無機粒子を含む塗剤

【課題】 環境面にも配慮した水系の塗剤であって、接着性と濡れ性に劣るポリオレフィン系繊維に適用可能で、かつ容易に脱落することなく多量の無機粒子を均一に接着することが可能となり、無機粒子の機能を十分に発揮可能な塗剤を提供することにある。
【解決手段】ポリオレフィン系繊維によって構成される布帛に無機粒子を付着させるための塗剤であって、塗剤は、酸変性ポリオレフィン樹脂と、ポリビニルアルコールと、該無機粒子とを含む水性媒体であり、水性媒体中における含有量が、該無機粒子100質量部に対して、該酸変性ポリオレフィン樹脂と該ポリビニルアルコールとが合計で3〜50質量部である塗剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛に無機粒子を効率よく付着させるための塗剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
材料の高機能化の手法の一つとして、種々の機能を有する無機粒子を材料に含有させることは欠かせない技術となっている。無機粒子を材料に付着させるためには、バインダーとよばれる樹脂成分を接着剤として用いることがほとんどである(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、接着剤を用いない方法として、材料が繊維製品の場合であって、繊維表面がバインダーとして機能するバインダー繊維を繊維製品中に含ませることによって、無機粒子を固着させる方法が開示されている(特許文献2)。
【0004】
特許文献2の方法では、バインダー繊維が存在する箇所では、無機粒子を固着することが可能であるが、繊維製品を構成する素材として、バインダー繊維以外の繊維を併用して使用したい場合は、バインダー繊維以外の繊維が存在する箇所には無機粒子を担持できないため、布帛全体にわたって均一に付与することができないという問題がある。
【0005】
また、一方、繊維製品の素材として、ポリオレフィン系繊維からなるものは、柔軟性に優れることから各種の分野で利用されているが、ポリオレフィン系繊維は、疎水性が強いため、接着剤として、環境面に配慮した水系の接着剤との親和性が良好でなく、適用しにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平成4−194074号 特許請求の範囲、第2頁右下欄
【特許文献2】特許第3884730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、環境面にも配慮した水系の塗剤であって、接着性と濡れ性(塗剤の浸透性)に劣るポリオレフィン系繊維に適用可能で、かつ容易に脱落することなく、より多くの量の無機粒子を均一に接着することが可能となり、無機粒子の機能を十分に発揮可能な塗剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定のオレフィン樹脂とポリビニルアルコールの両者を併用した塗剤を用いることにより、無機粒子が有する機能を損なうことなく、多量にかつ良好に布帛に付着させることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリオレフィン系繊維によって構成される布帛に無機粒子を付着させるための塗剤であって、塗剤は、酸変性ポリオレフィン樹脂と、ポリビニルアルコールと、該無機粒子とを含む水性媒体であり、水性媒体中における含有量が、該無機粒子100質量部に対して、該酸変性ポリオレフィン樹脂と該ポリビニルアルコールとが合計で3〜50質量部であることを特徴とする塗剤を要旨とするものである。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明の塗剤は、ポリオレフィン系繊維によって構成される布帛に適用する。ポリオレフィン系繊維とは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンによって構成される繊維である。また、異種のポリオレフィン同士が複合してなる繊維であってもよい。また、ポリエステルやポリアミド等のポリオレフィン以外の他のポリマーとポリオレフィンとが芯鞘型やサイドバイサイド型等の形態で複合してなる繊維であってもよい。また、本発明の塗剤を適用する布帛の形態は、織物、編物、不織布等が挙げられる。中でも不織布は、布帛を構成する繊維同士の空隙が大きく、機能性を有する無機粒子を効率よく担持できることから、好ましく用いることができる。
【0012】
本発明の塗剤は、酸変性ポリオレフィン樹脂と、ポリビニルアルコールを含むことを必須の要件とする。すなわち、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールとの両者が、無機粒子をポリオレフィン系繊維に接着するための接着剤として機能する。酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールのどちらか一方が欠けると、本発明の目的が達成されず、すなわち、良好に無機粒子を接着し、かつ少ない量で多量の無機粒子を担持する接着剤として機能しなくなる。
【0013】
酸変性ポリオレフィン樹脂とは、オレフィン成分を主成分とし酸変性成分を一定量含むものである。主成分であるオレフィン成分は、モノマー単位として炭素数2または3のアルケン成分を選択するとよい。炭素数2または3のアルケンとしては、エチレン、プロピレンが挙げられ、これらのモノマーは2種以上を用いてもよい。炭素数2または3のアルケンは、ポリオレフィン系繊維と良好に密着し、かつ無機粒子の脱落を防ぐことができる。炭素数が4を超えると、生産性に乏しく高価になり、また、ポリオレフィン系繊維との密着性が低下する場合がある。
【0014】
一方、酸変性ポリオレフィン樹脂に含まれる酸変性成分としては、不飽和カルボン酸が挙げられる。不飽和カルボン酸は、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特に無水マレイン酸が好ましい。
【0015】
酸変性成分である不飽和カルボン酸は、ポリオレフィン樹脂中に、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等により共重合されていれば特にその形態は限定されない。なお、樹脂中に導入された酸無水物は、樹脂の乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した酸無水物構造を形成しているが、後述する水性媒体中では、その一部、または全部が開環してカルボン酸、あるいはその塩の構造をとる場合がある。
【0016】
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂に含まれる酸変性成分の量は、0.1〜8質量%であることがよい。酸変性ポリオレフィン樹脂に含まれる酸変性成分の含有量が0.1質量%未満では、酸変性ポリオレフィン樹脂を水性媒体中に分散させにくい。一方、酸変性成分の含有量が8質量%を超えると酸およびアルカリへの耐性が低下するため、布帛に無機粒子を付与した後、酸やアルカリの存在下で処理を行う場合等に、付着させた無機粒子を良好に担持しない傾向となる。酸変性成分の含有量は、0.5〜8質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0017】
本発明に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂には、酸変性ポリオレフィン樹脂全体の20質量%以下の範囲で、アクリル酸エステル成分もしくはメタクリル酸エステル成分を含有していることが好ましい。ポリオレフィン系繊維との密着性を高めるために、この範囲は1〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがさらに好ましい。アクリル酸エステル成分もしくはメタクリル酸エステル成分としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルが挙げられ、これらの混合物を用いてもよい。中でも、アクリル酸エチルを用いることにより、ポリオレフィン系繊維との密着繊維をより良好にすることができる。 酸変性ポリオレフィン樹脂に含まれるアクリル酸エステル成分もしくはメタクリル酸エステル成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されない。共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
【0018】
本発明に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂の融点は、ポリオレフィン系繊維との密着性、酸およびアルカリへの耐性の観点から、75〜150℃であることが好ましい。さらに、75〜130℃であることがより好ましく、75〜120℃であることが最も好ましい。
【0019】
酸変性ポリオレフィン樹脂の分子量は、特に限定されないが、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)としては、0.01〜3000g/10分が好ましく、より好ましくは0.5〜1000g/10分、さらに好ましくは1〜500g/10分、最も好ましくは1〜300g/10分のものを用いることができる。酸変性ポリオレフィン樹脂のMFRが0.01g/10分未満では、樹脂の溶液化や分散化は困難になる。一方、酸変性ポリオレフィン樹脂のMFRが3000g/10分を超えると、密着性が低下する場合がある。
【0020】
本発明において用いることのできる市販の酸変性ポリオレフィン樹脂としては、日本ポリエチレン社製レクスパールシリーズ、三井・デュポンポリケミカル社製ニュクレルシリーズ、アルケマ社製ボンダインシリーズなどが挙げられる。
【0021】
本発明の酸変性ポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、酸変性ポリオレフィン樹脂、アクリル酸エステル成分もしくはメタクリル酸エステル成分以外の成分を酸変性ポリオレフィン樹脂全体の20質量%以下の範囲で含有していてもよい。酸変性ポリオレフィン樹脂、アクリル酸エステル成分もしくはメタクリル酸エステル成分以外の成分としては、例えば、1−ペンテン、4−メチルー1−ペンテン、3−メチルー1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのアルケン類やジエン類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル類、ビニルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビニリデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄など、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
上記した酸変性ポリオレフィン樹脂は、塗剤中に小さな微粒子として分散しているが、この酸変性ポリオレフィン樹脂微粒子の数平均粒子径は、1μm以下であるとよい。1μm以下とすることによって、水性媒体中での分散状態を安定して保つことができる。また、低温造膜性の観点から0.5μm以下が好ましく、さらには、0.1μm以下であることがより好ましい。本発明では、繊維に付与する樹脂の合計量が少なくとも、粒子径が非常に小さいことから、多数の酸変性ポリオレフィン樹脂粒子が無機粒子とポリオレフィン系繊維とを点接着する。したがって、接着剤として機能する酸変性ポリオレフィン樹脂が無機粒子を覆うことなく、繊維に良好に担持した状態で、無機粒子の機能を効果的に発揮させることができる。なお、酸変性ポリオレフィン樹脂粒子の重量平均粒子径に関しても、1μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。粒子の分散度(mw/mn)は、水性分散体の保存安定性、及び低温造膜性の観点から、1〜3が好ましく、1〜2.5がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
【0023】
本発明で用いるポリビニルアルコールは、特に限定されないが、重合度は、2000以下のものを好ましく用いることができ、より好ましくは1000以下である。重合度を2000以下のものは、溶液にした際の粘度が高くないため、布帛に付与するときに取り扱い性が良好であり、塗剤を均一に付着することができ、結果として、無機粒子を均一に付与することができる。ケン化度は特に限定されず、例えば、ケン化度30〜99.9モル%のものを適宜選択して用いればよい。
【0024】
本発明の塗剤には、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールとが存在していることを必須の要件としているので、両者が存在していればよく、その混合比率は、固形分の質量比で、酸変性ポリオレフィン樹脂/ポリビニルアルコール=90/10〜5/95であればよい。好ましくは、酸変性ポリオレフィン樹脂/ポリビニルアルコール=75/25〜25/75である。
【0025】
本発明で用いる無機粒子としては、各種の機能性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、アルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)、炭化珪素(SiC)、酸化チタン(TiO2)、その他、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)等の固体塩や固体塩基が挙げられる。アルミナ、シリカ、炭化珪素は、研磨材粒子として用いられるものであり、これらの無機粒子を担持した布帛は研磨シートとして用いることができる。また、上記したシリカは、インクの吸収性が良好であるため、シリカを担持した布帛は、鮮明な印刷を施すための印刷基材として用いることができる。酸化チタンは、抗菌剤として用いられるものであり、酸化チタンを担持した布帛は、抗菌シートとして用いることができる。また、上記した以外に、機能性を有する無機粒子として、種々の粒子状の多孔質体や脱臭剤が挙げられる。このような多孔質体や脱臭剤を担持した布帛は、脱臭シートや脱臭フィルターとして用いることができる。無機粒子の形状は特に限定されないが、得られる機能性シートの外観や硬さ、取り扱い性等を考慮すると、粒子径は100μm以下程度がよい。
【0026】
本発明の塗剤である水性媒体中には、無機粒子100質量部に対して、接着剤として機能する酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールとが合計で3〜50質量部含有している。無機粒子100質量部に対して、接着剤となる酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールの合計量が3質量部以上とすることにより、ポリオレフィン系繊維表面に無機粒子を良好に接着することができる。また、接着剤となる酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールの合計量を50質量部以下とすることにより、接着剤を多量に用いることなく、無機粒子表面の大部分を接着剤で覆うことなく、無機粒子の機能性を阻害せず、効率よく性能を発揮させることが可能となる。なお、より好ましくは、無機粒子100質量部に対して、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールとの合計が10〜30質量部である。
【0027】
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールとを併用することにより、無機粒子を多量に、かつ効率よく繊維に付着させることができる理由は定かではないが、本発明者は以下のように推察する。すなわち、酸変性ポリオレフィン樹脂が多数の微粒子の状態で存在するため、無機粒子とは点接触の状態で繊維との繋ぎ(接着)の役割を果たし、またさらに、ポリビニルアルコールの存在によって、酸変性ポリオレフィン樹脂の微粒子と無機粒子との点接触部分を強化するように、ポリビニルアルコールがこれらの点接触部分を面で覆うことによって強固な接着状態を形成して無機粒子の脱落を防ぎ、少ない接着剤の量であるにもかかわらず、多量の無機粒子を良好に繊維表面に担持できると考える。
【0028】
本発明の塗剤である水性媒体中には、アルコールが含まれているとよい。塗剤がアルコールを含むことにより、ポリオレフィン系繊維により構成される布帛に塗剤を付与する際、水性媒体である塗剤が布帛表面で弾かれることなく、構成繊維間に塗剤が良好に浸透しやすく、布帛の内部まで塗剤を浸透させて無機粒子を布帛内部に良好に担持させることが可能となる。用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられる。これらのアルコールは、布帛に塗剤を付与した後の乾燥処理にて、揮発させるため、無機粒子と繊維とを接着する接着剤中には、残存させないものである。塗剤中において、変性ポリオレフィン樹脂の水性化促進にも寄与し、かつ布帛に付与した後に除去しやすいという理由から、上記したアルコール類の中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールを用いることが好ましい。水性媒体中に含まれるアルコールの量は、水性媒体全体に対して、質量比で5〜50%程度がよい。
【0029】
本発明の塗剤には、架橋剤を添加してもよい。架橋剤が添加されることにより、接着剤として機能や耐久性をより向上することが期待できる。架橋剤は、水性散体中の酸変性ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.01〜100質量部、好ましくは0.1〜60質量部添加すればよい。架橋剤の添加量が0.01質量部未満の場合は、接着機能向上の程度が小さく、100質量部を超える場合は加工性が劣る傾向となる。架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属錯体等を用いることができ、このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。また、これらの架橋剤を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
次に本発明の塗剤を得る方法について説明する。
【0031】
本発明の塗剤は、上記した酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体と、ポリビニルアルコールの水溶液と、無機粒子とを混合することにより得られる。混合する際には、攪拌しながら添加するとよい。具体的には、ポリビニルアルコールの水溶液を攪拌しながら、所定量の無機粒子を混合し、この混合溶液を攪拌しながら、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を添加することにより得ることができる。また、無機粒子としては、固体状のものをいきなり投入混合するのではなく、あらかじめ水性媒体中に無機粒子を分散させた分散溶液を用いてもよい。また、塗剤にアルコールを含有させる場合は、所定量のアルコールを攪拌しながら、無機粒子もしくは無機粒子が分散してなる分散溶液を投入し、次いで、ポリビニルアルコール水溶液を攪拌しながら混合し、最後に酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を添加するとよい。
【0032】
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体は、含有する酸成分の全てまたは一部が、水性媒体中で塩基性化合物によって中和されることによって、水性分散体の形態をとることができる。なお水性媒体とは、水または、水と水溶性の有機溶媒との混合液のことである。
【0033】
すなわち、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体は、酸変性ポリオレフィン樹脂、塩基性化合物、有機溶媒と、水とを80〜280℃の温度で混合する方法によって調製することができる。この方法により、乳化剤成分や保護コロイド作用を有する化合物等の不揮発性水性分散化助剤を含有しなくとも、粒子径が微細で良好な水性分散体を得ることができる。
【0034】
水性分散体を調製する際に使用する塩基性化合物としては、特に限定されず、アンモニア、有機アミンなどのアミン類、アルカリ金属化合物などが挙げられる。水溶性の有機溶媒としては、20℃における水に対する溶解性が50g/L以上でかつ30〜250℃の沸点を有する、例えば、アルコール類、ケトン類、エーテル類などが挙げられる。なお水性分散化後に、水性分散体中に含有されるこの有機溶媒は、必要に応じて、脱溶剤処理によってその一部または全てを除去しても構わない。脱溶剤処理は、加熱や減圧などの方法によって実施することができる。
【0035】
本発明の塗剤をポリオレフィン系繊維によって構成される布帛に付与する方法は、特に限定されない。例えば、布帛上に塗剤を、マイヤーバーコーティング、エアナイフコーティング、グラビアロールコーティング等により付与してもよく、また、スプレー法により付与してもよい。また、塗剤浴に布帛を浸漬してもよい。塗剤を付与した後は、適宜の温度で乾燥処理を施し、塗剤中の水またはアルコール、有機溶媒等を除去することにより、酸変性ポリオレフィンおよびポリビニルアルコールを介して無機粒子をポリオレフィン系繊維に付着させることができ、無機粒子が付着してなる機能性布帛を得ることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の塗剤は、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールを含むものであり、無機粒子とポリオレフィン系繊維との接着性に優れることから、多量の無機粒子を良好に接着することができる。接着剤となる変性ポリオレフィン樹脂およびポリビニルアルコールの量が、付着させる無機粒子の量に対して半分以下の量で、良好に無機粒子を担持させることができるため、無機粒子表面が接着剤で覆われることなく、無機粒子の機能を十分に発揮しうる機能性布帛を得ることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明は下記実施例によって何ら制限されるものではない。
【0038】
なお、後述する各種の特性は、以下の方法によって測定した。
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂に含まれる不飽和カルボン酸の含有量
酸変性ポリオレフィン樹脂の酸価をJIS K5407に記載の方法に準じて測定し、その値から不飽和カルボン酸の含有量を求めた。
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂の構成
オルトジクロロベンゼン(d4)中で、120℃にて1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)
酸変性ポリオレフィン樹脂のMFRをJIS K7210に記載の方法に準じて測定した。
(4)酸変性ポリオレフィン樹脂の融点
酸変性ポリオレフィン樹脂の融点を示差走査熱量測定に基づいて評価した。
(5)ポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径
日機装社製「マイクロトラック粒度分布計 UPA150(MODEL No.9340)」を用いて求めた。
【0039】
[酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体の準備]
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、酸変性ポリオレフィン樹脂(ボンダインHX−8290 アルケマ社製)60.0g、有機溶媒としてイソプロパノール60.0g、塩基性化合物としてトリエチルアミン3.0g(酸変性ポリオレフィン樹脂中の無水マレイン酸のカルボキシル基に対して1.2倍当量)、および177.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈殿は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。系内温度を120℃に保って、さらに60分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧ろ過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を得た(固形分濃度25質量%)を得た。水性分散体中のポリオレフィン樹脂粒子の数平均粒子径は50nmであった。
【0040】
なお、用いた酸変性ポリオレフィン樹脂(ボンダインHX−8290)の組成等は、以下のとおりである。
ポリオレフィン樹脂組成(質量%):
エチレン 80質量%、アクリル酸エチル 18質量%、無水マレイン酸 2質量%
MFR(g/10分):65
融点(℃):81
【0041】
[ポリビニルアルコール水溶液の準備]
ヒーター付きの密閉できる耐圧容器を備えた撹拌機を用いて、ポリビニルアルコール(JF−03 日本酢ビポバール社製 固形分10質量% ケン化度98〜98モル%、重合度300)100gを水900gにゆっくり攪拌しながら添加し、ヒーターの電源を入れて90℃まで昇温し、この状態を保持したまま30分間攪拌した。その後、ヒータの電源を切って、水溶液を室温まで冷却することによりポリビニルアルコール水溶液(固形分10質量%)を得た。
【0042】
実施例1
下記により実施例1の塗剤を準備した。
すなわち、エタノール22gを攪拌しながら、無機粒子としてコロイダルシリカ(スノーテックスZL 日産化学社製 SiO240% 粒子径70〜100μm)50gをエタノール中に投入し、次いで、ポリビニルアルコール水溶液20gを攪拌しながら添加した。さらに、十分な攪拌下において、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体8gをゆっくり添加し、乳白色の塗剤を得た。塗剤中において、シリカ100質量部に対して、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリビニルアルコールの合計量は、20質量部とした。
【0043】
実施例1の塗剤を用いて、芯がポリエチレンテレフタレート、鞘がポリエチレンからなるポリオレフィン系繊維によって構成されるスパンボンド不織布(エルベス S0503WDO ユニチカ社製 目付50g/m2)に、グラビアコート法により塗剤を付与した後、110℃に設定した乾燥機内に投入し、2分間熱処理を施し、シリカが付着してなる機能性布帛を得た。
【0044】
比較例1
実施例1において、塗剤として、ポリビニルアルコール水溶液を用いなかったこと、得られる塗剤中において、シリカ100質量部に対して、酸変性ポリオレフィン樹脂を20質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の塗剤を得た。
比較例1の塗剤を用いて、実施例1と同様にしてシリカが付着してなる布帛を得た。
【0045】
比較例2
実施例1において、塗剤として、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体を用いなかったこと、得られる塗剤中において、シリカ100質量部に対して、ポリビニルアルコールを20質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の塗剤を得た。
比較例2の塗剤を用いて、実施例1と同様にしてシリカが付着してなる布帛を得た。
【0046】
比較例3
実施例1において、エタノールおよび酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体は用いず、実施例1のおいて用いたコロイダルシリカおよびポリビニルアルコール水溶液を用い、溶液中に、シリカ100質量部に対してポリビニルアルコールが20質量部となるように混合した。得られた混合溶液を、実施例1で用いたスパンボンド不織布に付与しようとしたが、不織布と混合溶液との親和性がなく、不織布表面で溶液が弾いて不織布内に浸透せず、シリカを付着することが極めて困難であり、無機粒子が付着してなる不織布を得ることができなかった。
【0047】
[機能性布帛の評価]
得られた実施例1、比較例1,2の布帛について、下記評価を行った。
(1)付着性
得られた布帛において、シリカの付着量で、下記により評価した。
○:シリカの付着量が15g/m2以上であった。
△:シリカの付着量が15g/m2未満であり、10g/m2以上であった。
×:シリカの付着量が10g/m2未満であった。
(2)接着性
剥離試験で用いるセロハンテープ(セロテープ(登録商標)CT−18 幅18mm、ニチバン社製)長さ30mmに切断したものを、布帛表面に付着させた後、垂直方向に一定力で剥がした際のセロハンテープに付着したシリカの量によって、下記の評価をした。
○:セロハンテープへのシリカの付着がほとんどみられない。
△:セロハンテープの一部にシリカが付着。
×:セロハンテープの全面にシリカが付着。
【0048】
評価結果は、以下のとおりである。
【0049】
すなわち、実施例1の機能性布帛は、付着性および接着性ともに○であり、シリカは、18g/m付着しており、容易に脱落するものではなかった。
【0050】
一方、比較例1の布帛は、付着性は○であったが、接着性が×であり、シリカが容易に脱落してしまい、比較例1の塗剤では、良好に接着剤として機能しなかった。
【0051】
比較例2の布帛は、付着性は△、接着性は○であった。すなわち、比較例2の塗剤では、本発明が目的とする程度の多くの量の無機粒子を接着できるものではなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系繊維によって構成される布帛に無機粒子を付着させるための塗剤であって、塗剤は、酸変性ポリオレフィン樹脂と、ポリビニルアルコールと、該無機粒子とを含む水性媒体であり、水性媒体中における含有量が、該無機粒子100質量部に対して、該酸変性ポリオレフィン樹脂と該ポリビニルアルコールとが合計で3〜50質量部であることを特徴とする塗剤。
【請求項2】
酸変性ポリオレフィン樹脂が、炭素数2または3のアルケンをモノマー単位とするオレフィン成分を主成分とし、酸変性成分を0.1〜8質量%含むポリオレフィンであることを特徴とする請求項1記載の塗剤。
【請求項3】
酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の塗剤。
【請求項4】
水性媒体がアルコールを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗剤。
【請求項5】
ポリオレフィン系繊維によって構成される布帛に、請求項1〜4のいずれか1項記載の塗剤を付与した後、乾燥することにより、酸変性ポリオレフィン樹脂あるいはポリビニルアルコールを介して無機粒子をポリオレフィン系繊維に付着させることを特徴とする機能性布帛の製造方法。
【請求項6】
請求項5の製造方法によって得られることを特徴とする無機粒子が付着してなるポリオレフィン系繊維により構成される機能性布帛。


【公開番号】特開2011−69029(P2011−69029A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222624(P2009−222624)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】