説明

無機材料の製造方法

【課題】原料、エネルギー等の消費量が非常に少なく、多数の無機材料を短時間で効率よく合成することが可能な無機材料の製造方法であって、新規な機能性材料の探索のために多数の無機材料を製造する際に、組成の異なる試料を同時に製造する方法として適した方法を提供する。
【解決手段】下記の工程を含む無機材料の製造方法:
(i)それぞれ異なる種類の金属成分を含有する複数の原料溶液を用い、試料容器毎に定めた量となるように各原料溶液を2個以上の試料容器中に注入して、組成の異なる2種以上の試料溶液を調製する工程、
(ii)上記(i)工程で調製された試料溶液を採取し、試料溶液の種類ごとに、基板上の異なる位置に噴霧又は噴射する工程、
(iii)複数の試料溶液が噴霧又は噴射された基板を加熱して、該基板上で複数の無機材
料を形成する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機材料の製造方法、及び該方法における使用に適した無機材料製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、新規な組成の無機材料の合成方法としては、原料粉末を混合し、加圧成型後焼成する方法が一般的な方法である。しかしながら、この方法では、原料混合に手間と時間がかかり、焼成も一度ならず、焼成後粉砕、加圧成型を行い、その後再度熱処理を行う場合もある。このため、各種組成の無機材料を合成し、それぞれの特性を測定するためには、非常に長時間が必要である。
【0003】
現在、各種の用途に用いられる無機材料に求められる性能は、ますます高機能化、複雑化している。しかしながら、上記した無機材料の合成方法は非常に効率が悪く、この様な方法では、周期律表の全ての元素が構成元素となりうる無機材料の中から優れた機能を有する機能性材料を見出すことは極めて困難であり、新たな機能材料の発見は、偶然的な要素が多いという側面がある。
【0004】
しかも、一試料あたりに必要とされる原料重量は数グラムオーダーであり、新規な無機材料の探索過程で消費される地下資源やエネルギーは膨大なものとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、原料、エネルギー等の消費量が非常に少なく、多数の無機材料を短時間で効率よく合成することが可能な無機材料の製造方法であって、新規な機能性材料の探索のために多数の無機材料を製造する際に、組成の異なる試料を同時に製造する方法として適した方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その過程において、原料として金属成分を含有する溶液を用い、分注器等を用いて複数の試料容器中に異なる量の原料溶液を注入し、2種類以上の金属成分含有溶液について、この操作を繰り返し行って、異なる組成の複数の試料溶液を作製し、次いで、これらの試料溶液を基板上に特性測定に適した形状で塗布した後、焼成することによる無機材料の製造方法を見出した。この方法によれば、組成の異なる多数の無機材料を、非常に短時間で、しかも非常に少ない原料の使用量で合成することができ、新規な機能性無機材料の探索を非常に高効率化することが可能となる。しかしながら、この方法で試料溶液を塗布する場合には、形成される膜の厚さが不均一となりやすく、原料の種類によっては焼結性が劣る場合があるために、更に、製造方法の改良が望まれた。本発明者は、更に引き続き研究を重ねた結果、試料溶液を基板上に塗布する方法に代えて、試料溶液を基板上に噴霧又は噴射する方法を採用する場合には、試料溶液の均一性がより一層向上して焼結性が大きく改善され、試料溶液に含まれる金属の種類に関係なく、基板上に良好な酸化物の厚膜試料を形成でき、特性評価に適した試料が得られることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の無機材料の製造方法、及び無機材料製造装置を提供するものである。
1. 下記の工程を含む無機材料の製造方法:
(i)それぞれ異なる種類の金属成分を含有する複数の原料溶液を用い、試料容器毎に定めた量となるように各原料溶液を2個以上の試料容器中に注入して、組成の異なる2種以
上の試料溶液を調製する工程、
(ii)上記(i)工程で調製された試料溶液を採取し、試料溶液の種類ごとに、基板上の異なる位置に噴霧又は噴射する工程、
(iii)複数の試料溶液が噴霧又は噴射された基板を加熱して、該基板上で複数の無機材
料を形成する工程。
2.(i)複数の原料溶液用容器、
(ii)吸引機能及び排出機能を有するノズルと、ノズルの吸引位置及び排出位置を制御する機構と、溶液の採取量及び排出量を制御する機構とを備えた分注装置、
(iii)2個以上の試料容器、並びに
(iv)噴霧又は噴射機能を有するノズルと、ノズルの噴霧又は噴射位置を制御する機構と、ノズルの噴霧又は噴射量を制御する機構とを備えた噴霧又は噴射装置
を有する無機材料製造装置。
3. 噴霧又は噴射装置における噴霧又は噴射機能を有するノズルが、更に、吸引機能を有し、該噴霧又は噴射装置が、更に、ノズルの吸引位置と溶液の採取量を制御する機能を備えたものである上記項2に記載の無機材料製造装置。
4. 噴霧又は噴射装置が、噴霧又は噴射機能を有するノズルを、基板面と平行方向に移動できる機構を有するものである上記項2又は3に記載の無機材料製造装置。
5.(i)複数の原料溶液用容器、
(ii)吸引機能及び排出機能を有するノズルと、噴霧又は噴射機能を有するノズルとを交換可能なノズル取り付け部と、
ノズルの吸引位置、排出位置、及び噴霧又は噴射位置を制御する機構と、
溶液の採取量、排出量、及び噴霧又は噴射量を制御する機構
とを備えた分注、及び噴霧又は噴射装置、並びに
(iii)2個以上の試料容器
を有する無機材料製造装置。
6. 分注、及び噴霧又は噴射装置が、ノズル取り付け部に設置されたノズルを、基板面と平行方向に移動できる機構を有するものである上記項5に記載の無機材料製造装置。
7. 更に、無機材料形成用基板の設置部を備えた上記項2〜6のいずれかに記載の無機材料製造装置。
【0007】
以下、本発明の無機材料の製造方法について図1及び図2を参照しつつ説明する。
【0008】
図1は、本発明方法において、原料の採取及び試料溶液の調製に用いる装置を模式的に示す図面である。
【0009】
本発明方法では、原料としては、金属成分を含有する溶液を用いる。この溶液は、金属成分の種類毎に異なる溶液として用いるために、2種類以上の金属成分を含む新規な無機材料を合成するためには、2種類以上の原料溶液を用いることが必要である。
【0010】
金属成分を含有する化合物の種類については、特に限定はなく、使用する溶媒に可溶であって、後述する熱処理工程において分解して目的とする無機材料を合成できる化合物であればよい。また、溶媒の種類についても、限定はなく、金属成分を含有する化合物を溶解できる溶媒であればよいが、後述する工程で溶液試料を基板に塗布した際に、容易に乾燥できる点から、低沸点又は揮発性の有機溶媒が好ましい。尚、該有機溶媒としては、試料溶液を調整する工程では蒸発することなく、該試料溶液を基板に噴霧又は噴射した後に容易に蒸発する程度の適度な揮発性を有するものを適宜選択すればよい。
【0011】
溶液の濃度についても限定はないが、溶液の採取及び注入の容易さを考慮して、高粘度とならないような適当な濃度に調節することが好ましい。
【0012】
金属成分を含有する溶液は、溶液の種類毎に異なる原料容器1に入れ、採取に適した位置に適宜配置する。
【0013】
次いで、金属成分を含有する溶液の内の一種類を原料容器1から採取し、原料溶液とは別の位置に置かれた複数の試料容器2に順次注入する。原料溶液の注入量については、目的とする無機材料の組成に対応して、試料容器2毎に予め決定しておき、複数の試料容器2中にそれぞれ定められた量の原料溶液を順次注入する。
【0014】
原料溶液の採取及び注入には、例えば、吸収機能及び排出機能を有するノズル、即ち、吸引・排出ノズル3を備えた分注装置4を用いれば良い。分注装置4としては、ノズル3の吸引位置と排出位置を制御する機構と、溶液の採取量及び排出量を制御する機構を備えた装置を用いることが好ましい。これらの機構は、コンピューターを用いて自動制御することが好ましい。この様な分注装置としては、例えば、バイオ研究の分野において、試料を多数容器(ウェル)に分配するために用いられている分注器を利用することができる。
【0015】
次いで、上記した金属成分を含有する原料溶液の採取と注入の操作を、原料溶液毎に同様に繰り返し、複数の試料容器2中で目的とする無機材料に応じた組成の複数の試料溶液を作製する。
【0016】
この際、原料溶液の排出量及び排出速度を調整することによって、注入時に試料容器2中で溶液が自動的に混合され、試料溶液の攪拌混合操作を省略することができる。尚、分注装置4は、吸引・排出ノズル3を交換できる構造を有するものとすることが好ましい。この場合には、採取する溶液の種類を変更する毎に、ノズル3を交換することによって、ノズルの洗浄操作を省略することができる。分注装置4は、ノズル3の取り外し及び取り付けを自動的に行うことができる機構を有することが好ましい。
【0017】
上記した方法によれば、複数の試料容器2中において、異なる組成の複数の試料溶液を短時間で作製することができる。
【0018】
次いで、試料容器2から試料溶液を採取し、試料溶液の種類ごとに、基板上の異なる位置に噴霧又は噴射する。基板は、噴霧又は噴射の容易な位置に適宜設置すれば良い。本発明の装置では、必要に応じて、適切な位置に基板の設置部を設けておくことができる。
【0019】
試料溶液の噴霧方法としては、複数の細孔を有する噴霧ノズルを用いて、基板上の所定の位置に試料溶液を霧吹き状に吹き付ければよい。
【0020】
試料溶液を噴射する方法としては、例えば、バブルジェット方式と称されている、ノズルに熱を加えて、試料溶液内に気泡を作ることによって、試料溶液を射出する方法を採用できる。
【0021】
噴射又は噴霧に用いるノズルの先端部と基板表面との距離は、形成する試料形状や噴霧又は噴射圧力により適宜制御すればよいが、通常0.1〜10mm程度とすればよい。
【0022】
図2は、上記した方法で得られた試料溶液を基板上に噴霧するための装置6を模式的に示す図面である。
【0023】
試料溶液の噴霧操作は、噴霧機能を有する噴霧ノズル5を有し、該ノズルの噴霧位置を制御する機構と、溶液の噴霧量を制御する機構を備えた噴霧装置6を用いて行うことができる。この噴霧装置6によれば、所定の設置部に配置した基板7上を噴霧ノズル5を移動させて、基板7上の所定の位置に所定量の試料溶液を噴霧することができる。
【0024】
噴霧装置6への試料溶液に供給方法については特に限定的ではなく、各試料容器2からノズル上部まで配管して供給してもよい。或いは、噴霧ノズル5が、更に、吸引機能と、ノズルの吸引位置及び採取量を制御する機構とを備えている場合には、ノズル5によって試料容器2から試料溶液を吸引して採取することによって、噴霧装置に試料溶液を供給することができる。
【0025】
噴霧ノズル5としては、試料溶液を霧吹き状に基板上に噴霧できるように、先端部に複数の細孔を有するものを用いればよい。噴霧時の液滴の直径は、細孔サイズ、吹き出し時の圧力等によって制御することができる。細孔の形状、数、配置形態については噴霧により良質の厚膜試料が合成できるように適宜決めればよい。例えば、直径が1〜500μm程度、細孔数が3〜50個程度で細孔がノズル面全面に均等に分布したノズルを用いることができる。
【0026】
吹き出し時にかける圧力についても特に限定されないが、通常、ノズル面全面に対し0.1〜10MPa程度とすればよい。圧力を付加する方法については、特に限定はないが、例えば、コンプレッサー等を用いて加圧する方法等を採用することができる。合成する試料の形状は、上記ノズル面の大きさ、細孔径、数、配置、噴霧圧力、溶液量、噴霧時間等により制御できる。
【0027】
面積の大きい試料を製造するためには、噴霧装置6は、噴霧ノズル5を基板7の表面と平行方向に任意の位置に移動できる機構を有することが好ましい。この様な機構を有する噴霧装置6を用いる場合には、噴霧ノズル5から試料溶液を噴霧する際に、同時に基板7面上をノズル5を移動させ、更に、必要に応じて、粘着テープ、フォトレジスト等により基板表面にマスク処理を施すことによって、試料溶液を任意の形状で基板7上に噴霧することができる。
【0028】
この際、試料溶液の噴霧量及び基板面上を移動するノズルの移動速度を制御することによって、任意の面積の試料を作製できる。基板7上に噴霧する試料溶液の量、塗布形状などについては、目的とする特性の測定方法に応じて適宜決めればよく、その測定のために必要な最小限の噴霧量とすれば良い。基板上に形成される試料サイズについては、焼成後、評価する特性によっても異なるが、一般的に電気特性やX線回折測定のためには幅0.5〜10mm、長さ0.5〜10mm、厚さ1μm〜2mm程度でよい。この場合、試料溶液量は、1〜10μl程度という非常に少量とすることができる。
【0029】
次いで、試料容器2中のその他の溶液試料についても、基板上の噴霧位置のみを変更して、試料溶液の採取と基板7上への噴霧操作について上記方法と同様にして行う。この時隣り合った試料間で噴霧により溶液が混合しないように、試料間に十分な距離をとるか、或いは、粘着テープ、フォトレジストなどを用いて、あらかじめ基板上にマスク処理を施しておけばよい。
【0030】
この様にして、多数の試料溶液が噴霧された基板7を得ることができる。ノズル5は、試料溶液を変更する毎に洗浄漕中の適当な溶媒で洗浄してもよいが、試料毎に交換することによって、ノズルの洗浄を省略できる。
【0031】
試料溶液を基板上に噴射する方法を採用する場合には、噴霧ノズル6に代えて、噴射機能を有するノズルを用い、それ以外は、上記した噴霧装置6と同様の構造を有する噴射装置を用いることができる。
この場合、噴射機能を有するノズルとしては、例えば、バブルジェット方式のノズルを用いることができる。噴射機能を有するノズルを用いる場合には、噴霧ノズルを用いる場合
と比較して、簡単な方法によって、より微細で複雑な形状に試料溶液を塗布することができる。また、噴霧ノズルを用いる場合と比較して噴射時の圧力を高く設定することが可能であり、これによって、より密度の高い良質の無機材料膜を形成することができる。
【0032】
また、吸引機能及び排出機能を有する吸引・排出ノズル3と、噴霧又は噴射機能を有するノズル5との交換が可能なノズル取り付け部を有する装置を用いる場合には、分注装置と噴霧又は噴射装置として、別個の装置を用いることなく、同一の装置を用いて、ノズルのみを交換して試料溶液の調製工程と噴霧又は噴射工程を行うことができる。
【0033】
基板7の種類については特に限定的ではないが、熱処理時に変質することがなく、且つ最終的に得られる無機材料の特性測定に影響を及ぼすことのない材質のセラミックス材料等を用いればよい。
【0034】
次いで、試料溶液を塗布した基板を加熱することによって、目的とする無機材料を合成する。熱処理の条件については、目的とする無機材料の種類に応じて変わり得るが、各種の複合酸化物を合成する場合には、例えば、大気雰囲気中で400〜1200℃程度で1〜8時間程度加熱すればよい。
【0035】
上記した無機材料の製造方法によれば、金属成分を含有する溶液原料を用いることによって、原料金属はイオンサイズで混合され、焼成による反応速度も固体粉末を用いた場合と比べて格段に速くなる。また、溶液原料は、原料の精密秤量の自動化に適しており、分注装置を用いて所定量の試料を複数の試料容器に精密に分配することによって、短時間で多数の異なる組成比を有する混合溶液を調製することができる。
【0036】
本発明方法による同一基板上に多数の無機材料を合成する方法では、電気伝導度等の特性値の測定のために必要となる溶液試料の噴霧又は噴射量は非常に少量で良く、原料の消費量を大きく低減できる。また、同一の基板上に噴霧又は噴射した少量の溶液試料を同時に焼成して目的とする無機材料を製造するので、焼成に要するエネルギー消費も非常に少なくなる。
【0037】
特に、本発明方法では、試料溶液を基板上に噴霧又は噴射する方法を採用しているので、試料溶液に含まれる金属成分の均一性が良く、金属の種類に関係なく良好な無機材料を形成できる。また、噴霧又は噴射法によれば、厚さが均一で表面も平滑であって、焼結性も良い厚膜試料が製造できるため、より効率よく特性評価をすることが可能となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、原料やエネルギーの消費が非常に少なく、非常に短時間で多数の無機材料を合成することができ、合成後の特性評価に適当な形状の試料を簡単に作製できる。
【0039】
従って、本発明方法で無機材料を製造することにより、機能性無機材料の探索を非常に高効率化することができる。しかも本発明方法は、地球環境に優しい斬新な無機材料の製造方法といえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
【0041】
実施例1
図1に示した分注装置と図2に示した噴霧装置を用いて、下記の方法で無機材料を製造した。
【0042】
原料とする金属成分としては、Ca、Bi、Coを選択し、これらの各金属成分毎に、それぞれの硝酸塩を蒸留水に溶解した3種類の溶液を原料溶液として用いた。
【0043】
これらの原料溶液を原料容器1に入れて所定の位置に配置し、分注装置4を用いて、上記の各金属のモル比が0〜10の範囲で、比の重複がないようにコンピュータ制御によって精密に原料溶液を採取し、試料容器2に自動注入した。この際、原料溶液の種類を変更する毎に、ノズル3を交換した。この様にして、96種類の試料溶液を作製した。混合後の一試料の溶液量は200μlとした。96種類の試料溶液の作製に要した時間は15分という短時間であった。
【0044】
次いで、噴霧装置6を用いて、これらの試料容器2から、各試料溶液をノズル5で自動精密吸引し、アルミナ基板7上に帯状に噴霧した。この際、試料溶液の種類を変更する毎に、ノズル5を交換した。本実施例では電気特性測定用試料の合成を目的としているため、一試料あたりの噴霧量を5μlとして、長さ1cm、幅2mmで試料溶液を噴霧した。この時も、噴霧する試料形状、噴霧量、噴霧位置はコンピューターにより自動精密制御した。この様にして、アルミナ基板7上の異なる位置に、96種類の試料溶液を長さ1cm、幅2mmの帯状に噴霧した。この場合、ノズル面と基板表面との距離は2mmとした。96種類の試料溶液の噴霧に要した時間は1時間以内であった。
【0045】
噴霧時、試料溶液の広がりを抑えるため、アルミナ基板を加熱し、噴霧後有機溶媒が直ちに蒸発するようにした。
【0046】
次いで、アルミナ基板を850℃で5時間加熱することによって、該基板上で96種類の複合酸化物を合成した。
【0047】
複合酸化物の合成後、四探針法により電気導電性を測定した。96種類の試料の測定に要した時間は約5分という短時間であり、精密な抵抗率を得ることができた。その結果、五つの導電物質を見出すことができ、無機材料の探索が非常に高効率化された。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】原料溶液の採取及び試料溶液の調製に用いる分注装置を模式的に示す図面。
【図2】試料溶液を基板上に噴霧するための装置を模式的に示す図面。
【符号の説明】
【0049】
1 原料容器、 2 試料容器、 3 吸引・排出ノズル、 4 分注装置、 5 噴霧ノズル、 6 噴霧装置、 7 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含む無機材料の製造方法:
(i)それぞれ異なる種類の金属成分を含有する複数の原料溶液を用い、試料容器毎に定めた量となるように各原料溶液を2個以上の試料容器中に注入して、組成の異なる2種以上の試料溶液を調製する工程、
(ii)上記(i)工程で調製された試料溶液を採取し、試料溶液の種類ごとに、基板上の異なる位置に噴霧又は噴射する工程、
(iii)複数の試料溶液が噴霧又は噴射された基板を加熱して、該基板上で複数の無機材
料を形成する工程。
【請求項2】
(i)複数の原料溶液用容器、
(ii)吸引機能及び排出機能を有するノズルと、ノズルの吸引位置及び排出位置を制御する機構と、溶液の採取量及び排出量を制御する機構とを備えた分注装置、
(iii)2個以上の試料容器、並びに
(iv)噴霧又は噴射機能を有するノズルと、ノズルの噴霧又は噴射位置を制御する機構と、ノズルの噴霧又は噴射量を制御する機構とを備えた噴霧又は噴射装置
を有する無機材料製造装置。
【請求項3】
噴霧又は噴射装置における噴霧又は噴射機能を有するノズルが、更に、吸引機能を有し、該噴霧又は噴射装置が、更に、ノズルの吸引位置と溶液の採取量を制御する機能を備えたものである請求項2に記載の無機材料製造装置。
【請求項4】
噴霧又は噴射装置が、噴霧又は噴射機能を有するノズルを、基板面と平行方向に移動できる機構を有するものである請求項2又は3に記載の無機材料製造装置。
【請求項5】
(i)複数の原料溶液用容器、
(ii)吸引機能及び排出機能を有するノズルと、噴霧又は噴射機能を有するノズルとを交換可能なノズル取り付け部と、
ノズルの吸引位置、排出位置、及び噴霧又は噴射位置を制御する機構と、
溶液の採取量、排出量、及び噴霧又は噴射量を制御する機構
とを備えた分注、及び噴霧又は噴射装置、並びに
(iii)2個以上の試料容器
を有する無機材料製造装置。
【請求項6】
分注、及び噴霧又は噴射装置が、ノズル取り付け部に設置されたノズルを、基板面と平行方向に移動できる機構を有するものである請求項5に記載の無機材料製造装置。
【請求項7】
更に、無機材料形成用基板の設置部を備えた請求項2〜6のいずれかに記載の無機材料製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−81983(P2006−81983A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267665(P2004−267665)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】