説明

無機フィラーの油性スラリーの製造方法

【課題】無機フィラーを効率よく油に分散させることができる、無機フィラーの油性スラリーの製造方法の提供。
【解決手段】
(a) 無機フィラーの水性スラリーを不飽和脂肪酸石鹸で表面処理する工程、
(b) 工程(a)で表面処理した無機フィラーの水性スラリーを油に分散させる工程、
を含む、無機フィラーの油性スラリーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機フィラーが、マトリックスである油の中に分散してなる油性スラリーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの無機フィラーは、塗工用、塗料用、インキ用などに幅広く使用されている。これらの無機フィラーは通常、水性媒体や油性媒体中に分散させてスラリーとして使用される。
上記の無機フィラーを油性媒体に分散させた油性スラリーの製造は、一般に、乾式粉砕した無機フィラーを鉱物油または植物油と混合することにより行われる。しかしながら、上記の方法では多くの場合、無機フィラー乾粉の乾燥凝集物や分散不良が起こるため、攪拌・練り、凝集物の粉砕等の工程が必要となり、時間および労力のコストがかかる。特に、無機フィラーとして広く使用される炭酸カルシウムは一般に親水性であり、油に分散させることには困難を伴う。
分散性や各種機能性の付与を目的として、炭酸カルシウム等の無機フィラーを表面処理する方法が知られている(文献1)。しかしながら、無機フィラー乾粉の乾燥凝集物や分散不良を十分に抑制してさらに効率よく油性スラリーを製造する方法が求められているのが実情である。
【0003】
【特許文献1】特開2005−48034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、無機フィラーを効率よく油に分散させることができる、無機フィラーの油性スラリーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らは、水性媒体中に分散させた無機フィラーを不飽和脂肪酸石鹸によって表面処理した無機フィラーの水性スラリーが、油に効率よく分散することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、
(a) 無機フィラーの水性スラリーを不飽和脂肪酸石鹸で表面処理する工程、
(b) 工程(a)で表面処理した無機フィラーの水性スラリーを油に分散させる工程、
を含む、無機フィラーの油性スラリーの製造方法を提供する。
また、本発明は、上記製造方法により得られる無機フィラーの油性スラリーを提供する。
また、本発明は、無機フィラーの水性スラリーを不飽和脂肪酸石鹸で表面処理する工程を含む、油に分散させるための無機フィラーの水性スラリーの製造方法を提供する。
また、本発明は、上記製造方法により得られる無機フィラーの水性スラリーを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、無機フィラーを効率よく油に分散させ、容易に無機フィラーの油性スラリーを製造することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の無機フィラーの油性スラリーの製造方法では、工程(a)において無機フィラーの水性スラリーを不飽和脂肪酸石鹸で表面処理する。
本発明で対象とする無機フィラーとしては、重質炭酸カルシウム、軽質(沈降性)炭酸カルシウム、タルク、セリサイト、硫酸カルシウム、モンモリロナイト、ゼオライト、亜硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、カオリン、酸化チタンなどの各種無機物の一種又は二種以上の混合物があげられる。上記のうち、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの中性または塩基性の無機フィラーであることが好ましい。また、これらのうち、炭酸カルシウム、特に重質炭酸カルシウムが好ましい。本発明では、このような無機フィラーを、直ちに湿式粉砕することができるが、湿式粉砕に先立って、予め乾式粉砕しておくのがよい。この際、無機フィラーの粒径を40mm以下、好ましくは平均粒径を2mm〜2μm程度に粉砕しておくのがよい。
【0009】
具体的には、無機フィラー/水性媒体(好ましくは水)との質量比が70/30〜30/70、好ましくは60/40〜40/60の範囲となるように無機フィラーに水性媒体を加え、常法により湿式粉砕する。ここで、湿式粉砕をする前に、無機フィラーと水性媒体との混合物に必要により分散剤を加えてもよい。分散剤は、例えば固形分として、無機フィラー100質量部当り0.01〜5質量部、好ましくは0.01〜0.7質量部、より好ましくは0.01〜0.1質量部、特に好ましくは0.01〜0.5質量部、例えば0.025質量部添加してもよく、又は、上記範囲の量となる分散剤を予め溶解してなる水性媒体を無機フィラーと混合してもよい。上記のように分散剤を添加することにより湿式粉砕に必要な機械的な労力を低減することが可能となる。ただし、分散剤の添加は、水性スラリーおよび油性スラリー中における無機フィラーの最終的な凝集性には影響せず、本発明の方法によるスラリーの製造において必須ではない。湿式粉砕は、バッチ式でも連続式でもよく、サンドミル、アトライター、ボールミルなどの粉砕媒体を使用したミルなどが使用するのが好ましい。このように湿式粉砕することにより、平均粒径が2μm 以下、好ましくは平均粒径0.3〜1.5μm、より好ましくは0.6〜0.2μm、特に好ましくは1.0μmのものが得られる。
【0010】
本発明では、必要により、先ず、上記無機フィラーの表面に有機分散剤を施し、該有機分散剤の存在下に無機フィラーを湿式粉砕してもよい。ここで、分散剤としては、水溶性カチオン系界面活性剤(A)または水溶性ノニオン系界面活性剤(B)が好ましく、カチオン系界面活性剤(A)が特に好ましい。
有機分散剤として用いる水溶性カチオン系界面活性剤(A)としては、第1、2、3級アミン塩型カチオン系低分子および第4級アンモニウム塩型カチオン系低分子が挙げられる。第1〜3級アミン塩型低分子界面活性剤としては、例えば高級アルキルアミン塩、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物、ソロミンA型アミン塩、サパミンA型アミン塩、アーコベルA型アミン塩およびイミダゾリン型アミン塩等が挙げられる。第4級アンモニウム塩型低分子界面活性剤としては、例えば高級アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、サパミン型第4級アンモニウム塩、イミダゾリン型第4級アンモニウム塩およびアルキルビリジウム塩等が挙げられる。
【0011】
第1〜3級アミン塩型高分子界面活性剤としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアルキレンポリアミン塩、ポリアミン・ジシアンジアミド縮合塩、ポリジアリルアミン塩等が挙げられ、第4級アンモニウム塩型高分子界面活性剤としては、例えばポリスチレンメチルアミノトリメチルアンモニウム塩、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレートアンモニウム塩およびポリN−アルキルピリジン塩等が挙げられる。これらのカチオン系界面活性剤の内、湿式粉砕時に高濃度スラリーを得るためには、アミン塩型高分子界面活性剤または第4級アンモニウム塩型高分子界面活性剤が好ましいが、特に好ましいものとしてジアリルアミンの単独またはビニール化合物との共重合物の塩およびポリジアリルジメチルアンモニウム塩が挙げられる。このような高分子分散剤としては、特開平7−300568号公報に記載の水溶性カチオン性コポリマー分散剤が好ましい。特開平7−300568号公報における該水溶性カチオン性コポリマー分散剤の記載は、本明細書の記載に含まれるものとする。これらの分子量は、特に限定はないが、好ましくは1000〜150000であり、更に好ましくは5000〜80000である。
上記種々の分散剤のうち、本発明においては、特に、ジアリルアミン系分散剤(例えばサンノプコ社製:F―2X)が好ましい。
【0012】
有機分散剤として使用する水溶性ノニオン系界面活性剤(B)としては、ポリエチレングリコール型および多価アルコール型非イオン界面活性剤が挙げられる。ポリエチレングリコール型としては、例えば高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物およびポリエーテル変成シリコーン等が挙げられる。
【0013】
多価アルコール型としては、例えばグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはそのエチレンオキサイド付加物およびアルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられ、更にメチルセルロース(MC)、ハイドロオキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニールアルコール(PVA)、ポリアルキレンオキサイドビニールエテル化合物およびポリハイドロキシルアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの非イオン系界面活性剤の内、湿式粉砕時に高濃度スラリーを得るためには、高分子型界面活性剤が好ましいが、特に好ましいものとして抵重合度の部分ケン化ポパールおよびポリハイドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】
上記の粉砕中または粉砕後、必要により無機フィラーの濃度を、例えば5〜50質量%、好ましくは25〜35質量%の濃度に調整される。
【0015】
上記のように調製された無機フィラーの水性スラリーは、次いで、不飽和脂肪酸石鹸で処理される。
本発明において、「不飽和脂肪酸石鹸」とは、一般に不飽和高級脂肪酸を塩基で鹸化する反応により生成される塩を意味する。不飽和高級脂肪酸とは、当業者が理解する通りであり、一般に1以上の不飽和の炭素結合を有する、炭素数12以上の脂肪酸を意味する。本発明に使用される不飽和脂肪酸は、最終的に無機スラリーを分散させる油との親和性などを基準として当業者が適宜決定することが可能であり、本発明に好適に使用することができる不飽和脂肪酸として、例えばオレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸およびこれらの混合物が挙げられる。特に、油として大豆油などの植物油を使用した場合、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸およびこれらの混合物(例えばリシノール酸とオレイン酸の混合物)が好ましく、このうち、オレイン酸が特に好ましい。
また、石鹸の調製に使用される塩基は当該技術分野に知られるいずれのものを使用することができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム以外に、アンモニア、水酸化カルシウムが好ましく、これらのうちアンモニアが特に好ましい。
本発明に使用される不飽和脂肪酸石鹸は、上記の不飽和脂肪酸と塩基を用いて常法により作製することができる。例えばステアリン酸アンモニウムの場合、加熱したステアリン酸水溶液にアンモニア水を滴下することにより作製される。本発明においては、1種の不飽和脂肪酸石鹸を単独で使用してもよいし、数種の不飽和脂肪酸石鹸を混合して使用してもよい。本発明においては、オレイン酸、リシノール酸及びリノール酸からなる群より選択される不飽和脂肪酸と、アンモニア、水酸化ナトリウム及び水酸化カルシウムからなる群より選択される塩基とを反応させて得られた不飽和脂肪酸石鹸またはそれらの混合物を使用することが好ましく、これらのうち、オレイン酸アンモニウムが特に好ましい。
【0016】
表面処理の方法としては特に限定はされず、処理温度や処理時間などの条件等は当業者が適宜決定することができる。例えば、0.5〜10質量%、好ましくは3〜7質量%の石鹸水溶液を調製し、水性スラリー中の無機フィラーの固形分質量に対して石鹸0.1〜4質量%、好ましくは1.0〜2.5質量%、より好ましくは1.5〜2.0質量%の濃度となるように該水溶液を水性スラリーに添加し、例えば室温または20〜30℃などの温度条件で所定の時間、撹拌することにより行うことができる。撹拌は、例えばマゼラNZ−1000などの撹拌機を使用して、例えば1000〜2000rpm、好ましくは1500〜1600rpmで、1〜10分、好ましくは2〜5分などの条件で行うことができるが、撹拌条件は当業者が適宜設定することができる。
【0017】
不飽和脂肪酸石鹸で表面処理をした無機フィラーの水性スラリーは、工程(b)で油に分散させる前に、必要に応じて水分量を調整することができる。この水分調整の工程によって、水性スラリー中の無機フィラー固形分の濃度は、例えば10〜80質量%、好ましくは50〜80質量%、より好ましくは55〜75質量%に調整される。例えば吸引濾取によって脱水し、いわゆる脱水ケーキの状態とすることにより、次の工程で不必要な水分を、一定程度にまで予め除去することができる。
【0018】
次に、本発明の工程(b)において、工程(a)で表面処理した無機フィラーの水性スラリーを油に分散させることにより、無機フィラーの油性スラリーが製造される。
本発明の油性スラリーに使用される油としては、当該技術分野において無機フィラーの分散媒体として一般に使用される油であれば特に限定されず、例えば大豆油、ナタネ油、ヒマワリ油、コーン油、グレープシード油、ゴマ油、紅花油などの植物油、または、スピリッツなどの鉱物油を使用することができる。上記のうち、植物油が好ましく、そのうち大豆油、コーン油及び紅花油がより好ましく、なかでも大豆油が特に好ましい。
【0019】
油中への水性スラリーの分散は、常法により行うことができる。例えば、撹拌に適したホモミキサーを使用して、室温または10〜40℃、好ましくは20〜30℃などの温度条件下で、5000rpm〜10000rpm、好ましくは7500rpm程度で1〜5分間撹拌することにより、適切に作製することができる。また、無機フィラーの分散に使用される油の量は当業者が必要に応じて適宜設定することができる。好ましくは、無機フィラー固形分が1〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%となるように調製される。また、水性スラリー中の水分が油の中に持ち込まれてエマルジョンの状態となるが、油性スラリー中の水分含量は、油の質量に対して0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、約20質量%であることが特に好ましい。
【0020】
上記操作により、実質的に均質な油性スラリーが作製されるが、上記の油性スラリーは、次いで、含まれる水分を必要によりさらに除去してもよい。除去の方法はいずれの方法でもよく、例えば撹拌しながら加熱することにより、水蒸気として水分を蒸発させることが可能である。
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
実施例1〜26、比較例1〜8
[炭酸カルシウムスラリーの調製]
天然石灰石をテーブル式アトライター型媒体攪拌機を用いて90℃において40分間、1500rpmで湿式粉砕し、平均粒子径1μm程度の濃度40質量%の水系炭酸カルシウムスラリーを得た。このスラリーに、炭酸カルシウムの乾燥質量を基準として、カチオンポリマー(モノマーとしてジアリルアミン塩酸塩(60%)500部とアクリルアミド(40%)200部を用い、特開平7−300568号公報の参考例1に記載の方法で合成したカチオンポリマー(商品名F−2X:サンノプコ社製))を0.025%添加して更に湿式粉砕した。
なお、実施例10〜14については、使用する分散剤の種類、量、粒径を所定の値となるよう調整し、上記と同様の方法により別途炭酸カルシウムの湿式粉砕を行った。
なお、使用したF−2X以外の分散剤の詳細は以下の通りである。
NH4Cl:(関東化学株式会社製 鹿一級品(カチオン性分散剤))
SP−L10:(花王株式会社製(ノニオン性界面活性剤))
【0022】
次いで、上記のように作製した炭酸カルシウムの水性スラリーを、下記の各表に記載の通りの脂肪酸および塩基で常法により作製した脂肪酸石鹸の水溶液で処理した。具体的には、炭酸カルシウム濃度約30質量%に調整した水性スラリーを、100mlのディスポカップ内で、脂肪酸石鹸水溶液5.0質量%水溶液を添加し、プロペラ撹拌機(アズワン社製SM-101)を使用して、室温、1500〜1600rpmで2分間撹拌した。ここで、表中の添加量は炭酸カルシウム質量に対する不飽和脂肪酸石鹸の質量%を表す。その後、ブフナー漏斗を使用して吸引濾取し、水性スラリーの濃度を63質量%程度に調整した。
【0023】
次に、100mlのディスポカップ内に前記水性スラリーと、該水性スラリーの固形分の4倍質量の大豆油(味の素:白絞油)を入れ、ホモミキサー(特殊機化工業(株)HV−M SPEC C T.K.ホモミクサー)を使用して、室温、7500rpmで2分間撹拌した。その後、炭酸カルシウムの分散(スラリー化)の有無を目視で確認した。さらに、スラリー化されたサンプルについては5ml程度を黒い紙の上にたらし、スラリー中に凝集したまま残っている炭酸カルシウムの粒の多さを目視で判定した。
【0024】
【表1】

【0025】
[評価基準]
<分散>
○:均質な白いスラリー状
×:白い塊が生じ、油と完全に分離した状態
<目視凝集>
多:分散しきれずに残った炭酸カルシウムの粒が多く見られる。(11粒以上)
中:粒がある程度見られる。(6〜10粒程度)
少:粒が少しだけ見られる。(3〜5粒程度)
殆どなし:粒が全くまたは殆ど見られない。(2粒以下)
【0026】
[無機フィラーの種類による比較]
実施例27〜31
以下示す無機フィラーについて水性スラリーを作製した。
AFF-52C:重質炭酸カルシウム、太平洋セメント社製
Albacar5970:沈降性炭酸カルシウム、SMI社製
CERCRON MP 50-60:タルク、SMI社製
テイカ社製ルチル:酸化チタン、テイカ社製
2N:水酸化マグネシウム、ファイマテック(株)ジュンマグ
【0027】
上記の無機フィルターについて、前述の方法と同様に水性スラリーを調製した。その後、オレイン酸アンモニウムの5%水溶液を使用し、固形分2phrで無機フィラーの表面処理を行った。無機フィラー固形分50〜70質量%に脱水後、そのうち20gを48gの大豆油に加え、ホモミキサー(特殊機化工業(株)HV−M SPEC C T.K.ホモミクサー)を使用して、室温、7500rpmで2分間撹拌し、大豆油中における分散を確認した(評価基準は前述の通り)。
【0028】
また、別途、以下の手順で撥水試験を行った。
表面処理剤をした水性スラリーに、炭酸カルシウム固形分が20質量%になるように大豆油を加え、前記のホモミキサーにより室温、7500rpmで2分間撹拌してエマルジョン状にした後、エマルジョン状の炭酸カルシウムを水に入れて容器を手で振り、撥水の有無を確認した。
【0029】
【表2】

【0030】
[油の種類による比較]
鉱物油としてスピリッツ、植物油として大豆油以外にコーン油及び紅花油を用い、実施例1〜26及び比較例1〜8と同様に分散試験を行った。
各無機フィラーの水性スラリー(分散剤として前述のF-2Xを0.025%の濃度で使用)を、下記の表に記載の通りの脂肪酸および塩基で常法により作製した脂肪酸石鹸の水溶液を2%の濃度となるように加えて処理し、その後、上記の各油を加えて撹拌し、各油中における無機フィラーの分散を目視で確認した。
【0031】
使用した油の詳細は以下の通りである。
大豆油:味の素 白絞油
スピリッツ:新日本石油 AFソルベント6号
コーン油:日本生活協同組合連合会(CO-OP) コーンサラダ油
紅花油:日清 べに花油
また、使用した無機フィラーは実施例27〜31について示したものと同様である。
【0032】
【表3】

【0033】
[評価基準]
◎:粒が全くまたは殆ど見られない。(2粒以下)
○:粒が少しだけ見られる。(3〜5粒程度)
△:粒がある程度見られる。(6〜10粒程度)
▲:分散しきれずに残った炭酸カルシウムの粒が多く見られる。(11粒以上)
×:白い塊が生じ、油と完全に分離した状態(全く分散せず)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 無機フィラーの水性スラリーを不飽和脂肪酸石鹸で表面処理する工程、
(b) 工程(a)で表面処理した無機フィラーの水性スラリーを油に分散させる工程、
を含む、無機フィラーの油性スラリーの製造方法。
【請求項2】
無機フィラーが中性または塩基性無機フィラーである、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
無機フィラーが炭酸カルシウムである、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
油が植物油である、請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
油が大豆油、コーン油又は紅花油である、請求項5記載の製造方法。
【請求項6】
工程(a)において、無機フィラー100質量部に対し不飽和脂肪酸石鹸0.1〜4質量部で表面処理を行う、請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
不飽和脂肪酸石鹸が、オレイン酸、リシノール酸およびリノール酸からなる群より選択される不飽和脂肪酸と、アンモニア、水酸化ナトリウム及び水酸化カルシウムからなる群より選択される塩基とを反応させて得られた不飽和脂肪酸石鹸またはそれらの混合物である、請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
不飽和脂肪酸石鹸が、オレイン酸アンモニウムである、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
工程(a)の表面処理工程の後に水性スラリー中の無機フィラーの含有量を50〜80質量%に調整する工程をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項10】
油性スラリー中の無機フィラーの量が1〜50質量%である、請求項1〜9のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項11】
油性スラリー中の水分含量が0.1〜50質量%である、請求項1〜10のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項記載の製造方法により得られる無機フィラーの油性スラリー。
【請求項13】
無機フィラーの水性スラリーを不飽和脂肪酸石鹸で表面処理する工程を含む、油に分散させるための無機フィラーの水性スラリーの製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の製造方法により得られる無機フィラーの水性スラリー。

【公開番号】特開2009−209363(P2009−209363A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25805(P2009−25805)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(591093140)株式会社ファイマテック (3)
【Fターム(参考)】