無機リガンドを有する量子ドット及びその製造方法
【課題】 無機リガンドを有する量子ドット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を製造する段階と、第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液を提供する段階と、金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液と、第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、混合溶液を撹拌し、第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機リガンドを、金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む、量子ドットの製造方法である。
【解決手段】 金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を製造する段階と、第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液を提供する段階と、金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液と、第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、混合溶液を撹拌し、第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機リガンドを、金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む、量子ドットの製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット及びその製造方法、特に、無機リガンドを有する量子ドット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドット(QD:quantum dot)は、数nmサイズの結晶構造を有する半導体物質であり、同一物質のバルク半導体と、不連続分子との間の特性を示す。量子拘束効果(quantum confinement effect)と、大きい表面と体積との比とによって、同一物質で、大きさを変化させることによって、物理的、化学的、電気的な特性の調節が可能であるので、量子ドットは、新たな物性調節方法及び材料として大きい関心を集めている。
【0003】
量子ドットの製造方法において、コロイド量子ドット(colloidal quantum dot)を作る液相化学合成法は、比較的低価の工程で、均一のナノサイズの量子ドットを大量に容易に製造することができる。
【0004】
かような量子ドットを、量子ドット発光素子(QD LED)、量子ドット太陽電池(QD solar cell)及び量子ドットトランジスタ(QD transistor)のような電子素子に応用しようとする試みが持続的になされているが、実際に、商業的な応用にまで逹していない。その理由のうち一つは、量子ドット自体は、半導体物質からなるにもかかわらず、量子ドット表面に結合された有機リガンドが、絶縁障壁層として作用し、量子ドットの電気伝導度が下がるためである。
【0005】
一方、量子ドット表面の有機リガンドが除去される場合には、量子ドット表面のダングリング結合(dangling bond)、表面欠陥などの影響で、量子ドットの発光効率が低下したり、あるいは表面に電荷キャリア(charge carrier)がトラップされ、光学的、電気的な特徴が低下することがある。また、有機リガンドの除去は、量子ドットの集合(aggregation)や融合(fusion)などを引き起こし、量子ドット粒子を安定して維持させることができない。
【0006】
最近、非特許文献1は、量子ドットの有機リガンドを、金属カルコゲナイド化合物(MCC:metal chalcogenide complex)で置き換えたものに係わる研究を発表した。MCC物質は、電荷を帯びている溶液上では、量子ドット表面にバインディングされ、有機リガンドと同様に、溶液上で量子ドットがコロイド形態で安定して存在し得る。しかし、前述の研究は、毒性が非常に強く、空気中に露出されると爆発性が非常に強いヒドラジンを溶媒とするので、量子ドットを商業的に製造し難い。
【0007】
量子ドット製造時、毒性及び危険性の高いヒドラジンを代替しようとする試みがなされているが、代替された溶媒の反応性が落ち、炭素成分が含まれており、無炭素の無機リガンドを形成するのに適していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Science 2009,324,1417−1420
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一側面は、良好な電気伝導度を有し、安定した無機リガンドを有する量子ドットを提供するものである。
【0010】
本発明の他の側面は、良好な電気伝導度を有し、安定した無機リガンドを有する量子ドットを、毒性が低く、安全に製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一具現例によって、半導体物質を含む量子ドットと、前記量子ドットの表面上のヒドラジン水和物(hydrazine hydrate)を含む無機リガンドと、を含む量子ドットを提供する。
【0012】
他の具現例によって、金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を製造する段階と、第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液を提供する段階と、前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液と、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、前記混合溶液を撹拌し、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの前記第1有機リガンドを、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む量子ドットの製造方法を提供する。
【0013】
さらに他の具現例によって、金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液を製造する段階と、第2有機リガンドを有する量子ドットの第2有機溶液を提供する段階と、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液と、前記第2有機リガンドを有する量子ドットの第2有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、前記混合溶液を撹拌し、前記量子ドットの前記第2有機リガンドを、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む量子ドットの製造方法を提供する。
【0014】
さらに他の具現例によって、金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液を製造する段階と、第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液を提供する段階と、金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液と、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、前記混合溶液を撹拌し、前記量子ドットの前記第1有機リガンドを、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む量子ドットの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、量子ドットの有機リガンドを、金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の無機リガンドで交換することによって、量子ドットの電気的特性を向上させることができ、量子ドット製造の時、ヒドラジン以外の溶媒を使うことにより、低い毒性で、かつ安全な方法で、無機リガンドを有する量子ドットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一具現例による無機リガンドを有する量子ドットを概略的に図示した図面である。
【図2A】従来の有機リガンドを有する量子ドットの電子エネルギーを図示したエネルギーダイヤグラムである。
【図2B】一具現例による無機リガンドを有する量子ドットの電子エネルギーを図示したエネルギーダイヤグラムである。
【図3】一具現例による無機リガンドを有する量子ドットの製造方法を概念的に図示した図面である。
【図4】一具現例による金属カルコゲナイドヒドラジン水和物リガンドを有する量子ドットの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】他の具現例による金属カルコゲナイドヒドラジン水和物リガンドを有する量子ドットの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】さらに他の具現例による金属カルコゲナイドヒドラジン水和物リガンドを有する量子ドットの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】実施例1のリガンドの交換前後の量子ドットのFTIR(fourier transform infrared spectroscopy)スペクトルである。
【図8】実施例2のリガンドの交換前後の量子ドットのFTIRスペクトルである。
【図9】実施例3のリガンドの交換前後の量子ドットのFTIRスペクトルである。
【図10】実施例3のリガンド交換後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットの発光(PL)スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で量子ドット(quantum dot)というのは、1nm以上、数十nm範囲の大きさを有する粒子で構成された単物質半導体又は化合物半導体を意味する。本明細書の量子ドットは、コアシェル構造を有することができ、コア及びシェルのそれぞれは、1以上の層からなってもよい。例えば、コア−シェル−シェル構造を有することができる。
【0018】
本明細書で、相転移(phase transfer)というのは、溶媒抽出(solvent extraction)の場合のように、2個の液相(liquid phase)が界面をなしている状態で、第1液相内で第1リガンドを有する量子ドットが、液相の界面で第2液相内の第2リガンド化合物でリガンド交換を行いつつ、第2液相に転移される現象を意味する。従って、相転移後に量子ドットは、第2液相内に存在して第2リガンドを有することになる。
【0019】
一方、本明細書で量子ドットのリガンドは、単一化合物でもあるが、2種以上の化合物からなってもよい。
【0020】
以下で、一具現例による無機リガンドを有する量子ドットについて詳細に説明する。
【0021】
図1は、一具現例による無機リガンドを有する量子ドット30を概略的に図示した図面である。図1を参照すれば、無機リガンドを有する量子ドット30は、半導体物質からなる量子ドット10、及び量子ドット10の表面にパッシベーションされている金属カルコゲナイド化合物(MCC)のヒドラジン水和物(MCC hydrazine hydrate)23からなっている。
【0022】
量子ドット10の半導体物質は、例えば、II−VI族半導体化合物、III−V族半導体化合物、IV−VI族半導体化合物、IV族元素又は化合物、又はそれらの組み合わせからなってもよい。II−VI族半導体化合物は、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe又はそれらの組み合わせの二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe又はそれらの組み合わせの三元素化合物;CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe又はそれらの組み合わせの四元素化合物であってもよい。III−V族半導体化合物は、例えば、GaN、GaP、GaAS、GaSB、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb又はそれらの組み合わせの二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP又はそれらの組み合わせの三元素化合物;GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb又はそれらの組み合わせの四元素化合物であってもよい。前記IV−VI族半導体化合物は、例えば、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe又はそれらの組み合わせの二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe又はそれらの組み合わせの三元素化合物;SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe又はそれらの組み合わせの四元素化合物であってもよい。前記IV族元素又は化合物は、例えばSi、Ge、SiC、SiGe又はそれらの組み合わせであってもよい。量子ドット10は、コア−シェル構造を有することができる。このとき、コア及びシェルのそれぞれは、単一層又は2以上の層からなってもよい。例えば、量子ドット10は、コア−シェル−シェル構造を有することができ、例えば、CdSe/CdS/ZnSからなってもよい。
【0023】
金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物(MCCヒドラジン水和物)23は、量子ドット10の表面に配位結合されている。金属カルコゲナイド化合物は、Sn2S6、Sn2Se6、In2Se4、In2Te3、Ga2Se3、CuInSe2、Cu7S4、Hg3Se4、Sb2Te3又はZnTeを含んでもよい。ヒドラジン水和物は、モノ水和物(monohydrate)、二水和物(dihydrate)、三水和物(trihydrate)、四水和物(tetrahydrate)、五水和物(pentahydrate)又は六水和物(hexahydrate)を含んでもよい。
【0024】
一方、他の具現例により、前述の無機リガンドを有する量子ドット30をエタノールアミン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はホルムアミドの溶媒に溶解させた量子ドット溶液を提供することができる。
【0025】
図2Aは、従来の有機リガンドを有する量子ドットの電子エネルギーを図示したエネルギーダイヤグラムであり、図2Bは、一具現例による無機リガンドを有する量子ドットの電子エネルギーを図示したエネルギーダイヤグラムである。図2Aを参照すれば、コア11とシェル12とからなる量子ドット10、及び量子ドット10表面の有機リガンド21から構成される従来の有機リガンドを有する量子ドット20は、有機リガンド21のエネルギーレベルが、コア11及びシェル12のエネルギーレベルに比べてはるかに高い。一方、図2Bを参照すれば、コア11とシェル12とからなる量子ドット10、及び量子ドット10表面の無機リガンド23から構成される一具現例による無機リガンドを有する量子ドット30は、無機リガンド23のエネルギーレベルが、シェル12のエネルギーレベルより低い。量子ドット30の無機リガンド23のエネルギーレベルが低くなることにより、従来有機リガンドで生ずる高いエネルギー障壁(energy barrier)をなくすことができ、従って、量子ドット30の電気伝導度が向上する。
【0026】
以下、具現例による無機リガンドを有する量子ドットの製造方法について詳細に説明する。
【0027】
図3は、一具現例による無機リガンドを有する量子ドットの製造方法を概念的に図示した図面である。図3を参照すれば、量子ドット10をパッシベーションしている有機リガンド21を、無機リガンド23で交換することにより、無機リガンドを有する量子ドットを製造することができる。無機リガンド23は、金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物であってもよい。リガンドの交換は、有機リガンドを有する量子ドットが存在する溶液と、無機リガンド化合物が存在する溶液との間で、量子ドットの相転移を介して行われる。又は、リガンドの交換は、有機リガンドを有する量子ドットと、過剰量の無機リガンド化合物とが存在する共通する溶媒内でもなされる。
【0028】
図4は、一具現例による金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物(MCCヒドラジン水和物)リガンドを有する量子ドットの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0029】
図4を参照すれば、MCCヒドラジン水和物溶液(溶液A)を製造する(S110)。MCCヒドラジン水和物は、金属カルコゲナイド化合物と、ヒドラジン水和物とが結合されている化合物であり、MCCヒドラジン水和物溶液は、MCCヒドラジン水和物を含む溶液である。これのために、まずに、カルコゲン元素(S、Se又はTe)の粉末を、ヒドラジン水和物(N2H4・NH2O)溶液に溶かし、カルコゲンヒドラジン水和物溶液を製造する。例えば、硫黄(S)粉末をヒドラジンモノ水和物溶液に溶かし、硫黄ヒドラジンモノ水和物溶液を製造することができる。一方、ヒドラジンモノ水和物溶液の代わりに、ヒドラジン二水和物、ヒドラジン三水和物、ヒドラジン四水和物、ヒドラジン五水和物又はヒドラジン六水和物のようなヒドラジン多水和物溶液を使うことができる。
【0030】
次に、前記カルコゲンヒドラジン水和物溶液に金属粉末を添加して反応させる。前記金属は、単一金属又は金属化合物を含んでもよい。例えば、前記金属は、Sn、Ga、Cu2S、GeS、Sb2Se3、Sb2Te3、In2Se3、ZnTe、In2Te3などを含んでもよい。前記金属粉末と共に、ヒドラジン水和物溶液をさらに添加することができる。反応温度は、常温乃至200℃の範囲であってもよい。ヒドラジン水和物は、強い還元剤であるので、ヒドラジン水和物溶液内で、金属カルコゲナイド化合物(MCC)が合成される。また、ヒドラジン水和物溶液内で、金属カルコゲナイド化合物(MCC)は、ヒドラジン水和物と結合され、MCCヒドラジン水和物になってもよい。MCCヒドラジン水和物は、MCCヒドラジンモノ水和物、MCCヒドラジン二水和物、MCCヒドラジン三水和物、MCCヒドラジン四水和物、MCCヒドラジン五水和物、MCCヒドラジン六水和物又はそれらの混合物であってもよい。一方、ヒドラジン水和物溶液は、ヒドラジンより毒性(toxicity)が弱くて爆発性がないので、金属カルコゲナイド化合物の合成に安全に使われる。
【0031】
前記反応溶液からの反応後、残った沈殿物を、例えば、遠心分離(centrifugation)によって除去し、MCCヒドラジン水和物溶液(溶液A)を製造する。本具現例で、MCCヒドラジン水和物溶液の溶媒は、ヒドラジン水和物である。例えば、Sn2S6、Sn2Se6、In2Se4、In2Te3、Ga2Se3、CuInSe2、Cu7S4、Hg3Se4、Sb2Te3又はZnTeのヒドラジンモノ水和物溶液を製造することができる。
【0032】
一方、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を提供する(S120)。第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液は、第1有機リガンドを有する量子ドットが、第1有機溶媒に溶解又は分散している溶液である。量子ドットは、例えば、II−VI族半導体化合物、III−V族半導体化合物、IV−VI族半導体化合物、IV族元素又は化合物、又はそれらの組み合わせからなってもよい。II−VI族半導体化合物は、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe又はそれらの組み合わせの二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe又はそれらの組み合わせの三元素化合物;CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe又はそれらの組み合わせの四元素化合物であってもよい。III−V族半導体化合物は、例えば、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb又はそれらの組み合わせの二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP又はそれらの組み合わせの三元素化合物;GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb又はそれらの組み合わせの四元素化合物であってもよい。前記IV−VI族半導体化合物は、例えば、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe又はそれらの組み合わせの二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe又はそれらの組み合わせの三元素化合物;SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe又はそれらの組み合わせの四元素化合物であってもよい。前記IV族元素又は化合物は、例えば、Si、Ge、SiC、SiGe又はそれらの組み合わせであってもよい。例えば、量子ドットは、CdSe/CdS/ZnSからなってもよい。
【0033】
量子ドットは、第1有機溶液内でコロイド形態で分散しており、第1有機リガンドが、量子ドットの表面に配位結合されている。すなわち、量子ドットが、有機リガンドでパッシベーションされている。前記第1有機リガンドは、例えば、TOP(trioctylphosphine)、TOPO(trioctylphosphine oxide)、オレイン酸(oleic acid)、オレイルアミン(oleylamine)、オクチルアミン(octylamine)、トリオクチルアミン(trioctyl amine)、ヘキサデシルアミン(hexadecylamine)、オクタンチオール(octanethiol)、ドデカンチオール(dodecanethiol)、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、オクチルホスフィン酸(OPA)又はそれらの混合物を含んでもよいが、それらに限定される限りではない。前記第1有機溶液の第1溶媒は、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、クロロホルム、トルエン、オクタン、クロロベンゼン又はそれらの混合物を含んでもよいが、それらに限定される限りではない。一方、第1溶媒は、第1有機リガンドと同一の化合物であってもよい。
【0034】
MCCヒドラジン水和物溶液(溶液A)に、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を混合し、量子ドットの第1有機リガンドを、MCCヒドラジン水和物リガンドで交換する(S130)。このために、ヒドラジン水和物溶液に、MCCヒドラジンモノ水和物溶液(溶液A)を添加し、ここに、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を添加する。ヒドラジン水和物溶液は、ヒドラジンモノ水和物、ヒドラジン二水和物、ヒドラジン三水和物、ヒドラジン四水和物、ヒドラジン五水和物、ヒドラジン六水和物又はそれらの混合物であってもよい。前記混合溶液は、上部の第1有機溶液層と、下部のヒドラジン水和物層とに相分離(phase separation)される。上部の第1有機溶液層は、第1有機リガンド量子ドットを含んでおり、下部のヒドラジン水和物層は、過剰量の金属カルコゲナイド化合物を含んでいる。前記混合溶液の撹拌によって、第1有機溶液層内の量子ドットが、ヒドラジン水和物層に移動しつつ、量子ドットをパッシベーションしている有機リガンドが、MCCリガンドに交換される。撹拌温度は、常温乃至200℃の範囲であってもよい。このように、量子ドットが2つの溶媒の間で相転移を行うことにより、量子ドットのリガンド交換が起こり、MCCリガンドでパッシベーションされた半導体化合物の量子ドットを製造することができる。
【0035】
図5は、他の一具現例によるMCCヒドラジン水和物リガンドを有する量子ドットの製造方法について説明するためのフローチャートである。本具現例は、金属MCCヒドラジン水和物溶液の溶媒を変換し、量子ドットの有機リガンドを新たな有機リガンドで交換し、次に、量子ドット溶液の溶媒を変換する点で、図4で示される具現例と違いがある。
【0036】
図5を参照して、MCCヒドラジン水和物溶液(溶液A)を製造する(S211)。この過程は、図4の具現例に関連して説明したMCCヒドラジン水和物溶液の製造過程(S110)と同一である。
【0037】
次に、MCCヒドラジン水和物溶液(溶液A)から、MCCヒドラジン水和物を分離する(S212)。前述のように、MCCヒドラジン水和物は、金属カルコゲナイド化合物(MCC)と、ヒドラジン水和物とが結合されている化合物である。例えば、溶液Aに対し、窒素ガスなどをブローイングしてヒドラジン水和物溶媒を乾燥、蒸発させることにより、MCCヒドラジン水和物を分離することができる。又は、例えば、前記溶液に、メタノール、エタノール、ブタノール又はアセトニトリルのような、金属カルコゲナイド化合物を溶かさない非溶媒(non-solvent)を過量に添加した後、前記溶液を遠心分離してMCCヒドラジン水和物を分離することができる。
【0038】
分離したMCCヒドラジン水和物を、第2の有機溶液に分散させ、MCCヒドラジン水和物の第2有機溶液(溶液C)を製造する(S213)。MCCヒドラジン水和物の第2有機溶液は、MCCヒドラジン水和物が、第2有機溶媒に溶解されている溶液である。第2有機溶液は、金属カルコゲナイド化合物(MCC)と量子ドットとをいずれも溶解(分散)させることができる有機溶媒を使うことができる。第2有機溶液は、例えば、エタノールアミン、DMSO、DMF又はホルムアミドなどのような極性を有する有機溶媒を使うことができる。
【0039】
一方、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を提供する(S221)。この過程は、図4の具現例に関連して説明した第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液の提供過程(S121)と同一である。
【0040】
次に、相転移によって、量子ドットの第1有機リガンドを、第2有機リガンドで交換する(S222)。リガンド交換のために、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を、過量の第2有機リガンドを含む第3有機溶液に添加して撹拌する。第2有機リガンドは、MCCヒドラジン水和物を溶解(分散)させることができる第2有機溶媒に溶解されるリガンドであってもよい。第2有機リガンドは、例えば、メルカプトプロピオン酸(MPA)、システアミン(cysteamine)又はメルカプト酢酸(mercapto acetic acid)などのような極性を有するリガンドを使うことができる。第3有機溶液は、例えば、クロロホルム、クロロベンゼンなどを使うことができる。過量の第2有機リガンドを含む第3有機溶液内で、量子ドットの第1有機リガンドが平衡反応によって、第2有機リガンドに交換される。第2有機リガンドは、第2有機溶媒及び第3有機溶媒いずれにも溶解される。第2有機リガンドは、金属カルコゲナイド化合物と溶解された第2有機溶媒に溶解されるので、同種溶媒内での量子ドットのリガンド交換を可能にする。
【0041】
第2有機リガンドを有する量子ドットを第2有機溶液内に分散させ、第2有機リガンド量子ドットの第2有機溶液(溶液D)を製造する(S223)。第2有機リガンド量子ドットの第2有機溶液は、第2有機リガンドを有する量子ドットが、第2有機溶媒に溶解又は分散している溶液である。このために、まず、第2有機リガンドを有する量子ドットを第3有機溶液から分離させる。例えば、第2有機リガンドを有する量子ドットを含む第3有機溶液を遠心分離し、量子ドットを沈澱させて分離することができる。そして、分離した量子ドットを、S213段階で、金属カルコゲナイド化合物を分散(溶解)させた第2有機溶液と同一の有機溶液に分散させ、第2有機リガンド量子ドットの第2有機溶液(溶液D)を製造する。
【0042】
MCCヒドラジン水和物の第2有機溶液(溶液C)に、第2有機リガンド量子ドットの第2有機溶液(溶液D)を混合し、量子ドットの第2有機リガンドを、MCCヒドラジン水和物のリガンドで交換する(S230)。溶液Cと溶液Dとの混合溶液は、溶媒が同一であるので、相分離が発生しない。相分離が起きないので、ヒドラジン水和物溶液と第1有機溶液との界面で、副産物(byproduct)が発生せず、量子ドットのリガンド交換時に、副産物による量子ドット表面の損傷を防止することができる。また、ヒドラジン水和物溶液自体が、量子ドットの発光効率を低下させるが、ヒドラジン水和物溶液が存在しないので、量子ドットの発光効率の低下を防止することができる。
【0043】
前記混合溶液を撹拌し、量子ドットをパッシベーションしている第2有機リガンドを、MCCヒドラジン水和物リガンドで交換させることができる。撹拌温度は、常温乃至200℃範囲であってもよい。混合溶液を撹拌すれば、第2有機溶液内の量子ドットをパッシベーションしている第2有機リガンドが、同一の溶液内のMCCヒドラジン水和物リガンドに交換される。このように、同種溶媒内でのリガンドの交換によって、MCCヒドラジン水和物リガンドでパッシベーションされた半導体化合物の量子ドットを製造することができる。
【0044】
本具現例は、同種の有機溶媒を使うので、互いに異なる溶媒間の界面での副反応が抑制される。本具現例はまた、溶媒間に相分離が起きなければならない条件(例えば、溶媒の極性程度、比重などの選択)が要求されないので、多様な有機溶液の中に溶けている量子ドットに適用することができる。
【0045】
図6は、さらに他の一具現例によるMCCヒドラジン水和物リガンドを有する量子ドットの製造方法について説明するためのフローチャートである。本具現例は、MCCヒドラジン水和物溶液の溶媒を変換する点で図4と係わる具現例と違いがある。一方、本具現例は、量子ドットの表面改質と、量子ドット溶液の溶媒変換とを経ない点で、図5に関連する具現例と違いがある。
【0046】
図6を参照すれば、MCCヒドラジン水和物溶液(溶液A)を製造する(S311)。次に、MCCヒドラジン水和物(溶液A)から、MCCヒドラジン水和物を分離する(S312)。そして、分離されたMCCヒドラジン水和物を第2の有機溶液に分散させ、MCCヒドラジン水和物の第2有機溶液(溶液C)を製造する(S313)。S311,S312及びS313段階のそれぞれは、図5の具現例に関連して説明したS211,S212及びS213段階と同一である。ただ、第2有機溶液は、MCCヒドラジン水和物及び第1有機リガンドを有する量子ドットいずれも溶解させる必要はなく、MCCヒドラジン水和物で表面が改質された量子ドットを溶解させることができればよい。
【0047】
一方、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を提供する(S321)。この過程は、図4の具現例に関連して説明した第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液の提供過程(S121)と同一である。本具現例では、図5の具現例と異なり、量子ドットの第1有機リガンドを新たな有機リガンドで交換し、量子ドット溶液の溶媒を変換する過程を経ない。
MCCヒドラジン水和物の第2有機溶液(溶液C)に、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を混合し、量子ドットの第1有機リガンドを、MCCヒドラジン水和物のリガンドで交換する(S330)。溶液Cと溶液Bは、溶媒が互いに異なり、混合した溶液で相分離が発生することがある。例えば、溶液Cは、極性溶媒を使い、溶液Bは、非極性溶媒を使い、2つの溶液間に相分離が発生し得る。前記混合溶液を撹拌し、量子ドットをパッシベーションしている第1有機リガンドを、MCCヒドラジン水和物リガンドで交換させることができる。撹拌によって、第1有機溶液層内の量子ドットが、第2有機溶液層に移動しつつ、量子ドットをパッシベーションしている第1有機リガンドが、MCCヒドラジン水和物リガンドに交換される。撹拌温度は、常温乃至200℃の範囲であってもよい。このように、異種溶媒内のリガンドの交換によって、MCCヒドラジン水和物でパッシベーションされた半導体化合物の量子ドットを製造することができる。
【0048】
本具現例では、余分の第1有機リガンド及び不完全なリガンド交換反応により、2つの異種溶媒間の界面で、不純物が発生することがあるが、不純物の発生量が、ヒドラジン水和物溶液と第1有機溶媒との界面で発生する副産物よりさらに少ない。ヒドラジン水和物溶液は、強い還元剤としての性質によって、量子ドットの表面に影響を与え、不純物が発生し得るためである。また、ヒドラジン水和物溶液によって、量子ドットの発光効率の低下を防止することができる。一方、本具現例の量子ドット製造は、量子ドットの第1リガンドの第2リガンドへの交換が必要ではなく、リガンド交換反応に起因する発光効率の低下が現れず、全体的な反応工程数が減って反応が早くて容易である。
【0049】
実施例1
(a)Sn2S6ヒドラジンモノ水和物溶液の製造
10mlのヒドラジンモノ水和物溶液に、0.32g(10mmol)の硫黄(S)粉末を溶かし、1Mの硫黄ヒドラジンモノ水和物溶液を製造した。前記1Mの硫黄ヒドラジンモノ水和物溶液3mlと、ヒドラジンモノ水和物溶液1mlとを混ぜた溶液に、120mg(1mmol)のスズ(Sn)粉末を添加して反応させた。反応は、常温で行われ、約1時間ほど撹拌した。遠心分離によって、前記反応溶液からの反応後に残った沈殿物を除去し、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物溶液を製造した。Sn2S6ヒドラジンモノ水和物溶液は、溶液内に、Sn2S6と、ヒドラジンモノ水和物とが結合されたSn2S6ヒドラジンモノ水和物を含んでいる。
【0050】
(b)CdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液の準備
CdSe/CdS/ZnS量子ドットを、シクロヘキサン溶液に分散(溶解)させた5mg/ml濃度のCdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液を準備した(準備方法は、Advanced materials,2007,19,1927−1932参照)。CdSe/CdS/ZnS量子ドットは、CdSeコア/CdS内側シェル/ZnS外側シェルの構造を有する。また、CdSe/CdS/ZnS量子ドットの表面は、オレイン酸、TOP、TOPO及びトリオクチルアミンの混合有機リガンドが配位結合している。
【0051】
(c)CdSe/CdS/ZnS量子ドットのリガンド交換
2mlのヒドラジンモノ水和物溶液に、(a)段階のSn2S6ヒドラジンモノ水和物溶液25μlを添加し、ここに、(b)段階のCdSe/CdS/ZnS量子ドットを含むシクロヘキサン溶液2mlを添加した。結果物である混合溶液は、上部のシクロヘキサン層と、下部のヒドラジンモノ水和物層とに相分離された。前記シクロヘキサン層は、CdSe/CdS/ZnS量子ドットを含んでおり、前記ヒドラジンモノ水和物層は、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドを含んでいる。
【0052】
相分離された前記混合溶液を、室温で72時間撹拌した。撹拌後、CdSe/CdS/ZnS量子ドットが、上部のシクロヘキサン層から下部のヒドラジンモノ水和物層に移動した。CdSe/CdS/ZnS量子ドットのシクロヘキサン層から、ヒドラジンモノ水和物層に移動しつつ、CdSe/CdS/ZnS量子ドット表面の混合有機リガンドが、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドに交換された。
【0053】
図7は、実施例1のリガンドの交換前後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットのFTIR(fourier transform infrared spectroscopy)スペクトルである。図7で、リガンド交換前の量子ドットは、混合有機リガンドを有するCdSe/CdS/ZnS量子ドットであり、リガンド交換後の量子ドットは、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドへの交換反応後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットである。それぞれの量子ドットの粉末に対して、FTIRスペクトルを測定した。
【0054】
図7を参照すれば、リガンド交換前量子ドットのFTIRスペクトルでは、3000cm−1近辺のC−Hストレッチングから起因するピーク、1500cm−1近辺のC=Oストレッチングから起因するピーク、及びC−Hベンド(bend)から起因するピークが存在する。これらピークから、リガンド交換前量子ドットは、有機リガンドを有する量子ドットであるということを確認することができる。一方、リガンド交換後量子ドットのFTIRスペクトルでは、前記ピークが消え、これにより、CdSe/CdS/ZnS量子ドットの有機リガンドが、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドに交換されたことが分かる。
【0055】
一方、実施例1のリガンド交換後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットの発光強度が、リガンド交換前のCdSe/CdS/ZnS量子ドットの約25%レベルで低下した。かようなCdSe/CdS/ZnS量子ドットの発光強度の低下は、ヒドラジンモノ水和物層とシクロヘキサン層との界面で副産物が発生しつつ、量子ドットリガンド交換時に、量子ドットの表面に損傷を与えたためでると見られる。また、ヒドラジンモノ水和物自体も、量子ドット発光効率を低下させる。
【0056】
実施例2
(a)Sn2S6ヒドラジンモノ水和物エタノールアミン溶液の製造
実施例1と同一の方法で、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物溶液を製造した。前記Sn2S6ヒドラジンモノ水和物溶液をN2ガスで乾燥させ、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物だけ残してヒドラジンモノ水和物溶液を除去した。分離したSn2S6ヒドラジンモノ水和物をエタノールアミン溶液に溶かし、16mg/ml濃度のSn2S6ヒドラジンモノ水和物エタノールアミン溶液を製造した。
【0057】
(b)CdSe/CdS/ZnS量子ドットエタノールアミン溶液の製造
実施例1と同一の方法で、10mg/ml濃度のCdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液を準備した。前記CdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液2mlを、2Mのメルカプトプロピオン酸溶液18mlに添加した後、80℃の温度で3時間撹拌して反応させた。反応によって、CdSe/CdS/ZnS量子ドット表面の混合有機リガンドを、MPAリガンドで交換させた。次に、MPAリガンドに交換されたCdSe/CdS/ZnS量子ドットを、遠心分離を介して沈澱させた。沈澱されたCdSe/CdS/ZnS量子ドットをエタノールアミンに再分散(再溶解)させ、10mg/ml濃度のCdSe/CdS/ZnS量子ドットエタノールアミン溶液を製造した。
【0058】
(c)CdSe/CdS/ZnS量子ドットのリガンド交換
(a)段階で製造されたSn2S6ヒドラジンモノ水和物エタノールアミン溶液0.2mlを、(b)段階で製造された前記CdSe/CdS/ZnS量子ドットエタノールアミン溶液2mlに添加した後、常温で8時間撹拌しつつリガンド交換反応を行った。
【0059】
図8は、実施例2のリガンドの交換反応前後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットのFTIRスペクトルである。リガンドの交換前量子ドットは、MPAリガンドを有するCdSe/CdS/ZnS量子ドットであり、リガンドの交換後量子ドットは、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドへの交換反応後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットである。それぞれの量子ドットの粉末に対して、FTIRスペクトルを測定した。
【0060】
図8のグラフを参照すれば、リガンド交換前量子ドットのFTIRスペクトルでは、3000cm−1近辺のC−Hストレッチングから起因するピークと、1500cm−1近辺のC=Oストレッチングから起因するピークとが存在する。しかし、リガンド交換後量子ドットのFTIRスペクトルでは、これらピークがいずれも消えた。これにより、CdSe/CdS/ZnS量子ドットのMPAリガンドが、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドに交換されたことが分かる。
【0061】
一方、実施例2のリガンド交換後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットの発光強度が、混合有機リガンドを有するCdSe/CdS/ZnS量子ドットの約60%レベルに低下した。かようなCdSe/CdS/ZnS量子ドットの発光強度の低下は、CdSe/CdS/ZnS量子ドットのリガンドをMPAで交換する過程、及びMPAからSn2S6ヒドラジンモノ水和物へのリガンド交換過程で、発光量子収率の低下が起こるためであると見られる。
【0062】
実施例3
(a)Sn2S6エタノールアミン溶液の製造
実施例2と同一の方法で、16mg/ml濃度のSn2S6ヒドラジンモノ水和物エタノールアミン溶液を製造した。
【0063】
(b)CdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液の準備
実施例1と同一の方法で、10mg/ml濃度のCdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液を準備した。
【0064】
(c)CdSe/CdS/ZnS量子ドットのリガンド交換
(a)段階で製造されたSn2S6エタノールアミン溶液0.2mlを、2mlエタノールアミンに添加した。(b)段階のCdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液0.2mlを、2mlシクロヘキサン溶液に添加した後、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物エタノールアミン溶液と混ぜ、常温で8時間撹拌しつつ、リガンド交換反応を行った。
【0065】
図9は、実施例3のリガンドの交換前後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットのFTIRスペクトルである。リガンドの交換前量子ドットは、混合有機リガンドを有するCdSe/CdS/ZnS量子ドットであり、リガンド交換後量子ドットは、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドへの交換反応後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットである。それぞれの量子ドットの粉末に対して、FTIRスペクトルを測定した。
【0066】
図9を参照すれば、リガンド交換前量子ドットのFTIRスペクトルでは、C−Hストレッチングから起因する3000cm−1の近辺のピークと、C=Oストレッチングから起因する1500cm−1の近辺のピークとが存在する。しかし、リガンド交換後量子ドットのFTIRスペクトルでは、これらピークが非常に微弱に存在する。これにより、CdSe/CdS/ZnS量子ドットの混合有機リガンドが、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドに交換されたことが分かる。
【0067】
一方、以上の実施例は、ヒドラジンモノ水和物の代わりに、ヒドラジン二水和物、ヒドラジン三水和物のような他のヒドラジン水和物を使った場合にも、同一の反応が可能であった。
【0068】
図10は、実施例3のCdSe/CdS/ZnS量子ドットのリガンド交換後の発光(PL)スペクトルである。リガンド交換後の発光スペクトルは、エタノールアミンに溶解(分散)されたSn2S6ヒドラジン水和物リガンドを有するCdSe/CdS/ZnS量子ドットに対して測定した。図10を参照すれば、リガンド交換後のSn2S6リガンドCdSe/CdS/ZnS量子ドットの発光量子収率(QY)は、68%であった。一方、従来のヒドラジン溶媒を使って製造した無機リガンドCdSe/ZnSコア/シェル量子ドットは、有機リガンドを有する同一な量子ドットに比べて約40〜50%ほどの発光強度低下を示し、発光量子収率が35〜41%である(J.Am.Chem.Soc.,2010,132(29),pp.10085−10092参照)。実施例3のSn2S6ヒドラジン水和物リガンドを有するCdSe/CdS/ZnS量子ドットの量子収率は、前記論文の無機リガンドCdSe/ZnSコア/シェル量子ドットの発光量子収率よりさらに高い。かような量子収率の上昇は、ヒドラジン水和物溶媒が、Sn2S6ヒドラジン水和物リガンドの量子ドット製造に直接的な影響を与えないことにより、発光効率が高まるためであると思われる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の無機リガンドを有する量子ドット及びその製造方法は、例えば、素材関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 量子ドット
11 コア
12 シェル
20 有機リガンドを有する量子ドット
21 有機リガンド
23 無機リガンド
30 無機リガンドを有する量子ドット
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット及びその製造方法、特に、無機リガンドを有する量子ドット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドット(QD:quantum dot)は、数nmサイズの結晶構造を有する半導体物質であり、同一物質のバルク半導体と、不連続分子との間の特性を示す。量子拘束効果(quantum confinement effect)と、大きい表面と体積との比とによって、同一物質で、大きさを変化させることによって、物理的、化学的、電気的な特性の調節が可能であるので、量子ドットは、新たな物性調節方法及び材料として大きい関心を集めている。
【0003】
量子ドットの製造方法において、コロイド量子ドット(colloidal quantum dot)を作る液相化学合成法は、比較的低価の工程で、均一のナノサイズの量子ドットを大量に容易に製造することができる。
【0004】
かような量子ドットを、量子ドット発光素子(QD LED)、量子ドット太陽電池(QD solar cell)及び量子ドットトランジスタ(QD transistor)のような電子素子に応用しようとする試みが持続的になされているが、実際に、商業的な応用にまで逹していない。その理由のうち一つは、量子ドット自体は、半導体物質からなるにもかかわらず、量子ドット表面に結合された有機リガンドが、絶縁障壁層として作用し、量子ドットの電気伝導度が下がるためである。
【0005】
一方、量子ドット表面の有機リガンドが除去される場合には、量子ドット表面のダングリング結合(dangling bond)、表面欠陥などの影響で、量子ドットの発光効率が低下したり、あるいは表面に電荷キャリア(charge carrier)がトラップされ、光学的、電気的な特徴が低下することがある。また、有機リガンドの除去は、量子ドットの集合(aggregation)や融合(fusion)などを引き起こし、量子ドット粒子を安定して維持させることができない。
【0006】
最近、非特許文献1は、量子ドットの有機リガンドを、金属カルコゲナイド化合物(MCC:metal chalcogenide complex)で置き換えたものに係わる研究を発表した。MCC物質は、電荷を帯びている溶液上では、量子ドット表面にバインディングされ、有機リガンドと同様に、溶液上で量子ドットがコロイド形態で安定して存在し得る。しかし、前述の研究は、毒性が非常に強く、空気中に露出されると爆発性が非常に強いヒドラジンを溶媒とするので、量子ドットを商業的に製造し難い。
【0007】
量子ドット製造時、毒性及び危険性の高いヒドラジンを代替しようとする試みがなされているが、代替された溶媒の反応性が落ち、炭素成分が含まれており、無炭素の無機リガンドを形成するのに適していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Science 2009,324,1417−1420
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一側面は、良好な電気伝導度を有し、安定した無機リガンドを有する量子ドットを提供するものである。
【0010】
本発明の他の側面は、良好な電気伝導度を有し、安定した無機リガンドを有する量子ドットを、毒性が低く、安全に製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一具現例によって、半導体物質を含む量子ドットと、前記量子ドットの表面上のヒドラジン水和物(hydrazine hydrate)を含む無機リガンドと、を含む量子ドットを提供する。
【0012】
他の具現例によって、金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を製造する段階と、第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液を提供する段階と、前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液と、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、前記混合溶液を撹拌し、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの前記第1有機リガンドを、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む量子ドットの製造方法を提供する。
【0013】
さらに他の具現例によって、金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液を製造する段階と、第2有機リガンドを有する量子ドットの第2有機溶液を提供する段階と、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液と、前記第2有機リガンドを有する量子ドットの第2有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、前記混合溶液を撹拌し、前記量子ドットの前記第2有機リガンドを、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む量子ドットの製造方法を提供する。
【0014】
さらに他の具現例によって、金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液を製造する段階と、第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液を提供する段階と、金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液と、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、前記混合溶液を撹拌し、前記量子ドットの前記第1有機リガンドを、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む量子ドットの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、量子ドットの有機リガンドを、金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の無機リガンドで交換することによって、量子ドットの電気的特性を向上させることができ、量子ドット製造の時、ヒドラジン以外の溶媒を使うことにより、低い毒性で、かつ安全な方法で、無機リガンドを有する量子ドットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一具現例による無機リガンドを有する量子ドットを概略的に図示した図面である。
【図2A】従来の有機リガンドを有する量子ドットの電子エネルギーを図示したエネルギーダイヤグラムである。
【図2B】一具現例による無機リガンドを有する量子ドットの電子エネルギーを図示したエネルギーダイヤグラムである。
【図3】一具現例による無機リガンドを有する量子ドットの製造方法を概念的に図示した図面である。
【図4】一具現例による金属カルコゲナイドヒドラジン水和物リガンドを有する量子ドットの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】他の具現例による金属カルコゲナイドヒドラジン水和物リガンドを有する量子ドットの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】さらに他の具現例による金属カルコゲナイドヒドラジン水和物リガンドを有する量子ドットの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】実施例1のリガンドの交換前後の量子ドットのFTIR(fourier transform infrared spectroscopy)スペクトルである。
【図8】実施例2のリガンドの交換前後の量子ドットのFTIRスペクトルである。
【図9】実施例3のリガンドの交換前後の量子ドットのFTIRスペクトルである。
【図10】実施例3のリガンド交換後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットの発光(PL)スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で量子ドット(quantum dot)というのは、1nm以上、数十nm範囲の大きさを有する粒子で構成された単物質半導体又は化合物半導体を意味する。本明細書の量子ドットは、コアシェル構造を有することができ、コア及びシェルのそれぞれは、1以上の層からなってもよい。例えば、コア−シェル−シェル構造を有することができる。
【0018】
本明細書で、相転移(phase transfer)というのは、溶媒抽出(solvent extraction)の場合のように、2個の液相(liquid phase)が界面をなしている状態で、第1液相内で第1リガンドを有する量子ドットが、液相の界面で第2液相内の第2リガンド化合物でリガンド交換を行いつつ、第2液相に転移される現象を意味する。従って、相転移後に量子ドットは、第2液相内に存在して第2リガンドを有することになる。
【0019】
一方、本明細書で量子ドットのリガンドは、単一化合物でもあるが、2種以上の化合物からなってもよい。
【0020】
以下で、一具現例による無機リガンドを有する量子ドットについて詳細に説明する。
【0021】
図1は、一具現例による無機リガンドを有する量子ドット30を概略的に図示した図面である。図1を参照すれば、無機リガンドを有する量子ドット30は、半導体物質からなる量子ドット10、及び量子ドット10の表面にパッシベーションされている金属カルコゲナイド化合物(MCC)のヒドラジン水和物(MCC hydrazine hydrate)23からなっている。
【0022】
量子ドット10の半導体物質は、例えば、II−VI族半導体化合物、III−V族半導体化合物、IV−VI族半導体化合物、IV族元素又は化合物、又はそれらの組み合わせからなってもよい。II−VI族半導体化合物は、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe又はそれらの組み合わせの二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe又はそれらの組み合わせの三元素化合物;CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe又はそれらの組み合わせの四元素化合物であってもよい。III−V族半導体化合物は、例えば、GaN、GaP、GaAS、GaSB、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb又はそれらの組み合わせの二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP又はそれらの組み合わせの三元素化合物;GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb又はそれらの組み合わせの四元素化合物であってもよい。前記IV−VI族半導体化合物は、例えば、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe又はそれらの組み合わせの二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe又はそれらの組み合わせの三元素化合物;SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe又はそれらの組み合わせの四元素化合物であってもよい。前記IV族元素又は化合物は、例えばSi、Ge、SiC、SiGe又はそれらの組み合わせであってもよい。量子ドット10は、コア−シェル構造を有することができる。このとき、コア及びシェルのそれぞれは、単一層又は2以上の層からなってもよい。例えば、量子ドット10は、コア−シェル−シェル構造を有することができ、例えば、CdSe/CdS/ZnSからなってもよい。
【0023】
金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物(MCCヒドラジン水和物)23は、量子ドット10の表面に配位結合されている。金属カルコゲナイド化合物は、Sn2S6、Sn2Se6、In2Se4、In2Te3、Ga2Se3、CuInSe2、Cu7S4、Hg3Se4、Sb2Te3又はZnTeを含んでもよい。ヒドラジン水和物は、モノ水和物(monohydrate)、二水和物(dihydrate)、三水和物(trihydrate)、四水和物(tetrahydrate)、五水和物(pentahydrate)又は六水和物(hexahydrate)を含んでもよい。
【0024】
一方、他の具現例により、前述の無機リガンドを有する量子ドット30をエタノールアミン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はホルムアミドの溶媒に溶解させた量子ドット溶液を提供することができる。
【0025】
図2Aは、従来の有機リガンドを有する量子ドットの電子エネルギーを図示したエネルギーダイヤグラムであり、図2Bは、一具現例による無機リガンドを有する量子ドットの電子エネルギーを図示したエネルギーダイヤグラムである。図2Aを参照すれば、コア11とシェル12とからなる量子ドット10、及び量子ドット10表面の有機リガンド21から構成される従来の有機リガンドを有する量子ドット20は、有機リガンド21のエネルギーレベルが、コア11及びシェル12のエネルギーレベルに比べてはるかに高い。一方、図2Bを参照すれば、コア11とシェル12とからなる量子ドット10、及び量子ドット10表面の無機リガンド23から構成される一具現例による無機リガンドを有する量子ドット30は、無機リガンド23のエネルギーレベルが、シェル12のエネルギーレベルより低い。量子ドット30の無機リガンド23のエネルギーレベルが低くなることにより、従来有機リガンドで生ずる高いエネルギー障壁(energy barrier)をなくすことができ、従って、量子ドット30の電気伝導度が向上する。
【0026】
以下、具現例による無機リガンドを有する量子ドットの製造方法について詳細に説明する。
【0027】
図3は、一具現例による無機リガンドを有する量子ドットの製造方法を概念的に図示した図面である。図3を参照すれば、量子ドット10をパッシベーションしている有機リガンド21を、無機リガンド23で交換することにより、無機リガンドを有する量子ドットを製造することができる。無機リガンド23は、金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物であってもよい。リガンドの交換は、有機リガンドを有する量子ドットが存在する溶液と、無機リガンド化合物が存在する溶液との間で、量子ドットの相転移を介して行われる。又は、リガンドの交換は、有機リガンドを有する量子ドットと、過剰量の無機リガンド化合物とが存在する共通する溶媒内でもなされる。
【0028】
図4は、一具現例による金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物(MCCヒドラジン水和物)リガンドを有する量子ドットの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0029】
図4を参照すれば、MCCヒドラジン水和物溶液(溶液A)を製造する(S110)。MCCヒドラジン水和物は、金属カルコゲナイド化合物と、ヒドラジン水和物とが結合されている化合物であり、MCCヒドラジン水和物溶液は、MCCヒドラジン水和物を含む溶液である。これのために、まずに、カルコゲン元素(S、Se又はTe)の粉末を、ヒドラジン水和物(N2H4・NH2O)溶液に溶かし、カルコゲンヒドラジン水和物溶液を製造する。例えば、硫黄(S)粉末をヒドラジンモノ水和物溶液に溶かし、硫黄ヒドラジンモノ水和物溶液を製造することができる。一方、ヒドラジンモノ水和物溶液の代わりに、ヒドラジン二水和物、ヒドラジン三水和物、ヒドラジン四水和物、ヒドラジン五水和物又はヒドラジン六水和物のようなヒドラジン多水和物溶液を使うことができる。
【0030】
次に、前記カルコゲンヒドラジン水和物溶液に金属粉末を添加して反応させる。前記金属は、単一金属又は金属化合物を含んでもよい。例えば、前記金属は、Sn、Ga、Cu2S、GeS、Sb2Se3、Sb2Te3、In2Se3、ZnTe、In2Te3などを含んでもよい。前記金属粉末と共に、ヒドラジン水和物溶液をさらに添加することができる。反応温度は、常温乃至200℃の範囲であってもよい。ヒドラジン水和物は、強い還元剤であるので、ヒドラジン水和物溶液内で、金属カルコゲナイド化合物(MCC)が合成される。また、ヒドラジン水和物溶液内で、金属カルコゲナイド化合物(MCC)は、ヒドラジン水和物と結合され、MCCヒドラジン水和物になってもよい。MCCヒドラジン水和物は、MCCヒドラジンモノ水和物、MCCヒドラジン二水和物、MCCヒドラジン三水和物、MCCヒドラジン四水和物、MCCヒドラジン五水和物、MCCヒドラジン六水和物又はそれらの混合物であってもよい。一方、ヒドラジン水和物溶液は、ヒドラジンより毒性(toxicity)が弱くて爆発性がないので、金属カルコゲナイド化合物の合成に安全に使われる。
【0031】
前記反応溶液からの反応後、残った沈殿物を、例えば、遠心分離(centrifugation)によって除去し、MCCヒドラジン水和物溶液(溶液A)を製造する。本具現例で、MCCヒドラジン水和物溶液の溶媒は、ヒドラジン水和物である。例えば、Sn2S6、Sn2Se6、In2Se4、In2Te3、Ga2Se3、CuInSe2、Cu7S4、Hg3Se4、Sb2Te3又はZnTeのヒドラジンモノ水和物溶液を製造することができる。
【0032】
一方、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を提供する(S120)。第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液は、第1有機リガンドを有する量子ドットが、第1有機溶媒に溶解又は分散している溶液である。量子ドットは、例えば、II−VI族半導体化合物、III−V族半導体化合物、IV−VI族半導体化合物、IV族元素又は化合物、又はそれらの組み合わせからなってもよい。II−VI族半導体化合物は、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe又はそれらの組み合わせの二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe又はそれらの組み合わせの三元素化合物;CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe又はそれらの組み合わせの四元素化合物であってもよい。III−V族半導体化合物は、例えば、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb又はそれらの組み合わせの二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP又はそれらの組み合わせの三元素化合物;GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb又はそれらの組み合わせの四元素化合物であってもよい。前記IV−VI族半導体化合物は、例えば、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe又はそれらの組み合わせの二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe又はそれらの組み合わせの三元素化合物;SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe又はそれらの組み合わせの四元素化合物であってもよい。前記IV族元素又は化合物は、例えば、Si、Ge、SiC、SiGe又はそれらの組み合わせであってもよい。例えば、量子ドットは、CdSe/CdS/ZnSからなってもよい。
【0033】
量子ドットは、第1有機溶液内でコロイド形態で分散しており、第1有機リガンドが、量子ドットの表面に配位結合されている。すなわち、量子ドットが、有機リガンドでパッシベーションされている。前記第1有機リガンドは、例えば、TOP(trioctylphosphine)、TOPO(trioctylphosphine oxide)、オレイン酸(oleic acid)、オレイルアミン(oleylamine)、オクチルアミン(octylamine)、トリオクチルアミン(trioctyl amine)、ヘキサデシルアミン(hexadecylamine)、オクタンチオール(octanethiol)、ドデカンチオール(dodecanethiol)、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、オクチルホスフィン酸(OPA)又はそれらの混合物を含んでもよいが、それらに限定される限りではない。前記第1有機溶液の第1溶媒は、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、クロロホルム、トルエン、オクタン、クロロベンゼン又はそれらの混合物を含んでもよいが、それらに限定される限りではない。一方、第1溶媒は、第1有機リガンドと同一の化合物であってもよい。
【0034】
MCCヒドラジン水和物溶液(溶液A)に、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を混合し、量子ドットの第1有機リガンドを、MCCヒドラジン水和物リガンドで交換する(S130)。このために、ヒドラジン水和物溶液に、MCCヒドラジンモノ水和物溶液(溶液A)を添加し、ここに、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を添加する。ヒドラジン水和物溶液は、ヒドラジンモノ水和物、ヒドラジン二水和物、ヒドラジン三水和物、ヒドラジン四水和物、ヒドラジン五水和物、ヒドラジン六水和物又はそれらの混合物であってもよい。前記混合溶液は、上部の第1有機溶液層と、下部のヒドラジン水和物層とに相分離(phase separation)される。上部の第1有機溶液層は、第1有機リガンド量子ドットを含んでおり、下部のヒドラジン水和物層は、過剰量の金属カルコゲナイド化合物を含んでいる。前記混合溶液の撹拌によって、第1有機溶液層内の量子ドットが、ヒドラジン水和物層に移動しつつ、量子ドットをパッシベーションしている有機リガンドが、MCCリガンドに交換される。撹拌温度は、常温乃至200℃の範囲であってもよい。このように、量子ドットが2つの溶媒の間で相転移を行うことにより、量子ドットのリガンド交換が起こり、MCCリガンドでパッシベーションされた半導体化合物の量子ドットを製造することができる。
【0035】
図5は、他の一具現例によるMCCヒドラジン水和物リガンドを有する量子ドットの製造方法について説明するためのフローチャートである。本具現例は、金属MCCヒドラジン水和物溶液の溶媒を変換し、量子ドットの有機リガンドを新たな有機リガンドで交換し、次に、量子ドット溶液の溶媒を変換する点で、図4で示される具現例と違いがある。
【0036】
図5を参照して、MCCヒドラジン水和物溶液(溶液A)を製造する(S211)。この過程は、図4の具現例に関連して説明したMCCヒドラジン水和物溶液の製造過程(S110)と同一である。
【0037】
次に、MCCヒドラジン水和物溶液(溶液A)から、MCCヒドラジン水和物を分離する(S212)。前述のように、MCCヒドラジン水和物は、金属カルコゲナイド化合物(MCC)と、ヒドラジン水和物とが結合されている化合物である。例えば、溶液Aに対し、窒素ガスなどをブローイングしてヒドラジン水和物溶媒を乾燥、蒸発させることにより、MCCヒドラジン水和物を分離することができる。又は、例えば、前記溶液に、メタノール、エタノール、ブタノール又はアセトニトリルのような、金属カルコゲナイド化合物を溶かさない非溶媒(non-solvent)を過量に添加した後、前記溶液を遠心分離してMCCヒドラジン水和物を分離することができる。
【0038】
分離したMCCヒドラジン水和物を、第2の有機溶液に分散させ、MCCヒドラジン水和物の第2有機溶液(溶液C)を製造する(S213)。MCCヒドラジン水和物の第2有機溶液は、MCCヒドラジン水和物が、第2有機溶媒に溶解されている溶液である。第2有機溶液は、金属カルコゲナイド化合物(MCC)と量子ドットとをいずれも溶解(分散)させることができる有機溶媒を使うことができる。第2有機溶液は、例えば、エタノールアミン、DMSO、DMF又はホルムアミドなどのような極性を有する有機溶媒を使うことができる。
【0039】
一方、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を提供する(S221)。この過程は、図4の具現例に関連して説明した第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液の提供過程(S121)と同一である。
【0040】
次に、相転移によって、量子ドットの第1有機リガンドを、第2有機リガンドで交換する(S222)。リガンド交換のために、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を、過量の第2有機リガンドを含む第3有機溶液に添加して撹拌する。第2有機リガンドは、MCCヒドラジン水和物を溶解(分散)させることができる第2有機溶媒に溶解されるリガンドであってもよい。第2有機リガンドは、例えば、メルカプトプロピオン酸(MPA)、システアミン(cysteamine)又はメルカプト酢酸(mercapto acetic acid)などのような極性を有するリガンドを使うことができる。第3有機溶液は、例えば、クロロホルム、クロロベンゼンなどを使うことができる。過量の第2有機リガンドを含む第3有機溶液内で、量子ドットの第1有機リガンドが平衡反応によって、第2有機リガンドに交換される。第2有機リガンドは、第2有機溶媒及び第3有機溶媒いずれにも溶解される。第2有機リガンドは、金属カルコゲナイド化合物と溶解された第2有機溶媒に溶解されるので、同種溶媒内での量子ドットのリガンド交換を可能にする。
【0041】
第2有機リガンドを有する量子ドットを第2有機溶液内に分散させ、第2有機リガンド量子ドットの第2有機溶液(溶液D)を製造する(S223)。第2有機リガンド量子ドットの第2有機溶液は、第2有機リガンドを有する量子ドットが、第2有機溶媒に溶解又は分散している溶液である。このために、まず、第2有機リガンドを有する量子ドットを第3有機溶液から分離させる。例えば、第2有機リガンドを有する量子ドットを含む第3有機溶液を遠心分離し、量子ドットを沈澱させて分離することができる。そして、分離した量子ドットを、S213段階で、金属カルコゲナイド化合物を分散(溶解)させた第2有機溶液と同一の有機溶液に分散させ、第2有機リガンド量子ドットの第2有機溶液(溶液D)を製造する。
【0042】
MCCヒドラジン水和物の第2有機溶液(溶液C)に、第2有機リガンド量子ドットの第2有機溶液(溶液D)を混合し、量子ドットの第2有機リガンドを、MCCヒドラジン水和物のリガンドで交換する(S230)。溶液Cと溶液Dとの混合溶液は、溶媒が同一であるので、相分離が発生しない。相分離が起きないので、ヒドラジン水和物溶液と第1有機溶液との界面で、副産物(byproduct)が発生せず、量子ドットのリガンド交換時に、副産物による量子ドット表面の損傷を防止することができる。また、ヒドラジン水和物溶液自体が、量子ドットの発光効率を低下させるが、ヒドラジン水和物溶液が存在しないので、量子ドットの発光効率の低下を防止することができる。
【0043】
前記混合溶液を撹拌し、量子ドットをパッシベーションしている第2有機リガンドを、MCCヒドラジン水和物リガンドで交換させることができる。撹拌温度は、常温乃至200℃範囲であってもよい。混合溶液を撹拌すれば、第2有機溶液内の量子ドットをパッシベーションしている第2有機リガンドが、同一の溶液内のMCCヒドラジン水和物リガンドに交換される。このように、同種溶媒内でのリガンドの交換によって、MCCヒドラジン水和物リガンドでパッシベーションされた半導体化合物の量子ドットを製造することができる。
【0044】
本具現例は、同種の有機溶媒を使うので、互いに異なる溶媒間の界面での副反応が抑制される。本具現例はまた、溶媒間に相分離が起きなければならない条件(例えば、溶媒の極性程度、比重などの選択)が要求されないので、多様な有機溶液の中に溶けている量子ドットに適用することができる。
【0045】
図6は、さらに他の一具現例によるMCCヒドラジン水和物リガンドを有する量子ドットの製造方法について説明するためのフローチャートである。本具現例は、MCCヒドラジン水和物溶液の溶媒を変換する点で図4と係わる具現例と違いがある。一方、本具現例は、量子ドットの表面改質と、量子ドット溶液の溶媒変換とを経ない点で、図5に関連する具現例と違いがある。
【0046】
図6を参照すれば、MCCヒドラジン水和物溶液(溶液A)を製造する(S311)。次に、MCCヒドラジン水和物(溶液A)から、MCCヒドラジン水和物を分離する(S312)。そして、分離されたMCCヒドラジン水和物を第2の有機溶液に分散させ、MCCヒドラジン水和物の第2有機溶液(溶液C)を製造する(S313)。S311,S312及びS313段階のそれぞれは、図5の具現例に関連して説明したS211,S212及びS213段階と同一である。ただ、第2有機溶液は、MCCヒドラジン水和物及び第1有機リガンドを有する量子ドットいずれも溶解させる必要はなく、MCCヒドラジン水和物で表面が改質された量子ドットを溶解させることができればよい。
【0047】
一方、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を提供する(S321)。この過程は、図4の具現例に関連して説明した第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液の提供過程(S121)と同一である。本具現例では、図5の具現例と異なり、量子ドットの第1有機リガンドを新たな有機リガンドで交換し、量子ドット溶液の溶媒を変換する過程を経ない。
MCCヒドラジン水和物の第2有機溶液(溶液C)に、第1有機リガンド量子ドットの第1有機溶液(溶液B)を混合し、量子ドットの第1有機リガンドを、MCCヒドラジン水和物のリガンドで交換する(S330)。溶液Cと溶液Bは、溶媒が互いに異なり、混合した溶液で相分離が発生することがある。例えば、溶液Cは、極性溶媒を使い、溶液Bは、非極性溶媒を使い、2つの溶液間に相分離が発生し得る。前記混合溶液を撹拌し、量子ドットをパッシベーションしている第1有機リガンドを、MCCヒドラジン水和物リガンドで交換させることができる。撹拌によって、第1有機溶液層内の量子ドットが、第2有機溶液層に移動しつつ、量子ドットをパッシベーションしている第1有機リガンドが、MCCヒドラジン水和物リガンドに交換される。撹拌温度は、常温乃至200℃の範囲であってもよい。このように、異種溶媒内のリガンドの交換によって、MCCヒドラジン水和物でパッシベーションされた半導体化合物の量子ドットを製造することができる。
【0048】
本具現例では、余分の第1有機リガンド及び不完全なリガンド交換反応により、2つの異種溶媒間の界面で、不純物が発生することがあるが、不純物の発生量が、ヒドラジン水和物溶液と第1有機溶媒との界面で発生する副産物よりさらに少ない。ヒドラジン水和物溶液は、強い還元剤としての性質によって、量子ドットの表面に影響を与え、不純物が発生し得るためである。また、ヒドラジン水和物溶液によって、量子ドットの発光効率の低下を防止することができる。一方、本具現例の量子ドット製造は、量子ドットの第1リガンドの第2リガンドへの交換が必要ではなく、リガンド交換反応に起因する発光効率の低下が現れず、全体的な反応工程数が減って反応が早くて容易である。
【0049】
実施例1
(a)Sn2S6ヒドラジンモノ水和物溶液の製造
10mlのヒドラジンモノ水和物溶液に、0.32g(10mmol)の硫黄(S)粉末を溶かし、1Mの硫黄ヒドラジンモノ水和物溶液を製造した。前記1Mの硫黄ヒドラジンモノ水和物溶液3mlと、ヒドラジンモノ水和物溶液1mlとを混ぜた溶液に、120mg(1mmol)のスズ(Sn)粉末を添加して反応させた。反応は、常温で行われ、約1時間ほど撹拌した。遠心分離によって、前記反応溶液からの反応後に残った沈殿物を除去し、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物溶液を製造した。Sn2S6ヒドラジンモノ水和物溶液は、溶液内に、Sn2S6と、ヒドラジンモノ水和物とが結合されたSn2S6ヒドラジンモノ水和物を含んでいる。
【0050】
(b)CdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液の準備
CdSe/CdS/ZnS量子ドットを、シクロヘキサン溶液に分散(溶解)させた5mg/ml濃度のCdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液を準備した(準備方法は、Advanced materials,2007,19,1927−1932参照)。CdSe/CdS/ZnS量子ドットは、CdSeコア/CdS内側シェル/ZnS外側シェルの構造を有する。また、CdSe/CdS/ZnS量子ドットの表面は、オレイン酸、TOP、TOPO及びトリオクチルアミンの混合有機リガンドが配位結合している。
【0051】
(c)CdSe/CdS/ZnS量子ドットのリガンド交換
2mlのヒドラジンモノ水和物溶液に、(a)段階のSn2S6ヒドラジンモノ水和物溶液25μlを添加し、ここに、(b)段階のCdSe/CdS/ZnS量子ドットを含むシクロヘキサン溶液2mlを添加した。結果物である混合溶液は、上部のシクロヘキサン層と、下部のヒドラジンモノ水和物層とに相分離された。前記シクロヘキサン層は、CdSe/CdS/ZnS量子ドットを含んでおり、前記ヒドラジンモノ水和物層は、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドを含んでいる。
【0052】
相分離された前記混合溶液を、室温で72時間撹拌した。撹拌後、CdSe/CdS/ZnS量子ドットが、上部のシクロヘキサン層から下部のヒドラジンモノ水和物層に移動した。CdSe/CdS/ZnS量子ドットのシクロヘキサン層から、ヒドラジンモノ水和物層に移動しつつ、CdSe/CdS/ZnS量子ドット表面の混合有機リガンドが、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドに交換された。
【0053】
図7は、実施例1のリガンドの交換前後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットのFTIR(fourier transform infrared spectroscopy)スペクトルである。図7で、リガンド交換前の量子ドットは、混合有機リガンドを有するCdSe/CdS/ZnS量子ドットであり、リガンド交換後の量子ドットは、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドへの交換反応後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットである。それぞれの量子ドットの粉末に対して、FTIRスペクトルを測定した。
【0054】
図7を参照すれば、リガンド交換前量子ドットのFTIRスペクトルでは、3000cm−1近辺のC−Hストレッチングから起因するピーク、1500cm−1近辺のC=Oストレッチングから起因するピーク、及びC−Hベンド(bend)から起因するピークが存在する。これらピークから、リガンド交換前量子ドットは、有機リガンドを有する量子ドットであるということを確認することができる。一方、リガンド交換後量子ドットのFTIRスペクトルでは、前記ピークが消え、これにより、CdSe/CdS/ZnS量子ドットの有機リガンドが、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドに交換されたことが分かる。
【0055】
一方、実施例1のリガンド交換後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットの発光強度が、リガンド交換前のCdSe/CdS/ZnS量子ドットの約25%レベルで低下した。かようなCdSe/CdS/ZnS量子ドットの発光強度の低下は、ヒドラジンモノ水和物層とシクロヘキサン層との界面で副産物が発生しつつ、量子ドットリガンド交換時に、量子ドットの表面に損傷を与えたためでると見られる。また、ヒドラジンモノ水和物自体も、量子ドット発光効率を低下させる。
【0056】
実施例2
(a)Sn2S6ヒドラジンモノ水和物エタノールアミン溶液の製造
実施例1と同一の方法で、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物溶液を製造した。前記Sn2S6ヒドラジンモノ水和物溶液をN2ガスで乾燥させ、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物だけ残してヒドラジンモノ水和物溶液を除去した。分離したSn2S6ヒドラジンモノ水和物をエタノールアミン溶液に溶かし、16mg/ml濃度のSn2S6ヒドラジンモノ水和物エタノールアミン溶液を製造した。
【0057】
(b)CdSe/CdS/ZnS量子ドットエタノールアミン溶液の製造
実施例1と同一の方法で、10mg/ml濃度のCdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液を準備した。前記CdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液2mlを、2Mのメルカプトプロピオン酸溶液18mlに添加した後、80℃の温度で3時間撹拌して反応させた。反応によって、CdSe/CdS/ZnS量子ドット表面の混合有機リガンドを、MPAリガンドで交換させた。次に、MPAリガンドに交換されたCdSe/CdS/ZnS量子ドットを、遠心分離を介して沈澱させた。沈澱されたCdSe/CdS/ZnS量子ドットをエタノールアミンに再分散(再溶解)させ、10mg/ml濃度のCdSe/CdS/ZnS量子ドットエタノールアミン溶液を製造した。
【0058】
(c)CdSe/CdS/ZnS量子ドットのリガンド交換
(a)段階で製造されたSn2S6ヒドラジンモノ水和物エタノールアミン溶液0.2mlを、(b)段階で製造された前記CdSe/CdS/ZnS量子ドットエタノールアミン溶液2mlに添加した後、常温で8時間撹拌しつつリガンド交換反応を行った。
【0059】
図8は、実施例2のリガンドの交換反応前後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットのFTIRスペクトルである。リガンドの交換前量子ドットは、MPAリガンドを有するCdSe/CdS/ZnS量子ドットであり、リガンドの交換後量子ドットは、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドへの交換反応後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットである。それぞれの量子ドットの粉末に対して、FTIRスペクトルを測定した。
【0060】
図8のグラフを参照すれば、リガンド交換前量子ドットのFTIRスペクトルでは、3000cm−1近辺のC−Hストレッチングから起因するピークと、1500cm−1近辺のC=Oストレッチングから起因するピークとが存在する。しかし、リガンド交換後量子ドットのFTIRスペクトルでは、これらピークがいずれも消えた。これにより、CdSe/CdS/ZnS量子ドットのMPAリガンドが、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドに交換されたことが分かる。
【0061】
一方、実施例2のリガンド交換後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットの発光強度が、混合有機リガンドを有するCdSe/CdS/ZnS量子ドットの約60%レベルに低下した。かようなCdSe/CdS/ZnS量子ドットの発光強度の低下は、CdSe/CdS/ZnS量子ドットのリガンドをMPAで交換する過程、及びMPAからSn2S6ヒドラジンモノ水和物へのリガンド交換過程で、発光量子収率の低下が起こるためであると見られる。
【0062】
実施例3
(a)Sn2S6エタノールアミン溶液の製造
実施例2と同一の方法で、16mg/ml濃度のSn2S6ヒドラジンモノ水和物エタノールアミン溶液を製造した。
【0063】
(b)CdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液の準備
実施例1と同一の方法で、10mg/ml濃度のCdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液を準備した。
【0064】
(c)CdSe/CdS/ZnS量子ドットのリガンド交換
(a)段階で製造されたSn2S6エタノールアミン溶液0.2mlを、2mlエタノールアミンに添加した。(b)段階のCdSe/CdS/ZnS量子ドットシクロヘキサン溶液0.2mlを、2mlシクロヘキサン溶液に添加した後、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物エタノールアミン溶液と混ぜ、常温で8時間撹拌しつつ、リガンド交換反応を行った。
【0065】
図9は、実施例3のリガンドの交換前後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットのFTIRスペクトルである。リガンドの交換前量子ドットは、混合有機リガンドを有するCdSe/CdS/ZnS量子ドットであり、リガンド交換後量子ドットは、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドへの交換反応後のCdSe/CdS/ZnS量子ドットである。それぞれの量子ドットの粉末に対して、FTIRスペクトルを測定した。
【0066】
図9を参照すれば、リガンド交換前量子ドットのFTIRスペクトルでは、C−Hストレッチングから起因する3000cm−1の近辺のピークと、C=Oストレッチングから起因する1500cm−1の近辺のピークとが存在する。しかし、リガンド交換後量子ドットのFTIRスペクトルでは、これらピークが非常に微弱に存在する。これにより、CdSe/CdS/ZnS量子ドットの混合有機リガンドが、Sn2S6ヒドラジンモノ水和物リガンドに交換されたことが分かる。
【0067】
一方、以上の実施例は、ヒドラジンモノ水和物の代わりに、ヒドラジン二水和物、ヒドラジン三水和物のような他のヒドラジン水和物を使った場合にも、同一の反応が可能であった。
【0068】
図10は、実施例3のCdSe/CdS/ZnS量子ドットのリガンド交換後の発光(PL)スペクトルである。リガンド交換後の発光スペクトルは、エタノールアミンに溶解(分散)されたSn2S6ヒドラジン水和物リガンドを有するCdSe/CdS/ZnS量子ドットに対して測定した。図10を参照すれば、リガンド交換後のSn2S6リガンドCdSe/CdS/ZnS量子ドットの発光量子収率(QY)は、68%であった。一方、従来のヒドラジン溶媒を使って製造した無機リガンドCdSe/ZnSコア/シェル量子ドットは、有機リガンドを有する同一な量子ドットに比べて約40〜50%ほどの発光強度低下を示し、発光量子収率が35〜41%である(J.Am.Chem.Soc.,2010,132(29),pp.10085−10092参照)。実施例3のSn2S6ヒドラジン水和物リガンドを有するCdSe/CdS/ZnS量子ドットの量子収率は、前記論文の無機リガンドCdSe/ZnSコア/シェル量子ドットの発光量子収率よりさらに高い。かような量子収率の上昇は、ヒドラジン水和物溶媒が、Sn2S6ヒドラジン水和物リガンドの量子ドット製造に直接的な影響を与えないことにより、発光効率が高まるためであると思われる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の無機リガンドを有する量子ドット及びその製造方法は、例えば、素材関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 量子ドット
11 コア
12 シェル
20 有機リガンドを有する量子ドット
21 有機リガンド
23 無機リガンド
30 無機リガンドを有する量子ドット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体物質を含む量子ドットと、
前記量子ドットの表面上のヒドラジン水和物を含む無機リガンドと、を含む量子ドット。
【請求項2】
前記無機リガンドは、Sn2S6、Sn2Se6、In2Se4、In2Te3、Ga2Se3、CuInSe2、Cu7S4、Hg3Se4、Sb2Te3又はZnTeのヒドラジン水和物を含む金属カルコゲナイド化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項3】
前記ヒドラジン水和物は、モノ水和物、二水和物、三水和物、四水和物、五水和物、六水和物又はそれらの混合物を含む無機リガンドを有することを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項4】
前記量子ドットは、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe;GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb;SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe;Si、Ge、SiC、SiGe又はそれらの2以上の組み合わせを含む無機リガンドを有することを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項5】
前記量子ドットは、コア−シェル構造又はコア−シェル−シェル構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の量子ドットと、
前記量子ドットを溶解させている溶媒と、を含むが、前記溶媒は、エタノールアミン、DMSO(dimethyl sulfoxide)、DMF(dimethylformamide)又はホルムアミドを含む無機リガンドを有する、量子ドットの溶液。
【請求項7】
金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を製造する段階と、
第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液を提供する段階と、
前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液と、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、
前記混合溶液を撹拌し、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの前記第1有機リガンドを、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む、量子ドットの製造方法。
【請求項8】
前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を製造する段階は、カルコゲン粉末を溶解させたカルコゲンヒドラジン水和物溶液に、金属の粉末を添加して反応させる段階を含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項9】
前記金属カルコゲナイド化合物は、Sn2S6、Sn2Se6、In2Se4、In2Te3、Ga2Se3、CuInSe2、Cu7S4、Hg3Se4、Sb2Te3又はZnTeを含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項10】
前記第1有機リガンドは、TOP(trioctylphosphine)、TOPO(trioctylphosphine oxide)、オレイン酸、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、オクチルホスフィン酸(OPA)又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項11】
前記第1有機溶液は、シクロヘキサン、ヘキサン、クロロホルム、トルエン、オクタン、クロロベンゼン又はそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項12】
前記量子ドットは、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe;GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb;SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe;Si、Ge、SiC、SiGe又はそれらの2以上の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項13】
前記混合溶液は、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液層と、前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液層とに、相分離されることを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項14】
前記量子ドットは、コア−シェル構造又はコア−シェル−シェル構造を有することを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項15】
前記ヒドラジン水和物は、ヒドラジンモノ水和物、ヒドラジン二水和物、ヒドラジン三水和物、ヒドラジン四水和物、ヒドラジン五水和物又はヒドラジン六水和物を含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項16】
金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液を製造する段階と、
第2有機リガンドを有する量子ドットの第2有機溶液を提供する段階と、
前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液と、前記第2有機リガンドを有する量子ドットの第2有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、
前記混合溶液を撹拌し、前記量子ドットの前記第2有機リガンドを、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む、量子ドットの製造方法。
【請求項17】
前記金属カルコゲナイド化合物は、Sn2S6、Sn2Se6、In2Se4、In2Te3、Ga2Se3、CuInSe2、Cu7S4、Hg3Se4、Sb2Te3又はZnTeを含むことを特徴とする、請求項16に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項18】
前記量子ドットは、II−VI族半導体化合物、III−V族半導体化合物、IV−VI族半導体化合物又はIV族元素又は化合物を含むことを特徴とする、請求項16に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項19】
前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液を製造する段階は、
金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を製造する段階と、
前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液から、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物を分離する段階と、
分離された前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物を、前記第2有機溶媒に分散させる段階と、を含むことを特徴とする、請求項16に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項20】
前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液からb前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物が分離する段階はb前記ヒドラジン水和物溶液を乾燥、蒸発させるか、あるいは前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を遠心分離する段階を含むことを特徴とする、請求項19に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項21】
前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を遠心分離する段階は、BuOH又はアセトニトリルを添加する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項22】
前記第2有機媒液は、エタノールアミン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はホルムアミドを含むことを特徴とする、請求項19に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項23】
前記第2有機リガンドは、メルカプトプロピオン酸(MPA)、システアミン又はメルカプト酢酸を含むことを特徴とする、請求項19に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項24】
前記ヒドラジン水和物は、ヒドラジンモノ水和物、ヒドラジン二水和物、ヒドラジン三水和物、ヒドラジン四水和物、ヒドラジン五水和物又はヒドラジン六水和物を含むことを特徴とする、請求項19に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項25】
金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液を製造する段階と、
第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液を提供する段階と、
金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液と、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、
前記混合溶液を撹拌し、前記量子ドットの前記第1有機リガンドを、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む、量子ドットの製造方法。
【請求項26】
前記金属カルコゲナイド化合物は、Sn2S6、Sn2Se6、In2Se4、In2Te3、Ga2Se3、CuInSe2、Cu7S4、Hg3Se4、Sb2Te3又はZnTeを含むことを特徴とする、請求項25に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項27】
前記量子ドットは、II−VI族半導体化合物、III−V族半導体化合物、IV−VI族半導体化合物又はIV族元素又は化合物を含むことを特徴とする、請求項25に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項28】
前記第2有機溶液は、エタノールアミン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はホルムアミドを含むことを特徴とする、請求項25に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項29】
前記第1有機溶液は、シクロヘキサン、ヘキサン、クロロホルム、トルエン、オクタン又はクロロベンゼンを含むことを特徴とする、請求項25に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項1】
半導体物質を含む量子ドットと、
前記量子ドットの表面上のヒドラジン水和物を含む無機リガンドと、を含む量子ドット。
【請求項2】
前記無機リガンドは、Sn2S6、Sn2Se6、In2Se4、In2Te3、Ga2Se3、CuInSe2、Cu7S4、Hg3Se4、Sb2Te3又はZnTeのヒドラジン水和物を含む金属カルコゲナイド化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項3】
前記ヒドラジン水和物は、モノ水和物、二水和物、三水和物、四水和物、五水和物、六水和物又はそれらの混合物を含む無機リガンドを有することを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項4】
前記量子ドットは、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe;GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb;SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe;Si、Ge、SiC、SiGe又はそれらの2以上の組み合わせを含む無機リガンドを有することを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項5】
前記量子ドットは、コア−シェル構造又はコア−シェル−シェル構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の量子ドットと、
前記量子ドットを溶解させている溶媒と、を含むが、前記溶媒は、エタノールアミン、DMSO(dimethyl sulfoxide)、DMF(dimethylformamide)又はホルムアミドを含む無機リガンドを有する、量子ドットの溶液。
【請求項7】
金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を製造する段階と、
第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液を提供する段階と、
前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液と、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、
前記混合溶液を撹拌し、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの前記第1有機リガンドを、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む、量子ドットの製造方法。
【請求項8】
前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を製造する段階は、カルコゲン粉末を溶解させたカルコゲンヒドラジン水和物溶液に、金属の粉末を添加して反応させる段階を含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項9】
前記金属カルコゲナイド化合物は、Sn2S6、Sn2Se6、In2Se4、In2Te3、Ga2Se3、CuInSe2、Cu7S4、Hg3Se4、Sb2Te3又はZnTeを含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項10】
前記第1有機リガンドは、TOP(trioctylphosphine)、TOPO(trioctylphosphine oxide)、オレイン酸、オレイルアミン、オクチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘキシルホスホン酸(HPA)、テトラデシルホスホン酸(TDPA)、オクチルホスフィン酸(OPA)又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項11】
前記第1有機溶液は、シクロヘキサン、ヘキサン、クロロホルム、トルエン、オクタン、クロロベンゼン又はそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項12】
前記量子ドットは、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe;GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb;SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe;Si、Ge、SiC、SiGe又はそれらの2以上の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項13】
前記混合溶液は、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液層と、前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液層とに、相分離されることを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項14】
前記量子ドットは、コア−シェル構造又はコア−シェル−シェル構造を有することを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項15】
前記ヒドラジン水和物は、ヒドラジンモノ水和物、ヒドラジン二水和物、ヒドラジン三水和物、ヒドラジン四水和物、ヒドラジン五水和物又はヒドラジン六水和物を含むことを特徴とする、請求項7に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項16】
金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液を製造する段階と、
第2有機リガンドを有する量子ドットの第2有機溶液を提供する段階と、
前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液と、前記第2有機リガンドを有する量子ドットの第2有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、
前記混合溶液を撹拌し、前記量子ドットの前記第2有機リガンドを、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む、量子ドットの製造方法。
【請求項17】
前記金属カルコゲナイド化合物は、Sn2S6、Sn2Se6、In2Se4、In2Te3、Ga2Se3、CuInSe2、Cu7S4、Hg3Se4、Sb2Te3又はZnTeを含むことを特徴とする、請求項16に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項18】
前記量子ドットは、II−VI族半導体化合物、III−V族半導体化合物、IV−VI族半導体化合物又はIV族元素又は化合物を含むことを特徴とする、請求項16に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項19】
前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液を製造する段階は、
金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を製造する段階と、
前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液から、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物を分離する段階と、
分離された前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物を、前記第2有機溶媒に分散させる段階と、を含むことを特徴とする、請求項16に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項20】
前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液からb前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物が分離する段階はb前記ヒドラジン水和物溶液を乾燥、蒸発させるか、あるいは前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を遠心分離する段階を含むことを特徴とする、請求項19に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項21】
前記金属カルコゲナイド化合物のヒドラジン水和物溶液を遠心分離する段階は、BuOH又はアセトニトリルを添加する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項22】
前記第2有機媒液は、エタノールアミン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はホルムアミドを含むことを特徴とする、請求項19に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項23】
前記第2有機リガンドは、メルカプトプロピオン酸(MPA)、システアミン又はメルカプト酢酸を含むことを特徴とする、請求項19に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項24】
前記ヒドラジン水和物は、ヒドラジンモノ水和物、ヒドラジン二水和物、ヒドラジン三水和物、ヒドラジン四水和物、ヒドラジン五水和物又はヒドラジン六水和物を含むことを特徴とする、請求項19に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項25】
金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液を製造する段階と、
第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液を提供する段階と、
金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物の第2有機溶液と、前記第1有機リガンドを有する量子ドットの第1有機溶液とを混合し、混合溶液を形成する段階と、
前記混合溶液を撹拌し、前記量子ドットの前記第1有機リガンドを、前記金属カルコゲナイド化合物ヒドラジン水和物のリガンドで交換する段階と、を含む、量子ドットの製造方法。
【請求項26】
前記金属カルコゲナイド化合物は、Sn2S6、Sn2Se6、In2Se4、In2Te3、Ga2Se3、CuInSe2、Cu7S4、Hg3Se4、Sb2Te3又はZnTeを含むことを特徴とする、請求項25に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項27】
前記量子ドットは、II−VI族半導体化合物、III−V族半導体化合物、IV−VI族半導体化合物又はIV族元素又は化合物を含むことを特徴とする、請求項25に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項28】
前記第2有機溶液は、エタノールアミン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はホルムアミドを含むことを特徴とする、請求項25に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項29】
前記第1有機溶液は、シクロヘキサン、ヘキサン、クロロホルム、トルエン、オクタン又はクロロベンゼンを含むことを特徴とする、請求項25に記載の量子ドットの製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−89969(P2013−89969A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229160(P2012−229160)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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