説明

無機−有機ナノ複合充填剤を含むシーリング材組成物

本発明は、とりわけジオルガノポリシロキサンと無機−有機ナノ複合体とを含む室温硬化型組成物に関し、硬化された組成物は気体に対して低い透過性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化した際に気体に対し低い透過性を示す室温硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
室温硬化型(RTC)組成物は、シーリング材としての用途がよく知られている。断熱ガラスユニット(IGU)の製造では、例えば、ガラスのパネルを互いに平行に並べ、そしてパネルの間の空間又は内部空間が完全に密閉されるように周囲をシールする。この内部空間は、典型的には低熱伝導率の気体、又は気体混合物、例えばアルゴンで満たされる。流通している室温硬化型シリコーンのシーリング材組成物は、ある程度は効果的であるが、IGUの内空間から断熱気体の損失を防ぐには、依然として限られた能力しか有していない。長い間に気体が逃げて、IGUの断熱効率の有効性が消失点へと減少することになる。
【0003】
ポリマーへの粘土物質の添加は、技術的に知られているが、ポリマーに粘土を取り込むのは、ポリマーの物理的性質、特に機械的性質の望ましい向上をもたらさないだろう。これは、例えば、境界面又は境界線における粘土とポリマーとの間の、又は物質中における粘土とポリマーとの間の親和性の不足に起因する。粘土とポリマーとの間の親和性は、粘土物質をポリマーの全体にわたって均一に分散させることによって、生成するナノ複合体の物理的性質を向上させることになる。粘土は比較的大きい表面積を有するため、均一に分散させた場合は、粘土とポリマーの間により多くの境界面をもたらし、これらの境界面でポリマー鎖の移動度を低下させることにより、物理的性質を改善できる。対照的に、粘土とポリマーとの間の親和性の不足は、ポリマーの全体にわたって均一に分散するより、むしろ粘土ポケットを凝集させることによって、組成物の強度及び均一性に悪影響を及ぼすことになる。粘土とポリマーとの間の親和性は、粘土が一般的に親水性であるのに対し、ポリマーが一般的に疎水性であるという事実と関係する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故、既知のRTC組成物と比較して、気体透過性が減少したRTC組成物への要求が存在する。IGU用のシーリング材として用いるとき、気体透過性の低いRTC組成物は、より透過可能なRTC組成物と比較して、より長時間パネル内に断熱気体を保ち続け、それ故に長時間にわたってIGUの断熱特性を引き延ばすことになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、特定のタイプの充填剤と結合した硬化型シラノール末端ジオルガノポリシロキサンが、硬化時に、気体に対し低い透過性を示すという発見に基づくものである。この組成物は、柔軟性、施工性及び弾力性といった所望の特性に加え、高いガスバリア性が重要な性能基準とされるシーリング材としての使用に特に適している。
【0006】
本発明によれば、下記:
a)少なくとも一つのシラノール末端ジオルガノポリシロキサン;
b)シラノール末端ジオルガノポリシロキサン用の少なくとも一つの架橋剤;
c)架橋反応用の少なくとも一つの触媒;
d)ガスバリア性を高める量の少なくとも一つの無機−有機ナノ複合体;及び、任意選択的に、
e)架橋したジオルガノポリシロキサンよりも気体透過性の低い少なくとも一つの固体ポリマー
を含有する硬化型組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
ガスバリアとして用いるとき、例えば、IGUの製造において、前述の組成物は気体の損失を減少させ、従ってそれを用いた製品のより長い製品寿命を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の硬化型シーリング材組成物は、a)少なくとも一つのジオルガノポリシロキサン;b)ジオルガノポリシロキサン用の少なくとも一つの架橋剤;c)架橋反応用の少なくとも一つの触媒;d)ガスバリア性を高める量の少なくとも一つの無機−有機ナノ複合体;及び、任意選択的に、e)架橋されたジオルガノポリシロキサンの透過性よりも気体に対し小さい透過性を有する少なくとも一つの固体ポリマー、を混合することによって得られ、この組成物は、硬化後に気体に対し低い透過性を示す。
【0009】
本発明の組成物は、シーリング材、コート剤、接着剤、ガスケット、などの製造用に有用であり、断熱ガラスユニットを意図したシーリング材における用途に特に適する。
【0010】
本発明を説明する際、下記の用語は、別途記載のない限り以下の意味を有する。
【0011】
定義
本書で用いる用語「層間剥離(exfoliation)」は、ナノ粘土プレートレット(nanoclay platelets)の小さな束がポリマーマトリックス中で互いに分離する過程をいう。層間剥離の際、各束の最も外側の領域でプレートレットがへき開し、分離のためにより多くのプレートレットを露出させる。
【0012】
本書で用いる用語「ギャラリー(gallery)」は、粘土プレートレットの平行な層の間の空間をいう。ギャラリー空間は、空間を占める分子やポリマーの性質に依存して変化する。個々のナノ粘土プレートレットの間の層間空間もまた、空間を占める分子の種類応じて変化する。
【0013】
本書で用いる用語「層間挿入物質(intercalant)」は、粘土のギャラリーに入り、その表面に結合することが可能な任意の有機又は無機の化合物である。
【0014】
本書で用いる用語「層間挿入体(intercalate)」は、粘土のギャラリー空間が表面修飾処理に起因して増大している粘土−化学錯体(clay-chemical complex)を指す。適切な温度及び剪断条件下で、層間挿入体は樹脂マトリックス中で剥離することが可能である。
【0015】
本書で用いるとき、用語「層間挿入(intercalation)」は、層間挿入体を生成するプロセスを指している。
【0016】
本書で用いるとき、語句「無機ナノ微粒子」は、例えばナノメートルサイズの長さ、幅又は厚さのような一以上の次元を有し、且つイオン交換が可能であるところの層状無機物質、例えば粘土をいう。
【0017】
本発明の硬化された組成物に関し用いる表現「低い気体透過性」とは、圧力100psi、温度25℃にて、定圧可変容量法に従って測定した際に約900barrer(1barrer=10−10(STP)/cm・sec(cmHg))以下のアルゴン透過係数を意味するものと解釈する。
【0018】
本書で用いる表現「修飾された粘土(modified clay)」は、粘土の層間表面に存在する陽イオンとイオン交換反応をすることが可能な任意の無機又は有機の化合物で処理された粘土物質、例えばナノ粘土、を指す。
【0019】
本書で用いる用語「ナノ粘土(nanoclay)」とは、一つの次元においてナノメートル領域の特異な形態を有する粘土物質をいう。ナノ粘土は、層間の面にイオン結合する層間挿入物質との化学錯体を生成することができ、粘土粒子になる。層間挿入物質と粘土粒子とのこの会合によって多くの異なった種類のホスト樹脂に親和性のある物質が生じ、それによって粘土充填剤をそこに分散できることになる。
【0020】
本書で用いるとき、用語「ナノ微粒子(nanoparticulate)」は、一般に直径によって決定され、一般に約1000nmより小さい粒子径を指している。
【0021】
本書で用いるとき、用語「プレートレット(platelets)」は、層状物質の個々の層を指している。
【0022】
本発明の硬化型組成物は、少なくとも一つのシラノール末端ジオルガノポリシロキサン(a)を含む。適切なシラノール末端ジオルガノポリシロキサン(a)は、次の一般式の化合物を含む:
D’
式中、“a”は2であり、“b”は1であるか又は1より大きく、そして“c”はゼロ又は正数であり;Mは、
(HO)3−x−ySiO1/2
であり、式中、“x”は0、1又は2であり、“y”は、x+yが2未満であるか又は2であるという条件で0又は1のいずれかであり、R及びRは、それぞれ独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;Dは、
SiO1/2
であり、式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;D’は
SiO2/2
であり、式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基である。
【0023】
本発明の組成物に存在する、シラノール末端ジオルガノポリシロキサン用の適切な架橋剤(b)は、下記の一般式のアルキルシリケートを含む:
(R14O)(R15O)(R16O)(R17O)Si
式中、R14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基である。このタイプの架橋剤は、n−プロピルシリケート、テトラエチルオルトシリケート、メチルトリメトキシシラン、及び類似のアルキル置換アルコキシシラン化合物等である。
【0024】
シラノール末端ジオルガノポリシロキサンの架橋反応用に適切な触媒(c)は、そのようなシロキサンの架橋を促進するために有用であることが知られている触媒を用い得る。触媒は、金属含有化合物又は非金属化合物とし得る。有用な金属含有化合物の例は、スズ、チタン、ジルコニウム、鉛、鉄、コバルト、アンチモン、マンガン、ビスマス、及び亜鉛の化合物である。
【0025】
本発明の一実施形態では、架橋触媒として有用なスズ含有化合物は、以下の通りである:ジブチルスズジラウラート、ジブチルスズジアセタート、ジブチルスズジメトキシド、スズオクトアート、イソブチルスズトリセロアート、ジブチルスズオキシド、可溶性ジブチルスズオキシド、ジブチルスズビス(ジイソオクチルフタラート)、ビス(トリプロポキシシリル)ジオクチルスズ、ジブチルスズビス(アセチルアセトン)、シリル化されたジブチルスズジオキシド、カルボメトキシフェニルスズトリス(ウベラート)、イソブチルスズトリセロアート、ジメチルスズジブチラート、ジメチルスズジ(ネオデカノアート)、トリエチルスズタルタラート、ジブチルスズジベンゾアート、スズオレアート、スズナフタレナート、ブチルスズトリ(2−エチルヘキシルヘキソアート)、スズブチラート、ジオルガノスズビス(β−ジケトナート)、などである。有用なチタン含有触媒は、キレート化されたチタン化合物、例えば、1,3−プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセタート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセタート)、及びテトラアルキルチタナート、例えば、テトラ(n−ブチル)チタナート、そしてテトラ(イソプロピル)チタナートである。本発明の他の実施形態においては、ジオルガノスズビス(β−ジケトナート)は、シリコーンシーリング材組成物における架橋を促進するのに有用である。
【0026】
本発明の無機−有機ナノ複合体(d)は、層状の無機ナノ微粒子である少なくとも一つの無機成分と、第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンである少なくとも一つの有機成分とから構成される。
【0027】
本発明の無機ナノ粒子は、スメクタイト粘土(smectite clay)のような天然又は合成されたものとし得、そしてスメクタイト粘土、レクトライト(rectorite)、バーミキュライト(vermiculite)、イライト(illite)、雲母及びそれらの合成同族体(ラポナイト、合成雲母−モンモリロナイト(synthetic mica-montmorillonite)、及び四ケイ素雲母(tetrasilicic mica)を含む)のように、一定のイオン交換性を有さなければならない。
【0028】
ナノ微粒子の平均最大横寸法(幅)は、第一実施態様では約0.01μm〜約10μm、第一実施態様では約0.05μm〜約2μm、そして第三実施態様では約0.1μm〜約1μmとすることができる。ナノ微粒子の平均最大縦寸法(厚さ)は、第一実施態様では約0.5nm〜約10nm、そして第二実施態様では約1nm〜約5nmにおいて一般に変化させ得る。
【0029】
本発明の有用な無機ナノ微粒子物質は、天然又は合成のフィロシリケート(phyllosilicates)であり、特にモンモリロナイト(montmorillonite)、ナトリウムモンモリロナイト(sodium montmorillonite)、カルシウムモンモリロナイト(calcium montmorillonite)、マグネシウムモンモリロナイト(magnesium montmorillonite)、ノントロナイト(nontronite)、ベイデルライト(beidellite)、ボルコンスコイト(volkonskoite)、ラポナイト(laponite)、ヘクトライト(hectorite)、サポーナイト(saponite)、ソーコナイト(sauconite)、マガダイト(magadite)、ケニヤイト(kenyaite)、ソボクカイト(sobockite)、スビンドルダイト(svindordite)、ステベンサイト(stevensite)、滑石、雲母、カオリナイト(kaolinite)、バーミキュライト(vermiculite)、ハロイサイト(halloysite)、アルミナートオキシド(aluminate oxides)、又はハイドロタルサイト(hydrotalcites)、及びそれらの混合物のようなスメクチック粘土(smectic clays)である。他の実施形態においては、有用なナノ粘土は、イライト(illite)のような雲母質鉱物、及びレクトライト(rectorite)、タロソバイト(tarosovite)、レディカイト(ledikite)、そしてイライトと上述の粘土鉱物の一つ以上との混合物のような混合層状イライト/スメクタイト鉱物である。有機分子を十分に吸着して、隣接するフィロシリケートプレートレットの間の層間空間を少なくとも約5オングストローム、又は少なくとも約10オングストローム(フィロシリケートを乾燥状態で測定したとき)に増大させる任意の膨潤可能な層状物質を、本発明の無機−有機ナノ複合体の製造時に使用できる。
【0030】
本発明の修飾された無機ナノ微粒子は、交換可能な陽イオン、例えば、Na、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe3+及びMg2+を有する多量の層状無機微粒子を、少なくとも一つのアンモニウム含有オルガノポリシロキサンと接触させることによって得られる。得られた、修飾された微粒子は、層間挿入されたオルガノポリシロキサンアンモニウムイオンを有する無機−有機ナノ複合体(d)である。
【0031】
アンモニウム含有オルガノポリシロキサンは、少なくとも一つのアンモニウム基を含まねばならず、そして二つ以上のアンモニウム基を含んでよい。第四級アンモニウム基は、オルガノポリシロキサンの末端で、及び/又はシロキサン骨格に沿って位置してよい。有用なアンモニウム含有オルガノポリシロキサンの一つの種類は、下記の一般式を有し:
D’
式中、“a”は2であり、“b”は1であるか又は1より大きく、そして“c”はゼロ又は正数であり;Mは、
[RNR]3−x−ySiO1/2
であり、式中、“x”は、0、1又は2であり、“y”は、x+yが2未満であるか又は2であるという条件で0又は1のいずれかであり、“z”は2であり、R及びRは、それぞれ独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;Rは、H及び炭素数60以下の一価の炭化水素基からなる群から選択され;Rは、炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;Dは、
SiO1/2
であり、式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;D’は、
SiO2/2
であり、式中、R及びRは、それぞれ独立して下記の一般式のアミンを含む一価の炭化水素基であり:
[RNR10]
式中、“a”は2であり、Rは、H及び炭素数60以下の一価の炭化水素基からなる群から選択され;R10は、炭素数60以下の一価の炭化水素基である。
【0032】
本発明の他の実施形態では、アンモニウム含有オルガノポリシロキサンは、R111213Nであり、式中、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立してアルコキシシラン又は炭素数60以下の一価の炭化水素基である。アルコキシシランの一般式は、
[R14O] 3−x−y1516SiR17
式中、“x”は、0、1又は2であり、“y”は、x+yが2未満であるか又は2であるという条件で0又は1のいずれかであり;R14は、炭素数30以下の一価の炭化水素基であり;R15及びR16は、独立して選ばれる炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;R17は、炭素数60以下の一価の炭化水素基である。本発明の無機成分を修飾するのに有用な更なる化合物は、R181920Nの構造を有するアミン化合物又は対応するアンモニウムイオンであり、式中、R18、R19、及びR20は、それぞれ独立して炭素数30以下のアルキル基又はアルケニル基であり、そして他の実施形態では、それぞれ独立して炭素数20以下のアルキル基又はアルケニル基であり、これらは同一でも異なってもよい。さらに他の実施形態では、有機分子は、R18、R19及びR20が、それぞれ独立して炭素数14〜20のアルキル又はアルケニルである、長鎖の第三級アミンである。
【0033】
本発明の層状無機ナノ微粒子は、プロトン交換型に変換する必要はない。典型的には、層状無機ナノ微粒子物質へのオルガノポリシロキサンアンモニウムイオンの層間挿入は、溶媒、及び無溶媒のプロセスを用いた陽イオン交換によって行われる。溶媒使用のプロセスでは、オルガノポリシロキサンアンモニウム成分を、重合又はカップリング反応に対して不活性である溶媒中に入れる。特に適切な溶媒は、水又は水−エタノール、水−アセトン、そして同様な水−極性の混合溶媒系である。溶媒の除去によって、層間に挿入された微粒子の濃縮物が得られる。無溶媒のプロセスでは、高せん断ミキサが層間挿入反応を行うのに通常必要になる。無機−有機ナノ複合体は、懸濁、ゲル、ペースト、又は固体の形態とし得る。
【0034】
アンモニウム含有オルガノポリシロキサンの具体的な種類は、米国特許第5,130,396号公報に記載された化合物であり、これらは市販品を含む既知の物質から調製できる。参照することで、本特許の全ての内容を本明細書に取り入れることとする。
【0035】
米国特許第5,130,396号公報のアンモニウム含有オルガノポリシロキサンは、以下の一般式によって表わされる:
【化1】

式中、R及びRは、同一でも異なってもよく、以下の式の基を表わす:
【化2】

ここで、(I)の窒素原子は、R基を経由して(II)のケイ素原子にリンクされ、そしてRは、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数5〜8のシクロアルキレン基、又は下記の一般式の単位を表わす:
【化3】

式中、nは、1〜6の数であり且つ窒素の位置におけるメチレン基の数を示し、mは、0〜6までの数であり、そしてケイ素原子に結合した酸素原子の自由原子価は、式(II)の他の基のケイ素原子によって、及び/又は、一つ又は複数の架橋結合リンクの金属原子によって、シリカ骨格における場合のように飽和されており、
【化4】

式中、Mは、ケイ素原子、チタン原子又はジルコニウム原子であり、そしてR’は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、そして式(II)の基のケイ素原子対結合リンク中の金属原子の比は、1:0〜であり、そして式中、Rは、R又はRと同じであるか、又は水素、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、又はベンジル基であり、そしてRは、水素、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は炭素数5〜8のシクロアルキル基、ベンジル基、アルキル基、プロパルギル基、クロロエチル基、ヒドロキシエチル基、又はクロロプロピル基であり、Xは、1から3に等しい価数xの陰イオンであり、ハロゲン化物、次亜塩素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硝酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸二水素塩、リン酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、塩素酸塩、過塩素酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、シアン化物、シアン酸塩、ロダン化物、硫化物、硫化水素、セレン化物、テルル化物、ホウ酸塩、メタホウ酸塩、アジ化物、テトラフルオロホウ酸塩、テトラフェニルホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、又は安息香酸塩の群から選択される。
【0036】
本書に記載するアンモニウム含有オルガノポリシロキサン化合物は、0.01〜3.0mmの直径、0〜1000m/gの比表面積、0〜5.0ml/gの比細孔容積、50〜1000g/1のかさ密度を有する肉眼では球状の形をした粒子であり、50〜750g/1の体積に関する乾燥物基準を有する。
【0037】
アンモニウム含有オルガノポリシロキサンを調製する一つの方法は、任意に触媒存在下で、少なくとも一つの加水分解が可能なアルコキシ基を有する第一級、第二級、又は第三級のアミノシランと水との反応により、シランの加水分解と、次に起こる縮合を行ってアミン末端オルガノポリシランを生成させ、その後、鉱酸及び/又はハロゲン化アルキルのような適切な四級化試薬で四級化して、アンモニウム含有オルガノポリシロキサンを得るものである。このタイプの方法は、前述した米国特許第5,130,396号公報に記載されている。これに関して、米国特許第6,730,766号公報には、エポキシ官能性ポリシロキサンの反応による四級化ポリシロキサンの製造プロセスが記載されており、参照することで、その全ての内容を本書に取り入れることとする。
【0038】
この方法の変更形態においては、加水分解可能なアルコキシ基を有する第一級、第二級、又は第三級のアミノシランは、オルガノポリシロキサンを与える加水分解縮合反応に先立って第四級化される。例えば、アンモニウム含有N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリ−n−ブチルアンモニウムクロリド、そして市販品のアンモニウム含有トリアルコキシシランであるオクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロリド(ゲレスト社(Gelest, Inc)から入手できる)であり、続く加水分解/縮合は、本書で使用するアンモニウム含有オルガノポリシロキサンを与える。
【0039】
アンモニウム含有オルガノポリシロキサンを調製するのに有用な、他の適切な第三級アミノシランとしては、トリス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(ジエトキシメチルシリルプロピル)アミン、トリス(トリプロポキシシリルプロピル)アミン、トリス(エトキシジメチルシリルプロピル)アミン、トリス(トリエトキシフェニルシリルプロピル)アミンなどが挙げられる。
【0040】
アンモニウム含有オルガノポリシロキサンを調製する更に他の方法では、第四級化試薬を用いて、第一級、第二級、又は第三級のアミン含有オルガノポリシロキサンを四級化することが必要とされる。有用なアミン含有オルガノポリシロキサンは、以下の一般式の化合物を含む:
【化5】

式中、R、R、R、及びRは、個々独立して、H、炭素数30以下の炭化水素基(例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、脂肪族基置換アリール(alkaryl)、芳香族基置換アルキル(aralkyl)など)であり、又はRとRは共に、又はRとRは共に、炭素数12以下の二価の架橋基を形成し、R及びRは、個々独立して炭素数30以下の二価の炭化水素架橋基であり、任意に1つ以上の酸素原子及び/又はチッ素原子を鎖の中に含有することができ、例えば、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHC(CH)−CH−、−CHCHCHCH−などのような炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレンであり、Rは、個々独立してアルキル基であり、そしてnは1〜20であり、好ましくは6〜12である。
【0041】
これらの及び類似のアミン含有オルガノポリシロキサンは、既知の、そして汎用の手順によって、例えば、米国特許第5,026,890号公報に記載されたように、白金含有ヒドロシリル化触媒のようなヒドロシリル化触媒の存在下において、アリルアミンのようなオレフィンアミンをSi−H結合を有するポリジオルガノシロキサンと反応させることによって得ることができ、参照することにより、その全ての内容を本明細書に取り入れることとする。
【0042】
アンモニウム含有オルガノポリシロキサンを調製するために有用な具体的なアミン含有オルガノポリシロキサンとしては、以下の市販混合物が挙げられる。
【化6】

【0043】
任意選択的に、硬化型組成物は、架橋されたジオルガノポリシロキサンの透過性よりも低い気体透過性を有する少なくとも一つの固体ポリマー(e)を含むことができる。適切なポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状の低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)のようなポリエチレン;ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリビニルアセタート(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVoH)、ポリスチレン、ポリカーボナート、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、グリコール変性ポリエチレンテレフタラート(PETG)のようなポリエステル;塩化ポリビニル(PVC)、塩化ポリビニリデン、フッ化ポリビニリデン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、フッ化ポリビニル(PVF)、ポリアミド(ナイロン)、ポリメチルペンテン、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セルロースアセタート、セルロースアセタートブチラート、可塑化された塩化ポリビニル、アイオノマー(Surtyn)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、スチレン−無水マレイン酸、変性ポリフェニレンオキシド(PPO)、及びそれらの混合物である。
【0044】
任意選択のポリマーはまた、エラストマーとし得、その例としては、限定はしないが、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリウレタン(TPU)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEEBS)、ポリメチルフェニルシロキサン(PMPS)が挙げられる。
【0045】
これら任意選択のポリマーは、単独で、又は組み合わせて、又はコポリマーの形態でブレンドすることができ、例えば、ポリカーボナート−ABSブレンド、ポリカーボナートポリエステルブレンド、シラン−グラフトポリエチレン及びシラン−グラフトポリウレタンのようなグラフトポリマーである。
【0046】
本発明の一実施形態では、硬化型組成物は、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状の低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びそれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含む。本発明の他の実施形態では、硬化型組成物は、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直線状の低密度ポリエチレン(LLDPE)、及びそれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを有する。本発明のさらに他の実施形態では、任意選択のポリマーは、直線状の低密度ポリエチレン(LLDPE)である。
【0047】
硬化型シーリング材組成物は、無機−有機ナノ複合体成分(d)に加えて一つ以上の他の充填剤を含んでもよい。使用に適した追加の充填剤は、ステアリン酸、又はステアリン酸エステルのような化合物で処理した、沈降又はコロイド状の炭酸カルシウム;フュームドシリカ、沈降シリカ、シリカゲル、及び疎水化処理されたシリカ、疎水化処理されたシリカゲルのような強化シリカ;粉砕した石英及び粉末にした石英(crushed and ground quartz)、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化チタン、珪藻土、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、雲母、滑石、及びそれらの混合物である。
【0048】
本発明の硬化型シーリング材組成物は、接着促進剤として、一つ以上のアルコキシシランもまた含んでもよい。有用な接着促進剤は、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(γ−トリメトキシシリルプロピル)アミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノ官能性トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、β−シアノエチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、及びN−エチル−3−トリメトキシシリル−2−メチルプロパンアミン、などである。一実施形態においては、接着促進剤は、n−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランと1,3,5−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌラートとの組み合わせとし得る。
【0049】
本発明の組成物はまた、一つ以上の非イオン性界面活性剤を含むことができる。その例は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エトキシ化されたヒマシ油、オレイン酸エトキシラート、アルキルフェノールエトキシラート、エチオレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)とのコポリマー、シリコーンとポリエーテルとのコポリマー(シリコーンポリエーテルコポリマー)、シリコーンと、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーとのコポリマー、及びそれらの混合物である。
【0050】
本発明の硬化型シーリング材組成物は、硬化組成物に必要な特性を妨げない限り、着色剤、顔料、可塑剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、殺生物剤などのようなRTCシリコーン含有組成物に汎用的に用いられる他の成分を、既知の、そして汎用の量にて含むことができる。
【0051】
シラノール末端ジオルガノポリシロキサン、架橋剤、架橋触媒、無機−有機ナノ複合体、架橋されたジオルガノポリシロキサンより気体透過性の低い任意選択の固体ポリマー、無機−有機ナノ複合体以外の任意選択の充填剤、任意選択の接着促進剤、及び任意選択のイオン性界面活性剤の量は、広く変えることができ、そして有利には次の表に示された範囲の中から選択することができる。硬化型組成物は、当然、ガスバリア性を高める量にて無機−有機ナノ複合体を含む。
【0052】
【表1a】

【0053】
硬化型組成物は、湿気の存在下、当分野で周知の方法、例えば、溶融ブレンド、押出ブレンド、溶液ブレンド、乾式混合、バンバリーミキサ(Banbury mixer)中でのブレンド等によって得ることができ、それによって実質的に均一な混合物を得ることができる。
【0054】
好ましくは、ジオルガノポリシロキサンをポリマーとブレンドする方法は、タンブラー又は他の物理的なブレンド手段内において各成分を接触させ、続いて押出機で溶融ブレンドすることによって達成することができる。あるいはまた、成分を押出機、ブラベンダー(Brabender)、又は他の溶融ブレンド手段で直接的に溶融ブレンドすることもできる。
【実施例】
【0055】
以下の非限定例により本発明を例示する。
【0056】
比較例1及び実施例1〜2
有機−無機ナノ複合体は、10gのアミノプロピル末端シロキサン(「GAP10」;シロキサン長さ10;米国ウォーターフォードのGEシリコーン社から入手)を、100mlの一口丸底フラスコに、まず入れて、次いでメルク社(Merck)から入手できるメタノール4mlを添加することによって、調製した。2.2mlの濃HClを攪拌しながら非常にゆっくりと添加し、攪拌を10分間続けた。凝縮器とオーバーヘッド機械式攪拌機とを取り付けた2000ml三口丸底フラスコに、900mlの水を加えた。18gのクロイサイトNa(Cloisite Na+)(サザンクレイプロダクツ社(Southern Clay Products)から入手可能な天然のモンモリロナイト)粘土を、非常にゆっくりと攪拌しながら水に加えた(攪拌速度は約250rpm)。次に、塩化アンモニウム溶液(上で調製した)を、粘土−水混合物に非常にゆっくり加えた。混合物を1時間攪拌し、一晩放置した。混合物は、ブフナー漏斗(Buchner funnel)を用いて濾過し、得られた固体は800mlのメタノールでスラリー状にして20分間攪拌し、次いで混合物を濾過した。固体を80℃のオブン中で約50時間乾燥した。
【0057】
2.5重量%のナノ複合体を得るために、OMCTS(オクタメチルシクロテトラシロキサン)224.25gとGPA10修飾粘土(上で調製した無機−有機ナノ複合体)5.75gを、オーバーヘッド攪拌機と凝縮器とを取り付けた三口丸底フラスコに入れた。混合物を室温で6時間、250rpmで攪拌した。攪拌を続けながら温度を175℃に上昇させた。0.3gのCsOHを水1mlに入れたものを、セプタムキャップを介して反応容器に添加した。15分後、OMCTSの重合が始まり、次いで0.5mlの水を添加し、5分後に0.5mlの水をさらに添加した。加熱と攪拌を1時間続けた後、中和するために0.1mlのリン酸を添加した。反応混合物のpHを30分後に測定した。攪拌と加熱をさらに30分続け、そして反応混合物のpHを再度測定して完全な中和を確認した。環状物の蒸留を175℃で行い、その後混合物を室温に冷却した。
【0058】
同一の操作を、5重量%のGAP10修飾粘土を用いて行った。
【0059】
in situ重合操作を、2.5重量%及び5重量%の(表1を参照)GAP10修飾粘土(上で調製した)を用いて行った。異なる量の粘土を用いたin situポリマーは、その後、次のような硬化シートを作製するのに用いた:in situシラノール末端ポリジメチルジシロキサン(PDMS)(シラノール5000(公称5000csのシラノール末端ポリジメチルジシロキサン)とシラノール50000(公称50000csのシラノール末端ポリジメチルジシロキサン)、両者ともゲレスト社(Gelest, Inc)から入手可能)、GAP10修飾粘土調合物に、NPS架橋剤(n−プロピルシリケート;ゲレスト社から入手可能)と可溶化されたDBTO触媒(可溶化されたジブチオルスズオキシド;米国ウォーターフォードのGEシリコーンズ社から入手可能)を、空気泡を真空中で除去しながら手動ブレンダーを用いて5〜7分間混合した。次いで、当該混合物を、テフロン製シート作製型に注いで、周囲条件下(25℃及び湿度50%)で24時間維持した。24時間後、部分的に硬化したシートを型から取り出し、完全に硬化させるために室温で7日間維持した。
【0060】
【表1】

【0061】
アルゴン透過性は、気体透過性測定機を用いて測定した。アルゴン透過性は、先の実施例における気体透過性測定機を用いて測定した。測定は、圧力100psi、温度25℃にて可変容量法に基づいて行った。測定は、再現性を確認する目的で、同一の条件下で2〜3回繰り返した。
【0062】
比較例1と、実施例1及び2の透過性データは、図1にグラフを使って表した。
【0063】
比較例2及び実施例3
実施例3(表2を参照)は、45gのPDMSと5gのGAP10修飾粘土(上で調製した)とを混合することによって調製し、そして同様なin situ重合を2重量%のNPSと、1.2重量%DBTOを、空気泡を真空中で除去しながら手動ブレンダーを用いて5〜7分間混合した。各ブレンド物を、テフロン製シート作製型に注いで、周囲条件下(25℃及び湿度50%)で24時間維持してPDMS成分を部分的に硬化させた。24時間後、部分的に硬化したシートを型から取り出し、完全に硬化させるために室温で7日間維持した。
【0064】
【表2】

【0065】
アルゴン透過性は、先の実施例のように気体透過性測定機を用いて測定した。アルゴン透過性は、先の実施例のように気体透過性測定機を用いて測定した。測定は、圧力100psi、温度25℃にて可変容量法に基づいて行った。測定は、再現性を確認する目的で、同一の条件下で2〜3回繰り返した。
【0066】
比較例2と実施例3の透過性データは、図2にグラフを使って表した。
【0067】
比較例3と、実施例4及び5
実施例4及び5の無機−有機ナノ複合体は、15gのオクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロリド(ゲレスト社から入手できる)を、100mlのビーカーに入れ、そして50mlのメタノール(メルク社から入手できる)をゆっくりと添加することによって調製した。水−メタノール溶液(比率1:3、3.5L)が入っている、オーバーヘッド機械式攪拌器を取り付けた5リットルのビーカーに、約400rpmの速度で混合物を攪拌しながら、30gのクロイサイト15A(「C−15A」)粘土をゆっくりと添加した。「C−15A」は、粘土100gにつき、125ミリ当量のジメチル脱水素獣脂アンモニウムクロリドで修飾したモンモリロナイト粘土であり、サザンクレイプロダクツ社から入手できる。攪拌を12時間続けた。次いで(上で調製した)オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロリドを非常にゆっくり添加した。混合物を3時間攪拌した。その後、混合物はブフナー漏斗を用いて濾過し、得られた固体は、水−メタノール(1:3)溶液で数回スラリーにして濾過した。固体は80℃で、約50時間オーブン中で乾燥した。
【0068】
次に、上に示したブレンド物を用いて次のようにして硬化シートを作製した:PDMS−シリルプロピル修飾粘土調合物を、手動ブレンダーを用いて5〜7分、真空中で空気泡を除去しながら、表3に掲げたように、NPS及びDBTOと共に混合した。各ブレンド物を、テフロン製シート作製型に注ぎ、周囲条件(25℃及び湿度50%)で24時間維持し、PDMS成分を部分的に硬化させた。この部分的に硬化したシートは、24時間後に型から取り出し、完全に硬化させるために室温で7日間維持した。
【0069】
【表3】

【0070】
アルゴン透過性は、先の実施例のように気体透過性測定機を用いて測定した。アルゴン透過性は、先の実施例のように気体透過性測定機を用いて測定した。測定は、圧力100psi、温度25℃にて可変容量法に基づいて行った。測定は、再現性を確認する目的で、同一の条件下で2〜3回繰り返した。
【0071】
比較例3と、実施例4及び5の透過性データは、図3にグラフを使って表した。
【0072】
透過性データは、図1、2及び3にグラフを使って表した。当該データで示すように、本発明の硬化されたシーリング材組成物のアルゴン透過性(図1の実施例1及び2、図2の実施例3、図3の実施例4及び5)は、本発明の範囲外にある硬化されたシーリング材組成物のアルゴン透過性(図1〜3の比較例1〜3)よりも著しく低い。まとめると、比較例1、2及び3のシーリング材組成物のアルゴン透過係数は、950barrerを超えるのに対し、本発明のシーリング材組成物を例示する実施例1〜3、4及び5のアルゴン透過係数は、875barrerを越えず、そしてあるケースでは、アルゴン透過係数のこのレベルよりもずっと下であった(特に、実施例2、4と5を参照)。
【0073】
本発明の好ましい実施形態を例示し詳細に記載したが、例えば、成分、物質、及びパラメータのさまざまな変更は、当業者にとっては明白であり、本発明の範囲内に入るような変更や改良の総てを添付の特許請求の範囲にて網羅することを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】比較例1と、実施例1及び2のシーリング材組成物の透過性データ
【図2】比較例2と実施例3のシーリング材組成物の透過性データ
【図3】比較例3と、実施例4及び5のシーリング材組成物の透過性データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも一つのシラノール末端ジオルガノポリシロキサン;
b)シラノール末端ジオルガノポリシロキサン用の少なくとも一つの架橋剤;
c)少なくとも一つの架橋反応用触媒;
d)ガスバリア性を高める量の少なくとも一つの無機−有機ナノ複合体;及び、任意選択的に、
e)架橋したジオルガノポリシロキサンの透過性よりも低い気体透過性を有する少なくとも一つの固体ポリマー
を含む硬化型シーリング材組成物。
【請求項2】
シラノール末端ジオルガノポリシロキサン(a)が、下記の一般式を有し:
D’
式中、“a”は2であり、そして“b”は1であるか又は1より大きく、“c”はゼロ又は正数であり;Mは、
(HO)3−x−ySiO1/2
であり、式中、“x”は0、1又は2であり、そして“y”は、x+yが2未満であるか又は2であるという条件で0又は1のいずれかであり、R及びRは、個々独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;Dは、
SiO1/2
であり、式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;D’は
SiO2/2
であり、式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
架橋剤(b)が、下記の式を有するアルキルシリケートであり:
(R14O)(R15O)(R16O)(R17O)Si
式中、R14、R15、R16及びR17は、個々独立して炭素数1〜60までの一価の炭化水素基から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
触媒(c)がスズ触媒である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
触媒が、ジブチルスズジラウラート、ジブチルスズジアセタート、ジブチルスズジメトキシド、スズオクトアート、イソブチルスズトリセロアート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズビス(ジイソオクチルフタラート)、ビス(トリプロポキシシリル)ジオクチルスズ、ジブチルスズビス(アセチルアセトン)、シリル化されたジブチルスズジオキシド、カルボメトキシフェニルスズトリス(ウベラート)、イソブチルスズトリセロアート、ジメチルスズジブチラート、ジメチルスズジ(ネオデカノアート)、トリエチルスズタルタラート、ジブチルスズジベンゾアート、スズオレアート、スズナフテナート、ブチルスズトリ(2−エチルヘキシルヘキソアート)、スズブチラート、ジオルガノスズビス(β−ジケトナート)、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
無機−有機ナノ複合体が、層状の無機ナノ微粒子である少なくとも一つの無機成分と、第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンである少なくとも一つの有機成分とを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
層状の無機ナノ微粒子が、Na、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Mg2+、及びこれらの混合物の群から選択される少なくとも一つの要素である、交換可能な陽イオンを有する、請求項6に記載の無機−有機ナノ複合体。
【請求項8】
層状のナノ微粒子が、モンモリロナイト、ナトリウムモンモリロナイト、カルシウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデルライト、ボルコンスコイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポーナイト、ソーコナイト、マガダイト、ケニアイト、ソボクカイト、スビンドルダイト、スチーブンサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、アルミナートオキシド、ハイドロタルサイト、イライト、レクトライト、タロソバイト、レディカイト、カオリナイト、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの要素である、請求項6に記載の無機−有機ナノ複合体。
【請求項9】
第四級アンモニウムオルガノポリシロキサンが、下記の式を有する少なくとも一つのアンモニウム含有ジオルガノポリシロキサンであり:
D’
式中、“a”は2であり、“b”1であるか又は1より大きく、そして“c”はゼロ又は正数であり;Mは、
[RNR]3−x−ySiO1/2
であり、式中、“x”は、0、1又は2であり、“y”は、x+yが2未満であるか又は2であるという条件で0又は1のいずれかであり、“z”は2であり、R及びRは、個々独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;Rは、H及び炭素数60以下の一価の炭化水素基からなる群から選択され;Rは、炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;Dは、
SiO1/2
であり、式中、R及びRは、個々独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;D’は、
SiO2/2
であり、式中、R及びRは、個々独立して下記の一般式のアミンを含む一価の炭化水素基であり:
[RNR10]
式中、“a”は2であり、Rは、H及び炭素数60以下の一価の炭化水素基からなる群から選択され;R10は、炭素数60以下の一価の炭化水素基である、請求項6に記載の無機−有機ナノ複合体。
【請求項10】
第四級アンモニウム基が、Rで表わされ、式中、R、R及びRの少なくとも一つは、炭素数60以下のアルコキシシランであり、そして残りの基が、炭素数60以下のアルキル基又はアルケニル基であり、そしてXが陰イオンである、請求項9に記載の無機−有機ナノ複合体。
【請求項11】
固体ポリマー(e)が、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状の低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリビニルアセタート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボナート、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、グリコール変性ポリエチレンテレフタラートのようなポリエステル、塩化ポリビニル、塩化ポリビニリデン、フッ化ポリビニリデン、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリメチルメタクリラート、フッ化ポリビニル、ポリアミド、ポリメチルペンテン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセタート、セルロースアセタートブチラート、可塑化された塩化ポリビニル、アイオノマー、ポリフェニレンスルフィド、スチレン−無水マレイン酸、変性ポリフェニレンオキシド、エチレン−プロピレンゴム、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン、ポリメチルフェニルシロキサン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
接着促進剤、界面活性剤、着色剤、顔料、可塑剤、無機−有機ナノ複合体以外の充填剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、及び殺生物剤からなる群から選択される、少なくとも一つの任意成分をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
接着促進剤が、n−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、1,3,5−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌラート、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(γ−トリメトキシシリルプロピル)アミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノ官能性トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、β−シアノエチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、n−エチル−3−トリメトキシシリル−2−メチルプロパンアミン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
界面活性剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エトキシ化されたヒマシ油、オレイン酸エトキシラート、アルキルフェノールエトキシラート、エチオレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、そしてシリコーンとポリエーテルとのコポリマー、シリコーンと、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーとのコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される非イオン性界面活性剤である、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
非イオン性界面活性剤が、エチオレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、シリコーンとポリエーテルとのコポリマー、シリコーンと、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーとのコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される非イオン性界面活性剤である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
無機−有機ナノ複合体以外の充填剤が、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、コロイド状の炭酸カルシウム、ステアリン酸エステル又はステアリン酸の化合物で処理した炭酸カルシウム、フュームドシリカ、沈降シリカ、シリカゲル、疎水化されたシリカ、親水性シリカゲル、粉砕した石英、粉末にした石英、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化チタン、粘土、カオリン(kaolin)、ベントナイト、モンモリロナイト、珪藻土、酸化鉄、カーボンブラック、そしてグラファイト、雲母、滑石、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
シラノール末端ジオルガノポリシロキサン(a)が、下記の一般式を有し:
D’
式中、“a”は2であり、“b”は1であるか又は1より大きく、そして“c”はゼロ又は正数であり;Mは、
(HO)3−x−ySiO1/2
であり、式中、“x”は0、1又は2であり、“y”は、x+yが2未満であるか又は2であるという条件で0又は1のいずれかであり、R及びRは、個々独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;Dは、
SiO1/2
であり、式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;D’は
SiO2/2
であり、式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数60以下の一価の炭化水素基であり;
架橋基(b)が、下記の式を有するアルキルシリケートであり:
(R14O)(R15O)(R16O)(R17O)Si
式中、R14、R15、R16及びR17は、炭素数60以下の一価の炭化水素基から独立して選ばれ;
触媒(c)がスズ触媒であり;そして
無機−有機ナノ複合体(d)の無機ナノ微粒子部分が、モンモリロナイト、ナトリウムモンモリロナイト、カルシウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデルライト、ボルコンスコイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポーナイト、ソーコナイト、マガダイト、ケニアイト、ソボクカイト、スビンドルダイト、スチーブンサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、アルミナートオキシド、ハイドロタルサイト、イライト、レクトライト、タロソバイト、レディカイト、カオリナイト、及び、これらの混合物からなる群から選択され、無機−有機ナノ複合体(d)の有機部分が、少なくとも一つの第四級アンモニウム化合物Rであり、式中、R、R及びRの少なくとも一つは、炭素数60以下のアルコキシシランであり、残りの基が、炭素数60以下のアルキル基又はアルケニル基であり、そしてXは陰イオンである、請求項1に記載の硬化型組成物。
【請求項18】
硬化された、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
硬化された、請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
硬化された、請求項12に記載の組成物。
【請求項21】
硬化された、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
約900barrer以下のアルゴン透過係数を示す請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
約900barrer以下のアルゴン透過係数を示す請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
約900barrer以下のアルゴン透過係数を示す請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
約900barrer以下のアルゴン透過係数を示す請求項21に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−523892(P2009−523892A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551360(P2008−551360)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/001237
【国際公開番号】WO2008/051261
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508229301)モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド (120)
【Fターム(参考)】