説明

無機微粒子分散ペースト組成物

【課題】粘度が高く、スクリーン印刷性及びディスペンス印刷性に優れるとともに、低温で焼成することができる無機微粒子分散ペースト組成物を提供する。
【解決手段】架橋(メタ)アクリル樹脂を含むゲル状粒子、無機微粒子及び有機溶剤を含有する無機微粒子分散ペースト組成物であって、前記架橋(メタ)アクリル樹脂を含むゲル状粒子は、架橋(メタ)アクリル樹脂を70重量%以上含有する樹脂微粒子を前記有機溶剤で膨潤してなり、前記架橋(メタ)アクリル樹脂を70重量%以上含有する樹脂微粒子の粒子径が10μm以下であり、かつ、前記架橋(メタ)アクリル樹脂は、単官能(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと多官能(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントとを有する共重合体である無機微粒子分散ペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度が高く、スクリーン印刷性及びディスペンス印刷性に優れるとともに、低温で焼成することができる無機微粒子分散ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粉末、導電粉末、セラミック粉末等の無機微粒子を樹脂バインダーに分散させたペースト組成物は、様々な形状の焼結体を得るために用いられている。
例えば、バインダー樹脂に導電粉末を分散させた導電ペーストは、回路形成やコンデンサーの製造等に用いられている。また、バインダー樹脂にセラミック粉末やガラス粉末を分散させたセラミックペーストやガラスペーストは、プラズマディスプレイパネル(PDP)の誘電体層や積層セラミックコンデンサの製造、蛍光表示管等に用いられている。更に、バインダー樹脂に酸化スズにインジウムをドープしたITOを分散させたペースト組成物は、PDP、液晶ディスプレイパネル(LCD)、太陽電池パネル駆動部の回路形成等を製造するための透明電極材料等に用いられている。加えて、バインダー樹脂に蛍光体を分散させたペースト組成物は、無機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、PDP、バインダー樹脂に銀を分散させたペースト組成物は、太陽電池、LED等に用いられている。これらの無機微粒子分散ペースト組成物は、近年需要が急速に高まりつつある。
【0003】
このような無機微粒子分散ペースト組成物は、例えば、スクリーン印刷、ダイコート印刷、ドクターブレード印刷、ロールコート印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンス印刷等を用いた塗布法、シート状に加工するためのキャスティング法等により所定の形状に加工した後、焼成することで必要な形状の焼結体とすることができる。なかでも、スクリーン印刷法は、特に大量生産に適した方法である。また、ディスペンス印刷法は、特に精密な印刷に適した方法であり、電子部品のパターン形成等に用いられている。
【0004】
スクリーン印刷やディスペンス印刷を良好に行うためには、塗工の際に粘度が充分に低く塗工が容易であり、一方、塗工後に静置して乾燥させる際には粘度が充分に高く自重により流延しないという性質が求められるため、ペースト組成物は、いわゆるチキソトロピー性(以下、「チキソ性」ともいう)を有することが好ましい。なお、チキソ性とは、例えば、回転粘度計で粘度を評価した場合、回転数が高い場合(歪速度が高い変位)では粘度が低く、回転数が低い場合(歪速度が低い変位)では粘度が高い性質である。
【0005】
一般的に、スクリーン印刷やディスペンス印刷に用いられるペースト組成物に含有されるバインダー樹脂には、エチルセルロースを高沸点有機溶剤に溶解させたものが用いられている。エチルセルロースは、エトキシ化率が高くなるほど高粘度になって有機溶剤に溶解し難くなるが、完全に溶解させずに数ミクロンの未溶解物を残すことでペースト組成物にチキソ性を持たせることができる。すなわち、ペースト組成物中に未溶解状態で残ったエチルセルロース粒子が擬似架橋点的な働きをすることで、ペースト組成物に剪断歪みがかかった際に歪み速度に応じて応力が変化する。剪断速度が大きな場合は擬似架橋点が破壊されてペースト組成物の粘度が低くなり、一方、剪断速度が小さな場合はペースト組成物の擬似架橋点の破壊と回復とが同時に起こることでペースト組成物は高粘度を示す。そのため、エチルセルロースの配合量が少なくても、得られるペースト組成物は粘度が高く、糸曳きをほとんど生じないものとなる。
【0006】
スクリーン印刷やディスペンス印刷を用いたペースト組成物の塗工方法では、例えば、無機微粒子をエチルセルロース等のバインダー樹脂に分散させたペースト組成物を基板上にスクリーン印刷やディスペンス印刷で塗工し、その後、焼結することで無機微粒子からなる層を形成する。しかし、バインダー樹脂として一般的に用いられているエチルセルロースは500℃以上の高温で加熱しなければ完全に分解せず、焼結時の高温での加熱により金属微粒子が劣化したり、エチルセルロースの分解が不充分であった場合、焼結後の残留炭素により金属微粒子の特性を低下したりする等の問題を抱えていた。また、エチルセルロースは、天然物由来の不純物イオンが多数含有されており、ペースト組成物の用途が半導体関連等であると、この不純物イオンが問題となることがあった。
【0007】
これに対して、特許文献1には、熱分解性の良好な(メタ)アクリル樹脂を用いたペースト組成物が開示されている。しかし、(メタ)アクリル樹脂は粘着性が強いため、スクリーン印刷装置を用いてペースト組成物を印刷する場合、転写されたペースト組成物が糸曳きし、スクリーン印刷板の裏面に戻ってパターンの印刷不良が発生する問題があった。また、ディスペンス印刷装置を用いてペースト組成物を印刷する場合では、ペースト組成物を充填するセル以外のセルがペースト組成物の糸曳きによって汚染されるという問題があった。
更に、(メタ)アクリル樹脂は比較的に増粘性が低いため、印刷に適する程度までペースト組成物の粘度を高くするために(メタ)アクリル樹脂の配合量を増やすと焼結時の未分解残渣が多くなり、また、少量の(メタ)アクリル樹脂でペースト組成物の粘度を高くするために(メタ)アクリル樹脂の分子量を高くすると、糸曳きが発生しやすくなってスクリーン印刷やディスペンス印刷に用いることが困難であった。
【0008】
特許文献2には、架橋アクリル樹脂からなる微粒子をペースト組成物に配合する方法が開示されている。特許文献2では、ペースト組成物に糸曳きが生じた場合でも、架橋アクリル樹脂からなる微粒子が糸切れの起点となるとしている。しかしながら、該架橋アクリル樹脂からなる微粒子は増粘効果が低いため、ペースト組成物の粘度を高くするために多量の樹脂が必要となり、焼結時の未分解残渣が多くなるという問題があった。
【0009】
特許文献3には、コア−シェル構造を有する微粒子をペースト組成物に配合する方法が開示されている。特許文献3では、コア部分が架橋されているが、シェル部分が架橋されていないため、粒子が凝集しやすく、粘度が安定しないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−104053号公報
【特許文献2】特開平10−083760号公報
【特許文献3】特開2010−126560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、粘度が高く、スクリーン印刷性及びディスペンス印刷性に優れるとともに、低温で焼成することができる無機微粒子分散ペースト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、架橋(メタ)アクリル樹脂を含むゲル状粒子、無機微粒子及び有機溶剤を含有する無機微粒子分散ペースト組成物であって、前記架橋(メタ)アクリル樹脂を含むゲル状粒子は、架橋(メタ)アクリル樹脂を70重量%以上含有する樹脂微粒子を前記有機溶剤で膨潤してなり、かつ、粒子径が10μm以下であり、前記架橋(メタ)アクリル樹脂は、単官能(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと多官能(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントとを有する共重合体である無機微粒子分散ペースト組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0013】
本発明者らは、バインダー樹脂として(メタ)アクリル樹脂を用いる場合において、ペースト組成物中に未溶解状態の架橋(メタ)アクリル樹脂を含む膨潤ゲルを含有させることにより、該膨潤ゲルが擬似架橋点的な働きをすることで、ペースト組成物の粘度を高くし、かつ、チキソ性を向上させることができることを見出した。
しかしながら、通常、ゲルは系の端から端まで橋掛けされた状態にあり、固体状であるため、ペースト用途に用いることが難しいという問題があった。
そこで、本発明者らは、粒子径を10μm以下とした架橋(メタ)アクリル樹脂のゲル状粒子をバインダー樹脂として用いることにより、粘度が高く、糸曳きを抑制することができる無機微粒子分散ペースト組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、架橋(メタ)アクリル樹脂を含むゲル状粒子(以下、単にゲル状粒子ともいう)を含有する。上記ゲル状粒子が架橋(メタ)アクリル樹脂を含むことにより、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、無機微粒子の焼結体をより低い焼成エネルギーで作製することができる。
【0015】
上記架橋(メタ)アクリル樹脂は、単官能(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと多官能(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントとを有する共重合体である。
【0016】
上記単官能(メタ)アクリルモノマーは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記単官能(メタ)アクリルモノマーには、ポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリルモノマーを用いてもよい。上記ポリオキシアルキレン構造は特に限定されず、例えば、ポリオキシプロピレン構造、ポリオキシメチルエチレン構造、ポリオキシエチルエチレン構造、ポリオキシトリメチレン構造、ポリオキシテトラメチレン構造等が挙げられる。
上記単官能(メタ)アクリルモノマーのなかでも、より低温で分解することができることから、メチルメタクリレートが好適である。
なお、本明細書中において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0017】
上記多官能(メタ)アクリルモノマーは特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記多官能(メタ)アクリレートは、エチレンオキサイド変性していてもよい。
【0018】
上記架橋(メタ)アクリル樹脂における上記多官能(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントの含有割合の好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は50重量%である。上記多官能(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントの含有割合が0.5重量%未満であると、ゲル状粒子によってチキソ性を向上させる効果がほとんど発揮されず、得られる無機微粒子分散ペースト組成物が糸曳きの発生しやすいものとなることがある。上記多官能(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントの含有割合が50重量%を超えると、架橋度が高くなりすぎることで有機溶剤に不溶となり、印刷に必要な粘度が得られないことがある。上記多官能(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントの含有割合のより好ましい下限は1重量%、より好ましい上限は40重量%である。
【0019】
上記ゲル状粒子は、粒子径が10μm以下であることが好ましい。粒子径が10μmを超えると、焼結体のボイドや印刷時の目詰まり等の原因となる。上記ゲル状粒子の粒子径のより好ましい上限は5μm、より好ましい下限は50nmである。
なお、本明細書において「ゲル状粒子の粒子径が10μm以下である」とは、ゲル状粒子の95重量%以上が孔径10μmのフィルターを通過することを表す。
【0020】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物中の上記ゲル状粒子の含有量の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は20重量%である。上記ゲル状粒子の含有量が5重量%未満であると、得られる無機微粒子分散ペースト組成物が成形性に劣るものとなることがある。上記ゲル状粒子の含有量が20重量%を超えると、得られる無機微粒子分散ペースト組成物が糸曳きの発生しやすいものとなることがある。上記ゲル状粒子の含有量のより好ましい下限は7重量%、より好ましい上限は15重量%である。
【0021】
上記架橋(メタ)アクリル樹脂を含むゲル状粒子は、架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子を有機溶剤で膨潤してなるものである。このような架橋した樹脂微粒子を用いることで、有機溶剤に溶解しにくく、膨潤するため、糸曳きを抑制することができる。
上記架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子ではなく、未架橋の樹脂微粒子や未架橋部位を有するコアシェル微粒子を用いた場合は、分子量の高い成分が有機溶剤に溶解されることで、少量の溶解で糸曳きが発生しやすくなる。また、微粒子が凝集しやすくなり、粘度が安定しない。
【0022】
上記架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子は、架橋(メタ)アクリル樹脂を70重量%以上含有する。これにより、樹脂微粒子の溶解を抑制し、糸曳きを抑えることができる。また、上記架橋(メタ)アクリル樹脂は、80重量%以上含有することが好ましい。
【0023】
上記架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子は、粒子径が10μm以下である。上記架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子の粒子径が10μm以下であることにより、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、粘度が高く、糸曳きを低減することができ、スクリーン印刷やディスペンス印刷に好適に用いることができる。一方、上記架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子の粒子径が10μmを超える場合、焼結体のボイドや印刷時の目詰まり等の原因となる。上記架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子は、粒子径の上限が5μmであることが好ましい。
また、上記架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子の粒子径の好ましい下限は10nmである。上記粒子径が10nm未満であると、有機溶剤に溶解しやすくなり、チキソ性を向上させる効果がほとんど発揮されないことがある。
上記架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子の粒子径のより好ましい上限は5μm、より好ましい下限は50nmである。
なお、本明細書において「架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子の粒子径」は、例えば、動的光散乱式粒度分布計(Particle Sizing Systems社製、「NICOMP model 380 ZLS−S」)を用いて測定されたものである。
【0024】
上記架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子は、架橋中実微粒子、架橋中空微粒子、又は、架橋コアシェル微粒子であることが好ましい。
上記架橋中実微粒子は、粒子全体が架橋されている樹脂微粒子である。
上記架橋中空微粒子は、粒子のシェル部が架橋されている樹脂微粒子である。
上記架橋コアシェル微粒子は、粒子のコア部及びシェル部がともに架橋されている樹脂微粒子である。
【0025】
上記ゲル状粒子は、架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子を有機溶剤で膨潤することにより作製することができる。特に、上記架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子が懸濁重合法や乳化重合法等によって製造されたものであるときは、遠心分離やフリーズドライ法等によって、上記架橋(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂微粒子と、イオン成分を含む水溶液とに分離させ、イオン成分を含む水溶液を除去することが好ましい。
【0026】
上記ゲル状粒子は増粘性に優れているため、得られる無機微粒子分散ペースト組成物に充分な粘度を確保することができる。ただし、上記ゲル状粒子のみではチキソ性が高すぎ、印刷時に粘度が極端に低くなる場合には、ゲル状粒子の粒径を小さくすることで擬似架橋点の相互作用を抑えたり、本発明の目的を阻害しない範囲で上記ゲル状粒子以外にチキソ性低減剤を添加したりしてもよい。
上記チキソ性低減剤は、ゲル状粒子間に分散し、ゲル状粒子間の相互作用を低減することでチキソ性を低減すると考えられる。
上記チキソ性低減剤としては、他のバインダー樹脂、液状ポリマー等の糸曳き性の低い樹脂のほか、水素結合による増粘性に優れる結晶性多価アルコール系有機化合物等の結晶性有機化合物が挙げられる。
【0027】
上記チキソ性低減剤として使用されるバインダー樹脂としては特に限定されないが、例えば、セルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ロジン樹脂が挙げられる。なかでも、熱分解性が高く、焼結後の残留炭素が少ないことから、ポリエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ロジン樹脂を好適に用いることができる。
【0028】
上記チキソ性低減剤として使用される液状ポリマーとしては特に限定されないが、例えば、低分子量のアクリルオリゴマー、ポリエーテル樹脂を好適に用いることができる。
上記チキソ性低減剤として使用される結晶性多価アルコール系有機化合物としては特に限定されないが、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が好適に用いることができる。
【0029】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物中の上記チキソ性低減剤の含有量の好ましい下限は0.2重量%、好ましい上限は25重量%である。上記チキソ性低減剤の含有量が0.2重量%未満であると、チキソ性を低減する効果が出ないことがある。上記チキソ性低減剤の含有量が25重量%を超えると、得られる無機微粒子分散ペースト組成物が糸曳きの発生しやすいものとなることがある。上記チキソ性低減剤のより好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は、20重量%である。
【0030】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、無機微粒子を含有する。
上記無機微粒子は特に限定されないが、金属、ガラス、珪素化合物、カーボンブラック、錫を含有する合金及び、金属錯体からなる群より選択される少なくとも1種を原料とするものが好適に用いられる。
具体的には例えば、銅、銀、白金、金、銀、アルミニウム、タングステン、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化マグネシウム、ITO、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラス等の低融点ガラス、酸化ビスマスガラス、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、亜鉛ガラス、ボロンガラス、珪素化合物、種々のカーボンブラック、はんだ粉、金属錯体、無機蛍光体物質として従来知られている青色蛍光体物質、赤色蛍光体物質、緑色蛍光体物質等が用いられる。青色蛍光体物質としては、例えば、YSiO:Ce系、CaWO:Pb系、BaMgAl1017:Eu系、BaMgAl1423:Eu系、BaMgAl1627:Eu系、BaMgAl1423:Eu系、BaMgAl1427:Eu系、ZnS:(Ag,Cd)系のものが用いられる。赤色蛍光体物質としては、例えば、Y:Eu系、YSiO:Eu系、YAl12:Eu系、Zn(PO:Mn系、YBO:Eu系、(Y,Gd)BO:Eu系、GdBO:Eu系、ScBO:Eu系、LuBO:Eu系のものが用いられる。緑色蛍光体物質としては、例えば、ZnSiO:Mn系、BaAl1219:Mn系、SrAl1319:Mn系、CaAl1219:Mn系、YBO:Tb系、BaMgAl1423:Mn系、LuBO:Tb系、GdBO:Tb系、ScBO:Tb系、Sr6SiCl:Eu系のものが用いられる。その他、ZnO:Zn系、ZnS:(Cu,Al)系、ZnS:Ag系、YS:Eu系、ZnS:Zn系、(Y,Cd)BO:Eu系、BaMgAl1223:Eu系のものも用いることができる。等が挙げられる。
【0031】
上記無機微粒子の含有量は特に限定されないが、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物のうち、上記ゲル状粒子や後述する有機溶剤等の無機微粒子以外の成分からなるバインダー樹脂組成物100重量部に対して好ましい下限が10重量部、好ましい上限が300重量部である。上記無機微粒子の含有量が10重量部未満であると、無機微粒子分散ペースト組成物に充分なチキソ性が得られないことがある。上記無機微粒子の含有量が300重量部を超えると、上記無機微粒子を分散させることが困難となることがある。
【0032】
また、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、上記無機微粒子の分散状態を適度に安定化させるために、HLB値が10以上のノニオン系界面活性剤を含有することが好ましい。ここで、HLB値とは界面活性剤の親水性、親油性を表す指標として用いられるものであって、計算方法がいくつか提案されており、例えば、ノニオン系界面活性剤について、鹸化価をS、界面活性剤を構成する脂肪酸の酸価をAとしたとき、HLB値を20(1−S/A)で定義する。
上記HLB値が10以上のノニオン系界面活性剤は特に限定されないが、脂肪鎖にアルキレンエーテルを付加させたものが好適であり、具体的には例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等が好適である。なお、上記ノニオン系界面活性剤は、熱分解性がよいが、大量に添加すると無機微粒子分散ペースト組成物の熱分解性が低下することがあるため、含有量の好ましい上限は5重量%である。
【0033】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、有機溶剤を含有する。上記有機溶剤は粒子を膨潤させる溶剤であれば、特に限定されないが、沸点が160℃以上、290℃未満の有機溶剤が好適である。上記有機溶剤の沸点が160℃未満であると、印刷中にペーストが乾く恐れがある。上記有機溶剤の沸点が290℃以上であると、乾燥させるために膨大なエネルギーを必要とする。
沸点が160℃以上、290℃未満の上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールドデシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールドデシルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノnブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオレエート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノnブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノオレエートアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノステアレート、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートテトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールドデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノオクチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールドデシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ターピネオール、テキサノール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール、フェニルグリコール、ターピネオールアセテート、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等が挙げられる。なかでも、ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール等が好適に用いられる。これらの有機溶剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、不純物イオンの含有量ができるだけ少ないことが好ましく、不純物イオンの濃度の好ましい上限は0.5ppmである。上記不純物イオンの濃度が0.5ppmを超えると、得られる無機微粒子分散ペースト組成物を半導体関連用途に用いることが困難となる。上記不純物イオンの濃度は、上記ゲル状粒子を上述した方法で製造することで0.5ppm以下とすることができる。
【0035】
上記不純物イオンとしては、具体的にはアルカリ金属イオンが挙げられ、より具体的には、ナトリウムイオンが挙げられる。
上記不純物イオンの濃度の測定方法としては、例えば、電位差分析法等の電位差と電解電流との関係から評価する方法や、発光分光法や高周波誘導結合プラズマ(ICP発光分析法)等が挙げられる。
【0036】
また、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、23℃においてB型粘度計を用いプローブ回転数を10rpmに設定して測定した時の粘度が10Pa・s以上、100Pa・s未満であることが好ましい。上記粘度が10Pa・s未満であると、スクリーン印刷等により印刷した後に静置して乾燥させる際に自然流延してしまうことがある。上記粘度が100Pa・s以上であると、得られる無機微粒子分散ペースト組成物が印刷性におとるものとなることがある。
【0037】
また、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、下記式(1)に示すTI値(チキソ性)が1.0〜3.0であることが好ましい。上記TI値が3.0を超えると、印刷時に無機微粒子分散ペースト組成物が受けるせん断により、急激な粘度変化が発生することがある。また、スクリーン印刷に使用する場合は、無機微粒子分散ペースト組成物が飛散し、印刷像が作れないことがある。更に、ディスペンス印刷に使用する場合は、無機微粒子分散ペースト組成物が一気に吐出することで、ペーストがノズルから真っ直ぐ吐出しないことがある。上記TI値のより好ましい上限は2.5である。
【0038】
TI値=(10rpmでの粘度)/(100rpmでの粘度) (1)
【0039】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物を製造する方法は特に限定されず、上記ゲル状粒子、無機微粒子、有機溶剤等、及び、チキソ性低減剤を、3本ロール等を用いた従来公知の攪拌方法で攪拌する方法が挙げられる。
【0040】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物の用途は特に限定されないが、LEDバックライト、プラズマディスプレイパネル、VDFパネル、無機EL、太陽電池パネル等に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、粘度が高く、スクリーン印刷性及びディスペンス印刷性に優れるとともに、低温で焼成することができる無機微粒子分散ペースト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(ゲル状粒子含有スラリーの調製)
モノマー成分として、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート15重量部(ポリテトラメチレングリコールユニット数=約1;日立化成社製、FA−124M)、メタクリル酸エチル85重量部を混合したモノマー100重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールLA−12(第一工業製薬社製)0.5重量%水溶液100重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水200重量部を投入し、重合器を70℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5重量部と上記乳化懸濁液のうち5重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。30分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下した。さらに2時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して樹脂微粒子(a)のスラリーを得た。得られた樹脂微粒子(a)の粒子径を測定したところ152nmであった。なお、樹脂微粒子(a)の粒子径(体積平均粒子径)は、動的光散乱式粒度分布計(Particle Sizing Systems社製、「NICOMP model 380 ZLS−S」)を用いることにより測定した。
得られた樹脂微粒子(a)スラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテルピネオールに置換することで、ゲル状粒子(A)のテルピネオール分散液を得た。
【0043】
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
テルピネオール40.5重量部、ノニオン系界面活性剤としてBL25(日光ケミカルズ社製)0.5重量部、ポリエーテルポリオール(旭硝子社製、プレミノール4015)7重量部、蛍光体粉(日亜化学社製、ZnSiO:Mn)40重量部、ゲル状粒子(A)を表2記載の配合になるように添加し、3本ロールミルを用いて均一に混合し、無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0044】
(実施例2)
(ゲル状粒子含有スラリーの調製)
モノマー成分として、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート10重量部、メタクリル酸ブチル90重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にして得られた樹脂微粒子(b)スラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテルピネオールに置換することで、ゲル状粒子(B)のテルピネオール分散液を得た。
【0045】
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
テルピネオール42.5重量部、ノニオン系界面活性剤としてBL25(日光ケミカルズ社製)0.5重量部、ハンダ粉末粒子(日本ハンダ社製、「VO」、平均粒子径2μm)40重量部を添加し、ビーズミル(アイメックス社製、「RMB−08」)及びメディアとして粒子径1mmのジルコニア粒子を用いてビーズミル処理を1時間行い、スラリーを得た。
次いで、得られたスラリーにゲル状粒子(B)、ポリエーテルポリオール7重量部を表2記載の配合になるように添加し、3本ロールミルを用いて均一に混合し、無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0046】
(実施例3)
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
テルピネオール53.5重量部を配合し、蛍光体粉(日亜化学社製、ZnSiO:Mn)40重量部の代わりに銀微粒子(メタロー社製、平均粒子径1μm)30重量部を配合、ゲル状粒子(B)を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0047】
(実施例4)
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
テルピネオール51.5重量部を配合し、蛍光体粉(日亜化学社製、ZnSiO:Mn)40重量部の代わりに平均粒子径2.0μmのガラス微粒子(SiOを32.5%、Bを20.5%、ZnOを18%、Alを10%、BaOを3.5%、LiOを9%、NaOを6%、SnOを0.5%含有)30重量部を配合し、ゲル状粒子(B)を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0048】
(実施例5)
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
テルピネオール41.5重量部を配合し、蛍光体粉(日亜化学社製、ZnSiO:Mn)40重量部の代わりに蛍光体粉(日亜化学社製、(Y,Gd)BO:Eu)40重量部を配合し、ゲル状粒子(B)を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0049】
(実施例6)
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
テルピネオールの代わりに、テキサノール41.5重量部を配合し、蛍光体粉(日亜化学社製、ZnSiO:Mn)40重量部の代わりに蛍光体粉(日亜化学社製、BaMgAl1017:Eu)40重量部を配合し、ゲル状粒子(B)を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0050】
(実施例7)
(ゲル状粒子含有スラリーの調製)
モノマー成分として、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート15重量部、メタクリル酸ブチル85重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にして得られた樹脂微粒子(c)スラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテルピネオールに置換することで、ゲル状粒子(C)のテルピネオール分散液を得た。
【0051】
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
テルピネオール40.5重量部、ポリエーテルポリオール(旭硝子社製、プレミノール4015)7重量部、ゲル状粒子(B)の代わりにゲル状粒子(C)を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例5と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0052】
(実施例8)
(ゲル状粒子含有スラリーの調製)
モノマー成分として、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート15重量部、メタクリル酸ブチル75重量部、ステアリルメタクリレート(日油社製、ブレンマーSMA)10重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にして得られた樹脂微粒子(d)スラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテルピネオールに置換することで、ゲル状粒子(D)のテルピネオール分散液を得た。
【0053】
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
ゲル状粒子(C)の代わりにゲル状粒子(D)を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例7と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0054】
(実施例9)
(ゲル状粒子含有スラリーの調製)
モノマー成分として、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート15重量部、メタクリル酸ブチル75重量部、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油社製、ブレンマーPP1000)10重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にして得られた樹脂微粒子(e)スラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテルピネオールに置換することで、ゲル状粒子(E)のテルピネオール分散液を得た。
【0055】
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
ゲル状粒子(C)の代わりにゲル状粒子(E)を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例7と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0056】
(実施例10)
(ゲル状粒子含有スラリーの調製)
モノマー成分として、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート15重量部、メタクリル酸ブチル75重量部、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油社製、ブレンマーPME1000)10重量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にして得られた樹脂微粒子(f)スラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテルピネオールに置換することで、ゲル状粒子(F)のテルピネオール分散液を得た。
【0057】
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
ゲル状粒子(C)の代わりにゲル状粒子(F)を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例7と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0058】
(実施例11)
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
テルピネオール38.5重量部、ポリエーテルポリオール(旭硝子社製、プレミノール4015)7重量部、トリメチロールプロパン2重量部を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例7と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0059】
(実施例12)
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
テルピネオール35.5重量部、トリメチロールプロパンの代わりに2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール5重量部を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例7と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0060】
(実施例13)
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
プレミノール4015の代わりにプレミノール3011を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例7と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0061】
(実施例14)
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
テルピネオール34.5重量部、ゲル状粒子(C)の代わりにゲル状粒子(A)13重量部を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例12と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
【0062】
(比較例1)
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
樹脂微粒子を添加せず、テルピネオール32.5重量部、トリメチロールプロパン12重量部、ポリエーテルポリオール15重量部を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例5と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
得られた無機微粒子分散ペースト組成物は、粘度が高く、糸曳きするため、スクリーン印刷、ディスペンス印刷ともに印刷することができなかった。また、貯蔵安定性評価では、相分離が発生した。
【0063】
(比較例2)
(ゲル状粒子含有スラリーの調製)
粒子コア部として、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート15重量部(ポリテトラメチレングリコールユニット数=約1;日立化成社製、FA−124M)、メタクリル酸ブチル85重量部を混合したモノマー100重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールLA−12(第一工業製薬社製)0.5重量%水溶液100重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、コア部の乳化懸濁液を得た。
粒子シェル部として、メタクリル酸ブチル100重量部を混合したモノマー100重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールLA−12(第一工業製薬社製)0.5重量%水溶液100重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、シェル部の乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水200重量部を投入し、重合器を70℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5重量部と上記乳化懸濁液のうちコア部の乳化懸濁液5重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。30分熟成させた後にシェル部の乳化懸濁液95重量部を2時間かけて滴下した。さらに2時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して樹脂微粒子(g)のスラリーを得た。得られた樹脂微粒子(g)の粒子径を測定したところ175nmであった。なお、樹脂微粒子(g)の粒子径(体積平均粒子径)は、動的光散乱式粒度分布計(Particle Sizing Systems社製、「NICOMP model 380 ZLS−S」)を用いることにより測定した。
なお、樹脂微粒子(g)は、コアが架橋(メタ)アクリル樹脂、シェルが未架橋の(メタ)アクリル樹脂からなるコアシェル粒子であり、架橋(メタ)アクリル樹脂の含有量が50重量%であった。
得られた樹脂微粒子(g)スラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテルピネオールに置換することで、ゲル状粒子(G)のテルピネオール分散液を得た。
【0064】
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
テルピネオール40.5重量部、ゲル状粒子(B)の代わりにゲル状粒子(G)12重量部を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例5と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
得られた無機微粒子分散ペースト組成物は、粘度が低いが、糸曳きが強く、スクリーン印刷、ディスペンス印刷ともに印刷することができなかった。架橋していない微粒子が溶解したためと考えられる。
【0065】
(比較例3)
(ゲル状粒子含有スラリーの調製)
粒子コア部として、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート15重量部(ポリテトラメチレングリコールユニット数=約1;日立化成社製、FA−124M)、メタクリル酸ブチル85重量部、及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部を混合、攪拌し、モノマー溶液を調製した。
得られたモノマー溶液の全量を、1重量%ポリビニルアルコール(PVA)と0.02重量%亜硝酸ナトリウムとの水溶液300重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、上記で得られた乳化懸濁液の全量を一括して投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始した。8時間重合した後、重合器を室温まで冷却して樹脂微粒子(h)のスラリーを得た。得られた樹脂微粒子(h)の粒子径を測定したところ54μmであった
得られた樹脂微粒子(h)スラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテルピネオールに置換することで、ゲル状粒子(H)のテルピネオール分散液を得た。
【0066】
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
テルピネオール40.5重量部、ゲル状粒子(B)の代わりにゲル状粒子(H)12重量部を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例5と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
得られた無機微粒子分散ペースト組成物は、スクリーン印刷、ディスペンス印刷共に目詰まりにより印刷することができなかった。
【0067】
(比較例4)
(ゲル状粒子含有スラリーの調製)
モノマー成分として、メタクリル酸ブチル100重量部を混合したモノマー100重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールLA−12(第一工業製薬社製)0.5重量%水溶液100重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水200重量部を投入し、重合器を70℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5重量部と上記乳化懸濁液のうち5重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。30分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下した。さらに2時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して樹脂微粒子(i)のスラリーを得た。得られた樹脂微粒子(i)の粒子径を測定したところ135nmであった。
得られた樹脂微粒子(i)スラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテルピネオールに置換することで、ゲル状粒子(I)のテルピネオール分散液を得た。
【0068】
(無機微粒子分散ペースト組成物の調製)
テルピネオール40.5重量部、ゲル状粒子(B)の代わりにゲル状粒子(I)12重量部を表2記載の配合になるように添加したこと以外は、実施例5と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
得られた無機微粒子分散ペースト組成物は、粒子が溶剤に溶解したため、糸曳きが強く、スクリーン印刷、ディスペンス印刷共に印刷することができなかった。
【0069】
<評価>
実施例1〜14、及び、比較例1〜4で得られた無機微粒子分散ペースト組成物について、下記(1)〜(9)の評価を行った。結果を表2に示した。
また、樹脂微粒子(a)〜(i)の組成及び粒子径(体積平均粒子径)を表1に示した。
なお、粒子径は、動的光散乱式粒度分布計(Particle Sizing Systems社製、「NICOMP model 380 ZLS−S」)を用いることにより、体積平均粒子径を測定した。
【0070】
(1)ろ過
実施例及び比較例で得られた無機微粒子分散ペースト組成物100gを孔径10μmのカートリッジフィルター(日本フィルター社製、PMC−100)を用いてろ過した。粒子成分が完全にフィルターを通過した場合を「○」、フィルターを通過できない粒子成分が存在した場合を「×」として評価した。
【0071】
(2)粘度
実施例及び比較例で得られた無機微粒子分散ペースト組成物をB型粘度計(BROOK FILED社製、「DVII+Pro」)を利用して、23℃において、プローブ回転数10rpmにて粘度を評価した。粘度が10Pa・s以上であった場合、増粘能力が高いと判断した。
【0072】
(3)TI値
実施例及び比較例で得られた無機微粒子分散ペースト組成物をB型粘度計(BROOK FILED社製、「DVII+Pro」)を利用して、23℃において、プローブ回転数10、100rpmにて粘度を測定し、下記式(1)からTI値を算出した。TI値が1.0〜3.0の範囲である場合、印刷適応性に優れると判断した。
【0073】
TI値=(10rpmでの粘度)/(100rpmでの粘度) (1)
【0074】
(4)含有イオン分析
実施例及び比較例で得られた無機微粒子分散ペースト組成物を、ICP発光分析装置(セイコー社製、「SPS5000」)を用いて、高周波出力1.2kW、プラズマガス流量15L/min、キャリアガス流量0.75L/minの条件でNaイオン量を測定した。
【0075】
(5)糸曳き
先端が鋭利な直径2.6mmのステンレス製ピックを実施例及び比較例で得られた無機微粒子分散ペースト組成物へ10mmの深さに刺し500mm/minの一定速度で垂直に引き上げた。ステンレス製ピックに付着した無機微粒子分散ペースト組成物が延伸され、延糸が切れた後、ピックの上昇を止め、ペースト組成物の伸び(糸曳き)の長さを安定させた。ステンレスピックを90度寝かせ、ステンレス製ピックの先端からの糸曳きの長さを評価した。糸曳きの長さが10mm以下の場合、印刷性に優れるものといえる。
【0076】
(6)スクリーン印刷性
得られた無機微粒子分散ペースト組成物を、スクリーン印刷機(マイクロテック社製「MT−320TV」)、スクリーン製版(東京プロセスサービス社製「SX320」、乳剤20μ、印刷像80mm×80mmベタ、スクリーン枠:320mm×320mm、印刷ガラス基板(ソーダーガラス:150mm×150mm、厚み:1.5mm)を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下にて印刷を行った。
印刷後、ガラス板を120℃×10分の条件下で送風オーブンにて溶媒を乾燥した。
また、30枚連続印刷し、像のカスレ状態を確認した。
30枚の連続印刷によって変化が見られなかった場合を「○」、目詰まりによってカスレが生じた場合を「×」として評価した。
【0077】
(7)ディスペンス印刷性
ディスペンス印刷機(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)、ディスペンスノズル(武蔵エンジニアリング社製、「NH−015N」)、吐出圧0.5MPaの吐出圧でノズルから5cm離したガラス板上に実施例及び比較例で得られた無機微粒子分散ペースト組成物をディスペンス印刷する操作を10回行い、ノズルの目詰まり状態を評価した。詰まりを起こさなかった場合を「○」、詰まりが起きた場合を「×」として評価した。
【0078】
(8)ディスペンス印刷性(吐出直後のペースト挙動)
ディスペンス印刷機(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)、ディスペンスノズル(武蔵エンジニアリング社製、「NH−015N」)、吐出圧0.5MPaの吐出圧でノズルから5cm離したガラス板上に実施例及び比較例で得られた無機微粒子分散ペースト組成物をディスペンス印刷する操作を10回行い、吐出したペーストがノズルから真っ直ぐガラス基板に届くか評価した。ペーストが真っ直ぐガラス基板に届いた場合を「○」、ノズルに付着したり、ガラス基板に真っ直ぐ届かなかった場合を「×」として評価した。
【0079】
(9)貯蔵安定性
実施例及び比較例で得られた無機微粒子分散ペースト組成物を23℃の恒温室に2週間静置した後、ペーストの状態を目視により確認し、層分離も無機微粒子の沈降も見られなかった場合を「○」、二層に分離し、無機微粒子が沈降していた場合を「×」として評価した。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、粘度が高く、スクリーン印刷性及びディスペンス印刷性に優れるとともに、低温で焼成することができる無機微粒子分散ペースト組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋(メタ)アクリル樹脂を含むゲル状粒子、無機微粒子及び有機溶剤を含有する無機微粒子分散ペースト組成物であって、
前記架橋(メタ)アクリル樹脂を含むゲル状粒子は、架橋(メタ)アクリル樹脂を70重量%以上含有する樹脂微粒子を前記有機溶剤で膨潤してなり、
前記架橋(メタ)アクリル樹脂を70重量%以上含有する樹脂微粒子の粒子径が10μm以下であり、かつ、
前記架橋(メタ)アクリル樹脂は、単官能(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと多官能(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントとを有する共重合体である
ことを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項2】
前記架橋(メタ)アクリル樹脂は、多官能(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントの含有割合が0.5〜50重量%であることを特徴とする請求項1記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項3】
有機溶剤は、沸点が160℃以上、290℃未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項4】
B型粘度計を用い、23℃においてプローブ回転数を10rpmに設定して測定したときの粘度が10Pa・s以上、100Pa・s未満であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の無機微粒子分散ペースト組成物を用いることを特徴とするLEDバックライト。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載の無機微粒子分散ペースト組成物を用いることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
請求項1、2、3又は4記載の無機微粒子分散ペースト組成物を用いることを特徴とするVDFパネル。
【請求項8】
請求項1、2、3又は4記載の無機微粒子分散ペースト組成物を用いることを特徴とする無機EL。
【請求項9】
請求項1、2、3又は4記載の無機微粒子分散ペースト組成物を用いることを特徴とする太陽電池パネル。

【公開番号】特開2012−140558(P2012−140558A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−832(P2011−832)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】