説明

無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置

【課題】A0判〜A2判といった大面積の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置を導電性壁面に貼り付けても、漏洩電流を防止できる無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
【解決手段】第1の導電性フィルム121と蛍光体層122と背面電極123をこの順に有する無機分散型エレクトロルミネッセンス素子10と、背面電極側123にこの順で設けられた電気的絶縁層31と第2の導電性フィルム32とから成る絶縁層付導電性フィルム30とで構成し、その表側と裏側を防湿フィルム11と13で覆い、使用する際に第2の導電性フィルム32を接地するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に壁、円柱、床、天井等に設置して用いる大容量型の無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置の漏電対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子は、高誘電体中に蛍光体粒子を分散してなる粒子分散型素子と、誘電体層間に蛍光体薄膜を挟んでなる薄膜型素子等の無機エレクトロルミネッセンス素子と有機エレクトロルミネッセンス素子に大別される。 本発明は、主に、粒子分散型無機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【0003】
図5は粒子分散型エレクトロルミネッセンス素子を用いた従来のEL表示装置の縦断面図である。
図において、50は従来のEL表示装置で、防湿フィルム51、分散型エレクトロルミネッセンス素子52、防湿フィルム53から構成される。また、EL素子52は透明導電フィルム521、蛍光体層/反射絶縁層522、背面電極523からこの順で構成されている。
【0004】
このように、分散型エレクトロルミネッセンス素子52は、少なくとも一方が光透過性の一対の導電性電極フィルム521−523間に、フッソ系ゴムあるいはシアノ基を有するポリマーのような高誘電性ポリマー中に蛍光体粉末を含んで成る発光層522が設置された素子であり、さらに絶縁破壊を防ぐために高誘電性ポリマー中にチタン酸バリウムのような強誘電体の粉末を含んで成る誘電体層が設置されるのが通常の形態である。
【0005】
粒子分散型エレクトロルミネッセンス素子52は、素子構成時に高温プロセスを用いないため、(1)プラスチックを基板としたフレキシブルな材料構成が可能であること、(2)真空装置を使用しなくても比較的簡便な工程で、低コストで製造が可能であること、また、(3)発光色の異なる複数の蛍光体粒子を混合することで素子の発光色の調節が容易であるという特長を有しているので、バックライト、表示素子へ広く応用されている。
【0006】
この粒子分散型エレクトロルミネッセンス素子52の特徴は、大面積を均一に発光できることや、フィルム状の光源として、薄く軽量で、ある程度の曲げ等が可能なことから設置場所を選ばず、簡便な方法で、壁、円柱、床、天井等に設置できることにあり、これらの使用が今後益々期待されている。
【0007】
しかしながら、粒子分散型エレクトロルミネッセンス素子52自身は、一対の導電性電極フィルム521−523を有するといった前述の構成から類推される様に、容量性負荷素子であり、十分な輝度に発光させるためには、実効値で100V以上、400Hz以上の交流電圧の印加が必要である。そのため、これを駆動するインバーター電源を必要となった。
【0008】
また、従来の粒子分散型エレクトロルミネッセンス素子は壁や円柱、床、天井に設置するといった大容量のものを想定していなかったので、問題とならなかったが、今回、壁、円柱、床、天井に設置する大容量の素子を想定して、初めて容量性負荷である素子自身と壁ないし円柱、床、天井等との間に問題となる浮遊容量が発生する可能性、および壁が導電性のものでかつインバーター電源の種類によっては、これまで意図せぬ漏洩電流が発生する可能性が出てくることに気がついた。
そして、原因究明の結果、特に、LCフィルタをインバータ出力側に備えた駆動回路の場合に、漏洩電流が現われることが判った。
【0009】
図6は図5の従来のEL表示装置を交流駆動したときに、漏洩電流が発生する原因を説明する回路図である。
図において、50は図5記載のEL表示装置、60はEL駆動装置筐体、60AはEL駆動回路(ドライバ)、60Bは出力フィルタ、61は商用交流電源(100V)、90は導電性壁面で結露などの生じる雰囲気に置かれた壁等を想定している。EL駆動回路60Aには、商用交流を整流して直流に変換する整流回路、整流脈動電圧を平滑する平滑回路、平滑回路の出力を交流に変換するインバータ、インバータ出力のうち1kHz〜2kHzの周波数帯域を通過させる出力部フィルタ60Bが含まれている。
【0010】
<漏洩電流が発生すると考えられる理由>
漏洩電流は次のようにして発生すると考えられる。
EL駆動回路60Aを100V商用交流電源61に接続すると、EL駆動回路60A内の出力フィルタ60Bを経て、周波数1kHz〜2kHzの交流が導電フィルムであるEL表パネル521と背面電極であるEL裏パネル523との間に印加され、発光表示する。ところが、ELパネルが大型であるので、背面電極523と導電性壁面90との間に大きな分布容量(コンデンサ)が形成されることになり、そこでオペレータ(人)がEL駆動装置筐体60に触れると、分布容量に蓄えられていたチャージがアースから人を介してEL駆動装置筐体60内の出力部フィルタ60Bのコンデンサに流れ、さらに背面電極523に戻る閉ループが形成されて、漏洩電流が人に流れることとなる。
【0011】
また、高輝度化を実現するためには、電圧及び周波数をおのおの100V以上、1KHz以上にすることが好ましいが、その場合にはその漏洩電流が大きくなる傾向があり、特に、壁、円柱、床、天井等に設置する場合には、しばしば高い視認性や比較的大きな光量を得ることが求められるため、駆動電圧及び周波数も高くなる傾向が要求されてきている。
【0012】
エレクトロルミネッセンス素子の劣化による輝度低下を補う手段として、様々な電源技術が開示されている。例えば、素子の劣化に伴う輝度の補償をする方法として、劣化による容量の低下に伴う電流量の低下を補うため、電流を検出して電圧と周波数を上げることで電流を補い、輝度低下を抑制することが行われる。この様な場合においては、電圧及び周波数は、初期の設定値に対して典型的には、200V以上、1KHz以上まで上がることになり、前述の漏洩電流の問題が無視できなくなる。
【0013】
また、この問題は、例えばパルス・ワイド・モデュレーション(Pulse Wide Modulation:パルス幅変調)方式の電源などの場合、1KHz前後の駆動周波数を出力するための基本発信周波数は、10KHz以上の交流を用いることがしばしば行われるが、この場合、この高い周波数に起因する漏洩電流が、発生しやすくなる。
【0014】
また、素子が大面積化したり、素子の容量が大きくなるほど、漏洩電流も増えることになる。従って、分散型エレクトロルミネッセンス素子の特徴である大面積での発光及び高輝度化や発光寿命延長を実現するには、上記問題を解決する必要がある。
【0015】
一方、本発明の構成と類似した構成の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置として、特許文献1記載のものがある。
【特許文献1】特開2001−230083号公報
【0016】
図7は特許文献1記載の薄形電界発光灯の縦断面図と駆動のしかたを示す図である。この薄形電界発光灯は液晶用バックライトに好適なしかも騒音レベルを低減させた薄形電界発光灯を提供するためのもので、次のようにして製造される。
まず、厚さ100〜200μmのPET等からなる絶縁性の透明フィルム42の背面に、スパッタリングによりITOなどの透明電極層43を300〜500Åの厚みで形成し、この上に蛍光体をフッ素樹脂中に分散した発光層44を35〜45μmの厚さに印刷形成し、この上にチタン酸バリウム等の白色高誘電体物質をフッ素樹脂中に分散させた第1絶縁層(反射絶縁層)45を10〜15μmの厚さに印刷形成し、この上に銀やカーボン等の導電ペーストからなる背面電極層46を10〜20μmの厚さに印刷形成し、この上に第1絶縁層45と同一材料で同一厚さの第2絶縁層47を印刷形成し、この上に銀やカーボン等の導電ペーストからなる背面シールド電極層48を10〜20μmの厚さに印刷形成し、この上にフッ素ゴム等のゴム状弾性を有する材料又はエポキシ樹脂等の剛性を有する材料を用いて保護層兼振動減衰層49を発光層44や第1絶縁層45よりも十分に厚い膜厚(例えば約100μm)でスクリーン印刷して出来上がる。
【0017】
この電界発光灯41は、透明電極層43と背面シールド電極層48とを短絡するか又は共に接地し、これらと背面電極層46との間に交流電圧源を接続して、透明電極層43と背面電極層46との間、及び背面電極層46と背面シールド電極層48との間に逆位相の交番電界を印加することによって、第1絶縁層45と第2絶縁層47とに生じる圧電効果による歪みを相殺すると共に、振動減衰層49で振動を減衰させ、騒音を低減している。
【0018】
このように特許文献1記載の薄形電界発光灯は後述の本発明と類似の構成であるように見えるが、第1絶縁層45と第2絶縁層47とが同一材料で同一厚さのものでなければならないのに対して、本発明の第2絶縁層は第1絶縁層(強誘電体)と同一材料のものであってはならない(強誘電体だと大きな分布容量が形成されてしまうので本発明の効果が出ない)点で全く異なる。
その使い方(駆動の仕方)も上記のように透明電極層43と背面電極層46との間、及び背面電極層46と背面シールド電極層48との間に逆位相の交番電界を印加するものであり(本発明の使い方は透明電極層43と背面電極層46の間でのみ駆動。背面シールド電極層48は接地。後述)、その効果もノイズキャンセルである(本発明の効果は漏電防止)。
したがって、特許文献1記載の薄形電界発光灯は構成が一部類似しているが、特許文献1記載の薄形電界発光灯では漏電防止はできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、上記従来の表示装置における問題を解決し、大面積で高輝度、長寿命を実現する粒子分散型エレクトロルミネッセンス素子を導電性の柱や壁ないし床、天井等に設置しても漏洩電流の流れることのない安全な無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置に係り、第1の導電性フィルムと蛍光体層と背面電極をこの順に有する無機分散型エレクトロルミネッセンス素子と、前記背面電極側にこの順で設けられた電気的絶縁層と第2の導電性フィルムとから成る絶縁層付導電性フィルムと、で構成されることを特徴としている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第1の導電性フィルムおよび前記第2の導電性フィルムを防湿フィルムで覆ったことを特徴としている。
請求項3記載の発明は、無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置に係り、第1の導電性フィルムと蛍光体層と背面電極とをこの順に有する無機分散型エレクトロルミネッセンス素子と、前記第1の導電性フィルムおよび前背面電極をそれぞれ覆う第1の防湿フィルムと第2の防湿フィルムと、前記第2の防湿フィルム側にこの順で設けられた電気的絶縁層と第2の導電性フィルムとから成る絶縁層付導電性フィルムと、で構成されることを特徴としている。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第1の導電性フィルムが透明であることを特徴としている。
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の導電性フィルムが接地されて使用されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置によれば、第2の導電性フィルムを接地することで無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置の漏洩電流を防止することができる。
請求項2記載の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置によれば、防湿フィルムで覆ったので湿気の多い劣悪環境においても使用することができる。
請求項3記載の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置によれば、従来のエレクトロルミネッセンス素子に絶縁層付導電性フィルムを付加することで簡単に漏洩電流を防止することができる。
請求項4記載の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置によれば、第1の導電性フィルムが透明であるので、明るいバックライトとして使用することができる。
請求項5記載の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置によれば、第2の導電性フィルムを接地しているので、無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置の漏洩電流を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<実施形態1>
図1は本発明の実施形態1に係る無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図である。
図において、10は本発明の実施形態1に係るEL表示装置、11は防湿フィルム、12はEL素子で、表側から透明導電フィルム121と蛍光体層/反射絶縁層122と背面電極123の順で積層されて成り、13は防湿フィルムである。
以上は従来装置(図5)と同じ構成であり、さらに本発明の実施形態1により、背面電極123と防湿フィルム13との間に、背面電極123側にPET(ポリ・エチレン・テレフタレート)フィルム31と、防湿フィルム13側に導電性フィルム32とから成る絶縁層付導電性フィルム30を挿入している。図では各構成部分を判りやすくするために、バラバラに離して図示しているが、実際にはこれらの各構成部分は密着不離に一体形成されている。これが壁面90に取り付けられる。
この壁面90が導電性(導電性材料を含有する材料を用いていたり、強度を持たせるための金属メッシュを用いていたり、結露し易い雰囲気中に用いられている場合などが考えられる。)であると、従来装置で説明したように漏洩電流が流れる可能性がある。
【0023】
<使用のしかた>
そこで、本発明によれば、本発明の実施形態1に係るEL表示装置10を壁面90に取り付けた後、本発明の実施形態1により設けられた導電性フィルム32を接地するのが特徴である。
【0024】
<漏洩電流が発生しなくなる理由>
図2は図1のEL表示装置を交流駆動する回路図である。
図において、10は図1記載のEL表示装置、60はEL駆動装置筐体、60AはEL駆動回路(ドライバ)、60Bは出力フィルタ、61は商用交流電源(100V)、90は導電性壁面で結露などの生じる雰囲気に置かれた壁等を想定している。EL駆動回路60Aには、商用交流を整流して直流に変換する整流回路、整流脈動電圧を平滑する平滑回路、平滑回路の出力を交流に変換するインバータ、インバータ出力のうち1kHz〜2kHzの周波数帯域を通過させる出力部フィルタ60Bが含まれている。30は本発明によって設けられた絶縁層付導電性フィルム、32は第2の導電性フィルムで、第2の導電性フィルム32は接地されている。
【0025】
<図2において漏洩電流が発生しない理由>
EL駆動回路60Aを100V商用交流電源61に接続すると、EL駆動回路60A内の出力フィルタ60Bを経て、周波数1kHz〜2kHzの交流が導電フィルムであるEL表パネル521と背面電極であるEL裏パネル523との間に印加され、発光表示する。一方、ELパネルが大型であっても、背面電極523に絶縁層を介して設けられた第2の導電性フィルム32が接地されているので、背面電極52と導電性壁面90との間に分布容量が形成されなくなり、したがってそこでオペレータ(人)がEL駆動装置筐体60に触れても、チャージがないため、漏洩電流が人に流れることはない。
【0026】
<実施形態2>
図3は本発明の実施形態2に係る無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図である。
図において、20は本発明の実施形態2に係るEL表示装置、11は防湿フィルム、12はEL素子で、表側から透明導電フィルム121と蛍光体層/反射絶縁層122と背面電極123の順で積層されて成り、13は防湿フィルムである。
以上の各構成部が一体形成されている。これは従来装置(図5)と同じである。 本発明の実施形態2によれば、このEL表示装置20を導電性壁面90に取り付ける際に、PET(ポリ・エチレン・テレフタレート)フィルム31と導電性フィルム32とから成る絶縁層付導電性フィルム30をPETフィルム31側を防湿フィルム13側にして介在させ、かつ導電性フィルム32を接地させた点が特徴である。
【0027】
<漏洩電流が発生しなくなる理由>
図4は図1のEL表示装置を交流駆動する回路図である。
図において、20は図3記載のEL表示装置、60はEL駆動装置筐体、60AはEL駆動回路、60Bは出力フィルタ、61は商用交流電源(100V)、90は導電性壁面である。
EL駆動回路60Aを100V商用交流電源61に接続すると、EL駆動回路60A内の出力フィルタ60Bを経て、周波数1kHz〜2kHzの交流が導電フィルムであるEL表パネル521と背面電極であるEL裏パネル523との間に印加され、発光表示する。一方、ELパネルが大型であっても、背面電極523に防湿フィルムと絶縁層とを介して設けられた第2の導電性フィルム32が接地されているので、背面電極52と導電性壁面90との間に分布容量が形成されなくなり、したがってそこでオペレータ(人)がEL駆動装置筐体60に触れても、チャージがないため、漏洩電流が人に流れることはない。
【0028】
以下に、本発明のエレクトロルミネッセンス素子の好ましい態様について記載する。
<蛍光体粒子>
蛍光体粒子に関しては、特願2004−223781、特願2004−233091、特願2004−186626、特願2005−053753、特願2005−053415、特願2004−346837、特願2005−054456等に記載のエレクトロルミネッセンス用蛍光体粒子を好ましく用いることができる。
【0029】
<透明導電性フィルム>
透明導電性フィルムに関しては、特願2005−053565、特開2005−302508、特願2004−208791、特願2004−254116、特願2005−197234等に記載のものを好ましく用いることができる。
【0030】
<波長変換蛍光染料>
波長変換蛍光染料に関しては、特願2004−315982、特願2004−316405等に記載のもの及び使用法を好ましく用いることができる。
【0031】
その他、本発明の素子構成において、基板、反射絶縁層、各種保護層、フィルター、光散乱反射層などを必要に応じて付与することができる。特に、基板に関しては、ガラス基板やセラミック基板に加え、フレキシブルは透明樹脂シートを用いることができる。
【0032】
<電源>
通常分散型エレクトロルミネッセンス素子は、交流で駆動される。典型的には、100V以上で50Hzから3KHzの交流電源を用いて駆動される。輝度は面積が小さい場合には、印加電圧ならびに周波数にほぼ比例して増加する。本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、0.1m2以上の大サイズでも高い周波数の駆動が、可能で、高輝度化することが出来る。その場合、500Hz以上5KHzでの駆動が好ましく、より好ましくは、1KHz以上で3KHz以下の駆動が好ましい。
この様な条件での駆動が可能になると、高輝度発光することができる。
本発明の素子は、200cd/m2以上の高輝度発光させることが重要である。200cd/m2以下であると本発明の高色温度は、外光の影響で赤みにずれ、好ましい白色を呈することができない。より好ましくは、300cd/m以上が好ましく特に好ましいのは、500cd/m2以上に光らせることが好ましい。
本発明の電源の態様として好ましいものの例としては、特願2005−04442、特願2005−04443、特許第3236236号、特開2005−62924、特開平6−225546、特開平7−65952、特開平7−170760、特開平8−45663、特開平8−250280、特開平9−322560等が上げられる。
【0033】
<漏電防止用導電性フィルム>
本発明の漏電防止のための導電性フィルムないし板状のシートに関しては、特に制約は無いが、設置する壁ないし柱、床、天井との間が絶縁されるよう、絶縁フィルムないし板状のシートが配置されていることが、好ましい。この場合、例えば、アルミフィルムとポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムを張り合わせたり、アルミフィルムが樹脂フィルムでラミネートされている構成が好ましい。この様な構成であれば、導電性シートは、背面電極に対し絶縁フィルムを介して貼り合わされていても良い(図1)し、より好ましくは、防湿フィルムと背面電極との間に背面電極と絶縁されて組み込まれていても良い(図3)。
導電性を持たす素材に関して、特に制限は無く、アルミフィルム、銅フィルム、カーボンや銀、銅等を分散した導電性ペーストで形成した導電性シート等を好ましく用いることができる。使用できる重さに制限がない場合、アルミ板やステン板、鋼板等でも良い。少なくとも1Ω/m2以下の表面抵抗が必要である。
これらの導電性部は、電源からの出力コードのアース線への接続ないし、他の方法で接地される構成となることが、必要である。この具体例を図3に示す。
【実施例】
【0034】
実施例1
<本発明:蛍光体粒子A>
平均粒子径30nmの硫化亜鉛(ZnS)粒子粉末25gと、硫酸銅をZnSに対し0.1モル%と塩化金酸を0.003モル%とNa2[Pt(OH)6]を0.005モル%添加した乾燥粉末に、融剤としてNaClおよびMgCl2と塩化アンモニウム(NH3Cl)粉末を適量、並びに酸化マグネシウム粉末を蛍光体粉末に対し20質量%アルミナ製ルツボに入れて1200℃で2.0時間焼成したのち降温した。そののち粉末を取り出し、ボールミルにて粉砕分散した。さらに超音波分散を行ったのち、ZnCl2 5gと硫酸銅をZnSに対し0.05モル%添加したのちMgCl2を1g加え、乾燥粉末を作成し、再度アルミナルツボに入れて700℃で6時間焼成した。このとき雰囲気として10%の酸素ガスをフローさせながら焼成を行なった。
【0035】
焼成後の粒子は、再度粉砕し、40℃のH2Oに分散・沈降、上澄み除去を行なって洗浄したのち、塩酸10%液を加えて分散・沈降、上澄み除去を行い、不要な塩を除去して乾燥させた。さらに10%のKCN溶液を70℃に加熱して表面のCuイオン等を除去した。
さらに、6Nの塩酸で粒子全体の10重量%に相当する表面層をエッチング除去した。
この様にして得られた粒子をさらに篩いにかけて、単分散・小サイズ粒子を取り出した。
このようにして得られた蛍光体粒子は、平均粒径が15.0μm、変動係数が31%であった。また、すり鉢で粒子を粉砕し、厚みが0.2μm以下の砕片を取り出して、200KVの加速電圧条件で、その電子顕微鏡観察を行なったところ、砕片粒子の少なくとも80%以上が5nm間隔以下の積層欠陥を10枚以上有する部分を含んでいた。
平均粒子サイズが0.02μmのBaTiO3微粒子を、30質量%の比率で有機溶媒に溶解したシアノレジン液に分散し、誘電体層厚みが30μmになるように厚み100μmのアルミシート上に塗布し、温風乾燥機を用いて120℃で1時間乾燥した。
【0036】
上記蛍光体粒子Aを、シンロイヒ社製蛍光染料FA−007と300cd/m2の発光時にCIE色度座標でx=3.3±0.3 y=3.4±0.3となる様、30wt%濃度のシアノレジン液に分散し混練し、上記の誘電体層上に厚みが60μmになるよう塗布した。
【0037】
(中間層の形成)
蛍光体層の上に、平均粒子サイズが0.02μmのBaTiO3微粒子を誘電体層の場合の1/5の量、シアノレジン液に分散した塗布液を用い、2μmの厚みになるよう塗布して中間層を形成した。
【0038】
(透明導電膜)
ITO(インジウムジンクオキサイド)を蒸着した表面抵抗30Ω/m2で光透過率88%の導電性フィルムを作製し、その上にシアノレジンを0.1μm以下の厚みに印刷した。上記素子の透明電極部とアルミの背面電極部から、それぞれ厚み80μmの銅アルミシートを用いて外部接続用の端子を取り出した後、素子を凸版印刷社製の防湿フィルムであるGXフィルムと挟んで真空脱気しながら熱圧着した。素子のサイズは、発光面積が、0.5m2となる様に四角形成型した。
このようにして作製した比較例の発光素子を試料1とした。これらのサンプルを基本にして、駆動電圧と周波数の条件を140V、1.5KHz付近で駆動を行った。輝度は、600cd/m2 にあわせた。このEL素子上に富士写真フイルム社製Gカラープリントに人物ならびに野菜サラダ(ブロッコリーとトマトを含む)、風景(赤、黄、緑、青の花や植物、青空を含む)等の写真をプリントした透過プリント材料を作成し載せた。
これを厚さ250μmのポリエチレンテレフタレート製透明フィルムで挟み、ステンレス製の壁に接地し、東京精電株式会社製インバーター電源CVFT1−D200を改造して用い、140V、1.5KHzで駆動したところ、1mAを超える漏洩電流が検出された。
これに対し、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムでラミネートした厚さ20μmのアルミフィルムを含有する導電性シートを作成し、その端部から、アース線を引き出し、商用電源のアース端子に接続したところ、漏洩電流は、1mA以下になることが確認できた。
【0039】
漏洩電流の検出回路は、電気用品安全法で規定の方法を用いた。
【0040】
以上のように、本発明によれば、第2の導電性フィルムを無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置の背面電極側に絶縁物を介して設けかつ第2の導電性フィルムを接地するようにしたので、大面積の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置を導電性壁面に貼り付けても、背面電極と導電性壁面との間に浮遊容量が形成されなくなるため、漏洩電流を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1に係る無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図である。
【図2】図1のEL表示装置を交流駆動する回路図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図である。
【図4】図3のEL表示装置を交流駆動する回路図である。
【図5】粒子分散型エレクトロルミネッセンス素子を用いた従来のEL表示装置の縦断面図である。
【図6】図5の従来のEL表示装置を交流駆動する回路図である。
【図7】特許文献1記載の薄形電界発光灯の縦断面図と駆動のしかたを示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10 本発明の実施形態1に係るEL表示装置
11 防湿フィルム
12 EL素子
121 透明導電フィルム
122 蛍光体層/反射絶縁層
123 背面電極
13 防湿フィルム
20 本発明の実施形態2に係るEL表示装置
30 絶縁層付導電性フィルム
31 PET(ポリ・エチレン・テレフタレート)フィルム
32 導電性フィルム
60 EL駆動装置筐体
60A EL駆動回路(ドライバ)
60B 出力フィルタ
61 商用交流電源
90 導電性壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電性フィルムと蛍光体層と背面電極をこの順に有する無機分散型エレクトロルミネッセンス素子と、前記背面電極側にこの順で設けられた電気的絶縁層と第2の導電性フィルムとから成る絶縁層付導電性フィルムと、で構成されることを特徴とする無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記第1の導電性フィルムおよび前記第2の導電性フィルムを防湿フィルムで覆ったことを特徴とする請求項1記載の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
第1の導電性フィルムと蛍光体層と背面電極とをこの順に有する無機分散型エレクトロルミネッセンス素子と、前記第1の導電性フィルムおよび前背面電極をそれぞれ覆う第1の防湿フィルムと第2の防湿フィルムと、前記第2の防湿フィルム側にこの順で設けられた電気的絶縁層と第2の導電性フィルムとから成る絶縁層付導電性フィルムと、で構成されることを特徴とする無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記第1の導電性フィルムが透明であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記第2の導電性フィルムが接地されて使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の無機分散型エレクトロルミネッセンス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−188725(P2007−188725A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5318(P2006−5318)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】