説明

無機−有機ナノ複合体

【課題】コート剤、シーリング材、填隙剤、接着剤等に使用される、機械的物性の改良されたナノ複合体組成物の提供。
【解決手段】層状無機ナノ微粒子である少なくとも一つの無機成分と、第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンである少なくとも一つの有機成分とを含有する無機−有機ナノ複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、改良されたナノ複合体組成物、及びこれを製造、使用する方法に関する。詳細には、本発明は、無機−有機ナノ複合体及びその製造方法に関する。本発明は、例えば、コート剤、シーリング材、填隙剤、接着剤及びプラスチックにおける無機−有機ナノ複合体の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
無機−有機ナノ複合体は、個々の成分の機械的性質よりも優れた性質を示す場合がある。この物質の性能特性を最適化するために、ナノメートル長さのスケールで有機マトリックス中に無機成分を分散させることが通常望ましい。ナノスケールの構造ブロックにまで分割できる粘土及び他の層状無機物質は、無機−有機ナノ複合体の調製に有用である。
【0003】
ポリマーへの粘土物質の添加は、技術的に知られているが、ポリマーに粘土を取り込むのは、ポリマーの物理的性質、特に機械的性質の望ましい向上をもたらさないだろう。これは、例えば、境界面又は境界線における粘土とポリマーとの間の、又は物質中における粘土とポリマーとの間の親和性の不足に起因する。粘土とポリマーとの間の親和性は、粘土物質をポリマーの全体にわたって均一に分散させることによって、生成するナノ複合体の物理的性質を向上させることになる。粘土は比較的大きい表面積を有するため、均一に分散させた場合は、粘土とポリマーの間により多くの境界面をもたらし、これらの境界面でポリマー鎖の移動度を低下させることにより、物理的性質を改善できる。対照的に、粘土とポリマーとの間の親和性の不足は、ポリマーの全体にわたって均一に分散するより、むしろ粘土ポケットを凝集させることによって、組成物の強度及び均一性に悪影響を及ぼすことになる。粘土とポリマーとの間の親和性は、粘土が一般的に親水性であるのに対し、ポリマーが一般的に疎水性であるという事実と関係する。
【0004】
粘土鉱物は、細粒であり、板状晶癖を有する水和ケイ酸アルミニウムから典型的に構成される。典型的な粘土鉱物の結晶構造は、A1O(OH)八面体の層に結合されたSiO四面体の層の組み合わせから構成される多層構造である。粘土鉱物は、その構成層と陽イオンの組み合わせに応じて変化する。四面体のネットワークにおけるSi4+イオンの代わりにAl3+又はFe3+のような、又は八面体のネットワークにおける他の陽イオンの代わりにAl3+、Mg2+又はFe3+のような粘土鉱物の陽イオンの同形置換が典型的に起こり、そして、粘土構造に正味の負電荷を与える。水分子、ナトリウム陽イオン又はカリウム陽イオンのような粘土ギャラリー内にもともと存在する要素は、この正味負電荷により粘土層の表面へ引きつけられる。
【0005】
境界面における粘土とポリマーの間の親和性を高めて、ポリマー内に粘土を均一に分散させるために、ケイ酸塩層の親水性を低下させるべく粘土の中間層表面の化学特性を修飾することができる。
【0006】
オニウム塩のようなアルキルアンモニウムイオンは、ナノ複合体物質用の粘土分散物を調製するために一般に使用される。典型的なアルキルアンモニウムイオンの基本式は、CH−(CH−NHであり、式中、nは1から18である。アルキルアンモニウムイオンはまた、粘土プレートレットの間にもともと存在する陽イオンと容易に交換されて、層間挿入状態を生じると考えられている。さらに、アルキルアンモニウムイオンは、粘土層の間の空間を増加させ、粘土の表面エネルギーを低下させることによって、異なる極性を有する有機種が粘土層の間に層間挿入されることを可能にすると考えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
改良された性質を有するナノ複合体への要求が存在する。本書に開示する発明は、新規な無機−有機ナノ複合体組成物の製造にとって、費用効果が高く且つ効果的なプロセスを提供し、当該組成物は、柔軟性、施工性及び弾力性といった特性が重要な性能基準であるシーリング材における使用に特に適する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、層状無機ナノ微粒子である少なくとも一つの無機成分と、第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンである少なくとも一つの有機成分とを含有する無機−有機ナノ複合体が提供される。
【0009】
本発明の新規な無機−有機ナノ複合体は、広範なポリマー樹脂含有組成物のための充填剤として、特に、シーリング材、コート剤及び接着剤として用いられることが意図される組成物のための充填剤として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明によれば、層状無機ナノ微粒子である少なくとも一つの無機成分と、第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンである少なくとも一つの有機成分とを含有する無機−有機ナノ複合体が提供される。本発明を説明するにあたり、以下の用語は、別途記載のない限り、以下の意味を有する。
【0011】
定義
本書で用いる用語「層間剥離(exfoliation)」は、ナノ粘土プレートレット(nanoclay platelets)の小さな束がポリマーマトリックス中で互いに分離する過程をいう。層間剥離の際、各束の最も外側の領域でプレートレットがへき開し、分離のためにより多くのプレートレットを露出させる。
【0012】
本書で用いる用語「ギャラリー(gallery)」は、粘土プレートレットの平行な層の間の空間をいう。ギャラリー空間は、空間を占める分子やポリマーの性質に依存して変化する。個々のナノ粘土プレートレットの間の層間空間もまた、空間を占める分子の種類に応じて変化する。
【0013】
本書で用いる用語「層間挿入物質(intercalant)」は、粘土のギャラリーに入り、その表面に結合することが可能な任意の有機又は無機の化合物である。
【0014】
本書で用いる用語「層間挿入体(intercalate)」は、粘土のギャラリー空間が表面修飾処理に起因して増大している粘土−化学錯体(clay-chemical complex)を指す。適切な温度及び剪断条件下で、層間挿入体は樹脂マトリックス中で剥離することが可能である。
【0015】
本書で用いるとき、用語「層間挿入(intercalation)」は、層間挿入体を生成するプロセスを指している。
【0016】
本書で用いるとき、語句「無機ナノ微粒子」は、例えばナノメートルサイズの長さ、幅又は厚さのような一以上の次元を有し、且つイオン交換が可能であるところの層状無機物質、例えば粘土をいう。
【0017】
本書で用いる表現「修飾された粘土(modified clay)」は、粘土の層間表面に存在する陽イオンとイオン交換反応をすることが可能な任意の無機又は有機の化合物で処理された粘土物質、例えばナノ粘土、を指す。
【0018】
本書で用いる用語「ナノ粘土(nanoclay)」とは、一つの次元においてナノメートル領域の特異な形態を有する粘土物質をいう。ナノ粘土は、層間の面にイオン結合する層間挿入物質との化学錯体を生成することができ、粘土粒子になる。層間挿入物質と粘土粒子とのこの会合によって多くの異なった種類のホスト樹脂に親和性のある物質が生じ、それによって粘土充填剤をそこに分散できることになる。
【0019】
本書で用いるとき、用語「ナノ微粒子(nanoparticulate)」は、一般に直径によって決定され、一般に約1000nmより小さい粒子径を指している。
【0020】
本書で用いるとき、用語「プレートレット(platelets)」は、層状物質の個々の層を指している。
【0021】
無機−有機ナノ複合体の無機ナノ微粒子は、スメクタイト粘土(smectite clay)のような天然又は合成されたものとし得、そしてスメクタイト粘土、レクトライト(rectorite)、バーミキュライト(vermiculite)、イライト(illite)、雲母及びそれらの合成同族体(ラポナイト、合成雲母−モンモリロナイト(synthetic mica-montmorillonite)、及び四ケイ素雲母(tetrasilicic mica)を含む)のように、一定のイオン交換性を有さなければならない。
【0022】
ナノ微粒子の平均最大横寸法(幅)は、第一実施態様では約0.01μm〜約10μm、第一実施態様では約0.05μm〜約2μm、そして第三実施態様では約0.1μm〜約1μmとすることができる。ナノ微粒子の平均最大縦寸法(厚さ)は、第一実施態様では約0.5nm〜約10nm、そして第二実施態様では約1nm〜約5nmにおいて一般に変化させ得る。
【0023】
本発明の有用な無機ナノ微粒子物質は、天然又は合成のフィロシリケート(phyllosilicates)であり、特にモンモリロナイト(montmorillonite)、ナトリウムモンモリロナイト(sodium montmorillonite)、カルシウムモンモリロナイト(calcium montmorillonite)、マグネシウムモンモリロナイト(magnesium montmorillonite)、ノントロナイト(nontronite)、ベイデルライト(beidellite)、ボルコンスコイト(volkonskoite)、ラポナイト(laponite)、ヘクトライト(hectorite)、サポーナイト(saponite)、ソーコナイト(sauconite)、マガダイト(magadite)、ケニヤイト(kenyaite)、ソボクカイト(sobockite)、スビンドルダイト(svindordite)、ステベンサイト(stevensite)、滑石、雲母、カオリナイト(kaolinite)、バーミキュライト(vermiculite)、ハロイサイト(halloysite)、アルミナートオキシド(aluminate oxides)、又はハイドロタルサイト(hydrotalcites)、及びそれらの混合物のようなスメクチック粘土(smectic clays)である。他の実施形態においては、有用なナノ粘土は、イライト(illite)のような雲母質鉱物、及びレクトライト(rectorite)、タロソバイト(tarosovite)、レディカイト(ledikite)、そしてイライトと上述の粘土鉱物の一つ以上との混合物のような混合層状イライト/スメクタイト鉱物である。有機分子を十分に吸着して、隣接するフィロシリケートプレートレットの間の層間空間を少なくとも約5オングストローム、又は少なくとも約10オングストローム(フィロシリケートを乾燥状態で測定したとき)に増大させる任意の膨潤可能な層状物質を、本発明の無機−有機ナノ複合体の製造時に使用できる。
【0024】
本発明の修飾された無機ナノ微粒子は、交換可能な陽イオン、例えば、Na、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe3+及びMg2+を有する多量の層状無機微粒子を、少なくとも一つのアンモニウム含有オルガノポリシロキサンと接触させることによって得られる。得られた、修飾された微粒子は、層間挿入された第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンを有する無機−有機ナノ複合体である。
【0025】
アンモニウム含有オルガノポリシロキサンは、少なくとも一つのアンモニウム基を含まねばならず、そして二つ以上のアンモニウム基を含んでよい。第四級アンモニウム基は、オルガノポリシロキサンの末端で、及び/又はシロキサン骨格に沿って位置してよい。有用なアンモニウム含有オルガノポリシロキサンの一つの種類は、下記の一般式を有する:
D’
式中、“a”は2であり、“b”は1であるか又は1より大きく、“c”はゼロ又は正数であり;Mは、
[RNR]3−x−ySiO1/2
であり、式中、“x”は、0、1又は2であり、“y”は、x+yが2未満であるか又は2であるという条件付きで0又は1のいずれかであり、“z”は2であり、R及びRは、個々独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;Rは、H及び炭素数60以下の一価の炭化水素基からなる群から選択され;Rは、炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;Dは、
SiO1/2
であり、式中、R及びRは、個々独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;D’は、
SiO2/2
であり、式中、R及びRは、個々独立して下記の一般式のアミンを含む一価の炭化水素基であり:
[RNR10]
式中、“a”は2であり、Rは、H及び炭素数60以下の一価の炭化水素基からなる群から選択され;R10は、炭素数60以下の一価の炭化水素基である。
【0026】
本発明の他の実施形態では、アンモニウム含有オルガノポリシロキサンは、R111213Nであり、式中、R11、R12及びR13は、個々独立してアルコキシシラン又は炭素数60以下の一価の炭化水素基である。アルコキシシランの一般式は、以下である。
[R14O] 3−x−y1516SiR17
式中、“x”は、0、1又は2であり、“y”は、x+yが2未満であるか又は2であるという条件付きで0又は1のいずれかであり;R14は、炭素数30以下の一価の炭化水素基であり;R15及びR16は、独立して選ばれる炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;R17は、炭素数60以下の一価の炭化水素基である。本発明の無機成分を修飾するのに有用な他の化合物は、R181920Nの構造を有するアミン化合物又は対応するアンモニウムイオンであり、式中、R18、R19、及びR20は、個々独立して炭素数30以下のアルキル基又はアルケニル基であり、他の実施形態では、個々独立して炭素数20以下のアルキル基又はアルケニル基であり、これらは同一でもよく、又は異なってもよい。さらに他の実施形態では、有機分子は、R18、R19及びR20が個々独立して炭素数14〜20までのアルキル又はアルケニルである、長鎖の第三級アミンである。
【0027】
本発明の層状無機ナノ微粒子は、プロトン交換型に変換する必要はない。典型的には、層状無機ナノ微粒子物質への第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンの層間挿入は、溶媒、及び無溶媒のプロセスを用いた陽イオン交換によって行われる。溶媒使用のプロセスでは、オルガノポリシロキサンアンモニウム成分を、重合又はカップリング反応に対して不活性である溶媒中に入れる。特に適切な溶媒は、水又は水−エタノール、水−アセトン、そして同様な水−極性の混合溶媒系である。溶媒の除去によって、層間に挿入された微粒子の濃縮物が得られる。無溶媒のプロセスでは、高せん断ミキサが層間挿入反応を行うのに通常必要になる。無機−有機ナノ複合体は、懸濁、ゲル、ペースト、又は固体の形態とし得る。
【0028】
アンモニウム含有オルガノポリシロキサンの具体的な種類は、米国特許第5,130,396号公報に記載された化合物であり、これらは市販品を含む既知の物質から調製できる。参照することで、本特許の全ての内容を本明細書に取り入れることとする。
【0029】
米国特許第5,130,396号公報のアンモニウム含有オルガノポリシロキサンは、以下の一般式によって表わされる:
【化1】


式中、R及びRは、同一でも異なってもよく、以下の式の基を表わす:
【化2】


ここで、(I)の窒素原子は、R基を経由して(II)のケイ素原子にリンクされ、そしてRは、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数5〜8のシクロアルキレン基、又は下記の一般式の単位を表わす:
【化3】


式中、nは、1〜6の数であり且つ窒素位置におけるメチレン基の数を示し、mは、0〜6の数であり、そしてケイ素原子に結合した酸素原子の自由原子価は、式(II)の他の基のケイ素原子によって、及び/又は、一つ又は複数の以下の架橋結合リンクの金属原子によって、シリカ骨格における場合のように飽和されており、
【化4】


式中、Mは、ケイ素原子、チタン原子又はジルコニウム原子であり、そしてR’は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、そして式(II)の基のケイ素原子対結合リンク中の金属原子の比は、1:0〜であり、そして式中、Rは、R又はRと同じであるか、又は水素、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、又はベンジル基であり、そしてRは、水素、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は炭素数5〜8のシクロアルキル基、ベンジル基、アルキル基、プロパルギル基、クロロエチル基、ヒドロキシエチル基、又はクロロプロピル基であり、Xは、1から3に等しい価数xの陰イオンであり、ハロゲン化物、次亜塩素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硝酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸二水素塩、リン酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、塩素酸塩、過塩素酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、シアン化物、シアン酸塩、ロダン化物、硫化物、硫化水素、セレン化物、テルル化物、ホウ酸塩、メタホウ酸塩、アジ化物、テトラフルオロホウ酸塩、テトラフェニルホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、又は安息香酸塩の群から選択される。
【0030】
本書に記載するアンモニウム含有オルガノポリシロキサン化合物は、0.01〜3.0mmの直径、0〜1000m/gの比表面積、0〜5.0ml/gの比細孔容積、50〜1000g/1のかさ密度を有する肉眼では球状の形をした粒子であり、50〜750g/1の体積に関する乾燥物基準を有する。
【0031】
アンモニウム含有オルガノポリシロキサンを調製する一つの方法は、任意に触媒存在下で、少なくとも一つの加水分解が可能なアルコキシ基を有する第一級、第二級、又は第三級のアミノシランと水との反応により、シランの加水分解と、次に起こる縮合を行ってアミン末端オルガノポリシランを生成させ、その後、鉱酸及び/又はハロゲン化アルキルのような適切な四級化試薬で四級化して、アンモニウム含有オルガノポリシロキサンを得るものである。このタイプの方法は、前述した米国特許第5,130,396号公報に記載されている。これに関して、米国特許第6,730,766号公報には、エポキシ官能性ポリシロキサンの反応による四級化ポリシロキサンの製造プロセスが記載されており、参照することで、その全ての内容を本書に取り入れることとする。
【0032】
この方法の変更形態においては、加水分解可能なアルコキシ基を有する第一級、第二級、又は第三級のアミノシランは、オルガノポリシロキサンを与える加水分解縮合反応に先立って第四級化される。例えば、アンモニウム含有N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリ−n−ブチルアンモニウムクロリド、そして市販品のアンモニウム含有トリアルコキシシランであるオクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロリド(ゲレスト社(Gelest, Inc)から入手できる)であり、続く加水分解/縮合は、本書で使用するアンモニウム含有オルガノポリシロキサンを与える。
【0033】
アンモニウム含有オルガノポリシロキサンを調製するのに有用な、他の適切な第三級アミノシランとしては、トリス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(ジエトキシメチルシリルプロピル)アミン、トリス(トリプロポキシシリルプロピル)アミン、トリス(エトキシジメチルシリルプロピル)アミン、トリス(トリエトキシフェニルシリルプロピル)アミンなどが挙げられる。
【0034】
アンモニウム含有オルガノポリシロキサンを調製する更に他の方法では、第四級化試薬を用いて、第一級、第二級、又は第三級のアミン含有オルガノポリシロキサンを四級化することが必要とされる。有用なアミン含有オルガノポリシロキサンは、以下の一般式の化合物を含む:
【化5】


式中、R、R、R及びRは、個々独立して、H、炭素数30以下の炭化水素基(例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、脂肪族基置換アリール(alkaryl)、芳香族基置換アルキル(aralkyl)など)であり、又はRとRは共に、又はRとRは共に、炭素数12以下の二価の架橋基を形成し、R及びRは、個々独立して炭素数30以下の二価の炭化水素架橋基であり、任意に1つ以上の酸素原子及び/又はチッ素原子を鎖の中に含有することができ、例えば、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHC(CH)−CH−、−CHCHCHCH−などのような炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレンであり、Rは、個々独立してアルキル基であり、そしてnは1〜20であり、好ましくは6〜12である。
【0035】
これらの及び類似のアミン含有オルガノポリシロキサンは、既知の、そして汎用の手順によって、例えば、米国特許第5,026,890号公報に記載されたように、白金含有ヒドロシリル化触媒のようなヒドロシリル化触媒の存在下において、アリルアミンのようなオレフィンアミンをSi−H結合を有するポリジオルガノシロキサンと反応させることによって得ることができ、参照することにより、その全ての内容を本明細書に取り入れることとする。
【0036】
アンモニウム含有オルガノポリシロキサンを調製するために有用な具体的なアミン含有オルガノポリシロキサンとしては、以下の市販混合物が挙げられる。
【化6】

【0037】
本発明の無機−有機ナノ複合体は、とりわけ、固体ポリマー又は固体ポリマーの混合物/ブレンド物を含有する組成物用の、単独又は部分充填剤として有用である。
【0038】
有用な固体ポリマーとしては、エポキシ、ポリカーボナート、シリコーン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニル芳香族樹脂、アクリル樹脂、アクリラートエスエル、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリハロゲン化ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリケトン、それらのコポリマー及びブレンド物が挙げられる。コポリマーには、ランダムコポリマー及びブロックコポリマーの両方が含まれる。ポリオレフィン樹脂は、ポリブチレン、ポリプロピレン、及び低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのようなポリエチレン、及びエチレンコポリマーを含み;ポリハロゲン化ビニル樹脂は、ポリ塩化ビニルポリマー及びコポリマー、並びにポリ塩化ビニリデンポリマー及びコポリマー、フッ素ポリマーを含み;ポリビニル芳香族樹脂は、ポリスチレンポリマー及びコポリマーを含み;アクリル樹脂は、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのポリマー及びコポリマーを含み;ポリアミド樹脂は、ナイロン6、ナイロン11、及びナイロン12、それらのポリアミドコポリマー及びブレンド物を含み、ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタラートとポリブチレンテレフタラートのようなポリアルキルエンテレフタラート、及びポリエステルコポリマーを含み;合成ゴムは、スチレン−ブタジエンとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーを含み;ポリケトンは、ポリエーテルケトンとポリエーテルエーテルケトンを含む。
【0039】
本発明の樹脂充填組成物において、無機−有機ナノ複合体は、当然、ガスバリア性を高める量にて存在する。第一実施形態においては、無機−有機ナノ複合体は約90重量パーセント以下のレベルで、第二実施態様においては、約50重量パーセント以下のレベルで、そして第三実施態様では、約20重量パーセント以下のレベルで存在することができる。
【0040】
本発明の無機−有機ナノ複合体は、例えば、本発明と共に同日に出願した「室温硬化型オルガノポリシロキサン組成物」と題した同時係属出願で開示され、特許請求された組成物のような、ガスバリアとして機能させることを意図した組成物において、充填剤として好都合に用いられる。参照することで、その出願の全ての内容を本明細書に取り入れることとする。
【0041】
本発明において以下のものが提供される。
(1)層状無機ナノ微粒子である少なくとも一つの無機成分と、第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンである少なくとも一つの有機成分とを含有する無機−有機ナノ複合体。
(2)層状無機ナノ微粒子が、Na、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Mg2+及びそれらの混合物の群から選択される交換可能な陽イオンを有する、(1)に記載の無機−有機ナノ複合体。
(3)層状ナノ微粒子が、モンモリロナイト、ナトリウムモンモリロナイト、カルシウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデルライト、ボルコンスコイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポーナイト、ソーコナイト、マガダイト、ケニアイト、ソボクカイト、スビンドルダイト、スチーブンサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、アルミナートオキシド、ハイドロタルサイト、イライト、レクトライト、タロソバイト、レディカイト、カオリナイト、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの要素である、(1)に記載の無機−有機ナノ複合体。
(4)層状無機ナノ微粒子が、約0.01μm〜約10μmの平均最大横寸法、及び約0.5nm〜約10nmの平均最大縦寸法を有する、(1)に記載の無機−有機ナノ複合体。
(5)第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンが、以下の式を有する少なくとも一つのアンモニウム含有ジオルガノポリシロキサンである、(1)に記載の無機−有機ナノ複合体。
D’
式中、“a”は2であり、“b”は1であるか又は1より大きく、“c”はゼロ又は正数であり;Mは、
[RNR]3−x−ySiO1/2
であり、式中、“x”は、0、1又は2であり、“y”は、x+yが2未満であるか又は2であるという条件付きで0又は1のいずれかであり、“z”は2であり、R及びRは、個々独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;Rは、H及び炭素数60以下の一価の炭化水素基からなる群から選択され;Rは、炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;Dは、
SiO1/2
であり、式中、R及びRは、個々独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;D’は、
SiO2/2
であり、式中、R及びRは、個々独立して以下の一般式のアミンを含む一価の炭化水素基であり:
[RNR10]
式中、“a”は2であり、Rは、H及び炭素数60以下の一価の炭化水素基からなる群から選択され;R10は、炭素数60以下の一価の炭化水素基である、請求項1に記載の無機−有機ナノ複合体。
(6)第四級アンモニウム基が、式Rで表わされ、式中、R、R及びRの少なくとも一つは、炭素数60以下のアルコキシシランであり、そして残りの基が、炭素数60以下のアルキル基又はアルケニル基であり、そしてXが陰イオンである、(5)に記載の無機−有機ナノ複合体。
(7)第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンが、加水分解/縮合の条件下で、少なくとも一つの加水分解が可能な基を有するアミノシランを水と反応させてアミン末端オルガノポリシロキサンを生成させ、その後、アミン末端オルガノポリシランを第四級化してアンモニウムオルガノポリシロキサンを生成させることにより得られる、(1)に記載の無機−有機ナノ複合体。
(8)第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンが、加水分解/縮合に先立って、少なくとも一つの加水分解が可能な基を有するアミノシランを第四級化してアンモニウムオルガノポリシロキサンを生成させることにより得られる、(1)に記載の無機−有機ナノ複合体。
(9)第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンが、ヒドロシリル化触媒の存在下で、水素末端オルガノポリシロキサンをアリルアミンでヒドロシリル化してアミン末端オルガノポリシロキサンを生成させ、その後、アミン末端オルガノポリシロキサンを第四級化してアンモニウムオルガノポリシロキサンを生成させることにより得られる、(1)に記載の無機−有機ナノ複合体。
(10)a)状況に応じては触媒の存在下で、少なくとも一つの加水分解が可能なアルコキシ基を有するアミノシランを水と反応させてアミン末端オルガノポリシロキサンを得るステップ;
b)アミン末端オルガノポリシロキサンを第四級化して第四級化されたオルガノポリシロキサンを得るステップ;及び、
c)第四級化されたオルガノポリシロキサンと、イオン交換が可能な陽イオンを有する層状無機ナノ微粒子とを結合させて無機−有機ナノ複合体を得るステップ
を包含する、無機−有機ナノ複合体の製造方法:
(11)アミノシランが、少なくとも一つの加水分解が可能なアルコキシ基を有する、第一級、第二級、又は第三級のアミノシランである、(10)に記載の方法。
(12)触媒が、有機金属化合物、酸、塩基、及びそれらの混合物からなる群から選択される、(10)に記載の方法。
(13)アミン末端オルガノポリシロキサンが、鉱酸、ハロゲン化アルキル、又はそれらの混合物で第四級化される、(10)に記載の方法。
(14)(10)に記載の方法によって得られる無機−有機ナノ複合体。
(15)(11)に記載の方法によって得られる無機−有機ナノ複合体。
(16)(12)に記載の方法によって得られる無機−有機ナノ複合体。
(17)(13)に記載の方法によって得られる無機−有機ナノ複合体。
(18)少なくとも一つの固体の合成樹脂と、そのための部分充填剤又は全充填剤として、(1)に記載の少なくとも一つの無機−有機ナノ複合体とを含有する組成物。
(19)樹脂が、エポキシ、ポリカーボナート、シリコーン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニル芳香族樹脂、アクリル樹脂、アクリラートエスエルポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリハロゲン化ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリケトン、それらのコポリマー、及びそれらのブレンド物からなる群から選択される少なくとも一つである、(18)に記載の組成物。
(20)無機−有機ナノ複合体が、約90重量パーセントまでのレベルで存在する、(18)に記載の組成物。
(21)少なくとも一つの固体の合成樹脂と、そのための部分充填剤又は全充填剤として、(10)に記載の方法によって得られる少なくとも一つの無機−有機ナノ複合体とを含有する組成物。
(22)樹脂が、エポキシ、ポリカーボナート、シリコーン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニル芳香族樹脂、アクリル樹脂、アクリラートエスエルポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリハロゲン化ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリケトン、それらのコポリマー、及びそれらのブレンド物の少なくとも一つである、(21)に記載の組成物。
(23)無機−有機ナノ複合体が、約90重量パーセントまでのレベルで存在する、(21)に記載の組成物。

【実施例】
【0042】
以下、非限定例を用いて本発明を例示する。
【0043】
実施例1
本発明による有機−無機ナノ複合体は、アミノプロピル末端シロキサン(「GAP10」;10のシロキサン長;米国ウォーターフォードのGEシリコーンズ社から入手) 10gを、100mlの一口丸底フラスコにまず入れて、次いでメルク社(Merck)から入手可能なメタノール4mlを添加することによって調製した。次いで、2.2mlの濃HClを攪拌しながら非常にゆっくりと添加し、攪拌を10分間続けた。凝縮器とオーバーヘッド機械式攪拌機とを取り付けた2000ml三口丸底フラスコに、900mlの水を加えた。18gのクロイサイトNa(Cloisite Na+)(サザンクレイプロダクツ社(Southern Clay Products)から入手可能な天然のモンモリロナイト)粘土を、攪拌しながら非常にゆっくりと水に加えた(攪拌速度は約250rpm)。次に、塩化アンモニウム溶液(上で調製した)を、粘土−水混合物に非常にゆっくり加えた。混合物を1時間攪拌し、一晩放置した。混合物は、ブフナー漏斗(Buchner funnel)を用いて濾過し、得られた固体を800mlのメタノールでスラリー状にして、20分間攪拌し、次に混合物を濾過した。固体を80℃のオーブン中で約50時間乾燥した。
【0044】
本発明の好ましい実施形態を例示し詳細に記載したが、例えば、成分、物質、及びパラメータのさまざまな変更は、当業者にとっては明白であり、本発明の範囲内に入るような変更や改良の総てを添付の特許請求の範囲にて網羅することを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状無機ナノ微粒子である少なくとも一つの無機成分と、第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンである少なくとも一つの有機成分とを含有する無機−有機ナノ複合体。


【公開番号】特開2013−64148(P2013−64148A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−267834(P2012−267834)
【出願日】平成24年12月7日(2012.12.7)
【分割の表示】特願2008−551358(P2008−551358)の分割
【原出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(508229301)モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド (120)
【Fターム(参考)】