内周側配線部と、該基材の表面に配置され該コイル部の外周端部と該第二外部端子とを接続する外周側配線部と、を有する請求項6または請求項7に記載の無接点電力伝送装置。
【請求項9】
複数の前記柔軟電力伝送ユニットを備え、該柔軟電力伝送ユニットは、表裏方向に積層される請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の無接点電力伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−62386(P2013−62386A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200159(P2011−200159)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】