説明

無機固体粒子、殊に二酸化チタン顔料粒子の表面被覆方法

本発明は、水性懸濁液中での無機固体粒子の表面被覆方法、殊にSiO2を用いた二酸化チタンの被覆に関する。該方法は、a) 水性懸濁液中にある固体粒子を解凝集させる工程、b) 被覆物質の水溶性の前駆体化合物を該懸濁液へ添加する工程、c) 工程b)の直後に引き続く、分散装置内での懸濁液をホモジナイズする工程 (工程a)ないしc)において、懸濁液の温度およびpH値は顕著には変わらない)、d) 懸濁液を容器内へ移し、且つ粒子表面へ被覆物質を沈殿させ、且つ随意にさらなる被覆を適用する工程、e) 固体粒子を懸濁液から分離する工程を含む。該方法は、非常に均一且つ閉じられた外被を粒子表面上にもたらし、且つ、別途沈降する被覆物質をよりわずかしかもたらさない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は水性懸濁液中の無機固体粒子の表面被覆方法に関する。殊にそれは平坦且つ均一な二酸化ケイ素外被(Huelle)での二酸化チタン顔料粒子の被覆に関する。
【0002】
本発明の技術的背景
微細に分割された無機固体粒子は、特定の特性、例えば摩耗強度、表面電荷、分散特性、耐酸性または耐光性を変えるために、様々に表面被覆される。例えば、US2885366号は、基体粒子、例えばニッケル粉末または鉄粉末、ガラス繊維または二酸化チタン上への緻密な二酸化ケイ素コーティングの適用を記載している。有色顔料および白色顔料は、種々の酸化物および水酸化物で規則正しく被覆される(例えばEP0130272号A1、US Re.27818号)。
【0003】
殊にTiO2顔料の表面処理は、通常、水相中で行われ、その際、金属酸化物、金属水酸化物、金属ホスフェートまたは類似の化合物が粒子表面上に析出される。該方法は通常、バッチ処理として実施され、且つ、水性顔料粒子懸濁液から出発し、通常、攪拌機ミル内でまずは解凝集される。引き続き、溶解された形態での相応する金属塩をいわゆる前駆体化合物として添加し、且つ、該懸濁液のpH値はアルカリ性または酸性の物質を用いて、該前駆体化合物が酸化物、水酸化物等として沈降するように調節される。この古典的な方法の際、新たに懸濁液中での粒子の凝集の危険が存在し、その結果、析出した被覆物質は、個々の粒子ではなく、しばしば凝集物を包む。該凝集物は、最終的な乾燥粉砕において再び砕かれ、その結果、最終生成物においては全ての粒子が閉じられた外被を備えているわけではなく、該粒子は被覆されていない表面部分も有している。さらに、被覆物質の一部は、粒子表面上に固定されず、粒子と並んでフロックを形成する。このフロックは、該懸濁液からもはや除去できず、且つ顔料の光学特性、例えば、白色化力もしくは着色力(tinting strength TS)に不利に作用する。
【0004】
US5993533号は、二酸化チタン顔料をインライン型混合機内でSiO2およびAl23で被覆する方法を開示している。該処理は、80ないし100℃で、且つpH値>9.5もしくは<8.5での、2つの引き続く熟成段階を経る。
【0005】
GB1340045号は、二酸化チタン顔料の表面被覆のためのバッチ式の方法を記載し、その際、該顔料は懸濁液中で2時間までで撹拌容器中で強力な撹拌に供され、この間に、被覆物質が添加され、且つ適用される。
【0006】
WO2008/071382号A1は、無機粒子が、連続的な移送の間、攪拌機ミルによって表面被覆される、さらなる方法を記載している。ここでは、個々の粒子の特に平坦且つ均一な表面被覆が達成される。
【0007】
本発明の課題の設定および概要
本発明の基礎をなす課題は、平坦、均一且つ一貫した表面被覆を、固体粒子上に生じさせる選択的な方法を示すことである。
【0008】
該課題は、以下の工程を含む、無機の固体粒子を水性懸濁液中で少なくとも1つの被覆物質で被覆するための方法によって解決される:
a) 水性懸濁液中に存在する固体粒子を解凝集させる工程、
b) 被覆物質の水溶性前駆体化合物を懸濁液中に添加する工程、
c) 工程b)の直後に続く、分散装置内での懸濁液のホモジナイズ工程 (工程a)ないしc)において懸濁液の温度およびpH値は顕著には変わらない)、
d) 懸濁液を容器内へ移し、且つ粒子表面上へ被覆物質を沈殿させ、且つ随意にさらなる被覆を適用する工程、
e) 固体粒子を懸濁液から分離する工程。
【0009】
さらなる有利な本発明の実施態様は、従属請求項内に記載されている。
【0010】
従って、本発明の主題は、少なくとも1つの無機または有機化合物からなる、平坦、均一且つ閉じられた外被で固体粒子を表面被覆するための方法である。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明による方法は、未処理の無機固体粒子(以下で基体とも称される)の水性懸濁液から始まる。適しているのは、水性懸濁液中で加工される、約0.001〜1μmの範囲の粒径を有する微細に分割された無機の固体であり、例えば顔料(二酸化チタン、着色顔料、効果顔料等)、充填材、チタン酸塩、鉄−、ニッケル−、または他の磁性粒子である。被覆物として、公知の元素のSi、Ti、Al、Zr、Sn、Mn、Ceおよびさらなる元素の酸化物、水酸化物、ホスフェートおよび類似の化合物が考慮される。この場所以降では、"酸化物"は、その都度の水酸化物または含水酸化物とも理解されるべきである。殊に、それは無機の被覆物のことである。
【0012】
本発明の特別な実施態様において、未処理の二酸化チタン顔料粒子(TiO2基体)を使用する。硫酸法、例えば塩化物法によって製造されたTiO2基体も使用できる。該TiO2基体は、アナターゼまたはルチル構造を有してよい。好ましくはルチルである。通常、TiO2基体は、TiO2顔料の光安定性の改善のために、公知の元素、例えばAlを用いてドープされる。例えば、塩化物法においては、TiO2基体が、Al23として計算して約0.5ないし2.0質量%のAlを有するような量のAlCl3をTiCl4と共に酸化する。硫酸法による二酸化チタン製造の際、加水分解されたチタニルスルフェートと発熱性添加物(Gluehzusaetzen)、例えば水酸化カリウムまたはリン酸とを混合し、そして引き続き焼成する。硫酸法からのTiO2基体は通常、その都度、酸化物として計算して約0.2〜0.3質量%のK並びに0.05ないし0.4質量%のPを含有する。
【0013】
本発明による方法は、水性懸濁液中での表面被覆の間、粒子が最適な分散状態にあることによって特徴付けられる。従って、該方法は、第一の段階(段階a)において強力な解凝集に供される、未処理の無機固体粒子の水性懸濁液から出発する。
【0014】
該解凝集を、例えば、攪拌機ミル、例えばビードミルまたはサンドミルまたは超音波ミル内で実施してよい。
【0015】
通常、分散剤が添加される。適した分散剤は当業者に公知である。例えば、TiO2基体の解凝集の際、サンドミル内で好ましくはケイ酸ナトリウムまたはナトリウムヘキサメタホスフェートを分散剤として使用する。分散剤の濃度は通常、1tのTiO2あたり0.05ないし5.0kgの範囲内である。
【0016】
通常、懸濁液のpH値も、粒子の性質および分散剤に依存して調節される。例えば、塩化物法からのTiO2基体の解凝集の際、pH値を約9〜12または約2〜5の値に調節する。TiO2基体の懸濁液の温度は、通常、約40ないし80℃である。
【0017】
解凝集された懸濁液を、粉砕体、その断片、または充分に砕かれなかった装填物に分級して分離する。このために、ふるいおよびハイドロサイクロンを使用する。ハイドロサイクロン分級による微細成分を引き続き、表面被覆のために使用でき、一方、粗粉体の部分は方法工程の解凝集に返送することができる。
【0018】
工程b)において、懸濁液に、被覆物質の前駆体化合物を水溶液で、通常、古典的な方法の際と同様に水溶性塩(以下において金属塩)の形態で添加する。相応する金属塩は、当業者にはよく知られている。例えば、SiO2を用いた被覆のために、前駆体化合物としてケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウム(水ガラス)を使用できる。さらに前駆体化合物としての金属有機化合物、例えばアルコキシシランを、SiO2を用いた被覆のために使用できる。前駆体化合物の添加を、パイプラインまたは容器内へのバッチ式のいずれかで実施できる。
【0019】
本発明による方法は、解凝集および分級の後に、温度およびpH値が顕著には変わり得ないほど該添加を素早く行うことによって特徴付けられる。"顕著な"変化は、10℃より大きい温度差および1より大きいpH値差と理解される。好ましくは、該添加は、解凝集および分級から、遅くとも8時間後、殊に遅くとも1時間後に行われる。前駆体化合物の添加前の時間に、粒子の堆積を避けることが有利である。
【0020】
前駆体化合物の添加直後に、懸濁液を工程c)において分散装置内でホモジナイズする。好ましくは、インライン分散装置は、例えばローター−ステーターシステム、スタティックミキサーまたは超音波反応器である。ホモジナイズの間、懸濁液の温度およびpH値の顕著な変化は起こらない。該ホモジナイズは、引き離された粒子の周りに、既に前駆体化合物の均一な吸着層を形成するために提供される。被覆物質の沈殿は、工程d)で行われる。
【0021】
工程d)において、懸濁液を容器内に移し、且つ被覆物質を、適したpH値の調整によって粒子表面上に沈殿させる。公知の方法に従って、相応する酸性またはアルカリ性の反応物質、例えば酸またはアルカリ液を懸濁液中に加える。個々の被覆物質の沈殿条件は当業者に公知である。随意に、公知の方法に従って、さらにまた別の無機または有機の被覆物を粒子表面上に適用できる。
【0022】
工程e)において、被覆された粒子を、公知の方法に従って懸濁液から分離し、場合によっては洗浄し、乾燥させ、且つ微細に粉砕する。
【0023】
本方法の特別な実施態様において、SiO2またはAl23を用いて、好ましくはSiO2を用いて二酸化チタン基体粒子を被覆する。そのために、TiO2基体粒子の懸濁液を、アルカリ性のpH値に調節し、分散剤と混ぜて、サンドミル内で解凝集させ、引き続き分級する。該懸濁液はその後に、約9〜12のpH値および約40〜80℃の温度を有する。SiO2を用いた被覆の際、前駆体化合物としてケイ酸ナトリウム溶液を、TiO2に対してSiO2約0.1〜5.0質量%の量で懸濁液に加える。Al23を用いた被覆の際、前駆体化合物として、例えばアルミン酸塩、殊にアルミン酸Naが適している。温度およびpH値が顕著には変わらないように、該添加を好ましくは、解凝集および分級の後、遅くとも8時間まで、殊に遅くとも1時間までに実施する。直後に、ケイ酸塩と混合された懸濁液をインライン分散装置内でホモジナイズする。ホモジナイズの間、懸濁液の温度およびpH値は顕著には変わらない。引き続き、該懸濁液を容器内にポンプ供給し、且つ、pH値を、相応する量の酸、例えばHClの添加によって約1〜8のpH値に調節する。その結果、SiO2もしくはAl23が粒子表面に沈殿する。次に、公知の方法に従ってさらなる表面被覆、例えばSi、Al、Zr、Sn、Ti、Mn、Ce等の酸化物、水酸化物、酸化物−水化物、またはホスフェートを適用してもよい。好ましくは、最終的にAl化合物を、TiO2に対するAl23として計算して約0.5〜8質量%の量で適用する。
【0024】
本発明による方法を用いて、公知の表面被覆法と比べて、個々の粒子の非常に平坦で均一且つ閉じられた外被が得られる。さらには、本発明による方法を用いて工程c)の後に作製される、SiO2またはAl23で被覆されたTiO2粒子の懸濁液は、従来の解凝集および分級された懸濁液と比べて特に貯蔵安定性があり、なぜなら、二酸化ケイ素−水化物層もしくはアルミニウム酸化物−水化物層はTiO2粒子上で、支配的な条件(約40〜80℃の温度、約9〜12のpH値)にて粒子の負の表面電荷密度を高めるからである。従って、その後の工程d)における沈殿前、およびさらなる被覆前での二酸化チタンの再凝集が防がれる。
【0025】
本発明による方法を用いて、最終的な微粉砕後に未コーティングの粒子表面および別途沈殿した被覆物質がよりわずかにしか存在しないことが達せられる。さらに、本発明による方法に従って製造された懸濁液は、古典的な方法(比較例1)に従って製造されたものに匹敵して良好にろ過可能である。本発明によって処理されたTiO2顔料は、改善された光安定性および明らかに改善された白色化力(TS)を有する。該TiO2顔料は、プラスチック、特にマスターバッチ並びに被覆物、殊にラッカーおよび積層品における使用に非常に適している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1の透過型電子顕微鏡像である。
【図2】比較例1の透過型電子顕微鏡像である。
【0027】
実施例
次に、本発明を実施例によってより詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものとして理解するべきではない。量の記載は、それぞれTiO2基体に対する。
【0028】
実施例1
塩化物法からのTiO2基体の水性懸濁液を、550kg/m3の濃度および55℃の温度で調製し、NaOHを用いて約11のpH値に調節し、且つ、分散剤としてのナトリウムヘキサメタホスフェートと混合した。そのように得られた懸濁液を攪拌機ミル内で二酸化ジルコン粉砕体を使用して解凝集させ、且つ、ふるいおよびハイドロサイクロンにより分級し、粗粉体を分離した。解凝集された懸濁液の微細成分は容器内に集められ、且つ、10.5のpH値および55℃の温度を有した。引き続き、該懸濁液をインライン型分散装置(ローター・ステーターシステム:Ytron Z250.3)によって移送した。インライン型分散装置の供給口(Zulauf)におけるパイプラインを介して、該懸濁液にTiO2に対してSiO2として計算して0.5質量%のケイ酸ナトリウム水溶液を添加した。引き続き、該懸濁液をさらなる容器内に集めた。懸濁液の温度は55℃であり、且つpH値は10.5であった。次に、攪拌しながらHClを添加し、且つ、pH値を3.5に調節した。30分の攪拌後、さらに0.7%のSiO2をケイ酸ナトリウム溶液として、且つ、最終的に2.0%のAl23をアルミン酸ナトリウム溶液として添加した。約6のpH値が生じた。該懸濁液を引き続きろ過し、洗浄し、且つ乾燥させた。乾燥された材料を、スパイラルジェットミルを用いてシリコーン油を添加しながら蒸気粉砕した。TiO2顔料の組成を、XRF(蛍光X線)を用いて解析し、該組成は95質量%のTiO2、1.25質量%のSiO2、および3.3質量%のAl23であった。透過型電子顕微鏡での調査は、該顔料が非常に均一、平坦且つ閉じられた被覆を有することを示した(図1)。粒子と並んで凝集した被覆材料は存在していない。そのように製造された顔料の白色化力(TS)は、約103点であった。
【0029】
実施例2
実施例1の方法と同様に行ったが、インライン型分散装置の供給口にSiO2の代わりに0.5質量%のAl23をアルミン酸ナトリウム溶液の形態で添加した点で異なる。さらなるフローにおいて、かかる量のSiO2およびAl23を添加し、その結果、96質量%のTiO2、1.8質量%のSiO2、および2.2質量%のAl23の組成を有するTiO2顔料が得られる。
【0030】
比較例1 (古典的な方法)
塩化物法からのTiO2基体の水性懸濁液を、550kg/m3の濃度および55℃の温度で調製し、NaOHを用いて約11のpH値に調節し、且つ、分散剤としてのナトリウムヘキサメタホスフェートと混合した。そのように得られた懸濁液を攪拌機ミル内で二酸化ジルコン粉砕体を使用して解凝集させ、且つ、ふるいおよびハイドロサイクロンを通じて分級し、粗粉体を分離した。解凝集された懸濁液の微細成分は容器内に集められ、且つ、10.5のpH値および55℃の温度を有した。引き続き、該懸濁液を容器内に集めた。懸濁液の温度は55℃であり、且つpH値は10.5であった。その後、1.25%のSiO2をケイ酸ナトリウム溶液として添加し、HClの添加によってpH値を約5に下げ、且つ、最終的に2.0%のAl23をアルミン酸ナトリウム溶液として添加した。約6のpH値が生じた。該懸濁液を引き続きろ過し、洗浄し、且つ乾燥させた。乾燥された材料を、スパイラルジェットミルを用いてシリコーン油を添加しながら蒸気粉砕した。TiO2顔料の組成を、XRF(蛍光X線)を用いて解析し、該組成は95質量%のTiO2、1.25質量%のSiO2、および3.3質量%のAl23であった。透過型電子顕微鏡での調査は、該顔料が実施例1と比べて不均一な被覆を有することを示した(図2)。粒子と並んで凝集した被覆材料が存在する。そのように製造された顔料の白色化力(TS)は、99点であった。
【0031】
比較例2 (いわゆるTDD法)
塩化物法からのTiO2基体の水性懸濁液を、550kg/m3の濃度および55℃の温度で調製し、NaOHを用いて約11のpH値に調節し、且つ、分散剤としてのナトリウムヘキサメタホスフェートと混合した。引き続き、TiO2に対してSiO2として計算して0.5質量%のケイ酸ナトリウム水溶液を添加した。そのように得られた懸濁液を、攪拌機ミルを用いて砂粉砕体を使用して解凝集させ、且つ、ふるいおよびハイドロサイクロンを通じて分級し、粗粉体を分離した。解凝集された懸濁液の微細成分は容器内に集められ、且つ、10.5のpH値および55℃の温度を有した。次に、攪拌しながらHClを添加し、且つ、pH値を3.5に調節した。30分の攪拌後、さらに0.7%のSiO2をケイ酸ナトリウム溶液として、且つ、最終的に2.0%のAl23をアルミン酸ナトリウム溶液として添加した。約6のpH値が生じた。該懸濁液を引き続きろ過し、洗浄し、且つ乾燥させた。乾燥された材料を、スパイラルジェットミルを用いてシリコーン油を添加しながら蒸気粉砕した。TiO2顔料の組成を、XRF(蛍光X線)を用いて解析し、該組成は95質量%のTiO2、1.25質量%のSiO2、および3.3質量%のAl23であった。透過型電子顕微鏡での調査は、該顔料が実施例1と比べて同様に均一、平坦且つ閉じられた被覆を有することを示した。粒子と並んで凝集した被覆材料は存在しない。そのように製造された顔料の白色化力(TS)は、約103点であった。
【0032】
試験方法
白色化力(TS)
実施例および比較例の顔料の白色化力(TS)を、Vinnol黒色ペースト中へ1.22%の顔料容積濃度で混入した後に測定する(いわゆるVIG法)。検査されるべき二酸化チタン顔料を、予め準備されたVinnol黒色ペーストを用いて塗料擦り機(Farbenausreibmaschine)(Automatic Mullar)上でペースト化する。得られる灰色のペーストを、膜延ばし機(アプリケーター)を用いてカード上に塗る。該層の反射率値を、HunterLab Colorimeter PD−9000を用いて湿った状態で測定し、且つ内部標準に関連させる。
【0033】
透過型電子顕微鏡法(TEM)
透過型電子顕微鏡法(TEM)を用いて、二酸化チタン粒子の被覆物を可視化できる。
【0034】
結果
本発明による方法は、非常に均一、平坦且つ閉じられた被覆を有する顔料をもたらす(図1)。粒子と並んで凝集した被覆材料は存在しない。それにより、本発明によって作製された被覆物は、古典的な方法に従って製造された比較例1(図2)によるものと比べて明らかに改善され、且つ、いわゆるTDD法に従って製造された比較例2によるものに匹敵する。二酸化ケイ素を用いた無機固体粒子の被覆のための所要時間は、本発明による方法およびいわゆるTDD法では、古典的な方法の際よりも明らかに短い。
【0035】
しかしながら、同時に本発明による方法は、該懸濁液が古典的な方法(比較例1)と同様に良好なろ過挙動を有することによって特徴付けられ、他方で、TDD法に従って製造される懸濁液(比較例2)は、チキソトロピーおよび非常に密な濾過ケークの形成に基づき、約30%の流量減少でろ過可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの被覆物質を有する水性懸濁液中での無機固体粒子の被覆方法であって、以下の工程:
a) 水性懸濁液中に存在する固体粒子を解凝集させる工程、
b) 被覆物質の水溶性の前駆体化合物を該懸濁液へ添加する工程、
c) 工程b)の直後に続く、分散装置内で懸濁液をホモジナイズする工程、その際、工程a)ないしc)において、懸濁液の温度およびpH値は顕著には変わらない、
d) 懸濁液を容器内へ移し、且つ粒子表面上へ被覆物質を沈殿させ、且つ随意にさらなる被覆を適用する工程、
e) 固体粒子を懸濁液から分離する工程を含む、被覆方法。
【請求項2】
固体粒子が二酸化チタン粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの無機の被覆物質を用いて被覆されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
被覆物質がSiO2またはAl23であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、攪拌機ミルを使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)において懸濁液が、約9〜12または約2〜5のpH値を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)において懸濁液が、約40〜80℃の温度を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)における解凝集後に、分級工程によって粗粉体を懸濁液から排出することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
SiO2を、粒子の質量に対して約0.1〜5質量%の量で使用することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前駆体化合物の添加(工程b))を、工程a)の遅くとも8時間後、殊に遅くとも1時間後に実施することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)において、前駆体化合物の容器内またはパイプラインへの添加を実施することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程c)において、インライン型分散装置を使用することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
インライン型分散装置がローター・ステーターシステムまたはスタティックミキサーであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程d)において、Si、Al、Zr、Sn、Ti、MnまたはCeの酸化物、水酸化物、酸化物−水化物またはホスフェートを用いたさらなる被覆を行うことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
最終的に被覆が、粒子の質量に対するAl23として計算して約0.5〜8質量%の量で行われることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法に従って製造される、被覆された無機固体粒子。
【請求項17】
二酸化チタン顔料粒子であることを特徴とする、請求項16に記載の粒子。
【請求項18】
プラスチック、被覆物および積層品における請求項17に記載の二酸化チタン顔料粒子の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−523966(P2011−523966A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512006(P2011−512006)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003805
【国際公開番号】WO2009/146834
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(592039299)クローノス インターナショナル インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】KRONOS INTERNATIONAL, INC.
【住所又は居所原語表記】Peschstrasse 5, D−51373 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】