説明

無機微粒子分散体及びその製造方法

【課題】飛散しやすい微小粒径の無機微粒子の充填率が高く、べたつきのない粉状であるために取り扱い性に優れる無機微粒子分散体及びその製造方法の提供である。
【解決手段】平均一次粒子径が500nm以下の無機微粒子及び液状樹脂を含む凝集体粒子から構成され、嵩比重が0.3g/cm3以上0.9g/cm3以下であり、前記無機微粒子の充填率が25質量%以上45質量%以下である無機微粒子分散体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機微粒子分散体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカ粉末等の無機微粒子と有機媒体とを含むスラリーは、例えば半導体素子の封止材、特に受光素子、発光素子等の光半導体素子の封止材を製造するのに用いられている(例えば、特許文献1参照)。一方、近年、設備投資や加工費削減を図るため、光硬化性シール材用組成物を、ディスペンサーを用いて被着体に塗布し、成形した後、主として紫外線により硬化させることにより、ガスケットを製造する方法が採られるようになってきた(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
例えば、上記封止材を作製するにあたっては、微細なシリカ粉末等を封止材中に均一に分散させることがよく、その一例として、シリカ粉末と有機媒体を含むシリカスラリーを調製し、それと樹脂を混合した後、有機媒体を除去する方法が提案されている。シリカ粉末としては、四塩化珪素を燃焼させて得られたヒュームドシリカ、珪酸ソーダを原料とするコロイダルシリカ、珪素のアルコキシドを原料とするゾル−ゲル法シリカ、更には珪石粉末やシリコン粉末を火炎処理して得られた火炎法球状シリカなどが知られている。
【0004】
ここで、前記シリカ等の無機微粒子は、嵩密度が非常に小さく、秤量時、混練時に舞い上がってしまい、人体、環境に影響を与えるだけでなく、工程のコンタミの原因にもなり得る。これに対し、ゴムや熱可塑性エラストマーの場合、樹脂(ポリプロピレンなど)でマスターバッチを作ることができるが、樹脂が紫外線硬化型樹脂のように組成のほぼ全量が液体の場合では、マスターバッチ化が困難である。
すなわち、液状のアクリルモノマーなどに微粒シリカを練りこんだ場合、添加量が5〜20質量%程度で非常に高粘度(バター状)になるため、高充填が難しい。一方、低充填のマスターバッチを用いると、配合単価が上がってしまう問題がある。さらに、アクリルモノマー単独では、揮発性が大きく、マスターバッチの貯蔵安定性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−256874号公報
【特許文献2】特開2003−7047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑みなされたもので、飛散しやすい微小粒径の無機微粒子の充填率が高く、べたつきのない粉状であるために取り扱い性に優れる無機微粒子分散体及びその製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、下記本発明により解決される。すなわち、本発明は、
(1)平均一次粒子径が500nm以下の無機微粒子及び液状樹脂を含む凝集体粒子から構成され、嵩比重が0.3g/cm3以上0.9g/cm3以下であり、前記無機微粒子の充填率が25質量%以上45質量%以下である無機微粒子分散体、
(2)前記無機微粒子の平均二次粒子径が、10nm以上2000nm以下である(1)に記載の無機微粒子分散体、
(3)前記凝集体粒子の平均粒子径が、0.2μm以上1000μm以下である(1)または(2)に記載の無機微粒子分散体、
(4)前記無機微粒子が、シリカ、アルミナ及びチタニアから選択される1種以上である(1)〜(3)のいずれかに記載の無機微粒子分散体、
(5)前記液状樹脂が、紫外線硬化型樹脂である(1)〜(4)のいずれかに記載の無機微粒子分散体、
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の無機微粒子分散体の製造方法であって、
無機微粒子及び液状樹脂を混練してこれらを含む凝集体とする混練工程を有し、
前記混練工程におけるせん断応力を10kPa以下とする無機微粒子分散体の製造方法、
(7)前記混練をヘンシェルミキサーにより行う(6)に記載の無機微粒子分散体の製造方法、
(8)前記液状樹脂の25℃における粘度を、1Pa・s以上150Pa・s以下とする(6)または(7)に記載の無機微粒子分散体の製造方法、及び
(9)前記混練工程において、前記液状樹脂に対して無機微粒子を分割して投入する(6)〜(8)のいずれかに記載の無機微粒子分散体の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飛散しやすい微小粒径の無機微粒子の充填率が高く、べたつきのない粉状であるために取り扱い性に優れる無機微粒子分散体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施形態により説明する。
<無機微粒子分散体>
本実施形態の無機微粒子分散体は、平均一次粒子径が500nm以下の無機微粒子及び液状樹脂を含む凝集体から構成され、嵩比重が0.3g/cm3以上0.9g/cm3以下であり、前記無機微粒子の充填率が25質量%以上45質量%以下であることを特徴とする。
【0010】
本実施形態の無機微粒子分散体(以下、単に「分散体」と称する場合がある)は、無機微粒子及び液状樹脂を含む凝集体粒子から構成されるものである。シリカ等の微小粒径の無機微粒子を液状樹脂に分散させる場合、まず、解砕されたシリカ等は嵩密度が非常に低いため飛散しやすく、作業時に舞い上がってしまい、工程上、環境上で問題となり得る場合があった。また、液状樹脂中にシリカ等を練りこんだ場合でも、配合量(充填率)が5〜20質量%程度でも混練物はバター状となってしまい、それ以上の高充填が困難となるという問題があった。
【0011】
上記問題に鑑み、本発明者らが検討した結果、無機微粒子と液状樹脂との混練を、液状樹脂に対して無機微粒子を徐々に加える等して、混練中のせん断応力を一定値以下で行うことにより、混練中に混練物がバター状となることがなく、高充填率で作業性にも優れた粉体状の分散体が得られることが見出された。
すなわち、液状樹脂に対して過度の量とならない程度の無機微粒子を加え、樹脂と無機微粒子との界面にシェア(せん断力)がなるべくかからない状態で混練(混合)を行うことにより、無機微粒子中に液状樹脂をしみ込ませるような状態の混練となり、結果的に高充填率で、べたつきのない凝集体粒子(粉体)となることが分かった。
【0012】
上記のようにして得られた凝集体粒子からなる分散体は、凝集粒子径が大きいため取り扱い性がよく、しかも微粒の無機微粒子が舞い上がることもない。また、当該凝集体粒子中には、無機微粒子の一次粒子が凝集した二次粒子が均一に分散されているため、これをそのままさらに液状樹脂や溶媒に展開することにより、無機微粒子の二次粒子が均一に分散された塗料や樹脂組成物を得ることができ、さらにそれらを硬化させることにより、無機微粒子が均一に分散された硬化膜や樹脂成形体等を得ることが可能となる。
【0013】
前記凝集体粒子の平均粒子径は0.2μm以上1000μm以下であることが好ましい。平均粒子径がこの範囲にあることにより、作業時の取り扱いが容易となり、無機微粒子の充填率が高いにもかかわらずこれらの飛散がない粉体状の粒子とすることができる。
凝集体粒子の平均粒子径は1μm以上200μm以下であることがより好ましい。なお上記平均粒子径は、光学顕微鏡による観察で確認された50個の粒子の最大径を平均した値である。
【0014】
このような無機微粒子及び液状樹脂を含む凝集体粒子からなる分散体の嵩比重は、0.3g/cm3以上0.9g/cm3以下である。嵩比重が0.3g/cm3に満たないと、無機微粒子の飛散を招くこととなり、嵩比重が0.9g/cm3を超えると、凝集体粒子のべたつきが大きかったり流動性が悪かったりして取り扱い性が大幅に低下し、またその後の混練の操作性が著しく低下する。
嵩比重は、0.4g/cm3以上0.9g/cm3以下であることが好ましく、0.5g/cm3以上0.9g/cm3以下であることがより好ましい。
なお、嵩比重は後述の実施例に記載の方法により求めた。
【0015】
また、本実施形態の分散体における無機微粒子の充填率は、25質量%以上45質量%以下である。充填率が25質量%に満たないと、凝集体粒子のべたつきが大きくなり取り扱い性が大きく低下する。一方、充填率が45質量%を超えると、取り扱い中に凝集体粒子から無機微粒子がはがれ落ち飛散しやすくなってしまう。
充填率は30質量%以上45質量%以下であることが好ましく、30質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
なお、本実施形態における充填率は、TG/DTA測定による灰分測定(昇温速度10℃/分、600℃まで昇温)によるものである。
【0016】
(無機微粒子)
本実施形態における無機微粒子は、最終的に塗料や樹脂組成物等に配合されることにより、これらに増粘性及び揺変性(チクソトロピー)を付与し、樹脂組成物等の成形性を向上させる等のために用いられるものである。
上記無機微粒子としては、シリカ(SiO2)、アルミナ、チタニアまたはこれらの複合酸化物、及び粘度鉱物などが好ましく挙げられ、中でもシリカ粉末、疎水処理したシリカ粉末またはこれらの混合物が好ましい。さらに、乾式法により製造されるフュームド酸化物がより好ましい。具体的には、シリカ微粉末(例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル300など)、このシリカ微粉末をトリメチルジシラザンで変性した微粉末(例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRX300など)及び上記シリカ微粉末をポリジメチルシロキサンで変性した微粉末(例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRY300など)などが好適に挙げられる。
【0017】
本実施形態における無機微粒子の平均一次粒子径は、内部空隙を含む数平均粒径の値で、500nm以下であり、好ましくは100nm以下である。このように平均一次粒子径が微小であり、取り扱い時に舞い上がってしまうような無機微粒子を用いて本実施形態の分散体とすることが、前述の効果が最も有効に発揮される。なお、平均一次粒子径の下限は、最終的な樹脂組成物等における特性を確保する関係から、1nm程度である。
なお、無機微粒子の平均一次粒子径は、走査型または透過型電子顕微鏡による観察で測定することができる。
【0018】
また、本実施形態における無機微粒子の平均二次粒子径は、前記一次粒子が凝集した二次粒子の数平均粒子径であり、10nm以上2000nm以下であることが好ましい。平均二次粒子径をこの範囲とすることにより、後述する分散体の製造での混練において凝集体粒子の粒子径を肥大化させることがなく、また分散体を用いて塗料や樹脂組成物とした場合に、良好な増粘性やチクソトロピー性が付与される。平均二次粒子径は10nm以上500nm以下であることがより好ましい。
なお、上記平均二次粒子径は、本実施形態の分散体中の分散粒子としても確認できるものであり、前記平均一次粒子径同様、走査型または透過型電子顕微鏡による観察で測定することができる。
【0019】
(液状樹脂)
本実施形態に用いる液状樹脂としては、ウレタンアクリレート、エステルアクリレート、エポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、液状ポリブタジエン、液状ブタジエンゴム、液状スチレンブタジエンゴム、液状ニトリルブタジエンゴム、液状クロロプレンゴム、液状ポリイソプレン、液状ポリサルファイド、液状ポリイソブチレン、液状ブチルゴム、液状フェノール樹脂、液状エポキシ樹脂、液状キシレン樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、前記無機微粒子との親和性のよい樹脂を選択して使用することが好ましく、特に本実施形態の無機微粒子分散体を有効に利用するという観点からは、紫外線硬化型樹脂を用いることがより好ましい。
なお、本実施形態における「液状樹脂」には、ポリマー、オリゴマー等の重合した化合物のみでなく、これらの前駆体となる化合物(モノマー等)も含まれる。
【0020】
また、これらの樹脂は1種で使用しても数種の溶剤を組み合わせて使用してもよい。さらに、紫外線硬化型樹脂は紫外線によって重合反応を起こして硬化してなるイソシアヌレートのようなモノマー、オリゴマー或いはプレポリマーであればその種類は特に限定されず、公知のものが使用できる。電子線硬化型樹脂も特に種類は限定されないが、特に好ましい電子線硬化型樹脂としては、ポリエステルを骨格とする5官能以上の分枝状分子構造を有する電子線型硬化樹脂を主成分としたものである。
【0021】
本実施形態における液状樹脂としては、特に以下に示すような、(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型化合物や、水添もしくは非水添共役ジエン系重合体ポリオール又は水添もしくは非水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールと不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得られる液状樹脂が、分散体のその後の樹脂組成物等への適用の観点から好適に用いられる。
【0022】
・エネルギー線硬化型化合物
上記エネルギー線硬化型化合物としては、得られるエラストマーの性能及び加工性などの観点から、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有するものを、好適に用いることができる。1分子中の(メタ)アクリロイル基の個数は、通常2〜6個程度、好ましくは2〜4個、特に好ましくは4個である。なお、上記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を指す。
このようなエネルギー線硬化型化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型オリゴマーであることが好ましい。
【0023】
(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型オリゴマーとしては、特に制限はなく、例えばウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマー及びその水素添加物などを挙げることができる。
ここで、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールと、ポリイソシアナートとの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる、両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0024】
ポリエーテル系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。
また、共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、液状スチレン−ブタジエン共重合体をアクリル変性して得られるSBRジアクリレート、ポリイソプレンをアクリル変性して得られるポリイソプレンジアクリレートなどが挙げられ、水素添加共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば両末端に水酸基を有する、水素添加ポリブタジエン又は水素添加ポリイソプレンの前記水酸基を、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを指し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を指す。
【0025】
本実施形態においては、前記(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、例えばガスケットなどのシール部材用途に用いる場合には、前記オリゴマーの中で、得られるエラストマーの性能及び加工性などの観点から、2官能ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーが好適である。なお、2官能ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーとは、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーの1分子中に、(メタ)アクリロイル基が2個含まれていることを意味する。
【0026】
・水添もしくは非水添共役ジエン系重合体ポリオール又は水添もしくは非水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールと不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得られる液状樹脂
一方、前記水添もしくは非水添共役ジエン系重合体ポリオール又は水添もしくは非水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールと不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得られる液状樹脂は、以下のようにして得ることができる。
まず、上記水添もしくは非水添共役ジエン系重合体ポリオール又は水添もしくは非水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールは、下記工程(A)〜(B)又は(A)〜(C)により製造することが好ましい。
(A)飽和炭化水素系溶媒中で、ジリチウム開始剤により、共役ジエン系単量体を重合、又は共役ジエン系単量体と芳香族ビニル系単量体とを共重合して、重量平均分子量5,000〜40,000及び分子量分布3.0以下を有する共役ジエン系重合体又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体を製造する工程。
(B)前記共役ジエン系重合体又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体とアルキレンオキシドとを反応させて、共役ジエン系重合体ポリオール又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールを製造する工程。
(C)前記共役ジエン系重合体ポリオール又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールに水素添加反応し、水添共役ジエン系重合体ポリオール又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールを製造する工程。
【0027】
前記工程(A)の反応はリビングアニオン重合であるために、分子量及び分子量分布を制御して重合できる。分子量は、ジリチウム開始剤と上記単量体の量により所定の分子量の重合体を重合することが可能であり、特に重量平均分子量が5,000以上では、分子量分布が2以下の狭い重合体を得易い。また、所望により、ランダマイザーの存在下にアニオン重合をさせてもよい。
次に、工程(B)として、上記工程(A)で得られた(共)重合体の、リビングアニオンである重合体末端とアルキレンオキシドとを当量反応させることにより、両末端に水酸基を有する共役ジエン系重合体ポリオール又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール(以下、「(共)重合体ポリオール」と総称することがある。)を得ることができる。
さらに、工程(C)として、主鎖に二重結合を有する工程(B)で得られた(共)重合体ポリオールに水素添加反応(以下、「水添反応」という)を行うことにより、水添共役ジエン系重合体ポリオール又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール(以下、「水添(共)重合体ポリオール」と総称することがある。)を得ることができる。
【0028】
前記工程(A)で使用し得る共役ジエン系単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、硬化後に有することが好ましいゴム弾性確保の観点から、1,3−ブタジエンが好ましい。
また、芳香族ビニル系単量体としては、硬化後のゴム物性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン又はパラメチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記工程(A)で用いるジリチウム開始剤としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。例えば、特公平1−53681号公報には、モノリチウム化合物を第三級アミンの存在下に、2置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素(例えば1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン等)と反応させてジリチウム開始剤を製造する方法が記載されている。
ジリチウム開始剤を製造するときに用いるモノリチウム化合物としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルフェニルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム等が挙げられる。これらの中でも、sec−ブチルリチウムが好ましい。
【0030】
ジリチウム開始剤を製造する時に用いる第三級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン等の低級脂肪族アミンやN,N−ジフェニルメチルアミン等が挙げられる。これらの中でも、トリエチルアミンが好ましい。
また、上記2置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素としては、例えば、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,4−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,3−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン、1,4−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン等が好ましく挙げられる。
【0031】
前記ジリチウム開始剤の調製、及び(共)重合体の製造において用いる溶媒としては、反応に不活性な有機溶剤であればよく、脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶媒が用いられる。なお、該溶媒については、例えば特開2007−145949号公報を参照できる。
【0032】
また、工程(B)で用いるアルキレンオキシドとしては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド等が挙げられる。このポリオール化反応(工程(B))は、重合反応(工程(A))の直後に行うのが好ましい。
【0033】
工程(B)により得られた(共)重合体ポリオールの重量平均分子量が5,000以上であれば、架橋点間分子量を大きくすることができ、光硬化反応後、弾性率を低く且つ伸び(Eb)を大きくすることができるため、好ましい。一方、(共)重合体ポリオールの重量平均分子量が40,000以下のものを製造するのであれば、工程(A)にてジリチウム触媒で重合を行う際に、重合粘度が高くなり過ぎることがなく、重合プロセスとして固形分濃度を下げる必要がないので、低コストとなり好ましい。工程(B)により得られた(共)重合体ポリオールの重量平均分子量は、5,000〜30,000がより好ましい。
また、分子量分布が3.0以下であれば、低分子量成分や高分子量成分による様々な影響を抑制することができる。特に、粘度は分子量の影響を大きく受けるため、分子量のブレは粘度バラツキとなる。前記方法であれば、狭い分子量分布の(共)重合体を合成できるため、再現性良く同じ分子量の(共)重合体を得ることができ、粘度を安定化させる効果が期待できる。
本実施形態における液状樹脂は、ディスペンサー塗布に用いられる場合が多く、この場合、材料粘度のバラツキは塗布後の寸法のバラツキを生じるので、粘度の安定化は重要であり、分子量分布が3.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。
【0034】
工程(C)の水添反応は、有機溶媒中、水素加圧下及び水添触媒の存在下、工程(B)で得られた(共)重合体ポリオールに水素添加することによって行われる。
上記水添触媒としては、パラジウム−カーボン、還元ニッケル、ロジウム系等不均一系触媒:又はナフテン酸ニッケル、オクタン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物あるいはナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト等の有機コバルト化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物もしくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムのような有機リチウム化合物を組合せた均一触媒が使用できる。なお、共触媒として、例えばテトラハイドロフラン、エチレグリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物を用いてもよい。
また、他の水添反応方法としては、例えば上記水添前の(共)重合体ポリオールを、ジシクロペンタジエニルチタンハライド、有機カルボン酸ニッケル、有機カルボン酸ニッケルと周期律表第I〜III族の有機金属化合物からなる水素化触媒、カーボン、シリカ、ケイソウ土等で担持されたニッケル、白金、バラジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム金属触媒やコバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム錯体等を触媒として、1〜100気圧に加圧された水素下、あるいはリチウムアルミニウムハイドライド、p−トルエンスルホニルヒドラジドの存在下、もしくはZr−Ti−Fe−V−Cr合金、Zr−Ti−Nb−Fe−V−Cr合金、LaNi5合金等の水素貯蔵合金の存在下、あるいは1〜100気圧に加圧された水素下で、水素化する方法、また、ジ−p−トリル−ビス(1−シクロペンタジエニル)チタニウムのシクロヘキサン溶液とn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液を水素下で混合して得られる水素化触媒を用いて、1〜100気圧に加圧された水素下で、水素添加する方法等を挙げることができる。
【0035】
上述の各種水添触媒の中で、遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物の組み合わせからなるチーグラー系水添触媒又はパラジウム−カーボン系水添触媒が好ましい。
かかる遷移金属化合物としては、トリス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル 、トリス(アセチルアセトナート)鉄、トリス(アセチルアセトナート)クロム、トリス(アセチルアセトナート)マンガン、ビス(アセチルアセトナート)マンガン、トリス(アセチルアセトナート)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタン、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、ビス(トリフェニルホスフィン)コバルトジクロライド、ビス(2−ヘキサノエート)ニッケル 、ビス(2−ヘキサノエート)コバルト、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド等が挙げられる。これらの中でも、水添活性の観点から、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、トリス(アセチルアセトナート)コバルトが好ましい。
また、チーグラー系水添触媒に用いるアルキルアルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキクロリド。これらの中でも、水添活性の観点から、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが好ましく、トリイソブチルアルミニウムがより好ましい。
【0036】
チーグラー系水添触媒の使用形態に特に制限はないが、予め遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物とを反応させた触媒溶液を調製し、それを重合溶液に添加する方法を好ましく挙げることができる。かかる際に用いるアルキルアルミニウム化合物の量は、遷移金属化合物1モルに対して0.2〜5モルが好ましい。上記の触媒調製の反応は、−40〜100℃、好ましくは0〜80℃の温度範囲で行われ、反応時間は1分〜3時間の範囲である。
【0037】
また、工程(C)の水添反応の温度は、通常、好ましくは50〜180℃、より好ましくは70〜150℃である。また、該水添反応は、好ましくは5〜100気圧(5,066.25〜101,325hPa)、より好ましくは10〜50気圧(10132.5〜50,662.5hPa)の水素圧にて行われる。反応温度及び水素圧がこの範囲であれば、触媒活性を高く維持でき、触媒の失活や副反応等が起こり難いため、好ましい。
【0038】
以上のようにして得られる水添(共)重合体ポリオールに、不飽和炭化水素基含有化合物を反応させて、該水添(共)重合体ポリオールの末端に不飽和炭化水素基を導入する。
該不飽和炭化水素基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。不飽和炭化水素基含有化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネートが好ましく、これらとの反応により、上記の水添(共)重合体ポリオールは(メタ)アクリレート化される。
(メタ)アクリロイルイソシアネートとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられる。
【0039】
本実施形態における液状樹脂の25℃における粘度は、後述する分散体の製造における混練工程でのせん断応力を所定の範囲とするため、1Pa・s以上150Pa・s以下とすることが好ましく、2Pa・s以上100Pa・s以下とすることがより好ましい。
なお、上記液状樹脂の粘度は、RB80型粘度計(型式「RB80L」、東機産業(株)製)を用い、測定温度は25℃にて測定したものである。
【0040】
・光ラジカル重合開始剤
本実施形態の無機微粒子分散体には、必要に応じて光ラジカル重合開始剤が含まれてもよい。該光ラジカル重合開始剤としては、分子内開裂型及び/又は水素引き抜き型を用いることができる。
分子内開裂型としては、ベンゾイン誘導体類、ベンジルケタール類[例えば、BASF社)製、商品名:イルガキュア651]、α−ヒドロキシアセトフェノン類[例えば、BASF社製、商品名:ダロキュア1173、イルガキュア184、イルガキュア127、イルガキュア2959]、α−アミノアセトフェノン類[例えば、BASF社製、商品名:イルガキュア907、イルガキュア369]、α−アミノアセトフェノン類とチオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン)との併用、アシルホスフィンオキサイド類[例えば、BASF社製、商品名:イルガキュア819]などが挙げられる。
【0041】
水素引き抜き型としては、ベンゾフェノン類とアミンの併用、チオキサントンとアミンの併用などが挙げられる。また、分子内開裂型と水素引き抜き型を併用してもよい。中でもオリゴマー化したα−ヒドロキシアセトフェノン及びアクリレート化したベンゾフェノン類が好ましい。より具体的には、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン][例えば、Lamberti S.p.A製、商品名:ESACURE KIP150など]、アクリル化ベンゾフェノン[例えは、ダイセル・ユー・シー・ビー(株)製、商品名:Ebecryl P136など]、イミドアクリレートなどが挙げられる。
【0042】
(C)成分の光ラジカル重合開始剤としては、これらの他に、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンとの混合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[(4−メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテル、ベンゾイルブチルエーテル、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマーと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンとの混合物、イソプロピルチオキサントン、o−ベンゾイル安息香酸メチル及び[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタンなども用いることができる。
【0043】
(その他の任意成分)
本実施形態の無機微粒子分散体においては、本実施形態の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ、任意成分として、例えば単官能(メタ)アクリレートモノマー、有機増粘剤、カップリング剤、酸化防止剤、光安定剤、接着性向上剤、補強剤、内部離型剤、軟化剤、着色剤、レベリング剤、難燃剤、帯電防止剤などを用いることができる。
【0044】
<無機微粒子分散体の製造方法>
上記本実施形態の無機微粒子分散体は、以下の本実施形態の無機微粒子分散体の製造方法により得られる。すなわち、本実施形態の無機微粒子の製造方法は、無機微粒子及び液状樹脂を混練してこれらを含む凝集体とする混練工程を有し、前記混練工程におけるせん断応力を10kPa以下とするものである。
【0045】
本実施形態の分散体は、前記無機微粒子及び液状樹脂体と、その他必要な成分とを混合し、混練することにより製造することができる。
上記混練に関しては、前述のように無機微粒子と液状樹脂等との界面になるべくシェアがかからない状態で行う必要があり、その観点から、前記混練工程におけるせん断応力を10kPa以下とする必要がある。せん断応力が10kPaを超えると、過度の分散となり目的とする高充填率でべたつきのない凝集体粒子が得られない。
【0046】
混練工程におけるせん断応力は5kPa以下とすることが好ましく、3kPa以下とすることがより好ましい。
なお、上記せん断応力は、混練物の粘度、混練装置における攪拌羽の形状、取り付け方、攪拌羽間および攪拌羽と外壁のクリアランスから概算して求められる値である。
【0047】
本実施形態における混練工程は、慣用の方法により行うことができるが、上記のような通常より低いせん断応力により混練を行うためには、混練装置として、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ナウターミキサー、バドルミキサー、シュギーミキサー及び高速流動型ミキサーなどの高速ミキサーを用いることが好ましく、具体的には、特に100rpm以上の高速回転が可能であり、かつピッチクリアランスが10mm以下となる部位がない混練装置を用いることが好ましい。このような観点から、前記種々の高速ミキサーの中では、ヘンシェルミキサーを用いることがより好ましい。
また、混練温度としては、例えば光重合性樹脂の重合を抑制可能な温度である60〜150℃程度とすることが望ましい。
【0048】
混練に用いられる液状樹脂の好適な粘度範囲は前述の通りであるが、この液状樹脂に加えられる無機微粒子の量としては、混練中のせん断応力を前記所望の範囲とするため、混練工程において、無機微粒子を液状樹脂に対して分割して投入することも好ましい。
【0049】
本実施形態における混練工程の好適な一例としては、例えば容量300Lのヘンシェルミキサーに、25℃における粘度が20〜100Pa・s程度の液状樹脂45kgを投入し、ヘンシェルミキサーの回転数を230〜460rpmとして、当該液状樹脂に平均一次粒子径が12nmのシリカを15kgずつ分割して2回投入して、10分間程度混練することにより、本実施形態の粉状のシリカ分散体を得ることができる。
【0050】
このようにして得られた粉体状の無機微粒子分散体は、そのまま溶剤や、液状樹脂等に展開され、コーティング剤や樹脂組成物料などとして用いることができる。
上記コーティング剤や樹脂組成物は、例えば、受光素子、発光素子等の光半導体素子の封止材や、HDD用などのガスケット、インクタンク用シール材、各種表示装置のシール材、土木、建築などの構造物用シール材、Oリングなどのパッキング、防振部材などの用途が期待できる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
<各測定・評価方法>
以下に、実施例または比較例において採用した、無機微粒子及び液樹脂などの特性等の各測定または評価方法を示す。
【0052】
(無機微粒子の平均一次粒子径、平均二次粒子径)
まず、無機微粒子粉末を、透過型電子顕微鏡(TEM:JEM−2010、日本電子社製)により倍率50k倍にて観察し、観察視野から任意の粒子50個乃至100個を選び、それぞれの粒子の最長径を求め、それらの平均を平均一次粒子径とした。
また、倍率を10k倍として観察し、無機微粒子の2次凝集粒子について、同様に50個乃至100個の粒子の最長径を求め、それらの平均を平均二次粒子径とした。
(液状樹脂の粘度)
液状樹脂の粘度の測定は、装置としてRB80型粘度計(型式「RB80L」、東機産業(株)製)を用い、測定温度25℃でJIS Z8803に準拠して行った。
【0053】
(混練時のせん断応力)
混練時のせん断応力は、混練物の粘度、混練装置における攪拌羽の形状、取り付け方、攪拌羽間および攪拌羽と外壁のクリアランスから概算して求めた。
(凝集体粒子の平均粒子径、形状等)
混練により得られた凝集体粒子の平均粒子径は、凝集体粒子を光学顕微鏡にて倍率1k倍にて観察し、確認された50個の粒子の最大径を平均することにより求めた。
また、凝集体粒子の形状については、確認された粒子を目視にて観察し、大部分の粒子の形状について粉状かブロック状かのいずれかを特定した。さらに、観察した粒子については、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムへの転写具合の観察によりべたつき感を判断した。
(無機微粒子分散体の嵩比重)
分散体(凝集体粒子)の嵩比重は、カサ比重測定器(東京蔵持科学器械製作所社製)を用い、JIS K−3362にしたがって粒子の嵩比重を求めた。
【0054】
<液状樹脂の作製>
実施例で用いた液状樹脂B(末端変性水添SBR)は、以下のように作製した。
(末端変性SBRの製造)
まず、充分に脱水精製したシクロヘキサン中に、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン1molを添加した後、トリエチルアミン2mol、sec−ブチルリチウム2molを順次添加し、50℃で2時間攪拌して、ジリチウム重合開始剤を調製した。
アルゴン置換した7Lの重合反応器に、脱水精製したシクロヘキサン1.9kg、22.9質量%の1,3−ブタジエンモノマーのヘキサン溶液を2.0kg、20.0質量%のスチレンモノマーのシクロヘキサン溶液を0.765kg、1.6mol/Lの2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンのヘキサン溶液を130.4ml添加した後、0.5mol/Lのジリチウム重合開始剤を108.0ml添加して重合を開始させた。
重合反応器を50℃に昇温しながら、1.5時間重合を行った後、1mol/Lのエチレンオキシドのシクロヘキサン溶液を108.0ml添加し、さらに2時間撹拌した後、50mlのイソプロピルアルコールを添加した。重合体のヘキサン溶液をイソプロピルアルコール中に沈殿させ、十分に乾燥させて重合体ポリオールを得た。この重合体ポリオールは、両末端に水酸基を含有する、非水添のスチレン−ブタジエン共重合体であり、スチレン含有量は25質量%であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GP)法を用いたポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は14,500、分子量分布は1.20であった。
【0055】
(水添処理)
得られた重合体ポリオール120gを、十分に脱水精製したヘキサン1Lに溶解した後、予め別容器で調製したナフテン酸ニッケル、トリエチルアルミニウム、ブタジエンが1:3:3(モル比)の触媒液を共重合体溶液中のブタジエン部1,000molに対してニッケル1molになるように仕込んだ。密閉反応容器に水素を27,580hPa(400psi)に加圧添加して、110℃にて4時間水添反応を行った。その後、3規定濃度の塩酸で触媒残渣を抽出分離し、さらに遠心分離をして触媒残渣を沈降分離した。その後、得られた水添重合体ポリオールをイソプロピルアルコール中に沈殿させ、更に十分に乾燥を行った。
(不飽和炭化水素基含有化合物との反応)
十分に乾燥した上記の水添重合体ポリオール100gをシクロヘキサンに溶解させ、40℃に保ち十分に撹拌しながら2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製:カレンズAOI)3.76gをゆっくり滴下した後、さらに4時間撹拌を行い、イソプロピルアルコールに沈殿させ乾燥させ、液状樹脂である末端変性水添スチレン−ブタジエン共重合体(末端変性水添SBR)を得た。
【0056】
<実施例1〜6、比較例1〜5>
第1表に示す各成分を各配合量にて、40℃で容量300Lのヘンシェルミキサーにて、回転数460rpmで混練し、シリカ分散体を得た。
得られた各シリカ分散体について、前述の方法により凝集体粒子の平均粒子径、形状、嵩比重等を求めた。結果を第1表にまとめて示す。なお、比較例1以外については、混練時に液状樹脂に対して無機充填剤を2回に等量分割して投入することにより混練を行った。

【0057】
【表1】

【0058】
〔注〕
*1:エネルギー線硬化型オリゴマー(2官能ウレタン系アクリレートオリゴマー、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及びイルガキュア2959(光重合開始剤)の混合物)(共栄社化学社製、「ライトタックPUA−KH32M」、粘度:約50Pa・s(25℃))
*2:アクリル変性水添SBR(前記製造例で作製したもの)(粘度:約80Pa・s(25℃))
*3:フュームドシリカ(旭化成ワッカーシリコーン社製、「HDK N20」、比重約2.2、平均一次粒子径:約12nm、嵩比重:約0.05)
*4:アルミナ(日本アエロジル社製、「AEROXIDE Alu C」、比重:3.3、平均一次粒子径:約30nm、嵩比重:約0.05)
*5:チタニア(日本アエロジル社製、「AEROXIDE TiO2 P25」、比重:3.8、平均一次粒子径:約30nm、嵩比重:約0.05)
*6:1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF社製、「IRGACURE 2959」)
*7:2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(BASF社製、「IRGACURE 379」)
*8:
・ミキサーA:300Lヘンシェルミキサー
・ミキサーB:2Lバンバリーミキサー
・ミキサーC:2Lプラネタリーミキサー
・ミキサーD:6インチ オープンロール
【0059】
第1表に示すように、実施例で得られた無機微粒子分散体は、いずれもべたつきのない粉状で、凝集体粒子径も比較的小さく取り扱いやすいものであった。一方、比較例で得られたものは、粉状であってもべたつきがあったり、粒子径がかなり大きなものであったりしたため、取り扱い上問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の無機微粒子分散体は、飛散しやすい微小粒径の無機微粒子の充填率が高く、べたつきのない粉状であるため、微小粒子径の無機微粒子を分散粒子として用いる用途に対して、取り扱い性等の面で有効なものであり、がナノサイズでありながら内部に空気や種々の化合物や材料を内包できるものであり、これを用いて製造されるコーティング剤や樹脂組成物は、例えば、受光素子、発光素子等の光半導体素子の封止材や、HDD用などのガスケット、インクタンク用シール材、各種表示装置のシール材、土木、建築などの構造物用シール材、Oリングなどのパッキング、防振部材などの用途が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径が500nm以下の無機微粒子及び液状樹脂を含む凝集体粒子から構成され、嵩比重が0.3g/cm3以上0.9g/cm3以下であり、前記無機微粒子の充填率が25質量%以上45質量%以下である無機微粒子分散体。
【請求項2】
前記無機微粒子の平均二次粒子径が、10nm以上2000nm以下である請求項1に記載の無機微粒子分散体。
【請求項3】
前記凝集体粒子の平均粒子径が、0.2μm以上1000μm以下である請求項1または2に記載の無機微粒子分散体。
【請求項4】
前記無機微粒子が、シリカ、アルミナ及びチタニアから選択される1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の無機微粒子分散体。
【請求項5】
前記液状樹脂が、紫外線硬化型樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の無機微粒子分散体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の無機微粒子分散体の製造方法であって、
無機微粒子及び液状樹脂を混練してこれらを含む凝集体とする混練工程を有し、
前記混練工程におけるせん断応力を10kPa以下とする無機微粒子分散体の製造方法。
【請求項7】
前記混練をヘンシェルミキサーにより行う請求項6に記載の無機微粒子分散体の製造方法。
【請求項8】
前記液状樹脂の25℃における粘度を、1Pa・s以上150Pa・s以下とする請求項6または7に記載の無機微粒子分散体の製造方法。
【請求項9】
前記混練工程において、前記液状樹脂に対して無機微粒子を分割して投入する請求項6〜8のいずれかに記載の無機微粒子分散体の製造方法。

【公開番号】特開2012−219149(P2012−219149A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84746(P2011−84746)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】