説明

無機リン酸塩組成物および方法

酸性リン酸塩成分および塩基性酸化物/水酸化物成分の多成分無機リン酸塩配合物が開示され、記載される。また、スプレーコーティングに適した、その高固形分の噴霧可能な組成物も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸性リン酸塩成分および塩基性酸化物/水酸化物成分の多成分無機リン酸塩配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ、ポリエステル、ポリプロピレンおよびその他のポリマーで製造される有機合成材料は、複合材料、例えばファイバーボード、ガラス繊維複合材料、大理石および花崗岩カウンター甲板表面のシーラント、航空機、ボディーアーマーなどで広く使用されている。これらの樹脂は比較的高価であり、高い温室効果ガス強度を有し、可燃性である。それらの使用中にそれらから放出される揮発性有機化合物は、使用者に健康被害をもたらす。
【0003】
無機鉱物系樹脂を配合するための技術は存在しているが、これらは通常アルカリ金属アルミノケイ酸塩およびアルカリ金属ボロアルミノシリケートに基づく。これらの技術は、大部分、1種類の配合物に限られ、必ずしも広い範囲の配合物、特性および用途をもつ樹脂の製造を可能にするとは限らない。
【0004】
リン酸塩セラミックおよび、リン酸、または酸−リン酸塩と、金属酸化物との間の酸塩基反応により製造されるセラミックは、一般に公知である。これらの特許に開示される製品は、硬く、セメントもしくはセラミック、または両方の特性を再現するものである。
【0005】
迅速硬化組成物、例えばリン酸塩セラミックは、従来、滑らかなペイントのような仕上がりをもたらすために、表面にスプレーコート(および噴霧)することが困難であることが示されている。例えば、従来の水硬セメントは、スパッタリングコーティングされ得るが、スパッタリングされた塗料は、滑らかなペイントのような仕上がりをもたらすことができない。それは、高粘度の懸濁されていないマトリックスで良好な混合を得ることが困難であり、かかる塗料が、粒子状の表面テクスチャをもたらす傾向のある相当な量の未反応の前駆体材料を含有するためである。また、従来の水硬セメントをその均質性を改善するために長時間混合することは、一般に、スプレーコーティングの前または最中の混合物の硬化を招く。これらの従来の配合物中でさらなる凝集体を出発前駆体と使用することは、特に、かかる凝集体が約300メッシュよりも大きいサイズである場合に、滑らかなペイントのような仕上がりをもたらす問題を悪化させる。したがって、従来の水硬セメントは、それらが確実に噴霧可能であるようにうまく配合されたことはこれまでにない。
【0006】
リン酸塩セラミックに特有の別の問題は、塗付および硬化後にそれらが一般に半透明であることである。着色剤凝集体を噴霧可能なリン酸塩セラミック中に用いてこれらの配合物に色を与えることは、課題を提起する。あまりに少ない天然の鉱物凝集体(例えば、望ましくないテクスチャを回避するために)をこれらの配合物中に使用すると、一般に白色または弱く着色されて見え、そのために、たとえ従来の着色剤添加量よりも多くても許容できない塗料となる。高い添加量の固体および/またはより大きい凝集体をこれらの配合物中に使用することは、一般に、レオロジー的困難さおよび噴霧の困難さのために敬遠される。
【0007】
一方、より大きい凝集体(着色された砂凝集体などの大きな凝集体着色剤を含む)を用いる、テクスチャ加工された、噴霧可能なリン酸塩セラミック塗料は、これまで実現が困難であると示されていた。その理由の一つは、より大きな凝集体はスプレー/噴霧装置を詰まらせる可能性があり、組成物は大きな凝集体粒子を保持することができるように、しかし同時に凝集体が(例えば、垂直面または頭上表面を下に)移動する前に硬化することができるように配合されねばならないことである。対照的に、従来の非セラミックペイントは、一つには、それらがあまりに低い粘度を有するため、そしてそれらが硬化するには時間がかかりすぎるために、テクスチャリングおよび強調効果のための大きな凝集体を保持するには薄すぎる塗料を提供する。
【発明の概要】
【0008】
一般に、本明細書には、少なくとも1つの酸性リン酸塩の第1の成分および少なくとも1つのアルカリ性の第2の成分を含む、多成分配合物が開示され、前記第1および第2の成分は、組み合わせると同時に無機リン酸塩組成物を提供するのに適している。
【0009】
また、本明細書には、高強度および、製品を製造する際かつ/または既存の製品を改良する際に有用なその他の有用な特性を有する、商業用の実現可能な無機合成組成物を安価に製造するために必要な化学反応を実施するための技法が開示される。本明細書に開示される一態様は、長期の保存および輸送能力のある、化学的に安定した多成分無機リン酸塩前駆体を製造する方法に関する。本明細書に開示される1つの具体的な態様では、高強度の迅速硬化リン酸塩組成物を製造するために、無機リン酸塩前駆体溶液を改変する方法が開示される。本明細書に開示されるもう1つの具体的な態様では、低密度の結晶形態の減少した無機リン酸塩組成物が提供される。その他の実施形態は、耐火性の塗料として有用なベルリナイト(AlPO)相を含む材料への熱変換のための、無機リン酸塩組成物の製造のための方法に関する。一般に、本明細書に開示される態様には、環境に優しい技法を使用して、これらの無機リン酸塩前駆体および組成物の商業的生産において改良された効率をもたらす製造方法が含まれる。
【0010】
また、前記組成物をスプレーコーティングおよび/または噴霧するために配合される半透明のリン酸塩セラミックのテクスチャリングおよび/または着色に関連する上述の問題の解決策も本明細書に開示される。したがって、本発明の噴霧可能な無機リン酸塩前駆体組成物は、最大約30メッシュまたはそれよりも大きい凝集体を含み、かつ、比較的薄い厚さでスプレーされるが、なお凝集体を保持すると同時に、凝集体が塗付点から、例えば、壁を下ってまたは天井表面から、移動するか押し退けられるよりも十分に速く硬化することができる。そのようなスプレーコーティングされたリン酸塩セラミック組成物は、美しい色彩の、高強度の迅速硬化リン酸塩セラミック塗料を生じる。そのような組成物はまた、防蝕作用ももたらすことができ、かつ/またはポリマー塗料、例えばアクリル系またはウレタン系塗料などと組み合わせて下塗として使用することもできる。一態様では、前記リン酸塩スプレー塗料組成物は、金属表面、例えば、構造要素ならびに、自動車、列車、自転車、航空宇宙機、トラック、およびバスなどの輸送車両シャシへのスプレーコーティングに適している。
【0011】
本明細書に開示および記載される一部の前駆体成分および組成物は、リン酸またはリン酸塩溶液に基づく。特定の実施形態は、中性pHの水中の溶解度が制限されている酸化物および酸化鉱物である、溶解性の乏しい酸化物および溶解性の乏しい酸化鉱物を用いる。前駆体成分は、少なくとも1つの酸性リン酸塩成分(第1の成分)および少なくとも1つの塩基性酸化物/水酸化物成分(第2の成分)を含む。
【0012】
一態様では、溶液が約1.5〜約5のpHを有するように、第1の成分は、リン酸またはリン酸塩の水溶液として調製される。一態様では、pHが1.5より低い、かつ/または5よりも大きい第1の成分を含む水溶液は除外される。
【0013】
もう1つの態様では、第2の成分は、溶解性の乏しい酸化物、または溶解性の乏しい酸化鉱物を9〜14のpHの水溶液にゆっくり添加することにより調製される。
【0014】
さらにもう1つの態様では、溶解性の乏しい酸化物、または溶解性の乏しい水酸化物は、天然源に由来し、有効量の溶解性の乏しい酸化物をその水酸化物の形態で提供することができるように所望により変更されているブライン溶液の成分として提供される。例えば、有効量の水酸化マグネシウムを、場合により有効量の塩化物、オキシ塩化物、硫酸塩、およびオキシ硫酸塩とともに含むマグネシウムブラインが使用される。溶解性の乏しい酸化物であるそのような液体源をその水酸化物の形態で使用することにより、無機リン酸塩材料の調製において一般に用いられる粉末の個々の粒を良好に湿潤させることに関連する問題をなくす、または軽減することができ、過剰な発熱反応を回避または減少させる。
【0015】
下に示される実施例に示されるように、前述の第1および第2の前駆体成分から調製される、得られる無機リン酸塩組成物は、特有の形態構造を有する。即時に混合された配合物または硬化した製品は、薄い/厚い塗料、ペイント、瞬間接着剤として、または複合材料用のマトリックスとして、あるいは金属および非金属構造材料で使用する耐蝕性または耐火性塗料として使用することができる。
【0016】
一実施形態では、リン酸塩組成物を製造する方法が提供される。前記方法は、化学式A(HPO・nHOの酸−リン酸塩の水溶液を含む第1の成分(この際、Aは、水素イオン、アンモニウムカチオン、金属カチオン、またはその混合物であり、m=1〜3、かつn=0〜6であり、第1の成分の溶液は約2〜約5のpHに調節されている)を提供することを含む。B2m、B(OH)2mで表されるアルカリ性酸化物もしくはアルカリ性水酸化物、またはその混合物の水溶液を含む第2の成分が提供される(この際、Bは、原子価2mの元素(m=1、1.5、または2)であり、第2の成分の溶液は9〜14の間のpHに調節されている)。第1の成分および第2の成分は、一緒に組み合わせられて無機リン酸塩組成物をもたらす。場合により、硬化した製品に目に見える色を付与するようなサイズおよび量の凝集体着色剤を添加することができる。
【0017】
第1の実施形態の第1の態様において、第1の成分のpHは、約2.5〜約5の間、または約3〜約4.5の間に調節されている。
【0018】
第1の実施形態の第2の態様において、第1の成分は、リン酸、式M(HPOのリン酸二水素塩およびその水和物、またはその混合物を含む、この際、Mは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、またはその混合物であり、mは、1〜3である。
【0019】
第1の実施形態の第3の態様において、第1の成分は、アルカリリン酸二水素塩(alkali dihydrogen phosphate)M(HPO)もしくはその水和物、リン酸、アルカリ土類リン酸二水素塩M(HPOもしくはその水和物、または三価金属リン酸三水素塩MH(POもしくはその水和物のうちの少なくとも2つを含む。
【0020】
第1の実施形態の第4の態様において、第1の成分は、式M(POで表されるリン酸水素金属(metal hydrophosphate)およびその水和物を含み、上式で、Mは、アルミニウム(III)、鉄(III)、マンガン(III)、ランタン(III)、セリウム(III)、イットリウム(III)、スカンジウム(III)から選択されるランタニド類、およびそれらの混合物である。
【0021】
第1の実施形態の第5の態様において、第1の成分は、溶液のpHが2〜5の間であるように、リン酸一カリウムまたはその水和物を、リン酸またはリン酸三水素アルミニウムまたはその水和物の1以上と組み合わせて含む。Aは、ナトリウム、カリウム、セシウム、鉄(II)、鉄(III)、マグネシウム(II)、亜鉛(II)、アルミニウム(III)、ビスマス(III)、ジルコニウム(IV)またはその混合物である。
【0022】
第1の実施形態の第6の態様において、第1の成分は、リン酸、アルカリ金属リン酸二水素塩MHPO、アルカリ土類リン酸二水素塩M(HPOまたはその水和物、遷移金属リン酸三水素塩MH(POまたはその水和物、あるいはそれらの混合物を、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、または塩基性鉱物とともに含む。
【0023】
第1の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、第2の成分のpHは、約9〜約13の間または約10〜約12の間、または約10〜約11の間に調節されている。
【0024】
第1の実施形態の以前のいずれかと相まって、第2の成分は、式BOで表される酸化物、または式B(OH)で表される水酸化物を含み、この際、Bは、アルカリ土類金属または遷移金属である。Bは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、イットリウム、ランタニド、ジルコニウム、鉄、ビスマスまたはマンガンであり得る。第2の成分は、マグネシウム、バリウムカルシウム、亜鉛、鉄(II)、マンガン(II)、またはその混合物の酸化物または水酸化物であり得る。
【0025】
第1の実施形態の以前のいずれかと相まって、第2の成分は、約9〜約11、または約10〜11のpHを有するマグネシウムブラインであり、この際、マグネシウムブラインは、有効量の水酸化マグネシウムを含有する。水酸化マグネシウムは、六角小板形態(hexagonal platelet morphology)を有することを特徴とし得る。マグネシウムブラインは、有効量の水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム前駆体、オキシ硫酸マグネシウム前駆体、またはその混合物をさらに含有することができる。
【0026】
第1の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、第2の成分は、5m/gよりも大きい平均最小表面積を有する粒状物質を含む。第1の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、第2の成分は、珪灰石、タルク、フライアッシュ、カオリン粘土、カオリナイト、メタカオリン、ムライト、アルミン酸カルシウム鉱物、ケイ酸カルシウム鉱物、ケイ酸アルミニウム鉱物、ケイ酸アルミニウムカルシウム鉱物、またはその混合物を、第2の成分に対して1:0.05〜1:6の間の重量比でさらに含む。
【0027】
第1の実施形態の第7の態様において、第1の成分は、リン酸一カリウムまたはその水和物であり、第2の成分は、約9〜約11のpHを有するマグネシウムブラインであり、この際、マグネシウムブラインは有効量の水酸化マグネシウムを含有する。
【0028】
第1の実施形態の第8の態様において、第1の成分は、リン酸一カリウムまたはその水和物であり、第2の成分は、約9〜約11のpHを有するマグネシウムブラインであり、この際、マグネシウムブラインは、有効量の水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、オキシ塩化リン酸マグネシウム前駆体、オキシ硫酸リン酸マグネシウム(magnesium oxysulphate phosphate)前駆体、またはその混合物を含有する。
【0029】
第1の実施形態の第9の態様において、第1の成分は、Mg(POまたはその水和物を含み、第2の成分は、アルカリ金属酸化物またはアルカリ金属水酸化物を含む。
【0030】
第1の実施形態の第10の態様において、第1の成分は、AlH(POまたはその水和物を含み、第2の成分は、アルカリ金属酸化物またはアルカリ金属水酸化物を含む。
【0031】
第1の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、得られる反応生成物は、結晶形態が減少しているかまたは核形成中心が減少している。第1の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、第1の成分または第2の成分の平均粒度は50μm未満である。
【0032】
第1の実施形態の第11の態様において、第2の成分は、アルカリ土類金属オキシ塩化リン酸塩(oxy−chloride phosphate)前駆体、アルカリ土類金属オキシ硫酸リン酸塩(oxy−sulphate phosphate)前駆体、またはその混合物である。
【0033】
第1の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、第2の成分は、充填剤の珪灰石(CaSiO)、タルク(MgSi10(OH)、ムライト(アルミノケイ酸塩)、C種フライアッシュおよびF種フライアッシュの両方をさらに含み、反応性充填剤は、第2の成分に対して1:0.5〜1:6の重量比で存在する。第1の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、第1の実施形態に定義される方法により調製された製品が提供される。
【0034】
第2の実施形態において、無機リン酸塩化合物が、提供される。この化合物は、一般式:B(A3−mPO、式中、Aは、m=1または2の原子価を有し、Bは、s=1、または2の原子価を有し、B(A(2/m)PO、式中、Aは、m=1または2の原子価を有し、Bは、s=1、または2の原子価を有する、(2/m)(PO、式中、Aは、m=1または2の原子価を有し、Bは、3の原子価を有する、あるいはB(AOPO、式中、Aは、4の原子化を有し、s=1または2であり、Bは、1、または2の原子価を有する、の化合物であり、無機リン酸塩i〜ivは、以下の特徴:X線回折により測定される、存在する焼成アルカリ/アルカリ土類酸化物粒子の量の実質的減少、または組成的に同様の無機リン酸塩セラミックと比較した、X線回折により測定される結晶形態の減少、または、組成的に同様の無機リン酸塩セラミックと比較した密度の低下、の少なくとも1つを有する。
【0035】
第2の実施形態の第1の態様において、無機リン酸塩の密度は、1.8g/cm未満または1.5g/cm未満である。第2の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、化合物は、NaKPO.NaKPO.MgKPO.Mg(ZnPO.Mg(KPO.MgKPO.Mg(ZnPO.Mg(KPO.AlK(PO.AlMg(PO.ZrOKPO.Mg(ZrOPO.Zr(OH)KPO.またはMg[Zr(OH)POである。
【0036】
第3の実施形態において、オキシリン酸塩含有組成物を製造する方法が提供され、前記方法は、Mが、原子価4の元素であり、m=1〜3である、化学式(MO)(HPOおよびその水和物のオキシ−リン酸塩の溶液を含む第1の成分を準備すること(この際、第1の成分の溶液は、2〜5の間のpHに調節されている)、Bが、原子価2mの元素(m=1、1.5、または2)である、B2mまたはB(OH)2mで表されるアルカリ性酸化物またはアルカリ性水酸化物の溶液を含む第2の成分を準備すること、および、第1の成分および第2の成分を一緒に組み合わせる段階を含む。
【0037】
第3の実施形態の第1の態様において、Mは、ジルコニウム(IV)である。第3の実施形態の第2の態様では、pHは、2〜5の間に調節されているか、またはpHは、3〜4.5の間に調節されているか、またはpHは、3〜3.5の間に調節されている。第3の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、第1の成分は、pHを2〜5の間に低下させる一定量の塩酸または硫酸と一緒に、オキシ塩化マグネシウム、オキシ硫酸マグネシウム、またはその混合物を含む。第3の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、第3の実施形態において定義される方法により調製される製品が提供される。第3の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、第2の成分は、第2の成分の0〜5重量%の間の量で存在する、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、または混合物を含む。
【0038】
第4の実施形態において、ベルリナイトを製造する方法が提供される。前記方法は:リン酸三水素アルミニウムAlH(POまたはその水和物を含む第1の成分を準備すること、水酸化アルミニウムを含む第2の成分を準備すること、第1の成分および第2の成分を一緒に組み合わせること、および、X線回折により検出可能なベルリナイト相(AlPO)を形成するために十分な高温でこの組合せを加熱することを含む。
【0039】
第5の実施形態において、耐熱性塗料を製造する方法が提供される。前記方法は:リン酸三水素アルミニウムAlH(POまたはその水和物を含む第1の成分を準備すること、水酸化アルミニウムを含む第2の成分を準備すること、第1の成分および第2の成分を一緒に組み合わせること、および、物品の表面を、第1の成分および第2の成分の組合せに接触させること、X線回折により検出可能なベルリナイト相(AlPO)を含む塗料を形成するために十分な高温で物品の表面を加熱することを含む。
【0040】
第6の実施形態において、リン酸三水素アルミニウム(AlH(PO・またはその水和物を製造する方法が提供される。前記方法は、酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウム水和物の少なくとも1つ、およびリン酸を含む溶液を、前記酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウム水和物の少なくとも1つの最大量を溶解させるために十分な時間、高温に加熱すること、および、冷却して粘稠な溶液を形成することを含む。
【0041】
第6の実施形態の第1の態様では、前記方法は、約0.5重量%〜約2重量%のフッ化物イオン源を溶液に添加することをさらに含む。第6の実施形態の以前の態様と相まって、前記方法は、約0.2重量%〜約1重量%の酸化剤を溶液に添加することをさらに含む。第6の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、酸化剤は、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、クロム酸ナトリウム、カリウム、マグネシウム、またはアルミニウムの、可溶性硝酸塩から選択される。第6の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、前記方法は、粘稠な溶液を、マグネシウムブライン、水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムの少なくとも1つと合して、反応性混合物を形成すること、および反応性混合物を基材に塗付する段階をさらに含む。
【0042】
第7の実施形態において、噴霧可能なリン酸塩セラミック組成物が提供される。噴霧可能なリン酸塩セラミック組成物は、化学式Am(HPO)m・nH2Oの酸−リン酸塩の水溶液を含む第1の成分(この際、Aは、水素イオン、アンモニウムカチオン、金属カチオン、またはその混合物であり、m=1〜3、かつn=0〜6であり、前記第1の成分の溶液は約2〜約5のpHに調節されている)、B2mOm、B(OH)2mで表されるアルカリ性酸化物またはアルカリ性水酸化物、またはその混合物の水溶液を含む第2の成分(この際、Bは、原子価2mの元素(m=1、1.5、または2)であり、前記第2の成分の溶液は9〜14の間のpHに調節されている)、および、第1の成分かまたは第2の成分の剪断減粘性をもたらす能力があり、さらに、噴霧のために高い固体含有量の第1の成分かまたは第2の成分を懸濁する能力のある量のレオロジー改質剤/沈殿防止剤、を含む。場合により、凝集材料は、第1および第2の成分の少なくとも1つにおいて、観察可能な色および/またはテクスチャを付与する能力のある量で存在する。第1の成分は、溶液のpHが2〜5の間であるように、リン酸一カリウムまたはその水和物を、リン酸またはリン酸三水素アルミニウムまたはその水和物の1以上と組み合わせて含むことができる。第1の成分は、リン酸一カルシウムまたはその水和物を含むことができる。第1の成分である、Aは、ナトリウム、カリウム、セシウム、鉄(II)、鉄(III)、マグネシウム(II)、亜鉛(II)、アルミニウム(III)、ビスマス(III)、ジルコニウム(IV)またはその混合物である。第1の成分は、好ましくは、リン酸、アルカリ金属リン酸二水素塩MH2PO4、アルカリ土類リン酸二水素塩M(H2PO4)2またはその水和物、遷移金属リン酸三水素塩MH3(PO4)2もしくはその水和物、またはそれらの混合物を含む。第2の成分は、式BOで表される酸化物、または式B(OH)2で表される水酸化物であり得、この際、Bは、アルカリ土類金属または遷移金属であり、この際、Bは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、イットリウム、ランタニド、ジルコニウム、鉄、ビスマスまたはマンガンである。第2の成分は、マグネシウム、バリウムカルシウム、亜鉛、鉄(II)、マンガン(II)、またはその混合物の酸化物または水酸化物であり得る。第2の成分は、約9〜約11のpHを有するマグネシウムブラインであり得る。リン酸塩セラミックスプレー用組成物は、前記リン酸塩セラミックの硬度を増加させるために十分な量で存在する酸化アルミニウムをさらに含むことができる。第1のまたは第2の成分のいずれかに対して最大約75重量%の固体含有量を使用することができる。
【0043】
第7の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、レオロジー改質剤/沈殿防止剤は、グアーガム、ダイユータンガム、ウェランガム、およびキサンタンガムの少なくとも1つである。第7の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、凝集体は、少なくとも約1重量%〜約60重量%の量で存在する。第7の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、凝集体は、樹脂被覆シリカおよび天然有色鉱物凝集体の少なくとも1つである。凝集体は、約20メッシュμm〜約400メッシュの平均粒度であり得る。第7の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、凝集体の平均粒度は、少なくとも約20メッシュ以下であり、塗料塗布後は約20ミル未満であり、スプレーされたリン酸塩セラミック塗料は、垂直面または頭上表面の塗膜中に前記凝集体を実質的に保持する。
【0044】
第8の実施形態において、リン酸塩セラミックを噴霧する方法が提供され、前記方法は、(i)化学式Am(H2PO4)m・nH2Oの酸−リン酸塩の水溶液を含む第1の成分(この際、Aは、水素イオン、アンモニウムカチオン、金属カチオン、またはその混合物であり、m=1〜3、かつn=0〜6であり、前記第1の成分の溶液は約2〜約5のpHに調節されている)、および(ii)B2mOm、B(OH)2mで表されるアルカリ性酸化物またはアルカリ性水酸化物、またはその混合物の水溶液を含む第2の成分(この際、Bは、原子価2mの元素(m=1、1.5、または2)であり、前記第2の成分の溶液は9〜14の間のpHに調節され、前記第2の成分は噴霧の前に前記第1の成分から切り離されている)、(iii)分配装置(dispensing device)を出る前に前記第1の成分かまたは前記第2の成分の剪断減粘性をもたらす能力があり、さらに、噴霧のための第1の成分または第2の成分の粘度を低下させる高い固体含有量のいずれかの成分を懸濁する能力のある量のレオロジー改質剤/沈殿防止剤を準備すること、ならびに、第1の成分および第2の成分を噴霧することを含む。第1および第2の成分は、第7の実施形態に関して上に記載される通りであり得る。場合により、凝集材料は、第1および第2の成分の少なくとも1つの中に、観察可能な色および/またはテクスチャを付与する能力のある量で存在し得る。一態様では、噴霧段階は、多チャンネルポンプ、複数ピストンポンプ、蠕動ポンプ、ラム排出押出機(ram discharge extruder)、および漸進式キャビティポンプ(progressive cavity pump)の少なくとも1つを用いて、噴霧オリフィスを通じて前記第1の成分および前記第2の成分を促すことを含む。
【0045】
第8の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、噴霧段階は、第1の成分、第2の成分、および凝集体を混合するように構成されているミキサーをさらに含む。第8の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、噴霧段階は、第1の成分および第2の成分を本質的に同時に分配することを含む。第8の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、レオロジー改質剤/沈殿防止剤は、グアーガム、ダイユータンガム、ウェランガム、およびキサンタンガムの少なくとも1つである。
【0046】
第8の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、凝集体は、少なくとも約1重量%〜約60重量%の量で存在する。凝集体は、約20メッシュ〜約400メッシュの平均粒度であり得る。凝集体は、天然有色鉱物凝集体を含む凝集体着色剤および樹脂被覆シリカを含む凝集体着色剤の少なくとも1つであり得る。第8の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、凝集体は、塗付後に前記スプレー用組成物に表面テクスチャをもたらす平均粒度をもつ。第8の実施形態の以前の態様のいずれかと相まって、前記方法は、約20ミル未満の厚さの塗膜を形成し、垂直面または頭上表面に塗付された場合に、塗膜中に凝集体(凝集体は少なくとも400メッシュである)を保持する段階をさらに含む。
【0047】
上に要約した、本明細書に開示および記載される態様は、その一部が、下に示される実施例から得られる結果を説明する添付の図面を参照されることにより理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本明細書に開示および記載されるリン酸マグネシウムカリウムの薄い塗料(青色)および厚い塗料のX線回折パターンを示す図である。
【図2】従来のセラミクリート(リン酸塩セメント)のX線回折パターンを示す図である。
【図3】本明細書に開示および記載されるアルミノリン酸塩(alumophosphate)(AlH(PO・2.5HO)A、およびAl(OH)のX線回折パターンを示す図である。結晶が減少しているかまたは非晶相であることの証拠となる。
【図4】本明細書に開示および記載されるヒドロリン酸アルミニウムゲル(aluminum hydrophosphate gel)の写真である。
【図5】本明細書に開示および記載されるヒドロリン酸アルミニウム、珪灰石、および酸化マグネシウムから製造された塗料のX線回折パターンを示す図である。
【図6】純粋なムライトと比較した、本明細書に開示および記載されるアルミノリン酸塩、MgOおよびムライトサンプルのX線回折パターンを示す図である。アルミノリン酸塩が比較のために示される。
【図7】本明細書に開示および記載されるヒドロリン酸アルミニウムおよび酸化マグネシウム前駆体材料を用いることにより製造された塗料を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
様々な態様において、少なくとも1つの酸性成分および少なくとも1つのアルカリ性成分を含む多成分配合物が提供される。多成分配合物の両方の成分は、溶液、乳濁液、分散液、ペースト、またはその組合せとして提供される。成分の各々は、別々に製造されて別々に保存され、別々にまたは一緒に分配され得る。最終的に成分を塗付の前または塗布中に組み合わせ、反応させて無機リン酸塩組成物を形成させる。
【0050】
多成分配合物の得られる反応生成物は、pHでほぼ中性であり、非常に高温、例えば、2000°F(例えば、大部分の市販の有機系製品および一部の無機製品が残存することのできない温度)で安定している、耐火物のような(refractory−like)組成物を提供することができる。
【0051】
もう1つの実施形態では、上記の配合物は、適した塗料および/またはペイントとして提供され、高固形分スプレーコーティング用に配合される。今まで、固体含有量の高いセラミック前駆体溶液の懸濁液をスプレーすること、および、表面への塗付後に滑らかであるかまたは凝集体の移動をもたらさない(または塗料中の凝集体を実質的に保持する)塗料を得ることは、困難であった。実際に、同じことが水硬セメントの従来のスプレーコーティングにも言える。従来のペイント/塗料配合物として凝集体含有配合物とともにスプレー装置を使用することは、いくつかの理由で問題があった。その一部としては、より大きいサイズの凝集体がスプレー装置の小さいオリフィスを通過するのは困難であること、またひとたびより大きいサイズの凝集体が表面にスプレーされるとそのような凝集体が広がり続けることはなおさら困難であることが挙げられる。同様に、そのような凝集体含有配合物を噴霧する能力および許容されるコーティングされた表面を得ることは、達成困難であった。配合物の硬化時間の減少は、この問題に部分的な解決策しか与えず、一般に従来のペイントにはあてはまらない。
【0052】
したがって、本出願人は、「ペイントのような」外観を提供するために、スプレーコーティングができ、ならびに噴霧ができるセラミック配合物を提供した。実際に、本発明の硬化塗料(instant set coating)を従来のペイント塗料と表面上で区別することは困難である。従来のペイントのように、本発明の配合物は、表面、例えば、金属表面、コンクリート表面、およびその他の構造表面に直接スプレーすることができるが、対照的に、本発明の配合物は、金属腐食保護および耐火性などの従来のペイントからは可能でないレベルの機能的な付加価値特性を提供する。
【0053】
レオロジー制御および配合物成分(部分AおよびB)中の固体の分散の組合せにより、従来のスプレー装置を用いてセラミックのペイントのような最終塗膜が提供される。さらに、着色された塗料を得るために、既に高固形分である配合物成分の中に凝集体着色剤を効果的に組み込むことができることが実証された。また、より大きなサイズの凝集体、例えば、砂を用いて本発明の配合物のテクスチャ加工された表面を得ることも実証された。第1の成分または第2の成分のいずれかの剪断減粘性をもたらす能力があり、さらに、噴霧のために高い固体含有量の第1の成分かまたは第2の成分を懸濁する能力のある量のレオロジー改質剤/沈殿防止剤を使用することにより、優れたペイントのような塗料が得られる。
【0054】
本開示の高固形分の成分に凝集体を添加することは、成分の粘度調節、それらの密度、およびそれらの迅速に硬化する能力(凝集体の少なくとも機械的な保持を得るため)のために、可能であると考えられる。従来のペイントおよび大部分の水硬セメントは、少なくともそれらが迅速に硬化できないために、大きなサイズの凝集体(着色かまたはテクスチャリングのため)を保持することが全くできない。結果として、本発明の配合物は、例えば、従来の水硬セメントまたは従来のペイントからでは得ることのできない、ベニス風砂漆喰(Venetian sand plaster)仕上げから、色鮮やかなサテン仕上げのような塗料まで、広い範囲の塗料をそれらが提供することができるという点で、これらの従来の塗料とは異なる。
【0055】
一態様では、噴霧可能なセラミック塗料は、第1の成分および第2の成分、沈殿防止剤、約30メッシュ未満の粒径の凝集体、およびレオロジー改質剤を含む。
【0056】
第1の成分−酸性リン酸塩前駆体材料
酸性リン酸塩成分:酸性リン酸塩成分は、式、A(HPO・nHO(式中、Aは、m価の元素、例えばナトリウム(Na、m=1)、カリウム(K、m=1)、マグネシウム(Mg、m=2)、カルシウム(Ca、m=2)、アルミニウム(Al、m=3)などである)のリン酸および/または酸−リン酸塩からなる。Aは、より高い原子価の酸化物を使用する場合には、減少した酸化物相(reduced oxide phase)であり得る。例えば、+2および+3の原子価状態で存在する鉄に関して(酸化物としてFeOおよびFe)、Aは、より低い酸化状態の金属であり得る。また、それは、ZrO2+などの4価の金属酸化物のカチオンであり得、この場合、m=2であり、上式中のnHOは単に結合水である(nは任意の数であり得、通常0〜25の範囲である)。
【0057】
式AH(PO・nHOで表されるアルミニウム、鉄およびマンガンなどの三価金属のヒドロリン酸塩を使用することも可能であり、この際、Aは、アルミニウム、鉄、マンガン、イットリウム、スカンジウム、およびすべてのランタニド類、例えばランタン、セリウムなどを含む遷移金属である。
【0058】
酸性前駆体のpHが本発明の反応に必要とされる値よりも高い場合、リン酸を添加し、pHをそのpHから下げるように調節することができる。選択される好ましいpHは、3〜4の間であり、最も好ましいpHは、3〜3.5の間であり、アルカリ性酸化物、水酸化物、または鉱物を用いて部分的に中和することによりリン酸のpH、またはリン酸二水素マグネシウム(Mg(HPO)またはリン酸三水素アルミニウム(AlH(PO)などの酸−リン酸塩のpHを上昇させるか、あるいは、少量であるが適切な量のリン酸、またはMg(HPOまたはリン酸三水素アルミニウムAlH(POなどの低いpHの酸性リン酸塩を添加することにより3.5よりも大きいpHを有するリン酸一カリウム(KHPO)などのリン酸二水素塩を酸性化することにより、調節される。本明細書において後に記載される実施例は、このpHを調節する技術を提供する。
【0059】
多くの場合、前駆体で用いられる酸−リン酸塩は、部分的にのみ可溶性である。そのような場合、平均粒度が230メッシュ篩(70未満)を通過するように前駆体を微粉砕する。
【0060】
オキシ塩化物およびオキシ硫酸塩組成物に関して、酸性成分は、pHを低下させるために塩酸または硫酸で適切に酸性化したオキシ塩化マグネシウム、およびオキシ硫酸マグネシウムで構成される。
【0061】
水を、前駆体成分に添加してその粘度を低下させることができ、または、その他の種類の粘度低下剤を用いることができる。藻類の増殖を防ぐ市販の添加剤をこの前駆体に添加して、この前駆体の保存の間に藻類の増殖が起こらないようにすることもできる。
【0062】
第2の成分−塩基性酸化物/水酸化物前駆体材料
塩基性の前駆体:塩基性前駆体は、一般に、溶解性の乏しい酸化物、または好ましくは平均粒度70μm未満の水酸化物で構成される。前記酸化物は、Bが2m価の金属である、式B2mまたはB(OH)2mで表すことができる。すべての二価金属酸化物(m=1)、および還元状態の(in reduced state)一部の三価金属酸化物は、この溶解性の乏しい酸化物のカテゴリーに分類される。二価酸化物の例は、限定されるものではないが、マグネシウム、バリウム、亜鉛、カルシウムである。還元状態の三価酸化物の例は、酸化鉄(FeO)、および酸化マンガン(MnO)である。
【0063】
ペイント、塗料、接着剤およびシールに関して、少なくとも一部の非晶相またはガラス相を塗料中に得ることが望ましく、それによりこの相は、基材の表面の凹凸を埋め、不浸透性の、高密度かつ滑らかな塗料を形成することになる。焼成MgOの代わりに水酸化マグネシウム(Mg(OH))を使用することによりそのような構造を開発することが可能であることが見出された。Mg(OH)は、酸−リン酸塩と直ちに反応し、2つの好ましい結果をもたらす。第1に、非常に短い反応時間に起因して、結晶の成長が起こり得ない。第2に、Mg(OH)の溶解度は焼成MgOのそれよりもはるかに高いので、その大部分が溶解し、そのため反応生成物の結晶成長のための多くの核形成中心が存在しない。最終結果は、より大きい非晶構造である。
【0064】
非焼成酸化物粉末を使用することによって、従来のスプレー装置でのスプレーコーティングに適し、着色されたかまたは滑らかな仕上がりを得るのに適した酸−塩基セラミックを製造する方法を実行することはこれまで困難であった。セラミックは、一般に三次元安定性および剛性のために結晶構造を必要とする。対照的に、非セラミック塗料は、一般に基材に結合し、基材から二次元剛性を得る。少なくともこういう理由から、塗料として有用であり、同様に噴霧可能な塗料にも有用な、実質的に結晶の減少した無機リン酸塩組成物を製造する塩基性前駆体として、非焼成酸化物または水酸化物の使用が、本明細書において開示および記載される。一態様では、本明細書において開示および記載される、実質的に結晶の減少した無機リン酸塩組成物を製造する塩基性前駆体としての非焼成酸化物または水酸化物の使用は、大きな相違および従来のリン酸塩セラミックに比べて実質的な改善をもたらす。一方、焼成酸化物の使用は、非焼成酸化物または水酸化物に比べて硬化した塗料の改良された着色をもたらし得る。
【0065】
酸化物を焼成することは、酸−塩基セメントおよび塗料においてエネルギー消費の主な原因である。このことは、非焼成酸化物および水酸化物を使用することにより排除することができる。例えば、一態様において、マグネシア鉱山から直接入手したMg(OH)のブラインは、単独でまたはその他の塩基性鉱物または充填剤と組み合わせて、第1の成分の適した供給源を提供する。前記ブラインは、少なくとも約60%の溶解した、懸濁したまたは分散したMg(OH)を含有し、無機リン酸塩組成物の第2のアルカリ性成分に直接使用することができる。
【0066】
無機リン酸塩組成物
少なくとも1つの態様において、2部分成分系(two part component system)が提供され、一方の部分は、そのpHが2〜5の間、好ましい範囲が2.5〜4.5、最も好ましい範囲が3〜4.5である、酸性リン酸塩前駆体成分である。塩基性前駆体成分のpHは、9〜14の範囲、好ましい範囲は10.5〜12、最も好ましい範囲は11〜12のpHである。
【0067】
二価金属酸化物を使用する場合、無機リン酸塩組成物を形成する酸塩基反応は、方程式(1)により与えられる:
(HPO・nHO+B(OH)2m+sHO=A(BPO+(n+m+s)HO。(1)
【0068】
方程式(1)の右手側の第1の化合物は、酸性リン酸塩前駆体材料であり、水和物であり得る。第2の化合物は、塩基前駆体材料であり、それも水和物であり得る。例えば、酸性リン酸塩としてリン酸一カリウム(KHPO)およびアルカリ性材料として水酸化マグネシウムとすると、A=K、m=1、かつB=Mg、かつn=0となり、それは次式の酸塩基方程式(2)をもたらす。
KHPO+Mg(OH)+4HO=MgKPO・6HO (2)
【0069】
同様の反応は、MgKPO・6HOのセラミックを製造する際に使用されているが、(例えば、Chemically Bonded Phosphate Ceramics,by Arun Wagh,Elsevier pub.,2004参照)、そのようなセメントは、水酸化マグネシウムの液体、ペースト、分散液または乳濁液源と対照的に、焼成マグネシウム酸化物を用いて製造されたものである。したがって、同じ化学式が理論上準備されるが、本明細書に開示および記載される無機リン酸塩は、これまでに調製されたMgKPO.6HOよりも実質的により非晶質である(結晶化度の低下)。
【0070】
さらに、少なくとも1つの態様において、酸性リン酸塩前駆体成分が、mの原子価をもつ元素を有する場合(ここで、mは1よりも大きい、例えば、Mg(HPO(m=2))、塩基前駆体材料中のアルカリ金属の酸化物または水酸化物、例えばNaまたはKのそれ酸化物または水酸化物は、ペースト、分散液または乳濁液として使用することができることが見出された。例えば上に考察される、無機リン酸塩組成物を生じる酸塩基反応は、方程式(3)により与えられる:
(HPO・nHO+2mB(OH)=AB2m(PO+(n+m)HO (3)。
【0071】
得られる水画分は、蒸発し、無機リン酸塩組成物が得られる。Mg(OH)は、70μm(230〜235メッシュ)未満を通過する非常に微細な粉末として使用することができる。それは、3より大きいpHを示す酸−リン酸塩と反応させることができる。例えば、そのpHが4.2であるリン酸一カリウム溶液を使用し、少量のリン酸または非常に低いpHのリン酸二水素塩、例えばそのpHが約1.2であるリン酸二水素アルミニウム(AH(PO・nHO)などを添加することにより、そのpHを下げることができる。Mg(OH)の使用により、製品のライフサイクルコストにおけるエネルギー消費が低減され、そのために、全過程における温室効果ガスの放出も低減される。上述のように、非常に高いpHまでより多くの水酸化物を溶解させるために、アルカリ性成分のpHを上昇させることが可能であり、必要であれば、14の最大pHにまで進むことができる。しかし、そのような非常にアルカリ性の製品を取り扱うことは困難であり、そのために11の最大pHが推奨される。下に記載されるように、約10.2のpHを有するマグネシウムブラインが非常によく機能する。
【0072】
ひとたび酸およびアルカリ性溶液を、それらの溶解度、pH、および場合により粘度について最適化すれば、第1および第2の前駆体成分を組み合わせることにより無機リン酸塩組成物が形成される。これらの成分の適切性および割合ならびにそれらの適合性は、酸塩基反応の化学量論により決定される。表1は、これらの組合せ、および得られる無機リン酸塩組成物の化学式を要約する。
【0073】
表1において、反応を開始するために添加されるか、または反応の間に生じた水のいずれかである水は、自由水または結合水として存在し得る。表1はこれら2つを区別していないが、自由水は製品が乾燥する場合に蒸発するが、結合水は構造内にとどまるため、その差異はほとんど重要でない。結合水の量は、従来の分析ツールおよび技法、例えば示差走査熱量測定などを、例として使用することにより推定することができる。
【0074】
【表1】

【0075】
表1において、一価元素の例は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、またはアンモニウム(NH)である。同様に、使用することのできる主な二価元素は、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウムなどであり、一方、三価元素は、アルミニウム、鉄などであり、4価元素の例は、ジルコニウム(Zr)である。上に示される組合せに適合するその他の元素を使用することもでき、本開示および特許請求の範囲は、上に示される例によって制限されるべきではない。
【0076】
化学量論により接着剤の組成は決まるが、製造プロセスにおいてその組成を正確に作ることはできない。一般に、塩基性酸化物および水酸化物前駆体含有量は、酸−リン酸塩前駆体含有量と比較して化学量論的に高い量で保たれる。このことにより、残留酸を実質的に含まない製品が得られる。
【0077】
塗料およびペイント
セメントおよびセラミックは、一般に、酸性リン酸塩および酸化物および酸化鉱物を用いることにより製造することができる。これらのセメントおよびセラミックは、一般に、酸−リン酸塩と水中の固体酸化物を混合することにより形成される。この混合物は直ちに使用され、数時間のうちに最終的に硬化して固体製品となる。しかし、これらの前駆体配合物および全体的なプロセスは、例えば、薄膜塗料および同類のものとして、分配するのに適した配合物を製造するのに有用ではない。このことに対する少なくとも一部の理由としては、例えば:そのような組成物は、粒状物質を含有する迅速硬化セメントである、および、組み合わせてから硬化するまでの最大硬化時間(maximum working times)がたったの2〜3時間である。したがって、それらはペイントおよび塗料に必要な保存寿命を有さない。滑らかな薄い塗料を製造するために、一般に、成分として非常に細かい粒子を使用することが必要である。通常、これは、3Dセメント形成およびセラミック分野では必要条件ではない。実際に、粒子が細かいほど、酸塩基反応に曝露される表面積は増加する。例えば、表面積の範囲は0.3〜0.55m/gであり得ることが開示された、それは非常に小さい範囲であり、通常、例えば、塗料を含む、特定の用途には適していない。0.55m/gの最大許容表面積は、例えば、塗料を含む、特定の用途には小さすぎることもさらに開示された。ペイントおよび塗料は、本発明の反応および塗布塗料表面の平滑性のために、大きい表面積(例えば、一般に、例えば、約5m/gよりも大きい、より好ましくは約10m/gよりも大きい)をもつより細かい粒子を必要とする。
【0078】
従来の酸−塩基リン酸塩セメントを硬化する間、発熱酸塩基反応が熱を放出し、反応混合物を加熱し、そのことが硬化を助け得る。薄い塗料に関して、相当量のこの発熱が、比較的薄い被膜の広い表面積によって散逸される。特に、広い面積をコーティングする最も効果的な方法であるスプレーコーティングにおいて、酸−塩基前駆体媒体は、霧化される、この霧化により、媒体は数度冷却され、それは基材の表面での酸塩基反応を阻害する。このことは、壁/天井などの垂直/頭上表面からの未反応の媒体の滴り(または跳ね上り)を引き起こし、乾燥した表面に風解も生じさせる。このような理由から、ペイントおよび塗料の組成は、スプレーされた製品を固化するよりも大量の発熱を生じる本発明の反応に合わせる必要がある。これは、広い表面積の粒子が従来のセメントに必要とされるもう一つの理由である。
【0079】
従来のペイントおよび塗料は通常、有機ポリマーであり、それらは使用時には通常、非結晶性の非晶質材料である。一方、上に考察される酸−塩基リン酸塩セメントまたはセラミックは、硬化後にかなりの結晶相を含む結晶またはガラス結晶材料からなる。結果として、従来の酸−塩基リン酸塩セラミックは、例えば、そうでなければ望ましくない粒状構造をもたらす、そのかなりの結晶構造を考えると、概ね塗料、ペイント、および接着剤に適していない。本明細書において見出され開示されたものは、薄膜塗料、ペイント、および接着剤に適した、実質的に結晶の減少した無機リン酸塩組成物である。溶液、分散液、乳濁液、および/またはペーストを得るために前駆体材料を変化させることにより、実質的に結晶の減少した無機リン酸塩組成物を製造することができることが見出された。
【0080】
その上、たとえ従来の前駆体出発物質および、最大75重量%のどちらか一方の前駆体成分の固体を配合する高固形分であっても、レオロジー制御および配合物成分中の固体(部分AおよびB)の分散の組合せにより、セラミックのペイントのような最終塗膜は、従来のスプレー装置を用いて提供される。さらに、着色された塗料を得るために、凝集体着色剤を既に高固形分の配合物成分の中に効果的に組み込むことができることが実証された。また、より大きなサイズの凝集体、例えば、砂を用いて本発明の配合物のテクスチャ加工された表面を得ることも実証された。
【0081】
成分の分配は、適したスプレーガン、場合によりインラインスタティックミキサーを備えた、従来の分配装置、例えば、デュアルソース押出機、ラム、ポンプなどを用いて行うことができる。一態様では、スプレー装置には、水硬セメントの分配/スパッタリングに通常使用されるテクスチャガンは除外される。
【0082】
少なくとも1つの態様において、それぞれの成分を組み合わせる前に、または組み合わせた後に、以下の特性:一般に約35,000センチポイズ未満、好ましくは約15,000センチポイズ未満の個々の成分の粘度を提供すること、分散される時、またはその後の短時間内に個々の成分を、基材と接着/付着し、それによりそれらが雨、日光、および風などの様々な大気条件に曝露されることにより悪影響を受けないようにすること、防火、耐蝕性、耐薬品性、建築上の魅力などの特定の用途のために策定された基準を満たす、硬質および高密度の硬化塗料を基材と接着させること、全太陽スペクトル、ならびに硬化塗料に対する熱および冷却サイクルに対する長期耐久性を示すこと、職業上の危険を回避し、いかなる使用、処分または流出の間も環境を保護するために、酸性リン酸塩前駆体成分に関して約2よりも大きいpH、および塩基性前駆体成分に関して約12未満のpHをもたらすこと、保存の間本質的に均質な成分をもたらし、ポンピングおよび保存の間に水の凝離が起こらないようにすること、の少なくとも1以上をもたらす多成分配合物が開示され、記載される。保存および輸送の間に凝離が起こる場合、成分を塗付の前に容易に再混合して均質な状態に戻し、少なくとも6ヶ月間の保存の間、ポゾラン反応によって塩基性前駆体が固化する傾向を最小限にし、かつ/または酸性前駆体の生物活性を抑制することができる。
【0083】
本明細書に開示される通り調製される塗料は、耐久性があり、紫外線によって劣化せず、特定の配合物は赤外線を反射するので、建物内の省エネルギーを後押しする。開示される組成物は、それらが多様な基材に優れた接着をもたらすために、下塗および仕上塗に適している。
【0084】
無機リン酸塩組成物の分配
ペイント、塗料、または接着剤を生成する酸塩基反応は瞬間的であるので、適したアプリケーター系が必要である。複数の系は、酸および塩基前駆体材料を所望の割合で別々に保存することができ、その後分配することができる。例えば、無機リン酸塩組成物前駆体を、塗付中に混合チャンバに導入するか、またはスプレー装置を出る時に混合することができる。そのような系は市場で一般的であり、装置の内部表面または部品を劣化させることなく酸性および/またはアルカリ性成分を分配するよう適合させることができる。
【0085】
前駆体成分の粘度
2つの成分の粘度は、分配が促進されるように十分に低くあるべきである。通常、35,000センチポイズ(cp)未満またはそれ以下のどちらの前駆体粘度も多くのポンプに受け入れられるが、15,000cp未満の粘度が好ましい。
【0086】
酸性成分に関して、大部分の酸−リン酸塩が低い粘度を示すことは、問題ではない。高溶解性のリン酸一ナトリウムは、この要件を容易に満たす。リン酸一カリウムは、低い溶解度(20g/100ml)を有し、リン酸塩の多くが懸濁液中にとどまる。そのために、その粘度を下げる必要がある。このことは、リン酸一カリウム溶液の溶液を混練することにより行うことができる。その他の例となる酸−リン酸塩、例えばリン酸二水素マグネシウム(Mg(HPO)、またはリン酸三水素アルミニウム(AlH(PO)なども、低い溶解度を有し、したがって低粘度の前駆体成分を生成するために混練する必要があり得る。最終反応混合物中の水が多くなりすぎ、1以上の成分の硬化が起こる可能性があるので、通常、過剰な水の添加は望ましくない。
【0087】
アルカリ性成分に関して、粘度は溶液中の粉末材料の量によって決まる。溶液中で使用する酸化物粉末または鉱物粉末は、本来非常に細かくなければならず、325μmの篩サイズを通過するように粉砕される。Mg(OH)のブラインが、低い粘度を示し、したがってブラインの処理が必要でないので、この目的に理想的である。
【0088】
第2の成分(塩基前駆体)の粘度は、部分的に反応性の鉱物、例えば珪灰石(ケイ酸カルシウム、CaSiO)など、またはフライアッシュなどの鉱物含有材料を添加することにより調節することができる。少量の炭素が粒子上の滑沢剤として働き、前駆体成分の粘度を低下させるのを助けるので、F種フライアッシュが好ましい。添加剤の含有量は、第2の前駆体成分と等しい量からその2倍量までの範囲であり得る。その他の酸化物を使用する場合、量は、15,000cp未満の粘度が得られるように対応して調節され得る。
【0089】
上記の方法に加えて、必要に応じて粘度を調節(例えば、低下)することのできる、市販の水性ペイント調節剤(waterbourne paint conditioners)を少量添加することによって粘度を調節することもできる。
【0090】
保存寿命
上で述べたように、酸性およびアルカリ性の両方の前駆体成分は、好ましくは6ヶ月を越える、1年を越える、または18ヶ月を越える十分な保存寿命を有することが望ましい。この期間の間、粒子と液体画分の些細な凝離が起こるはずであり、または、成分を再混合して塗布時点の分配に適した均質もしくは半均質な塊にすることは容易であるはずである。このことは、例えば、均質な前駆体を生成するために酸性成分を混練し、次に必要であれば1以上の市販の沈殿防止剤を場合により添加することにより行うことができる。
【0091】
アルカリ性成分の長い保存寿命を得ることのほうが困難である。それは、アルカリ性粉末が独りでに硬い塊に硬化して、使用のために固化した塊を再構成および/または粉砕することが困難となるように、アルカリ性酸化物成分が、水分の存在下でポゾラン反応(ポルトランドセメントで、または湿潤フライアッシュで起こる反応)を受ける傾向があるためである。
【0092】
通常、ポゾラン反応は、セメント産業ではカルシウム含有量に関連する。したがって、アルカリ性成分中のカルシウム含有量を制限することにより、この問題を解決することができる。例えば、遊離カルシウムの量が最も少ないF種フライアッシュを使用するか、または珪灰石の量を制限すると、過剰なカルシウムは放出されない。C種フライアッシュは、このアッシュが非常に高い割合の遊離カルシウムを含有するので、通常アルカリ性組成物には避けられるべきである。同じ理由から、水酸化カルシウムは、通常、第2の前駆体成分中の酸化物成分として避けられるべきである。一態様では、アルカリ性前駆体成分は、最も広い範囲では、Mg(OH)または任意の酸化物の量の3倍、および合理的に十分な保存寿命をもたらす特定の範囲では2倍を上回らない量で珪灰石およびF種フライアッシュを含み得る。
【0093】
添加剤
開示される組成物には、所望により1以上の添加剤、例えば充填剤、界面活性剤(アニオン性またはカチオン性、両性、または非イオン性)、可塑剤、沈降剤、レオロジー改質剤および/または沈殿防止剤、および/または消泡剤などを含むことができる。
【0094】
適した充填剤としては、例えば、珪灰石、タルク、C種またはF種フライアッシュ、カオリン粘土、カオリナイト、メタカオリン、ムライト、アルミン酸カルシウム鉱物、ケイ酸カルシウム鉱物、ケイ酸アルミニウム鉱物、ケイ酸アルミニウムカルシウム鉱物、またはその混合物が挙げられる。その他の充填剤を、単独で、または上記のものと組み合わせて使用することができる。特定の態様では、充填剤の重量比は、第2の成分の重量に対して1:0.05〜1:6である。特定の態様では、本発明の組成物は、本質的にケイ酸カルシウムを含まない可能性がある。
【0095】
適した陰イオン性界面活性剤としては、例えば、パーフルオロオクタン酸塩(PFOAまたはPFO)、パーフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、硫酸アルキル塩、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、アルキルベンゼンスルホン酸塩、および石鹸または脂肪酸塩が挙げられる。適した陽イオン性界面活性剤としては、例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、アルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム(CPC)、ポリエトキシ化獣脂アミン(POEA)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、および塩化ベンゼトニウム(BZT)が挙げられる。適した両性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン、およびココアンフォグリシナート(coco ampho glycinate)が挙げられる。適した非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルフェノールポリ(エチレンオキシド)、ポロキサマーまたはポロキサミン(ポリエチレンオキシドまたはポリ酸化プロピレンの共重合体)、オクチルグルコシド、デシルマルトシド、セチルアルコール、オレイルアルコール、およびドデシルジメチルアミン酸化物が挙げられる。その他の界面活性剤を、単独で、または上記のものと組み合わせて使用することができる。
【0096】
適した可塑剤としては、例えば、フタル酸塩、トリメリト酸塩、脂肪族二塩基性エステル、リン酸塩、エポキシド、またはポリエステルが挙げられる。可塑剤の具体的な例としては、例えば、DOP(ジ(2−エチルヘキシル)フタラート、DINP(ジ(イソノニル)フタラート、TOTM(トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテート、TINTM(トリス(イソノニル)トリメリテート、DOA(ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、DINA(ジ(イソノニル)アジペート、DOZ(ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート、およびDOS(ジ(2−エチルヘキシル)セバケートが挙げられる。その他の可塑剤を、単独で、または上記のものと組み合わせて使用することができる。
【0097】
沈降防止剤としては、例えば、大豆レシチン(soya−lacithin)、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸塩をコーティングした炭酸カルシウム、改質ヒマシ油(cater oil)または脂肪酸、ジペンテン、パイン油、メチルエチルケトオキシム、ジ−イソブチレン−マレイン酸分散液、ポリアクリル酸アンモニウム、改質大豆レシチン乳濁液、ポリカプロラクトンポリオール−ポリエチレンイミンブロック共重合体、ポリカプロラクトンポリオール−トルエンジイソシアネート共重合体、ポリヒドロキシステアリン酸、およびアルキド系沈降防止剤が挙げられる。その他の沈降剤を、単独で、または上記のものと組み合わせて使用することができる。
【0098】
適したレオロジー改質剤/沈殿防止剤としては、水和ケイ酸マグネシウムアルミニウム、リグノスルホン酸塩(リグノスルホン酸カルシウム、リグノスルホン酸ナトリウムおよび同類のもの)、スルホン酸化したナフタレンスルホナート縮合物の塩、スルホン酸化したメラミンスルホナート縮合物の塩、βナフタレンスルホナン酸塩、スルホン酸化したメラミンホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホナートホルムアルデヒド縮合物樹脂、例えば、LOMAR D(登録商標)分散剤(Cognis Inc.,Cincinnati,Ohio)、ポリアスパラギン酸塩、オリゴマー分散剤、ポリメタクリレート塩、グアーガム、ダイユータンガム、ウェランガム、キサンタンガムおよび/またはレオロジー改質剤/沈殿防止剤として機能するその他の薬剤が挙げられる。特定のレオロジー改質剤/沈殿防止剤、例えば、DARVAN(ポリメタクリル酸ナトリウム)は、制限された性能しか提供することができないことが観察された、例えば、Al2O3またはその他の同様の高密度粒子のたった約15%で滑らかな塗料をもたらした。したがって、レオロジー改質剤/沈殿防止剤の具体的な選択は、いずれの具体的なリン酸塩セラミック配合物にも断定できない。
【0099】
消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡オイル(ポリエーテル末端基をもつシロキサン)、アセチレングリコール界面活性剤、およびポリオクチルアクリレートが挙げられる。その他の消泡剤を、単独で、または上記のものと組み合わせて使用することができる。
【0100】
酸性リン酸塩前駆体における藻類の増殖の除去
リン酸塩は、藻類の養分であり、したがって酸性成分中での藻類の増殖を予期するべきである。藻類を避けるために、どんな生物活性も抑制する様々な市販の添加剤を添加することができる。一つの好例は、酸化銅である。酸性リン酸塩前駆体中の1重量%未満の酸化銅の添加が、生物学的増殖を抑制するために十分である。藻類または菌の増殖を防ぐために使用されるその他の市販の化学物質も使用することができる。
【0101】
本明細書に開示および記載されるものは、酸性リン酸塩、オキシ塩化物、およびオキシ硫酸塩溶液およびペーストを含む新規の無機2成分前駆体配合物、および酸化物および水酸化物を含む塩基性成分であり、それらは、得られる製品が無機(オキシクロロ−)もしくは(オキシスルホ−)リン酸塩組成物となるように、一緒にして即時に反応させることができる。これら2つの酸および塩基成分およびそれらの組合せ、霧化可能、噴霧可能な配合物、および所望により実質的に非晶質の、結晶化度の低いセラミックを製造する方法が開示され、以下の選択された実施例において示されるように特徴付けられるが、これらの方法および特許請求の範囲は、オキシ塩化物およびオキシ硫酸塩(oxysufate)系などの成分の適した変更を含むその他の酸塩基配合物にも適用可能である。これらの変更に関する簡単な考察が記載されるが、その考察は本特許請求の範囲または開示自体を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0102】
下に列挙されるいくつかの実施例が、本明細書に開示される組成物の属性を配合し実証するために実施された。
【0103】
実施例1.リン酸マグネシウムカリウム組成物
この実験では、第1の(酸性)成分は、水溶液中で測定すると約4.2のpHを有するリン酸一カリウム(MKP)で構成される。MKPを、使用前に1時間混練して約74サイズの粉末(US200篩)とした。次に、MPKをさらに1時間混練し、2.5重量%リン酸を添加することにより(50%稀薄溶液として添加)、そのpHを3.2〜3.5の間に調節した。0.5重量%酸化銅を添加して藻類の増殖を防いだ。この溶液を水で調節して約10,000センチポイズの粘度を得た。この成分の密度は、1.9g/cmであった。
【0104】
第2の成分(アルカリ性)は、次の通り調製した:必要量のマグネシウムブライン溶液(Martin Marietta)を(水酸化マグネシウムの供給源として)、ミキサーの中に秤量した。Zr(OH)粉末をブラインに添加し、均質になるまで5〜10分間攪拌した。325メッシュを通過する珪灰石を、この溶液にゆっくり添加し、10〜15分間混合した。追加量の水を添加して、粘度を約20,000〜25,000センチポイズに調節した。この液体成分の密度は、1.25g/cmであり、この溶液中の粒子の平均粒度は、約5.6μm以下と測定された。したがって、第2の成分は、約69重量%のマグネシウムブライン(約61重量%のMg(OH)を提供)、約8.7重量%の珪灰石、約2.2重量%の水酸化ジルコニウム(Zr(OH))、残りの水で構成される。
【0105】
これら2つの成分を、複数スプレー系を用いるスプレーのために1:1の容積比で組み合わせた。このスプレー系の2つのカートリッジに、別々に2つの成分を充填した。スプレーガンは、2つの成分をスプレーする前に混合することのでき得る混合管で構成された。組成物を、様々な基材、例えば、鋼、木材、ハードボード、アルミニウム、コンクリート、軟鋼Taberパネルにスプレーした。コーティングされた厚さは、約15〜20ミルであった。耐摩耗性測定は、ASTM D 4060に従って行った。塗料を周囲条件で7日間硬化させてから、すべての試験およびサンプル分析を行った。
【0106】
結果として得られる、本明細書に開示される無機リン酸塩組成物のフィルムを、軟鋼パネルの上にコーティングされた、市販のエポキシ塗料および従来の無機リン酸塩コンクリート(セラミクリート)と比較した。密度、接着性(引抜試験、ASTM D4541)、および耐摩耗性の結果を、下の表2に要約する。
【0107】
【表2】

【0108】
表2の結果は、塗料の密度が市販の有機塗料に近いことを示す。水酸化マグネシウムは、焼成酸化マグネシウム(ペリクレース)の密度3.6g/cmと比較して、低い密度を有する(2.38g/cm)。焼成酸化マグネシウムから生成された、通常のセラミクリート(リン酸塩セメント)に関して、密度は、使用する充填剤によって、1.8〜2(g/cm)の間である。したがって、通常のセラミクリートは、本明細書に開示される無機リン酸塩組成物よりも重い。セラミクリートにおいて、大部分の焼成酸化マグネシウムは、懸濁された時に未反応のまま残っているか、または埋め込まれた粒状物質のままであり、それが密度に寄与している。対照的に、本明細書に開示される無機リン酸塩組成物の密度は、セラミクリートの密度よりも小さく、これは、水酸化マグネシウム源の反応がより完全であること、および微粒子の酸化マグネシウムの量が少ないことに起因すると考えられる。結果として、本明細書に開示および記載される無機リン酸塩組成物は、より低密度の材料(例えば、約1.4g/cmの密度)をもたらし、それは有機塗料に匹敵する。対照的に、ペリクレースから調製した、同様の組成の典型的な有機リン酸塩セメントの密度は、1.8〜2.0g/cmの間である。
【0109】
水酸化マグネシウムは、立方構造を有する焼成酸化マグネシウム(ペリクレース)とは構造的かつ形態的に異なる、六角小板またはシート構造を有する。より低密度の無機リン酸塩組成物に加えて、水酸化マグネシウムに由来する、結果として生じる無機リン酸塩組成物のシート構造は(the sheet structure of magnesium hydroxide resultant inorganic phosphate compositions derived therefrom)、焼成酸化マグネシウム由来の無機リン酸塩から調製される塗料と比較して、より滑らかな塗料および優れた耐摩耗性を提供すると考えられる。本明細書に開示および記載される、水酸化マグネシウムに由来する、結果として生じる無機リン酸塩組成物の平均粒度差(5m/gより大きい)も、焼成酸化マグネシウムのそれ(0.55m/g未満)に対する、塗料の優れた耐摩耗性および平滑性に寄与する。
【0110】
また、表2中のデータは、本明細書に開示される無機リン酸塩組成物が、エポキシ塗料よりもはるかに優れていることを実証する。例えば、無機リン酸塩組成物は、市販のエポキシ塗料の2〜3倍の接着抵抗を有し、摩耗試験結果は、エポキシの約四分の一であり、摩耗損失を表す摩耗指数は、エポキシ塗料の約三分の一である。したがって、本明細書に開示される無機リン酸塩組成物は、市場で入手可能な一部の市販の塗料よりもはるかに優れている。
【0111】
本明細書に開示される有機リン酸塩組成物の、従来のリン酸塩コンクリートとの粉末X線回折比較
下の図1は、一方が薄い被膜としてスプレーされ、もう一方が厚い被膜としてスプレーされた、実施例1に記載される通り調製された2つの同一サンプルのX線回折パターンを示す(「A」と表示)。両方の塗料は、正確に同じパターンを呈し、実施例1にあるような塗料配合物が、薄いかまたは厚い塗料として使用され得ることを示す。図1の主なピークは、CaSiO、Mg(OH)およびMgKPO.6HOを表す。しかし、各々のピークは広がっている。X線回折ピークの幅は、非晶質相または微晶質相を示す。比較のために、焼成酸化マグネシウムにより生成される化学的に類似のリン酸塩セメントである、セラミクリートのX線回折パターンを、図2中でサンプル実施例1のそれに重ね合わせて再現する。データは、実施例1からのサンプルの対応するピークが、セラミクリートのよりも広いことを示し、それは、本明細書に開示される無機リン酸塩組成物中の非晶質量(低い結晶化度)が、セラミクリート中の含有量よりも実質的に高いことを示す。図2のデータも、セラミクリートにおいて、焼成酸化マグネシウムピークが、本明細書に開示される無機リン酸塩組成物のものよりも実質的に大きいことを示し、相当量の酸化マグネシウムがセラミクリート中で未反応か、またはマクロ結晶形のまま残っていることが示される。したがって、本明細書に開示される無機リン酸塩組成物中の酸化物の反応は、恐らくより完全であり、かつ/または結晶酸化物の量が実質的に減少し、結果的に、塗料に適した実質的低い結晶化度の製品をもたらす。
【0112】
実施例2.リン酸アルミニウム組成物
30gの水酸化アルミニウム(ギブサイト、Al(OH))を、室温にて173.4gのリン酸溶液(HPO、50重量%、モル比Al(OH):HPO=1:2.3)に添加した。1.5g(5重量%)のフッ化カリウム、および1.5gの過マンガン酸カリウムを、この酸にAl(OH)と一緒に添加した。混合物を、60分〜約3時間、100〜110℃にて攪拌した。室温まで冷却後の得られた製品は、粘稠なペーストであった。これに酸成分Aとラベルを付けた。
【0113】
例となる酸化剤として、過マンガン酸カリウムを、実施例2における水素形成を減少させるための随意の試薬として添加した。酸化剤の使用により、表面、例えば鋼/鉄表面などに接着性の改善が得られる。鋼/基材での実施例2の組成物の塗料の結果は、酸化剤の不在下でのその接着性と比較して、無機リン酸塩組成物と金属との間の接着性の改善をもたらした。その他の適した酸化剤、例えば、水溶性酸化剤、例えばクロム酸カリウム、クロム酸ナトリウム、またはカリウム、マグネシウム、およびアルミニウムの硝酸塩などを使用できる。
【0114】
図3のX線回折パターンは、かなり結晶質である水酸化アルミニウムが、上記のプロセスにおいてリン酸溶液と混合された場合、幅の広いハローパターンから明らかなように、低結晶質の形態の水酸化アルミニウムをもたらすことを示す。従来のリン酸塩セメントにおいて、そのような非晶質の非結晶相は、わずかであるかまたは存在しない(示さず)。非晶質成分Aは、透明な蜂蜜のようなペーストをもたらす。このことは、図4に示される写真において見ることができる。これらを様々な濃度のヒドロリン酸アルミニウムで製造したが、すべて透明な厚いゲルを生成する。
【0115】
塩基性成分を、10,000センチポイズの近似粘度をもつ前駆体を生成するために十分な水中で珪灰石およびMgOを3:1の重量比で混合することにより生成した。同様に、別の実験において、ムライトを珪灰石の代わりに加えた。この塩基性成分にBのラベルを付けた。塩基性成分は、有効量の水酸化マグネシウムを有するマグネシウムブラインであり得る。
【0116】
これら2つの成分(A+B)を8:3の重量比で混合し、得られる前駆体組成物を、軟鋼、アルミニウム、木材、およびセメント板を含む様々な基材にコーティングした。サンプルを1週間置いて硬化させた。図5は、この塗料のX線回折パターンを、比較のために珪灰石および第1の酸性リン酸塩成分のパターンとともに示す。
【0117】
同様に、図6は、ムライトおよび部分Aで製造した塗料、さらにはムライトと部分Bとして酸化マグネシウムの混合物ならびにヒドロリン酸アルミニウムのX線回折パターンを示す。すべてのサンプルは非常に硬く、様々な基材によく接着した。得られる塗料は、容易に傷を付けることができず、基材が硬い物体に当たった場合でさえも取り除かれることはできなかった。
【0118】
図5および6中の成分および硬化塗料の比較は、たとえ高度に結晶性のムライト、珪灰石、および酸化マグネシウムを出発物質として使用しても、硬化無機リン酸塩組成物中のこれらの結晶性材料に関連するX線回折ピークは、高さが実質的に低下し、個々の成分よりも広かったことを示す。したがって、硬化無機リン酸塩組成物の結晶化度は、実質的に低下している。特定の理論にとらわれるものではないが、酸性成分は、本明細書に開示および記載される無機リン酸塩組成物について、この結晶形態の減少を発展させ、かつ、または提供することに、少なくとも部分的に関与していると考えられる。
【0119】
図7は、プラスチックカップにスプレーされたこれらの最終塗膜を示す。これらはすべて、外観は均質で、表面は滑らかで、高密度である。通常のセラミクリートは、少なくともそれが本明細書に開示される無機リン酸塩組成物のこの実施形態の有する結晶形態の減少を有さないために、これらの特有の特性を示さない。
【0120】
実施例3:ベルリナイト塗料の形成方法
熱力学的原理に基づく理論的解析は、リン酸三水素アルミニウムが、酸化アルミニウム(コランダム、Al)と反応した場合、約150℃でリン酸アルミニウム(AlPO)(ベルリナイト)を生成することを示す。1,500℃まで安定しているベルリナイトの鉱物相は、高温塗料をもたらす。したがって、100グラムのリン酸三水素アルミニウム(AlH(PO・5HO)の実施例2に開示される粘稠なペーストを、50グラムの酸化アルミニウム微粉末と混合し、完全に混合して厚いペーストを形成する。これを、175℃に予熱した軟鋼基材の上に刷毛で塗った。最初は、一部の水画分がペーストから蒸発したが、その後塗料は鋼によく接着した。全堆積体を175℃で約3時間維持した。ひとたびすべての脱気および蒸発が起こると、第2の被膜を塗付し、約3時間175℃で硬化させた。鋼表面に形成された、得られる厚い塗料は、硬く、高密度で鋼に非常によく接着した。実施例3から調製した、形成された塗料のX線回折研究により、塗料が本質的にベルリナイトであることが示された。したがって、本明細書に開示および記載される方法は、ベルリナイト−前駆体配合物を調製し、その後に、高温保護を提供するかまたは物品、例えば金属およびその他の建築材料などの高温使用を改良するために有用なベルリナイト塗料を形成するための比較的簡単な手段を提供する。
【0121】
実施例4.フライアッシュ充填剤を含有する無機リン酸塩組成物
この実施例では、アルカリ性成分は、55重量%のブライン、22重量%のF種フライアッシュ、6重量%の水酸化ジルコニウム、14重量%の水、および3重量%の市販のペイント調節剤を含む。すべての成分を完全に混合して、近似粘度10,000センチポイズのペーストを形成する。酸性成分を、68%のリン酸一カリウムおよび31重量%の水、少量の沈殿防止剤および藻類の増殖を防ぐための酸化銅を混合することにより、ペーストとして調製した。
【0122】
2成分溶液を、複数のスプレーガン中で、1:1.5の酸性対アルカリ性成分の容積比で使用した。それらを、軟鋼板および摩耗試験に使用される標準板にスプレーした。硬化した後、塗料を含む板を、ASTMプロトコールに従って耐摩耗性および接着性について試験した。3つの異なるサンプルならびに市販のエポキシ塗料対照での結果の平均値を、下の表3に示す。
【0123】
【表3】

【0124】
表3に示される結果は、すべての点で、フライアッシュを含む無機リン酸塩組成物塗料が、エポキシ対照塗料と比較して良好な耐摩擦性および耐摩耗性を示したことを実証する。接着抵抗は、エポキシ塗料の約50%高く、耐摩擦性は少なくとも2倍である。このことは、フライアッシュ塗料を含む無機リン酸塩組成物塗料が市販のエポキシ塗料よりも優れていることを示す。
【0125】
実施例5.ムライト充填剤を含有する無機リン酸塩組成物
この実施例では、実施例4と同じ組成物を、フライアッシュの代わりに、微粉末形態のムライト(3Al.2SiO)を代わりに使用することを除いて調製した。2つの成分(酸性リン酸塩/塩基性水酸化物)の割合は、実施例4と同じであり、およびサンプルを軟鋼板および摩擦板の上にスプレーすることにより調製した。これらの試験の結果を表4に示す。
【0126】
【表4】

【0127】
実施例4の例のように、実施例5の結果は、すべての点で、ムライトを含む無機リン酸塩組成物塗料も、エポキシ対照塗料と比較して改良された性能特性を示すことを示す。実施例5の接着抵抗は、エポキシ被膜のそれよりも約20%高く、耐摩擦性は少なくとも2倍である。このことは、フライアッシュ塗料が実行可能であるだけでなく市販の塗料よりもはるかに優れていることを示す。
【0128】
実施例6.凝集体の置換を行わないスプレーコーティングのための凝集体/リン酸マグネシウムカリウム組成物
第1の(酸性)成分は、水溶液中で測定すると約4.2のpHを有するリン酸一カリウム(MKP)で構成された。リン酸カルシウム前駆体を使用することもできる。MKP粉末(約74μmサイズのUS200篩)を添加し、2.5重量%のリン酸を添加することにより(50%稀薄溶液として添加)溶液pHを3.2〜3.5の間に調節した。0.5重量%の酸化銅を、藻類の増殖を防ぐために場合により添加した。溶液を、約10,000センチポイズの粘度を生じるように水で調節した。この成分(成分A)の密度は、約1.9g/cmであった。
【0129】
第2の成分(アルカリ性)を、次の通り調製した:水酸化マグネシウムの供給源として、必要量のマグネシウムブライン溶液(Martin Marietta)を、ミキサーの中に秤量した。Zr(OH)粉末をブラインに添加し、5〜10分間均質になるまで攪拌した。325メッシュを通る珪灰石を、この溶液にゆっくり添加し、10〜15分間混合した。さらなる量の水を添加して、粘度を約20,000〜25,000センチポイズに調節した。この液体成分の密度は、1.25g/cmであり、この溶液中の粒子の平均粒度は約5.6μm以下と測定された。したがって、第2の成分は、約69重量%のマグネシウムブライン(約61重量%のMg(OH)を提供)と、残りの水で構成された。MgOHブラインは、MgO、好ましくは焼成MgOと置き換えることができる。以下は、噴霧されて薄膜のペイントのような塗膜をもたらすことのできる、スプレーコーティングに適した高固形分添加リン酸塩前駆体成分の例である。これらの例は、部分A(例えば、MKP)および部分B(例えばMgO)の固体を使用する。上記のいずれの部分の置換も想定される。表5に、例となる噴霧可能な組成物(サンプル1および2)を要約する。
【0130】
【表5】

【0131】
サンプル3:必要量の85%リン酸を添加した一定量の水に、酸性リン酸塩前駆体(例えばリン酸一カリウム(MKP))を添加し、1分未満(less then a minute)混合し、それに続いて高剪断分散ブレードで10分間混合しながら沈殿防止剤(例えば、キサンタンガム)を添加した。水−リン酸塩混合物は、濃厚となり、色を不透明に変え、その後必要量のMKPを懸濁液に添加する。上記のサンプル(1および2)中、約1〜60重量%の樹脂被覆シリカ(Clifford Estes Company,Fairfield,NJより入手したEstes Colored Aggregates、粒径約30〜70メッシュ)は、すべて1つの成分部分に分配され得、またはどちらの成分部分中にも(同等にまたは不等に)分配され得る。30〜325メッシュのサイズの凝集体着色剤も、約(abut)1〜60の重量%の固体添加量で、本発明の配合物において有用である。好ましくは、Estes Colored Aggregatesは、部分Aに約0〜30重量%またはそれ以上の固体レベルで添加され得る。少なくとも1つの例において、6重量%のEstes Colored Aggregatesを上記サンプル2に使用し、最終塗装において優れた色および外観を得た。また、着色された人工砂または天然の有色砂および凝集体を同様の結果で用いることができることも観察された。上のサンプル中、約0.2重量%のキサンタンガムを沈殿防止剤として使用した、(部分B中に約0.05重量%使用)。2つの成分を、蠕動ポンプを有する複数スプレー系を用いて、スプレー用に1:1の容積比で組み合わせた。同様の結果は、噴霧するために高圧をもたらす高圧ピストンポンプ(エアレススプレー)を用いて実現することができる。あるいは、静的混合および噴霧のためのエアアシストを含む、多チャンネルポンプ、複数ピストンポンプ、ラム排出押出機、2成分コーキングガンまたは漸進式キャビティポンプを使用することもできる。このスプレー系の2つのカートリッジに、別々に2つの成分を充填した。スプレーガンは、2つの成分をスプレーする前に混合することのでき得る混合管で構成された。組成物を、様々な基材、例えば、鋼、木材、ハードボード、アルミニウム、コンクリート、軟鋼Taberパネルにスプレーした。コーティングした厚さは、約5ミルであり、凝集体着色剤からの目立つ色を有した。約20ミルまでの塗膜は、本明細書に開示される方法を用いて達成可能である。塗料を周囲条件で硬化させ、リン酸塩セメントの特徴をもつ優れた塗料をもたらした。対照的に、通常のスプレーされたペイントは、いかなるサイズの凝集体の同様量も保持しない流れまたは垂れを避けるために薄い(<2ミル)ことを必要とした。したがって、一態様では、その他の非セラミックの迅速硬化(set/cure)塗料は、凝集体のいくらかの機械的な確保が得られるように、塗料の厚さが少なくとも20ミルであれば、かかる凝集体を用いることができる。
【0132】
さらに、乾燥させるのに長い時間がかかり、凝集体をその最初に置いた位置から移動させ、かつ/またはそれが「機械的に」適所に保持され得る前に落ちる通常のペイントとは違って、本発明のリン酸塩セラミックスプレー用組成物は、迅速に硬化し、凝集体が移動または落下することなく垂直面および頭上表面にスプレーされるのに十分な程度に、少なくとも機械的に、凝集体を適所に保持する。
【0133】
一態様では、樹脂被覆シリカ凝集体を含む本発明のリン酸塩セラミックスプレー用組成物は、凝集体の樹脂塗料と実質的に結合しない、したがって、例えば、樹脂塗料の部分をコーティングまたはカバーリングすることによるのではなく塗料の美的価値を改善し、したがって凝集体の色をより多く目に見えるようにする。これは、色素を含まないリン酸塩セラミックの天然の半透明の外観により増強されて、より鮮やかな色の見えをもたらす。
【0134】
もう1つの態様では、本発明のリン酸塩セラミックスプレーコーティングは、テクスチャを加えるためにその他の凝集体を含むことができる。もう1つの態様では、本発明のリン酸塩セラミックスプレーコーティングは、自然な仕上がり、例えば、単一色の砂漆喰型の仕上がりを得るために、着色されていない天然の凝集体(例えば、砂、タルク、など)を含むことができる。
【0135】
もう1つの態様では、本発明のリン酸塩セラミックスプレー用組成物は、基材、例えば、金属表面の下塗層として使用され、その後にアクリルまたはウレタン塗料などのポリマー塗料でコーティングされる。前記金属表面は、輸送用車両例えば、シャシであり得る。必要に応じて、酸化アルミニウムを、得られるリン酸塩セラミックの硬度を増加させるのに十分な量で、第1および第2の成分のいずれかまたは両方に添加することができる。
【0136】
上記の凝集体リン酸塩セラミック組成物がスプレー系に有用であるとして開示されたが、同じテクスチャ加工された組成物および/または着色剤組成物は、スプレーコーティング以外の(non−spraying coating)方法による、例えばコテなどによる塗付に適している。
【0137】
本明細書において使用される、構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字は、すべての場合に用語「約」により変更されると理解され得る。したがって、他にそうでないことが示されていない限り、本明細書に示される数値パラメータは、得ようとする所望の特性によって変動する可能性のある近似値であり得る。
【0138】
上記の説明は、いくつかの方法および材料を開示する。これらの説明は、方法および材料において変更を、ならびに二次加工法および装置において改変を受けやすい。かかる変更は、本開示の検討または本開示の実践から当業者に明らかとなる。結果的に、本開示は、本明細書に開示される特定の実施形態に制限されるものでなく、特許請求の範囲の真の範囲および精神の中に入るすべての変更形態および代替形態を網羅することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式A(HPO・nHOの酸−リン酸塩の水溶液を含む第1の成分であって、上式で、Aは、水素イオン、アンモニウムカチオン、金属カチオン、またはその混合物であり、m=1〜3、かつn=0〜6であり、前記第1の成分の溶液が約2〜約5のpHに調節されている第1の成分と、
2m、B(OH)2mで表されるアルカリ性酸化物もしくはアルカリ性水酸化物、またはその混合物の水溶液を含む第2の成分であって、上式で、Bは、原子価2mの元素(m=1、1.5、または2)であり、前記第2の成分の溶液が9〜14の間のpHに調節されている第2の成分と、
前記第1の成分または前記第2の成分のいずれかに剪断減粘性をもたらす能力があり、さらに、噴霧のために高い固体含有量の前記第1の成分または前記第2の成分を懸濁する能力のある量のレオロジー改質剤/沈殿防止剤と、
所望により、前記第1および前記第2の成分のうちの少なくとも1つにおいて、観察可能な色および/またはテクスチャを付与する能力のある量で存在する凝集材料と
を含む、噴霧可能なリン酸塩セラミックスプレー用組成物。
【請求項2】
前記第2の成分が、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、および水のうちの少なくとも1つである請求項1に記載のリン酸塩セラミックスプレー用組成物。
【請求項3】
前記第1の成分が、約2〜約10重量%のリン酸、水、ならびにリン酸一カリウムおよびリン酸一カルシウムのうちの少なくとも1つを含む請求項1に記載のリン酸塩セラミックスプレー用組成物。
【請求項4】
前記リン酸塩セラミックの硬度を増加させる量で存在する酸化アルミニウムをさらに含む請求項1に記載のリン酸塩セラミックスプレー用組成物。
【請求項5】
前記レオロジー改質剤/沈殿防止剤が、グアーガム、ダイユータンガム、ウェランガム、およびキサンタンガムの少なくとも1つである請求項1〜4のいずれか一項に記載のリン酸塩セラミックスプレー用組成物。
【請求項6】
前記凝集体が、少なくとも約1重量%〜約60重量%の量で存在する請求項5に記載のリン酸塩セラミックスプレー用組成物。
【請求項7】
前記凝集体が、樹脂被覆シリカおよび天然有色鉱物凝集体の少なくとも1つである請求項6に記載のリン酸塩セラミックスプレー用組成物。
【請求項8】
前記凝集体が、約20メッシュマイクロン〜約400メッシュの平均粒度を有する請求項6に記載のリン酸塩セラミックスプレー用組成物。
【請求項9】
前記凝集体の平均粒度が、少なくとも約20メッシュ以下であり、塗料の塗付後は約20ミル未満であり、垂直表面または頭上表面の塗膜中に前記凝集体を実質的に保持する請求項6に記載のリン酸塩セラミックスプレー用組成物。
【請求項10】
リン酸塩セラミックを噴霧する方法であって、
(i)化学式A(HPO・nHOの酸−リン酸塩の水溶液を含む第1の成分であって、上式で、Aは、水素イオン、アンモニウムカチオン、金属カチオン、またはその混合物であり、m=1〜3、かつn=0〜6であり、前記第1の成分の溶液が約2〜約5のpHに調節されている第1の成分と、(ii)B2m、B(OH)2mで表されるアルカリ性酸化物またはアルカリ性水酸化物、またはその混合物の水溶液を含む第2の成分であって、上式で、Bは、原子価2mの元素(m=1、1.5、または2)であり、前記第2の成分の溶液が9〜14の間のpHに調節されている第2の成分と、ここで、前記第2の成分は噴霧前では前記第1の成分から切り離されており、(iii)前記分配装置を出る前に前記第1の成分または前記第2の成分の剪断減粘性をもたらす能力があり、さらに、噴霧のためその粘度を低下させる、高い固体含有量の前記第1の成分または前記第2の成分のいずれかを懸濁する能力のある量のレオロジー改質剤/沈殿防止剤と、(iv)場合により、前記第1および前記第2の成分のうちの少なくとも1つにおいて、観察可能な色および/またはテクスチャを付与する能力のある量で存在する凝集材料とを準備するステップと、
前記第1の成分および第2の成分を噴霧するステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記噴霧するステップが、多チャンネルポンプ、複数ピストンポンプ、蠕動ポンプ、ラム排出押出機、および漸進式キャビティポンプの少なくとも1つを用いて、噴霧オリフィスを通じて前記第1の成分および前記第2の成分を促すことを含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記噴霧するステップが、前記第1の成分、前記第2の成分、および前記凝集体を混合するように構成されているミキサーをさらに含む請求項10〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記噴霧するステップが、前記第1および第2の成分を本質的に同時に分配することを含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記レオロジー改質剤/沈殿防止剤が、グアーガム、ダイユータンガム、ウェランガム、およびキサンタンガムの少なくとも1つである請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記凝集体が、少なくとも約1重量%〜約60重量%の量で存在する請求項10〜11または12〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記凝集体が、約20メッシュ〜約400メッシュの平均粒度を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記凝集体が、天然有色鉱物凝集体を含む凝集体着色剤および樹脂被覆シリカを含む凝集体着色剤の少なくとも1つである請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記凝集体が、塗付後に前記スプレー用組成物に表面テクスチャをもたらす平均粒度をもつ請求項16に記載の方法。
【請求項19】
約20ミル未満の厚さの塗膜を形成し、垂直面または頭上表面に塗付された場合に前記凝集体を前記塗膜の中に保持するステップであって、前記凝集体が少なくとも400メッシュであるステップをさらに含む請求項10〜11、13〜14、16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項10〜11、13〜14、16〜18のいずれか一項に記載の方法により被覆された製品。
【請求項21】
リン酸塩組成物を製造する方法であって、
化学式A(HPO・nHOの酸−リン酸塩の水溶液を含む第1の成分であって、上式で、Aは、水素イオン、アンモニウムカチオン、金属カチオン、またはその混合物であり、m=1〜3、かつn=0〜6であり、前記第1の成分の溶液が約2〜約5のpHに調節されている第1の成分を準備するステップと、
2m、B(OH)2mで表されるアルカリ性酸化物もしくはアルカリ性水酸化物、またはその混合物の水溶液を含む第2の成分であって、上式で、Bは、原子価2mの元素(m=1、1.5、または2)であり、前記第2の成分の溶液が9〜14の間のpHに調節されている第2の成分を準備するステップと、
前記第1の成分および前記第2の成分を一緒に組み合わせるステップと
を含む方法。
【請求項22】
前記第1の成分の前記pHが、約2.5〜約5の間に調節されている請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の成分の前記pHが、約3〜約4.5の間に調節されている前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の成分の前記pHが、約9〜約13の間に調節されている請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の成分が、リン酸、式M(HPOのリン酸二水素塩およびその水和物、またはその混合物を含み、上式で、Mが、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、またはその混合物であり、mが、1〜3である請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の成分が、アルカリリン酸二水素塩M(HPO)もしくはその水和物、リン酸、アルカリ土類リン酸二水素塩M(HPOもしくはその水和物、または三価金属リン酸三水素塩MH(POもしくはその水和物のうちの少なくとも2つを含む請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の成分が、式M(POで表されるリン酸水素金属およびその水和物を含み、上式で、Mが、アルミニウム(III)、鉄(III)、マンガン(III)、ランタン(III)、セリウム(III)、イットリウム(III)、スカンジウム(III)から選択されるランタニド類、およびそれらの混合物である請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記溶液の前記pHが2〜5の間であるように、前記第1の成分が、リン酸もしくはリン酸三水素アルミニウムまたはその水和物の1以上と組み合わせて、リン酸一カリウムまたはその水和物を含む請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の成分が、リン酸カルシウムまたはその水和物を含む請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
Aが、ナトリウム、カリウム、セシウム、鉄(II)、鉄(III)、マグネシウム(II)、亜鉛(II)、アルミニウム(III)、ビスマス(III)、ジルコニウム(IV)またはその混合物である請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の成分が、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、または塩基性鉱物と組み合わせて、リン酸、アルカリ金属リン酸二水素塩MHPO、アルカリ土類リン酸二水素塩M(HPOもしくはその水和物、遷移金属リン酸三水素塩MH(POもしくはその水和物、またはそれらの混合物を含む請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の成分が、式BOで表される酸化物、または式B(OH)で表される水酸化物を含み、上式で、Bが、アルカリ土類金属または遷移金属である請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
Bが、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、イットリウム、ランタニド、ジルコニウム、鉄、ビスマスまたはマンガンである請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の成分が、マグネシウム、バリウムカルシウム、亜鉛、鉄(II)、マンガン(II)、またはその混合物の酸化物または水酸化物である請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の成分が、約9〜約11のpHを有するマグネシウムブラインであり、前記マグネシウムブラインが、有効量の水酸化マグネシウムを含有する請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の成分が、約10〜11のpHを有するマグネシウムブラインであり、前記マグネシウムブラインが、有効量の水酸化マグネシウムを含有する請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
第2の成分が、六角小板形態を有する水酸化マグネシウムである請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の成分が、約9〜約11のpHを有するマグネシウムブラインであり、前記マグネシウムブラインが、有効量の水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム前駆体、オキシ硫酸マグネシウム前駆体、またはその混合物を含有する請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の成分が、リン酸一カリウムまたはその水和物であり、前記第2の成分が、約9〜約11のpHを有するマグネシウムブラインであり、前記マグネシウムブラインが、有効量の水酸化マグネシウムを含有する請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の成分が、リン酸カルシウムまたはその水和物であり、前記第2の成分が、約9〜約11のpHを有するマグネシウムブラインであり、前記マグネシウムブラインが、有効量の水酸化マグネシウムを含有する請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の成分が、リン酸一カリウムまたはその水和物であり、前記第2の成分が、約9〜約11のpHを有するマグネシウムブラインであり、前記マグネシウムブラインが、有効量の水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、オキシ塩化リン酸マグネシウム前駆体、オキシ硫酸リン酸マグネシウム前駆体、またはその混合物を含有する請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の成分が、Mg(POまたはその水和物を含み、前記第2の成分がアルカリ金属酸化物またはアルカリ金属水酸化物を含むか、または、前記第1の成分が、AlH(POまたはその水和物を含み、前記第2の成分がアルカリ金属酸化物またはアルカリ金属水酸化物を含むか、または、前記第1の成分が、リン酸一カリウムまたはその水和物であり、前記第2の成分が、六角小板形態を有する水酸化マグネシウムである請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の成分が、リン酸一カリウムまたはその水和物であり、前記第2の成分が、水酸化マグネシウムであり、得られる反応生成物の結晶形態が減少している請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記第1および第2の成分の組合せが、結果的に低下した結晶化度または減少した核形成中心をもつ材料をもたらす請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記第2の成分が、珪灰石、タルク、フライアッシュ、カオリン粘土、カオリナイト、メタカオリン、ムライト、アルミン酸カルシウム鉱物、ケイ酸カルシウム鉱物、ケイ酸アルミニウム鉱物、ケイ酸アルミニウムカルシウム鉱物、またはその混合物を、前記第2の成分に対して1:0.5〜1:6の間の重量比でさらに含む請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記第2の成分が、アルカリ土類金属オキシ塩化リン酸塩前駆体、アルカリ土類金属オキシ硫酸リン酸塩前駆体、またはその混合物である請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記第2の成分が、反応性充填剤の珪灰石(CaSiO)、タルク(MgSi10(OH)、ムライト(アルミノケイ酸塩)、C種フライアッシュおよびF種フライアッシュの両方をさらに含み、前記反応性充填剤が、前記第2の成分に対して1:0.05〜1:6の重量比で存在する請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法により被覆された製品。
【請求項49】
一般式:
i)B(A3−mPO(式中、Aは、m=1または2の原子価を有し、Bは、s=1、または2の原子価を有する)、
ii)B(A(2/m)PO(式中、Aは、m=1または2の原子価を有し、Bは、s=1、または2の原子価を有する)、
iii)(2/m)(PO(式中、Aは、m=1または2の原子価を有し、Bは、3の原子価を有する)、または
iv)B(AOPO(式中、Aは、4の原子価を有し、s=1または2であり、Bは、1、または2の原子価を有する)
の無機リン酸塩化合物であって、
前記無機リン酸塩i〜ivが、以下の特徴:
a)X線回折により測定される、存在する焼成アルカリ/アルカリ土類酸化物粒子の量の実質的減少、または
b)組成的に同様の無機リン酸塩セラミックまたはセラミックと比較した、X線回折により測定される結晶形態の減少、
c)組成的に同様の無機リン酸塩セラミックと比較した密度の低下
の少なくとも1つを有する無機リン酸塩化合物。
【請求項50】
前記密度が、1.8g/cm未満である請求項49に記載の無機リン酸塩化合物。
【請求項51】
前記密度が、1.5g/cm未満である請求項49に記載の無機リン酸塩化合物。
【請求項52】
前記化合物が、以下の:MgKPO、Mg(ZnPO、Mg(KPO、MgKPO、Mg(ZnPO、Mg(KPO、AlMg(PO、Mg(ZrOPO、Mg[Zr(OH)PO、およびリン酸カルシウム/マグネシウムの少なくとも1つである請求項49に記載の無機リン酸塩化合物。
【請求項53】
リン酸塩含有組成物を製造する方法であって、
Mが原子価4の元素であり、m=1〜3である、化学式(MO)(HPOおよびその水和物のオキシ−リン酸塩の溶液を含む第1の成分を準備するステップであって、前記第1の成分の溶液が、2〜5の間のpHに調節されているステップと、
Bが、原子価2mの元素(m=1、1.5、または2)であるB2mまたはB(OH)2mで表されるアルカリ性酸化物またはアルカリ性水酸化物の溶液を含む第2の成分を準備するステップと、
前記第1の成分および前記第2の成分を一緒に組み合わせるステップと
を含む方法。
【請求項54】
Mが、ジルコニウム(IV)である請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記pHが、2〜5の間に調節されている請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記第1の成分が、前記pHを2〜5の間に低下させる一定量の塩酸または硫酸と組み合わせて、オキシ塩化マグネシウム、オキシ硫酸マグネシウム、またはその混合物を含む請求項53〜55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
請求項53〜55のいずれか一項に定義される方法により被覆された製品。
【請求項58】
ペイント、接着剤、または塗料として適用可能な約20ミル未満の塗膜を形成するステップをさらに含む請求項53に記載の方法。
【請求項59】
前記第2の成分が、前記第2の成分の少なくとも約5重量%の量で存在するジルコニウム化合物、亜鉛化合物、または混合物をさらに含む請求項53に記載の方法。
【請求項60】
ベルリナイトを製造する方法であって、
リン酸三水素アルミニウムAlH(PO・またはその水和物を含む第1の成分を準備するステップと、
水酸化アルミニウムを含む第2の成分を準備するステップと、
前記第1の成分および前記第2の成分を一緒に組み合わせるステップと、
X線回折により検出可能なベルリナイト相(AlPO)を形成する温度まで、前記組合せたものを加熱するステップと
を含む方法。
【請求項61】
耐熱性塗料を製造する方法であって、
リン酸三水素アルミニウムAlH(PO・またはその水和物を含む第1の成分を準備するステップと、
水酸化アルミニウムを含む第2の成分を準備するステップと、
前記第1の成分および前記第2の成分を一緒に組み合わせるステップと、
物品の表面を、前記第1の成分および第2の成分の組合せと接触させるステップと、
X線回折により検出可能なベルリナイト相(AlPO)を含む塗料を形成する温度まで、前記物品の表面を加熱するステップと
を含む方法。
【請求項62】
リン酸三水素アルミニウム(AlH(PO・またはその水和物を製造する方法であって、
酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウム水和物の少なくとも1つとリン酸とを含む溶液を、前記酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウム水和物の少なくとも1つの最大量が溶解する時間および温度で加熱するステップと、
冷却して粘稠な溶液を形成するステップと
を含む方法。
【請求項63】
前記粘稠な溶液を、マグネシウムブライン、水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムの少なくとも1つと組み合わせて、反応性混合物を形成するステップと、
前記反応性混合物を基材に塗付するステップと
をさらに含む請求項62に記載の方法。
【請求項64】
請求項62〜63のいずれか一項に記載の方法により被覆された製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−513703(P2013−513703A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543319(P2012−543319)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059958
【国際公開番号】WO2011/072262
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512152732)ラティテュード・18,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】