無機材料分散ポリマーにおける無機材料抽出方法、複合体の製造方法、ポリマー成形体、及び反射板
【課題】 ポリマー表面に無電解メッキ皮膜を形成する際、メッキ膜の密着性を確保するために、例えば、酸化剤を用いたエッチング等の環境負荷の大きい前処理を行い、表面を粗化する必要がある。また、脱脂、洗浄等の工程が必要となるため、製造時間、コストにも影響する。
【解決手段】 酸に溶解する無機材料が分散したポリマーに高圧二酸化炭素を含む流体を接触させることにより、無機材料がポリマー表面より抽出され、ポリマー表面近傍に多数のアンカー状の孔が開く。このアンカー状の孔にメッキ金属がくい込んで強固に付着し、ポリマーとメッキ界面の接触面積が大きくなるので、密着性良好なメッキ面が得られる。
【解決手段】 酸に溶解する無機材料が分散したポリマーに高圧二酸化炭素を含む流体を接触させることにより、無機材料がポリマー表面より抽出され、ポリマー表面近傍に多数のアンカー状の孔が開く。このアンカー状の孔にメッキ金属がくい込んで強固に付着し、ポリマーとメッキ界面の接触面積が大きくなるので、密着性良好なメッキ面が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー表面に分散された無機材料を抽出する方法、該方法を含む複合体の製造方法、並びに該方法により成形されたポリマー成形体、及び反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリマー部材(ポリマー成形品)の表面に安価に金属膜を形成する方法としては、無電解メッキ法が知られている。無電解メッキ法では、メッキ膜の密着性を確保するために、無電解メッキの前処理としてポリマー部材表面を六価クロム酸や過マンガン酸等の酸化剤を用いてエッチングを行い、ポリマー部材の表面を粗化する。
【0003】
例えば特許文献1では、10μm以下の炭酸カルシウム粒子を樹脂に混入して成形し、そのポリマー表面近傍の炭酸カルシウム粒子を通常の湿式メッキプロセスであるクロム酸エッチング処理を施すことにより、炭酸カルシウムを選択的にエッチングしてアンカー効果をもたらし、高い密着力を有する無電解メッキ皮膜を形成する方法が開示されている。
【0004】
また、このようなエッチング液で浸食されるポリマー、即ち無電解メッキが適用可能なポリマーとしては、ABS等のポリマーに限定されていた。これは、ABSにはブタジエンゴム成分が含まれており、この成分がエッチング液に選択的に浸食され表面に凹凸(アンカー)が形成されるのに対し、他のポリマーではこのようなエッチング液に選択的に酸化される成分が少なく、表面に凹凸が形成され難いためである。それゆえ、ABS以外のポリマーであるポリカーボネート等では、無電解メッキを可能にするためにABSやエラストマーを混合してアロイ化しており、一部はメッキグレードとして市販されている。しかしながら、そのようなメッキグレードのポリマーでは、主材料の耐熱性が低下する等の物性の劣化は避けられず、耐熱性が要求される成形品に適用することは困難であった。
【0005】
一方、例えば特許文献2や特許文献3においては、LED等の電気・電子部品、あるいは照明関係で使われる、可視領域から紫外領域における高反射率を有する反射板として、樹脂発泡体が開示されており、一部製品化されている。その他、高発泡倍率化、高耐熱発泡成形体の製造、サブミクロンオーダーの微細発泡の安定供給等を目的とするいくつかの発泡成形に関する報告がある。
【0006】
【特許文献1】特開平5−59587号公報
【特許文献2】特開2006−146123号公報
【特許文献3】特開2003−145657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の無電解メッキ皮膜を形成する方法では、炭酸カルシウム粒子を選択的にエッチングするために、環境負荷の大きい前処理を行う必要がある。また、脱脂、洗浄等の工程が必要となるため、製造時間、コストにも影響する。
【0008】
また、欧州では、電気・電子製品に含まれる特定有害物質を規制すRoHS(Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electric equipment)指令が制定されている。このため、材料・部品供給メーカーは、2006年7月1日以降欧州市場に投入される新しい電気・電子機器に、六価クロム等が含まれていないことを保証しなければならない。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、無機材料フィラーが分散されたポリマーに対して、短時間、低コスト、低環境負荷の方法によってポリマー表面の表面平滑性を損なうことなく無機材料を抽出する方法を提供することを目的とする。また、従来の発泡成形体で形成された発泡セルから無機材料を抽出してできた孔を利用して、光(400〜700nmの主に可視光領域)を拡散反射させることにより、高反射率、高耐熱を有する反射板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に従えば、酸に溶解する無機材料が分散したポリマーに高圧二酸化炭素を含む流体を接触させ、前記無機材料をポリマー表面より抽出することを特徴とするポリマー中の無機材料抽出方法が提供される。
【0011】
なお、本明細書において「高圧二酸化炭素」とは、超臨界状態の二酸化炭素のみならず、高圧の液体二酸化炭素及び高圧の二酸化炭素ガスを意味する。
【0012】
一般的にポリマー材料においては、用途に合わせて、強度補強等ポリマー単独では得られない高い力学特性を得るため、またはポリマーにはない様々な機能を付与することを目的として、様々なフィラー材料がポリマー中に添加され用いられる。本発明においては、フィラー材料として一般的に使用されており、酸性の液体に対して容易に溶解され得る無機材料、例えば炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、水酸化カリウム、メタケイ酸カリウム、炭酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、炭酸亜鉛、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化鉄、塩化鉄、酸化鉄、水酸化鉄、フッ化銅、塩化銅、酸化銅、水酸化銅、フッ化マンガン、塩化マンガン、水酸化マンガン、炭酸マンガン、酸化マンガン、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、銅等のミネラル成分を用いることが望ましい。つまり、高圧二酸化炭素に溶解する無機材料であることが望ましい。
【0013】
ポリマーの表面近傍に偏在するミネラル成分は、酸性を示す液体に対し溶解され、ポリマー表面近傍に多数のアンカー状の孔が開く。その後のメッキ工程において、そのポリマー表面にできた多数のアンカーの孔にはメッキ金属がくい込んで強固に付着し、さらにはポリマーとメッキ界面の接触表面積が大きくなることから、密着性良好なメッキ面が得られる。
【0014】
本発明の抽出方法では、まず、前記無機材料が分散されたポリマー材料を射出成形等により用意する。無機材料は少なくとも1μm以下の粒子が、より望ましくは100nm以下の粒子がポリマーの表面近傍に均一に分散されていることが望ましい。無機材料が抽出されることにより、それに応じたサイズの微細孔が形成される。すなわち、プラスチックの表面近傍にサブミクロンオーダーサイズの、あるいはナノオーダーサイズの微細な凹凸(アンカー)を形成することができる。したがって、本発明により無機材料が抽出されたポリマーの表面には、平滑な金属膜を形成することができる。
【0015】
ここで、ナノオーダーサイズの無機材料をポリマー表面近傍に分散させる方法としては、物理混合による方法と化学反応による方法とが考えられる。しかし、物理混合による方法では、無機材料が二次凝集することは避けられないため、例えば特開2004−27171号公報に記載されているように、化学反応によりポリマーに無機材料をナノコンポジット化する方法が好ましい。
【0016】
前記本発明の無機材料抽出方法により得られたポリマー表面に無電解メッキ等で金属膜を形成すると、ポリマーの表面に形成された無数の微細凹凸におけるアンカー効果やそれによる接着表面積の拡大により、密着性の優れた金属膜を形成することができる。また、本発明の無機材料抽出方法によりポリマーの表面に形成されたアンカー状の孔は、上述のように、サブミクロンオーダーからナノオーダーのサイズであるので、本発明の抽出方法により得られたポリマーの表面に金属膜を形成する場合、非常に平滑性の優れた(表面粗化が抑制された)金属膜を形成することができる。
【0017】
本発明のポリマー中の無機材料抽出方法では、従来のように六価クロム酸や過マンガン酸等環境負荷の高い酸化剤を使用するのではなく、環境負荷の少ない水溶液を抽出流体として用い得る。その抽出流体には、高圧二酸化炭素が含まれる。
【0018】
本発明者らが鋭意検討した結果、高圧二酸化炭素は、圧力が高く密度が高くなると、浸透性の高い酸性溶媒となり、ポリマー内にあらかじめ分散された酸に溶解する無機材料を溶解、抽出する能力を有することが判明した。抽出能力を維持するため、高圧二酸化炭素の圧力は3MPa以上が望ましく、高圧容器の負担が増大するため25MPa以下が望ましい。また、高圧二酸化炭素の温度は、密度が高くなると液体に近くなる観点からは低いほうが望ましいが、水、水系溶媒、アルコール等、高圧二酸化炭素に混合させる溶媒の分子運動を活発にさせる観点からは高いほうが望ましい。望ましくは10℃から150℃の温度の範囲である。また、表面張力が低く密度が高くなるという観点から、より望ましくは温度31℃以上、圧力7.38MPa以上の超臨界二酸化炭素が望ましい。
【0019】
さらに、本発明者らの検討によれば、水と高圧二酸化炭素、特に超臨界二酸化炭素とを組み合わせることにより、より強い酸化力、即ち無機材料を溶解する溶解性が得られることが判明している。抽出流体として超臨界二酸化炭素と水の混合溶液を用いると、ポリマー表面近傍の前記無機材料が一層溶解して抽出され易くなることが分かった。
【0020】
また、抽出流体としてさらにアルコールを含むことが好ましい。本来、二酸化炭素は無極性を示し、水は極性を示すため、高圧二酸化炭素と水は相溶しにくい。一方、アルコールは高圧二酸化炭素とも水とも相溶し易いことから、前記無機材料の抽出効果がさらに高まる。
【0021】
なお、本発明に用い得るアルコールの種類は任意であり、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘプタノール、エチレングリコール等を用いることができるが、本実験ではエタノールを使用した。また、抽出温度が高い場合は、アルコールが常圧に戻した際に沸騰し混合溶媒が安定しない恐れがあることから、高沸点のアルコールを使用することが望ましい。
【0022】
また、アルコールは水と比較し表面張力が小さいので、アルコールを加えた抽出流体の表面張力は著しく低下する。そのため、ポリマー部材の自由体積(内部)に、抽出流体が一層浸透し易くなり、抽出能力が向上することが考えられる。
【0023】
本発明の抽出流体には、界面活性剤を含んでもよい。これにより、高圧二酸化炭素と水溶液との相溶性を向上させ、エマルジョンの形成を助長することができる。また、界面活性剤には表面張力を下げる働きがあるため、ポリマー部材に抽出流体が浸透し易くなり、抽出能力が向上する。
【0024】
界面活性剤としては、公知の、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、両性イオン性界面活性剤のうち、少なくも1種類以上を選択して用いることが望ましい。特に、超臨界二酸化炭素と水とのエマルジョンを形成するのに有効であると確認されている各種界面活性剤を用いることが望ましい。例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)−ポリプロピレン
オキシド(PPO)のブロックコポリマー、アンモニウムカルボキシレートパーフルオロポリエーテル(PFPE)、PEO−ポリブチレンオキシド(PBO)のブロックコポリマー、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル等を用いることができる。
【0025】
本発明においては、前記無機材料抽出流体には、メッキ液を含んでも良い。中性から酸性のメッキ液を高圧二酸化炭素と混合するとpHがより低下する。そして、ポリマーに接触させることで、酸化力および浸透性の高い高圧流体が酸に可溶な無機材料をポリマー表面より容易に抽出する。本発明において用いるメッキ液の種類は、アルカリ性で安定な液でなければ任意であるが、pH3〜6の範囲で用いることのできるニッケル-リン無電解メッキ液が望ましい。後述するように、ポリマー表面より無機材料を抽出した後、引き続き、該抽出により形成された微細孔内部に無電解メッキ膜を形成できるからである。高圧二酸化炭素との相溶性を高めるため、無電解メッキ液には界面活性剤およびアルコールの少なくともいずれかが含まれることが望ましい。
【0026】
本発明により、前記無機材料が抽出され表面のみが多孔化したポリマー材においては、多孔化した表面上に無電解メッキ、電解メッキ、蒸着、スパッタ等により金属膜を形成することができる。ポリマー表面における微細孔による凹凸を反映した金属膜が形成されるので、物理的アンカー効果により、ポリマーと金属膜の高い密着性が得られる。金属膜を形成する方法としては、水系溶液に浸漬させることで、ポリマー多孔部内部の複雑形状に金属膜を形成することができるので無電解メッキ法が望ましい。本発明において、無電解メッキ法については任意であるが、例えば従来法におけるエッチングプロセス以降の方法を用いることができる。触媒付与、触媒活性の各処理を施すことでCu、Pd、Ni−P、Ag、Au等の無電解メッキ膜を形成することができる。
【0027】
無機材料抽出流体にメッキ液を含んだ場合には、前記酸に溶解する無機材料の分散したポリマーには、表面近傍内部に無電解メッキの触媒核として機能する金属微粒子を分散させておくのが有利である。これにより、前記方法にて無機材料をポリマー表面より抽出し除去した際には、内部に偏析した金属微粒子が露出しメッキ液に接触するので、直接無電解メッキ膜を形成することができる。金属微粒子の表面近傍への偏析方法は任意であるが、たとえば、射出成形における溶融樹脂のフローフロント部に金属錯体等、金属微粒子の溶解した高圧二酸化炭素を接触させることで、射出充填時のファウンテンフロー効果により、表面近傍に金属微粒子を偏析させることができる。
【0028】
本発明において、内部に無電解メッキの触媒核となる金属微粒子が分散したポリマーは、最表面における無電解メッキの触媒活性が低いことが望ましい。最表面における金属微粒子の濃度が、メッキが反応するために十分であると、ポリマー最表面にてメッキ反応が集中して起きる。そのため、ポリマー内部に形成された多孔質部でメッキが成長しにくくなり、無電解メッキ膜とポリマーの密着性が低くなる恐れがある。特に、メッキ液が含まれる高圧二酸化炭素の流体を用いて、ポリマー表面より無機材料を抽出する場合、最表面における金属微粒子の濃度が低いことは、以下の理由で好適である。最表面における金属微粒子の濃度が低いと、メッキが反応する温度で無電解メッキ液と高圧二酸化炭素の混合流体によりポリマー表面に接触させた場合、第一のステップとして無機材料の溶解、抽出反応が起きる。次いで、メッキ液がポリマー内部に浸透していき、メッキ反応に十分な量の金属微粒子触媒に接触する。そこで第二のステップとして、ポリマー内部よりメッキ成長がおきる。つまり、一度の操作でポリマー表面より無機材料の溶解および抽出、さらにメッキ反応を同時に行うことが可能となる。
【0029】
本発明において、表面における濃度が低く、かつ内部に金属微粒子が浸透したポリマーの形成方法は任意であるが、たとえば、成形機のフローフロント部に、高圧二酸化炭素に溶解した金属錯体等の金属微粒子を浸透させた後の滞留時間を長くすることで得ることができる。これにより、熱可塑性シリンダー内部で、金属錯体が熱分解することで二酸化炭素に不溶な金属微粒子となり凝集し、該金属微粒子の比重は重くなるため、射出充填時のファウンテンフロー現象により最表面に偏析しにくくなる。
【0030】
本発明において、酸に溶解する無機材料の分散したポリマーの種類としては任意であり、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂を用いることができる。特に、熱可塑性樹脂で形成したポリマー部材を用いることが望ましい。熱可塑性樹脂の種類は任意であり、非晶性、結晶性いずれでも適用できる。例えば、ポリエステル系等の合成繊維、ポリプロピレン、ポリアミド系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ABS系樹脂、ポリアミドイミド、ポリフタルアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリ乳酸等の生分解性プラスチック、ナイロン樹脂等及びそれら複合材料を用いることできる。
【0031】
本発明においては、ポリマーとして特にポリフェニレンサルファイドを用いることが望ましい。ポリフェニレンサルファイドは耐熱温度が200℃以上であるスーパーエンプラである。結晶性材料でありながら、射出成形における寸法精度に優れる。高強度で電気特性にも優れるため電子機器の電気回路部品に好適な材料であるが、耐薬品性に優れるため化学薬品でエッチングされにくい。そのため、従来法においては、無電解メッキ膜の形成が困難である。本発明によれば、前記材料表面を大きく粗化することなく、環境負荷の低い方法で微細孔を形成できるので、平滑な無電解メッキ膜の形成が容易となる。そのため、自動車のヘッドライトリフレクター等、平滑性と耐熱性が要求される金属膜を有する成形体への適用が可能となる。
【0032】
本発明においては、酸に溶解する無機材料を前記方法で溶解および抽出することで、成形品の表面近傍に少なくとも平均孔径が50μm以下、望ましくは10μm以下の空隙が形成され、該表面近傍を断面観察した際の空隙率が50%以上99%以下である多孔体を形成することを特徴とする。それにより、光学特性的には乱反射により表面反射性に優れ、電気特性的には誘電率の低いポリマー成形体を得ることができる。特に表面近傍のみを多孔化することで、成形品のマクロ的な機械的強度を維持した状態で高機能化できる。
【0033】
本発明においては、表面の空隙率が大きく微細孔を有するポリマー成形体を得るために、表面近傍に発泡体を有する成形体を用いることが望ましい。特に、高圧二酸化炭素等の高圧流体を物理発泡剤として用いた発泡成形法により表面に発泡体を得ることが望ましい。
【0034】
表面近傍のみに発泡体を形成する方法としては、たとえば、液体二酸化炭素等や超臨界窒素等の高圧流体を成形機のフローフロント部に浸透させ高温高圧にするステップ、次いで溶融ポリマーおよび超臨界二酸化炭素等の高圧流体を高圧状態に保持し相溶させるステップ、さらに高速度の射出速度で金型内に射出充填するステップによる射出成形方法を採用できる。
【0035】
それにより、金型内における急減圧により、樹脂に相溶していた窒素や二酸化炭素が、ガス化し発泡セルを形成する。同時にポリマーが冷却固化するので、表面近傍のみに微細な発泡セルを得ることができる。さらに、冷却前の射出充填直後に金型を開く(コアバック)方法で、ポリマーの内圧をさらに減圧し発泡体の形成を助長してもよい。
【0036】
また、成形体表面の平滑性を維持するために、射出充填前の金型内に二酸化炭素等のガスをカウンタープレッシャーとして導入してもよい。
【0037】
本発明においては、発泡セルを成長させるための発泡核を形成させる助剤を、高圧二酸化炭素に溶解させてフローフロント部に浸透させることができる。表面近傍のポリマー内部に発泡核となる金属微粒子等を浸透させることで、発泡セル数が多くなり、微細化する。
【0038】
これら表面近傍に発泡体の形成された成形体を射出成形した後、無機材料を抽出することで微細孔を多くし、連結多孔体にすることもできる。
【発明の効果】
【0039】
本発明のポリマー中の無機材料抽出方法によれば、低環境負荷の方法によってポリマー表面の表面平滑性を損なうことなく、無機材料を抽出することができる。これにより、ポリマー表面に高密度に微細な孔を形成することができ、それをアンカーとして、高い密着性を有するメッキ膜を形成することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施例、及び比較例について説明する。
【実施例1】
【0041】
本実施例では、抽出流体として、超臨界二酸化炭素と水の混合液を使用し、バッチ処理によりポリマー部材表面近傍に偏在した無機材料を抽出した。
【0042】
本実施例のポリマー部材は、酸に溶解する無機材料としてミネラルである炭酸カルシウムフィラーが分散しているポリフェニレンサルファイド(PPS)(縦30mm×横70mm×厚さ2mm、大日本インキ化学工業株式会社製)を使用した。また、炭酸カルシウムの粒径は断面SEMで分析の結果、1〜3μm程度であった。
【0043】
本実施例で用いた抽出装置の概略構成について図1を参照して説明する。抽出装置100は、主に、二酸化炭素ボンベ21、フィルタ26、高圧シリンジポンプ20、高圧容器1から構成されており、これらの構成要素は配管27により接続されている。また、図1に示すように、各構成要素間を繋ぐ配管27には、高圧二酸化炭素の流動を制御するための主導バルブ22〜24が所定の位置に設けられている。
【0044】
高圧容器1は、図1に示すように、容器本体2と、蓋3と、容器本体2の内部に収容される内部容器9とからなる。蓋部3には、公知のバネが内蔵されたポリイミド製シール4が設けられており、ポリイミド製シール4により、高圧容器1内部に高圧ガスを密閉する。一方、容器本体2内の底部には、抽出流体8を攪拌するためのマグネチックスターラー6が設けられている。また、容器本体2は、温調流路7を有しており、温調機(不図示)により温度制御された温調水をこの温調流路7内に流すことにより、高圧容器1の温度が調整される。本実施例では、容器本体2の温度を30℃から150℃の範囲の任意の温度に制御した。また、容器本体2の側壁部には、図1に示すように、高圧二酸化炭素の導入口25を設けた。そして、この例の抽出装置100では、金属製の容器本体2の内部に収容可能なPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製の内部容器9を用い、この内部容器9内でポリマー部材102の表面近傍に偏在する無機材料を抽出した。
【0045】
内部容器9は、図1に示すように、抽出流体8及びポリマー部材102が収容される容器本体部9aと、蓋部9bとからなる。容器本体部9aには、保持部材5が設置され、その保持部材5にポリマー部材102が抽出流体8に完全に浸漬する状態で吊るして固定される。また、容器本体部9a内の底部には、抽出流体8を攪拌するためのマグネチックスターラー6が設けられている。また、容器本体部9aの上端付近の外壁にはネジ溝が形成されており、蓋部9b内壁には容器本体部9aの上端の外壁に設けられたネジ溝と勘合するネジ溝が形成されている。そして、容器本体部9aのネジ溝と蓋部9bのネジ溝とを勘合させることにより、内部容器9を閉める構造になっている。
【0046】
本実施例では、高圧容器1の形成材料としてSUS316Lを用いた。なお、高圧容器1の形成材料としては、腐食されにくい材質を用いることが望ましく、その他SUS316、SUS304、インコネル、ハステロイ、チタン等を用いることができる。また、本実施例では、高圧容器1の内部に50%硝酸を浸漬させ不動態化処理(パシベート処理)した後、さらに内壁面に腐食防止膜として、PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)膜を形成した。なお、非メッキ成長膜としてはPEEK(ポリエチルエーテルケトン)等を用いることもできる。
【0047】
なお、本実施例で用いたメッキ装置100のシリンジポンプ20では、手動バルブ22、23を開いた状態で圧力一定制御することにより、高圧容器1内部の温度および高圧二酸化炭素の密度が変化した際にも、圧力変動を吸収することができ、それにより、高圧容器1内部の圧力を安定に保持することができる構造になっている
【0048】
次に、無機材料抽出方法について説明する。本実施例では、水100mlに超臨界二酸化炭素を混合することにより、抽出流体8を調製した。ポリマー部材102を、図1に示した保持部材5に装着した後、ポリマー部材102を容器本体部9a内に挿入して蓋部9bを閉めた。なお、この際、図1に示したように、100mlの水に完全に浸漬した状態でポリマー部材102が吊るされた状態となる。そして、常温でこの状態を保持した(図3中のステップS11)。
【0049】
次いで、予め80℃に温調しておいた高圧容器1内に、内部容器9を挿入して、蓋3を閉めた(図3中のステップS12)。そして直ちに、次のようにして超臨界二酸化炭素を導入口25を介して高圧容器1内に導入した。まず、液体二酸化炭素ボンベ21より取り出した液体二酸化炭素を、フィルター26を介して高圧シリンジポンプ20で吸い上げ、次いで、ポンプ内で15MPaに昇圧にした。温度は10℃とし液体二酸化炭素とした。次いで、手動バルブ22,23を開いて15MPaの液体二酸化炭素を導入口25を介して高圧容器1内部に導入した。高温度の容器に接触させることにより、液体二酸化炭素を超臨界状態の二酸化炭素とした。
【0050】
この際、内部容器9の容器本体部9aと蓋部9bは、上述のようにネジで勘合されるが、その状態においても、超臨界二酸化炭素は、粘度が低く拡散性が高いので、内部容器9のネジで勘合されている部分のわずかの隙間から内部容器9の内部に充分に導入される。その後、マグネチックスターラー6で攪拌することにより、水と超臨界二酸化炭素を混合して抽出流体8とし、抽出流体8をポリマー部材102と接触させた(図3中のステップS13)。そして、30分間この状態を保持した。
【0051】
この際、導入された超臨界二酸化炭素により、ポリマー部材102の表面は膨潤し、また、超臨界二酸化炭素と水の混合液である抽出流体8は酸性を示すと共に、表面張力が低くなっているので、ポリマー内部に浸透し、その結果、ポリマー表面近傍に偏在する炭酸カルシウムが抽出された(図3中のステップS14)。ポリマー成形品102の一部の模式断面図を図2に示した。ポリマー(ポリフェニレンサルファイド)102中には炭酸カルシウム103が偏在しており、表面近傍102aには炭酸カルシウム103が抽出されることにより表面から連続した空隙104が形成されていることが確認された。なお、図2においては、炭酸カルシウム103がポリマーの表面近傍102aから抽出される様子を説明するため、ポリマーの断面を便宜的に表面近傍102aと内部102bとに区別して表現しているが、実際はポリマー102が3層に区分されているわけではない。
【0052】
次に、上述した抽出処理後、超臨界二酸化炭素を高圧容器1から排気し、内部容器9を高圧容器1から取り出し、次いで、内部容器9からポリマー部材102を取り出した。
【0053】
次いで、抽出後のポリマー部材102を光学顕微鏡観察(倍率1000倍)にてポリマーの表面状態を確認した。また、原子間力顕微鏡(AFM)により表面状態と表面粗さを確認した。その結果、光学顕微鏡像、AFM像からポリマー表面の抽出が確認され、また表面粗さが抽出前のRa=30nmからRa=70nmになっていることが確認された。断面をFIBにて切断しSEMにて観察したところ、内部にも孔が形成されたことが確認された。
【実施例2】
【0054】
本実施例では、抽出流体8として、超臨界二酸化炭素、水及びアルコールの混合液を使用し、バッチ処理においてポリマー部材の無機材料を抽出した。
【0055】
本実施例においては、抽出流体8として超臨界二酸化炭素、水、及びアルコールの混合溶液を用いた以外は、実施例1と同様のポリマー部材、装置、方法において炭酸カルシウムの抽出を行った。水とアルコール(エタノール)はそれぞれ50mlずつ用いた。即ち、水とアルコールの体積比率は1:1で行った。
【0056】
次いで、実施例1同様、光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った。その結果、光学顕微鏡、AFMより抽出が確認され、また、ポリマーの表面粗さが抽出前のRa=30nmからRa=100nmになっていることが確認された。実施例1と同様、内部にも孔の形成が確認された。
【実施例3】
【0057】
本実施例では、抽出流体8として、超臨界二酸化炭素、水、アルコール、及び界面活性剤の混合液を使用し、バッチ処理によりポリマー部材の炭酸カルシウムを抽出した。
【0058】
なお、アルコールとしてはエタノール、界面活性剤としてはオクタエチレングリコールモノドデシルエーテルを使用した。超臨界二酸化炭素を混合する前の、水、アルコール、及び界面活性剤の混合液は全体で100mlとした。そのうち、アルコール(エタノール)を50mlとし、界面活性剤は全体の3wt%の量で用い、残りを水とした。
【0059】
なお本発明者らの検討によれば、水とアルコールのみの混合溶液では、アルコール比率が30%以下になると、安定したエマルジョンが形成されず、抽出能力が極めて小さくなることを確認しているが、界面活性剤を3wt%添加することによってアルコール比率が20%でもエマルジョンが形成され、さらに抽出能力が向上することを確認している。
【0060】
本実施例では、抽出流体8として水、アルコールそして界面活性剤の混合溶液を用いた以外は、実施例1と同様のポリマー部材、装置、方法により、炭酸カルシウムの抽出を行った。
【0061】
次いで、実施例1同様、光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った。その結果、光学顕微鏡、AFMより抽出が確認され、また、ポリマーの表面粗さが抽出前のRa=30nmからRa=110nmになっていることが確認された。
【実施例4】
【0062】
本実施例では、抽出流体8として、超臨界二酸化炭素と水、アルコール、そしてメッキ液の混合液を使用し、バッチ処理によりポリマー部材の無機材料を抽出した。
【0063】
なお、アルコールとしてはエタノール、メッキ液としては無電解ニッケル‐リンメッキ液(奥野製薬工業製ニコロンDK)を使用した。超臨界二酸化炭素を混合する前の、水、アルコール、及びメッキ液の混合液は全体で100mlとし、メッキ液20ml、アルコール(エタノール)50ml、水30mlとした。また、抽出流体のpHを測定したところpH=4.5であった。
【0064】
本実施例では、抽出流体8として水、アルコールそしてメッキ液の混合溶液を用いた以外は、実施例1と同様のポリマー部材、装置、方法により、炭酸カルシウムの抽出を行った。
【0065】
次いで、実施例1同様、光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った。その結果、光学顕微鏡、AFMより抽出が確認され、また、ポリマーの表面粗さが抽出前のRa=30nmからRa=150nmになっていることが確認された。本実施例においては、酸性でかつアルコールが混合しているため超臨界二酸化炭素に相溶しやすいメッキ液を用いることで内部にも3次元的な孔が良好に形成されていることが確認された。
【実施例5】
【0066】
本実施例では、抽出流体8として、超臨界二酸化炭素のみを使用し、即ち、超臨界二酸化炭素に相溶させる液体は何も使用せず、バッチ処理によりポリマー部材の無機材料を抽出した。
【0067】
次に無機材料抽出方法について説明する。本実施例では、超臨界二酸化炭素だけで抽出する以外は、実施例1と同様のポリマー部材、装置、方法により炭酸カルシウムの抽出を行った。処理時間は2時間とした。
【0068】
次いで、実施例1同様、光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った。その結果、光学顕微鏡、AFMより抽出が確認され、また、ポリマーの表面粗さも抽出前のRa=30nmからRa=70nmになっていることが確認された。
【実施例6】
【0069】
本実施例では、抽出流体8として、超臨界二酸化炭素と水、アルコールの混合液を使用し、バッチ処理においてポリマー部材の無機材料を抽出した。
【0070】
本実施例のポリマー部材は、酸に溶解する無機材料として粒径1〜3μmの金属アルミニウム粉末を分散させたポリフェニレンサルファイド(PPS)(縦30mm×横70mm×厚さ2mm)を使用した。
【0071】
本実施例においては、超臨界二酸化炭素を混合する前の混合溶液として実施例2と同様の溶液を用い、ポリマー中に分散させた無機材料としてアルミニウム粉末を使用した以外は、実施例1と同様の装置、方法においてアルミニウム粉末の抽出を行った。
【0072】
次いで、実施例1同様、光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った。その結果、光学顕微鏡、AFMより抽出が確認され、また、ポリマーの表面粗さが抽出前のRa=30nmからRa=80nmになっていることが確認された。実施例1と同様、内部にも孔の形成が確認された。
【0073】
[比較例1]
本実施例では、抽出流体8として、超臨界二酸化炭素と水、アルコール、そしてメッキ液の混合液を使用し、バッチ処理によりポリマー部材の無機材料を抽出した。
【0074】
本実施例のポリマー部材は、酸に溶解する無機材料として粒径1〜3μmの石英ガラス粉末を分散させたポリフェニレンサルファイド(PPS)(縦30mm×横70mm×厚さ2mm)を使用した。
【0075】
本実施例においては、抽出流体8として実施例4と同様の溶液を用い、ポリマー中に分散させた無機材料として石英ガラスフィラーを使用した以外は、実施例1と同様の装置、方法において石英ガラス粉末の抽出を行った。
【0076】
次いで実施例1同様、光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った。その結果、光学顕微鏡、AFMより抽出が確認されず、ポリマーの表面粗さが抽出前のRa=30nmのままであることが確認された。また、処理時間を2時間、さらに5時間と長くしたが、光学顕微鏡より抽出は確認されず、AFMからも表面粗さの変化は確認できなかった。
【0077】
前記実施例1〜6並びに比較例1における抽出流体組成及び抽出後における光学顕微鏡、AFMによる抽出確認結果とポリマー表面の平均粗さをまとめた表を表1に示す。なお、表1中の光学顕微鏡による抽出確認結果、及びAFMによる抽出確認結果の評価基準は、次の通りである。
○ 抽出が確認できる
× 抽出が確認できない
【表1】
【0078】
これらの結果より、実施例1〜6に関しては、効率良く無機材料の抽出が施されていることがわかった。また、効率良く抽出する要因として、(i)高圧二酸化炭素と少なくとも水の混合液を使用することとと共に、(ii)抽出流体の表面張力を下げポリマー内に浸透し易くすること、(iii)水と高圧二酸化炭素を相溶させること、(iv)酸性の材料を配合させることがあげられる。また、実施例5のように高圧二酸化炭素のみでも抽出は可能であるが、処理時間は長くなった。しかしながら、表面に偏析させる無機材料の粒子径を微粒子化すれば、ポリマー表面から無機材料が偏析する深さも浅くなり、短時間にて抽出できると予測される。
【実施例7】
【0079】
本実施例では、無機材料を抽出したポリマー部材上にバッチ方式にて無電解メッキを形成した。なお、金属触媒核付与、及び無電解ニッケルメッキにおいては、密着強度を良くするため、高圧二酸化炭素を用いた。
【0080】
本実施例では、実施例2でポリマー表面近傍の炭酸カルシウムを抽出したポリフェニレンサルファイド基板を使用した
【0081】
また、本実施例で使用する無電解ニッケルメッキ液8’は、硫酸ニッケル(金属塩)と次亜リン酸ナトリウム(還元剤)等が含まれる奥野製薬工業製ニコロンDKを用いた。より具体的には、抽出流体100ml中の各成分の割合は、無電解ニッケル液を20ml、アルコール(エタノール)を50ml、そして残りを水とした。pHは約4.5であった。
【0082】
次にメッキ膜の形成方法について説明する。まず、実施例2の方法により、無機材料(炭酸カルシウム)が抽出されたポリマー部材102’を用意した(図4中のステップS21)。次いで、ポリマー部材102と粉状の金属錯体とを表面改質装置(不図示)の高圧容器(不図示)内に装着した。なお、この際、ポリマー部材102’の全表面が、後に高圧容器に導入される超臨界状態の二酸化炭素(以下、超臨界二酸化炭素という)と接するようにポリマー部材102’を高圧容器内で保持した。また、この例では、金属錯体としてヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)を用いた。
【0083】
次いで、高圧容器内に15MPaの超臨界二酸化炭素を導入した。この際、高圧容器内に仕込まれた金属錯体は超臨界二酸化炭素に溶解し、超臨界二酸化炭素とともにポリマー部材102’の表面及び無機材料抽出部よりポリマー内部に浸透する。次いで、高圧容器を150℃で30分間圧力を保持することにより、ポリマー部材102’の表面全体に浸透した金属錯体の一部が還元される。この例では上記のプロセスで、無電界メッキの際に触媒核として作用する金属微粒子が内部に浸透したポリマー部材102’を作製した(図4中のステップS22)。この様子を示したのが、図5である。図5中の黒丸印はポリマー部材102’の内部に浸透している金属微粒子105を示す。なお、図5においても、ポリマーの内部102bに金属微粒子105が浸透している様子を説明するため、ポリマーの断面を便宜的に表面近傍102aと内部102bとに区別して表現しているが、実際は3層に区分されているわけではない。
【0084】
次に、上述のようにして作製されたポリマー部材102’を、図1に示した高圧容器1の内部容器9aの保持部材5に装着した後、内部容器の蓋部9bを閉めた。なお、内部容器9には予め無電解メッキ液8’を容器本体2の内容積の70%満たしており、無電解メッキ液8’中に完全に浸漬するようにポリマー部材102’が吊るされた状態となる。そして、60℃でこの状態を保持した。それゆえ、この時点では、無電解メッキ液8の温度はメッキ反応温度(70℃〜90℃)以下であるのでポリマー部材102’の表面にメッキ膜は成長しない。
【0085】
次いで、予め90℃に温調しておいた高圧容器1’内に、内部容器9を挿入して蓋3を閉め、直ちに15MPaの超臨界二酸化炭素を実施例1と同様にして導入口25を介して高圧容器1内に導入しポリマー部材102’と接触させた。その後マグネチックスターラー6で無電解メッキ液8’を攪拌した。
【0086】
内部容器9には熱伝導性の低い樹脂を使用しているため、内部容器9内の温度は急激には上昇しない。したがってこの時点では、メッキ反応が起こる温度以下の低温度になっており、ポリマー部材102’の表面にメッキ膜は成長しない。それゆえ、ポリマーが超臨界二酸化炭素と接触すると、実施例1と同様にポリマー部材102’の表面は膨潤する。また、超臨界二酸化炭素の混合したメッキ液は表面張力が低くなっているので、無電解メッキ液が超臨界二酸化炭素とともにポリマー表面より、あるいは炭酸カルシウム抽出孔より、ポリマー部材102’の内部に浸透し、ポリマー部材102’の内部に存在する金属微粒子まで無電解メッキ液が到達する(図4中のステップS23)。
【0087】
その後、時間の経過とともに、内部容器9内の温度が上昇し、最終的には無電解メッキ液8の温度がメッキ反応温度まで上昇する。その時点で内部容器9でメッキ反応が起こり、ポリマー部材102’の表面にメッキ膜106が成長する(図4中のステップS24)。この際、本実施例のメッキ膜の形成方法では、上述のようにポリマー部材102’の内部に存在する金属微粒子のところまで無電解メッキ液が浸透しているので、ポリマー部材102’の表面だけでなく、その内部に存在する金属微粒子を触媒核としてメッキ膜106が成長する。すなわち、本実施例のメッキ膜の形成方法では、メッキ膜106はポリマー部材102’の無機材料抽出部(アンカー部)及びポリマー内部の自由体積内にも成長し、ポリマー部材102’の内部に食い込んだ状態でポリマー上に形成され、強い密着強度を持つ。図6にその模式図を示す。なお、図6においても、図5と同様、ポリマーの断面を便宜的に表面近傍とその中間の部分との3層で表現しているが、実際は3層に分かれているわけではない。
【0088】
メッキ終了後、マグネチックスターラー6を停止させ、しばらく静置して、高圧容器1内で二酸化炭素とメッキ液とを二相分離させた。その後、手動バルブ22を閉じて、手動バルブ24を開き、高圧容器1内の二酸化炭素を排気した。次いで、高圧容器1を開けて、ポリマー部材102’を高圧容器1から取り出した。取り出されたポリマー部材102’を目視で確認したところ、ポリマー部材102’の表面全体に均一にメッキ膜の金属光沢がみられた。
【0089】
次に、公知の技術である電解ニッケルメッキを施して、ポリマー成形品102’の表面に電解ニッケルメッキを50μm積層した。この例では、上述のようにして、ポリマー上にメッキ膜が形成されたポリマー成形品102’ ’を得た。
【0090】
次に、前記ポリマー上にメッキ膜が形成されたポリマー成形品102’ ’に対して、テープを用いたピール試験(碁盤目テープ試験)を行った。テープはJIS規格に対応したニチバン株式会社製のテープを使用した。その結果、メッキ膜の剥離等は確認されなかった。
【0091】
また、この例で作製されたポリマー成形品102’ ’に対しても、金属膜の密着性評価を、85℃、85%RHの高温多湿環境試験1000hrにて行った。また、温度150℃、放置時間500時間の条件で高温試験および−40℃〜85℃のヒートサイクル試験10サイクルも行った。その結果、すべての試験において金属膜の密着性の低下は認められなかった。また、再度前記ピール試験を行ったところ、剥離等は生じなかった。さらに、この例で作製されたポリマー成形品102’
’の表面粗さRaを測定したところ、無機材料抽出前のポリマー部材と同等のRa=30nmであった。すなわち、この例のメッキ膜の形成方法によれば、簡便な方法により、プロセスが簡略化することができるだけでなく、密着性が高く且つ平滑な金属膜をポリマー部材に形成できることが分かった。
【実施例8】
【0092】
本実施例では、実施例7と同様の方法で無機材料の抽出、メッキ触媒核を付与したポリマーに対して、常圧環境下での公知の無電解ニッケルメッキを1μm積層した。無電解ニッケルメッキとしては、100ml中の各成分の割合は、実施例7と同様の無電解ニッケル‐リンメッキ液(奥野製薬社製ニコロンDK)を15ml、水を85mlとし、常圧下での公知の無電解ニッケルメッキを行った。
【0093】
次に、取り出したポリマー成形品102’に対して、既存技術である電解ニッケルメッキを施して、ポリマー成形品102’の表面に電解ニッケルメッキを50μm積層した。この例では、上述のようにしてポリマー上にメッキ膜が形成されたポリマー成形品507(図9参照)を得た。本実施例における成形品を実施例7と同様にメッキ膜の密着性の評価を行ったところ、同様に良好であった。
【実施例9】
【0094】
本実施例では、まず射出成形機を用いてPd微粒子と炭酸カルシウムの微粒子を混合したポリフェニレンサルファイドを成形した。その後、超臨界二酸化炭素とメッキ液との混合溶液により、同じ射出成形機内で炭酸カルシウム抽出と無電解メッキとを同時に行い、自動車用ヘッドライトリフレクター(反射板)の作製を行った。
【0095】
本実施例で用いたポリマー成形品の製造装置の概略構成について図7を参照して説明する。本実施例の製造装置500は、図7に示すように、主に金型を含む縦型の射出成形装置部503と、高圧二酸化炭素を含む蒸留水及び無電解メッキの金型への供給及び排出を制御する炭酸カルシウム抽出及び無電解メッキ装置部501と、射出成形装置部503の可塑化シリンダー内の溶融樹脂に金属錯体200を溶解した高圧二酸化炭素を浸透させるための表面改質装置部502とからなる。
【0096】
縦型の射出成形装置部503は、図7に示すように、主にポリマー成形品の形成樹脂を可塑化溶融する可塑化溶融装置110と、金型を開閉する型締め装置111とからなる。
【0097】
可塑化溶融装置110は、主に、スクリュー51を内蔵した可塑化シリンダー52と、ホッパー50と、可塑化シリンダー52内の先端部(フローフロント部)付近に設けられた高圧二酸化炭素の導入バルブ65とからなる。また、可塑化シリンダー52の導入バルブ65と対向する位置には、樹脂内圧を計測するための圧力センサー40を設けた。なお、ホッパー50内から可塑化シリンダー52内に供給される図示しない樹脂ペレットの材料としては、500nm〜1μm粒径の炭酸カルシウムフィラーを配合したポリフェニレンサルファイドを用いた。
【0098】
また、型締め装置111は、主に、固定金型53と、可動金型54とからなり、可動金型54が可動プラテン56およびそれに連結した図示しない油圧型締め機構の駆動に連動して4本のタイバー55間を開閉する構造になっている。また、可動金型54には、可動金型54及び固定金型53との間に画成されるキャビティ504に、高圧二酸化炭素無電解メッキ液を供給及び排出するためのメッキ液導入路61,62が形成されている。なお、メッキ液導入路61,62は、図7に示すように後述する無電解メッキ装置部501の配管15に接続されており、配管15を介して高圧二酸化炭素及び無電解メッキ液がキャビティ504に導入される構造になっている。また、キャビティ504のシールは、固定金型53の外径部に設けられたバネ内蔵シール17と可動金型54との勘合により行われる。
【0099】
表面改質装置部502は、図7に示すように、主に液体二酸化炭素ボンベ21と、シリンジポンプ20,34と、フィルター57と、背圧弁48と、金属錯体200を高圧二酸化炭素に溶解する溶解槽35と、これらの構成要素を繋ぐ配管80とから構成される。また、表面改質装置部502の配管80は、図7に示すように、可塑化シリンダー52の導入バルブ65に接続されており、導入バルブ65付近の配管80には圧力センサー47が設けられている。なお、この例では、溶解槽35に仕込んだ金属微粒子の原料としては、パラジウム金属錯体(ヘキサフルオロアセチルアセトナパラジウム(II))を用いた。
【0100】
無電解メッキ装置部501は、図7に示すように、主に、液体二酸化炭素ボンベ21と、ポンプ19と、バッファータンク36と、無電解メッキ液と高圧二酸化炭素を混合させる高圧容器10と、循環ポンプ90と、無電解メッキ液を補給するためのメッキタンク11と、シリンジポンプ33と、無電解メッキ液を回収する回収容器63と、回収槽12と、これらの構成要素を繋ぐ配管15とから構成される。また、高圧二酸化炭素及び無電解メッキ液の流動を制御するための自動バルブ43〜46,38が配管15の所定箇所に設けられている。また、配管15は、図7に示すように、可動金型54のメッキ液導入路61,62と接続されている。なお、この例では、無電解メッキ液としては、原液15vol%、アルコール(エタノール)50vol%を含むニッケル‐リン無電解メッキ液を用いた。
【0101】
次に、内部に金属微粒子を浸透させたポリマー成形品の成形方法について説明する。なお、本発明において金属微粒子の樹脂への浸透方法は任意であるが、本実施例では、可塑化シリンダー52内で可塑化計量した溶融樹脂の先端部(フローフロント部)に金属微粒子を溶解した高圧二酸化炭素を導入した。
【0102】
まず、溶解槽35において金属錯体200をエタノールに溶解させ、金属錯体200が溶解したエタノールをシリンジポンプ34内で15MPaに昇圧した。一方、液体二酸化炭素ボンベ21よりフィルター53を介してシリンジポンプ20に供給し、シリンジポンプ20内で液体二酸化炭素を15MPaと昇圧した。そして、昇圧された二酸化炭素と金属錯体200が溶解したエタノールとを配管80内で混合した(高圧混合流体を生成した)。なお、この高圧混合流体を可塑化溶融装置110に供給する際、高圧混合流体の供給圧力は、圧力計49の表示が15MPaになるように、背圧弁48により制御した。また、両シリンンジポンプ20,34からのエタノール溶液と高圧二酸化炭素との高圧混合流体の送液は、各シリンジポンプ20,34の制御を圧力制御から流量制御に切り替えて行った。さらに、高圧混合流体を可塑化溶融装置110に供給する際には、高圧混合流体を、配管80内で図示しないヒーターにより50℃に温度制御しつつ、可塑化溶融装置110に供給した。
【0103】
次に、高圧混合流体を可塑化溶融装置110内に導入する手順を図7及び8を参照しながら説明する。図8(a)及び8(b)は、可塑化溶融装置110の導入バルブ65付近の拡大断面図である。まず、ホッパー50から樹脂ペレットを供給しながら、可塑化シリンダー52内のスクリュー51を回転させて、樹脂の可塑化計量を行った。可塑化計量完了時における導入バルブ65付近の状態を示したのが図8(a)である。なお、この際、図8(a)に示すように、導入バルブ65の導入ピン651が後退(図8(a)中の左側に移動)することで、溶融樹脂66へ高圧混合流体67が導入されること遮断している。
【0104】
次いで、スクリュー51をサックバック(後退)して、溶融樹脂66の内圧力を低下させると同時に、両シリンジポンプ20,34を圧力制御から流量制御に切り替え、該金属錯体200の溶解したエタノールと二酸化炭素の流量をそれぞれ上述の方法にて1:10としながら、高圧混合流体67を導入バルブ65を介して可塑化シリンダー52内のフローフロント部の溶融樹脂66に導入した(図8(b)の状態)。図8(b)中の領域68が高圧混合流体67が浸透した溶融樹脂の部分である。
【0105】
なお、本実施例の可塑化シリンダー52の導入バルブ65では、溶融樹脂66と高圧混合流体67との圧力差が5MPa以上となったときに、高圧混合流体67が可塑化シリンダー52内の溶融樹脂66に導入される構造になっており、導入バルブ65による高圧混合流体67の導入原理は次の通りである。可塑化計量完了後、スクリュー51をサックバックさせると、溶融樹脂66が減圧され密度が低下する。そして、溶融樹脂66と高圧混合流体67との圧力差が5MPa以上となったとき、高圧混合流体67の圧力が導入バルブ65内のバネ652の戻し力(弾性力)に打ち勝ち、導入ピン651が溶融樹脂66側に前進し、高圧混合流体67が溶融樹脂66内部に導入される。なお、高圧混合流体67の導入は、樹脂圧および高圧混合流体67の圧力を、それぞれ圧力センサー40,47で監視しながら行った。
【0106】
次いで、両シリンジポンプ20,34を停止して高圧混合流体67の送液を停止した。また、それと同時に、スクリュー51を前進させて、樹脂圧力を20MPaまで再度上昇させ、導入ピン64を後退(図8(b)中の左方向に移動)させた。それにより、高圧混合流体67の導入を停止するとともに、高圧混合流体67と溶融樹脂66とを相溶させた。
【0107】
次いで、両シリンジポンプ20,34を、配管80中の図示しない自動バルブを閉鎖した後、可塑化溶融装置110に供給した高圧二酸化炭素及び金属錯体200が溶解したエタノール溶液の流量分をシリンジポンプ20,34内に補液した。その後、圧力制御に切り替え、15MPaの高圧に保持し、次ショットの送液まで待機させた。
【0108】
次に、可塑化シリンダー52内のフローフロント部の溶融樹脂66に高圧混合流体67を導入した後、型締め装置111の油圧型締め機構(不図示)により型締めされ、温調回路(不図示)により温度制御された金型内に画成されたキャビティ504に溶融樹脂を射出充填した。次いで、成形品を冷却固化した(図9の状態)。なお、溶融樹脂を金型内に射出成形する際、最初に射出されるフローフロント部の溶融樹脂68は噴水効果(ファウンテンフロー)により、射出成形品の表皮を形成する。すなわち、この例では、フローフロント部近傍に金属錯体200由来の金属微粒子が分散しているので、図9に示すように、ポリマー成形品507の表皮505(表面内部)には金属微粒子が含浸したポリマー成形品507が得られる(図11中のステップS61)。この例では、このようにして、表皮であるスキン層505に金属微粒子が分散し、内皮であるコア層506に、ほとんど金属微粒子が存在しないポリマー成形品507を得た。
【0109】
本実施例においては、可塑化シリンダー52内のフローフロント部の樹脂圧力を20MPaに保持して金属微粒子を樹脂に十分に浸透させてから、樹脂内圧を1MPaまで減圧した。この動作により、金属錯体200は高温度高圧力下にて熱分解してクラスターを形成し、有機物である金属錯体より比重の重い金属微粒子と変化する。また、二酸化炭素は低圧のガスとなるので、射出充填時に金属微粒子や二酸化炭素ガスは表面に浮き出てきにくくなる。その後、本実施例においては、射出充填するまでの射出速度を100m/sと低速にして、最表面に金属微粒子であるPdが十分に偏析しない成形品を射出成形した。つまりスキン層505には金属微粒子が分散しているが、最表面には、触媒核として寄与する量が不十分である表面状態とした。本実施例に用いるメッキ液の反応温度は60〜90℃である。大気圧にて70℃のメッキ液中に、本実施例の成形品を10分間浸漬させても、表面にメッキが成長しないことをあらかじめ確認した。
【0110】
次に、メッキ膜の形成方法について説明する。上述のようにして作製された表面内部に金属微粒子が分散したポリマー成形品507に対して、次のようにして、金型内で無電解メッキ処理を行った。なお、無電解メッキ処理を行っている間、金型内部は80℃に温調した。
【0111】
まず、図10に示すように、型締め装置111の油圧型締め機構(不図示)を後退(図10中の下方向)させることにより、可動プラテン56および可動金型54を後退させ、固定金型53とポリマー成形品507との間に隙間508(キャビティ508)を設けた。
【0112】
次いで、以下のように高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液をキャビティ508に導入して、ポリマー成形品507に接触させた。まず、予め、無電解メッキ装置部501のメッキタンク11から供給されたアルコールの無電解メッキ液と、バッファータンク36から供給された15MPaの高圧二酸化炭素とを、高圧容器10内にて7:3の比で混合させた。本発明においては、メッキ液と高圧二酸化炭素の混合比は9:1から5:5の範囲でメッキ液の量が多いほうが望ましい。またこの際、スタラー16の駆動および、マグネチックスターラー17の高速回転により高圧二酸化炭素と無電解メッキ液とを高圧容器10内で相溶させた。次いで、自動バルブ43を閉鎖し自動バルブ44,45を開放した。
【0113】
次いで、循環ポンプ90を運転し、高圧容器10、配管15およびキャビティ508からなる循環流路に、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を循環させて、一時的にポリマー成形品507の表面に無電解メッキ液を滞留および接触させ、メッキ膜(ニッケルリン膜)を形成した(図11中のステップS63)。この際、ポリマー成形品の最表面ではメッキ反応は起きず、ポリマー507の表面から無電解メッキ液がポリマー内部の炭酸カルシウムを溶解させながら速やかに内部に浸透し、ポリマー成形品507内部に分散する金属微粒子を触媒核にして、メッキ膜が成長する。すなわち、ポリマー成形品507上に形成されたメッキ膜はポリマー成形品507の内部に食い込んだ状態で成長するので、密着性の優れたメッキ膜が形成された。なお、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液が循環している際には、キャビティ508および循環ライン15の圧力は圧力センサー58,59で同圧になっていた。また、無電解メッキ液の補給は、メッキタンク11より供給したメッキ液をシリンジポンプ33で昇圧して、自動バルブ46の開放と同時に送液することで随時行った。
【0114】
次いで、上述のようにしてポリマー成形品507上にメッキ膜を形成した後、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液の循環経路から高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を回収容器63を介して回収槽12から排気した。具体的には、自動バルブ44,45を閉鎖し、自動バルブ38を開放することで、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を回収容器16に排出した。回収容器63では、回収した高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液が、遠心分離の原理で水溶液(メッキ液)と高圧ガス(二酸化炭素)に分離される。メッキ液は回収槽12で回収し再利用することができる。ガス化した二酸化炭素は回収容器63の上部から排出され、図示しない排気ダクトに回収される。
【0115】
次いで、自動バルブ43を一定時間開いて、固定金型53とポリマー成形品507との間の隙間508(キャビティ508)に高圧二酸化炭素を導入し、キャビティ508に残ったメッキ液の残留物を高圧二酸化炭素とともに金型の外へ排出した。キャビティ508の内圧が圧力センサー59のモニター値でゼロになったところで、金型を開きポリマー成形品507を取り出した。
【0116】
次に、取り出したポリマー成形品507に対して、アニール後通常の銀メッキを施して、ポリマー成形品507の表面に銀メッキ膜を積層した。本実施例では、上述のようにして表面にメッキ膜が形成されたポリマー成形品507を得た。
【0117】
本実施例で作製されたポリマー成形品507の一部の模式断面図を図12に示した。本実施例で作製されたポリマー成形品507のスキン層505内部には金属微粒子600が分散していることが確認された。また、ポリマー成形品507の片側には、金型内で成長させたニッケル‐リンの金属膜509が形成されており、ニッケル‐リンの金属膜509はポリマー成形品507の内部から成長していた(金属膜509の浸透層が形成されていた)。また、ニッケル‐リンの金属膜509の上に銀の高反射膜510が形成されていた。
【0118】
また、この例で作製されたポリマー成形品507に対しても、金属膜の密着性評価を、85℃、85%RHの高温多湿環境試験1000hrにて行った。また、温度150℃、放置時間500時間の条件で高温試験および−30℃〜150℃のヒートショック試験20サイクルも行った。その結果、すべての試験において金属膜の密着性の低下は認められなかった。さらに、この例で作製されたポリマー成形品507の表面粗さRaを測定したところ、金型の表面粗さと同等のRa=50nmであった。すなわち、この例のメッキ膜の形成方法によれば、射出成形と同時にメッキ処理を行うことができるので、プロセスが簡略化することができるだけでなく、密着性が高く且つ平滑な金属膜を耐熱性の高い樹脂材料に形成できることが分かった。
【実施例10】
【0119】
本実施例では、射出成形機を用いて炭酸カルシウムの微粒子を混合したポリフェニレンサルファイドの発泡体を成形した後、バッチ方式にて超臨界二酸化炭素と水、アルコールとの混合溶液で炭酸カルシウム抽出した。本実施例では、LED等の電気・電子部品用可視光領域反射板の作製を行った。
【0120】
本実施例においては粒径3〜6μm程度の炭酸カルシウムを60%混合したポリフェニレンサルファイドを用いた。本実施例においては、図13にその要部を示す横型の射出成形機107を用いて、発泡の基点となる発泡核剤としてニッケル金属錯体201を、アルコール202とともに高圧二酸化炭素203に金属錯体溶解槽235で溶解させ、実施例9の方法と同様に成形機のフローフロント部に浸透させた。
【0121】
本実施例においては、溶融樹脂内部でナノスケールの微粒子となり、金型への射出充填時に発泡核として機能する材料として金属錯体を用いた。金属錯体としてニッケル錯体(ヘキサフルオアセチルアセトナトニッケル)を用いた以外は、実施例9と同様にフローフロント部に浸透させた。つまり、可塑化計量後のフローフロント部に圧力15MPaの金属錯体の溶解した液体二酸化炭素とエタノールとの混合流体を導入し、次いで樹脂内圧を20MPaに昇圧して該高圧流体を樹脂と相溶させた。
【0122】
さらに、本実施例では、樹脂内圧を20MPaに維持した状態から、1000mm/sの高速射出速度にて金型内に射出成形を行った。射出充填直後、金型を500μm開いた。それにより、成形品の表面近傍に発泡セル径が6〜10μmの発泡セルを有し、空隙率が15%の成形体を得た。成形体の中心部には発泡セルは確認されなかった。発泡セルは成形品の厚み2mmに対し、両側の表面から300μmの深さまで観察された。
【0123】
次に、バッチ方式にて、実施例2と同様の抽出流体組成(水、エタノールと超臨界二酸化炭素との混合溶媒)にて炭酸カルシウムの抽出を行った。炭酸カルシウムが成形体の表面近傍に高密度析出していたため、抽出において、先に形成した発泡セルとそれぞれの抽出ピットが重なり合い、図14に示すような連結多孔体108を形成していることがわかった。最表面における発泡セル径は8〜10μmであり、表面近傍607aにおける空隙率は、80%であった。
【0124】
また、この樹脂成形品607の可視域(400〜700nm)の分光スペクトルを測定したところ、各波長においてほぼ均一の反射率を有し、平均で90%となった。このように、本実施例の方法により、耐熱性の高い樹脂材料を用いて、可視光領域における反射率が良好な反射板を作製することができた。
【0125】
以上説明してきた実施例において、使用したアルコールや界面活性剤、メッキ液等の種類や濃度は例示に過ぎず、これらの種類や数値等に限定されるものではない。また、上記実施例では、本発明を自動車用ヘッドライトリフレクターの作製や、LED等の電気・電子部品用可視光領域反射板の作製に適用した例について説明したが、これらは一例に過ぎず、高耐熱、高反射率が要求される任意の反射板の作製に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明のポリマー中の無機材料抽出方法では、簡便かつ環境に負担のない方法を用いて、ポリマー表面近傍に孔を作り、それをアンカーとして、高い密着性を有するメッキ膜を形成することができるので、様々な種類のポリマーに対して密着性の優れたメッキ膜を形成するためのメッキ前処理法として最適である。さらには、表面近傍に高密度に微細な孔を設け、その孔の内壁にメッキ膜を形成させることにより、可視光領域における反射率の良いポリマー板を形成するための方法として最適である。
【0127】
また、本発明のメッキ膜の形成方法において、射出成形機内で無電解メッキ処理を行った場合には、密着性が高く平滑な金属膜を耐熱性の高い樹脂材料に形成できるので、高い耐熱性の要求される自動車用ヘッドライトのリフレクター、あるいはLED等、電気・電子部品用反射板等の作製方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】実施例1で用いた抽出装置の概略構成図である。
【図2】表面近傍に偏在する炭酸カルシウムが抽出されたポリマー成形品の一部断面図である。
【図3】本発明のポリマー表面近傍から無機材料を抽出する手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の無機材料が抽出されたポリマーに無電解メッキ膜を形成する手順を示すフローチャートである。
【図5】金属微粒子が内部に浸透したポリマー部材の一部断面図である。
【図6】金属微粒子を触媒核としてメッキ膜が成長している状態を示すポリマー部材の一部断面図である。
【図7】実施例9で用いたポリマー成形品の製造装置の概略構成図である。
【図8】(a)及び(b)は、図7の製造装置における可塑化溶融装置の導入バルブ付近の拡大断面図である。
【図9】図7の製造装置における金型内に溶融樹脂を射出充填し、冷却固化した状態を示す図である。
【図10】図7の製造装置における固定金型とポリマー成形品との間に隙間ができた状態を示す図である。
【図11】実施例9における無電解メッキ膜の形成手順を示すフローチャートである。
【図12】実施例9で作製されたポリマー成形品の一部断面図である。
【図13】実施例10で用いた横型の射出成形機の要部を示す構成図である。
【図14】実施例10で作製されたポリマー成形品の一部断面図である。
【符号の説明】
【0129】
8 抽出流体 11 メッキタンク 21 液体二酸化炭素ボンベ100 抽出装置 102 ポリマー部材 103 炭酸カルシウム 104 空隙 105 金属微粒子 106 メッキ膜 200 金属錯体 500 ポリマー成形品製造装置 507ポリマー成形品
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー表面に分散された無機材料を抽出する方法、該方法を含む複合体の製造方法、並びに該方法により成形されたポリマー成形体、及び反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリマー部材(ポリマー成形品)の表面に安価に金属膜を形成する方法としては、無電解メッキ法が知られている。無電解メッキ法では、メッキ膜の密着性を確保するために、無電解メッキの前処理としてポリマー部材表面を六価クロム酸や過マンガン酸等の酸化剤を用いてエッチングを行い、ポリマー部材の表面を粗化する。
【0003】
例えば特許文献1では、10μm以下の炭酸カルシウム粒子を樹脂に混入して成形し、そのポリマー表面近傍の炭酸カルシウム粒子を通常の湿式メッキプロセスであるクロム酸エッチング処理を施すことにより、炭酸カルシウムを選択的にエッチングしてアンカー効果をもたらし、高い密着力を有する無電解メッキ皮膜を形成する方法が開示されている。
【0004】
また、このようなエッチング液で浸食されるポリマー、即ち無電解メッキが適用可能なポリマーとしては、ABS等のポリマーに限定されていた。これは、ABSにはブタジエンゴム成分が含まれており、この成分がエッチング液に選択的に浸食され表面に凹凸(アンカー)が形成されるのに対し、他のポリマーではこのようなエッチング液に選択的に酸化される成分が少なく、表面に凹凸が形成され難いためである。それゆえ、ABS以外のポリマーであるポリカーボネート等では、無電解メッキを可能にするためにABSやエラストマーを混合してアロイ化しており、一部はメッキグレードとして市販されている。しかしながら、そのようなメッキグレードのポリマーでは、主材料の耐熱性が低下する等の物性の劣化は避けられず、耐熱性が要求される成形品に適用することは困難であった。
【0005】
一方、例えば特許文献2や特許文献3においては、LED等の電気・電子部品、あるいは照明関係で使われる、可視領域から紫外領域における高反射率を有する反射板として、樹脂発泡体が開示されており、一部製品化されている。その他、高発泡倍率化、高耐熱発泡成形体の製造、サブミクロンオーダーの微細発泡の安定供給等を目的とするいくつかの発泡成形に関する報告がある。
【0006】
【特許文献1】特開平5−59587号公報
【特許文献2】特開2006−146123号公報
【特許文献3】特開2003−145657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の無電解メッキ皮膜を形成する方法では、炭酸カルシウム粒子を選択的にエッチングするために、環境負荷の大きい前処理を行う必要がある。また、脱脂、洗浄等の工程が必要となるため、製造時間、コストにも影響する。
【0008】
また、欧州では、電気・電子製品に含まれる特定有害物質を規制すRoHS(Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electric equipment)指令が制定されている。このため、材料・部品供給メーカーは、2006年7月1日以降欧州市場に投入される新しい電気・電子機器に、六価クロム等が含まれていないことを保証しなければならない。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、無機材料フィラーが分散されたポリマーに対して、短時間、低コスト、低環境負荷の方法によってポリマー表面の表面平滑性を損なうことなく無機材料を抽出する方法を提供することを目的とする。また、従来の発泡成形体で形成された発泡セルから無機材料を抽出してできた孔を利用して、光(400〜700nmの主に可視光領域)を拡散反射させることにより、高反射率、高耐熱を有する反射板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に従えば、酸に溶解する無機材料が分散したポリマーに高圧二酸化炭素を含む流体を接触させ、前記無機材料をポリマー表面より抽出することを特徴とするポリマー中の無機材料抽出方法が提供される。
【0011】
なお、本明細書において「高圧二酸化炭素」とは、超臨界状態の二酸化炭素のみならず、高圧の液体二酸化炭素及び高圧の二酸化炭素ガスを意味する。
【0012】
一般的にポリマー材料においては、用途に合わせて、強度補強等ポリマー単独では得られない高い力学特性を得るため、またはポリマーにはない様々な機能を付与することを目的として、様々なフィラー材料がポリマー中に添加され用いられる。本発明においては、フィラー材料として一般的に使用されており、酸性の液体に対して容易に溶解され得る無機材料、例えば炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、水酸化カリウム、メタケイ酸カリウム、炭酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、炭酸亜鉛、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化鉄、塩化鉄、酸化鉄、水酸化鉄、フッ化銅、塩化銅、酸化銅、水酸化銅、フッ化マンガン、塩化マンガン、水酸化マンガン、炭酸マンガン、酸化マンガン、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、銅等のミネラル成分を用いることが望ましい。つまり、高圧二酸化炭素に溶解する無機材料であることが望ましい。
【0013】
ポリマーの表面近傍に偏在するミネラル成分は、酸性を示す液体に対し溶解され、ポリマー表面近傍に多数のアンカー状の孔が開く。その後のメッキ工程において、そのポリマー表面にできた多数のアンカーの孔にはメッキ金属がくい込んで強固に付着し、さらにはポリマーとメッキ界面の接触表面積が大きくなることから、密着性良好なメッキ面が得られる。
【0014】
本発明の抽出方法では、まず、前記無機材料が分散されたポリマー材料を射出成形等により用意する。無機材料は少なくとも1μm以下の粒子が、より望ましくは100nm以下の粒子がポリマーの表面近傍に均一に分散されていることが望ましい。無機材料が抽出されることにより、それに応じたサイズの微細孔が形成される。すなわち、プラスチックの表面近傍にサブミクロンオーダーサイズの、あるいはナノオーダーサイズの微細な凹凸(アンカー)を形成することができる。したがって、本発明により無機材料が抽出されたポリマーの表面には、平滑な金属膜を形成することができる。
【0015】
ここで、ナノオーダーサイズの無機材料をポリマー表面近傍に分散させる方法としては、物理混合による方法と化学反応による方法とが考えられる。しかし、物理混合による方法では、無機材料が二次凝集することは避けられないため、例えば特開2004−27171号公報に記載されているように、化学反応によりポリマーに無機材料をナノコンポジット化する方法が好ましい。
【0016】
前記本発明の無機材料抽出方法により得られたポリマー表面に無電解メッキ等で金属膜を形成すると、ポリマーの表面に形成された無数の微細凹凸におけるアンカー効果やそれによる接着表面積の拡大により、密着性の優れた金属膜を形成することができる。また、本発明の無機材料抽出方法によりポリマーの表面に形成されたアンカー状の孔は、上述のように、サブミクロンオーダーからナノオーダーのサイズであるので、本発明の抽出方法により得られたポリマーの表面に金属膜を形成する場合、非常に平滑性の優れた(表面粗化が抑制された)金属膜を形成することができる。
【0017】
本発明のポリマー中の無機材料抽出方法では、従来のように六価クロム酸や過マンガン酸等環境負荷の高い酸化剤を使用するのではなく、環境負荷の少ない水溶液を抽出流体として用い得る。その抽出流体には、高圧二酸化炭素が含まれる。
【0018】
本発明者らが鋭意検討した結果、高圧二酸化炭素は、圧力が高く密度が高くなると、浸透性の高い酸性溶媒となり、ポリマー内にあらかじめ分散された酸に溶解する無機材料を溶解、抽出する能力を有することが判明した。抽出能力を維持するため、高圧二酸化炭素の圧力は3MPa以上が望ましく、高圧容器の負担が増大するため25MPa以下が望ましい。また、高圧二酸化炭素の温度は、密度が高くなると液体に近くなる観点からは低いほうが望ましいが、水、水系溶媒、アルコール等、高圧二酸化炭素に混合させる溶媒の分子運動を活発にさせる観点からは高いほうが望ましい。望ましくは10℃から150℃の温度の範囲である。また、表面張力が低く密度が高くなるという観点から、より望ましくは温度31℃以上、圧力7.38MPa以上の超臨界二酸化炭素が望ましい。
【0019】
さらに、本発明者らの検討によれば、水と高圧二酸化炭素、特に超臨界二酸化炭素とを組み合わせることにより、より強い酸化力、即ち無機材料を溶解する溶解性が得られることが判明している。抽出流体として超臨界二酸化炭素と水の混合溶液を用いると、ポリマー表面近傍の前記無機材料が一層溶解して抽出され易くなることが分かった。
【0020】
また、抽出流体としてさらにアルコールを含むことが好ましい。本来、二酸化炭素は無極性を示し、水は極性を示すため、高圧二酸化炭素と水は相溶しにくい。一方、アルコールは高圧二酸化炭素とも水とも相溶し易いことから、前記無機材料の抽出効果がさらに高まる。
【0021】
なお、本発明に用い得るアルコールの種類は任意であり、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘプタノール、エチレングリコール等を用いることができるが、本実験ではエタノールを使用した。また、抽出温度が高い場合は、アルコールが常圧に戻した際に沸騰し混合溶媒が安定しない恐れがあることから、高沸点のアルコールを使用することが望ましい。
【0022】
また、アルコールは水と比較し表面張力が小さいので、アルコールを加えた抽出流体の表面張力は著しく低下する。そのため、ポリマー部材の自由体積(内部)に、抽出流体が一層浸透し易くなり、抽出能力が向上することが考えられる。
【0023】
本発明の抽出流体には、界面活性剤を含んでもよい。これにより、高圧二酸化炭素と水溶液との相溶性を向上させ、エマルジョンの形成を助長することができる。また、界面活性剤には表面張力を下げる働きがあるため、ポリマー部材に抽出流体が浸透し易くなり、抽出能力が向上する。
【0024】
界面活性剤としては、公知の、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、両性イオン性界面活性剤のうち、少なくも1種類以上を選択して用いることが望ましい。特に、超臨界二酸化炭素と水とのエマルジョンを形成するのに有効であると確認されている各種界面活性剤を用いることが望ましい。例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)−ポリプロピレン
オキシド(PPO)のブロックコポリマー、アンモニウムカルボキシレートパーフルオロポリエーテル(PFPE)、PEO−ポリブチレンオキシド(PBO)のブロックコポリマー、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル等を用いることができる。
【0025】
本発明においては、前記無機材料抽出流体には、メッキ液を含んでも良い。中性から酸性のメッキ液を高圧二酸化炭素と混合するとpHがより低下する。そして、ポリマーに接触させることで、酸化力および浸透性の高い高圧流体が酸に可溶な無機材料をポリマー表面より容易に抽出する。本発明において用いるメッキ液の種類は、アルカリ性で安定な液でなければ任意であるが、pH3〜6の範囲で用いることのできるニッケル-リン無電解メッキ液が望ましい。後述するように、ポリマー表面より無機材料を抽出した後、引き続き、該抽出により形成された微細孔内部に無電解メッキ膜を形成できるからである。高圧二酸化炭素との相溶性を高めるため、無電解メッキ液には界面活性剤およびアルコールの少なくともいずれかが含まれることが望ましい。
【0026】
本発明により、前記無機材料が抽出され表面のみが多孔化したポリマー材においては、多孔化した表面上に無電解メッキ、電解メッキ、蒸着、スパッタ等により金属膜を形成することができる。ポリマー表面における微細孔による凹凸を反映した金属膜が形成されるので、物理的アンカー効果により、ポリマーと金属膜の高い密着性が得られる。金属膜を形成する方法としては、水系溶液に浸漬させることで、ポリマー多孔部内部の複雑形状に金属膜を形成することができるので無電解メッキ法が望ましい。本発明において、無電解メッキ法については任意であるが、例えば従来法におけるエッチングプロセス以降の方法を用いることができる。触媒付与、触媒活性の各処理を施すことでCu、Pd、Ni−P、Ag、Au等の無電解メッキ膜を形成することができる。
【0027】
無機材料抽出流体にメッキ液を含んだ場合には、前記酸に溶解する無機材料の分散したポリマーには、表面近傍内部に無電解メッキの触媒核として機能する金属微粒子を分散させておくのが有利である。これにより、前記方法にて無機材料をポリマー表面より抽出し除去した際には、内部に偏析した金属微粒子が露出しメッキ液に接触するので、直接無電解メッキ膜を形成することができる。金属微粒子の表面近傍への偏析方法は任意であるが、たとえば、射出成形における溶融樹脂のフローフロント部に金属錯体等、金属微粒子の溶解した高圧二酸化炭素を接触させることで、射出充填時のファウンテンフロー効果により、表面近傍に金属微粒子を偏析させることができる。
【0028】
本発明において、内部に無電解メッキの触媒核となる金属微粒子が分散したポリマーは、最表面における無電解メッキの触媒活性が低いことが望ましい。最表面における金属微粒子の濃度が、メッキが反応するために十分であると、ポリマー最表面にてメッキ反応が集中して起きる。そのため、ポリマー内部に形成された多孔質部でメッキが成長しにくくなり、無電解メッキ膜とポリマーの密着性が低くなる恐れがある。特に、メッキ液が含まれる高圧二酸化炭素の流体を用いて、ポリマー表面より無機材料を抽出する場合、最表面における金属微粒子の濃度が低いことは、以下の理由で好適である。最表面における金属微粒子の濃度が低いと、メッキが反応する温度で無電解メッキ液と高圧二酸化炭素の混合流体によりポリマー表面に接触させた場合、第一のステップとして無機材料の溶解、抽出反応が起きる。次いで、メッキ液がポリマー内部に浸透していき、メッキ反応に十分な量の金属微粒子触媒に接触する。そこで第二のステップとして、ポリマー内部よりメッキ成長がおきる。つまり、一度の操作でポリマー表面より無機材料の溶解および抽出、さらにメッキ反応を同時に行うことが可能となる。
【0029】
本発明において、表面における濃度が低く、かつ内部に金属微粒子が浸透したポリマーの形成方法は任意であるが、たとえば、成形機のフローフロント部に、高圧二酸化炭素に溶解した金属錯体等の金属微粒子を浸透させた後の滞留時間を長くすることで得ることができる。これにより、熱可塑性シリンダー内部で、金属錯体が熱分解することで二酸化炭素に不溶な金属微粒子となり凝集し、該金属微粒子の比重は重くなるため、射出充填時のファウンテンフロー現象により最表面に偏析しにくくなる。
【0030】
本発明において、酸に溶解する無機材料の分散したポリマーの種類としては任意であり、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂を用いることができる。特に、熱可塑性樹脂で形成したポリマー部材を用いることが望ましい。熱可塑性樹脂の種類は任意であり、非晶性、結晶性いずれでも適用できる。例えば、ポリエステル系等の合成繊維、ポリプロピレン、ポリアミド系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ABS系樹脂、ポリアミドイミド、ポリフタルアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリ乳酸等の生分解性プラスチック、ナイロン樹脂等及びそれら複合材料を用いることできる。
【0031】
本発明においては、ポリマーとして特にポリフェニレンサルファイドを用いることが望ましい。ポリフェニレンサルファイドは耐熱温度が200℃以上であるスーパーエンプラである。結晶性材料でありながら、射出成形における寸法精度に優れる。高強度で電気特性にも優れるため電子機器の電気回路部品に好適な材料であるが、耐薬品性に優れるため化学薬品でエッチングされにくい。そのため、従来法においては、無電解メッキ膜の形成が困難である。本発明によれば、前記材料表面を大きく粗化することなく、環境負荷の低い方法で微細孔を形成できるので、平滑な無電解メッキ膜の形成が容易となる。そのため、自動車のヘッドライトリフレクター等、平滑性と耐熱性が要求される金属膜を有する成形体への適用が可能となる。
【0032】
本発明においては、酸に溶解する無機材料を前記方法で溶解および抽出することで、成形品の表面近傍に少なくとも平均孔径が50μm以下、望ましくは10μm以下の空隙が形成され、該表面近傍を断面観察した際の空隙率が50%以上99%以下である多孔体を形成することを特徴とする。それにより、光学特性的には乱反射により表面反射性に優れ、電気特性的には誘電率の低いポリマー成形体を得ることができる。特に表面近傍のみを多孔化することで、成形品のマクロ的な機械的強度を維持した状態で高機能化できる。
【0033】
本発明においては、表面の空隙率が大きく微細孔を有するポリマー成形体を得るために、表面近傍に発泡体を有する成形体を用いることが望ましい。特に、高圧二酸化炭素等の高圧流体を物理発泡剤として用いた発泡成形法により表面に発泡体を得ることが望ましい。
【0034】
表面近傍のみに発泡体を形成する方法としては、たとえば、液体二酸化炭素等や超臨界窒素等の高圧流体を成形機のフローフロント部に浸透させ高温高圧にするステップ、次いで溶融ポリマーおよび超臨界二酸化炭素等の高圧流体を高圧状態に保持し相溶させるステップ、さらに高速度の射出速度で金型内に射出充填するステップによる射出成形方法を採用できる。
【0035】
それにより、金型内における急減圧により、樹脂に相溶していた窒素や二酸化炭素が、ガス化し発泡セルを形成する。同時にポリマーが冷却固化するので、表面近傍のみに微細な発泡セルを得ることができる。さらに、冷却前の射出充填直後に金型を開く(コアバック)方法で、ポリマーの内圧をさらに減圧し発泡体の形成を助長してもよい。
【0036】
また、成形体表面の平滑性を維持するために、射出充填前の金型内に二酸化炭素等のガスをカウンタープレッシャーとして導入してもよい。
【0037】
本発明においては、発泡セルを成長させるための発泡核を形成させる助剤を、高圧二酸化炭素に溶解させてフローフロント部に浸透させることができる。表面近傍のポリマー内部に発泡核となる金属微粒子等を浸透させることで、発泡セル数が多くなり、微細化する。
【0038】
これら表面近傍に発泡体の形成された成形体を射出成形した後、無機材料を抽出することで微細孔を多くし、連結多孔体にすることもできる。
【発明の効果】
【0039】
本発明のポリマー中の無機材料抽出方法によれば、低環境負荷の方法によってポリマー表面の表面平滑性を損なうことなく、無機材料を抽出することができる。これにより、ポリマー表面に高密度に微細な孔を形成することができ、それをアンカーとして、高い密着性を有するメッキ膜を形成することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施例、及び比較例について説明する。
【実施例1】
【0041】
本実施例では、抽出流体として、超臨界二酸化炭素と水の混合液を使用し、バッチ処理によりポリマー部材表面近傍に偏在した無機材料を抽出した。
【0042】
本実施例のポリマー部材は、酸に溶解する無機材料としてミネラルである炭酸カルシウムフィラーが分散しているポリフェニレンサルファイド(PPS)(縦30mm×横70mm×厚さ2mm、大日本インキ化学工業株式会社製)を使用した。また、炭酸カルシウムの粒径は断面SEMで分析の結果、1〜3μm程度であった。
【0043】
本実施例で用いた抽出装置の概略構成について図1を参照して説明する。抽出装置100は、主に、二酸化炭素ボンベ21、フィルタ26、高圧シリンジポンプ20、高圧容器1から構成されており、これらの構成要素は配管27により接続されている。また、図1に示すように、各構成要素間を繋ぐ配管27には、高圧二酸化炭素の流動を制御するための主導バルブ22〜24が所定の位置に設けられている。
【0044】
高圧容器1は、図1に示すように、容器本体2と、蓋3と、容器本体2の内部に収容される内部容器9とからなる。蓋部3には、公知のバネが内蔵されたポリイミド製シール4が設けられており、ポリイミド製シール4により、高圧容器1内部に高圧ガスを密閉する。一方、容器本体2内の底部には、抽出流体8を攪拌するためのマグネチックスターラー6が設けられている。また、容器本体2は、温調流路7を有しており、温調機(不図示)により温度制御された温調水をこの温調流路7内に流すことにより、高圧容器1の温度が調整される。本実施例では、容器本体2の温度を30℃から150℃の範囲の任意の温度に制御した。また、容器本体2の側壁部には、図1に示すように、高圧二酸化炭素の導入口25を設けた。そして、この例の抽出装置100では、金属製の容器本体2の内部に収容可能なPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製の内部容器9を用い、この内部容器9内でポリマー部材102の表面近傍に偏在する無機材料を抽出した。
【0045】
内部容器9は、図1に示すように、抽出流体8及びポリマー部材102が収容される容器本体部9aと、蓋部9bとからなる。容器本体部9aには、保持部材5が設置され、その保持部材5にポリマー部材102が抽出流体8に完全に浸漬する状態で吊るして固定される。また、容器本体部9a内の底部には、抽出流体8を攪拌するためのマグネチックスターラー6が設けられている。また、容器本体部9aの上端付近の外壁にはネジ溝が形成されており、蓋部9b内壁には容器本体部9aの上端の外壁に設けられたネジ溝と勘合するネジ溝が形成されている。そして、容器本体部9aのネジ溝と蓋部9bのネジ溝とを勘合させることにより、内部容器9を閉める構造になっている。
【0046】
本実施例では、高圧容器1の形成材料としてSUS316Lを用いた。なお、高圧容器1の形成材料としては、腐食されにくい材質を用いることが望ましく、その他SUS316、SUS304、インコネル、ハステロイ、チタン等を用いることができる。また、本実施例では、高圧容器1の内部に50%硝酸を浸漬させ不動態化処理(パシベート処理)した後、さらに内壁面に腐食防止膜として、PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)膜を形成した。なお、非メッキ成長膜としてはPEEK(ポリエチルエーテルケトン)等を用いることもできる。
【0047】
なお、本実施例で用いたメッキ装置100のシリンジポンプ20では、手動バルブ22、23を開いた状態で圧力一定制御することにより、高圧容器1内部の温度および高圧二酸化炭素の密度が変化した際にも、圧力変動を吸収することができ、それにより、高圧容器1内部の圧力を安定に保持することができる構造になっている
【0048】
次に、無機材料抽出方法について説明する。本実施例では、水100mlに超臨界二酸化炭素を混合することにより、抽出流体8を調製した。ポリマー部材102を、図1に示した保持部材5に装着した後、ポリマー部材102を容器本体部9a内に挿入して蓋部9bを閉めた。なお、この際、図1に示したように、100mlの水に完全に浸漬した状態でポリマー部材102が吊るされた状態となる。そして、常温でこの状態を保持した(図3中のステップS11)。
【0049】
次いで、予め80℃に温調しておいた高圧容器1内に、内部容器9を挿入して、蓋3を閉めた(図3中のステップS12)。そして直ちに、次のようにして超臨界二酸化炭素を導入口25を介して高圧容器1内に導入した。まず、液体二酸化炭素ボンベ21より取り出した液体二酸化炭素を、フィルター26を介して高圧シリンジポンプ20で吸い上げ、次いで、ポンプ内で15MPaに昇圧にした。温度は10℃とし液体二酸化炭素とした。次いで、手動バルブ22,23を開いて15MPaの液体二酸化炭素を導入口25を介して高圧容器1内部に導入した。高温度の容器に接触させることにより、液体二酸化炭素を超臨界状態の二酸化炭素とした。
【0050】
この際、内部容器9の容器本体部9aと蓋部9bは、上述のようにネジで勘合されるが、その状態においても、超臨界二酸化炭素は、粘度が低く拡散性が高いので、内部容器9のネジで勘合されている部分のわずかの隙間から内部容器9の内部に充分に導入される。その後、マグネチックスターラー6で攪拌することにより、水と超臨界二酸化炭素を混合して抽出流体8とし、抽出流体8をポリマー部材102と接触させた(図3中のステップS13)。そして、30分間この状態を保持した。
【0051】
この際、導入された超臨界二酸化炭素により、ポリマー部材102の表面は膨潤し、また、超臨界二酸化炭素と水の混合液である抽出流体8は酸性を示すと共に、表面張力が低くなっているので、ポリマー内部に浸透し、その結果、ポリマー表面近傍に偏在する炭酸カルシウムが抽出された(図3中のステップS14)。ポリマー成形品102の一部の模式断面図を図2に示した。ポリマー(ポリフェニレンサルファイド)102中には炭酸カルシウム103が偏在しており、表面近傍102aには炭酸カルシウム103が抽出されることにより表面から連続した空隙104が形成されていることが確認された。なお、図2においては、炭酸カルシウム103がポリマーの表面近傍102aから抽出される様子を説明するため、ポリマーの断面を便宜的に表面近傍102aと内部102bとに区別して表現しているが、実際はポリマー102が3層に区分されているわけではない。
【0052】
次に、上述した抽出処理後、超臨界二酸化炭素を高圧容器1から排気し、内部容器9を高圧容器1から取り出し、次いで、内部容器9からポリマー部材102を取り出した。
【0053】
次いで、抽出後のポリマー部材102を光学顕微鏡観察(倍率1000倍)にてポリマーの表面状態を確認した。また、原子間力顕微鏡(AFM)により表面状態と表面粗さを確認した。その結果、光学顕微鏡像、AFM像からポリマー表面の抽出が確認され、また表面粗さが抽出前のRa=30nmからRa=70nmになっていることが確認された。断面をFIBにて切断しSEMにて観察したところ、内部にも孔が形成されたことが確認された。
【実施例2】
【0054】
本実施例では、抽出流体8として、超臨界二酸化炭素、水及びアルコールの混合液を使用し、バッチ処理においてポリマー部材の無機材料を抽出した。
【0055】
本実施例においては、抽出流体8として超臨界二酸化炭素、水、及びアルコールの混合溶液を用いた以外は、実施例1と同様のポリマー部材、装置、方法において炭酸カルシウムの抽出を行った。水とアルコール(エタノール)はそれぞれ50mlずつ用いた。即ち、水とアルコールの体積比率は1:1で行った。
【0056】
次いで、実施例1同様、光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った。その結果、光学顕微鏡、AFMより抽出が確認され、また、ポリマーの表面粗さが抽出前のRa=30nmからRa=100nmになっていることが確認された。実施例1と同様、内部にも孔の形成が確認された。
【実施例3】
【0057】
本実施例では、抽出流体8として、超臨界二酸化炭素、水、アルコール、及び界面活性剤の混合液を使用し、バッチ処理によりポリマー部材の炭酸カルシウムを抽出した。
【0058】
なお、アルコールとしてはエタノール、界面活性剤としてはオクタエチレングリコールモノドデシルエーテルを使用した。超臨界二酸化炭素を混合する前の、水、アルコール、及び界面活性剤の混合液は全体で100mlとした。そのうち、アルコール(エタノール)を50mlとし、界面活性剤は全体の3wt%の量で用い、残りを水とした。
【0059】
なお本発明者らの検討によれば、水とアルコールのみの混合溶液では、アルコール比率が30%以下になると、安定したエマルジョンが形成されず、抽出能力が極めて小さくなることを確認しているが、界面活性剤を3wt%添加することによってアルコール比率が20%でもエマルジョンが形成され、さらに抽出能力が向上することを確認している。
【0060】
本実施例では、抽出流体8として水、アルコールそして界面活性剤の混合溶液を用いた以外は、実施例1と同様のポリマー部材、装置、方法により、炭酸カルシウムの抽出を行った。
【0061】
次いで、実施例1同様、光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った。その結果、光学顕微鏡、AFMより抽出が確認され、また、ポリマーの表面粗さが抽出前のRa=30nmからRa=110nmになっていることが確認された。
【実施例4】
【0062】
本実施例では、抽出流体8として、超臨界二酸化炭素と水、アルコール、そしてメッキ液の混合液を使用し、バッチ処理によりポリマー部材の無機材料を抽出した。
【0063】
なお、アルコールとしてはエタノール、メッキ液としては無電解ニッケル‐リンメッキ液(奥野製薬工業製ニコロンDK)を使用した。超臨界二酸化炭素を混合する前の、水、アルコール、及びメッキ液の混合液は全体で100mlとし、メッキ液20ml、アルコール(エタノール)50ml、水30mlとした。また、抽出流体のpHを測定したところpH=4.5であった。
【0064】
本実施例では、抽出流体8として水、アルコールそしてメッキ液の混合溶液を用いた以外は、実施例1と同様のポリマー部材、装置、方法により、炭酸カルシウムの抽出を行った。
【0065】
次いで、実施例1同様、光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った。その結果、光学顕微鏡、AFMより抽出が確認され、また、ポリマーの表面粗さが抽出前のRa=30nmからRa=150nmになっていることが確認された。本実施例においては、酸性でかつアルコールが混合しているため超臨界二酸化炭素に相溶しやすいメッキ液を用いることで内部にも3次元的な孔が良好に形成されていることが確認された。
【実施例5】
【0066】
本実施例では、抽出流体8として、超臨界二酸化炭素のみを使用し、即ち、超臨界二酸化炭素に相溶させる液体は何も使用せず、バッチ処理によりポリマー部材の無機材料を抽出した。
【0067】
次に無機材料抽出方法について説明する。本実施例では、超臨界二酸化炭素だけで抽出する以外は、実施例1と同様のポリマー部材、装置、方法により炭酸カルシウムの抽出を行った。処理時間は2時間とした。
【0068】
次いで、実施例1同様、光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った。その結果、光学顕微鏡、AFMより抽出が確認され、また、ポリマーの表面粗さも抽出前のRa=30nmからRa=70nmになっていることが確認された。
【実施例6】
【0069】
本実施例では、抽出流体8として、超臨界二酸化炭素と水、アルコールの混合液を使用し、バッチ処理においてポリマー部材の無機材料を抽出した。
【0070】
本実施例のポリマー部材は、酸に溶解する無機材料として粒径1〜3μmの金属アルミニウム粉末を分散させたポリフェニレンサルファイド(PPS)(縦30mm×横70mm×厚さ2mm)を使用した。
【0071】
本実施例においては、超臨界二酸化炭素を混合する前の混合溶液として実施例2と同様の溶液を用い、ポリマー中に分散させた無機材料としてアルミニウム粉末を使用した以外は、実施例1と同様の装置、方法においてアルミニウム粉末の抽出を行った。
【0072】
次いで、実施例1同様、光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った。その結果、光学顕微鏡、AFMより抽出が確認され、また、ポリマーの表面粗さが抽出前のRa=30nmからRa=80nmになっていることが確認された。実施例1と同様、内部にも孔の形成が確認された。
【0073】
[比較例1]
本実施例では、抽出流体8として、超臨界二酸化炭素と水、アルコール、そしてメッキ液の混合液を使用し、バッチ処理によりポリマー部材の無機材料を抽出した。
【0074】
本実施例のポリマー部材は、酸に溶解する無機材料として粒径1〜3μmの石英ガラス粉末を分散させたポリフェニレンサルファイド(PPS)(縦30mm×横70mm×厚さ2mm)を使用した。
【0075】
本実施例においては、抽出流体8として実施例4と同様の溶液を用い、ポリマー中に分散させた無機材料として石英ガラスフィラーを使用した以外は、実施例1と同様の装置、方法において石英ガラス粉末の抽出を行った。
【0076】
次いで実施例1同様、光学顕微鏡観察、原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った。その結果、光学顕微鏡、AFMより抽出が確認されず、ポリマーの表面粗さが抽出前のRa=30nmのままであることが確認された。また、処理時間を2時間、さらに5時間と長くしたが、光学顕微鏡より抽出は確認されず、AFMからも表面粗さの変化は確認できなかった。
【0077】
前記実施例1〜6並びに比較例1における抽出流体組成及び抽出後における光学顕微鏡、AFMによる抽出確認結果とポリマー表面の平均粗さをまとめた表を表1に示す。なお、表1中の光学顕微鏡による抽出確認結果、及びAFMによる抽出確認結果の評価基準は、次の通りである。
○ 抽出が確認できる
× 抽出が確認できない
【表1】
【0078】
これらの結果より、実施例1〜6に関しては、効率良く無機材料の抽出が施されていることがわかった。また、効率良く抽出する要因として、(i)高圧二酸化炭素と少なくとも水の混合液を使用することとと共に、(ii)抽出流体の表面張力を下げポリマー内に浸透し易くすること、(iii)水と高圧二酸化炭素を相溶させること、(iv)酸性の材料を配合させることがあげられる。また、実施例5のように高圧二酸化炭素のみでも抽出は可能であるが、処理時間は長くなった。しかしながら、表面に偏析させる無機材料の粒子径を微粒子化すれば、ポリマー表面から無機材料が偏析する深さも浅くなり、短時間にて抽出できると予測される。
【実施例7】
【0079】
本実施例では、無機材料を抽出したポリマー部材上にバッチ方式にて無電解メッキを形成した。なお、金属触媒核付与、及び無電解ニッケルメッキにおいては、密着強度を良くするため、高圧二酸化炭素を用いた。
【0080】
本実施例では、実施例2でポリマー表面近傍の炭酸カルシウムを抽出したポリフェニレンサルファイド基板を使用した
【0081】
また、本実施例で使用する無電解ニッケルメッキ液8’は、硫酸ニッケル(金属塩)と次亜リン酸ナトリウム(還元剤)等が含まれる奥野製薬工業製ニコロンDKを用いた。より具体的には、抽出流体100ml中の各成分の割合は、無電解ニッケル液を20ml、アルコール(エタノール)を50ml、そして残りを水とした。pHは約4.5であった。
【0082】
次にメッキ膜の形成方法について説明する。まず、実施例2の方法により、無機材料(炭酸カルシウム)が抽出されたポリマー部材102’を用意した(図4中のステップS21)。次いで、ポリマー部材102と粉状の金属錯体とを表面改質装置(不図示)の高圧容器(不図示)内に装着した。なお、この際、ポリマー部材102’の全表面が、後に高圧容器に導入される超臨界状態の二酸化炭素(以下、超臨界二酸化炭素という)と接するようにポリマー部材102’を高圧容器内で保持した。また、この例では、金属錯体としてヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)を用いた。
【0083】
次いで、高圧容器内に15MPaの超臨界二酸化炭素を導入した。この際、高圧容器内に仕込まれた金属錯体は超臨界二酸化炭素に溶解し、超臨界二酸化炭素とともにポリマー部材102’の表面及び無機材料抽出部よりポリマー内部に浸透する。次いで、高圧容器を150℃で30分間圧力を保持することにより、ポリマー部材102’の表面全体に浸透した金属錯体の一部が還元される。この例では上記のプロセスで、無電界メッキの際に触媒核として作用する金属微粒子が内部に浸透したポリマー部材102’を作製した(図4中のステップS22)。この様子を示したのが、図5である。図5中の黒丸印はポリマー部材102’の内部に浸透している金属微粒子105を示す。なお、図5においても、ポリマーの内部102bに金属微粒子105が浸透している様子を説明するため、ポリマーの断面を便宜的に表面近傍102aと内部102bとに区別して表現しているが、実際は3層に区分されているわけではない。
【0084】
次に、上述のようにして作製されたポリマー部材102’を、図1に示した高圧容器1の内部容器9aの保持部材5に装着した後、内部容器の蓋部9bを閉めた。なお、内部容器9には予め無電解メッキ液8’を容器本体2の内容積の70%満たしており、無電解メッキ液8’中に完全に浸漬するようにポリマー部材102’が吊るされた状態となる。そして、60℃でこの状態を保持した。それゆえ、この時点では、無電解メッキ液8の温度はメッキ反応温度(70℃〜90℃)以下であるのでポリマー部材102’の表面にメッキ膜は成長しない。
【0085】
次いで、予め90℃に温調しておいた高圧容器1’内に、内部容器9を挿入して蓋3を閉め、直ちに15MPaの超臨界二酸化炭素を実施例1と同様にして導入口25を介して高圧容器1内に導入しポリマー部材102’と接触させた。その後マグネチックスターラー6で無電解メッキ液8’を攪拌した。
【0086】
内部容器9には熱伝導性の低い樹脂を使用しているため、内部容器9内の温度は急激には上昇しない。したがってこの時点では、メッキ反応が起こる温度以下の低温度になっており、ポリマー部材102’の表面にメッキ膜は成長しない。それゆえ、ポリマーが超臨界二酸化炭素と接触すると、実施例1と同様にポリマー部材102’の表面は膨潤する。また、超臨界二酸化炭素の混合したメッキ液は表面張力が低くなっているので、無電解メッキ液が超臨界二酸化炭素とともにポリマー表面より、あるいは炭酸カルシウム抽出孔より、ポリマー部材102’の内部に浸透し、ポリマー部材102’の内部に存在する金属微粒子まで無電解メッキ液が到達する(図4中のステップS23)。
【0087】
その後、時間の経過とともに、内部容器9内の温度が上昇し、最終的には無電解メッキ液8の温度がメッキ反応温度まで上昇する。その時点で内部容器9でメッキ反応が起こり、ポリマー部材102’の表面にメッキ膜106が成長する(図4中のステップS24)。この際、本実施例のメッキ膜の形成方法では、上述のようにポリマー部材102’の内部に存在する金属微粒子のところまで無電解メッキ液が浸透しているので、ポリマー部材102’の表面だけでなく、その内部に存在する金属微粒子を触媒核としてメッキ膜106が成長する。すなわち、本実施例のメッキ膜の形成方法では、メッキ膜106はポリマー部材102’の無機材料抽出部(アンカー部)及びポリマー内部の自由体積内にも成長し、ポリマー部材102’の内部に食い込んだ状態でポリマー上に形成され、強い密着強度を持つ。図6にその模式図を示す。なお、図6においても、図5と同様、ポリマーの断面を便宜的に表面近傍とその中間の部分との3層で表現しているが、実際は3層に分かれているわけではない。
【0088】
メッキ終了後、マグネチックスターラー6を停止させ、しばらく静置して、高圧容器1内で二酸化炭素とメッキ液とを二相分離させた。その後、手動バルブ22を閉じて、手動バルブ24を開き、高圧容器1内の二酸化炭素を排気した。次いで、高圧容器1を開けて、ポリマー部材102’を高圧容器1から取り出した。取り出されたポリマー部材102’を目視で確認したところ、ポリマー部材102’の表面全体に均一にメッキ膜の金属光沢がみられた。
【0089】
次に、公知の技術である電解ニッケルメッキを施して、ポリマー成形品102’の表面に電解ニッケルメッキを50μm積層した。この例では、上述のようにして、ポリマー上にメッキ膜が形成されたポリマー成形品102’ ’を得た。
【0090】
次に、前記ポリマー上にメッキ膜が形成されたポリマー成形品102’ ’に対して、テープを用いたピール試験(碁盤目テープ試験)を行った。テープはJIS規格に対応したニチバン株式会社製のテープを使用した。その結果、メッキ膜の剥離等は確認されなかった。
【0091】
また、この例で作製されたポリマー成形品102’ ’に対しても、金属膜の密着性評価を、85℃、85%RHの高温多湿環境試験1000hrにて行った。また、温度150℃、放置時間500時間の条件で高温試験および−40℃〜85℃のヒートサイクル試験10サイクルも行った。その結果、すべての試験において金属膜の密着性の低下は認められなかった。また、再度前記ピール試験を行ったところ、剥離等は生じなかった。さらに、この例で作製されたポリマー成形品102’
’の表面粗さRaを測定したところ、無機材料抽出前のポリマー部材と同等のRa=30nmであった。すなわち、この例のメッキ膜の形成方法によれば、簡便な方法により、プロセスが簡略化することができるだけでなく、密着性が高く且つ平滑な金属膜をポリマー部材に形成できることが分かった。
【実施例8】
【0092】
本実施例では、実施例7と同様の方法で無機材料の抽出、メッキ触媒核を付与したポリマーに対して、常圧環境下での公知の無電解ニッケルメッキを1μm積層した。無電解ニッケルメッキとしては、100ml中の各成分の割合は、実施例7と同様の無電解ニッケル‐リンメッキ液(奥野製薬社製ニコロンDK)を15ml、水を85mlとし、常圧下での公知の無電解ニッケルメッキを行った。
【0093】
次に、取り出したポリマー成形品102’に対して、既存技術である電解ニッケルメッキを施して、ポリマー成形品102’の表面に電解ニッケルメッキを50μm積層した。この例では、上述のようにしてポリマー上にメッキ膜が形成されたポリマー成形品507(図9参照)を得た。本実施例における成形品を実施例7と同様にメッキ膜の密着性の評価を行ったところ、同様に良好であった。
【実施例9】
【0094】
本実施例では、まず射出成形機を用いてPd微粒子と炭酸カルシウムの微粒子を混合したポリフェニレンサルファイドを成形した。その後、超臨界二酸化炭素とメッキ液との混合溶液により、同じ射出成形機内で炭酸カルシウム抽出と無電解メッキとを同時に行い、自動車用ヘッドライトリフレクター(反射板)の作製を行った。
【0095】
本実施例で用いたポリマー成形品の製造装置の概略構成について図7を参照して説明する。本実施例の製造装置500は、図7に示すように、主に金型を含む縦型の射出成形装置部503と、高圧二酸化炭素を含む蒸留水及び無電解メッキの金型への供給及び排出を制御する炭酸カルシウム抽出及び無電解メッキ装置部501と、射出成形装置部503の可塑化シリンダー内の溶融樹脂に金属錯体200を溶解した高圧二酸化炭素を浸透させるための表面改質装置部502とからなる。
【0096】
縦型の射出成形装置部503は、図7に示すように、主にポリマー成形品の形成樹脂を可塑化溶融する可塑化溶融装置110と、金型を開閉する型締め装置111とからなる。
【0097】
可塑化溶融装置110は、主に、スクリュー51を内蔵した可塑化シリンダー52と、ホッパー50と、可塑化シリンダー52内の先端部(フローフロント部)付近に設けられた高圧二酸化炭素の導入バルブ65とからなる。また、可塑化シリンダー52の導入バルブ65と対向する位置には、樹脂内圧を計測するための圧力センサー40を設けた。なお、ホッパー50内から可塑化シリンダー52内に供給される図示しない樹脂ペレットの材料としては、500nm〜1μm粒径の炭酸カルシウムフィラーを配合したポリフェニレンサルファイドを用いた。
【0098】
また、型締め装置111は、主に、固定金型53と、可動金型54とからなり、可動金型54が可動プラテン56およびそれに連結した図示しない油圧型締め機構の駆動に連動して4本のタイバー55間を開閉する構造になっている。また、可動金型54には、可動金型54及び固定金型53との間に画成されるキャビティ504に、高圧二酸化炭素無電解メッキ液を供給及び排出するためのメッキ液導入路61,62が形成されている。なお、メッキ液導入路61,62は、図7に示すように後述する無電解メッキ装置部501の配管15に接続されており、配管15を介して高圧二酸化炭素及び無電解メッキ液がキャビティ504に導入される構造になっている。また、キャビティ504のシールは、固定金型53の外径部に設けられたバネ内蔵シール17と可動金型54との勘合により行われる。
【0099】
表面改質装置部502は、図7に示すように、主に液体二酸化炭素ボンベ21と、シリンジポンプ20,34と、フィルター57と、背圧弁48と、金属錯体200を高圧二酸化炭素に溶解する溶解槽35と、これらの構成要素を繋ぐ配管80とから構成される。また、表面改質装置部502の配管80は、図7に示すように、可塑化シリンダー52の導入バルブ65に接続されており、導入バルブ65付近の配管80には圧力センサー47が設けられている。なお、この例では、溶解槽35に仕込んだ金属微粒子の原料としては、パラジウム金属錯体(ヘキサフルオロアセチルアセトナパラジウム(II))を用いた。
【0100】
無電解メッキ装置部501は、図7に示すように、主に、液体二酸化炭素ボンベ21と、ポンプ19と、バッファータンク36と、無電解メッキ液と高圧二酸化炭素を混合させる高圧容器10と、循環ポンプ90と、無電解メッキ液を補給するためのメッキタンク11と、シリンジポンプ33と、無電解メッキ液を回収する回収容器63と、回収槽12と、これらの構成要素を繋ぐ配管15とから構成される。また、高圧二酸化炭素及び無電解メッキ液の流動を制御するための自動バルブ43〜46,38が配管15の所定箇所に設けられている。また、配管15は、図7に示すように、可動金型54のメッキ液導入路61,62と接続されている。なお、この例では、無電解メッキ液としては、原液15vol%、アルコール(エタノール)50vol%を含むニッケル‐リン無電解メッキ液を用いた。
【0101】
次に、内部に金属微粒子を浸透させたポリマー成形品の成形方法について説明する。なお、本発明において金属微粒子の樹脂への浸透方法は任意であるが、本実施例では、可塑化シリンダー52内で可塑化計量した溶融樹脂の先端部(フローフロント部)に金属微粒子を溶解した高圧二酸化炭素を導入した。
【0102】
まず、溶解槽35において金属錯体200をエタノールに溶解させ、金属錯体200が溶解したエタノールをシリンジポンプ34内で15MPaに昇圧した。一方、液体二酸化炭素ボンベ21よりフィルター53を介してシリンジポンプ20に供給し、シリンジポンプ20内で液体二酸化炭素を15MPaと昇圧した。そして、昇圧された二酸化炭素と金属錯体200が溶解したエタノールとを配管80内で混合した(高圧混合流体を生成した)。なお、この高圧混合流体を可塑化溶融装置110に供給する際、高圧混合流体の供給圧力は、圧力計49の表示が15MPaになるように、背圧弁48により制御した。また、両シリンンジポンプ20,34からのエタノール溶液と高圧二酸化炭素との高圧混合流体の送液は、各シリンジポンプ20,34の制御を圧力制御から流量制御に切り替えて行った。さらに、高圧混合流体を可塑化溶融装置110に供給する際には、高圧混合流体を、配管80内で図示しないヒーターにより50℃に温度制御しつつ、可塑化溶融装置110に供給した。
【0103】
次に、高圧混合流体を可塑化溶融装置110内に導入する手順を図7及び8を参照しながら説明する。図8(a)及び8(b)は、可塑化溶融装置110の導入バルブ65付近の拡大断面図である。まず、ホッパー50から樹脂ペレットを供給しながら、可塑化シリンダー52内のスクリュー51を回転させて、樹脂の可塑化計量を行った。可塑化計量完了時における導入バルブ65付近の状態を示したのが図8(a)である。なお、この際、図8(a)に示すように、導入バルブ65の導入ピン651が後退(図8(a)中の左側に移動)することで、溶融樹脂66へ高圧混合流体67が導入されること遮断している。
【0104】
次いで、スクリュー51をサックバック(後退)して、溶融樹脂66の内圧力を低下させると同時に、両シリンジポンプ20,34を圧力制御から流量制御に切り替え、該金属錯体200の溶解したエタノールと二酸化炭素の流量をそれぞれ上述の方法にて1:10としながら、高圧混合流体67を導入バルブ65を介して可塑化シリンダー52内のフローフロント部の溶融樹脂66に導入した(図8(b)の状態)。図8(b)中の領域68が高圧混合流体67が浸透した溶融樹脂の部分である。
【0105】
なお、本実施例の可塑化シリンダー52の導入バルブ65では、溶融樹脂66と高圧混合流体67との圧力差が5MPa以上となったときに、高圧混合流体67が可塑化シリンダー52内の溶融樹脂66に導入される構造になっており、導入バルブ65による高圧混合流体67の導入原理は次の通りである。可塑化計量完了後、スクリュー51をサックバックさせると、溶融樹脂66が減圧され密度が低下する。そして、溶融樹脂66と高圧混合流体67との圧力差が5MPa以上となったとき、高圧混合流体67の圧力が導入バルブ65内のバネ652の戻し力(弾性力)に打ち勝ち、導入ピン651が溶融樹脂66側に前進し、高圧混合流体67が溶融樹脂66内部に導入される。なお、高圧混合流体67の導入は、樹脂圧および高圧混合流体67の圧力を、それぞれ圧力センサー40,47で監視しながら行った。
【0106】
次いで、両シリンジポンプ20,34を停止して高圧混合流体67の送液を停止した。また、それと同時に、スクリュー51を前進させて、樹脂圧力を20MPaまで再度上昇させ、導入ピン64を後退(図8(b)中の左方向に移動)させた。それにより、高圧混合流体67の導入を停止するとともに、高圧混合流体67と溶融樹脂66とを相溶させた。
【0107】
次いで、両シリンジポンプ20,34を、配管80中の図示しない自動バルブを閉鎖した後、可塑化溶融装置110に供給した高圧二酸化炭素及び金属錯体200が溶解したエタノール溶液の流量分をシリンジポンプ20,34内に補液した。その後、圧力制御に切り替え、15MPaの高圧に保持し、次ショットの送液まで待機させた。
【0108】
次に、可塑化シリンダー52内のフローフロント部の溶融樹脂66に高圧混合流体67を導入した後、型締め装置111の油圧型締め機構(不図示)により型締めされ、温調回路(不図示)により温度制御された金型内に画成されたキャビティ504に溶融樹脂を射出充填した。次いで、成形品を冷却固化した(図9の状態)。なお、溶融樹脂を金型内に射出成形する際、最初に射出されるフローフロント部の溶融樹脂68は噴水効果(ファウンテンフロー)により、射出成形品の表皮を形成する。すなわち、この例では、フローフロント部近傍に金属錯体200由来の金属微粒子が分散しているので、図9に示すように、ポリマー成形品507の表皮505(表面内部)には金属微粒子が含浸したポリマー成形品507が得られる(図11中のステップS61)。この例では、このようにして、表皮であるスキン層505に金属微粒子が分散し、内皮であるコア層506に、ほとんど金属微粒子が存在しないポリマー成形品507を得た。
【0109】
本実施例においては、可塑化シリンダー52内のフローフロント部の樹脂圧力を20MPaに保持して金属微粒子を樹脂に十分に浸透させてから、樹脂内圧を1MPaまで減圧した。この動作により、金属錯体200は高温度高圧力下にて熱分解してクラスターを形成し、有機物である金属錯体より比重の重い金属微粒子と変化する。また、二酸化炭素は低圧のガスとなるので、射出充填時に金属微粒子や二酸化炭素ガスは表面に浮き出てきにくくなる。その後、本実施例においては、射出充填するまでの射出速度を100m/sと低速にして、最表面に金属微粒子であるPdが十分に偏析しない成形品を射出成形した。つまりスキン層505には金属微粒子が分散しているが、最表面には、触媒核として寄与する量が不十分である表面状態とした。本実施例に用いるメッキ液の反応温度は60〜90℃である。大気圧にて70℃のメッキ液中に、本実施例の成形品を10分間浸漬させても、表面にメッキが成長しないことをあらかじめ確認した。
【0110】
次に、メッキ膜の形成方法について説明する。上述のようにして作製された表面内部に金属微粒子が分散したポリマー成形品507に対して、次のようにして、金型内で無電解メッキ処理を行った。なお、無電解メッキ処理を行っている間、金型内部は80℃に温調した。
【0111】
まず、図10に示すように、型締め装置111の油圧型締め機構(不図示)を後退(図10中の下方向)させることにより、可動プラテン56および可動金型54を後退させ、固定金型53とポリマー成形品507との間に隙間508(キャビティ508)を設けた。
【0112】
次いで、以下のように高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液をキャビティ508に導入して、ポリマー成形品507に接触させた。まず、予め、無電解メッキ装置部501のメッキタンク11から供給されたアルコールの無電解メッキ液と、バッファータンク36から供給された15MPaの高圧二酸化炭素とを、高圧容器10内にて7:3の比で混合させた。本発明においては、メッキ液と高圧二酸化炭素の混合比は9:1から5:5の範囲でメッキ液の量が多いほうが望ましい。またこの際、スタラー16の駆動および、マグネチックスターラー17の高速回転により高圧二酸化炭素と無電解メッキ液とを高圧容器10内で相溶させた。次いで、自動バルブ43を閉鎖し自動バルブ44,45を開放した。
【0113】
次いで、循環ポンプ90を運転し、高圧容器10、配管15およびキャビティ508からなる循環流路に、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を循環させて、一時的にポリマー成形品507の表面に無電解メッキ液を滞留および接触させ、メッキ膜(ニッケルリン膜)を形成した(図11中のステップS63)。この際、ポリマー成形品の最表面ではメッキ反応は起きず、ポリマー507の表面から無電解メッキ液がポリマー内部の炭酸カルシウムを溶解させながら速やかに内部に浸透し、ポリマー成形品507内部に分散する金属微粒子を触媒核にして、メッキ膜が成長する。すなわち、ポリマー成形品507上に形成されたメッキ膜はポリマー成形品507の内部に食い込んだ状態で成長するので、密着性の優れたメッキ膜が形成された。なお、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液が循環している際には、キャビティ508および循環ライン15の圧力は圧力センサー58,59で同圧になっていた。また、無電解メッキ液の補給は、メッキタンク11より供給したメッキ液をシリンジポンプ33で昇圧して、自動バルブ46の開放と同時に送液することで随時行った。
【0114】
次いで、上述のようにしてポリマー成形品507上にメッキ膜を形成した後、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液の循環経路から高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を回収容器63を介して回収槽12から排気した。具体的には、自動バルブ44,45を閉鎖し、自動バルブ38を開放することで、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を回収容器16に排出した。回収容器63では、回収した高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液が、遠心分離の原理で水溶液(メッキ液)と高圧ガス(二酸化炭素)に分離される。メッキ液は回収槽12で回収し再利用することができる。ガス化した二酸化炭素は回収容器63の上部から排出され、図示しない排気ダクトに回収される。
【0115】
次いで、自動バルブ43を一定時間開いて、固定金型53とポリマー成形品507との間の隙間508(キャビティ508)に高圧二酸化炭素を導入し、キャビティ508に残ったメッキ液の残留物を高圧二酸化炭素とともに金型の外へ排出した。キャビティ508の内圧が圧力センサー59のモニター値でゼロになったところで、金型を開きポリマー成形品507を取り出した。
【0116】
次に、取り出したポリマー成形品507に対して、アニール後通常の銀メッキを施して、ポリマー成形品507の表面に銀メッキ膜を積層した。本実施例では、上述のようにして表面にメッキ膜が形成されたポリマー成形品507を得た。
【0117】
本実施例で作製されたポリマー成形品507の一部の模式断面図を図12に示した。本実施例で作製されたポリマー成形品507のスキン層505内部には金属微粒子600が分散していることが確認された。また、ポリマー成形品507の片側には、金型内で成長させたニッケル‐リンの金属膜509が形成されており、ニッケル‐リンの金属膜509はポリマー成形品507の内部から成長していた(金属膜509の浸透層が形成されていた)。また、ニッケル‐リンの金属膜509の上に銀の高反射膜510が形成されていた。
【0118】
また、この例で作製されたポリマー成形品507に対しても、金属膜の密着性評価を、85℃、85%RHの高温多湿環境試験1000hrにて行った。また、温度150℃、放置時間500時間の条件で高温試験および−30℃〜150℃のヒートショック試験20サイクルも行った。その結果、すべての試験において金属膜の密着性の低下は認められなかった。さらに、この例で作製されたポリマー成形品507の表面粗さRaを測定したところ、金型の表面粗さと同等のRa=50nmであった。すなわち、この例のメッキ膜の形成方法によれば、射出成形と同時にメッキ処理を行うことができるので、プロセスが簡略化することができるだけでなく、密着性が高く且つ平滑な金属膜を耐熱性の高い樹脂材料に形成できることが分かった。
【実施例10】
【0119】
本実施例では、射出成形機を用いて炭酸カルシウムの微粒子を混合したポリフェニレンサルファイドの発泡体を成形した後、バッチ方式にて超臨界二酸化炭素と水、アルコールとの混合溶液で炭酸カルシウム抽出した。本実施例では、LED等の電気・電子部品用可視光領域反射板の作製を行った。
【0120】
本実施例においては粒径3〜6μm程度の炭酸カルシウムを60%混合したポリフェニレンサルファイドを用いた。本実施例においては、図13にその要部を示す横型の射出成形機107を用いて、発泡の基点となる発泡核剤としてニッケル金属錯体201を、アルコール202とともに高圧二酸化炭素203に金属錯体溶解槽235で溶解させ、実施例9の方法と同様に成形機のフローフロント部に浸透させた。
【0121】
本実施例においては、溶融樹脂内部でナノスケールの微粒子となり、金型への射出充填時に発泡核として機能する材料として金属錯体を用いた。金属錯体としてニッケル錯体(ヘキサフルオアセチルアセトナトニッケル)を用いた以外は、実施例9と同様にフローフロント部に浸透させた。つまり、可塑化計量後のフローフロント部に圧力15MPaの金属錯体の溶解した液体二酸化炭素とエタノールとの混合流体を導入し、次いで樹脂内圧を20MPaに昇圧して該高圧流体を樹脂と相溶させた。
【0122】
さらに、本実施例では、樹脂内圧を20MPaに維持した状態から、1000mm/sの高速射出速度にて金型内に射出成形を行った。射出充填直後、金型を500μm開いた。それにより、成形品の表面近傍に発泡セル径が6〜10μmの発泡セルを有し、空隙率が15%の成形体を得た。成形体の中心部には発泡セルは確認されなかった。発泡セルは成形品の厚み2mmに対し、両側の表面から300μmの深さまで観察された。
【0123】
次に、バッチ方式にて、実施例2と同様の抽出流体組成(水、エタノールと超臨界二酸化炭素との混合溶媒)にて炭酸カルシウムの抽出を行った。炭酸カルシウムが成形体の表面近傍に高密度析出していたため、抽出において、先に形成した発泡セルとそれぞれの抽出ピットが重なり合い、図14に示すような連結多孔体108を形成していることがわかった。最表面における発泡セル径は8〜10μmであり、表面近傍607aにおける空隙率は、80%であった。
【0124】
また、この樹脂成形品607の可視域(400〜700nm)の分光スペクトルを測定したところ、各波長においてほぼ均一の反射率を有し、平均で90%となった。このように、本実施例の方法により、耐熱性の高い樹脂材料を用いて、可視光領域における反射率が良好な反射板を作製することができた。
【0125】
以上説明してきた実施例において、使用したアルコールや界面活性剤、メッキ液等の種類や濃度は例示に過ぎず、これらの種類や数値等に限定されるものではない。また、上記実施例では、本発明を自動車用ヘッドライトリフレクターの作製や、LED等の電気・電子部品用可視光領域反射板の作製に適用した例について説明したが、これらは一例に過ぎず、高耐熱、高反射率が要求される任意の反射板の作製に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明のポリマー中の無機材料抽出方法では、簡便かつ環境に負担のない方法を用いて、ポリマー表面近傍に孔を作り、それをアンカーとして、高い密着性を有するメッキ膜を形成することができるので、様々な種類のポリマーに対して密着性の優れたメッキ膜を形成するためのメッキ前処理法として最適である。さらには、表面近傍に高密度に微細な孔を設け、その孔の内壁にメッキ膜を形成させることにより、可視光領域における反射率の良いポリマー板を形成するための方法として最適である。
【0127】
また、本発明のメッキ膜の形成方法において、射出成形機内で無電解メッキ処理を行った場合には、密着性が高く平滑な金属膜を耐熱性の高い樹脂材料に形成できるので、高い耐熱性の要求される自動車用ヘッドライトのリフレクター、あるいはLED等、電気・電子部品用反射板等の作製方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】実施例1で用いた抽出装置の概略構成図である。
【図2】表面近傍に偏在する炭酸カルシウムが抽出されたポリマー成形品の一部断面図である。
【図3】本発明のポリマー表面近傍から無機材料を抽出する手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の無機材料が抽出されたポリマーに無電解メッキ膜を形成する手順を示すフローチャートである。
【図5】金属微粒子が内部に浸透したポリマー部材の一部断面図である。
【図6】金属微粒子を触媒核としてメッキ膜が成長している状態を示すポリマー部材の一部断面図である。
【図7】実施例9で用いたポリマー成形品の製造装置の概略構成図である。
【図8】(a)及び(b)は、図7の製造装置における可塑化溶融装置の導入バルブ付近の拡大断面図である。
【図9】図7の製造装置における金型内に溶融樹脂を射出充填し、冷却固化した状態を示す図である。
【図10】図7の製造装置における固定金型とポリマー成形品との間に隙間ができた状態を示す図である。
【図11】実施例9における無電解メッキ膜の形成手順を示すフローチャートである。
【図12】実施例9で作製されたポリマー成形品の一部断面図である。
【図13】実施例10で用いた横型の射出成形機の要部を示す構成図である。
【図14】実施例10で作製されたポリマー成形品の一部断面図である。
【符号の説明】
【0129】
8 抽出流体 11 メッキタンク 21 液体二酸化炭素ボンベ100 抽出装置 102 ポリマー部材 103 炭酸カルシウム 104 空隙 105 金属微粒子 106 メッキ膜 200 金属錯体 500 ポリマー成形品製造装置 507ポリマー成形品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸に溶解する無機材料が分散したポリマーに高圧二酸化炭素を含む流体を接触させ、前記無機材料をポリマー表面より抽出することを特徴とするポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項2】
前記高圧二酸化炭素を含む流体には水が含まれることを特徴とする請求項1に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項3】
前記無機材料はミネラルであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項4】
前記高圧二酸化炭素を含む流体には、アルコールを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項5】
前記高圧二酸化炭素を含む流体には、界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項6】
前記高圧二酸化炭素を含む流体には、無電解メッキ液を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項7】
前記高圧二酸化炭素が、7.38MPa以上25MPa以下の圧力を有する超臨界二酸化炭素であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項8】
無機材料をポリマー表面から抽出した後、ポリマーに無電解メッキをすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項9】
前記ポリマーがポリフェニレンサルファイド(PPS)であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項10】
前記酸に溶解する無機材料が分散したポリマーは発泡セルを有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項11】
酸で溶解する無機材料が分散されたポリマー成形体であって、表面近傍には空隙が形成されており、かつ金属微粒子が分散していることを特徴とするポリマー成形体。
【請求項12】
前記表面近傍では前記無機材料の濃度が低い請求項11に記載のポリマー成形体。
【請求項13】
前記ポリマー成形体はポリフェニレンサルファイドであることを特徴とする請求項11又は12に記載のポリマー成形体。
【請求項14】
酸で溶解する無機材料が分散されたポリマー成形体であって、表面には金属膜が形成されており、表面近傍には金属微粒子が分散していることを特徴とするポリマー成形体。
【請求項15】
前記表面近傍では前記無機材料の濃度が低い請求項14に記載のポリマー成形体。
【請求項16】
前記ポリマー成形体は、ポリフェニレンサルファイドであることを特徴とする請求項14又は15に記載のポリマー成形体。
【請求項17】
請求項11〜13のいずれか一項に記載のポリマー成形体である反射板。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれか一項に記載のポリマー成形体である反射板。
【請求項19】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法によりポリマー中から無機材料を抽出することと、
無機材料を抽出した該ポリマーに無電解メッキを施すこととを含む複合体の製造方法。
【請求項20】
前記無機材料を抽出したポリマーに無電解メッキを施した後に、さらに電解メッキを施すことを含む請求項19に記載の複合体の製造方法。
【請求項1】
酸に溶解する無機材料が分散したポリマーに高圧二酸化炭素を含む流体を接触させ、前記無機材料をポリマー表面より抽出することを特徴とするポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項2】
前記高圧二酸化炭素を含む流体には水が含まれることを特徴とする請求項1に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項3】
前記無機材料はミネラルであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項4】
前記高圧二酸化炭素を含む流体には、アルコールを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項5】
前記高圧二酸化炭素を含む流体には、界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項6】
前記高圧二酸化炭素を含む流体には、無電解メッキ液を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項7】
前記高圧二酸化炭素が、7.38MPa以上25MPa以下の圧力を有する超臨界二酸化炭素であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項8】
無機材料をポリマー表面から抽出した後、ポリマーに無電解メッキをすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項9】
前記ポリマーがポリフェニレンサルファイド(PPS)であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項10】
前記酸に溶解する無機材料が分散したポリマーは発泡セルを有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法。
【請求項11】
酸で溶解する無機材料が分散されたポリマー成形体であって、表面近傍には空隙が形成されており、かつ金属微粒子が分散していることを特徴とするポリマー成形体。
【請求項12】
前記表面近傍では前記無機材料の濃度が低い請求項11に記載のポリマー成形体。
【請求項13】
前記ポリマー成形体はポリフェニレンサルファイドであることを特徴とする請求項11又は12に記載のポリマー成形体。
【請求項14】
酸で溶解する無機材料が分散されたポリマー成形体であって、表面には金属膜が形成されており、表面近傍には金属微粒子が分散していることを特徴とするポリマー成形体。
【請求項15】
前記表面近傍では前記無機材料の濃度が低い請求項14に記載のポリマー成形体。
【請求項16】
前記ポリマー成形体は、ポリフェニレンサルファイドであることを特徴とする請求項14又は15に記載のポリマー成形体。
【請求項17】
請求項11〜13のいずれか一項に記載のポリマー成形体である反射板。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれか一項に記載のポリマー成形体である反射板。
【請求項19】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー中の無機材料抽出方法によりポリマー中から無機材料を抽出することと、
無機材料を抽出した該ポリマーに無電解メッキを施すこととを含む複合体の製造方法。
【請求項20】
前記無機材料を抽出したポリマーに無電解メッキを施した後に、さらに電解メッキを施すことを含む請求項19に記載の複合体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−73994(P2009−73994A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245986(P2007−245986)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
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