説明

無機化合物

【課題】リチウム二次電池のカソード材料の製造における前駆体の混合金属酸化物を提供することである。
【解決手段】化学式NiM1M2(О)(OH)で表される化合物(ただし、上記式中、M1はFe、Co、Mg、Zn及びCuから成る群から選択される1つ以上であり、M2はMn、Al、B、Ca及びCrから成る群から選択される1つ以上であり、b≦0.8、c≦0.5、d≦0.5、0.1≦x≦0.8、1.2≦y≦1.9、x+y=2である)、及び、その製造方法ならびにその化合物のリチウム二次電池のカソード材料の調製への使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NiM1M2(О)(OH)で表される化合物およびその製造方法ならびにその化合物のリチウム二次電池のカソード材料の調製への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用そしてコードレスの電子機器が広く使用されている。携帯用電子機器の小型が進み、特にここ数年の軽量化に伴い、電子機器の電源である高容量の二次電池の軽量小型化の一層の要求が高まっている。そして、この要求に非水電解液系リチウム二次電池は適するものである。
【0003】
この種の二次電池は正極、すなわちリチウムイオンの可逆的吸蔵・放出を行える活物質によって分類できる。
【0004】
多くの場合リチウムと少なくとも1種の遷移金属から成る複合酸化物は、この種の二次電池における正極の活物質として適していることが知られている。複合酸化物の例としては、LiCoO、LiNiO、LiNi0.8Co0.2等が例示される。しかしながら、これらの材料は種々の欠点を有する。LiCoOはリチウム二次電池において最もよく使用されているが、非常に高価なコバルトを使用している。ニッケルはコバルトよりも安価であるもののニッケル含有量が多い活物質を二次電池に使用すると電池の熱安定性が不十分となる。
【0005】
充放電容量、電気化学的サイクルにおける耐用、熱安定性およびコストの要件を同時に満足できる二次電池の活物質としては、上記の材料では不十分である。
【0006】
特許文献1には、リチウム混合金属水酸化物の合成のための前駆体として、二元金属混合水酸化物を使用することにより、電気化学的性質を改良できることが提案されている。そして、ニッケル及びコバルト元素に加えて、混合金属水酸化物の共沈殿のための第3の金属成分として、とりわけアルミニウム及びマンガンが例示されている。ドーピング成分(ニッケルを除く金属成分)の量としては、金属の総量の10〜30モル%であることが推奨されている。ドーピング成分の量が10モル%未満の場合、この種の活物質を使用した電池のサイクル安定性が不十分となり、ドーピング成分の量が30モル%を超える場合、前駆体において球状な粒子を維持することが困難となる。
【0007】
特許文献2及び3は、リチウム、ニッケル、コバルト及びマンガンから成る複合酸化物を提案している。この種の複合酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンの各水酸化物の混合物を共沈殿させて原料とし、その後、混合酸化物とする。リチウム混合金属酸化物中のドーピング成分であるコバルト及びマンガンにより、二次電池の電気化学的充放電特性および高温熱安定性の両方とも改良される。これらの目的を達成するには、上記の特許文献1と比較して、コバルト及びマンガンの高濃度含有が必要とされる。特許文献2におけるコバルト及びマンガンの含有量の上限は、遷移金属の総量を基準として各々の場合33モル%である。
【0008】
特許文献2の方法では、今まで混合酸化物のための適切な前駆体を製造することが困難であった。特に、粉末のタップ密度に関する要求を満たすニッケル、コバルト及びマンガンから成る混合金属水酸化物の共沈殿ができないという問題がある。混合金属酸化物の場合、タップ密度が高いと電池の体積エネルギー密度が増加するため、高タップ密度は重要な要因である。そして、共沈殿された混合金属水酸化物のタップ密度は、後のリチウム混合金属水酸化物のタップ密度に直接影響を与える。特許文献2において、ニッケル、コバルト及びマンガンから成り且つタップ密度が1.5g/cm以上の混合水酸化物が、不活性ガス雰囲気下または還元剤の存在下で、懸濁液中で沈殿法により得られている。沈殿反応中に激しく撹拌することにより、懸濁液中に含まれる空気でCo(II)及びMn(II)の成分の部分酸化が行われるが、共沈殿した混合水酸化物のタップ密度を低くしてしまう。すなわち、特許文献2の方法では、高速撹拌が要求されるため、粒子間の摩耗を引起す。粒子間の摩耗と粒子の成長との相関関係により、球状粒子を得ることが出来る。所望の粒子間の摩耗が、二次粒子の平均粒径を制限することは明らかである。
【0009】
特許文献4は、リチウム二次電池の活物質に使用するニッケル及びマンガンを含有する混合酸化物の最適製造方法について記載している。この発明の主な目的は、いわゆる乾燥前駆体を得るために、リチウム混合金属酸化物に転化する前などの実質的な焼成工程の前に、例えばNi、Co及びMnから成る共沈殿された混合水酸化物の熱処理を300〜500℃で行うことである。リチウム成分はこの乾燥前駆体に添加し、その混合物を焼成して混合金属酸化物に転化する。もし、非乾燥混合水酸化物の代りに上記の乾燥前駆体を使用すると、特許文献4によれば、最終生成物は、非乾燥混合水酸化物を使用した場合と比較して一貫性のある生成物となる。この一貫性については、それぞれの生成物を使用して20個の電池を作成し、3〜300回の電気化学的サイクルにおける電池容量の変化を20個の電池について測定して評価できる。
【0010】
しかしながら、「前駆体の乾燥」という新たな加熱工程を加えることと、より安価な炭酸リチウムの代りに水酸化リチウムを使用するこの方法は複雑かつ高価な工程を作ることになる。
【0011】
また、特許文献5には、リチウム混合金属酸化物の合成のための混合金属前駆体が記載されている。特許文献4におけるように、リチウム混合金属酸化物の合成のための理想的な前駆体であると考えられている。特許文献4はとりわけ公知文献として記載している。特許文献4に記載されているような前駆体の熱処理を含み、LiCOよりもはるかに高価であるLiOHを使用しており、共沈殿されたNi−Co−Mn水酸化物の部分酸化によりNi−Co−Mnオキシ水酸化物が得られることを開示している。
【0012】
酸化には、溶解空気、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素溶液、過硫酸カリウム、臭素などの酸化剤が使用される。
【0013】
例示されている実施例でも同様な工程が使用されていることが示されている。すなわち、ニッケル−コバルト−マンガン水酸化物の共沈殿の後、純粋な混合金属水酸化物を得るために、ろ過を先ず行い、残渣を洗浄する。その後、金属水酸化物を再度酸化剤を含む水中に懸濁させ、所定温度で所定時間酸化反応を行い、ニッケル−コバルト−マンガンオキシ水酸化物を得る。その後、ろ過および洗浄により生成物を得る。
【0014】
上記の工程において、混合水酸化物のその後の酸化中にβ−NiOOH相およびγ−NiOOH相の生成を避けるため、最初に洗浄を行っていると思われる。この相は、Naイオン等の不純物イオンを取り込んで層間を拡張させるためにβ−NiOOHと比較して体積を膨張させる。層間の拡張については、非特許文献1に記載されている。特許文献5に記載されているように、混合水酸化物の洗浄と不純物イオンの濃度が低減した水相中に懸濁させることによってのみ、結晶構造中に不純物イオンが取り込まれることを防ぐことが出来る。Naイオン等の不純物イオンは、混合金属水酸化物がリチウム混合金属酸化物に変換される間に結晶格子構造外に溶解することは出来ないため、不純物は最終生成物中に存在することになる。リチウム層中に、特にNa等の不純物が拡散した場合、電池中の材料の特性に悪化を及ぼす。
【0015】
特許文献5の実施例1における平均金属価数は2.97と記載されており、Mn2+はNi2+に比べて容易に酸化されることが知られていることから、Mnは4価に部分的に酸化されており、非化学量論的にγ−NiOOHが部分的に形成されていると推測される。
【0016】
特許文献2は、共沈殿されたニッケル−コバルト−マンガン水酸化物、特に高タップ密度を有する共沈殿されたニッケル−コバルト−マンガン水酸化物について記載している。水酸化物は、リチウム二次電池の活物質の原料となるリチウム混合金属酸化物の前駆体である。リチウム混合金属酸化物のタップ密度は前駆体のタップ密度に非常に密接で大きな影響を受ける。しかしながら、タップ密度と一緒に、リチウム混合金属酸化物の前駆体である混合水酸化物のこの重要なパラメータについては触れられていない。
【0017】
特許文献4は、粒子形状および結晶性が炭酸リチウムを使用する場合と比較して制御しやすいために、リチウム成分として水酸化リチウムを使用することが好適であることを明確に記載している。
【0018】
特許文献5には、上述のような問題点があり、先行技術における前駆体としての混合水酸化物が、リチウム混合金属酸化物の合成の前駆体として使用される前にオキシ水酸化物に酸化される。すなわち、2回のろ過と2回の洗浄を行うよう記載されている実施例のように、合成経路が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平10−027611号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0053663号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0059490号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0054251号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/092073号パンフレット
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】J.Power Sources,8(1982)、p.229
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、リチウム二次電池のカソード材料の製造における前駆体の混合金属酸化物を提供することである。当該混合金属酸化物はγ−オキシ水酸化物構造および/またはα−水酸化物構造を有しておらず、高タップ密度を有し、ナトリウム含有量が低く、高性能なリチウム混合金属酸化物の合成に使用できることを特徴とする。
【0022】
本発明の他の目的は、経済性に優れた部分酸化混合金属水酸化物の合成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の要旨は、化学式NiM1M2(О)(OH)で表される化合物(ただし、上記式中、M1はFe、Co、Mg、Zn及びCuから成る群から選択される1つ以上であり、M2はMn、Al、B、Ca及びCrから成る群から選択される1つ以上であり、b≦0.8、c≦0.5、d≦0.5、0.1≦x≦0.8、1.2≦y≦1.9、x+y=2である)に存する。
【0024】
好ましい態様として、上記化学式において、0.3≦b≦0.6、0.1≦c≦0.4、0.1≦d≦0.4である。更に、上記化学式において、0.2≦x≦0.7、1.3≦y≦1.8、x+y=2である。b、c及びdの和は、好ましくは1である。
【0025】
特に好ましい態様として、上記化学式において、0.3≦x≦0.6、1.4≦y≦1.7である。
【発明の効果】
【0026】
本発明のリチウム二次電池のカソード材料の製造における前駆体の混合金属酸化物はγ−オキシ水酸化物構造および/またはα−水酸化物構造を有しておらず、高タップ密度を有し、ナトリウム濃度が低く、高性能なリチウム混合金属酸化物の合成に使用でき、また、その製造方法は経済性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1で調製した本発明の部分酸化混合金属水酸化物のX線回折スペクトル(XDS)
【図2】実施例1で調製した本発明の部分酸化混合金属水酸化物の走査型電子顕微鏡写真(SEM)
【図3】実施例1における最終生成物のSEM写真
【図4】実施例1における最終生成物のSEM写真
【図5】比較例1における生成物のX線回折スペクトル
【図6】比較例1における最終生成物のSEM写真
【図7】比較例1における最終生成物のSEM写真
【図8】実施例1と比較例1とで製造した材料をカソード活物質として使用して半電池を作成した際の電池性能評価結果
【図9】実施例2における生成物のX線回折スペクトル
【図10】比較例2における生成物のX線回折スペクトル
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の化学式NiM1M2(О)(OH)で表される化合物の具体例を以下の表1〜17(表2〜17は省略)に示す。表中の個々の化合物は、種々のM1、M2、b及びcの組合せで決定される。例えば、化合物14.022は表14(表は省略)中の化合物で、xが所定値の場合の表1に示すM1、M2、b及びcが022番の場合の化合物を表す。表1〜17において、化学式NiM1M2(О)(OH)で表される化合物において、y=2−x、d=1−b−cである。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

【0033】
【表5】

【0034】
【表6】

【0035】
表2には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.13の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0036】
表3には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.15の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0037】
表4には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.17の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0038】
表5には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.21の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0039】
表6には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.22の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0040】
表7には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.23の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0041】
表8には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.26の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0042】
表9には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.28の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0043】
表10には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.30の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0044】
表11には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.37の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0045】
表12には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.4の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0046】
表13には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.42の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0047】
表14には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.48の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0048】
表15には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.5の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0049】
表16には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.6の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0050】
表17には、y=2−x、d=1−b−c且つx=0.69の場合のNiM1M2(O)(OH)の化合物例で、M1、M2、b及びcを表1のように変更した場合の432種を示す(表は省略)。
【0051】
本発明の化合物は、部分酸化混合金属水酸化物であり、以下、単に「前駆体」と記載する場合がある。
【0052】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物におけるパラメータx及びyは、混合金属水酸化物のすべての金属成分の平均的な酸化度を一義的に決定するパラメータである。部分酸化混合金属水酸化物の平均酸化度は2.1〜2.8であり、式LiNiM1M2(О)で表される最終生成物を好適に製造することが出来る。
【0053】
式中M1はFe、Co、Mg、Zn及びCuから成る群から選択される1つ以上であり、及び/又は、M2はMn、Al、B、Ca及びCrから成る群から選択される1つ以上である。aは、0.95≦a≦1.15、好ましくは0.98≦a≦1.10で、b、c及びdは上記に定義する数である。これらを満足することにより、リチウム二次電池のサイクル安定性や充放電特性の改良、高タップ密度および良好な篩分け特性を達成できる。式LiNiM1M2(О)で表される化合物を、以下、単に「最終生成物」と記載する場合がある。
【0054】
平均酸化度はリチウム二次電池の前駆体の品質を評価するための指数である。製造工程においてこのパラメータの正確な調整が必要となる。
【0055】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物の平均酸化度は、以降の加工工程を良好に行うため及び最終生成物の品質を良好にするために、一定値より下げることは好ましくない。また、酸化度があまりにも高い前駆体中にγ−オキシ水酸化物などの二次相が増加するので、本発明の部分酸化混合金属水酸化物の平均酸化度を一定値より大きくすることは好ましくない。所望のβ相と一緒にγ相が存在すると、前駆体が不均一となり、均一な最終生成物を得ることに影響する。β相と比較して結晶格子の層間の拡張は、γ相の存在により、イオン不純物の好ましくない含有をより促進させる。
【0056】
平均酸化度は、好ましくは2.2〜2.7、特に好ましくは2.3〜2.6である。
【0057】
すべての金属成分の平均酸化度は、二酸化マンガン測定のRupp法に基づいて決定される。
【0058】
上記の平均酸化度の測定法は、本発明の化合物の経験的な化学式の評価の基となる。
【0059】
指数xと酸化度αとの間には、以下の量論的な関係式が存在する。
【0060】
α = x + 2
【0061】
例えば、金属成分の平均酸化度が+2.5の場合、上記式から(2.5−2)=0.5となり、指数xは0.5と算出される。その結果、化学式はNiCoMn(O)0.5(OH)1.5となる。
【0062】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物はγ−オキシ水酸化物構造を有しないことを特徴とする。図1は、後述する実施例1で調製した本発明の部分酸化混合金属水酸化物のX線回折スペクトル(XDS)を示し、γ相が検知されていないことがわかる。
【0063】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物は、好ましくはα相を有しない。
【0064】
所望のβ相と一緒にα相が存在すると、前駆体が不均一となり、その結果、それから得られる最終生成物の均一性に影響を及ぼす。
【0065】
酸化混合金属水酸化物の酸化度が大きくなると(例えば3.0)、生成物中のナトリウムイオンの様なイオン不純物の量が増加することが明らかになった。これは、γーオキシ水酸化物への相転換により、結晶格子の層間距離が拡がり、望ましいくない不純物イオンが取り込まれるからである。γ相は層間を拡張して体積を膨張させ、不純物イオンの取り込みを促進させる。
【0066】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物はナトリウム含有量が低く、好ましくは2000ppm未満、更に好ましくは1000ppm未満、特に好ましくは500ppm未満である。
【0067】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物は、好ましくは粉末形状であり、ASTM B822に準じて測定した二次粒子の平均粒径は、好ましくは2〜30μm、更に好ましくは3〜15μmである。なお、二次粒子は一次粒子から成る。
【0068】
本発明の混合金属水酸化物粉末は高タップ密度を有し、最終生成物であるリチウム混合金属酸化物にもその影響を与える。電池の高容積エネルギー密度を達成するためには高タップ密度が必要である。ASTM B527に準じて測定した本発明の部分酸化混合金属水酸化物粉末のタップ密度は、1.7g/cmを超え、好ましくは1.9g/cmを超える。
【0069】
本発明の粉状の混合金属水酸化物は、球状形状でも、他の規定形状(非球状)でも調製できる。
【0070】
本発明の粉末は好ましくは球状粉末粒子であり、形状係数が0.7よりも大きく、好ましくは0.9よりも大きい。
【0071】
なお、二次粒子の形状係数の決定法は、米国特許第5476530号明細書、カラム7及び8並びに図5に記載されている。この方法により粒子の形状係数は決定できる。粒子の形状係数は粒子のSEM写真から決定される。
【0072】
形状係数は、写真上の粒子の外周、面積および特別パラメータから求められる粒径によって決定される。当該粒径は以下の式から求められる。
【0073】
= U/π d = (4A/π)1/2
【0074】
粒子の形状係数fは、粒子の外周U、粒子面積Aを用いて以下の式より導かれる。
【0075】
f=(d/d)=(4πA/U
【0076】
理想的な球状粒子の場合、dとdは等しく、形状係数は1である。
【0077】
図2は、後述する実施例1で調製した本発明の部分酸化混合金属水酸化物の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す。
【0078】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物粉末は以下の式で定義される規格化された粒径分布幅を有する。
【0079】
(D90−D10)/D50
【0080】
ここで、Dは粒子粉末の直径を表し、式の値は1.8未満、好ましくは1.2未満である。
【0081】
本発明は更に、本発明の部分酸化混合金属水酸化物の効率的かつ経済的な製造方法にも関する。
【0082】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物の製造方法は、(a)原料金属塩溶液から球状混合金属水酸化物を共沈させる工程と、(b)酸化剤を使用して共沈生成物である混合金属水酸化物を部分酸化する工程と、(c)懸濁液から共沈している部分酸化混合金属水酸化物を分離する工程と、(d)分離した部分酸化混合金属水酸化物を洗浄・乾燥する工程とから成る。
【0083】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物は、球状形状でも非球状形状でも製造することが出来、球状形状粒子を得る場合は、アンモニア又はアンモニウム塩の存在下で合成を行う。
【0084】
混合水酸化物は、金属塩水溶液にアルカリ水酸化物水溶液を添加して、pHを8〜14、好ましくは9〜13に調整することにより、沈殿させて合成する。合成は連続的に行っても逐次的に行ってもよい。連続法による場合、金属塩溶液とアルカリ水酸化物水溶液を同時に沈殿反応器に供給し、連続的に生成物の懸濁液を抜出す。金属塩としては、水溶性金属塩が好ましく、硫酸塩、硝酸塩、塩化物や弗化物などのハロゲン化物が例示される。アルカリ金属塩水溶液の沈殿反応を行うために、水酸化アンモニウムと同様にアルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムが使用される。
【0085】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物において高タップ密度を達成するためには沈殿反応工程において金属の酸化を防ぐ必要がある。すなわち、酸化反応は沈殿工程の後の反応槽において行われる。
【0086】
工業規模において本発明の部分酸化混合金属水酸化物の酸化度を増加させる方法についても、単純で容易な一体化した本発明の方法を説明する。この方法では共沈殿された混合金属水酸化物の部分酸化を更に生成物の懸濁液中で行う。すなわち、この方法では共沈殿された混合金属水酸化物を沈殿反応槽から連続撹拌槽に移送する。酸化剤は注入口を介してこの撹拌槽に導入する。酸化剤としては、空気、酸素、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及びこれら2種以上の混合物が好ましく例示される。
【0087】
懸濁液の部分酸化反応温度は25〜65℃、好ましくは30〜60℃である。
【0088】
混合金属酸化物の部分酸化における反応懸濁液のpHは、好ましくは7〜13、更に好ましくは8〜12である。
【0089】
反応槽中の生成物の懸濁液の滞留時間は、部分酸化において重要な因子となる。本発明の部分酸化混合金属水酸化物を得るための滞留時間は1〜10時間、好ましくは2〜8時間、更に好ましくはは4〜6時間である。
【0090】
酸化反応工程の後、部分酸化混合金属水酸化物は連続的に取出される。しかしながら、部分的に生成物を取出すことも可能である。次いで、本発明の部分酸化混合金属水酸化物は吸引ろ過器上で洗浄し、乾燥機で乾燥される。
【0091】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物の製造は、他の方法、例えば、共沈殿された混合金属酸化物を懸濁液から分離回収し、洗浄し、更に空気のような酸素含有雰囲気で乾燥することによっても製造できる。
【0092】
本発明の製造方法の他の態様は、対応する金属塩溶液から球状混合金属水酸化物を共沈殿させる工程と、懸濁液から得られた混合金属水酸化物共沈殿物を分離する工程と、分離された混合金属水酸化物を洗浄する工程と、得られた混合金属水酸化物を乾燥すると同時に酸素含有雰囲気下で80℃を超える温度で3時間以上部分酸化する工程とから成る。
【0093】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物は二次電池の正極活物質として使用される化学式
LiNiM1M2(O)で示される化合物(最終生成物)の合成に好適に使用できる。本発明の部分酸化混合金属水酸化物から得られる最終生成物−リチウム混合金属酸化物−は単純な合成ルートによって得られる。
【0094】
本発明は更に二次電池の活物質の製造方法にも関し、当該製造方法は、請求項1〜18で規定される化合物をリチウム含有化合物と混合して混合物を得る工程と、得られた混合物を焼成し、篩分けする工程とを含む。
【0095】
この過程では、化合物LiNiM1M2(O)への前駆体の化学反応が行われる。ここで、M1はFe、Co、Mg、Zn及びCuから成る群から選択される1つ以上であり、M2はMn、Al、B、Ca及びCrから成る群から選択される1つ以上である。粒子の形状および/または粒径分布は保持される。
【0096】
最終生成物は、本発明の部分酸化混合金属水酸化物とリチウム含有化合物とを混合させ、焼成、篩分けすることにより製造される。好適なリチウム含有化合物としては、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム及びそれら2種以上の混合物が挙げられる。焼成は、600℃を超える温度、好ましくは700℃を超える温度で行われる。
【0097】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物から得られる最終生成物は、篩分け特性が極めて良好である。篩分け収率は、90%を超え、好ましくは95%を超え、更に好ましくは98%を超える。
【0098】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物は、当業者に知られた材料と共にリチウム二次電池のカソード活物質の前駆体として好適に使用できる。
【実施例】
【0099】
以下の実施例により本発明について詳しく説明する。なお、以下の実施例において、平均酸化度はRupp法により決定した。この方法は二酸化マンガンの測定法に基づく。すなわち、価数のより高い金属イオン(この場合+3価または+4価)が、ヨウ化物により2価の金属(II)に還元され、ヨウ化物は元素状ヨウ素に酸化される。酸化によって生じたヨウ素は、チオ硫酸ナトリウム標準溶液を使用した滴定法により定量される。滴定の等量点はでんぷん溶液を使用して示される。
【0100】
具体的には、0.2gの試料を500mlガラスすり合わせ栓を有する三角フラスコに入れ、ヨウ化カリウム溶液50mlおよび希硫酸25mlを50mlメスシリンダーを使用して加え、ガラス栓で栓をする。
【0101】
試料は三角フラスコを時折震盪させながら室温で溶解させる。溶解時間は30〜60である。
【0102】
試料が完全に溶解したら、でんぷん溶液を5滴加え、チオ硫酸ナトリウム標準溶液で、色が茶/青から薄緑に変化するまで滴定する。
【0103】
滴定において、目的としない反応による変化分を考慮するために、ブランクと成る
サンプルについても対象試料の滴定と平行して行う必要がある。チオ硫酸ナトリウムの消費量が評価に使用される。そして化合物中の総金属成分の平均酸化度は以下の式により求められる。
【0104】
【数1】

【0105】
実施例1:
NiSO、CoSO及びMnSOを各0.7モル含む溶液を連続的に沈殿反応槽に供給した。
【0106】
この金属含有溶液中に2.5モルNaOH溶液および12.5%NH溶液を同時にかつ連続的に添加した。これらの供給流量は、静置状態において、アンモニア濃度が30g/l、フリーの水酸化ナトリウム濃度が1.4g/lとなるように調節した。このような条件下で溶液のpHは12.4であった。高pHにより、金属含有溶液から金属成分が水酸化物として確実に沈殿する。種々の溶液添加量により、反応槽内の固形分濃度は40g/lとした。反応槽内の温度は外部熱源により50℃に調節した。固形物の平均滞留時間は6時間であった。
【0107】
反応生成物の懸濁液は反応槽から連続的に抜出し、先ず、吸引ろ過上で洗浄された。洗浄工程は、生成物個体に付着する不純物を除去するのに必要である。
【0108】
生成水酸化物を洗浄した後、空気を循環した酸素含有雰囲気下で100℃の乾燥機内で24時間、生成物を乾燥するのと同時に酸化を行った。
【0109】
生成した化合物は、ニッケル、コバルト、マンガン金属のそれぞれのモル比率が1:1:1であった。この方法で生成した生成物の総金属に対する酸化度は2.7であった。また、タップ密度は1.74g/cmであった。
【0110】
図2のSEM写真より、この方法で製造した材料の粒子が、球形度が高く、明確な稠密性を有することがわかる。形状係数は0.85であった。
【0111】
得られた前駆体を最終生成物に転化するために、前駆体に工業規格の炭酸リチウム(Chemetall社製)を機械的に混合した。リチウム化合物に対する前駆体の配合モル比率は1.05:1.00であった。
【0112】
機械的に混合した混合物を890℃で酸素含有雰囲気下で30時間焼成した。焼成後、生成物を篩分けした。
【0113】
篩分け収率は97.5%であった。なお、生成物の2.5%は50μmの篩を通過しなかった。篩分け後、生成物の2回目の焼成を890℃で酸素含有雰囲気下で4時間行った。再度篩分けを行ったところ、篩分け収率は99.6%であった。また、タップ密度は2.0g/cmであった。
【0114】
最終生成物のSEM写真を図3及び4に示す。前駆体から最終生成物への転化の際、前駆体の二次粒子の球状の粒子形状が維持されていることがわかる。
【0115】
比較例1:
NiSO、CoSO及びMnSOを各0.7モル含む溶液を連続的に沈殿反応槽に供給した。
【0116】
この金属含有溶液中に2.5モルNaOH溶液および12.5%NH溶液を同時にかつ連続的に添加した。これらの供給流量は、静置状態において、アンモニア濃度が8.3g/l、フリーの水酸化ナトリウム濃度が0.5g/lとなるように調節した。このような条件下で溶液のpHは12.0であった。高pHにより、金属含有溶液から金属成分が水酸化物として確実に沈殿する。種々の溶液添加量により、反応槽内の固形分濃度は80g/lとした。反応槽内の温度は外部熱源により45℃に調節した。固形物の平均滞留時間は12時間であった。
【0117】
反応生成物の懸濁液は反応槽から連続的に抜出し、先ず、吸引ろ過上で洗浄された。洗浄工程は、生成物個体に付着する不純物を除去するのに必要である。生成水酸化物を洗浄した後、70℃で生成物を乾燥した。
【0118】
生成した化合物は、ニッケル、コバルト、マンガン金属のそれぞれのモル比率が1:1:1であった。この方法で生成した生成物の総金属に対する酸化度は2.07であった。図5に、生成物のX線回折スペクトルを示す。
【0119】
得られた前駆体を最終生成物に転化するために、前駆体に工業規格の炭酸リチウム(Chemetall社製)を機械的に混合した。リチウム化合物に対する前駆体の配合モル比率は1.07:1.00であった。
【0120】
機械的に混合した混合物を860℃で酸素含有雰囲気下で30時間焼成した。焼成後、生成物を篩分けした。篩分け収率は64%であった。
【0121】
最終生成物のSEM写真を図6及び7に示す。前駆体から最終生成物への転化の際、前駆体の二次粒子の粒子形状が維持されず、一次粒子の不規則な成長が認められる。
【0122】
実施例1と比較例1とで製造した材料をカソード活物質として使用して半電池を作成し、電池性能を評価、その結果を図8に示す。図より明らかなように、実施例1の方が比較例1よりも電池性能が優れていることがわかる。
【0123】
実施例2:
NiSO、CoSO及びMnSOを各0.7モル含む溶液を連続的に沈殿反応槽に供給した。この金属含有溶液中に2.5モルNaOH溶液および12.5%NH溶液を同時にかつ連続的に添加した。これらの供給流量は、静置状態において、アンモニア濃度が8g/l、フリーの水酸化ナトリウム濃度が0.5g/lとなるように調節した。このような条件下で溶液のpHは12.0であった。高pHにより、金属含有溶液から金属成分が水酸化物として確実に沈殿する。種々の溶液添加量により、反応槽内の固形分濃度は50g/lとした。反応槽内の温度は外部熱源により50℃に調節した。固形物の平均滞留時間は5時間であった。
【0124】
反応生成物の懸濁液は反応槽から連続的に抜出し、第2の反応槽に供給した。2.5モルNaOH溶液を加え、pH12.0に維持し、反応槽内の温度は外部熱源により50℃に調節した。固形物の平均滞留時間は10時間であった。この第2の反応槽に空気を0.5l/分の流量で供給した。この反応により、懸濁液の色は薄茶色(第1反応槽)から濃茶色から黒色(第2反応槽)に変化した。反応生成物の懸濁液は反応槽から連続的に抜出し、先ず、吸引ろ過上で洗浄された。洗浄工程は、生成物個体に付着する不純物を除去するのに必要である。生成水酸化物を洗浄した後、100℃の乾燥機内で24時間乾燥した。
【0125】
生成した化合物は、ニッケル、コバルト、マンガン金属のそれぞれの比率が1:1:1であった。この方法で生成した生成物の総金属に対する酸化度は2.39であった。ナトリウム含有量は70ppmであった。図9に、生成物のX線回折スペクトルを示す。β構造のみ検出され、他の相はX線回折スペクトルから検出されなかった。
【0126】
比較例2:
NiSO、CoSO及びMnSOを各0.7モル含む溶液を連続的に沈殿反応槽に供給した。この金属含有溶液中に2.5モルNaOH溶液および12.5%NH溶液を同時にかつ連続的に添加した。これらの供給流量は、静置状態において、アンモニア濃度が8g/l、フリーの水酸化ナトリウム濃度が0.5g/lとなるように調節した。このような条件下で溶液のpHは12.0であった。高pHにより、金属含有溶液から金属成分が水酸化物として確実に沈殿する。種々の溶液添加量により、反応槽内の固形分濃度は50g/lとした。反応槽内の温度は外部熱源により50℃に調節した。固形物の平均滞留時間は5時間であった。
【0127】
反応生成物の懸濁液は反応槽から連続的に抜出し、第2の反応槽に供給した。2.5モルNaOH溶液を加え、pH12.5に維持し、反応槽内の温度は外部熱源により70℃に調節した。固形物の平均滞留時間は15時間であった。この第2の反応槽に空気を0.5l/分の流量で供給した。この反応により、懸濁液の色は薄茶色(第1反応槽)から濃茶色から黒色(第2反応槽)に変化した。反応生成物の懸濁液は反応槽から連続的に抜出し、先ず、吸引ろ過上で洗浄された。洗浄工程は、生成物個体に付着する不純物を除去するのに必要である。生成水酸化物を洗浄した後、100℃の乾燥機内で24時間乾燥した。
【0128】
生成した化合物は、ニッケル、コバルト、マンガン金属のそれぞれのモル比率が1:1:1であった。この方法で生成した生成物の総金属に対する酸化度は2.83であった。ナトリウム含有量は3000ppmであった。図10に、生成物のX線回折スペクトルを示す。β構造に加え、γ相の存在が検出された。
【0129】
本発明の部分酸化混合金属水酸化物の他の実施例について、以下の表18に示す。
【0130】
【表18】

【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明のリチウム二次電池のカソード材料の製造における前駆体の混合金属酸化物は、γ−オキシ水酸化物構造および/またはα−水酸化物構造を有しておらず、高タップ密度を有し、ナトリウム含有量が低く、高性能なリチウム混合金属酸化物の合成に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式NiM1M2(О)(OH)で表される化合物(ただし、上記式中、M1はFe、Co、Mg、Zn及びCuから成る群から選択される1つ以上であり、M2はMn、Al、B、Ca及びCrから成る群から選択される1つ以上であり、b≦0.8、c≦0.5、d≦0.5、0.1≦x≦0.8、1.2≦y≦1.9、x+y=2である)の製造方法であって、(a)原料金属塩溶液から球状混合金属水酸化物を共沈させる工程と、(b)酸化剤を使用して共沈生成物である混合金属水酸化物を部分酸化する工程と、(c)懸濁液から共沈している部分酸化混合金属水酸化物を分離する工程と、(d)分離した部分酸化混合金属水酸化物を洗浄・乾燥する工程とから成ることを特徴とする上記化合物の製造方法。
【請求項2】
部分酸化混合金属水酸化物の平均酸化度が2.1〜2.8である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ナトリウム含有量が2000ppm未満である請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
部分酸化が懸濁液中で行われる請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
酸化剤が、空気、酸素、過酸化水素、ペルオキシ二硫酸ナトリウム、ペルオキシ二硫酸カリウム及びそれらの混合物から選択される請求項1〜4の何れかに記載の製造方法。
【請求項6】
懸濁液中の部分酸化反応中の温度が25〜65℃である請求項1〜5の何れかに記載の製造方法。
【請求項7】
懸濁液のpHが7〜13である請求項1〜6の何れかに記載の製造方法。
【請求項8】
共沈混合金属水酸化物の部分酸化を1〜10時間行う請求項1〜7の何れかに記載の製造方法。
【請求項9】
二次電池の正極活物質の製造方法であって、請求項1〜8の何れかに記載の製造方法により化学式NiM1M2(О)(OH)で表される化合物(ただし、上記式中、M1はFe、Co、Mg、Zn及びCuから成る群から選択される1つ以上であり、M2はMn、Al、B、Ca及びCrから成る群から選択される1つ以上であり、b≦0.8、c≦0.5、d≦0.5、0.1≦x≦0.8、1.2≦y≦1.9、x+y=2である)を得る工程と、当該化合物とリチウム含有成分とを混合する工程と、得られた混合物を焼成してLiNiM1M2(O)(ただし、M1はFe、Co、Mg、Zn及びCuから成る群から選択される1つ以上であり、M2はMn、Al、B、Ca及びCrから成る群から選択される1つ以上である)に変換し、篩分けする工程とから成る二次電池の正極活物質の製造方法。
【請求項10】
二次粒子の形状および/または粒径分布を維持したまま上記変換を行う請求項9に記載の二次電池の正極活物質の製造方法。
【請求項11】
リチウム含有化合物が炭酸リチウム、水酸化リチウム硝酸リチウム又はこれら2種以上の混合物である請求項9又は10に記載の二次電池の正極活物質の製造方法。
【請求項12】
焼成温度が600℃を超える請求項9〜11の何れかに記載の二次電池の正極活物質の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−56827(P2013−56827A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−241931(P2012−241931)
【出願日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【分割の表示】特願2008−525463(P2008−525463)の分割
【原出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(507421234)トダ・コウギョウ・ヨーロッパ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (6)
【Fターム(参考)】