説明

無機炭酸硬化体の製造方法

【課題】 短時間かつ低圧の炭酸化環境下で製造することができ、機械的強度に優れかつ経時による組織の安定性に優れた無機炭酸化硬化体を得ることを可能とする方法を提供する。
【解決手段】 粒体粒度の体積分布において、累積10%径が1.5〜2.1μm、かつ累積50%径が3.5〜8.5μm、かつ累積90%径が11.0〜39.0μmである針状形態ワラストナイト単体もしくは該ワラストナイトを含む無機材料と、水とを混合し、賦形した後に、温度30℃〜120℃で炭酸化処理する無機炭酸化硬化体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワラストナイトまたワラストナイト含有無機材料を炭酸化処理することにより無機炭酸化硬化体を製造する方法に関し、より詳細には、組織の安定性及び強度に優れた無機炭酸化硬化体を製造することを可能とする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント硬化体の耐久性や強度を高める方法として、セメント硬化体を炭酸ガス雰囲気にさらすことにより、セメントの水和により生成した水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに変化させ、セメント硬化体の細孔を埋めて強度を高める方法が試みられている。このような方法としては、例えば下記の特許文献1に記載のように、セメントの水和反応が活発化しだした以降に、炭酸ガス雰囲気中で養生を行なうことにより、炭酸化をより一層進行させ、緻密化させる方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、炭酸ガス雰囲気下の養生に長時間を必要とし、生産性が低いという問題があった。加えて、材料に含有されている水分量によっては、水分が炭酸ガスの拡散を阻害し、内部まで炭酸化が進行しないことがあった。セメント硬化体の炭酸化物において、内部に未反応の材料が残存していると、セメント硬化体の炭酸化物の機械的物性が低下したり、長期間における材料変質が生じたりする。従って、機械的強度が高く、かつ長期間における組織の安定性を維持することが強く求められる。
【0004】
他方、下記の特許文献2には、粉砕処理などにより微粒子化されたワラストナイトを被炭酸化物として用いた方法が開示されている。ここでは、低温・低圧の炭酸ガス雰囲気下でも容易に炭酸化反応を進行させることができ、かつ化学的安定性に優れた炭酸化硬化体を得ることができるとされている。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の製造方法では、ワラストナイト自体により発現される繊維補強効果を期待することができなかった。従って、炭酸化反応が進行するわりには、該炭酸化硬化物を建材などに適用した場合、十分な強度が得られないことがあった。また、この方法により得られる炭酸化硬化物に、様々な機能を付与するために、有機材料や多孔質材などを多量に混合した場合には、それによって強度が低下するおそれもあった。
【0006】
他方、下記の特許文献3には、ワラストナイト本来の繊維補強効果を発現させるために特定のアスペクト比のワラストナイトを用いる製造方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載の製造方法では、例えば繊維長が大きすぎるワラストナイトを用いて炭酸化を行ったとしても、固化物の表層では賦形段階で十分な充填が起こらず、経時により表面層が剥離するという問題があった。また、経時により外観不良が発生するおそれもあった。
【特許文献1】特開平6−263562号公報
【特許文献2】特開2001−302295号公報
【特許文献3】特開2004−26629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術の現状に鑑み、短時間でかつ低圧の炭酸化環境下で製造することができ、しかも機械的物性及び経時による劣化が生じ難く、組織安定性に優れた無機炭酸化硬化体を得ることを可能とする製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を達成するためになされたものであり、本発明に係る無機炭酸化硬化体の製造方法は、粒体粒度の体積分布において、累積10%径が1.5〜2.1μm、かつ累積50%径が3.5〜8.5μm、かつ累積90%径が11.0〜39.0μmである針状形態ワラストナイト単体もしくは該ワラストナイトを含む無機材料と、水とを混合し、賦形した後に、温度30℃〜120℃で炭酸化処理することを特徴とする。
【0010】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0011】
(ワラストナイト及びワラストナイト含有無機材料)
本発明において用いられるワラストナイト(珪灰石)は、針状形態ワラストナイトであって、粒体粒度の体積分布において、累積10%径が1.5〜2.1μm、累積50%径が3.5〜8.5μm、及び累積90%径が11.0〜39.0μmの範囲にあるものである。
【0012】
なお、上記粒体粒度の体積分布における粒子径は、JIS Z8825−1で規定されている値であり、かつ同規格に基づいて測定される。すなわち、粒体粒度の体積分布は、例えば市販のレーザー回折散乱式測定装置により測定することができる。そして、上記累積A%径とは、横軸を粒径とし、縦軸を積算粒子体積の相対値(積算粒子体積/全粒子体積)としてプロットした場合に、横軸A%と交わるときの粒子径を意味する。好ましくは、累積10%径が1.5〜1.8μm、累積50%径が3.5〜5.0μm及び累積90%径が11.0〜16.0μmとされる。
【0013】
上記のように、累積10%径、累積50%径及び累積90%径を上記特定の範囲としているのは、反応効率に寄与する累積10%径、強度特性に寄与する累積50%径及び硬化体の表面平滑性に寄与する累積90%径の各粒子がバランス良く配合されるからである。従って、反応効率が高められ、硬化物の強度が高められ、かつ硬化体の表面平滑性が高められることになる。
【0014】
累積10%径が上記特定の範囲よりも小さい場合には、球径微粒子の配合割合が多くなり、炭酸化反応効率は高められるものの、得られた硬化体の強度が低くなる。また、逆に、上記特定の範囲よりも累積10%径が大きい場合には、炭酸化反応効率が小さくなり、かつ固化物の耐久性に問題が生じるおそれがある。
【0015】
累積50%径及び累積90%径が、上記特定の範囲より小さい場合には、ワラストナイトの繊維長分布において、繊維長の短い粒子が多くなりすぎ、十分な強度の硬化体を得ることができない。逆に、累積50%径及び累積90%径が上記特定の範囲より大きい場合には、繊維長の長い粒子が大きくなりすぎ、表層部における充填が十分でなくなり、外観不良や経時による表面層の剥離が生じるおそれがある。
【0016】
更に本発明では嵩比重が0.10〜0.30、より好ましくは、0.12〜0.26の範囲に限定される。この範囲より小さい場合には、ワラストナイトの繊維長が長すぎて、成形時、効率良く配向が起こらず、炭酸化硬化体の強度が低下する可能性がある。この範囲を超えると、繊維のアスペクト比が小さくて、繊維補強効果が不十分で炭酸化硬化体の強度が低下する可能性がある。嵩比重の測定は、JIS K-3362に基づいて行われる。
【0017】
本発明で用いられるワラストナイトは、好ましくは、窒素吸着比表面積が1m2/g以
上、より好ましくは2m2/g以上であることが望ましい。窒素吸着比表面積が1m2/g未満の場合には、炭酸化処理における反応性が低くなることがある。上記窒素吸着比表面
積が大きければ大きいほど炭酸化処理を迅速に進めることができる。もっとも、現実的には、製造上、窒素吸着比表面積は、通常1000m2/g以下である。
【0018】
本発明における針状形態ワラストナイトとは、CaSiO3で示される珪酸塩鉱物であ
り、白色の繊維状物または塊状物として天然に産出される。針状形態ワラストナイトは、一般にその繊維状の形状を利用し、アスベスト代替材料等における補強部材として利用されている。
【0019】
本発明において用いられる上記特定の累積粒径分布を有する針状形態ワラストナイトの製造方法は特に限定されないが、天然に産出した針状形態ワラストナイトを、ジェットミルなどにより粗粉砕し、分級処理する方法が挙げられる。
【0020】
上記針状形態の形状については特に限定される訳ではないが、顕微鏡写真などで撮影した場合、繊維状の形状を有していることが認められればよく、アスペクト比としては10〜23のものが好ましく、更には13〜18が好ましい。アスペクト比が10未満では、針状形態の形状に由来する補強効果が十分でないことがあり、23を超えると、ワラストナイトの製造効率が低下し、原料コストが高くなり現実的でない。
【0021】
本発明においては、無機炭酸化硬化体を得るための原料は、上記針状形態ワラストナイトだけでなく、それ以外の無機材料を含んでいてもよい。すなわち、針状形態ワラストナイト含有無機材料を用いてもよい。このようなワラストナイト以外の無機材料としては、特に限定されないが、例えば、セメント、珪砂、石灰灰、炭酸カルシウムまたは石膏などの無機質充填剤などが挙げられる。中でも、賦形性をより一層高めることができるので、石膏やセメントが好ましい。
【0022】
上記ワラストナイト以外の無機材料として用いられるセメントについては特に限定されないが、水和にともない水酸化カルシウムが生成するセメントであれば、賦形体の炭酸化処理時の反応を引き起こすことができ、好ましい。このようなセメントとしては、通常、ポルトランドセメント、特殊ポルトランドセメントまたはアルミナセメントなどを用いることができる。
【0023】
また、得られる無機炭酸化硬化体において、吸放湿性を高めたり、化学物質吸着性を高めたりする場合には、無機材料として、珪藻土、パリゴルスカイトまたはセピオライトなどを配合してもよい。
【0024】
さらに、上記無機材料以外に、他の材料が添加されていてもよい。このような他の材料としては、木片もしくはパルプなどの天然繊維、ポリアミド、ポリエステルなどの合成樹脂繊維などを挙げることができる。
【0025】
なお、本発明において、ワラストナイト含有無機材料を用いる場合、上記ワラストナイト含有無機材料中におけるワラストナイトの配合割合は、十分な機械的物性を得るには20重量%以上であることが好ましい。
【0026】
(製造工程)
本発明においては、上記針状形態ワラストナイト単体、または上記針状形態ワラストナイトを含むワラストナイト含有無機材料と、水とを混合し、賦形する。この針状形態ワラストナイト単体または針状形態ワラストナイト含有無機材料と、水とを混合するに際しては、後に行われる各種賦形方法に適した比率で両者を混合すればよい。一般的には、炭酸硬化反応時の混合物全量に対する水の割合は、1.5〜30重量%の範囲とすることが好ましい。1.5重量%未満では、炭酸化処理時に粒子間への二酸化炭素溶解量が少なくな
り、反応速度が小さくなり、組織の十分な緻密化が期待できないことがある。30重量%より水の添加割合が多くなると、二酸化炭素の浸透が阻害され、炭酸化反応速度が小さくなることがある。
【0027】
上記水を混合する方法は特に限定されず、周知の混合装置を用い、ワラストナイト単体またはワラストナイト含有無機材料と水とを混練すればよい。
上記混合物の賦形方法についても特に限定されない。例えば、圧縮成形法、押し出し成形法、脱水成形法、抄造法、フローオン成形法などの各種賦形方法を用いることができる。生産性を高めるためには、抄造法またはフローオン成形法が好ましい。抄造法やフローオン成形法では、水が多量に配合された混合物、すなわちスラリー状の混合物が用いられるが、賦形後に脱水し、脱水後の水の配合率を上記好ましい範囲とすることが望ましい。
【0028】
本発明においては、上記混合物を賦形して成形体を得た後に、成形体を温度30〜120度で炭酸化処理する。炭酸化処理とは、少なくともワラストナイト成分が炭酸化され得る処理を意味する。このような炭酸化処理としては、気体の二酸化炭素または超臨界状態の二酸化炭素を用いる方法が挙げられる。炭酸化処理に際して用いられる炭酸ガスの濃度は、任意の濃度とされ得るが、炭酸化効率を高めるためには、100%に近い濃度の炭酸ガスが好ましい。
【0029】
本発明においては、炭酸化処理の温度は30〜120℃の範囲、好ましくは、60℃〜115℃の範囲とされる。30℃未満では、十分な炭酸化反応を起こすのに長時間を要し、現実的ではない。120℃を超えると、炭酸化処理時に賦形された成形体内部から水が蒸発し、炭酸化反応速度に影響を及ぼし、さらに微孔が生じ、得られた硬化体の機械的強度が低下する。
【0030】
炭酸化処理時の圧力は特に限定されないが、0.5〜20MPa、より好ましくは、0.7MPa〜10MPaの範囲であることが好ましい。圧力が0.5MPaよりも低い場合には、賦形体への二酸化炭素の浸透性や炭酸化反応率が低下し、炭酸化反応が十分に起こらないことがあり、あるいは炭酸化反応が十分に起こるのに長い時間を要するおそれがある。圧力が20MPaよりも高い場合には、炭酸化反応速度は大きく変わらず、逆に大きなエネルギーを必要とし、生産性が低下し、かつ設備の大型化を招くおそれがある。
【0031】
なお、上記炭酸化処理の圧力とは、絶対圧力ではなく、ゲージ圧をいう。ここでゲージ圧とは、ゲージにより測定された圧力であるが、供給される炭酸ガスの圧力をいうものとする。
【0032】
上記炭酸化処理の時間については特に限定されないが、5〜120分の範囲が好ましい。5分未満では、炭酸化が十分に起こらないことがあり、得られた硬化体の機械的強度が十分でないことがある。120分よりも長くしても、炭酸化速度に大きな向上は見られず、生産性が低下するため好ましくない。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る無機炭酸化硬化体の製造方法では、上記特定の粒径分布を有する針状形態ワラストナイトもしくは該針状形態ワラストナイト含有無機材料と水とを混合し賦形した後に、温度30〜120℃で炭酸化処理が行われている。
【0034】
ワラストナイト自体は、常圧での炭酸化速度は非常に小さく、水和もほとんど見られない。従って、通常のセメント材料における残存未水和物とは異なり、硬化体中に炭酸化せずに残存した場合でも、長期の耐久性に悪影響を与えない。このような反応性の低いワラストナイトを硬化させるには、通常長時間の反応が必要であった。
【0035】
これに対して、本発明によれば、上記特定の粒子径分布の針状形態ワラストナイトが用いられているため、炭酸化に際しての反応速度が著しく高められ、かつ配向・充填効果が著しく高められるため、得られた炭酸固化物の機械的強度が飛躍的に改善される。また、炭酸化処理時の温度が上記特定の範囲とされているため、賦形体中において水が蒸発し難く、従って、賦形時の充填効果を効果的に利用することができ、それによっても、機械的強度に優れ、さらに経時による組織の劣化が生じ難い、安定性に優れた無機炭酸化硬化体を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0037】
なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、ワラストナイトの粒体粒度の体積分布における累積10%径、累積50%径及び累積90%径は、それぞれ、D10、D50及びD90と略すこととする。
【0038】
(実施例1)
ワラストナイト鉱物(清水工業社製、品番:H1250F、D10=1.7、D50=4.6、D90=14.9μm、平均アスペクト比16、嵩比重0.17)100重量部と、パルプ繊維(未叩解パルプ、ALABAMA Liver)4.7重量部とを含む原料組成物と、水350重量部とを、ミキサーを用いて30秒間混合し、スラリーを得た。得られたスラリーを、脱水面にフェルト(市川毛織社製、通気度74cc)を敷いた80×150mmの脱水プレス用金型に流し込み、450mmHgにて120秒間脱水処理を行なった。しかる後、面圧10.0MPaで10秒間加圧し、板状の賦形体を得た。
【0039】
得られた板状の賦形体を、温度100℃、及び圧力10.0MPaの二酸化炭素環境下に2時間放置し、炭酸化硬化体を得た。
【0040】
(実施例2)
ワラストナイト鉱物として、関西マテック社製、品番:KGP−H65、D10=1.9μm、D50=6.4μm及びD90=26.2μm、平均アスペクト比14、嵩比重0.21)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして炭酸化硬化体を得た。
【0041】
(実施例3)
炭酸化処理温度を80℃としたこと以外は、実施例2と同様にして炭酸化硬化体を得た。
【0042】
(実施例4)
硬化体組成物として、実施例1で用いたワラストナイト鉱物100重量部と、含水マグネシウム珪酸塩鉱物としてアタパルジャイト焼成・粉砕品(オーストラリア産アタパルジャイト、400℃焼成、200メッシュ分級品)140重量部と、パルプ繊維(未叩解パルプ ALABAMA Liver)11重量部とからなる原料組成物を用意し、該原料組成物を水900重量部とミキサーで30秒間混合し、スラリーを得た。得られたスラリーを、脱水面にフェルト(市川毛織社製、通気度74cc)を敷いた80×150mmの脱水プレス用金型に流し込み、450mmHgにて120秒間脱水処理を行なった後、面圧10MPaで10秒間加圧して板状の賦形体を得た。得られた賦形体を、90℃の温度及び10.0MPaの圧力の二酸化炭素環境下に1時間放置し、炭酸化硬化体を得た。
【0043】
(実施例5)
使用したワラストナイトを、関西マテック社製、品番:KAP−150(D10=1.7μm、D50=5.0μm及びD90=15.6μm、嵩比重0.18)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして炭酸化硬化体を得た。
【0044】
(実施例6)
使用したワラストナイトを、関西マテック社製、品番:KAP−170(D10=1.9μm、D50=6.8μm及びD90=25.8μm、嵩比重0.22)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして炭酸化硬化体を得た。
【0045】
(比較例1)
使用したワラストナイトを、関西マテック社製、品番:KTP−H01(D10=3.3μm、D50=17.6μm及びD90=68μm、嵩比重0.26)に変更したこと以外は実施例1と同様にして炭酸化硬化体を得た。
【0046】
(比較例2)
使用したワラストナイトを、関西マテック社製、品番:KGP−Y25(D10=0.9μm、D50=2.5μm及びD90=6.9μm、嵩比重0.31)に変更したこと以外は実施例4と同様にして炭酸化硬化体を得た。
【0047】
(比較例3)
使用したワラストナイトを、関西マテック社製、品番:KTP−N01(D10=2.7μm、D50=13.6μm及びD90=53.5μm、嵩比重0.33)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして炭酸化硬化体を得た。
【0048】
(実施例及び比較例の評価)
実施例及び比較例で得た炭酸化硬化体について、下記の要領で(1)硬化体の曲げ強度、(2)炭酸化反応率、(3)外観を評価した。
【0049】
(1)硬化体の曲げ強度…JIS A5209(陶磁器質タイル)記載の3点曲げ強度試験に準じて、炭酸化硬化体の曲げ強度を測定した。
【0050】
(2)炭酸化反応率
実施例1〜6及び比較例1〜3で得た炭酸化硬化体から、下記の表層炭酸化率及び中層炭酸化率を測定するための試料を採取した。得られた試料についてTG−DTA測定を、室温〜1000℃で行い、450℃〜700℃における重量減少割合ΔWを測定した。上記重量減少率ΔWに基づいて、下記の式(1)により炭酸化率を求めた。
【0051】
表層炭酸化率測定試料:炭酸硬化体表面から1mmの層を研磨し、表層粉を採取し、得られた表層粉を乳鉢にて混合し、表層炭酸化率測定のための試料を得た。
【0052】
中層炭酸化率:表層炭酸化率を測定するための表層粉を採取した後、炭酸硬化体の表層が除去された部分をさらに1mmの深さまで研磨し、中層粉を採取した。このようにして得られた中層粉を乳鉢にて混合し、中層炭酸化率測定のための試料を得た。
【0053】
炭酸化率(%)=(ΔW/27.48)×100…式(1)
(3)外観観察…得られた炭酸化硬化体の表面を目視により観察した。結果を下記の表1に以下の評価記号で示す。
【0054】
良好:表面に適度な光沢があり、緻密な構造を有することが認められた。
【0055】
不良:表面が粗く、光沢が見られなかった。手でこすると、ワラストナイトの粉末が剥離した。
【0056】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒体粒度の体積分布において、累積10%径が1.5〜2.1μm、かつ累積50%径が3.5〜8.5μm、かつ累積90%径が11.0〜39.0μmであり、かつ嵩比重が0.10〜0.30のワラストナイト単体もしくは該ワラストナイトを含む無機材料と、水とを混合し、賦形した後に、温度30℃〜120℃で炭酸化処理することを特徴とする無機炭酸化硬化体の製造方法。


【公開番号】特開2006−213559(P2006−213559A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27068(P2005−27068)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】