無架橋直鎖状低密度ポリエチレン予備発泡粒子
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は無架橋直鎖状低密度ポリエチレン予備発泡粒子に関する。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする問題点〕
予備発泡粒子を型内に充填し加熱し発泡させて得られる、いわゆるビーズ発泡成型体(型内成型体)は緩衝性、断熱性等に優れ、緩衝材、包装材、断熱材、建築資材等広範囲に利用され、その需要は近年富みに増大している。
この種成型体として従来、ポリスチレン発泡粒子からなる成型体が知られていたが、ポリスチレンのビーズ発泡成型体は、脆いという致命的な欠点がある上、耐薬品性にも劣るという欠点を有し、早くからその改善が望まれていた。かかる欠点を解決するものとしてポリエチレン発泡粒子からなる成型体が提案されたが、ポリエチレン樹脂は融点付近での粘度低下が著しいため、通常架橋したものが用いられており、架橋ポリエチレン予備発泡粒子の場合は、型内成型によって低密度(高発泡)の成型体を得ることが困難であり、強いて低密度の成型体を得ようとすると、収縮が著しく、しかも吸水性が大きい、物性の劣った成型体しか得られず、実用に供し得る低密度ポリエチレン成型体は到底得ることができなかった。更に架橋ポリエチレンの原料には、架橋性が良いことから主として高圧法低密度ポリエチレンが用いられているが、高圧法低密度ポリエチレンは耐熱性に当り、剛性が不足することから必然的に比較的低発泡倍率とせざるを得なかった。
これらの問題を解決する方法として、特公昭60−10047号公報には無架橋直鎖状低密度ポリエチレンよりなる予備発泡粒子を用いて成型する方法が提案されているが、無架橋ポリエチレンよりなる予備発泡粒子は成型時の加熱温度範囲が狭く充分に加熱できないことと、無架橋直鎖状低密度ポリエチレンの結晶構造とに起因して、発泡能を付与しないと充分な二次発泡が行なわれず良好な成型体が得られない。このため無架橋直鎖状低密度ポリエチレン予備発泡粒子を成型する場合、成型に先だって予備発泡粒子に発泡剤ガスや空気等の無機ガスを追添して内圧を付与する方法を採用している。しかしながら予備発泡粒子に発泡用ガスや無機ガスを追添することは、設備上及び経費上で多大な出費がかさみ、成型体の製造コストが高くつくという問題があった。しかも一般にポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、無機ガス等を追添して内圧を高めることによって発泡能を付与しても、粒子内ガスが抜け易いために発泡能を長時間維持することが困難であり、これら従来の方法において優れた成型体を得るには内圧付与後、予備発泡粒子を短時間で消費しなければならず、成型業者が予備発泡粒子製造業者から予備発泡粒子の供給を受けるだけで、容易に成型体を製造することができるというものではなかった。
一方、特公昭55−7816号公報には架橋したポリエチレン系樹脂予備発泡粒子に無機ガス等を追添して内圧を付与する前処理を行わずに成型し、次いで樹脂の軟化温度以下〜常温まで冷却した後、樹脂の軟化温度以下〜軟化温度から40℃低い温度に昇温し、その後徐冷し成型体を得る方法が開示されているが、架橋したポリエチレン予備発泡粒子は内圧付与の前処理せずに成型できたとしても、前述したように低密度の成型体を得ることが困難であるという問題を有し、いずれの方法も充分満足のいくものではなかった。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは上記の点に鑑み鋭意研究した結果、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線に2つの吸熱ピークが現われ、かつ高温側の吸熱ピークのエネルギーから5J/g以上である結晶構造を有する無架橋直鎖状低密度ポリエチレン予備発泡粒子が内圧付与の前処理を行なうことなく成型でき、吸水率が低く、収縮のない等優れた物性の低密度成型体を容易に提供し得ることを見出し本発明を完成するに至った。
即ち本発明は無架橋直鎖状低密度ポリエチレン予備発泡粒子であって、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線(ただし予備発泡粒子1〜5mgを示差走査熱量計によって10℃/分の昇温速度で220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線)に2つの吸熱ピークが現われ、かつ高温側の吸熱ピークのエネルギーが5J/g以上である結晶構造を有することを特徴とする無架橋直鎖状低密度ポリエチレン予備発泡粒子を要旨とする。
本発明予備発泡粒子の基材樹脂である無架橋直鎖状低密度ポリエチレン(以下LLDPEと略称する。)としてはエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体が挙げられ、炭素数4〜10のα−オレフィンとしては1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられるが特に1−ブテンが好ましい。またこれらα−オレフィンのLLDPE中の含有率は通常3〜12重量%であるが、特に6〜9重量%が好ましい。
本発明予備発泡粒子は、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線に2つの吸熱ピークが現われ、かつ高温側の吸熱ピークのエネルギーが5J/g以上である結晶構造を有する。高温側ピークと低温側ピークの谷の部分の温度は使用する原料のDSC曲線に現われる吸熱ピークの温度より高温側にあることが好ましい。
上記DSC曲線とは、予備発泡粒子1〜5mgを示差走査熱量計によって10℃/分の昇温速度で220℃まで昇温して測定した時に得られるDSC曲線であり、DSC曲線における固有ピークと高温ピークとは例えば試料を室温から220℃まで10℃/分で昇温測定した時に得られるDSC曲線である。
低温側の吸熱ピークは予備発泡粒子の基材樹脂である無架橋直鎖状低密度ポリエチレンの所謂融解の際の吸熱によるものと考えられる。一方高温側の吸熱ピークは低温側の吸熱ピークとして現われる構造とは異なる結晶構造の存在によるものと考えられ、原料樹脂粒子を同一条件で測定して得たDSC曲線には、樹脂の融解に起因すると考えられる1つの吸熱ピークのみが現われ、2つの吸熱ピークは現われない。従って高温側の吸熱ピークは基材樹脂自体の結晶構造等に起因するものではなく、予備発泡粒子としての形態における結晶構造等に起因するものと考えられる(第1図に予備発泡粒子のDSC曲線を実線で、原料樹脂粒子のDSC曲線を点線で示す。)。
高温側の吸熱ピークのエネルギーは第1図において高温側ピークと低温側ピークの谷の部分(a)で高温側ピーク(b)と低温側ピーク(c)を分割し、谷の部分(a)より高温側のピークの面積を高温側ピーク(b)の面積とし、この面積より求めた値である。即ち高温側の吸熱ピークのチャート上の面積より、以下の式により高温側の吸熱ピークのエネルギーを求めることができる。
高温側の吸熱ピークのエネルギー(J/g)
=〔高温側の吸熱ピークのチャート上の面積(cm3)〕
×〔チャート1cm2当たりの熱量(J/cm2)〕
÷〔測定サンプル重量(g)〕
上記エネルギーは特に5〜25J/gであることが好ましい。
本発明予備発泡粒子は樹脂粒子と揮発性発泡剤とを容器内で例えば水等の分散媒に分散させて加熱保持した後、容器内より低圧下に樹脂粒子と分散媒とを放出して発泡させるに際し、容器内にて樹脂粒子を融解終了温度:Tm(℃)以上に加熱することなく、発泡温度(放出時の温度)を樹脂の融点−20℃以上、融点−10℃未満の範囲とすることにより得られる。上記樹脂の融解終了温度:Tmは、発泡に使用する樹脂粒子を10℃/分で昇温した時に得られるDSC曲線における融解終了温度であり、約2〜5mgのサンプル量で測定される。融点は上記測定によって得られるDSC曲線のピークの頂点の温度である。また予備発泡粒子製造に用いる樹脂粒子は一旦融点以上に加熱した後、結晶化温度−40℃以下の雰囲気において急冷したものが好ましい。尚、結晶化温度とは10℃/分の昇温速度で一旦200℃に昇温し、その後10℃/分の降温速度で降温した時に得られるDSC曲線のピークの頂点の温度をいう。
本発明予備発泡粒子の製造に使用される揮発性発泡剤としては、沸点が−50〜120℃の炭化水素またはハロゲン化炭化水素、たとえばプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、モノクロロメタン、ジクロロメタン、モノクロロエタン、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの揮発性発泡剤は無架橋直鎖状低密度ポリエチレン100部(重量部、以下同様)に対して5〜40部となるように含浸せしめて発泡に供せられる。
水に分散せしめられる無架橋直鎖状低密度ポリエチレン粒子の量としては、水100部に対して10〜100部が生産性および分散安定性をよくし、ユーティリティコスト低減などの点から好ましい。また上記樹脂粒子とともに水に分散せしめる揮発性発泡剤の量は、発泡剤の種類、所望する発泡倍率、容器内の樹脂量と容器内空間との比率などを考慮して樹脂中の発泡剤の含有量が前記範囲になるように決められる。
樹脂粒子を水に分散せしめるに際して必要に応じて分散剤を用いることもできる。分散剤は加熱時の樹脂粒子同士の凝集を防止するために使用されるものであり、たとえばポリビニルアルコール、メチルセルロース、N−ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの難水溶性の無機物質の微粉末が用いられる。前記無機物質を使用する場合には、分散助剤として少量のアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ、アルキルスルホン酸ソーダなどの界面活性剤を併用して無機物質の使用量を少なくすることが、成形時の予備発泡粒子同士の融着をよくするために好ましい。この場合、樹脂粒子100部に対して難水溶性無機物質微粉末0.1〜3部、アニオン界面活性剤0.001〜0.5部程度使用される。また水溶性高分子が用いられる場合には、樹脂粒子100部に対して0.1〜5部程度使用される。
本発明予備発泡粒子はビーズ発泡成型体製造用に用いられるが、本発明予備発泡粒子は成型に先だって、内圧付与の前処理を行なわずに用いても収縮等のない低密度の優れた成型体を得ることができる。
〔実施例〕
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1〜3、比較例1〜2エチレンと1−ブテンを共重合せしめてなり、第1表に示す密度、メルトフローレイト(MFR)融点を有するLLDPEを押出機にて溶融し、その後ダイスからストランド状に押出し、水中で急冷し約4mg/個のペレットに造粒した。その後400

〔発明の効果〕
以上説明したように本発明無架橋直鎖状低密度ポリエチレン予備発泡粒子は示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線に2つの吸熱ピークが現われ、かつ高温側の吸熱ピークのエネルギーが5J/g以上である結晶構造を有することによって、無架橋直鎖状低密度ポリエチレン予備発泡粒子でありながら成型時の加熱温度範囲が広く、内圧付与の前処理を施さずとも良好な成型体を得ることができ、内圧付与のための設備や内圧付与工程にかかる経費を削減することができる。更に本発明予備発泡粒子によれば収縮が少なく、吸水性の低い等、優れた物性を有し、しかも低密度の成型体を容易に得ることができる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
第1図は原料樹脂粒子及び本発明予備発泡粒子の示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線であり、実線は本発明の予備発泡粒子の、破線は本発明予備発泡粒子の製造に用いた原料樹脂粒子のDSC曲線である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】無架橋直鎖状低密度ポリエチレン予備発泡粒子であって、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線(ただし予備発泡粒子1〜5mgを示差走査熱量計によって10℃/分の昇温速度で220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線)に2つの吸熱ピークが現われ、かつ高温側の吸熱ピークのエネルギーが5J/g以上である結晶構造を有することを特徴とする無架橋直鎖状低密度ポリエチレン予備発泡粒子。
【第1図】
【公告番号】特公平7−39501
【公告日】平成7年(1995)5月1日
【国際特許分類】
化学;冶金 | 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物 | 仕上げ;一般的混合方法;サブクラスC08B,C08C,C08F,C08GまたはC08Hに包含されない後処理 | 多孔性または海綿状の物品または物質にするための高分子物質の処理;その後処理 | 発泡性粒子の製造
化学;冶金 | 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物 | 仕上げ;一般的混合方法;サブクラスC08B,C08C,C08F,C08GまたはC08Hに包含されない後処理 | 多孔性または海綿状の物品または物質にするための高分子物質の処理;その後処理 | 発泡性粒子の後処理;発泡生成物の成形
【出願番号】特願昭62−156310
【出願日】昭和62年(1987)6月23日
【公開番号】特開昭64−1741
【公開日】昭和64年(1989)1月6日
【出願人】(999999999)日本スチレンペ−パ−株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭60−49040(JP,A)
【文献】特開昭59−176336(JP,A)
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