説明

無機成形体の製造方法、及び該方法により得られる無機成形体

【課題】製造過程で体積の収縮がほとんど起らず意図した形状、寸法を有し、強度も良好な無機成形体を容易に製造することができる製造方法、及び該方法で得られる無機成形体を提供する。
【解決手段】固体状シリコーンからなるマトリックスと該マトリックス中に分散した無機フィラーとからなるシリコーン系成形物を、非酸化性雰囲気下、400〜1500℃において加熱することにより該固体状シリコーンを無機セラミックス化することを特徴とする、無機セラミックスからなるマトリックスと該マトリックス中に分散した無機フィラーとからなる無機成形体の製造方法、及びこの方法で得られる無機成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック回路基板、誘電体の磁器組成物、耐火電線、誘電加熱コイル、電気機器絶縁リング、エレクトロニクス実装技術等に応用可能な無機成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、薄型テレビ等の需要の高まりにより、半導体技術に関する要求はますます盛んになっている。半導体を実装する基板として、絶縁性に優れ、熱伝導率の高いセラミック材料、例えば、アルミナ、窒化ケイ素、ガラスセラミックなどが使用されつつある。その中でもAg、Cu、Auなどの電気伝導度が高い導体を同時焼成できる低温焼結が可能なガラスセラミック(Low Temperature Cofired Ceramics;LTCC)の有用性が高まっている。
【0003】
また、低温焼成によりガラスセラミック基板を製造する方法として、セラミック原料にポリプロピレンカーボネート、メタクリル酸アルキルエステル樹脂、PVA等の有機バインダー樹脂を添加した後成形し焼成することが知られている。この方法では、バインダー樹脂の除去工程が必要であり、その際に成形体の体積減少が避けられず、またそれに伴う強度低下が問題となっている。
【0004】
プリント基板に置けるパターニング技術としてはフォトレジストを用いたリソグラフィー法や印刷法があるが、リソグラフィー法はレジスト塗布や除去などの工程が必要であるが、このような工程のない印刷法の方が経済的に有利である。
【0005】
低温焼結が可能なセラミックを製造する際の材料である厚膜ペーストが知られている(特許文献1、2及び3)が、セルロース、PVA、ポリプロピレンカーボネート、メタクリル酸アルキルエステル等の有機化合物をバインダーとして含むのでバインダーの除去工程を必要とし、そのため体積減少による強度不足が起こる問題がある。
【0006】
また、厚膜ペーストをスクリーン印刷等の印刷により塗布する方法では、従来、印刷から乾燥までの間に厚膜ペーストが流動して、いわゆる『タレ』の発生が問題となっている。
【0007】
特許文献4には、裸電線などを巻回時にシリコーン化合物と低融点ガラスとを主成分とする塗料を塗布し、巻回後に焼成によりシリコーン化合物の分解無機化と低融点ガラスの融解による固溶化を行って無機絶縁層を形成する方法が記載されている。より具体的には、実施例に、シリコーン樹脂と低融点ガラス粉末を含む混合物をキシレンで希釈し、巻き回したコイルに塗布後風乾し、200℃でシリコーン樹脂を硬化させ、その後550℃で焼成が行われている。焼成の雰囲気は記載されていないので、空気中で行われるものと考えられる。この方法では、焼成の際に有機基が脱離し、体積減少による強度低下が起る。
【0008】
【特許文献1】特開平6−232515号公報
【特許文献2】特開平9−115331号公報
【特許文献3】特開2004−59358号公報
【特許文献4】特開平7−322579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の課題は、製造過程で体積の収縮がほとんど起らず、従って意図した形状と寸法、及び所期の強度を有し、導体、誘電体、抵抗体等として有用である無機成形体を容易に製造することができる製造方法、及び該方法で得られる無機成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するべく検討を重ねた結果、無機セラミックスからなるマトリックスと該マトリックス中に分散した無機フィラーとからなる無機成形体及びその製造方法を開発するに到った。
【0011】
即ち、本発明は、固体状シリコーンからなるマトリックスと該マトリックス中に分散した無機フィラーとからなるシリコーン系成形物を非酸化性雰囲気下、400〜1500℃において加熱することにより前記固体状シリコーンを無機セラミックス化することを特徴とする、無機セラミックスからなるマトリックスと該マトリックス中に分散した前記無機フィラーとからなる無機成形体の製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記製造方法により得られる、無機セラミックスからなるマトリックスと該マトリックス中に分散した無機フィラーとからなる無機成形体を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、焼成段階においてシリコーン成形物の体積減少が起りがたく、形状、寸法を保ったまま、強度不足を回避することができる。そのため、所期の強度を有する所望形状の無機成形体を得ることができる。
【0014】
本発明の無機成形体において、マトリックスとなる無機セラミックス部分はアモルファス状であり、即ち、ガラスセラミックとして得られる。そこで、本発明の方法は、電気伝導度が高い導体を同時焼成できる低温焼結方法として利用することができる。
【0015】
本発明の製造方法は、出発材料であるシリコーン系成形物を硬化性シリコーン組成物から所要の形状に成形加工して作製することができるので、成形加工段階では有機材料が一般的に有している良好な加工性を利用することができ、しかも得られる製品は無機材料としての良好な耐熱性を実現している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[シリコーン系成形物]
本発明の製造方法において出発材料として使用されるシリコーン系成形物は、固体状シリコーンからなるマトリックスと該マトリックス中に分散した無機フィラーとからなるものである。このシリコーン系成形物は、無機フィラーを含有する硬化性シリコーン組成物を硬化することにより得ることができる。
【0017】
−硬化性シリコーン組成物−
硬化性シリコーン組成物としては、公知のものを使用することができる。硬化性シリコーン組成物は、通常室温で可塑性を有する半固形状または液状であることが望ましい。
【0018】
なお、本明細書においては、「室温」とは、特記しない限り15〜35℃の範囲の温度を意味する。
【0019】
硬化性シリコーン組成物の具体例としては、付加硬化型等の加熱硬化型;紫外線硬化型、電子線硬化型等の光硬化型;および縮合硬化型のシリコーン組成物等が挙げられる。
【0020】
加熱硬化型である場合には、硬化性シリコーン組成物を加熱することにより硬化させてシリコーン硬化物に転換する。加熱硬化型シリコーン組成物として、例えば、付加硬化型シリコーン組成物が挙げられる。
【0021】
付加硬化型シリコーン組成物としては、例えば、分子鎖末端部分(片末端または両末端)および分子鎖非末端部分のどちらか一方またはその両方にビニル基等のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを白金族金属系触媒の存在下で反応(ヒドロシリル化付加反応)させることにより硬化するシリコーン組成物を挙げることができる。
【0022】
光硬化型シリコーン組成物としては、例えば、紫外線硬化型シリコーン組成物、および電子線硬化型シリコーン組成物がある。
【0023】
紫外線硬化型シリコーン組成物としては、例えば、波長200〜400nmの紫外線のエネルギーにより硬化するシリコーン組成物が挙げられる。この場合、硬化機構には特に制限はない。その具体例としては、アクリロイル基あるいはメタクリロイル基を有するオルガノポリシロキサンと光重合開始剤とを含有するアクリルシリコーン系シリコーン組成物、メルカプト基含有オルガノポリシロキサンとビニル基等のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと光重合開始剤とを含有するメルカプト−ビニル付加重合系シリコーン組成物、熱硬化性の付加反応型と同じ白金族金属系触媒を用いた付加反応系シリコーン組成物、エポキシ基を有するオルガノポリシロキサンとオニウム塩触媒とを含有するカチオン重合系シリコーン組成物などが挙げられ、いずれも紫外線硬化型シリコーン組成物として使用することができる。
【0024】
電子線硬化型シリコーン組成物としては、ラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサンに電子線を照射することで開始するラジカル重合により硬化するいずれのシリコーン組成物も使用することができる。
【0025】
縮合硬化型シリコーン組成物としては、例えば、両末端シラノール基封鎖オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンまたはテトラアルコキシシラン、オルガノトリアルコキシシラン等の加水分解性シランおよび/もしくはその部分加水分解縮合物とを有機錫系触媒等の縮合反応触媒の存在下で反応させることにより硬化するシリコーン組成物、あるいは両末端がトリアルコキシシロキシ基、ジアルコキシオルガノシロキシ基、トリアルコキシシロキシエチル基、ジアルコキシオルガノシロキシエチル基等のアルコキシ含有シロキシ基またはアルコキシ含有シロキシアルキル基で封鎖されたオルガノポリシロキサンを有機錫系触媒等の縮合反応触媒の存在下で反応させることにより硬化するシリコーン組成物などを挙げることができる。
【0026】
しかし、前記の固体状シリコーンを寸法精度良く得る上では、体積収縮の少ない付加硬化型シリコーン組成物が好ましい。
【0027】
以下、上述の硬化型のシリコーン組成物の代表例について、無機フィラー以外の成分に焦点をあてて詳述するが、いずれの組成物無機フィラーを必須の成分として含み、さらにその他の周知慣用の添加物を必要に応じて含むことができる。
【0028】
<付加硬化型シリコーン組成物>
付加硬化型シリコーン組成物として、具体的には、例えば、
(a)ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン、
(b)ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 全硬化性シリコーン組成物中のアルケニル基1モル当たり、本(b)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.1〜5.0モルとなる量、および
(c)白金族金属系触媒 有効量
含有する付加硬化型シリコーン組成物が挙げられる。
【0029】
・(a)成分
(a)成分のオルガノポリシロキサンは、付加硬化型シリコーン組成物のベースポリマーであり、ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有する。(a)成分としては公知のオルガノポリシロキサンを使用することができる。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定された(a)成分のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量はポリスチレン換算で好ましくは3,000〜300,000程度である。更に、(a)成分のオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、100〜1,000,000mPa・sであることが好ましく、200〜100,000mPa・s程度であることが特に好ましい。(a)成分のオルガノポリシロキサンは、基本的には、分子鎖(主鎖)がジオルガノシロキサン単位((R12SiO2/2単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基((R13SiO1/2)で封鎖された、分岐を有しない直鎖状構造、または分子鎖が該ジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる、分岐を有しない環状構造を有するが、R1SiO3/2単位やSiO4/2単位を含んだ分岐状構造を部分的に有していてもよい(ここで、R1は同一または異種の非置換もしくは置換の、炭素原子数が好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8の一価炭化水素基である。)。
【0030】
(a)成分としては、例えば、下記平均組成式(1):
1aSiO(4-a)/2 (1)
(式中、R1は上記の通りであり、aは好ましくは1.5〜2.8、より好ましくは1.8〜2.5、更により好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数ある。)
で示され、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが用いられる。
【0031】
上記R1で示される一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基;これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換した基、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0032】
この場合、R1のうち少なくとも2個はアルケニル基(特に、炭素原子数が好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6のアルケニル基)である。なお、アルケニル基の含有量は、ケイ素原子に結合する全有機基中(即ち、前記平均組成式(1)においてR1で示される非置換または置換の全一価炭化水素基中)、好ましくは0.01〜20モル%、特に好ましくは0.1〜10モル%である。(a)成分のオルガノポリシロキサンが直鎖状構造を有する場合、このアルケニル基は、分子鎖末端および分子鎖末端でない部分のどちらか一方でのみケイ素原子に結合していても、その両方でケイ素原子に結合していてもよいが、組成物の硬化速度、硬化物の物性等の点から、少なくとも一個のアルケニル基が分子鎖末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0033】
上記R1は、基本的には上記のいずれであってもよいが、アルケニル基はビニル基であることが好ましく、アルケニル基以外の一価炭化水素基はメチル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0034】
(a)成分の具体例としては、下記一般式で示される化合物が挙げられる。
【0035】
【化1】

【0036】
なお、上記一般式中のRは、アルケニル基を表さないこと以外は、R1と同様である。mおよびnはm≧1、n≧0を満たす整数であり、m+nはこのオルガノポリシロキサンの分子量および粘度が上記の値となる数である。
【0037】
・(b)成分
(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個(通常、2〜200個)、好ましくは3個以上(通常、3〜100個)含有する。(b)成分は、(a)成分と反応し、架橋剤として作用する。(b)成分の分子構造は特に制限されず、例えば、線状、環状、分岐状、三次元網状(樹脂状)等の、従来製造されているいずれのオルガノハイドロジェンポリシロキサンも(b)成分として使用することができる。(b)成分が線状構造を有する場合、SiH基は、分子鎖末端および分子鎖末端でない部分のどちらか一方でのみケイ素原子に結合していても、その両方でケイ素原子に結合していてもよい。また、1分子中のケイ素原子の数(または重合度)が、通常、2〜300個、好ましくは4〜150個程度であり、25℃において液状であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが(b)成分として好ましく使用できる。
【0038】
(b)成分としては、例えば、下記平均組成式(2):
2bcSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、R2は同一または異種の非置換もしくは置換の、炭素原子数が1〜10の一価炭化水素基であり、bおよびcは、好ましくは0.7≦b≦2.1、0.001≦c≦1.0、かつ0.8≦b+c≦3.0、より好ましくは1.0≦b≦2.0、0.01≦c≦1.0、かつ1.5≦b+c≦2.5を満足する正数である。)
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが用いられる。上記R2としては、例えば、上記平均組成式(1)中のR1と同様の基(ただし、アルケニル基を除く。)が挙げられる。
【0039】
上記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C653SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0040】
(b)成分の添加量は、(a)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モル当たり、本(b)成分中のSiH基の量が0.1〜5.0モル、好ましくは0.5〜3.0モル、より好ましくは0.8〜2.0モルとなる量である。該添加量が上記SiH基の量が0.1モルより少なくなる量であると、本発明の組成物から得られる硬化物の架橋密度が低くなりすぎ、該硬化物の耐熱性が悪影響を受ける。また、該添加量が上記SiH基の量が5.0モルより多くなる量であると、該硬化物中に脱水素反応による発泡が生じてしまい、更に該硬化物の耐熱性が悪影響を受ける。
【0041】
・(c)成分
(c)成分の白金族金属系触媒は、(a)成分と(b)成分との付加硬化反応(ヒドロシリル化)を促進させるための触媒として使用される。(c)成分としては、公知の白金族金属系触媒を用いることができるが、白金もしくは白金化合物を用いることが好ましい。(c)成分の具体例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサンまたはアセチレンアルコール類等との錯体が挙げられる。
【0042】
(c)成分の添加量は、触媒としての有効量であり、希望する硬化速度に応じて適宜増減すればよいが、(a)成分に対して白金族金属に換算して質量基準で好ましくは0.1〜1,000ppm、より好ましくは1〜200ppmの範囲である。
【0043】
<紫外線硬化型シリコーン組成物>
紫外線硬化型シリコーン組成物として、具体的には、例えば、
(d)紫外線反応性オルガノポリシロキサン、および
(e)光重合開始剤
含有する紫外線硬化型シリコーン組成物が挙げられる。
【0044】
・(d)成分
(d)成分の紫外線反応性オルガノポリシロキサンは、通常、紫外線硬化型シリコーン組成物においてベースポリマーとして作用する。(d)成分は、特に限定されず、好ましくは1分子中に少なくとも2個、より好ましくは2〜20個、特に好ましくは2〜10個の紫外線反応性基を有するオルガノポリシロキサンである。このオルガノポリシロキサン中に複数存在する前記紫外線反応性基は、全て同一でも異なっていてもよい。
【0045】
(d)成分のオルガノポリシロキサンは、基本的には、分子鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基もしくはトリオルガノシリルエチル基等のトリオルガノシリル置換アルキル基で封鎖された、分岐を有しない直鎖状構造、または分子鎖が該ジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる、分岐を有しない環状構造を有することが好ましいが、三官能性シロキサン単位やSiO2単位等の分岐状構造を部分的に含有してもよい。(d)成分のオルガノポリシロキサンは、直鎖状構造を有する場合、紫外線反応性基を、分子鎖末端および分子鎖末端でない部分のどちらか一方にのみ有していても、その両方に有していてもよいが、少なくとも分子鎖両末端に紫外線反応性基を有することが好ましい。
【0046】
該紫外線反応性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;アクリロイル基、メタクリロイル基等のアルケニル基以外の脂肪族不飽和基;メルカプト基;エポキシ基;ヒドロシリル基等が挙げられ、好ましくはアクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、およびヒドロシリル基が挙げられ、より好ましくはアクリロイル基およびメタクリロイル基が挙げられる。
【0047】
該紫外線反応性基は、その種類に応じて、(d)成分のオルガノポリシロキサン中に主鎖を構成するケイ素原子に直接結合していてもよいし、アルキレン基等の連結基を介してケイ素原子に結合していてもよい。
【0048】
前記オルガノポリシロキサンの粘度は、特に限定されないが、25℃において、25mPa・s以上であることが好ましく、100〜10,000,000mPa・sであることがより好ましく、100〜100,000mPa・sであることが特に好ましい。
【0049】
(d)成分の好ましい一形態として、例えば、下記一般式(3a):
【0050】
【化2】

【0051】
[式中、R3は同一または異種の、紫外線反応性基を有しない非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、R4及びR5は各々同一又は異種の、紫外線反応性基もしくは紫外線反応性基を有する基であり、R5は同一または異種の、紫外線反応性基を有する基であり、tは5〜1,000の整数であり、uは0〜100の整数であり、pは0〜3の整数であり、qは0〜3の整数であり、但し、p+q+u≧2である。]
または、下記一般式(3b):
【0052】
【化3】

【0053】
[式中、R3、R4、R5、t、u、pおよびqは上記一般式(3a)で定義したとおりであり、kは2〜4の整数であり、rおよびsは各々1〜3の整数であり、但し、pr+qs+u≧2である。]
で表される少なくとも2個の紫外線反応性基を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0054】
上記一般式(3a)および(3b)中、R3は、同一または異種の、紫外線反応性基を有しない非置換もしくは置換の、炭素原子数が好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、更により好ましくは1〜8の一価炭化水素基である。R3で表される一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−エチルブチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ジフェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;これらの炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基等で置換された基、例えば、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基等が挙げられ、好ましくはメチル基およびフェニル基が挙げられ、より好ましくはメチル基が挙げられる。また、上記R3で表される一価炭化水素基はその骨格中にスルホニル基、エーテル結合(−O−)、カルボニル基等を1種または2種以上有してもよい。
【0055】
上記一般式(3a)および(3b)中、R4およびR5で表される紫外線反応性基は上述したとおりである。紫外線反応性基を有する基とは該紫外線反応性基が連結基を介してケイ素原子に結合している場合であり、その具体例としては、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−メタクリロイルオキシプロピル基、3−アクリロイルオキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、2−{ビス(2−メタクリロイルオキシエトキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(2−アクリロイルオキシエトキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(2−アクリロイルオキシエトキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(1,3−ジメタクリロイルオキシ2−プロポキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(1,3−ジメタクリロイルオキシ−2−プロポキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(1−アクリロイルオキシ3−メタクリロイルオキシ2−プロポキシ)メチルシリル}エチル基、および2−{(1−アクリロイルオキシ3−メタクリロイルオキシ2−プロポキシ)ジメチルシリル}エチル基等が挙げられ、好ましくは3−メタクリロイルオキシプロピル基、3−アクリロイルオキシプロピル基、2−{ビス(2−メタクリロイルオキシエトキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(2−アクリロイルオキシエトキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(2−アクリロイルオキシエトキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(1,3−ジメタクリロイルオキシ2−プロポキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(1,3−ジメタクリロイルオキシ2−プロポキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(1−アクリロイルオキシ3−メタクリロイルオキシ2−プロポキシ)メチルシリル}エチル基、および2−{(1−アクリロイルオキシ3−メタクリロイルオキシ2−プロポキシ)ジメチルシリル}エチル基が挙げられ、より好ましくは3−アクリロイルオキシプロピル基、2−{ビス(2−メタクリロイルオキシエトキシ)メチルシリル}エチル基、2−{(2−メタクリロイルオキシエトキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{(2−アクリロイルオキシエトキシ)ジメチルシリル}エチル基、2−{ビス(1,3−ジメタクリロイルオキシ2−プロポキシ)メチルシリル}エチル基、2−{ビス(1−アクリロイルオキシ3−メタクリロイルオキシ2−プロポキシ)メチルシリル}エチル基が挙げられる。
【0056】
一般式(3a)および(3b)において、R4およびR5は各々同一であっても異なっていてもよく、R4およびR5どうしが同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
上記一般式(3a)および(3b)中、tは、通常、5〜1,000、好ましくは10〜800、より好ましくは50〜500の整数である。uは、通常、0〜100、好ましくは0〜50、より好ましくは0〜20の整数である。pは、通常、0〜3、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは1または2である。qは、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは1または2である。上記式(3b)中、kは、通常、2〜4の整数、好ましくは2または3である。rおよびsは各々1〜3の整数、好ましくは1または2である。更に、上記一般式(3a)および(3b)で表されるオルガノポリシロキサンは、前述のとおり、前記紫外線反応性基を少なくとも2個有するので、式(3a)ではp+q+u≧2となり、式(3b)ではpr+qs+u≧2となる。
【0058】
上記式(3a)または(3b)で表されるオルガノポリシロキサンの具体例としては、下記に示すものなどが挙げられる。
【0059】
【化4】

【0060】
【化5】

【0061】
[式中、R6は、90モル%がメチル基であり、10モル%がフェニル基である]
・(e)成分
(e)成分の光重合開始剤は、前記(d)成分中の紫外線反応性基の光重合を促進させる作用を有する。(e)成分は特に限定されず、その具体例としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンセン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントン、3,9−ジクロロキサントン、3−クロロ−8−ノニルキサントン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシアセタール、2−クロロチオキサントン、ジエチルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられ、好ましくはベンゾフェノン、4−メトキシアセトフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンが挙げられ、より好ましくはジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンが挙げられる。これらの光重合開始剤は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0062】
(e)成分の添加量は、特に限定されないが、(d)成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜3質量部、更により好ましくは0.5〜3質量部である。この添加量がこの範囲内だと、本発明組成物を硬化させることにより得られる硬化ゴムは強度および引張り強さ等の物理特性に優れたものとなる。
【0063】
<縮合硬化型シリコーン組成物>
縮合硬化型シリコーン組成物として、具体的には、例えば、
(h)ケイ素原子結合水酸基またはケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも2個、好ましくは分子鎖両末端に含有するオルガノポリシロキサン、
(i)任意成分として、加水分解性シランおよび/またはその部分加水分解縮合物、ならびに
(j)任意成分として、縮合反応触媒
含有する縮合硬化型シリコーン組成物が挙げられる。
【0064】
・(h)成分
(h)成分は、ケイ素原子結合水酸基またはケイ素原子結合加水分解性基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンであり、縮合硬化型シリコーン組成物のベースポリマーである。(h)成分のオルガノポリシロキサンは、基本的には、分子鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる、分岐を有しない直鎖状構造または環状構造を有するが、分岐状構造を部分的に有していてもよい。なお、本明細書において「加水分解性基」とは、水の作用により分解して水酸基を形成しうる基を意味する。
【0065】
(h)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、加水分解性基としては、例えば、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基等のケトオキシム基(即ち、イミノキシ基);メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等のアルコキシアルコキシ基;ビニロキシ基、イソプロペニルオキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基;ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基等のアミノキシ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基等が挙げられる。
【0066】
これらの加水分解性基は、例えば、トリアルコキシシロキシ基、ジアルコキシオルガノシロキシ基、トリアシロキシシロキシ基、ジアシロキシオルガノシロキシ基、トリイミノキシシロキシ基(即ち、トリケトオキシムシロキシ基)、ジイミノキシオルガノシロキシ基、トリアルケノキシシロキシ基、ジアルケノキシオルガノシロキシ基、トリアルコキシシロキシエチル基、ジアルコキシオルガノシロキシエチル基等の、2個もしくは3個の加水分解性基を含有するシロキシ基または2個もしくは3個の加水分解性基を含有するシロキシアルキル基等の形で直鎖状ジオルガノポリシロキサンの分子鎖両末端に位置していることが好ましい。
【0067】
水酸基及び加水分解性基以外のケイ素原子に結合した他の原子又は基は一価炭化水素基であり、該一価炭化水素基としては、上記平均組成式(1)におけるR1について例示したものと同じ非置換または置換の一価炭化水素基が挙げられる。
【0068】
(h)成分としては、例えば、下記の式:
【0069】
【化6】

【0070】
[上記の式中、Yは加水分解性基、xは1、2又は3、y及びzはそれぞれ1〜1000の整数である]
で表される分子鎖両末端にケイ素原子に結合した水酸基又はケイ素原子に結合した加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0071】
上記の化学式で表されるオルガノポリシロキサンの内、両末端に加水分解性基Yを有するものの具体例としては、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端メチルジメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリエトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端2−(トリメトキシシロキシ)エチル基封鎖ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0072】
・(i)成分
(i)成分の加水分解性シランおよび/またはその部分加水分解縮合物は任意成分であり、硬化剤として作用する。ベースポリマーである(h)成分がシラノール基以外のケイ素原子結合加水分解性基を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンである場合には、(i)成分を縮合硬化型シリコーン組成物に添加するのを省略することができる。(i)成分としては、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合加水分解性基を含有するシランおよび/またはその部分加水分解縮合物(即ち、少なくとも1個、好ましくは2個以上の加水分解性基が残存するオルガノポリシロキサン)が好適に使用される。
【0073】
前記加水分解性シランとしては、例えば、式(4):
eSiX4-e (4)
(式中、Rは非置換または置換の一価炭化水素基、Xは加水分解性基、eは0または1である。)で表されるものが好ましく用いられる。前記Rとしては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基が特に好ましく挙げられる。前記Xとしては、例えば、前記(h)成分におけるケイ素原子結合加水分解性基Yとして例示したものすべてが挙げられる。
【0074】
該加水分解性シランの具体例としては、例えば、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルオルソシリケート等、およびこれらの部分加水分解縮合物が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0075】
(i)成分の加水分解性シランおよび/またはその部分加水分解縮合物を用いる場合、その添加量は、(h)成分100質量部に対して好ましくは0.01〜20質量部、特に好ましくは0.1〜10質量部である。(i)成分を用いる場合、その添加量が上記範囲内にあると、本発明組成物の貯蔵安定性、接着性および硬化速度は特に良好である。
【0076】
・(j)成分
(j)成分の縮合反応触媒は任意成分であり、上記(i)成分の加水分解性シランおよび/またはその部分加水分解縮合物が、例えば、アミノキシ基、アミノ基、ケトオキシム基等を有する場合には使用しなくてもよい。(j)成分の縮合反応触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン酸エステル;ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート等の有機ジルコニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジ(2−エチルヘキサノエート)等の有機スズ化合物;ナフテン酸スズ、オレイン酸スズ、ブチル酸スズ、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の有機カルボン酸の金属塩;ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン等のアミン化合物、およびその塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の4級アンモニウム塩;酢酸カリウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;グアニジル基含有有機ケイ素化合物等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0077】
(j)成分の縮合反応触媒を用いる場合、その添加量は、特に制限されず、触媒としての有効量でよいが、(h)成分100質量部に対して好ましくは0.01〜20質量部、特に好ましくは0.1〜10質量部である。(j)成分を用いる場合、その添加量が上記範囲内にあると、本発明組成物の硬化性および貯蔵安定性は特に良好である。
【0078】
<無機フィラー>
上記のいずれの硬化性シリコーン組成物にも無機フィラーは必須の成分として配合される。無機フィラーとしては、機能性フィラーが好ましい。機能性フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、アルミニウム、酸化チタン、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化第二鉄、カーボンブラック、銀、金、パラジウム−銀混合物、酸化ルテニウム、窒化ホウ素等が挙げられる。これらは用途に応じて適時選択して使用されることは公知である。例えば、導電性を付与したい場合には、カーボンブラック、銀、金、パラジウム−銀混合物、酸化ルテニウムなどが使用され、誘電性能を付与したい場合には、酸化チタン、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化ビスマスなどが使用される。
【0079】
無機フィラーとして粉末や粒状物を用いる場合に、その形状は不規則形状でも球状のような規則性形状でも如何なる形状でもかまわないが、平均粒径0.1〜100μmのものを用いることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満であると、無機成形体の原料となるシリコーン組成物の流動性がなくなり加工性に乏しくなる場合があり、100μmを超えるとシリコーン組成物の均一性が乏しくなる。
【0080】
上記無機フィラーの配合量は、シリコーン組成物全体の1〜60体積%とし、好ましくは2〜45体積%、より好ましくは5〜30体積%である。配合量が1体積%未満であると、必要な機能性が得られず、60体積%を超えると、流動性がなくなり加工性に乏しくなる。
【0081】
なお、組成物をミキサー等によって十分均一に混合するに際して、得られる組成物の保存安定性をよくする為に或いはウエッターとして無機フィラーをシランカップリング剤等で予め表面処理等を行うことが好ましい。
【0082】
ここで、シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。ここで、表面処理に用いるシランカップリング剤量及び表面処理方法については、特に制限されるものではない。
【0083】
上記オルガノシランの含有量は、無機成形体の原料となるシリコーン組成物中において0.1〜10質量%とする。含有量が0.1質量%未満であると無機フィラーの表面の濡れ性向上の効果が得られず、10質量%を超えても効果が飽和し不経済である。
【0084】
<成形・硬化>
硬化性シリコーン組成物を所要の形状に成形し、硬化させる場合、その形状は任意であり目的に応じて選定される。無機成形体を基材上に形成する場合には、基材の材質、寸法等に応じて硬化性シリコーン組成物の種類を適宜選定できる。またシリコーン組成物の成形方法も適宜選定でき、例えば注入成形、移送成形、射出成形、コーティング等の方法によって成形できる。代表的な硬化性シリコーン組成物の硬化条件を説明する。
【0085】
・加熱硬化型、特に付加硬化型シリコーン組成物の場合:
加熱硬化型シリコーン組成物の場合、その硬化は加熱することにより行う。特に、付加硬化型シリコーン組成物を硬化させる温度条件は、好ましくは60℃〜180℃より好ましくは80℃〜160℃である。硬化時間は、1分〜3時間、さらにより好ましくは3分〜2時間である。また、必要に応じて2次キュアを行ってもよく、その際の温度条件としては好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃〜250℃である。この際のキュア時間は好ましくは10分〜48時間さらに好ましくは30分〜24時間である。
【0086】
・紫外線硬化シリコーン組成物の場合:
紫外線硬化シリコーン組成物を硬化させる紫外線照射条件は、例えば365nmに発光波長を持った紫外線発光ダイオードを用い、照度5〜500mW/cm2、好ましくは10〜200mW/cm2、光量0.5〜100J/cm2、好ましくは10〜50J/cm2の条件で紫外線照射を行うことで硬化させることができる。また、必要に応じて2次キュアを行ってもよく、その際の温度条件としては好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃〜250℃である。この際のキュア時間は好ましくは10分〜48時間さらに好ましくは30分〜24時間である。
【0087】
・縮合硬化型シリコーン組成物の場合:
硬化性シリコーン組成物は室温〜200℃の空気中に放置することにより硬化させる。具体的には、通常、該組成物を、湿気(例えば、25〜90%RH、好ましくは50〜85%RH)を含む雰囲気中に放置すると、雰囲気中の水分により硬化する。硬化を促進させるために加熱してもよい。また、必要に応じて2次硬化を行ってもよい。その際の温度条件としては好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃〜250℃である。この際の硬化時間は好ましくは10分〜48時間、さらに好ましくは30分〜24時間である。
【0088】
−パターン化硬化性シリコーン組成物層の形成−
本発明の一実施形態においては、無機成形体は基板上にパターン化された形で形成される。
【0089】
該実施形態では、前記のシリコーン系成形物は、無機フィラーを含有する液状硬化性シリコーン組成物を印刷により基板上に所要パターンで塗布してパターン化硬化性シリコーン組成物層を形成し、次に、該パターン化硬化性シリコーン組成物層を硬化させることにより、パターン化硬化シリコーン層として形成される。こうして得られたパターン化硬化シリコーン層を無機セラミック化することにより、基板上にパターン化無機成形体が形成される。
【0090】
本実施形態では、硬化性シリコーン組成物を基板上に印刷により一定パターンに塗布する必要があるので、該硬化性シリコーン組成物は室温において液状である必要がある。好ましくは、室温で、1,000,000mPa・s以下、より好ましくは100,000mPa・s以下の粘度である。粘度の下限は室温で100mPa・s以上が好ましく、200mPa・s以上がより好ましい。
【0091】
印刷法による塗布はリソグラフィーの場合に必要なフォトレジストの塗布や剥離が不要で工程が簡単である上にコスト的にも有利である。使用することができる印刷方法は特に制限されないが、例えば、インプリント法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、は凸版印刷法などが挙げられる。中でも、好ましくは、インプリント法及びインクジェット法である。
【0092】
硬化性シリコーン組成物が塗布される基板としては、例えば、シリコン基板などの半導体基板等が挙げられる。パターン化は、無機成形体形成の目的に応じて多様に行うことができ、特に制限されない。回路ないし配線の形成が目的であれば、所要に回路形状、配線形状となるようなパターンで基板上に塗布すればよい。
【0093】
[非酸化性雰囲気での加熱]
本発明の方法では、上述のようにして得られたシリコーン系成形物を非酸化性雰囲気下、400〜1500℃において加熱する。その結果、シリコーン系成形物のマトリックス部分(即ち、硬化シリコーンの無機フィラー以外の部分)が無機セラミックス化する。シリコーン系成形物がパターン化硬化シリコーン層である場合にはパターン化無機成形体が得られる。
【0094】
この加熱の温度は600℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましい。また、該加熱の温度は1300℃以下が好ましく、1100℃以下がより好ましい。したがって、典型的には、600〜1300℃が好ましく、800〜1100℃がより好ましい。この加熱処理によりシリコーン中に存在する炭素−水素結合の開裂と水素の脱離が起こり、無機セラミック化が進行する。しかし、シリコーン成形物中のケイ素、炭素の脱離はほとんど起こらず、生成物中に保持される。
【0095】
上記の反応は第8族元素、例えば白金、パラジウム、ロジウム等が微量存在すると良好に進行する。第8族元素はシリコーン系成形物中に0.1〜5,000ppm存在することが好ましく、より好ましくは10〜2,000ppmであり、さらに好ましくは50〜1,000ppmである。この場合、例えば、出発材料である硬化性シリコーン組成物に第8族元素を所要量添加して置く。付加硬化型シリコーン組成物は通常白金族金属を触媒として含んでいる。第8族元素の不存在下では、600℃以上で加熱することが望ましい。
【0096】
加熱は非酸化性雰囲気下、好ましくは不活性ガス雰囲気下で行う。不活性ガスとしては、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられ、実用的には窒素ガスが好ましい。加熱処理の完了点は、例えば加熱生成物を600℃で1時間加熱しても重量減少が1重量%未満となった時である。
[無機成形体]
上記のように、シリコーン系成形物を非酸化性雰囲気下、400〜1500℃に加熱して得られる本発明の無機成形体は、無機セラミックスからなるマトリックスと該マトリックス中に分散した無機フィラーとからなる。マトリックスの部分は、典型的には、例えば、ケイ素、炭素および酸素を含んでなり、ケイ素、炭素および酸素の平均元素比が下記組成式(5):
SiCO (5)
(式中、vは0.5≦v≦3.0を満たす数であり、wは1.0≦w≦4.0を満たす数である。)
で表わされ、Si−O−Si結合からなるシロキサン骨格を有し、水素の質量分率が0〜1質量%である非晶質無機セラミック物質よりなると考えられる。
【実施例】
【0097】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。以下の記載において、Meはメチル基であり、Viはビニル基である。以下の実施例における実験は室温で行った。粘度は特記しない限り25℃における測定値である。
【0098】
[実施例1]
(A)一分子中にビニル基を含有する下式のジオルガノポリシロキサン:
【0099】
【化7】

【0100】
(式中、hは該シロキサンの25℃における粘度が600mPa・sとなるような数である。)90質量部、
(B−1)下記の式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:
【0101】
【化8】

【0102】
10質量部、
(B−2)白金−ジビニルテトラメリルジシロキサン錯体/トルエン溶液(白金元素含有量0.5質量%;ヒドロシリル化触媒) 0.15質量部、及び
(C)ヒュームドシリカ(信越化学工業(株)製、平均粒径2.0μm) 全組成物中で15体積%になる量
からなる付加硬化型シリコーンゴム組成物を調製するに当り、まず、上記の(A)、(B−1)及び(C)の各成分をプラネタリーミキサー(井上製作所(株)製混合機の登録商標)に投入し、室温にて一時間攪拌し、その後(B−2)成分を投入し、室温にて30分攪拌した。
【0103】
得られたシリコーンゴム組成物を、表面に幅100μmの凸凹の付いた深さ10mmの型に流し込み、空気中、125℃で1時間加熱し硬化させた。その結果、表面に100μmの凸凹の付いた厚み10mmのシート状シリコーン成形物を得た。
【0104】
次に、このシリコーンゴム成形物をアルミナボートに入れ横型管状炉内で、窒素ガス雰囲気下、100℃/hの昇温速度で昇温しながら10時間かけて1000℃まで加熱し、その後1000℃で1時間保持後、室温まで冷却した。こうして黒色の無機成形体を得た。この熱処理で損失した質量は20.6%であり、組成原子比はケイ素/炭素/酸素=1.0/1.2/1.6であった。また、SEM(走査電子顕微鏡)により表面を観察したところ、加熱処理前の形状と寸法を保持していた。
【0105】
[実施例2]
実施例1において、(C)ヒュームドシリカの代わりに(C’)アセチレンブラック(商品名:デンカブラック、電気化学工業(株)製)を全組成物中で15体積%となる量使用する以外は実施例1と同様にして、付加硬化型シリコーンゴム組成物を調製した。
【0106】
得られた該組成物を、1cm角の開口部を持つ厚み1mmのスクリーンマスクに流し込み、スキージでアルミナ基板上に転写した。その後、空気中、125℃で1時間加熱して、アルミナ基板上に1cm角で厚み1mmのシート状シリコーンゴム成形物を得た。このシリコーンゴム成形物の電気抵抗を測定したところ1kΩ/□であった。さらに、シリコーンゴム成形物を形成したアルミナ基板をアルミナボートに入れ、横型管状炉内で、窒素ガス雰囲気下、100℃/hの昇温速度で10時間加熱して温度を1000℃まで高め、その1000℃で1時間保持した後、室温まで冷却した。こうして、黒色の無機成形体を得た。この熱処理で損失した質量は15.6%であった。無機成形体の構成元素の組成は、炭素/ケイ素/酸素=2.1/1.0/1.0であった。無機成形体は1cm角の形状及び寸法を保持していた。またこの無機成形体の抵抗を測定したところ200Ω/□であった。
【0107】
[実施例3]
(C)成分としてヒュームドシリカの代りに不定形アルミナ(昭和電工(株)製、平均粒径1.7μm)を用いた以外は実施例1と同様にして黒色の無機成形体を得た。熱処理で損失した質量は19.8質量%であり、原子組成比はケイ素/炭素/酸素=1.0/1.3/1.6であった。また、SEMにより表面を観察したところ、表面の幅100μmの凸凹は加熱処理前の形状と寸法を保持していた。
【0108】
[比較例1]
横型管状炉内で加熱する際の雰囲気を空気雰囲気に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーン成形物を処理した。その結果、白色の無機物質を得た。この熱処理で損失した質量は44.6質量%であり、生成物の原子組成比はケイ素/炭素/酸素=1.0/0/1.9であった。また、加熱処理後の試料をピンセットで挟むことを試みたが簡単に壊れ、挟むことができなかった。また、非常に脆いためSEMによる観察用サンプルを作成することができなかった。
【0109】
[実施例4]
(D)下記の式で示される液状のオルガノポリシロキサン100質量部、
【0110】
【化9】

【0111】
(E)2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン 2質量部、
(F−1)2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド 1質量部、
(F−2)テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(メトキシシロキサンオリゴマー) 1質量部、
(G)下記の式で示されるチタンキレート化合物 0.1質量部、
【0112】
【化10】

【0113】
および、
実施例1において(C)成分として使用したものと同じヒュームドシリカを全組成物中で15体積%になるように混合して、紫外線硬化反応性シリコーンゴム組成物を得た。
【0114】
こうして調製した組成物を、表面に幅100μmの凸凹の付いた深さ10mmの型に流し込んだ。該組成物にメタルハライド水銀灯2灯(照度80W/cm2、エネルギー量400mJ/s)により紫外線を照射して硬化させた。その結果、表面に100μmの凸凹の付いた厚み10mmのシート状シリコーン成形物を得た。
【0115】
次に、こうして得られたシリコーン成形物を実施例1と同様にして窒素ガス雰囲気下で加熱処理し、黒色の無機成形体を得た。熱処理で損失した質量は22.2%であり、組成原子比はケイ素/炭索/酸素=1.0/1.3/1.7であった。また、SEMにより、表面を観察したところ、表面の幅100μmの凹凸は加熱処理前の形状と寸法を保持していた。
【0116】
[実施例5]
(H)下記の式:
【0117】
【化11】

【0118】
で示される両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100質量部
(I)チタンキレート触媒0.1質量部、および
(J)実施例1で(C)成分として使用したヒュームドシリカを全組成物中で15体積%になる量
混合して、縮合硬化反応型シリコーンゴム組成物を得た。
【0119】
こうして調製した組成物を、表面に幅100μmの凸凹の付いた深さ10mmの型に流し込んだ。該組成物を180℃で1時間加熱して硬化させた。その結果、表面に100μmの凸凹の付いた厚み10mmのシート状シリコーン成形物を得た。
【0120】
次に、こうして得られたシリコーン成形物を実施例1と同様にして窒素ガス雰囲気下で加熱処理し、黒色の無機成形体を得た。熱処理で損失した質量は20.2%であり、組成の原子比はケイ素/炭素/酸素=1.0/1.2/1.7であった。また、SEMにより、表面を観察したところ、表面の幅100μmの凹凸は加熱処理前の形状と寸法を保持していた。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の方法は、電気伝導度が高い導体を同時焼成できる低温焼結方法として利用でき、またエレクトロニクス実装技術に利用可能である。本発明の方法により形成されるパターン化無機成形体は、抵抗体、誘電体、又は導体として形成することができる。したがって、例えば、導電体回路、抵抗回路、誘電体回路等の作製に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状シリコーンからなるマトリックスと該マトリックス中に分散した無機フィラーとからなるシリコーン系成形物を、非酸化性雰囲気下、400〜1500℃において加熱することにより該固体状シリコーンを無機セラミックス化することを特徴とする、無機セラミックスからなるマトリックスと該マトリックス中に分散した無機フィラーとからなる無機成形体の製造方法。
【請求項2】
前記シリコーン系成形物が、無機フィラーを含有する硬化性シリコーン組成物を硬化させて得られたものである請求項1に係る無機成形体の製造方法。
【請求項3】
前記硬化性シリコーン組成物が加熱硬化型、光硬化型、又は縮合硬化型のシリコーン組成物である請求項2に係る無機成形体の製造方法。
【請求項4】
前記硬化性シリコーン組成物が加熱硬化型シリコーン組成物であって、該加熱硬化型シリコーン組成物が付加硬化型シリコーン組成物である請求項3に係る無機成形体の製造方法。
【請求項5】
前記硬化性シリコーン組成物が前記無機フィラーを、該組成物全体の1〜60体積%含有する、請求項2〜4のいずれか1項に係る無機成形体の製造方法。
【請求項6】
前記シリコーン系成形物が、無機フィラーを含有する液状硬化性シリコーン組成物を印刷により基板上に所要パターンで塗布してパターン化硬化性シリコーン組成物層を形成し、次に、該パターン化硬化性シリコーン組成物層を硬化させて得られたパターン化硬化シリコーン層である、請求項1〜5のいずれか1項に係る無機成形体の製造方法。
【請求項7】
前記の硬化性シリコーン組成物の印刷による基板上への塗布をインプリント法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、又は凸版印刷法により行うことを特徴とする請求項6に係る無機成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られる、無機セラミックスからなるマトリックスと該マトリックス中に分散した無機フィラーとからなる無機成形体。
【請求項9】
前記無機成形体が、基板上に形成されたパターン化無機成形体である、請求項8に係る無機成形体。

【公開番号】特開2008−81397(P2008−81397A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225788(P2007−225788)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】