無極性溶媒中の磁気的に調節可能なフォトニック結晶の集合
電荷制御剤を使用して、長距離での静電気斥力を確立し、無極性溶媒中で磁気的に調節可能なフォトニック特性を持つ、超常磁性コロイドを規則構造にする方法。AOT分子などの電荷制御剤の導入による逆ミセルは、n−オクタデシルトリメトキシシラン修飾Fe3O4@SiO2粒子の表面の電荷分離を増大できる。著しく改良された長距離での静電反発力によって、磁気的に誘導される引力と釣り合うことができ、その結果、無極性溶媒中で超常磁性コロイドを規則正しく配列させることができる。この系は、外部磁場に対して高速で完全に可逆的な光応答性、性能の長期安定性、および良好な回折強度を持つ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその内容が本明細書に取り込まれる、2009年2月23日に出願された米国特許仮出願第61/154,659号、および、2009年2月23日に出願された米国特許仮出願第61/154,717号の利益を主張する。
本発明は、無極性溶媒中で長距離での静電気の斥力を確立するための方法および系に関し、それは超常磁性コロイドを、磁気的に調節可能なフォトニック特性を持つ規則構造にすることが可能になる。
【背景技術】
【0002】
当然のことながら研究者は、規則構造を形成できるマグネタイトナノ粒子をこれまで合成してきた。たとえば、超常磁性コロイドナノ結晶クラスタ(CNC)の溶液に外部磁場をかけることによって、単一材料による構造色の動的な調節をできることが、明らかにされた。たとえば、Ge,J.,Hu,Y.&Yin,Y.,Highly tunable superparamagnetic colloidal photonic crystals,Angew.Chem.Int.Ed.46,7428−7431(2007年)参照。これらの規則構造は、さまざまな色が生成されるように、光を回折し、色の波長は規則構造中のナノ結晶の空間距離によって異なる。空間距離は、ナノ粒子の特性を変更することによって調節可能であり、たとえば、CNCのフォトニックバンドギャップは、高速な応答時間で全可視スペクトルをカバーするように変更できることが、Ge,J.&Yin,Y.,Magnetically tunable colloidal photonic structures in alkanol solutions,Adv.Mater.20,3485−3491(2008年)に記載されている。しかしながら、製造におけるこの特徴の費用効果および拡張可能な実施によって、電子機器、表示装置、および乗り物などの多色商品の生産が非常に簡単になる。
さらに、ナノ結晶に関する先行研究は、伝統的に極性溶媒の使用に限定されていた。したがって、これらの材料を、製造加工技術に対応できる無極性溶媒で、使用できれば非常に有益である。
本明細書に記載される本発明は、無極性溶媒中で使用できる修飾ナノ粒子を含有する組成物、溶媒構成要素と組み合わせた修飾ナノ粒子、ならびに前記組成物の製造方法および使用方法を記載する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
例示的な実施形態によれば、光を回折して色を生成する、規則構造を形成する方法は、疎水性コーティングで複数のナノ粒子をコーティングして、ナノ粒子が無極性溶媒溶液に可溶であるようにする工程と、電荷制御剤を無極性溶媒溶液へ添加する工程とを含み、ここで電荷制御剤はナノ粒子間の電荷分離を増大させ、粒子間隔が調節可能である規則構造を形成する。
別の例示的な実施形態によれば、光を回折して色を生成する規則構造を形成する方法は、複数の磁鉄鉱結晶を疎水性コーティングでコーティングして結晶が無極性溶媒溶液で可溶性であるようにする工程と、前記無極性溶媒溶液に界面活性剤を添加する工程とを含み、ここで界面活性剤は結晶間の電荷分離を増大させ、粒子間隔が調節可能である規則構造を形成する。
開示された1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付図面および以下の詳細な説明に記述されている。他の特徴、目的、および利点は、詳細な説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
さらに本発明を理解するために添付図面が含まれ、それらは本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本発明の実施形態を示し、詳細な説明と共に、本発明の原理を説明する機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】無極性溶媒中の超常磁性コロイドの表面に、負電荷を生成させる概略図を示し、電荷制御剤であるナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホサクシネート(AOT)を導入し(左側)、外部磁場を用いて該荷電粒子を調節可能なフォトニック構造にする(右側)。
【図2】磁石と試料との距離を変えることによって実現される外部磁場の強度変化によって変わる、163−nm(115/24−nm)Fe3O4@SiO2粒子の1,2−ジクロロベンゼン(DCB)溶液中のn−オクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS)の反射スペクトルを示し、ここで、距離が0.2cmステップサイズで、4.3cmから2.3cmに小さくなるにつれて、回折ピークはブルーシフトし、挿入図は、2つの異なる強度を持つ磁場のもとで、緑色光と赤色光を回折する、DCB溶液のデジタル写真を示す。
【図3a】外部磁場の強度変化によって変化する、167−nm(103/32−nm)Fe3O4@SiO2粒子、および、(a)0mgAOTを含有する1.5mlDCB溶液の反射スペクトルを示す。
【図3b】外部磁場の強度変化によって変化する、167−nm(103/32−nm)Fe3O4@SiO2粒子、および、(B)1mgAOTを含有する1.5mlDCB溶液の反射スペクトルを示す。
【図3c】5つの異なる強度の磁場中での、(c)回折波長のAOT濃度依存性を示す。
【図3d】5つの異なる強度の磁場中での、(d)強度のAOT濃度依存性を示す。
【図4】1つの例示的な実施形態に使用されるNdFeB磁石での、試料と磁石との距離による磁場強度の依存性を示す。
【図5】粒子とAOTを含有する溶液の両端に280Vの電圧を印加したDCB中のODTMS修飾Fe3O4@SiO2コロイドの電気泳動法を示し、ここで電圧は、2つの浸されたステンレス鋼電極を介して印加され、約10分後に、Fe3O4@SiO2粒子の茶色っぽい沈殿物がアノードに現れるが、カソードはきれいなままであり、これはシリカ表面がマイナスに帯電していることを示している。
【図6】磁石と試料との距離を変えることによって実現される外部磁場の強度変化によって変わる、137−nm(96/20.5−nm)Fe3O4@SiO2粒子のDCB溶液の反射スペクトルを示し、0.2cmステップサイズで3.5cmから1.7cmに距離を小さくするにつれて、回折ピークはブルーシフトし、ここで挿入図は、2つの異なる強度を持つ磁場のもとで、青色光および緑色光を回折するDCB溶液のデジタル写真を示す。
【図7】磁石と試料との距離を変えることによって実現される外部磁場の強度変化によって変わる、182−nm(116/33−nm)Fe3O4@SiO2粒子のDCB溶液の反射スペクトルを示し、0.2cmステップサイズで3.5cmから1.7cmに距離を小さくするにつれて回折ピークはブルーシフトし、ここで挿入図は、2つの異なる強度を持つ磁場のもとで、赤色光および赤外光を回折するDCB溶液のデジタル写真を示す。
【図8】外部磁場の強度変化によって変化する、167−nm(103/32−nm)Fe3O4@SiO2粒子と0〜32mgAOTを含有する1.5ml(ミリリットル)DCB溶液の反射スペクトルを示す。
【図9】それぞれが4mgAOTを含有する1.5ml有機溶媒中で組み立てられる、143−nm(90/26.5−nm)Fe3O4@SiO2粒子の反射スペクトルを示し、ここで、DCB、トルエンおよびヘキサン、THF溶液の回折は、325ガウス磁場で測定され、クロロホルム溶液の回折は、134ガウス磁場で測定された。
【図10】図9に示される異なる溶媒中で、フォトニック結晶を組み立てるために使用される、Fe3O4@SiO2コロイドの典型的なTEM画像を示し、粒度分布の統計的結果は、Fe3O4コアの直径が89.6±9.2nmであり、Fe3O4@SiO2コア/シェルコロイドの平均直径は143.1±10.7nmであることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、光を回折して色を生成する規則構造を形成することができるナノ粒子(以下「ナノ粒子」と称する)の使用法を対象とする。
例示的な実施形態によれば、本発明は、疎水性コーティングでマグネタイト結晶をコーティングして無極性溶媒に可溶であるようにする工程と、電荷に影響を及ぼして、粒子が適切な斥力によって規則構造を形成する、界面活性剤を溶液に添加する工程とを含む。
当然のことながら疎水性コーティングは、疎水性物質でナノ粒子を直接コーティングすることで達成される。たとえば、例示的な実施形態によれば、界面活性剤はナノ粒子に直接結合でき、無極性溶媒中に溶解する。代替実施形態によれば、脂肪族アルコールは、エステル化反応を介してポリアクリル酸に結合でき、粒子を直接疎水性にする。別の例示的な実施形態によれば、元のキャッピングリガンドと結合オルガノシランは、ナノ粒子表面へ直接結合するために除去できる。
【0006】
ナノ粒子は、多層アプローチを介して、疎水性溶媒中で可溶性にもできる。たとえば、中間層は、ナノ粒子の表面に結合でき、そして疎水性材料を中間層に付着できる。例示的な実施形態によれば、中間層は、磁鉄鉱結晶と疎水性材料の両方に結合できる、何れかの材料である。たとえば、中間層は、無機酸化物とポリマーとの両方を含有する。例示的な実施形態によれば、マグネタイト粒子表面にコーティングを形成でき、無極性溶媒中で安定なことが要件であり得る。当然のことながら、加水分解反応および沈降反応などの多くの反応が、無機酸化物をマグネタイト粒子に結合するために使用できる。さらに、マグネタイト粒子を、エマルション重合、分散重合、およびリビング重合などのポリマーシェルでコートする方法もいくつかある。
さらに、これに限定されるわけではないが、オルガノシランを含有する多くの化学物質が、疎水性分子で粒子表面を修飾するために使用できる。例示的な実施形態によれば、該化合物に要求されることは、共有結合によって分子を粒子表面へ結合させるように、粒子表面と反応できる少なくとも1つの反応基を含有し、および同時に最終的に無極性溶媒中で、粒子を可溶性にする疎水基を含有することである。
【0007】
オルガノシランは、無機酸化物の表面特性を、都合良く修飾できるために使用できる一群の化合物である。オルガノシランの反応基によるが、多様な反応が、オルガノシランを粒子表面に結合するために使用できる。以下の実施例では、ODTMSは、アルコール分解反応を介して表面シラノールにアタックできる加水分解性アルコキシ基を含有する。オルガノシランの他の選択には、これに限定されるわけではないが、イソブチル(トリメトキシ)シラン、ヘキシルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、トリエトキシ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]シラン、オクチルトリメトキシシランが含まれる。
脂肪族アルコールも、表面シラノール基のアルコールとのエステル化反応を介して、シリカ表面へ結合でき、疎水性アルキル鎖の単分子層コーティング層を形成する。典型的な脂肪族アルコールには、これに限定されるわけではないが、1−オクタデカノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノール、1−テトラデカノール、1−デカノール、イソステアリルアルコールが含まれる。
ポリマーコーティングには、これに限定されるわけではないが、グラフト重合およびエステル化反応を含む多くの表面変更方法がある。
【0008】
本発明はさらには、規則構造を形成するために、ナノ粒子の適切な空間を維持するために、界面活性剤の使用を含む。これらの界面活性剤は、疎水基(それらの「尾部」)と親水基(それらの「頭部」)との両方を含有し、および無極性溶媒中で逆ミセルを形成できる、いずれかの両親媒性有機化合物であり得る。それらは、ペルフルオロオクタノエート、ペルフルオロオクタンスルホネート、ナトリウムドデシルサルフェート、アンモニウムラウリルサルフェート、および他のアルキルサルフェートの塩、ナトリウムラウレスサルフェート、アルキルベンゼンスルホネート、脂肪酸塩などのサルフェート、スルホネートまたはカルボキシレートアニオンを含有するアニオン性化合物であり得る。それらは、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、および他のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム、ポリエトキシレート化タロウアミン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの第4級アンモニウムカチオンを有するカチオン化合物であってもよい。ドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン、およびココ両性グリシネートなどの両性イオン性界面活性剤は、この目的のために使用できる。該界面活性剤は、アルキルポリ(酸化エチレン)アルキルフェノール、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(酸化エチレン)とポリ(酸化プロピレン)のコポリマー、アルキルポリグルコシド、脂肪族アルコール、およびポリソルベートなどの非イオン性化合物を含有する。
【0009】
(例)
磁場応答性フォトニック構造は、これに限定されるわけではないが、カラー表示装置、生物学的センサーおよび化学センサー、および能動的光学部品を含む領域で重要な用途がある。例示的な実施形態によれば、水溶液中で超常磁性酸化鉄コロイド粒子を集合させることによって、磁気的に調節可能なフォトニック結晶系が達成される。当然のことながら、成功裏に集合させ、およびフォトニック特性の調節可能範囲が広いための1つの要素は、粒子を周期的構造に並べることができる、長距離での斥力相互作用と引力相互作用を確立することである。水溶液の超常磁性酸化鉄粒子の場合には、外部磁場は、磁場に沿って隣接する磁気粒子の間に強い引力を誘導し、お互いを近くに寄せる。高密度負電荷を含有する高分子電解質の層を磁気粒子にコーティングすることによって、静電気の斥力が粒子にもたらされる。2つの力がバランスし、最終的に粒子を、等距離で粒子間が分離された長鎖に形成する。集合した構造の周期性と入射光の波長が、ブラッグの条件を満たすときに、回折が発生する。磁場強度の変動によって引力の大きさが変化し、従って、粒子間距離が変化し、最終的に回折波長が変化する。該系の利点としては、すべての可視スペクトルを含む広い範囲で調節可能なこと、高速で完全に可逆的な応答ができること、およびデバイス製造の小型化に適合することが挙げられる。
【0010】
当然のことながら、実際の用途では、長期安定性とデバイス製造プロセスで改良された適合性を達成するために、非水溶媒の使用がしばしば要求される。粒子分散性に加えて、調節可能なフォトニック結晶を構築するための大きな課題は、非水溶媒では、ほとんどの場合に静電気力が大幅に減少するので、磁気による引力とバランスするために、長距離で十分に強い斥力を確立することである。当然のことながら集合プロセスは、長距離での静電気力および短距離の溶媒和力の使用によって、アルカノール溶媒に拡張でき、その短距離の溶媒和力は、粒子表面を覆う親水性シリカ上の2つの比較的厚い溶媒和層の重なりに起因する。しかしながら、当然のことながら、無極性溶媒中の、長距離での静電気の反発相互作用を確立するために、表面電荷を形成するためのエネルギー障壁は、水でのものに比較して約40倍大きい。さらに、無極性溶媒中の2つの疎水性表面間の溶媒和力は、非常に薄い溶媒和層のために無視できる。
例示的な実施形態によれば、電荷制御剤は、電荷分離のエネルギー障壁を低減するために、無極性溶媒に導入されるので、長距離での静電気の反発相互作用を生成して、磁力に対抗して超常磁性コロイドを整列させる。
【0011】
例示的な実施形態によれば、無極性溶媒中の酸化鉄粒子の分散性は、十分に開発されたシラン化学を利用した、表面修飾によって改良できる。典型的なプロセスでは、約163nm位の平均直径を有する、均一な超常磁性Fe3O4コロイド粒子が、最初に合成され、そして修正されたStoberプロセスを使用して、シリカの薄い層でコートされる。Fe3O4@SiO2粒子を空気中で乾燥させ、そして1,2−ジクロロベンゼン(DCB)中のn−オクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS)の溶液へ移す。混合物を120℃で3時間攪拌して、アルコール分解反応によって、オルガノシランの加水分解性アルコキシ基に表面シラノールをアタックさせる。その結果、疎水性アルキル鎖の単分子層は、共有−Si−O−Si−結合を介してシリカ表面にグラフトし、1,2−ジクロロベンゼン、トルエン、クロロホルム、およびヘキサンなどのほとんどの無極性溶媒で粒子を分散させる。
グラフトされた疎水性鎖のグラフト度(親水性シラノールの消失)と遮蔽能力の両方は、無極性溶媒中の修飾Fe3O4@SiO2粒子の分散性に寄与する。一般に、長い反応時間(すなわち、3時間を超える)および触媒が無くても反応性がよいメトキシ基などの、小さいアルコキシ基の使用は、高グラフト度に好ましい。一方、未反応シラノール基を効果的に遮蔽できるので、長いアルキル鎖を含むオルガノシランは好ましい。小さいアルコキシ基と比較的長いアルキル鎖を含むので、試験された多くのオルガノシランの中で、ODTMSは分散性に非常に効果的である。
【0012】
しかしながら、トルエンおよびヘキサンなどの無極性溶媒中で、表面修飾粒子を直接集合させるることは、磁気による引力とバランスさせるための、長距離での強い斥力が存在しないために困難である。液体中での帯電の熱力学は、熱エネルギーによってきちんとバランスの取れたそのクーロン力相互作用による2つのイオン間の特徴的な間隔である、Bjerrum長によって制御されることが知られている。ほとんどの場合に、無極性溶媒は極性溶媒に比べて、誘電率が非常に小さく、非常に大きいBjerrum長を有するので、電荷分離はきわめて困難であり、およびエネギー的に高いので、無極性溶媒中の静電反発力は無視できることが一般に予想される。しかしながら、例示的な実施形態によれば、無極性分散系に電荷制御剤または界面活性剤を添加すると、直径数ナノメートルの小さな逆ミセルを生成でき、それらの対イオンをミセルの中心部に安定化させるので、電荷分離のエネルギー障壁を低減し、表面電荷を増強する。実際に無極性溶媒の電荷キャリア濃度は小さいので、静電相互作用の遮蔽度は小さく、電荷相互作用は非常に長距離で働く。その結果、単純に電荷制御剤を導入することによって、遮蔽距離κ-1が0.2から1.4μmで強い静電反発力を持つように達成できる。さらに、ミセルのごく一部が、熱変動によって自然発生的にイオン化するので、長距離のスケールで粒子相互作用の遮蔽に貢献する。従って、逆ミセルの添加によって、無極性分散系の電荷挙動は、多くの方法で水溶液系のそれを擬態することになる(図1)。たとえば、静電相互作用は、極性液体に対するDerjaguin、Landau、VerweyおよびOverbeek(DLVO)の古典理論から予測されるのと同一の機能的形態を有するので、電荷挙動は二重層モデルと類似している方法で説明できる。加えて、高電荷水性コロイドと比べて、粒子表面のポテンシャルが非常に大きい。例示的な実施形態によれば、電荷制御剤によって誘導される長距離での静電反発力は、無極性溶媒中の超常磁性コロイドを集合させるために、磁力と釣り合うことができる。
【0013】
例示的な実施形態によれば、典型的なイオン性界面活性剤であるナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホサクシネート(AOT)を電荷制御剤として選択した。例示的な実施形態によれば、ODTMS修飾Fe3O4@SiO2コロイドは、AOTを添加したほとんどの無極性溶媒中で、良好な分散を維持することが見い出された。誘導された表面電荷を定性的に特徴付けるためには、簡単な電気泳動法を、粒子とAOTの両方を含有するDCB溶液に、2つの浸されたステンレス鋼電極を介して電圧(280V)を印加することによって実施できる(図2)。約10分後に、Fe3O4@SiO2粒子の茶色っぽい沈殿物がアノードに現れるが、カソードはきれいなままである。当然のことながら、この実験によって、電荷制御剤AOTの添加による増強された電荷分離を確認するだけではなく、シリカ表面も、マイナスに帯電していることを示している。
【0014】
当然のことながら、長距離での静電気の反発相互作用の確立を成功することで、外部磁場に誘導される引力とバランスさせることによって、無極性溶媒中で超常磁性コロイドを調節可能なフォトニック結晶にすることも可能になる。水溶液およびアルカノール溶液の場合に比較して、現在の系は、外部磁場に対して高速で完全に可逆的な光応答、長期安定性、および合理的な強い回折強度を維持する。図2は、磁石と試料との間の距離を変えて磁場を変化させることよって変化する、DCB中のFe3O4@SiO2フォトニック結晶の典型的な反射スペクトルを示す。回折ピークは、磁場が191ガウスから622ガウスに増加するにつれて、665nmから564nmにブルーシフトする。水溶液の場合と同様に、変化する磁気による引力とバランスするために、静電反発力の強度を変えるために必要な粒子間距離の自動調節によって、回折の調節が実現される。回折ピークの輪郭は、磁場が調節される歪んだプロファイルを示し、これはアルカノールの場合と類似しており、短距離での構造的な斥力と、さらに長距離での静電気力の存在を意味する。無極性溶媒中の典型的なフォトニック結晶の調節範囲は、約150nm以内であり、それは、水溶液系とは異なり、すべての可視スペクトルをカバーできない。青〜緑色(図6)、緑〜赤色(図2)、および赤〜赤外(図7)などのさまざまな色を表示するために、必要に応じて、異なる大きさのFe3O4@SiO2構成要素を集合できる。
【0015】
例示的な実施形態によれば、電荷制御剤AOTは、超常磁性コロイド粒子の集合挙動を制御するために、重要な役割を演じる。AOTの無いDCB溶液では、図3aに示すように、疎水性Fe3O4@SiO2コロイドは、大きくなる外部磁場中で回折強度がわずかに大きくなる規則構造に自己組織化できる。しかしながら、回折ピークは固定波長に留まったままであり、これは長距離での強い斥力が欠けていることを示す。コロイド粒子は、剛体球のように挙動するので、接触するように接近する場合にだけ強い斥力が発現し、粒子分離を調節することは不可能である。AOTが同一溶液に添加される場合には、増大した電荷分離によって、相当な負電荷が粒子表面に形成される。粒子は、動的に磁力とバランスし、粒子間隔が調節可能な鎖にする長距離での静電気力によってお互いに作用する。図3bに示すように、外部磁場の強度を変化させることによって、回折ピークは赤色側にシフトして、約150nmの範囲で調節できる。
【0016】
小さなAOTミセルは、静電相互作用の強度を決定する場合に、2つの機能を発揮する。一実施形態によれば、純粋な無極性溶媒中では、コロイドから分離することが元来困難である表面イオンに、ミセルは極性環境を付与する。ミセルは衝突によって内容物を交換できるので、イオンは、正味の荷電コロイド表面を残したままで、バルク溶液の中に入り込むことができる。別の実施形態によれば、AOT分子はNa+および対イオンに解離でき、次いでミセル交換によって分離され、荷電ミセルを形成する。水性コロイド系のイオンと同様に、これらの荷電ミセルは、無極性溶媒中で静電相互作用を遮蔽できる(図1)。
【0017】
2つの機能は、AOTの濃度による回折波長の依存性を調査することによって明確に観察できる。例示的な実施形態によれば、外部磁場に対応した、異なる濃度のAOTを含有する系の、一連の回折スペクトルが記録された(図8)。データは、固定磁場におけるAOT濃度による回折波長の依存性を示すために、図3Cに再プロットされた。低濃度でのAOTの最初の効果の1つは、粒子表面に電荷分離を誘導することであり、これは回折ピークの赤色側への大きなシフトによって明らかである。赤色側へのシフトが最大になると、さらに、AOTの濃度の増加によって、水溶液中のイオン強度が増加するのと同様に、粒子間の静電相互作用を遮蔽する、遊離した荷電ミセルを生成する。その結果、回折の調節範囲は、それぞれの濃度で黒色と空色点の差として示されているように、さらなるAOTの添加によって縮まる。したがって、図3dに示すように、AOT濃度が中間値に増加した時点で、最大回折強度に到達できる。追加のAOTによって回折強度を低減させ、それは水溶液に塩を添加する場合と一致する。例示的な実施形態によれば、荷電ミセルから遮蔽されても、AOTが無い場合よりも、全体の回折強度が非常に大きいことは注目に値する。
【0018】
従って、無極性溶媒中で長距離での静電気斥力を確立することによって、超常磁性コロイドを、磁気的に調節可能なフォトニック特性を持つ規則構造に集合させることが可能になった。AOT分子などの電荷制御剤の導入によって、ODTMS修飾Fe3O4@SiO2粒子の表面上で電荷分離を高めることができるミセルを生成する。大きく改良された長距離での静電反発力は、磁気的に誘導される引力とバランスするので、無極性溶媒中に超常磁性コロイドを整列させることができる。この系は、外部磁場に対して高速で完全に可逆的な光応答と、性能の長期安定性と、良好な回折強度とを提供する。磁場応答性フォトニック特性を利用する潜在的な技術用途ばかりではなく、低誘電率の溶媒中の帯電メカニズムなどの基本的な話題を研究するために、この系は便利で、定量的な光学的な方法を提供できる。
【実施例】
【0019】
実験の項
化学物質
エタノール(変性)、水酸化アンモニウム水溶液(28%)、トルエン(99.8%)、クロロホルム(99.8%)、およびヘキサン(99.9%)をFisher Scientificから購入した。テトラエチルオルトシリケート(TEOS、98%)、1,2−ジクロロベンゼン(DCB、99%)をSigma−Aldrichから手に入れた。N−オクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS、99%)をGelestから購入した。ジオクチルスルホサクシネート、ナトリウム塩(AOT、96%)をアクロスオーガニックスから入手した。
【0020】
疎水性Fe3O4@SiO2コロイドの合成
Fe304超常磁性コアが、既に報告された高温加水分解反応によって調製された。Fe3O4@SiO2コア/シェルコロイドが、修正されたStoberプロセスによって調製された。典型的には、Fe3O4CNC(約25mg)を含有する水溶液(3ml)をエタノール(20ml)と混合し、アンモニア水(28%、1ml)と活発に磁気攪拌させた。TEOS(0.2ml)を溶液に注入して、混合物を40分間反応させた。2回の遠心分離と再分散を介してエタノールで洗浄後に、粒子を空気中で乾燥させて、1,2−ジクロロベンゼン(DCB、24ml)とn−オクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS、0.5ml)の混合物へ移し、30分間N2ガスで脱気し、3時間120℃へ昇温させてシリカ表面を疎水性炭素鎖で官能化させた。室温に冷却後に、修飾Fe3O4@SiO2コロイドをトルエンで洗浄し、DCB、クロロホルム、トルエンおよびヘキサンなどの異なる無極性溶媒(一般に4ml)に分散させた。
【0021】
無極性溶媒中の磁気的に調節可能なフォトニック結晶の集合
例示的な実施形態によれば、DCBを無極性溶媒の典型的な例として使用した。異なる濃度のAOTを含有するDCB(0.5ml)の原液が事前に調製された。疎水性Fe304@SiO2コロイドのDCB溶液(1ml)を上記のAOT溶液と混合し、均一で透明な分散系を形成した。外部磁場を溶液に印加することによって、Fe3O4@SiO2コロイドを、光学回折を有する規則構造に集合させた。同様の手順が、トルエン、クロロホルム、またはヘキサンなどの他の無極性溶媒に使用された。通常2%未満の粒子多分散性を要求する、細密のコロイドフォトニック結晶とは異なって、元のFe3O4コロイドの大きさによって異なるが、Fe3O4@SiO2コロイドの典型的な粒度分布は約5%から10%で変化する。シリカコーティングプロセスは、ほとんどの場合で試料の単分散を改良する。独特の鎖状の非細密構造および高誘電率比によって、これらのコロイドは強い回折強度を有するフォトニック結晶を形成できる。図10に示される粒度分布と同様の粒度分布およびおよびそれらに対応する回折スペクトルに関する多くの統計的調査から、粒子単分散が改善されるにつれて、回折ピークが狭くなり、強度が増すことが見い出され、これは細密のコロイド結晶の場合と一致する。
【0022】
特性評価
Tecnai T12型透過型電子顕微鏡(TEM)が、コア/シェルコロイド形態の特性評価をするために使用された。適切な濃度で水に分散した試料を、炭素がコートされた銅グリッドにキャストし、その後、室温の真空下で蒸発させた。フォトニック結晶の回折スペクトルが、1つの反射/後方散乱プローブで6往復するOceanOptics製のHR2000CG−UV−NIR分光計によって測定された。典型的な測定では、Fe3O4@SiO2コロイドの無極性溶液を含有する薄いガラス容器が、NdFeB磁石と反射プローブとの間に設置された。プローブはガラス容器に垂直で、磁場の向きに平行であった。磁場を、試料から特定の距離で固定し、反射ピークを測定した。
【0023】
前述の記載は好ましい実施形態であり、したがって、該物品およびその製造方法の代表例にすぎないことが理解されるであろう。当然のことながら、上記の本教示内容を踏まえた、異なる実施形態の多くの変形および変更が、当業者には容易に明らかになるであろう。したがって、例示的な実施形態ばかりではなく、代替実施形態も、添付の特許請求の範囲に記載の物品および方法の精神、および範囲を逸脱しない範囲で実施可能である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその内容が本明細書に取り込まれる、2009年2月23日に出願された米国特許仮出願第61/154,659号、および、2009年2月23日に出願された米国特許仮出願第61/154,717号の利益を主張する。
本発明は、無極性溶媒中で長距離での静電気の斥力を確立するための方法および系に関し、それは超常磁性コロイドを、磁気的に調節可能なフォトニック特性を持つ規則構造にすることが可能になる。
【背景技術】
【0002】
当然のことながら研究者は、規則構造を形成できるマグネタイトナノ粒子をこれまで合成してきた。たとえば、超常磁性コロイドナノ結晶クラスタ(CNC)の溶液に外部磁場をかけることによって、単一材料による構造色の動的な調節をできることが、明らかにされた。たとえば、Ge,J.,Hu,Y.&Yin,Y.,Highly tunable superparamagnetic colloidal photonic crystals,Angew.Chem.Int.Ed.46,7428−7431(2007年)参照。これらの規則構造は、さまざまな色が生成されるように、光を回折し、色の波長は規則構造中のナノ結晶の空間距離によって異なる。空間距離は、ナノ粒子の特性を変更することによって調節可能であり、たとえば、CNCのフォトニックバンドギャップは、高速な応答時間で全可視スペクトルをカバーするように変更できることが、Ge,J.&Yin,Y.,Magnetically tunable colloidal photonic structures in alkanol solutions,Adv.Mater.20,3485−3491(2008年)に記載されている。しかしながら、製造におけるこの特徴の費用効果および拡張可能な実施によって、電子機器、表示装置、および乗り物などの多色商品の生産が非常に簡単になる。
さらに、ナノ結晶に関する先行研究は、伝統的に極性溶媒の使用に限定されていた。したがって、これらの材料を、製造加工技術に対応できる無極性溶媒で、使用できれば非常に有益である。
本明細書に記載される本発明は、無極性溶媒中で使用できる修飾ナノ粒子を含有する組成物、溶媒構成要素と組み合わせた修飾ナノ粒子、ならびに前記組成物の製造方法および使用方法を記載する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
例示的な実施形態によれば、光を回折して色を生成する、規則構造を形成する方法は、疎水性コーティングで複数のナノ粒子をコーティングして、ナノ粒子が無極性溶媒溶液に可溶であるようにする工程と、電荷制御剤を無極性溶媒溶液へ添加する工程とを含み、ここで電荷制御剤はナノ粒子間の電荷分離を増大させ、粒子間隔が調節可能である規則構造を形成する。
別の例示的な実施形態によれば、光を回折して色を生成する規則構造を形成する方法は、複数の磁鉄鉱結晶を疎水性コーティングでコーティングして結晶が無極性溶媒溶液で可溶性であるようにする工程と、前記無極性溶媒溶液に界面活性剤を添加する工程とを含み、ここで界面活性剤は結晶間の電荷分離を増大させ、粒子間隔が調節可能である規則構造を形成する。
開示された1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付図面および以下の詳細な説明に記述されている。他の特徴、目的、および利点は、詳細な説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
さらに本発明を理解するために添付図面が含まれ、それらは本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本発明の実施形態を示し、詳細な説明と共に、本発明の原理を説明する機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】無極性溶媒中の超常磁性コロイドの表面に、負電荷を生成させる概略図を示し、電荷制御剤であるナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホサクシネート(AOT)を導入し(左側)、外部磁場を用いて該荷電粒子を調節可能なフォトニック構造にする(右側)。
【図2】磁石と試料との距離を変えることによって実現される外部磁場の強度変化によって変わる、163−nm(115/24−nm)Fe3O4@SiO2粒子の1,2−ジクロロベンゼン(DCB)溶液中のn−オクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS)の反射スペクトルを示し、ここで、距離が0.2cmステップサイズで、4.3cmから2.3cmに小さくなるにつれて、回折ピークはブルーシフトし、挿入図は、2つの異なる強度を持つ磁場のもとで、緑色光と赤色光を回折する、DCB溶液のデジタル写真を示す。
【図3a】外部磁場の強度変化によって変化する、167−nm(103/32−nm)Fe3O4@SiO2粒子、および、(a)0mgAOTを含有する1.5mlDCB溶液の反射スペクトルを示す。
【図3b】外部磁場の強度変化によって変化する、167−nm(103/32−nm)Fe3O4@SiO2粒子、および、(B)1mgAOTを含有する1.5mlDCB溶液の反射スペクトルを示す。
【図3c】5つの異なる強度の磁場中での、(c)回折波長のAOT濃度依存性を示す。
【図3d】5つの異なる強度の磁場中での、(d)強度のAOT濃度依存性を示す。
【図4】1つの例示的な実施形態に使用されるNdFeB磁石での、試料と磁石との距離による磁場強度の依存性を示す。
【図5】粒子とAOTを含有する溶液の両端に280Vの電圧を印加したDCB中のODTMS修飾Fe3O4@SiO2コロイドの電気泳動法を示し、ここで電圧は、2つの浸されたステンレス鋼電極を介して印加され、約10分後に、Fe3O4@SiO2粒子の茶色っぽい沈殿物がアノードに現れるが、カソードはきれいなままであり、これはシリカ表面がマイナスに帯電していることを示している。
【図6】磁石と試料との距離を変えることによって実現される外部磁場の強度変化によって変わる、137−nm(96/20.5−nm)Fe3O4@SiO2粒子のDCB溶液の反射スペクトルを示し、0.2cmステップサイズで3.5cmから1.7cmに距離を小さくするにつれて、回折ピークはブルーシフトし、ここで挿入図は、2つの異なる強度を持つ磁場のもとで、青色光および緑色光を回折するDCB溶液のデジタル写真を示す。
【図7】磁石と試料との距離を変えることによって実現される外部磁場の強度変化によって変わる、182−nm(116/33−nm)Fe3O4@SiO2粒子のDCB溶液の反射スペクトルを示し、0.2cmステップサイズで3.5cmから1.7cmに距離を小さくするにつれて回折ピークはブルーシフトし、ここで挿入図は、2つの異なる強度を持つ磁場のもとで、赤色光および赤外光を回折するDCB溶液のデジタル写真を示す。
【図8】外部磁場の強度変化によって変化する、167−nm(103/32−nm)Fe3O4@SiO2粒子と0〜32mgAOTを含有する1.5ml(ミリリットル)DCB溶液の反射スペクトルを示す。
【図9】それぞれが4mgAOTを含有する1.5ml有機溶媒中で組み立てられる、143−nm(90/26.5−nm)Fe3O4@SiO2粒子の反射スペクトルを示し、ここで、DCB、トルエンおよびヘキサン、THF溶液の回折は、325ガウス磁場で測定され、クロロホルム溶液の回折は、134ガウス磁場で測定された。
【図10】図9に示される異なる溶媒中で、フォトニック結晶を組み立てるために使用される、Fe3O4@SiO2コロイドの典型的なTEM画像を示し、粒度分布の統計的結果は、Fe3O4コアの直径が89.6±9.2nmであり、Fe3O4@SiO2コア/シェルコロイドの平均直径は143.1±10.7nmであることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、光を回折して色を生成する規則構造を形成することができるナノ粒子(以下「ナノ粒子」と称する)の使用法を対象とする。
例示的な実施形態によれば、本発明は、疎水性コーティングでマグネタイト結晶をコーティングして無極性溶媒に可溶であるようにする工程と、電荷に影響を及ぼして、粒子が適切な斥力によって規則構造を形成する、界面活性剤を溶液に添加する工程とを含む。
当然のことながら疎水性コーティングは、疎水性物質でナノ粒子を直接コーティングすることで達成される。たとえば、例示的な実施形態によれば、界面活性剤はナノ粒子に直接結合でき、無極性溶媒中に溶解する。代替実施形態によれば、脂肪族アルコールは、エステル化反応を介してポリアクリル酸に結合でき、粒子を直接疎水性にする。別の例示的な実施形態によれば、元のキャッピングリガンドと結合オルガノシランは、ナノ粒子表面へ直接結合するために除去できる。
【0006】
ナノ粒子は、多層アプローチを介して、疎水性溶媒中で可溶性にもできる。たとえば、中間層は、ナノ粒子の表面に結合でき、そして疎水性材料を中間層に付着できる。例示的な実施形態によれば、中間層は、磁鉄鉱結晶と疎水性材料の両方に結合できる、何れかの材料である。たとえば、中間層は、無機酸化物とポリマーとの両方を含有する。例示的な実施形態によれば、マグネタイト粒子表面にコーティングを形成でき、無極性溶媒中で安定なことが要件であり得る。当然のことながら、加水分解反応および沈降反応などの多くの反応が、無機酸化物をマグネタイト粒子に結合するために使用できる。さらに、マグネタイト粒子を、エマルション重合、分散重合、およびリビング重合などのポリマーシェルでコートする方法もいくつかある。
さらに、これに限定されるわけではないが、オルガノシランを含有する多くの化学物質が、疎水性分子で粒子表面を修飾するために使用できる。例示的な実施形態によれば、該化合物に要求されることは、共有結合によって分子を粒子表面へ結合させるように、粒子表面と反応できる少なくとも1つの反応基を含有し、および同時に最終的に無極性溶媒中で、粒子を可溶性にする疎水基を含有することである。
【0007】
オルガノシランは、無機酸化物の表面特性を、都合良く修飾できるために使用できる一群の化合物である。オルガノシランの反応基によるが、多様な反応が、オルガノシランを粒子表面に結合するために使用できる。以下の実施例では、ODTMSは、アルコール分解反応を介して表面シラノールにアタックできる加水分解性アルコキシ基を含有する。オルガノシランの他の選択には、これに限定されるわけではないが、イソブチル(トリメトキシ)シラン、ヘキシルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、トリエトキシ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]シラン、オクチルトリメトキシシランが含まれる。
脂肪族アルコールも、表面シラノール基のアルコールとのエステル化反応を介して、シリカ表面へ結合でき、疎水性アルキル鎖の単分子層コーティング層を形成する。典型的な脂肪族アルコールには、これに限定されるわけではないが、1−オクタデカノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノール、1−テトラデカノール、1−デカノール、イソステアリルアルコールが含まれる。
ポリマーコーティングには、これに限定されるわけではないが、グラフト重合およびエステル化反応を含む多くの表面変更方法がある。
【0008】
本発明はさらには、規則構造を形成するために、ナノ粒子の適切な空間を維持するために、界面活性剤の使用を含む。これらの界面活性剤は、疎水基(それらの「尾部」)と親水基(それらの「頭部」)との両方を含有し、および無極性溶媒中で逆ミセルを形成できる、いずれかの両親媒性有機化合物であり得る。それらは、ペルフルオロオクタノエート、ペルフルオロオクタンスルホネート、ナトリウムドデシルサルフェート、アンモニウムラウリルサルフェート、および他のアルキルサルフェートの塩、ナトリウムラウレスサルフェート、アルキルベンゼンスルホネート、脂肪酸塩などのサルフェート、スルホネートまたはカルボキシレートアニオンを含有するアニオン性化合物であり得る。それらは、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、および他のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム、ポリエトキシレート化タロウアミン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの第4級アンモニウムカチオンを有するカチオン化合物であってもよい。ドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン、およびココ両性グリシネートなどの両性イオン性界面活性剤は、この目的のために使用できる。該界面活性剤は、アルキルポリ(酸化エチレン)アルキルフェノール、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(酸化エチレン)とポリ(酸化プロピレン)のコポリマー、アルキルポリグルコシド、脂肪族アルコール、およびポリソルベートなどの非イオン性化合物を含有する。
【0009】
(例)
磁場応答性フォトニック構造は、これに限定されるわけではないが、カラー表示装置、生物学的センサーおよび化学センサー、および能動的光学部品を含む領域で重要な用途がある。例示的な実施形態によれば、水溶液中で超常磁性酸化鉄コロイド粒子を集合させることによって、磁気的に調節可能なフォトニック結晶系が達成される。当然のことながら、成功裏に集合させ、およびフォトニック特性の調節可能範囲が広いための1つの要素は、粒子を周期的構造に並べることができる、長距離での斥力相互作用と引力相互作用を確立することである。水溶液の超常磁性酸化鉄粒子の場合には、外部磁場は、磁場に沿って隣接する磁気粒子の間に強い引力を誘導し、お互いを近くに寄せる。高密度負電荷を含有する高分子電解質の層を磁気粒子にコーティングすることによって、静電気の斥力が粒子にもたらされる。2つの力がバランスし、最終的に粒子を、等距離で粒子間が分離された長鎖に形成する。集合した構造の周期性と入射光の波長が、ブラッグの条件を満たすときに、回折が発生する。磁場強度の変動によって引力の大きさが変化し、従って、粒子間距離が変化し、最終的に回折波長が変化する。該系の利点としては、すべての可視スペクトルを含む広い範囲で調節可能なこと、高速で完全に可逆的な応答ができること、およびデバイス製造の小型化に適合することが挙げられる。
【0010】
当然のことながら、実際の用途では、長期安定性とデバイス製造プロセスで改良された適合性を達成するために、非水溶媒の使用がしばしば要求される。粒子分散性に加えて、調節可能なフォトニック結晶を構築するための大きな課題は、非水溶媒では、ほとんどの場合に静電気力が大幅に減少するので、磁気による引力とバランスするために、長距離で十分に強い斥力を確立することである。当然のことながら集合プロセスは、長距離での静電気力および短距離の溶媒和力の使用によって、アルカノール溶媒に拡張でき、その短距離の溶媒和力は、粒子表面を覆う親水性シリカ上の2つの比較的厚い溶媒和層の重なりに起因する。しかしながら、当然のことながら、無極性溶媒中の、長距離での静電気の反発相互作用を確立するために、表面電荷を形成するためのエネルギー障壁は、水でのものに比較して約40倍大きい。さらに、無極性溶媒中の2つの疎水性表面間の溶媒和力は、非常に薄い溶媒和層のために無視できる。
例示的な実施形態によれば、電荷制御剤は、電荷分離のエネルギー障壁を低減するために、無極性溶媒に導入されるので、長距離での静電気の反発相互作用を生成して、磁力に対抗して超常磁性コロイドを整列させる。
【0011】
例示的な実施形態によれば、無極性溶媒中の酸化鉄粒子の分散性は、十分に開発されたシラン化学を利用した、表面修飾によって改良できる。典型的なプロセスでは、約163nm位の平均直径を有する、均一な超常磁性Fe3O4コロイド粒子が、最初に合成され、そして修正されたStoberプロセスを使用して、シリカの薄い層でコートされる。Fe3O4@SiO2粒子を空気中で乾燥させ、そして1,2−ジクロロベンゼン(DCB)中のn−オクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS)の溶液へ移す。混合物を120℃で3時間攪拌して、アルコール分解反応によって、オルガノシランの加水分解性アルコキシ基に表面シラノールをアタックさせる。その結果、疎水性アルキル鎖の単分子層は、共有−Si−O−Si−結合を介してシリカ表面にグラフトし、1,2−ジクロロベンゼン、トルエン、クロロホルム、およびヘキサンなどのほとんどの無極性溶媒で粒子を分散させる。
グラフトされた疎水性鎖のグラフト度(親水性シラノールの消失)と遮蔽能力の両方は、無極性溶媒中の修飾Fe3O4@SiO2粒子の分散性に寄与する。一般に、長い反応時間(すなわち、3時間を超える)および触媒が無くても反応性がよいメトキシ基などの、小さいアルコキシ基の使用は、高グラフト度に好ましい。一方、未反応シラノール基を効果的に遮蔽できるので、長いアルキル鎖を含むオルガノシランは好ましい。小さいアルコキシ基と比較的長いアルキル鎖を含むので、試験された多くのオルガノシランの中で、ODTMSは分散性に非常に効果的である。
【0012】
しかしながら、トルエンおよびヘキサンなどの無極性溶媒中で、表面修飾粒子を直接集合させるることは、磁気による引力とバランスさせるための、長距離での強い斥力が存在しないために困難である。液体中での帯電の熱力学は、熱エネルギーによってきちんとバランスの取れたそのクーロン力相互作用による2つのイオン間の特徴的な間隔である、Bjerrum長によって制御されることが知られている。ほとんどの場合に、無極性溶媒は極性溶媒に比べて、誘電率が非常に小さく、非常に大きいBjerrum長を有するので、電荷分離はきわめて困難であり、およびエネギー的に高いので、無極性溶媒中の静電反発力は無視できることが一般に予想される。しかしながら、例示的な実施形態によれば、無極性分散系に電荷制御剤または界面活性剤を添加すると、直径数ナノメートルの小さな逆ミセルを生成でき、それらの対イオンをミセルの中心部に安定化させるので、電荷分離のエネルギー障壁を低減し、表面電荷を増強する。実際に無極性溶媒の電荷キャリア濃度は小さいので、静電相互作用の遮蔽度は小さく、電荷相互作用は非常に長距離で働く。その結果、単純に電荷制御剤を導入することによって、遮蔽距離κ-1が0.2から1.4μmで強い静電反発力を持つように達成できる。さらに、ミセルのごく一部が、熱変動によって自然発生的にイオン化するので、長距離のスケールで粒子相互作用の遮蔽に貢献する。従って、逆ミセルの添加によって、無極性分散系の電荷挙動は、多くの方法で水溶液系のそれを擬態することになる(図1)。たとえば、静電相互作用は、極性液体に対するDerjaguin、Landau、VerweyおよびOverbeek(DLVO)の古典理論から予測されるのと同一の機能的形態を有するので、電荷挙動は二重層モデルと類似している方法で説明できる。加えて、高電荷水性コロイドと比べて、粒子表面のポテンシャルが非常に大きい。例示的な実施形態によれば、電荷制御剤によって誘導される長距離での静電反発力は、無極性溶媒中の超常磁性コロイドを集合させるために、磁力と釣り合うことができる。
【0013】
例示的な実施形態によれば、典型的なイオン性界面活性剤であるナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホサクシネート(AOT)を電荷制御剤として選択した。例示的な実施形態によれば、ODTMS修飾Fe3O4@SiO2コロイドは、AOTを添加したほとんどの無極性溶媒中で、良好な分散を維持することが見い出された。誘導された表面電荷を定性的に特徴付けるためには、簡単な電気泳動法を、粒子とAOTの両方を含有するDCB溶液に、2つの浸されたステンレス鋼電極を介して電圧(280V)を印加することによって実施できる(図2)。約10分後に、Fe3O4@SiO2粒子の茶色っぽい沈殿物がアノードに現れるが、カソードはきれいなままである。当然のことながら、この実験によって、電荷制御剤AOTの添加による増強された電荷分離を確認するだけではなく、シリカ表面も、マイナスに帯電していることを示している。
【0014】
当然のことながら、長距離での静電気の反発相互作用の確立を成功することで、外部磁場に誘導される引力とバランスさせることによって、無極性溶媒中で超常磁性コロイドを調節可能なフォトニック結晶にすることも可能になる。水溶液およびアルカノール溶液の場合に比較して、現在の系は、外部磁場に対して高速で完全に可逆的な光応答、長期安定性、および合理的な強い回折強度を維持する。図2は、磁石と試料との間の距離を変えて磁場を変化させることよって変化する、DCB中のFe3O4@SiO2フォトニック結晶の典型的な反射スペクトルを示す。回折ピークは、磁場が191ガウスから622ガウスに増加するにつれて、665nmから564nmにブルーシフトする。水溶液の場合と同様に、変化する磁気による引力とバランスするために、静電反発力の強度を変えるために必要な粒子間距離の自動調節によって、回折の調節が実現される。回折ピークの輪郭は、磁場が調節される歪んだプロファイルを示し、これはアルカノールの場合と類似しており、短距離での構造的な斥力と、さらに長距離での静電気力の存在を意味する。無極性溶媒中の典型的なフォトニック結晶の調節範囲は、約150nm以内であり、それは、水溶液系とは異なり、すべての可視スペクトルをカバーできない。青〜緑色(図6)、緑〜赤色(図2)、および赤〜赤外(図7)などのさまざまな色を表示するために、必要に応じて、異なる大きさのFe3O4@SiO2構成要素を集合できる。
【0015】
例示的な実施形態によれば、電荷制御剤AOTは、超常磁性コロイド粒子の集合挙動を制御するために、重要な役割を演じる。AOTの無いDCB溶液では、図3aに示すように、疎水性Fe3O4@SiO2コロイドは、大きくなる外部磁場中で回折強度がわずかに大きくなる規則構造に自己組織化できる。しかしながら、回折ピークは固定波長に留まったままであり、これは長距離での強い斥力が欠けていることを示す。コロイド粒子は、剛体球のように挙動するので、接触するように接近する場合にだけ強い斥力が発現し、粒子分離を調節することは不可能である。AOTが同一溶液に添加される場合には、増大した電荷分離によって、相当な負電荷が粒子表面に形成される。粒子は、動的に磁力とバランスし、粒子間隔が調節可能な鎖にする長距離での静電気力によってお互いに作用する。図3bに示すように、外部磁場の強度を変化させることによって、回折ピークは赤色側にシフトして、約150nmの範囲で調節できる。
【0016】
小さなAOTミセルは、静電相互作用の強度を決定する場合に、2つの機能を発揮する。一実施形態によれば、純粋な無極性溶媒中では、コロイドから分離することが元来困難である表面イオンに、ミセルは極性環境を付与する。ミセルは衝突によって内容物を交換できるので、イオンは、正味の荷電コロイド表面を残したままで、バルク溶液の中に入り込むことができる。別の実施形態によれば、AOT分子はNa+および対イオンに解離でき、次いでミセル交換によって分離され、荷電ミセルを形成する。水性コロイド系のイオンと同様に、これらの荷電ミセルは、無極性溶媒中で静電相互作用を遮蔽できる(図1)。
【0017】
2つの機能は、AOTの濃度による回折波長の依存性を調査することによって明確に観察できる。例示的な実施形態によれば、外部磁場に対応した、異なる濃度のAOTを含有する系の、一連の回折スペクトルが記録された(図8)。データは、固定磁場におけるAOT濃度による回折波長の依存性を示すために、図3Cに再プロットされた。低濃度でのAOTの最初の効果の1つは、粒子表面に電荷分離を誘導することであり、これは回折ピークの赤色側への大きなシフトによって明らかである。赤色側へのシフトが最大になると、さらに、AOTの濃度の増加によって、水溶液中のイオン強度が増加するのと同様に、粒子間の静電相互作用を遮蔽する、遊離した荷電ミセルを生成する。その結果、回折の調節範囲は、それぞれの濃度で黒色と空色点の差として示されているように、さらなるAOTの添加によって縮まる。したがって、図3dに示すように、AOT濃度が中間値に増加した時点で、最大回折強度に到達できる。追加のAOTによって回折強度を低減させ、それは水溶液に塩を添加する場合と一致する。例示的な実施形態によれば、荷電ミセルから遮蔽されても、AOTが無い場合よりも、全体の回折強度が非常に大きいことは注目に値する。
【0018】
従って、無極性溶媒中で長距離での静電気斥力を確立することによって、超常磁性コロイドを、磁気的に調節可能なフォトニック特性を持つ規則構造に集合させることが可能になった。AOT分子などの電荷制御剤の導入によって、ODTMS修飾Fe3O4@SiO2粒子の表面上で電荷分離を高めることができるミセルを生成する。大きく改良された長距離での静電反発力は、磁気的に誘導される引力とバランスするので、無極性溶媒中に超常磁性コロイドを整列させることができる。この系は、外部磁場に対して高速で完全に可逆的な光応答と、性能の長期安定性と、良好な回折強度とを提供する。磁場応答性フォトニック特性を利用する潜在的な技術用途ばかりではなく、低誘電率の溶媒中の帯電メカニズムなどの基本的な話題を研究するために、この系は便利で、定量的な光学的な方法を提供できる。
【実施例】
【0019】
実験の項
化学物質
エタノール(変性)、水酸化アンモニウム水溶液(28%)、トルエン(99.8%)、クロロホルム(99.8%)、およびヘキサン(99.9%)をFisher Scientificから購入した。テトラエチルオルトシリケート(TEOS、98%)、1,2−ジクロロベンゼン(DCB、99%)をSigma−Aldrichから手に入れた。N−オクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS、99%)をGelestから購入した。ジオクチルスルホサクシネート、ナトリウム塩(AOT、96%)をアクロスオーガニックスから入手した。
【0020】
疎水性Fe3O4@SiO2コロイドの合成
Fe304超常磁性コアが、既に報告された高温加水分解反応によって調製された。Fe3O4@SiO2コア/シェルコロイドが、修正されたStoberプロセスによって調製された。典型的には、Fe3O4CNC(約25mg)を含有する水溶液(3ml)をエタノール(20ml)と混合し、アンモニア水(28%、1ml)と活発に磁気攪拌させた。TEOS(0.2ml)を溶液に注入して、混合物を40分間反応させた。2回の遠心分離と再分散を介してエタノールで洗浄後に、粒子を空気中で乾燥させて、1,2−ジクロロベンゼン(DCB、24ml)とn−オクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS、0.5ml)の混合物へ移し、30分間N2ガスで脱気し、3時間120℃へ昇温させてシリカ表面を疎水性炭素鎖で官能化させた。室温に冷却後に、修飾Fe3O4@SiO2コロイドをトルエンで洗浄し、DCB、クロロホルム、トルエンおよびヘキサンなどの異なる無極性溶媒(一般に4ml)に分散させた。
【0021】
無極性溶媒中の磁気的に調節可能なフォトニック結晶の集合
例示的な実施形態によれば、DCBを無極性溶媒の典型的な例として使用した。異なる濃度のAOTを含有するDCB(0.5ml)の原液が事前に調製された。疎水性Fe304@SiO2コロイドのDCB溶液(1ml)を上記のAOT溶液と混合し、均一で透明な分散系を形成した。外部磁場を溶液に印加することによって、Fe3O4@SiO2コロイドを、光学回折を有する規則構造に集合させた。同様の手順が、トルエン、クロロホルム、またはヘキサンなどの他の無極性溶媒に使用された。通常2%未満の粒子多分散性を要求する、細密のコロイドフォトニック結晶とは異なって、元のFe3O4コロイドの大きさによって異なるが、Fe3O4@SiO2コロイドの典型的な粒度分布は約5%から10%で変化する。シリカコーティングプロセスは、ほとんどの場合で試料の単分散を改良する。独特の鎖状の非細密構造および高誘電率比によって、これらのコロイドは強い回折強度を有するフォトニック結晶を形成できる。図10に示される粒度分布と同様の粒度分布およびおよびそれらに対応する回折スペクトルに関する多くの統計的調査から、粒子単分散が改善されるにつれて、回折ピークが狭くなり、強度が増すことが見い出され、これは細密のコロイド結晶の場合と一致する。
【0022】
特性評価
Tecnai T12型透過型電子顕微鏡(TEM)が、コア/シェルコロイド形態の特性評価をするために使用された。適切な濃度で水に分散した試料を、炭素がコートされた銅グリッドにキャストし、その後、室温の真空下で蒸発させた。フォトニック結晶の回折スペクトルが、1つの反射/後方散乱プローブで6往復するOceanOptics製のHR2000CG−UV−NIR分光計によって測定された。典型的な測定では、Fe3O4@SiO2コロイドの無極性溶液を含有する薄いガラス容器が、NdFeB磁石と反射プローブとの間に設置された。プローブはガラス容器に垂直で、磁場の向きに平行であった。磁場を、試料から特定の距離で固定し、反射ピークを測定した。
【0023】
前述の記載は好ましい実施形態であり、したがって、該物品およびその製造方法の代表例にすぎないことが理解されるであろう。当然のことながら、上記の本教示内容を踏まえた、異なる実施形態の多くの変形および変更が、当業者には容易に明らかになるであろう。したがって、例示的な実施形態ばかりではなく、代替実施形態も、添付の特許請求の範囲に記載の物品および方法の精神、および範囲を逸脱しない範囲で実施可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を回折して色を生成する規則構造を形成する方法であって、
疎水性コーティングで複数の前記ナノ粒子をコーティングして、ナノ粒子が無極性溶媒溶液に可溶であるようにする工程と、
電荷制御剤を前記無極性溶媒溶液へ添加する工程と、
を含み、
前記電荷制御剤は前記ナノ粒子間の電荷分離を増大し、粒子間隔が調節可能な規則構造を形成する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記ナノ粒子は磁鉄鉱結晶である方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記電荷制御剤は界面活性剤である方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記界面活性剤はナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホサクシネート(AOT)である方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
中間層を前記ナノ粒子の表面へ結合させる工程と、
前記疎水性コーティングを前記中間層に付着させる工程と、をさらにを含む方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記中間層は、前記ナノ粒子と前記疎水性コーティングとの両方に結合できる材料である方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、
前記中間層は、無機酸化物および/または高分子を含有する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記ナノ粒子上の前記コーティングは前記無極性溶媒溶液中で安定である方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
無機酸化物を前記ナノ粒子に結合させるために、加水分解または沈降反応を実施する工程をさらに含む方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記ナノ粒子を前記疎水性コーティングでコーティングする工程は、エマルション重合、分散重合、および/またはリビング重合によって実施される方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
前記ナノ粒子の表面を疎水性分子で修飾する工程をさらに含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記疎水性分子はオルガノシランである方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記オルガノシランは、イソブチル(トリメトキシ)シラン、ヘキシルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、トリエトキシ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]シラン、オクチルトリメトキシシランの1つから選択される方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、
表面シラノール基とアルコールとのエステル化反応によって、脂肪族アルコールを前記ナノ粒子の表面に結合させて、前記ナノ粒子上に疎水性アルキル鎖の単分子層コーティングを形成する工程をさらに含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
前記脂肪族アルコールは、1−オクタデカノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノール、1−テトラデカノール、1−デカノール、イソステアリルアルコールから選択される方法。
【請求項16】
請求項3に記載の方法において、
前記界面活性剤は、疎水基と親水基を含有する両親媒性有機化合物である方法。
【請求項17】
請求項3に記載の方法において、
前記界面活性剤は、サルフェート、スルホネートまたはカルボキシレートアニオンを含有するアニオン性化合物である方法。
【請求項18】
請求項18に記載の方法において、
前記サルフェート、スルホネートまたはカルボキシレートアニオンは、ペルフルオロオクタノエート、ペルフルオロオクタンスルホネート、ナトリウムドデシルサルフェート、アンモニウムラウリルサルフェート、および他のアルキルサルフェートの塩、ナトリウムラウレスサルフェート、アルキルベンゼンスルホネート、および/または脂肪酸塩である方法。
【請求項19】
請求項3に記載の方法において、
前記界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、および他のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム、ポリエトキシレート化タロウアミン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの第4級アンモニウムカチオンを有するカチオン化合物、または、ドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン、および/またはココ両性グリシネートなどの両性イオン性界面活性剤である方法。
【請求項20】
請求項3に記載の方法において、
前記界面活性剤は、アルキルポリ(酸化エチレン)アルキルフェノール、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(酸化エチレン)とポリ(酸化プロピレン)のコポリマー、アルキルポリグルコシド、脂肪族アルコール、およびポリソルベートなどの非イオン性化合物を含有する方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、
前記規則構造に、外部磁場を印加する工程をさらに含む方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法において、
前記規則構造は、カラー表示装置、生物学的センサーおよび化学センサー、および/または能動的光学部品である方法。
【請求項23】
光を回折して色を生成する規則構造を形成する方法であって、
複数の磁鉄鉱結晶を疎水性コーティングでコーティングして結晶が無極性溶媒溶液で可溶性であるようにする工程と、
前記無極性溶媒溶液に界面活性剤を添加する工程と、
を含み、
前記界面活性剤は前記結晶間の電荷分離を増大させ、粒子間隔が調節可能な規則構造を形成する方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、
前記界面活性剤はナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホサクシネート(AOT)である方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法において、
前記界面活性剤は前記無極性溶媒溶液に導入され、電荷分離のエネルギー障壁を低減し、磁力に対抗して磁鉄鉱結晶を規則正しく配列できる、長距離での静電気の反発相互作用を生成する方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法において、
前記磁鉄鉱結晶をコーティングする前に、
前記磁鉄鉱結晶を合成する工程と、
前記磁鉄鉱結晶をシリカ層でコーティングする工程と、をさらに含む方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法において、
前記磁鉄鉱結晶を空気中で乾燥させ、そしてn−オクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS)の1,2−ジクロロベンゼン(DCB)溶液へ移し、混合物を120℃で3時間攪拌し、アルコール分解反応によって、オルガノシランの加水分解性アルコキシ基を表面シラノールにアタックさせる方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、
前記コートされた磁鉄鉱結晶を、1,2−ジクロロベンゼン、トルエン、クロロホルム、およびヘキサンなどの無極性溶媒溶液中に分散させる工程をさらに含む方法。
【請求項29】
請求項23に記載の方法において、
外部磁場を前記規則構造に印加する工程をさらにを含む方法。
【請求項30】
請求項23に記載の方法において、
前記規則構造は、カラー表示装置、生物学的センサーおよび化学センサー、および/または能動的光学部品である方法。
【請求項1】
光を回折して色を生成する規則構造を形成する方法であって、
疎水性コーティングで複数の前記ナノ粒子をコーティングして、ナノ粒子が無極性溶媒溶液に可溶であるようにする工程と、
電荷制御剤を前記無極性溶媒溶液へ添加する工程と、
を含み、
前記電荷制御剤は前記ナノ粒子間の電荷分離を増大し、粒子間隔が調節可能な規則構造を形成する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記ナノ粒子は磁鉄鉱結晶である方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記電荷制御剤は界面活性剤である方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記界面活性剤はナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホサクシネート(AOT)である方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
中間層を前記ナノ粒子の表面へ結合させる工程と、
前記疎水性コーティングを前記中間層に付着させる工程と、をさらにを含む方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記中間層は、前記ナノ粒子と前記疎水性コーティングとの両方に結合できる材料である方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、
前記中間層は、無機酸化物および/または高分子を含有する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記ナノ粒子上の前記コーティングは前記無極性溶媒溶液中で安定である方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
無機酸化物を前記ナノ粒子に結合させるために、加水分解または沈降反応を実施する工程をさらに含む方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記ナノ粒子を前記疎水性コーティングでコーティングする工程は、エマルション重合、分散重合、および/またはリビング重合によって実施される方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
前記ナノ粒子の表面を疎水性分子で修飾する工程をさらに含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記疎水性分子はオルガノシランである方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記オルガノシランは、イソブチル(トリメトキシ)シラン、ヘキシルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、トリエトキシ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]シラン、オクチルトリメトキシシランの1つから選択される方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、
表面シラノール基とアルコールとのエステル化反応によって、脂肪族アルコールを前記ナノ粒子の表面に結合させて、前記ナノ粒子上に疎水性アルキル鎖の単分子層コーティングを形成する工程をさらに含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
前記脂肪族アルコールは、1−オクタデカノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノール、1−テトラデカノール、1−デカノール、イソステアリルアルコールから選択される方法。
【請求項16】
請求項3に記載の方法において、
前記界面活性剤は、疎水基と親水基を含有する両親媒性有機化合物である方法。
【請求項17】
請求項3に記載の方法において、
前記界面活性剤は、サルフェート、スルホネートまたはカルボキシレートアニオンを含有するアニオン性化合物である方法。
【請求項18】
請求項18に記載の方法において、
前記サルフェート、スルホネートまたはカルボキシレートアニオンは、ペルフルオロオクタノエート、ペルフルオロオクタンスルホネート、ナトリウムドデシルサルフェート、アンモニウムラウリルサルフェート、および他のアルキルサルフェートの塩、ナトリウムラウレスサルフェート、アルキルベンゼンスルホネート、および/または脂肪酸塩である方法。
【請求項19】
請求項3に記載の方法において、
前記界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、および他のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム、ポリエトキシレート化タロウアミン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの第4級アンモニウムカチオンを有するカチオン化合物、または、ドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン、および/またはココ両性グリシネートなどの両性イオン性界面活性剤である方法。
【請求項20】
請求項3に記載の方法において、
前記界面活性剤は、アルキルポリ(酸化エチレン)アルキルフェノール、ポリ(酸化エチレン)、ポリ(酸化エチレン)とポリ(酸化プロピレン)のコポリマー、アルキルポリグルコシド、脂肪族アルコール、およびポリソルベートなどの非イオン性化合物を含有する方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、
前記規則構造に、外部磁場を印加する工程をさらに含む方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法において、
前記規則構造は、カラー表示装置、生物学的センサーおよび化学センサー、および/または能動的光学部品である方法。
【請求項23】
光を回折して色を生成する規則構造を形成する方法であって、
複数の磁鉄鉱結晶を疎水性コーティングでコーティングして結晶が無極性溶媒溶液で可溶性であるようにする工程と、
前記無極性溶媒溶液に界面活性剤を添加する工程と、
を含み、
前記界面活性剤は前記結晶間の電荷分離を増大させ、粒子間隔が調節可能な規則構造を形成する方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、
前記界面活性剤はナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホサクシネート(AOT)である方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法において、
前記界面活性剤は前記無極性溶媒溶液に導入され、電荷分離のエネルギー障壁を低減し、磁力に対抗して磁鉄鉱結晶を規則正しく配列できる、長距離での静電気の反発相互作用を生成する方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法において、
前記磁鉄鉱結晶をコーティングする前に、
前記磁鉄鉱結晶を合成する工程と、
前記磁鉄鉱結晶をシリカ層でコーティングする工程と、をさらに含む方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法において、
前記磁鉄鉱結晶を空気中で乾燥させ、そしてn−オクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS)の1,2−ジクロロベンゼン(DCB)溶液へ移し、混合物を120℃で3時間攪拌し、アルコール分解反応によって、オルガノシランの加水分解性アルコキシ基を表面シラノールにアタックさせる方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、
前記コートされた磁鉄鉱結晶を、1,2−ジクロロベンゼン、トルエン、クロロホルム、およびヘキサンなどの無極性溶媒溶液中に分散させる工程をさらに含む方法。
【請求項29】
請求項23に記載の方法において、
外部磁場を前記規則構造に印加する工程をさらにを含む方法。
【請求項30】
請求項23に記載の方法において、
前記規則構造は、カラー表示装置、生物学的センサーおよび化学センサー、および/または能動的光学部品である方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2012−518811(P2012−518811A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551074(P2011−551074)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/000528
【国際公開番号】WO2010/096203
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/000528
【国際公開番号】WO2010/096203
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
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