説明

無機バリアコーティングを有する医療用デバイス

無機材料を含んでなるバリア層を有する医療用デバイス。該医療用デバイスは、治療薬を含有しているリザーバを有し、バリア層は該リザーバを覆って配置される。1つの態様では、バリア層は、医療用デバイスのある部分では治療薬に対してある浸透性を有し、医療用デバイスの別の部分では異なる浸透性を有する。別の態様では、医療用デバイスのある部分のリザーバ中の治療薬の用量は、医療用デバイスの別の部分のリザーバ中の治療薬の用量とは異なっている。別の態様では、医療用デバイスの1つ以上の部分のバリア層を覆って生体吸収層が配置され、該生体吸収層は生体吸収性材料を含んでなる。さらに、医療用デバイスをコーティングする方法が開示され、該方法において、医療用デバイスを覆うバリア層は、複数の粒子がエッチングマスクとしての役割を果たすリソグラフィエッチング処理を使用して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用デバイスに関し、特に、治療薬を含有しているコーティングを有する医療用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの移植式医療用デバイスは、移植時に該医療用デバイスから溶出される薬物でコーティングされている。例えば、血管内ステントには、血管の治療のため、またはステント移植の何らかの望ましくない影響および合併症(例えば血管の再狭窄)を防止するため、のうち少なくともいずれか一方のためにステントから溶出される薬物でコーティングされているものがある。そのような薬物溶出型の医療用デバイスでは、薬物溶出の仕組みを提供するために様々な方法が提案されてきた。しかしながら、医療用デバイスからの薬物溶出を提供するための改良されたデバイスおよび方法が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様では、本発明は、治療薬を含有しているリザーバを有する医療用デバイスを提供する。ある実施形態では、無機材料を含んでなりかつ複数の不連続部を有しているバリア層がリザーバを覆って配置されており;医療用デバイスの第1の部分における治療薬に対するバリア層の浸透性は、医療用デバイスの第2の部分におけるバリア層の浸透性よりも大きい。ある実施形態では、医療用デバイスの第1の部分においてリザーバに含有される治療薬の用量は、医療用デバイスの第2の部分においてリザーバに含有される治療薬の用量より多く;無機材料を含んでなりかつ複数の不連続部を有しているバリア層がリザーバを覆って配置されている。ある実施形態では、無機材料を含んでなりかつ複数の不連続部を有しているバリア層がリザーバを覆って配置されており;生体吸収性(bioresorbable)材料を含んでなる生体吸収層が、医療用デバイスの1つ以上の部分においてバリア層を覆って配置されている。
【0005】
別の態様では、本発明は、医療用デバイスをコーティングする方法を提供する。ある実施形態では、該方法は:治療薬を含有しているリザーバを有する医療用デバイスを提供するステップと;該リザーバを覆ってバリア層を形成するステップとを含んでなり、バリア層を形成するステップは:(a)無機材料を含んでなる無機質層を、リザーバを覆って配置するステップと;(b)無機質層の上にコンタクトマスクを付与するステップと;(c)コンタクトマスクを使用して無機質層の一部をエッチングすることにより、無機質層に不連続部を作出するステップと;(d)コンタクトマスクを除去するステップと、を含んでなる。ある実施形態では、該方法は:治療薬を含有しているリザーバを有する医療用デバイスを提供するステップと;該リザーバを覆ってバリア層を形成するステップとを含んでなり、バリア層を形成するステップは:(a)ポリマー材料と、無機材料で構成された複数の粒子とを含んでなる複合層を、リザーバを覆って配置するステップと;(b)複数の粒子をマスクとして使用して複合層中のポリマー材料の一部をエッチングすることにより、複合層に不連続部を作成するステップとを含んでなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】本発明の実施形態によるステントを示す側面図。
【図1B】図1Aのステントの中間部分にあるストラットを示す詳細な断面斜視図。
【図1C】図1Aのステントの端部分にあるストラットを示す詳細な断面斜視図。
【図2】別の実施形態による分岐型ステントの側面図。
【図3A】さらに別の実施形態によるステントのストラット部分を示す図であって、ステントの中間部分に位置するストラットを示す断面斜視図。
【図3B】図3Aのステントの端部分に位置するストラットを示す断面斜視図。
【図4A】さらに別の実施形態によるステントのストラット部分を示す図であって、ステントの端部分に位置するストラットを示す断面斜視図。
【図4B】図4Aのステントの中間部分に位置するストラットを示す断面斜視図。
【図5A】さらに別の実施形態によるステントのコーティング方法を示す図であって、複数のコロイド粒子が塗布されたステントのストラット部分を示す断面斜視図。
【図5B】図5Aに示されたステント・ストラットの断側面図。
【図5C】リソグラフィエッチング処理を経た後の図5Bのステント・ストラットを示す図。
【図5D】コロイド粒子を除去した後の図5Cのステント・ストラットを示す図。
【図6A】さらに別の実施形態によるステントのコーティング方法を示す図であって、レーザ照射前のステントのストラット部分を示す断側面図。
【図6B】レーザ照射後の図6Aのストラット部分を示す図。
【図6C】マスク層の堆積後のストラット部分を示す図。
【図6D】柱状物および粒子の除去後のストラット部分を示す図。
【図6E】無機質層の化学エッチング後のストラット部分を示す図。
【図6F】マスク層の除去後のストラット部分を示す図。
【図7】さらに別の実施形態によるステントのコーティング方法を実行するための複合層の堆積に使用することができる装置の略図。
【図8A】さらに別の実施形態によるステントのコーティング方法を示す図であって、リソグラフィエッチング処理を経る前のステントのストラット部分を示す断側面図。
【図8B】エッチング処理後の図8Aのステント・ストラットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1つの態様では、本発明は、治療薬を含有しているリザーバを有する医療用デバイスを提供する。治療薬を含有しているリザーバは、様々な方法のうち任意の方法で提供可能である。リザーバは治療薬調合物単独であってもよいし、治療薬を保持または収納する任意の構造物を含んでなることもできる。例えば、リザーバは、治療薬が内部に配された、医療用デバイスを覆うポリマー層または他の種類の層であってもよい。別の例において、リザーバは医療用デバイスの表層中に作出されてもよいし(例えば多孔性表層)、医療用デバイスが、治療薬を含有するピット、細孔、キャビティ、または穴部を有していてもよい。
【0008】
リザーバを覆って配置されるのは無機材料を含んでなるバリア層である。バリア層の厚さは具体的な用途に応じて異なる。例えば、血管内ステントについては、バリア層の平均厚さは5nm〜1000nmの範囲であってよいが、他の厚さも可能である。無機材料は具体的な用途に応じて様々な考慮事項に基づいて選択可能である。例えば、無機材料は、その生物学的特性、構造上の特性、化学的性質、取扱特性、または使用可能な堆積技法に関して選択されうる。バリア層で使用される適切な無機材料には、無機元素、例えばクロム、金、ハフニウム、イリジウム、ニオブ、パラジウム、白金、タンタル、チタン、タングステン、ジルコニウムのような純金属、およびこれらの金属の合金(例えばニチノール);ならびに無機化合物、例えば金属酸化物(例えばイリジウム酸化物またはチタン酸化物)、金属窒化物、および金属炭化物、さらには無機ケイ化物が挙げられる。
【0009】
バリア層は複数の不連続部を有している。用語「不連続部」は、本明細書中で使用されるように、治療薬がリザーバからバリア層を通って通過するのを可能にする、バリア層の厚さを完全に通り抜ける細孔、穴部、開口部、クラック、ギャップ、通路またはその他の欠損部を指す。これらの不連続部は、エネルギービーム(例えばレーザ、イオンまたは電子)を使用する直接描画エッチング、微細機械加工、微細掘削加工、またはリソグラフィエッチング処理を含む様々な技法のうち任意の方法を用いて作出可能である。不連続部を作出するために使用することができるリソグラフィエッチング処理には、本明細書中に記載されたエッチング処理のような複数の粒子から形成されたエッチングマスクを使用するものが挙げられる。
【0010】
不連続部の大きさ、形状および寸法は具体的な用途に応じて変化することになる。例えば、不連続部が細孔である場合、細孔の平均直径は5〜1000nmの範囲であってもよいし;またある場合には5〜500nmの範囲であってもよいし;またある場合には5〜50nmの範囲であってもよい。これらの範囲の大きさの細孔は、病変血管の治療において治療薬に所望の放出特性を提供するのに有用となり得る。
【0011】
ある実施形態では、バリア層は、医療用デバイスのある部分においては治療薬に対してある浸透性を有し、かつ別の部分においては異なる浸透性を有する。この特徴は、医療用デバイスの異なる部分において異なる治療薬放出特性を提供するのに有用となり得る。異なる浸透性は、医療用デバイスの異なる部分における不連続部の特徴を変化させることにより提供されてもよい。例えば、医療用デバイスのある部分における不連続部の平均的な大きさは、医療用デバイスの別の部分の平均的な大きさより大きくてもよい。
【0012】
別例において、図1A〜1Cに示される実施形態を参照すると、血管内ステント10は、基端側部分18、先端側部分16、および中間部分14を有する。図1Bに示されるステント・ストラット15はステント10の中間部分14に位置し、ステント・ストラット19(図1Cに示されている)はステント10の基端側部分18または先端側部分16に位置している。ステント10はポリマー材料から形成されたポリマー層26でコーティングされており、ポリマー層26は治療薬を含有している。ポリマー層26は無機材料を含んでなるバリア層22でコーティングされている。バリア層22は、治療薬がポリマー層26からバリア層22を通って通過するのを可能にする複数の細孔20を有する。異なる治療薬放出特性を提供するために、ステント・ストラット19を覆うバリア層22は、ステント・ストラット15を覆うバリア層22よりも細孔20の密度が高い。
【0013】
操作時には、ステント10はカテーテルを介して血管内に挿入される。ステント10の端部分16,18の細孔の密度が高いことにより、ステント10の中間部分14と比較してより高い治療薬放出速度が提供される。ステントの端部分において治療薬がより高用量であることは、ステントの末端縁で生じる可能性のある再狭窄(すなわち「エッジ効果」)のリスクを低減するのに有用となり得る。
【0014】
別の例において、図2に示される実施形態を参照すると、分岐型ステント30は2つの部分すなわち:主要血管の中に配置するための本体34と、該主要血管の側枝の中に配置するための側枝部分32とを有する。分岐型ステント30は、治療薬を含有しているポリマー層でコーティングされ、該ポリマー層は複数の細孔を有するバリア層によって覆われている。側枝部分32のバリア層は、分岐型ステント30の本体34のバリア層より高密度の細孔を有している。
【0015】
操作時は、分岐型ステント30はカテーテルを介して血管内の分岐点に挿入される。側枝部分32の細孔の密度が高いことにより、分岐型ステント30の本体34と比較してより高い治療薬放出速度が提供される。分岐型ステントの側枝部分において治療薬がより高用量であることは、分岐病変部の主要血管の側枝における再狭窄のリスクを低減するのに有用となり得る。
【0016】
ある実施形態では、医療用デバイスのある部分におけるリザーバ内の治療薬の用量は、医療用デバイスの別の部分におけるリザーバ内の治療薬の用量とは異なっている。本明細書中で使用されるように、「用量」とは、医療用デバイスの特定の部分を覆って配置されたリザーバに含有されている、医療用デバイスの単位表面積あたりの治療薬の量を指す。リザーバ内の治療薬の用量を異なるようにするには、様々な方法のうち任意の方法を用いることができる。例えば、リザーバは、医療用デバイスのある部分において、医療用デバイスの別の部分のリザーバよりも高濃度の治療薬を含有することができる。
【0017】
別の例において、図3Aおよび3Bに示される実施形態を参照すると、ステント(ステント10に類似したステントなど)は中間部分および端部分(先端側および基端側)を有している。図3Aに示されるステント・ストラット102は、ステントの中間部分に位置し、図3Bに示されるステント・ストラット104は端部分に位置する。該ステントは治療薬を含有しているポリマー層106でコーティングされている。ステント・ストラット104(端部分)を覆うポリマー層106は、ステント・ストラット102(中間部分)を覆うポリマー層106よりも厚く、ステントの端部分がステントの中間部分より高用量の治療薬を有するようになっている。ポリマー層106は無機材料で形成されたバリア層108でコーティングされている。バリア層108は、ポリマー層106に含まれた治療薬がバリア層108を通って通過するのを可能にする複数の細孔100を有している。このステントは、上述のような、ステント10の操作に類似の方式で操作可能である。代替実施形態では、医療用デバイスは、治療薬を含有しているポリマー層でコーティングされた分岐型ステント(分岐型ステント30に類似のものなど)であって、該ポリマー層は分岐型ステントの本体よりも側枝部分においてより厚い、分岐型ステントであってよい。複数の細孔を有するバリア層は、ポリマー層を覆って配置される。
【0018】
ある実施形態では、医療用デバイスの1または複数の部分においてバリア層を覆って、生体吸収性材料を含んでなる生体吸収層が配置される。本明細書中で使用されるように、用語「生体吸収(性)」は、生分解性および生体吸収性の両方を含むように意図される。様々な種類の生体吸収性材料を使用して、後述されるもののような生分解性ポリマーを含む生体吸収層を形成することができる。生体吸収層は、ポリマー層からの治療薬の放出をさらに制御するために使用されてもよいし、治療薬の追加のリザーバを提供するために使用されてもよい。
【0019】
例えば、図4Aおよび4Bに示される実施形態を参照すると、ステント(ステント10に類似したステントなど)は、ステントの中間部分に位置するステント・ストラット112(図4A)と、ステントの端部分に位置するステント・ストラット114(図4B)とを有している。ステントは治療薬を含有しているポリマー層116でコーティングされている。ポリマー層116は無機材料で形成されたバリア層118でコーティングされている。バリア層118は、ポリマー層116に含まれた治療薬がバリア層118を通って通過するのを可能にする複数の細孔122を有している。ステント・ストラット114(端部分)を覆うバリア層118は、生分解性ポリマーで形成された生体吸収層120でさらにコーティングされている。
【0020】
操作時には、ステントはカテーテルを介して血管内へ挿入される。ステントの端部分には生体吸収層120が存在するため、端部分からの治療薬の放出は、当初は生体吸収層120が分解し始めるまで遅延する。治療薬のこの遅延放出性は、治療薬の有効性を増強する時間枠における治療を提供するのに有用となりうる。遅延期間は、生体吸収層120の分解速度を変えることにより(例えばその厚さまたは組成を変えることにより)調節可能である。ある場合には、生体吸収層120は、治療薬の放出が、ステント治療の後に動脈の内皮層が再建される時間範囲である5日間〜5週間の範囲の期間遅延するような速度で分解するように、設計可能である。
【0021】
代替実施形態では、生体吸収層120は治療薬を含有してもよく、該治療薬はポリマー層116に含有された治療薬と同じであってもよいし、異なっていてもよい。この特徴は、ステントの端部分において治療薬の追加放出(例えばバースト放出)を提供することにより、ある種の治療用途において有用となりうる。別の代替実施形態では、医療用デバイスは、治療薬を含有しているポリマー層と、該ポリマー層を覆うバリア層とでコーティングされた分岐型ステント(分岐型ステント30に類似の分岐型ステントなど)であってよい。生体吸収層は、分岐型ステントの本体または側枝部分においてバリア層を覆うことができる。
【0022】
別の態様では、本発明は、医療用デバイスをコーティングする方法を提供する。該方法は、治療薬を含有しているリザーバを有する医療用デバイスを提供するステップを含んでなる。リザーバの組成および構造は上述のとおりである。さらに、該方法は、リザーバを覆ってバリア層を形成するステップであって、バリア層に不連続部を作出するためのコンタクトマスクを用いたリソグラフィエッチング処理を使用するステップを含んでなる。コンタクトマスクは複数の粒子を含んでなるものでもよいし、複数の粒子の使用により作出されてもよく、該粒子は、下記に記載されるような適切なエッチング条件下での分解に対して少なくとも部分的に耐性である。粒子は、適切なエッチング条件下での分解に対して少なくとも部分的に耐性を有する様々な材料、例えば金属、セラミックまたはポリマーのいずれかを含んでなることができる。粒子の形成に使用される材料は、エッチング処理の下での分解に対する耐性に加えて、様々な他の考慮事項、例えば帯電性、取扱適性、または溶媒中での分散能に基づいて選択することも可能である。
【0023】
ある実施形態では、不連続部を有するバリア層を作出するために使用されるリソグラフィエッチング処理は、無機材料を含んでなる無機質層を、リザーバを覆って配置することを伴う。該無機質層は、化学蒸着法、プラズマ蒸気蒸着、スパッタリング、パルスレーザ堆積法、ゾル‐ゲル法、蒸着(熱、電子ビームなど)、分子線エピタキシー、溶液法(例えばスプレイコーティング、浸漬コーティング、ロールコーティングなど)、または電着(例えば電気めっき、エレクトロスプレイなど)を含む様々な層堆積法のうち任意のものを使用して無機材料を堆積させることにより付与可能である。
【0024】
その後、複数の粒子が無機質層の上に付与されるが、この複数の粒子は該粒子の間の空間によって形成されている開孔部を備えたコンタクトマスクを構成する。コンタクトマスク中の開孔部はエッチング処理において無機質層の一部を露出させて、無機質層に不連続部がエッチングされるようにする。コンタクトマスクの構造、およびそれに応じて無機質層に形成される不連続部は、粒子の特徴に依存することになる。この粒子の特徴には、粒子の大きさ、形状、および寸法が挙げられるが、具体的な用途に応じて変わる。例えば、粒子の平均直径は、20〜1000nmの範囲であってよく;場合によっては50〜250nmの範囲であってよい。上記範囲の大きさの粒子は、病変血管の治療に適した治療薬放出特性を提供する大きさを有する不連続部を作出するのに有用となりうる。
【0025】
コンタクトマスクの構造は、粒子のサイズ分布、形状または寸法のうち少なくともいずれか、ならびに粒子の数、間隔および充填密度によっても変化し、これは具体的な用途に応じて変化する。例えば、粒子は粒径に関して単分散であってもよいし、多分散であってもよい。単分散粒子は、多分散粒子を使用して形成された不連続部よりも均一な特徴を有する不連続部を形成するために使用可能である。
【0026】
粒子は、規則的に配置されてもよいし、半規則的に配置されてもよいし、または不規則に配置されてもよい。ある場合には、粒子の配置構成は、粒子が堆積される無機質層の表面の特徴に依存する。例えば、粒子は、テクスチャを有する表面上に、該粒子が表面テクスチャのパターンに従うように堆積されてもよい。粒子は、回転楕円体形状または不規則形状などの様々な形状のうち任意の形状を有することができる。
【0027】
粒子は、乾燥堆積法および溶液処理技法などの様々な方法のうち任意の方法で無機質層上に堆積可能である。例えば、粒子は、(例えば液体中に懸濁されたコロイド粒子として)溶液中に分散されて、スプレイコーティング技法または浸漬コーティング技法により堆積されてもよい。別例において、乾燥した粒子がエレクトロスプレイまたはロールコーティングによって堆積されてもよい。場合によっては、粒子は、無機質層の上に粒子の単層が形成されるような方式で堆積されてもよい。例えば、誘電材料で作られた粒子を帯電させることにより単層が形成されてもよい。粒子は、無機質層上に置かれた後も静電荷の一部を保持することが可能であり、相互の反発力によって、後から来る粒子が、先に堆積された粒子について低密度であるエリアに優先的に行き着くようにすることができる。様々な他の技法、例えば噴霧されるエアロゾル小滴中に2以上の粒子がある可能性が極めて低いように十分に希釈されたコロイド粒子の懸濁液を使用すること、またはあらゆる凝集粒子を分散させるように基材を振動させることを使用して、粒子の単層を作出することもできる。
【0028】
コンタクトマスクを付与した後、リフォグラフィエッチング処理を用いて、コンタクトマスクの開孔部によって露出された無機質層の一部がエッチングで取り除かれる。半導体製作で通常使用されるものを含む様々なエッチング処理のうち任意のもの、例えばエネルギービーム(例えばイオンビーム、電子ビーム、レーザ、UV、X線)への曝露または反応性分子種(例えばプラズマ、反応性イオン、およびウェットケミカル)への曝露によるエッチングが使用可能である。使用される処理の種類および作業条件は、様々な考慮事項、例えば堆積される粒子の種類(例えばエネルギービーム下での分解またはスパッタリングに対する脆弱性)、無機質層の厚さおよび組成、または不連続部の所望の側壁特性(例えば、異方性もしくは等方性)に応じて変わる。
【0029】
エッチング処理は、無機質層に所望の不連続部が形成されるまで継続させることが可能である。エッチング処理が完了した後、粒子は、ブラッシング、窒素ガスを用いる吹き払い、または溶媒洗浄のような様々な技法のうち任意の方法を使用して除去される。ある場合には、粒子は、該粒子が分解を起こしやすい別のエッチング処理によって除去されてもよい。磁性粒子が使用される場合には、該粒子は磁気的な誘引により除去されてもよい。
【0030】
例えば、図5A〜5Dに示される実施形態を参照すると、ステントのストラット部分54は治療薬を含有しているポリマー層52でコーティングされている。ポリマー層52は、ポリマー層52の上に無機材料を堆積させることにより形成された無機質層50でコーティングされている。図5Aを参照すると、コンタクトマスクは、ストラット部分54をコロイド粒子40の液体懸濁物に浸漬することにより無機質層50の上に複数の単分散コロイド金粒子40を堆積させることで形成される。コロイド金粒子40は静電気によって無機質層50に付着し、自己集合して無機質層50の上の単層となる。図5Bを参照すると、コロイド粒子40の間の空間がコンタクトマスクの開孔部42を形成している。
【0031】
図5Cを参照すると、通常の反応性イオンエッチング装置を使用して、無機質層50がRF生成プラズマからの反応性イオンのビーム47に曝露される。反応性イオンに対して少なくとも部分的に耐エッチング性であるコロイド粒子40は、反応性イオンを遮断し、したがって下にある無機質層50の部分を保護する役割を果たす。コンタクトマスクの開孔部42を通り抜ける反応性イオンは、開孔部42の真下の無機質層50の部分をエッチングで取り除き、無機質層50に細孔46を形成する。エッチング処理が完了した後、図5Dに示されるように、コロイド粒子40は溶媒洗浄によって除去され、ポリマー層52に含まれた治療薬の通過を可能にする複数の細孔46を有するバリア層56が残る。
【0032】
場合によっては、コンタクトマスクの構造(その構成粒子の特徴および配置構成を含む)は、医療用デバイスの異なる部分において異なる大きさまたは特徴の不連続部が作出されるように、医療用デバイスの異なる部分について相違していてもよい。例えば、医療用デバイスのある部分を覆って配置される粒子は、医療用デバイスの別の部分を覆う粒子より大きくてもよい。コロイド粒子の液体懸濁物を使用してコンタクトマスクが付与される場合、異なる組成を有するコロイド懸濁液が使用されて医療用デバイスの異なる部分に異なる構造を有するコンタクトマスクが付与されてもよい。例えば、医療用デバイスのある部分(例えばステントの端部分)が、ある濃度かつ/またはサイズ分布のコロイド粒子を有する懸濁液に浸漬され、医療用デバイスの別の部分(例えばステントの中間部分)が、別の濃度かつ/またはサイズ分布のコロイド粒子を有する懸濁液に浸漬されてもよい。
【0033】
ある実施形態では、粒子は、それ自体がコンタクトマスクとしての役割を果たす代わりに、バリア層のコンタクトマスクを作出するために使用される。上記実施形態のように、コンタクトマスクの構造は医療用デバイスの異なる部分に関して様々であってよい。例えば、図6A〜6Fに示される実施形態を参照すると、ステントのストラット部分134は治療薬を含有している第1のポリマー層132でコーティングされている。第1のポリマー層132は、第1のポリマー層132の上に無機材料を堆積させることにより形成された無機質層130でコーティングされている。図6Aを参照すると、第2のポリマー層136が無機質層130を覆って配置されており、第2のポリマー層136は、エキシマレーザによってエッチング可能なポリマー材料で形成されている。第2のポリマー層136を覆って堆積されるのは、磁鉄鉱粒を有する複数の金属コーティングポリスチレン粒子140(そのような粒子は市販されている)である。さらに、金のコーティング殻を備えたポリスチレン粒子がヤング(Yong)らの「Synthesis and plasmonic properties of silver and gold nanoshells on polystyrene cores of different size and of gold−silver core−shell nanostructures」、Colloids and Surfaces、第290巻、pp.89−105(2006)に記載されている。図6Bを参照すると、第2のポリマー層136は、レーザビーム147(例えば波長195nmのエキシマレーザ)に曝露され、該ビームは第2のポリマー層136をエッチングする。しかし、レーザビーム147はポリスチレン粒子140の金属コーティングで反射されるため、影効果により粒子140の真下に柱状物142が作出される。
【0034】
図6Cを参照すると、無機質層130を覆い、かつ柱状物142の間にマスク層138が堆積されており、マスク層138は後述の化学エッチング処理に耐性を有するポリマー材料で形成されている。図6Dを参照すると、柱状物142は溶媒への溶解によって除去され、かつ粒子140は磁気的な誘引によって除去されて、その結果マスク層138に開口部144が生じる。こうして、耐エッチング性であることから、ここでマスク層138は無機質層130のコンタクトマスクとしての役割を果たすことができる。従って、図6Eを参照すると、化学エッチング処理を使用して無機質層130に細孔146がエッチングされ、このときマスク層138はコンタクトマスクとしての役割を果たす。図6Fを参照すると、エッチング処理が完了した後、マスク層138の除去により、第1のポリマー層132に含まれた治療薬の通過を可能にする細孔146を備えた無機質層130(この時点では多孔性バリア層)が残る。
【0035】
ある実施形態では、不連続部を有するバリア層を作出するために使用されるリソグラフィエッチング処理は、リザーバを覆って複合層を配置することを伴う。複合層はポリマー材料および上述の複数の粒子を含んでなる。複合層内の粒子は、複合層に不連続部を作出するためのエッチング処理におけるエッチングマスクとしての役割を果たす。したがって、複合層に作出される不連続部は、複合層内の粒子の特有の特徴、例えば該粒子の組成、大きさ、サイズ分布、形状、寸法、数、充填密度(すなわち複合層の単位体積当たりの粒子の数)、および粒子体積比率(すなわち複合層の単位体積当たりの粒子の総体積)によって変化する。
【0036】
例えば、場合によっては、複合層の粒子体積比率は10〜70パーセントの範囲にあってもよい。この組成を有する複合層は、病変血管の治療に適した治療薬放出特性を提供するための大きさを有する不連続部を作出するのに有用となりうる。場合によっては、個々の粒子はサブ粒子の集合体であってもよい。下記に記載されるものを含む、様々なポリマーのうち任意のものを含んでなるポリマー材料は、該方法で使用される特定のエッチング処理によってエッチング可能であるように意図される。
【0037】
複合層は、様々な層堆積法のうち任意のものを使用して付与されうる。例えば、複合層を形成するのに適切となりうる層堆積法には:化学蒸着法、プラズマ蒸気蒸着、スパッタリング、パルスレーザ堆積法、ゾル‐ゲル法、蒸着(熱、電子ビームなど)、分子線エピタキシー、溶液法(例えばスプレイコーティング、浸漬コーティング、ロールコーティングなど)、または電着(例えば電気めっき、エレクトロスプレイなど)が挙げられる。ロダー(Roder)ら、「Tuning the microstructure of pulsed laser deposited polymer−metal nanocomposites」、Applied Physics A、第85巻:15−20(2006)には、そのような1つの方法であって該方法により複合層を付与可能な、パルスレーザ堆積法を使用する方法について記載されている。
【0038】
その後、複合層はエッチング処理に曝露されて、複合層内のポリマー材料の一部がエッチングで取り除かれる。特定のエッチング条件に応じて、エッチング処理は等方性であってもよいし異方性であってもよい。垂直方向に配向された側壁を有する不連続部が望まれる場合は、異方性エッチング(例えば、面平行ビームを使用)が有用となりうる。等方性エッチング(例えば、ウェットケミカルエッチング技法を使用)は、様々な方向に広がるチャネルを介して相互に連結された細孔のネットワークを作出するのに有用となりうる。
【0039】
例えば、図7に示された実施形態を参照すると、治療薬を含有しているポリマー層を有するステント90は、ステントがターゲット材84に隣接して配置されるようにステントホルダ88に保持されている。ターゲット材84は、いずれもパルスレーザ堆積法に適しているポリマー材料(ステント90のポリマー層中で使用されるポリマー材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい)と金属材料との混合物である。高出力レーザ80からのパルスレーザビーム82がターゲット材84の上に集中されて、ステント90の上に堆積される気化材料のプルーム86が作出される。所望の特徴を有する複合層を得るために、パルスレーザ堆積法の様々な条件、例えばターゲット材の組成およびレーザの出力またはパルス周波数を調節可能である。
【0040】
図8Aおよび8Bに示されるように、ステント90のストラット74は治療薬を含有しているポリマー層72でコーティングされている。ポリマー層72の上にパルスレーザ堆積法を使用してターゲット材84を堆積させることによって、複合層70が作出される。複合層70は、ポリマー材料62と、堆積された金属材料の核形成および成長によって生ずる金属粒子60とを含んでなる。次に、複合層70は、粒子60によって保護されていないポリマー材料62の部分をエッチングで取り除く従来の反応性イオンエッチング処理に供される。ポリマー材料62のこのエッチングにより、複合層70に細孔64が作出される。
【0041】
場合によっては、エッチング処理によって医療用デバイスの異なる部分で様々な特徴を有する不連続部が作出されるように、複合層は医療用デバイスの異なる部分で異なる組成を有していてもよい。異なる組成の複合層は、医療用デバイスの異なる部分で堆積条件を変えることにより作出可能である。例えば、パルスレーザ堆積法を使用する場合、医療用デバイスの異なる部分が、異なるターゲット材(例えば、ポリマー材料と金属材料との比が異なるもの)から作出されたプルームを受けるようにされればよい。したがって、例えば、図7を参照すると、代替実施形態において、ステント90の中央部分92の上へのターゲット材84のパルスレーザ堆積の後、ステント90の端部分94,96の上へのパルスレーザ堆積に金属材料比率のより低い別のターゲット材が使用される。これにより、ステントの端部分94,96において金属粒子が低密度である複合層が作出され、その結果エッチング後の複合層中により大きな細孔を生成させることが可能となる。
【0042】
本発明と共に使用することができる医療用デバイスの非限定的な例には、ステント、ステントグラフト、カテーテル、ガイドワイヤ、神経血管用の動脈瘤コイル、バルーン、フィルタ(例えば大静脈フィルタ)、代用血管、管腔内ペイビングシステム(intraluminal paving system)、ペースメーカー、電極、リード線、細動除去器、関節および骨インプラント、脊椎インプラント、アクセスポート、大動脈内バルーンポンプ、心臓弁、縫合材、人工心臓、神経学的な刺激装置、移植蝸牛刺激装置、網膜インプラント、および治療用コーティングに関連して使用することができる他のデバイスが挙げられる。そのような医療用デバイスは、身体の構造、キャビティまたは管腔、例えば血管系、胃腸管、腹部、腹膜、気道、食道、気管、結腸、直腸、胆管、尿路、前立腺、脳、脊椎、肺、肝臓、心臓、骨格筋、腎臓、膀胱、腸、胃、膵臓、卵巣、子宮、軟骨、目、硬骨、関節およびその他同種のものにおいて移植されるかまたは他の方法で使用される。
【0043】
本発明で使用される治療薬は、任意の薬学的に許容可能な作用物質(薬物など)、生体分子、小分子、または細胞であってよい。典型的な生体分子には、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質;抗体;オリゴヌクレオチド;核酸、例えば二本鎖DNAもしくは一本鎖DNA(裸のDNAおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸、例えばアンチセンスDNAおよびアンチセンスRNA、小型干渉RNA(siRNA)、ならびにリボザイム;遺伝子;炭水化物;成長因子を含む血管由来の因子;細胞周期阻害剤;ならびに再狭窄抑制剤、が挙げられる。典型的な小分子には、ホルモン、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、および脂質が含まれ、化合物は100kD未満の分子量を有する。典型的な細胞には、幹細胞、始原細胞、血管内皮細胞、成体の心筋細胞、および平滑筋細胞が挙げられる。
【0044】
不定冠詞「1つの(aまたはan)」による要素への言及は、2つ以上の該要素が存在する可能性を排除しない。むしろ、冠詞「1つの(aまたはan)」は、その文がそうでないことを明示していないかぎり、1またはそれ以上(または少なくとも1つ)を意味するように意図される。用語「第1の」、「第2の」などは、要素を指す場合、該要素の位置または順序付けを意味するようには意図されない。むしろ、該用語は、議論をしやすくし、かつ要素を互いに区別するための標識として使用される。
【0045】
前述の記載および例示は、単に本発明を例証するために述べられており、限定するようには意図されない。開示された本発明の態様および実施形態はそれぞれ、個々に考慮されてもよいし、本発明の他の態様、実施形態および変形形態と併せて考慮されてもよい。当業者には、本発明の思想および本質が組み込まれた開示の実施形態の改変形態が思い浮かぶ可能性があるが、そのような改変形態は本発明の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用デバイスであって、
治療薬を含有しているリザーバと、
リザーバを覆って配置されるバリア層であって、無機材料を含んでなりかつ複数の不連続部を有しているバリア層と
を含んでなり、
バリア層は治療薬に対する浸透性を有することと、医療用デバイスの第1の部分における治療薬に対するバリア層の浸透性は、医療用デバイスの第2の部分におけるバリア層の浸透性よりも大きいこととを特徴とする、医療用デバイス。
【請求項2】
第1の部分におけるバリア層の不連続部の密度は、第2の部分における密度よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
第1の部分におけるバリア層の不連続部の平均的な大きさは、第2の部分における平均的な大きさよりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
医療用デバイスは血管内ステントであることと、第1の部分は該ステントの端部分を含んでなり、第2の部分は該ステントの中間部分を含んでなることとを特徴とする、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
医療用デバイスは、本体および側枝部分を有する分岐型血管内ステントであることと、第1の部分は該ステントの側枝部分を含んでなることと、第2の部分は本体を含んでなることとを特徴とする、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
リザーバは、ポリマー材料と治療薬とを含んでなるポリマー層である、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
バリア層の不連続部は、マスクとしての役割を果たす複数の粒子を使用してリソグラフィエッチング処理によって形成される、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
不連続部は、平均直径が5nm〜500nmの範囲にある細孔である、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項9】
第1の部分のバリア層を覆って配置された生体吸収性材料を含んでなる生体吸収層をさらに含んでなる、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
無機材料は金属材料である、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項11】
医療用デバイスであって、
治療薬を含有しているリザーバであって、医療用デバイスの第1の部分においてリザーバに含有される治療薬の用量は、医療用デバイスの第2の部分においてリザーバに含有される治療薬の用量より多いことを特徴とするリザーバと、
リザーバを覆って配置されたバリア層であって、無機材料を含んでなりかつ複数の不連続部を有しているバリア層と
を含んでなる医療用デバイス。
【請求項12】
医療用デバイスの第1の部分におけるリザーバ内の治療薬の濃度は、第2の部分におけるリザーバ内の治療薬の濃度よりも高いことを特徴とする、請求項11に記載の医療用デバイス。
【請求項13】
リザーバはポリマー材料と治療薬とを含んでなるポリマー層であることと、ポリマー層の厚さは、医療用デバイスの第1の部分において第2の部分におけるよりも厚いこととを特徴とする、請求項11に記載の医療用デバイス。
【請求項14】
医療用デバイスは血管内ステントであることと、第1の部分は該ステントの端部分を含んでなり、第2の部分は該ステントの中間部分を含んでなることとを特徴とする、請求項11に記載の医療用デバイス。
【請求項15】
医療用デバイスは、本体および側枝部分を有する分岐型血管内ステントであることと、第1の部分は側枝部分を含んでなり、第2の部分は本体を含んでなることとを特徴とする、請求項11に記載の医療用デバイス。
【請求項16】
無機材料は金属材料である、請求項11に記載の医療用デバイス。
【請求項17】
医療用デバイスであって、
第1の治療薬を含有しているリザーバと、
リザーバを覆って配置されるバリア層であって、無機材料を含んでなりかつ複数の不連続部を有しているバリア層と、
医療用デバイスの1つ以上の部分においてバリア層を覆って配置された、生体吸収性材料を含んでなる生体吸収層と
を含んでなる、医療用デバイス。
【請求項18】
生体吸収性材料は生分解性ポリマーである、請求項17に記載の医療用デバイス。
【請求項19】
生体吸収層は、生体吸収層の下にあるリザーバからの治療薬の放出を遅延させる、請求項17に記載の医療用デバイス。
【請求項20】
生体吸収層は第2の治療薬を含有している、請求項17に記載の医療用デバイス。
【請求項21】
第1の治療薬は第2の治療薬と同一である、請求項20に記載の医療用デバイス。
【請求項22】
医療用デバイスは血管内ステントであることと、生体吸収層はステントの端部分においてバリア層を覆って配置されることとを特徴とする、請求項17に記載の医療用デバイス。
【請求項23】
医療用デバイスは、本体および側枝部分を有する分岐型血管内ステントであることと、生体吸収層は該ステントの側枝部分においてバリア層を覆って配置されることとを特徴とする、請求項17に記載の医療用デバイス。
【請求項24】
無機材料は金属材料である、請求項17に記載の医療用デバイス。
【請求項25】
医療用デバイスをコーティングする方法であって、
治療薬を含有しているリザーバを有する医療用デバイスを提供するステップと;
該リザーバを覆ってバリア層を形成するステップと
を含んでなり、バリア層を形成するステップは:
(a)無機材料を含んでなる無機質層を、リザーバを覆って配置するステップと;
(b)無機質層の上にコンタクトマスクを付与するステップと;
(c)コンタクトマスクを使用して無機質層の一部をエッチングすることにより、無機質層に不連続部を作出するステップと;
(d)コンタクトマスクを除去するステップと
を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項26】
コンタクトマスクを付与するステップは、無機質層の上に複数の粒子を堆積させることを含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
粒子は無機質層上に単層を形成する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
粒子は静電気によって無機質層に付着する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
無機材料は金属材料である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
コンタクトマスクを除去するステップは、コンタクトマスクを溶媒に曝露することを含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
粒子はコロイド粒子である、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
コロイド粒子は、無機質層の上にコロイド粒子の液体懸濁物を付与することによって無機質層上に堆積される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
粒子はエレクトロスプレイ法を使用して堆積される、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
医療用デバイスの第1の部分におけるコンタクトマスクの構造は、医療用デバイスの第2の部分におけるコンタクトマスクの構造とは異なっている、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
コンタクトマスクを付与するステップは無機質層の上に複数の粒子を堆積させることを含んでなることと、医療用デバイスの第1の部分における粒子の充填密度は医療用デバイスの第2の部分における粒子の充填密度よりも高いこととを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
コンタクトマスクを付与するステップは無機質層の上に複数の粒子を堆積させることを含んでなることと、医療用デバイスの第1の部分における粒子の平均的な大きさは医療用デバイスの第2の部分における粒子の平均的な大きさよりも大きいこととを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
医療用デバイスは血管内ステントであることと、第1の部分は該ステントの中間部分を含んでなり、第2の部分は該ステントの端部分を含んでなることとを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
医療用デバイスは本体および側枝部分を有する分岐型ステントであることと、第1の部分は該ステントの本体を含んでなり、第2の部分は側枝部分を含んでなることとを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
リザーバはポリマー材料と治療薬とを含んでなるポリマー層である、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
コンタクトマスクを付与するステップは、
無機質層を覆ってエッチング可能なポリマー層を配置することと、
エッチング可能なポリマー層の上に複数の粒子を堆積させることと、
エッチング可能なポリマー層をエネルギービームに曝露することによってエッチング可能なポリマー層をエッチングして、粒子の下に柱状物を作出することと、
無機質層を覆ってマスク層を配置することと、
エッチング可能なポリマー層および粒子を除去して無機質層の上にコンタクトマスクを作出することと
を含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項41】
無機質層に不連続部を作出するステップは、コンタクトマスクを使用して無機質層の一部を化学的にエッチングすることを含んでなる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
粒子は金属材料を含んでなる、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
医療用デバイスをコーティングする方法であって、
治療薬を含有しているリザーバを有する医療用デバイスを提供するステップと;
該リザーバを覆ってバリア層を形成するステップと
を含んでなり、バリア層を形成するステップは:
(a)ポリマー材料と、無機材料で構成された複数の粒子とを含んでなる複合層を、リザーバを覆って配置するステップと;
(b)複数の粒子をマスクとして使用して複合層中のポリマー材料の一部をエッチングすることにより、複合層に不連続部を作成するステップと
を含んでなる、方法。
【請求項44】
エッチングは、複合層を反応性分子種に曝露することによって実施される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
エッチングは、複合層をエネルギービームに曝露することによって実施される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
リザーバを覆って複合層を配置するステップは、リザーバを覆って無機材料およびポリマー材料を堆積させるステップを含んでなる、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
堆積ステップは、無機材料とポリマー材料との混合物を含んでなるターゲット材を使用してパルスレーザ堆積法によって実施される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
医療用デバイスの第1の部分における複合層の組成は、医療用デバイスの第2の部分における複合層の組成とは異なっている、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
医療用デバイスの第1の部分における複合層の粒子体積比率は、医療用デバイスの第2の部分における複合層の粒子体積比率よりも大きい、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
リザーバを覆って複合層を配置するステップは、
医療用デバイスの第1の部分において第1の無機材料対ポリマー材料比を有する第1の混合物を堆積させることと、
医療用デバイスの第2の部分において第2の無機材料対ポリマー材料比を有する第2の混合物を堆積させることと
を含んでなり、第1の比は第2の比よりも大きいことを特徴とする、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
医療用デバイスは血管内ステントであることと、第1の部分は該ステントの端部分を含んでなり、第2の部分は該ステントの中間部分を含んでなることとを特徴とする、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
医療用デバイスは、本体および側枝部分を有する分岐型血管内ステントであることと、第1の部分は側枝部分を含んでなり、第2の部分は本体を含んでなることとを特徴とする、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
粒子は金属材料を含んでなる、請求項43に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2011−528939(P2011−528939A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520085(P2011−520085)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/050365
【国際公開番号】WO2010/011515
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】