説明

無機微粒子含有重合性組成物及びその製造方法、並びに、無機微粒子含有重合体組成物

【課題】粒径が制御され、かつ粒度分布の小さいナノ粒子を含み、透明性や耐久性、加工性に優れ、各種の用途に有用なナノコンポジット材料を得ることができる重合性組成物及びその製造方法、並びに、該重合性組成物を用いて得られる重合体組成物を提供する。
【解決手段】無機微粒子及び重合性モノマーを必須成分とする重合性組成物であって、該重合性組成物は、無機微粒子の前駆体を重合性モノマー中に溶解及び/又は分散し、マイクロ波を照射することによって得られるものである無機微粒子含有重合性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、金属化合物等の無機化合物のナノメートルサイズの超微粒子を含有する重合性組成物及びその製造方法、並びに、超微粒子を含有する重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属、金属化合物等の無機化合物から構成されるナノメートルサイズの大きさの超微粒子(以下、「ナノ粒子」という。)は、ナノ粒子であることに起因して特異的な性質を発揮することから、光触媒、反応促進触媒等の触媒、記憶材料、発光材料等のデバイス材料、光学材料、センサー等の分析用材料、色材等の各種の分野において注目されている。これらの分野においては、材料としての成形性、加工性、取り扱い性を良くするために、有機材料との複合材料、すなわちナノコンポジット材料として使用されることが一般的である。
【0003】
このようなナノコンポジット材料を製造する方法としては、従来より種々の方法が開発されており、例えば、無機化合物のナノ粒子を有機材料に分散させてナノコンポジット材料を得る方法として、界面活性剤を添加した有機材料中にナノ粒子を配合してボールミル等により分散させる方法が一般に行われている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、一般にナノ粒子は互いに粒子同士が接触すると凝集して大きな粒子になりやすく、極めて不安定であるため、ナノ粒子を合成した系より一度取り出して精製した後、有機材料に分散させることは非常に困難である。また、ナノ粒子をモノマーやオリゴマー中に分散させてナノコンポジット材料を得る方法として、硬化型モノマーや硬化型オリゴマー中にナノ粒子を分散させて、光照射によりナノ粒子分散塗膜を得る技術が検討されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、この場合もナノ粒子を合成して分散した溶液を硬化型モノマー等の中に混合分散することが行われており、この混合分散時に凝集等が発生することがあるため、その点で工夫の余地があった。
【0004】
そこで、ナノ粒子を反応系中で生成させてナノコンポジット材料を得る方法として、金属アルコキシド等の前駆体を有機材料中に分散させた後、加熱して加水分解することにより、ナノ粒子が分散したナノコンポジット材料を得る方法が知られている。しかしながら、通常の加熱による加水分解での粒子合成では、ナノメートルサイズで粒径を制御し、かつ、粒度分布の小さいナノ粒子を調製することは困難であった。
ところで、金属塩を溶媒中に溶解又は分散してなる溶液にマイクロ波を照射することにより、超微粒子を溶媒中で生成させる手法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この手法は、粒径や粒径分布を制御したナノ粒子を簡易かつ再現性よく得ることができ、非常に有用な技術である。しかしながら、有機材料へのナノ粒子の混合分散時の凝集等の問題を解決するため、また、より簡便にナノコンポジット材料を製造できるようにすることによって、工業的に更に有利なものとするための工夫の余地があった。
【特許文献1】特開平8−110401号公報(第5〜7頁)
【特許文献2】特開2003−285007号公報(第2、8〜9頁)
【特許文献3】特許第3005683号明細書(第1〜2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明では、粒径が制御され、かつ粒度分布の小さいナノ粒子を含み、透明性や耐久性、加工性に優れ、各種の用途に有用なナノコンポジット材料を得ることができる重合性組成物及びその製造方法、並びに、該重合性組成物を用いて得られる重合体組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明者らは、無機微粒子を含有する重合性組成物について鋭意検討を重ねた結果、無機微粒子を反応系中で生成させる手法が有用であることに着目し、無機微粒子の前駆体を重合性モノマー中に溶解及び/又は分散し、マイクロ波を照射することによって得られるものとすることにより、小さい粒径で、狭い粒度分布の無機微粒子と、重合性モノマーとの混合物である重合性組成物が得られることを見いだした。そして、このような組成物より得られるナノコンポジット材料は透明性や耐久性に優れ、しかも、無機微粒子が重合性モノマーに既に分散されているので、工程が簡便であり、凝集等のおそれも少なくなることを見いだし、上記課題をみごとに解決できることに想倒し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明にかかる重合性組成物は、無機微粒子及び重合性モノマーを必須成分とする重合性組成物であって、該重合性組成物は、無機微粒子の前駆体を重合性モノマー中に溶解及び/又は分散し、マイクロ波を照射することによって得られるものである無機微粒子含有重合性組成物である。このように無機微粒子前駆体を重合性モノマー中に溶解及び/又は分散し、マイクロ波を照射することにより、より小さい粒径で、粒度分布の狭い無機化合物のナノ粒子が得られ、しかも、重合性モノマー系中で合成しているので、粒子を一度取り出したり、再分散させたりすることがなく、凝集により小さい粒径や狭い粒度分布を損なうことがない。また、マイクロ波照射では、通常の加熱処理のようなゲル化のおそれがないため、重合性モノマーはそのままの液状状態を保持している。
なお、無機微粒子の前駆体を重合性モノマー中に溶解及び/又は分散した後に、本発明のようにマイクロ波を用いずに、通常の加熱により加水分解して無機微粒子を合成することとした場合には、硬化型モノマーや硬化型オリゴマーが無機微粒子合成時にゲル化してしまうおそれがあるが、マイクロ波を照射することにより、このような点が著しく改善され、本発明の作用効果を充分に発揮することが可能となる。
【0008】
また上記無機微粒子の平均粒子径が0.1nm〜50nmの範囲内であることが、上記組成物より得られたナノコンポジット材料の透明性等の性能が高くなることからより広範囲な用途に使用できるため好ましい実施態様であり、上記無機微粒子の前駆体が、有機金属塩、金属アルコキサイド及び金属アセテートからなる群より選択される少なくとも1種のものであることが、前駆体の重合性モノマーへの分散性が高くなり、得られる無機微粒子の粒径や粒度分布の制御が容易になるため好ましい実施態様である。
【0009】
更に本発明には、無機微粒子及び重合性モノマーを必須成分とする重合性組成物であって、該無機微粒子は、平均粒子径が0.1nm〜50nmの範囲内であり、かつ、粒径分布の標準偏差が1.0nm以下の範囲内であり、該無機微粒子の含有量は、組成物全体の0.5質量%以上である無機微粒子含有重合性組成物;上記無機微粒子含有重合性組成物中の重合性モノマーを重合することにより得られる重合体を含有する無機微粒子含有重合体組成物;無機微粒子及び重合性モノマーを必須成分とする重合性組成物を製造する方法であって、該製造方法は、無機微粒子の前駆体を重合性モノマー中に溶解及び/又は分散し、マイクロ波を照射することにより、無機微粒子を重合性モノマー中で製造する工程を含む無機微粒子含有重合性組成物の製造方法も含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の重合性組成物は、上述の構成よりなり、より小さい粒径で、粒度分布の狭い無機化合物のナノ粒子と、重合性モノマーとを含有することから、該組成物より得られるナノコンポジット材料は、透明性が高く、耐久性、加工性に優れ、光学材料、電子材料、センサー材料、医薬、農薬、触媒材料、塗料・コーティング材料、化粧品材料等へ好適に適用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の重合性組成物は、無機微粒子と重合性モノマーとを必須成分とする混合物である。
上記重合性組成物において、無機微粒子の配合量としては、組成物中の0.1質量%〜80質量%の範囲内であることが好ましい。無機微粒子の配合量が0.1質量%未満では、上記重合性組成物より得られるナノコンポジット材料における無機微粒子による特性が低下するおそれがあり、一方、配合量が80質量%を超えると、上記重合性組成物の粘度が高くなり、作業性が低下するおそれがある。無機微粒子の配合量のより好ましい上限値は60質量%であり、40質量%が更に好ましい。また、上記配合量のより好ましい下限値は0.5質量%である。このように上記無機微粒子が組成物全体(100質量%中)の0.5質量%以上である形態は、本発明の好適な形態の1つであり、これにより、無機微粒子の特異的な性質を充分に発揮できることとなる。更に好ましい下限値は1質量%である。なお、本発明の重合性組成物においては、0.5質量%以上の高濃度であっても、無機微粒子が充分に分散されているため、無機微粒子の特性を充分に発揮できるナノコンポジット材料を得ることが可能となる。
【0012】
上記無機微粒子としては、金属又は金属化合物の微粒子であることが好適であり、これらは単一の金属又は金属化合物であってもよいし、2種以上のものであってもよい。
上記金属としては、例えば、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、カドミウム、スズ、鉛、ビスマス、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、インジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、テルル等が挙げられる。
上記金属化合物としては、金属酸化物、金属水和物、金属水酸化物等が挙げられる。金属酸化物としては、具体的には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化銅、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等が挙げられ、金属水酸化物としては、具体的には、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化クロム、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化銅、水酸化イットリウム、水酸化インジウム等が挙げられる。
【0013】
上記無機微粒子としては、平均粒子径が0.1nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。無機微粒子の平均粒子径が上記範囲であれば、組成物より得られたナノコンポジット材料の透明性等の性能が高くなるからである。無機微粒子の平均粒子径は、0.5nm〜30nmの範囲内がより好ましく、1.0nm〜10nmの範囲内が最も好ましい。
上記無機微粒子としてはまた、粒径分布の標準偏差が1.0nm以下の範囲内であることが好ましい。無機微粒子の粒径分布の標準偏差が上記範囲であれば、組成物より得られたナノコンポジット材料の透明性等の性能が高くなるからである。無機微粒子の粒径分布の標準偏差は0.9nm以下の範囲内がより好ましく、0.8nmの範囲内が最も好ましい。
なお、平均粒子径及び粒径分布の標準偏差としては、下記方法にて測定することができる。
(粒径分布測定方法)
まず、測定試料をn−ヘキサンにて希釈し、TEM(透過電子顕微鏡)グリッドに滴下して乾燥させる。得られたサンプルについてTEM観察を行い、TEM写真中の約400個の粒子の粒径を測定して、体積平均粒子径及び粒子分布の標準偏差を計測する。
【0014】
上記重合性組成物において、重合性モノマーの配合量としては、組成物中の20質量%〜99.9質量%の範囲内であることが好ましい。重合性モノマーの配合量が20質量%未満では、組成物の粘度が高くなり、作業性が低下するおそれがある。一方、上記配合量が99.9質量%を超えると、該組成物より得られるナノコンポジット材料の無機微粒子による特性が低下するおそれがある。重合性モノマーの配合量のより好ましい上限値は99.5質量%であり、99質量%が更に好ましい。また、上記配合量のより好ましい下限値は30質量%であり、40質量%が更に好ましい。
【0015】
上記重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0016】
上記重合性組成物にはまた、その他の化合物や副資材を配合することができる。その他の化合物や副資材の配合量は、本発明の作用効果を損なわない範囲であればよく、例えば、組成物中の0.01質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
【0017】
本発明の重合性組成物としてはまた、無機微粒子の前駆体を重合性モノマー中に溶解及び/又は分散し、マイクロ波を照射することによって得られるものであるが、このような工程を行うことにより、重合性モノマー中で無機微粒子が製造されることとなる。この場合には、粒子を一度取り出したり、再分散させたりすることがなく、凝集により小さい粒径や狭い粒度分布を損なうことがないため、高効率かつ簡便に無機微粒子を含有する重合性組成物を得ることが可能となる。このように、無機微粒子及び重合性モノマーを必須成分とする重合性組成物を製造する方法であって、該製造方法は、無機微粒子の前駆体を重合性モノマー中に溶解及び/又は分散し、マイクロ波を照射することにより、無機微粒子を重合性モノマー中で製造する工程を含む無機微粒子含有重合性組成物の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0018】
上記製造方法においてはまず、無機微粒子の前駆体を重合性モノマー中に溶解及び/又は分散することとなるが、無機微粒子の前駆体としては、無機微粒子の原料となるものであれば特に限定されず、例えば、有機金属塩、金属アルコキサイド及び金属アセテートからなる群より選択される少なくとも1種のものであることが、重合性モノマーへの溶解性及び/又は分散性に優れるため好適である。
上記有機金属塩としては、脂肪族カルボン酸銀塩、脂肪族カルボン酸アルミニウム塩、脂肪族カルボン酸銅塩、脂肪族カルボン酸マンガン塩、脂肪族カルボン酸コバルト等が挙げられる。
上記金属アルコキサイドとしては、銅アルコキサイド、亜鉛アルコキサイド、チタンアルコキサイド、鉄アルコキサイド、インジウムアルコキサイド、アルミニウムアルコキサイド、マグネシウムアルコキサイド、モリブテンアルコキサイド、パラジウムアルコキサイド、イットリウムアルコキサイド、ジルコニウムアルコキサイド、ビスマスアルコキサイド等が挙げられる。
上記金属アセテートとしては、酢酸亜鉛、酢酸パラジウム、酢酸ロジウム、酢酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、酢酸コバルト、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、白金アセトアセテート、アルミニウムアセトアセテート、チタンアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセテート等が挙げられる。
【0019】
上記製造方法において、重合性モノマーへ溶解及び/又は分散する無機微粒子の前駆体の量としては、重合性モノマーあたり0.2質量%〜100質量%の範囲内であることが好ましい。無機微粒子の前駆体の量が0.2質量%未満では、組成物の無機微粒子の含有量が低下するおそれがあり、一方、前駆体の量が100質量%を超えると、溶解及び/又は分散させた重合性モノマーの粘度が高くなり、作業性が低下するおそれがある。無機微粒子の配合量のより好ましい上限値は60質量%であり、40質量%が更に好ましい。また、上記配合量のより好ましい下限値は0.5質量%であり、1質量%が更に好ましい。
なお、重合性モノマーへの無機微粒子の前駆体を溶解及び/又は分散させる方法については、一般的な攪拌や超音波分散等により行うことができ、必要により重合性モノマーがゲル化しない範囲内で加熱することもできる。
【0020】
上記製造方法においては次に、マイクロ波を照射することとなり、これにより、粒径や粒度分布が制御された無機微粒子が重合性モノマー中で生成することとなる。マイクロ波とは、周波数1GHz〜300GHzの範囲の電磁波であるが、周波数1GHz〜10GHzの範囲の電磁波であることが好ましい。
またマイクロ波の照射強度については、下限が0.005W/cmであることが好ましく、上限は20W/cmであることが好ましい。マイクロ波の照射強度が0.005W/cm未満では、照射強度が弱く、無機微粒子の生成反応が遅くなるおそれがある。一方、照射強度が20W/cmを超えても、無機微粒子生成における照射時間は短縮しないうえ、無機微粒子生成反応において副生成物が発生するおそれがある。照射強度の更に好ましい下限は0.01W/cmであり、更に好ましい上限は10W/cmである。
マイクロ波を照射する時間については、無機微粒子の生成が完結する時間を適宜設定すればよいが、照射時間の下限は0.1分間であり、上限は20分間であることが好適である。照射時間が0.1分間未満では、無機微粒子の生成反応が完結しないおそれがある。一方、照射時間が20分間を超えると過剰照射になるだけでなく、無機微粒子生成反応において、副生成物が発生するおそれがある。マイクロ波の照射時間の下限は1分間であることが更に好ましく、上限は10分間であることが更に好ましい。
【0021】
本発明はまた、無機微粒子及び重合性モノマーを必須成分とする重合性組成物であって、該無機微粒子は、平均粒子径が0.1nm〜50nmの範囲内であり、かつ、粒径分布の標準偏差が1.0nm以下の範囲内であり、該無機微粒子の含有量は、組成物全体の0.5質量%以上である無機微粒子含有重合性組成物でもある。このような重合性組成物により、透明性や耐久性、加工性に充分に優れたナノコンポジット材料を得ることができ、例えば、光学材料、電子材料、センサー材料、医薬、農薬、触媒材料、塗料・コーティング材料、化粧品材料等に有用なものとすることが可能となる。
このような重合性組成物としては、上述した重合性組成物と同様に、無機微粒子の前駆体を重合性モノマー中に溶解及び/又は分散し、マイクロ波を照射することによって得られるものであることが好適であり、その製造方法や該組成物の好適な形態については上述したとおりである。
【0022】
本発明は更に、上記無機微粒子含有重合性組成物中の重合性モノマーを重合することにより得られる重合体を含有する無機微粒子含有重合体組成物でもある。
なお、本発明の重合体を得る場合には、本発明の無機微粒子含有重合性組成物に、重合体に求められる要求性能に応じて、さらに、重合性モノマーを配合した後、重合することも可能である。さらに配合する重合性モノマーとしては、前記に例示した重合性モノマーが挙げられる。
上記重合体組成物において、重合体の合成方法としては、一般的なラジカル重合反応を用いればよく、例えば、塊状重合(バルク重合)、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、光重合等が挙げられる。重合反応の際の反応温度や反応時間等の反応条件は適宜設定すればよいが、上記重合反応は窒素雰囲気下で行うことが好ましく、また、平均分子量を調整するために、連鎖移動剤を添加して行うことが好ましい。連鎖移動剤としては、例えば、α−スチレンダイマー、四塩化炭素、チオール化合物等が挙げられ、その添加量としては、連鎖移動剤の種類や重合性モノマーの種類により適宜設定すればよいが、例えば、重合性モノマーに対して0.1質量%〜15質量%の範囲内であることが好適である。
上記重合反応においては、重合開始剤を使用することが好ましい。重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。さらに、重合反応においては、溶剤を配合して希釈下で行うことが好ましく、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エタノール、ブタノール、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0023】
上記重合体の平均分子量としては、数平均分子量(Mn)で1000〜1000000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量が1000未満では、組成物から得られたナノコンポジット材料の強度物性が低下するおそれがあり、数平均分子量が1000000を超えると組成物の粘度が高くなり、作業性が低下するおそれがある。上記数平均分子量(Mn)の更に好ましい下限は3000である。また、該数平均分子量(Mn)の更に好ましい上限は500000であり、100000が最も好ましい上限である。
なお、重合体の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」という。カラム名:TSKgelG2000HxlとTSKgelGMHxl、東ソー社製)を用いて、標準ポリスチレンに基づいて作成した検量線により測定することができる。
【0024】
上記重合体組成物において、上記無機微粒子含有重合性組成物中の重合性モノマーを重合することにより得られる重合体の含有量としては、重合体組成物100質量%に対して、10質量%〜90質量%の範囲内であることが好適である。これにより、上記重合体による作用効果を充分に発揮できるため、透明性や耐久性、加工性等の各種物性に優れるナノコンポジット材料として好適なものとすることが可能となる。より好ましくは、20質量%〜70質量%の範囲内であり、更に好ましくは、30質量%〜60質量%の範囲内である。
なお、上記重合体組成物は、その他の化合物や副資材を含有していてもよく、これらの含有量は、例えば、重合体組成物100質量%に対して、50質量%以下であることが好適である。より好ましくは、30質量%以下であり、更に好ましくは、10質量%以下である。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を意味するものとする。
以下の実施例等において、粒子の平均粒子径及び粒径分布の標準偏差としては、上述したように測定して求めた。
【0026】
実施例1
ガラス製反応器に、重合性モノマーとしてシクロヘキシルメタクリレート3.0部と、無機微粒子の前駆体として直鎖状カルボン酸銀塩(C1327COOAg)0.19部を仕込んだ後、反応器をマイクロ波照射装置(製品名「Discover」、CEM社製、周波数2.45GHz)を用いて20W/cmの強度でマイクロ波照射を行い、140℃で2分間反応して黄褐色の液状物を得た。この組成物中の粒子のXRD(X線回折装置)のパターンより、生成した粒子は金属銀であることがわかった。すなわち、2質量%の銀のナノ粒子を含有する重合性モノマーである本発明の無機微粒子含有重合性組成物(1)を得た。
上記の組成物を電子顕微鏡写真で観察して粒子を400個任意に抽出して、その粒径分布を調べたところ、平均粒子径5.6nmで粒径分布の標準偏差が0.6nmであることがわかった。
更に、上記組成物の1H NMR(核磁気共鳴)を測定したところ、CH=C部分のHのシグナルは照射前と強度が同じであり、また、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)を測定したところ、重合性モノマーが重合したピークが見られなかったことから、重合性モノマーは未反応で残存していることがわかった。
【0027】
実施例2
実施例1と同様にして、シクロヘキシルメタクリレート3.0部と、直鎖状カルボン酸銀塩0.49部、トリエチルアミン0.15部を仕込んだ後、マイクロ波照射を行い、5.0質量%の銀のナノ粒子を含有する重合性モノマーである本発明の無機微粒子含有重合性組成物(2)を得た。
上記組成物を実施例1と同様に分析することにより、生成した粒子は金属銀であり、その粒径分布は、平均粒子径2.8nmで粒径分布の標準偏差が0.7nmであることがわかった。また、重合性モノマーは未反応で残存していることがわかった。
【0028】
実施例3
実施例1と同様にして、N−ビニルピロリドン3.0部と、直鎖状カルボン酸銀塩0.19部を仕込んだ後、マイクロ波照射を行い、2.0質量%の銀のナノ粒子を含有する重合性モノマーである本発明の無機微粒子含有重合性組成物(3)を得た。
上記組成物を実施例1と同様に分析することにより、生成した粒子は金属銀であり、その粒径分布は、平均粒子径6nmで粒径分布の標準偏差が0.8nmであることがわかった。また、重合性モノマーは未反応で残存していることがわかった。
【0029】
実施例4、5
実施例1、3で得られた重合性組成物(1)又は(3)の3.0部に、トルエン3.0部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.001部を加え、反応器内を窒素ガスに置換し、80℃に昇温して5時間重合反応を行い、本発明における無機微粒子含有重合体組成物(1)、(2)を得た。得られた重合体組成物をガラス板上に塗布後、乾燥して銀ナノ粒子を含有した塗膜を得た。
【0030】
比較例1
実施例1と同様にして、シクロヘキシルメタクリレート3.0部と、直鎖状カルボン酸銀塩0.19部を仕込んだ後、140℃で60分間加熱反応させることにより、褐色のゲルが得られた。
【0031】
比較例2
ガラス製容器に、100mMの硝酸銀水溶液10部をとり、アセトン90部希釈した後、分散剤として、ソルスパース24000(商品名、ゼネカ社製)を1.0部添加した。次に、攪拌しながらジメチルアミノエタノールを5.0部加えて、40℃で3時間還元反応を行い、黄色の銀微粒子コロイド溶液を得た。得られた銀微粒子コロイド溶液より溶剤を除去した後、残存固体ゾルを数回水で洗浄した。続いて、シクロヘキシルメタクリレート5.0部を加えて再分散して、2.0質量%の銀のナノ粒子を含有する重合性モノマーである比較の無機微粒子含有重合性組成物(2)を得た。
上記組成物を実施例1と同様に分析して、その粒径分布は、平均粒子径32nmで粒径分布の標準偏差が6.5nmであることがわかった。
【0032】
実施例1〜3の重合性組成物は、あらかじめ重合性モノマー中に無機微粒子の前駆体を溶解/分散し、マイクロ波を照射することにより得られた無機微粒子と重合性モノマーからなる組成物であるため、得られた無機微粒子の平均粒子径、分散度ともに小さいものであった。また、無機微粒子を得る際のマイクロ波の照射では、重合性モノマーは重合やゲル化をおこすことなく、そのままの液状状態を保持したものであった。しかも、マイクロ波の照射時間が非常に短時間であるため生産性も高いものであった。
一方、比較例1では、あらかじめ重合性モノマー中に無機微粒子の前駆体を溶解/分散し、通常の加熱を行ったことにより、重合性モノマーの重合が進行しゲル化が発生した。また、比較例2では、別途合成した無機微粒子を重合性モノマーに再分散させているので、その過程で粒子同士の凝集がおこり、得られた無機微粒子の平均粒子径、分散度ともに大きいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の重合性組成物は、より小さい粒径で、粒度分布の狭い無機化合物のナノ粒子と、重合性モノマーを含有することとなり、該組成物より得られるナノコンポジット材料は、透明性が高く、耐久性、加工性にも優れているので、光学材料、電子材料、センサー材料、医薬、農薬、触媒材料、塗料・コーティング材料、化粧品材料をはじめとする用途に有効に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機微粒子及び重合性モノマーを必須成分とする重合性組成物であって、
該重合性組成物は、無機微粒子の前駆体を重合性モノマー中に溶解及び/又は分散し、マイクロ波を照射することによって得られるものであることを特徴とする無機微粒子含有重合性組成物。
【請求項2】
前記無機微粒子は、平均粒子径が0.1nm〜50nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の無機微粒子含有重合性組成物。
【請求項3】
前記無機微粒子の前駆体は、有機金属塩、金属アルコキサイド及び金属アセテートからなる群より選択される少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の無機微粒子含有重合性組成物。
【請求項4】
無機微粒子及び重合性モノマーを必須成分とする重合性組成物であって、
該無機微粒子は、平均粒子径が0.1nm〜50nmの範囲内であり、かつ、粒径分布の標準偏差が1.0nm以下の範囲内であり、
該無機微粒子の含有量は、組成物全体の0.5質量%以上であることを特徴とする無機微粒子含有重合性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の無機微粒子含有重合性組成物中の重合性モノマーを重合することにより得られる重合体を含有することを特徴とする無機微粒子含有重合体組成物。
【請求項6】
無機微粒子及び重合性モノマーを必須成分とする重合性組成物を製造する方法であって、
該製造方法は、無機微粒子の前駆体を重合性モノマー中に溶解及び/又は分散し、マイクロ波を照射することにより、無機微粒子を重合性モノマー中で製造する工程を含むことを特徴とする無機微粒子含有重合性組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−249184(P2006−249184A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65598(P2005−65598)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】