説明

無機粒子スラリー用流動性改良剤

【課題】
多価金属イオンが存在するような無機粒子スラリー中においても、優れた流動特性を付与し、かつその流動性を維持できる流動性改良剤を提供すること。
【解決手段】
エチレン性不飽和カルボン酸(a1)、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)及びアルコキシポリオキシアルキレングリコールのエチレン性不飽和カルボン酸エステル(a3)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有してなり、
(a1)単位、(a2)単位及び(a3)単位のモル数に基づいて、(a1)単位の含有量が9.9〜79.9モル%、(a2)単位の含有量が0.1〜40モル%、(a3)単位の含有量が20〜90モル%とからなることを特徴とする流動化剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子スラリー用の流動性改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無機粒子を水性媒体中に分散し、スラリー化するに際してはポリカルボン酸塩系薬剤が使用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−188986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のポリカルボン酸塩系薬剤では、多価金属イオンが存在するような無機粒子スラリー中においては、スラリーが著しく増粘するという問題がある。
本発明の目的は、多価金属イオンが存在するような無機粒子スラリー中においても、優れた流動特性を付与し、かつその流動性を維持できる流動性改良剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の無機粒子スラリー用の流動性改良剤の特徴は、エチレン性不飽和カルボン酸(a1)単位、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)単位及びエチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)単位のモル数に基づいて、エチレン性不飽和カルボン酸(a1)単位の含有量が9.9〜79.9モル%、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)単位の含有量が0.1〜40モル%、エチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)単位の含有量が20〜90モル%である点を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の無機粒子スラリー用流動化剤は、多価金属イオンが存在するようなスラリー中においても、優れた流動性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
エチレン性不飽和カルボン酸(a1)としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸及びエチレン性不飽和ジカルボン酸等が含まれる。
【0008】
エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、脂肪族モノカルボン酸、脂環式モノカルボン酸及び芳香族モノカルボン酸等が使用できる。
【0009】
脂肪族モノカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、3−ブテン酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸、4−ペンテン酸、3−メチル−2−ブテン酸、3−メチル−3−ブテン酸、2−メチル−3−ブテン酸、2−メチル−2−ブテン酸、2−エチル−2−プロペン酸、2−ヘキセン酸、4−メチル−2−ペンテン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、2−ヘプテン酸、4,4−ジメチル−2−ペンテン酸、2−オクテン酸、3−メチル−2−ヘプテン酸、2−ノネン酸、3−メチル−2−オクテン酸、2−デケン酸及び2−ヒドロキシプロペン酸等が挙げられる。
「(メタ)アクリ・・」とは、メタクリ・・、アクリ・・を意味する(以後も同様とする)。
【0010】
脂環式モノカルボン酸としては、1−シクロペンテンカルボン酸、3−シクロペンテンカルボン酸、4−シクロペンテンカルボン酸、1−シクロヘキセンカルボン酸、3−シクロヘキセンカルボン酸、4−シクロヘキセンカルボン酸、1−シクロヘプテンカルボン酸、3−シクロヘプテンカルボン酸、4−シクロヘプテンカルボン酸、5−シクロヘプテンカルボン酸、1−シクロオクテンカルボン酸、3−シクロオクテンカルボン酸、4−シクロオクテンカルボン酸、5−シクロオクテンカルボン酸、1−シクロノネンカルボン酸、3−シクロノネンカルボン酸、4−シクロノネンカルボン酸、5−シクロノネンカルボン酸、1−シクロデケンカルボン酸、3−シクロデケンカルボン酸、4−シクロデケンカルボン酸及び5−シクロデケンカルボン酸等が挙げられる。
【0011】
芳香族モノカルボン酸としては、o−スチレンカルボン酸、p−スチレンカルボン酸、桂皮酸、アトロパ酸、5−ビニル−1−ナフタレンカルボン酸、4−ビニル−1−ナフタレンカルボン酸及び4−ビニル−1−アントラキノンカルボン酸等が挙げられる。
【0012】
不飽和ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及びこれらの分子内酸無水物等が含まれる。
【0013】
脂肪族ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ブテン二酸、2−ペンテン二酸、3−ペンテン酸、4−ペンテン酸、2−メチル−2−ブテン二酸、2−エチル−2−プロペン酸、2−ヘキセン二酸、2−ヘプテン二酸、2−オクテン酸、3−メチル−2−ヘプテン二酸、2−ノネン二酸、2−デケン二酸及び2−ヒドロキシプテンロ二酸等が挙げられる。
【0014】
脂環式ジカルボン酸としては、1,2−シクロペンテンジカルボン酸、1,3−シクロペンテンジカルボン酸、1,4−シクロペンテンジカルボン酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、1,3−シクロヘキセンジカルボン酸、1,4−シクロヘキセンジカルボン酸、1,2−シクロヘプテンジカルボン酸、1,3−シクロヘプテンジカルボン酸、1,4−シクロヘプテンジカルボン酸、1,5−シクロヘプテンジカルボン酸、1,2−シクロオクテンジカルボン酸、1,3−シクロオクテンジカルボン酸、1,4−シクロオクテンジカルボン酸、1,5−シクロオクテンジカルボン酸、1,2−シクロノネンジカルボン酸、1,3−シクロノネンジカルボン酸、1,4−シクロノネンジカルボン酸、1,5−シクロノネンジカルボン酸、1,2−シクロデケンジカルボン酸、1,3−シクロデケンジカルボン酸、1,4−シクロデケンジカルボン酸及び1,5−シクロデケンジカルボン酸等が挙げられる。
【0015】
芳香族ジカルボン酸としては、o,p−スチレンジカルボン酸、o,p−スチレンジカルボン酸、4−ビニル−1,2−ナフタレンジカルボン酸及び4−ビニル−1,3−アントラキノンジカルボン酸等が挙げられる。
【0016】
不飽和ジカルボン酸の分子内酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸及び無水シトラコン酸等が挙げられる。
【0017】
これらのエチレン性不飽和カルボン酸のうち、流動特性の観点等から、脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸及び無水マレイン酸、特に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0018】
エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)としては、エチレン性不飽和カルボン酸(a1)のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、アンモニウム塩及び/又は第4級有機アンモニウム塩等が含まれる。
なお、エチレン性不飽和カルボン酸は、エチレン性不飽和カルボン酸(a1)で説明したエチレン性不飽和モノカルボン酸及びエチレン性不飽和ジカルボン酸等が含まれ、好ましい範囲は上記と同じである。
【0019】
アルカリ金属塩としては、リチウム、カリウム又はナトリウム等の塩が挙げられる。
アルカリ土類金属塩としては、カルシウム又はマグネシウム等の塩が挙げられる。
アミン塩としては、炭素数2〜6の脂肪族アミン、炭素数3〜6の脂環式アミン又は炭素数6〜8の芳香族アミン等の塩が使用できる。
【0020】
脂肪族アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン及びエチレンジアミン等が挙げられる。
【0021】
脂環式アミンとしては、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン及びシクロへキシルアミン等が挙げられる。
【0022】
芳香族アミンとしては、アニリン、ピリジン、ピペリジン、ベンジルアミン及びフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0023】
第4級有機アンモニウム塩としては、炭素数4〜8の有機アンモニウム塩等が使用でき、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリメチルエチルアンモニウム塩、N−メチルピリジニウム塩及びN−メチルイミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0024】
これらの塩のうち、アルカリ金属塩、アミン塩及び第4級有機アンモニウム塩が好ましく、さらに好ましくはリチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩及び第4級有機アンモニウム塩、特に好ましくはナトリウム塩及び第4級有機アンモニウム塩である。
【0025】
すなわち、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)のうち、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸のアルカリ金属塩、アミン塩及び/又は第4級有機アンモニウム塩が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸又はマレイン酸のアルカリ金属塩、アミン塩及び/又は第4級有機アンモニウム塩、特に好ましくは(メタ)アクリル酸アクリル酸のナトリウム塩又は第4級有機アンモニウム塩である。
【0026】
エチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキレンエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル及びこれらの混合物等が含まれる。
【0027】
オキシアルキレンとしては、炭素数2〜4のオキシアルキレン(オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン)が含まれる。
【0028】
ポリオキシアルキレンは、1種のオキシアルキレンから構成されてもよく、又は2種以上のオキシアルキレンから構成されてもよい。2種以上のオキシアルキレンから構成される場合、結合様式はブロック、ランダム及びこれの混合のいずれでもよい。
【0029】
ポリオキシアルキレン基の重合度としては、流動性改良等の観点から、2〜90が好ましく、さらに好ましくは4〜60、特に好ましくは10〜40である。
【0030】
アルコキシ基としては、炭素数1〜30の炭化水素基等が含まれ、直鎖アルキルオキシ基及び分岐鎖アルキルオキシ基等が使用できる。
【0031】
直鎖アルキルアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、ヘプタデシルオキシ、オクタデシルオキシ、ノナデシルオキシ、イコシルオキシ、ヘニコシルオキシ、ドコシルオキシ、トリコシルオキシ、テトラコシルオキシ、ヘプタコシルオキシ、ヘキサコシルオキシ、ヘプタコシルオキシ、オクタコシルオキシ、ノナコシルオキシ及びトリアコンシルオキシ等が挙げられる。
【0032】
分岐鎖アルキルアルコキシ基としては、イソプロピルオキシ、イソブチルオキシ、t−ブチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、イソトリデシルオキシ、イソオクタデシルオキシ及びイソトリアコンシルオキシ等が挙げられる。
【0033】
これらのアルコキシ基のうち、流動性改良等の観点から、直鎖アルキルオキシ基が好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜18の直鎖アルキルオキシ基、特に好ましくはメトキシ、エトキシ及びオクタデシルオキシである。
【0034】
共重合体(A)は、エチレン性不飽和カルボン酸(a1)、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)及びエチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)以外に、他のエチレン性不飽和単量体(a4)を構成単量体として含むことができる。
【0035】
他のエチレン性不飽和単量体(a4)としては、エチレン性不飽和カルボン酸(a1)、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)及びエチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)と共重合できれば特に制限はなく、オレフィン、エチレン性不飽和ニトリル及びエチレン性不飽和アミド等が挙げられる。
【0036】
オレフィンとしては、炭素数2〜20のα−オレフィン(エチレン、プロピレン、ブチレン、へキシレン、オクチレン、ウンデシレン、テトラデシレン及びノナデシレン等)、ジイソブチレン、ブタジエン、ピペリレン、クロロプレン、ピネン、リモネン、インデン、シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネン等が挙げられる。
【0037】
エチレン性不飽和ニトリルとしては、(メタ)アクリロニトリル、シアノプロペン及びシアノペンテン等が挙げられる。
【0038】
エチレン性不飽和アミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−アミノエチル)(メタ)アクリルアミド及びN−(2−ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0039】
エチレン性不飽和カルボン酸(a1)単位の含有量(モル%)は、エチレン性不飽和カルボン酸(a1)単位、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)単位及びエチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)単位のモル数に基づいて、9.9〜79.9が好ましく、さらに好ましくは20〜69.5、特に好ましくは30〜59、最も好ましくは、35〜50である。この範囲内であると、流動性がさらに良好となる。
【0040】
エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)単位の含有量(モル%)は、エチレン性不飽和カルボン酸(a1)単位、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)単位及びエチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)単位のモル数に基づいて、0.1〜40が好ましく、さらに好ましくは0.5〜35、特に好ましくは1〜30、最も好ましくは、5〜20である。この範囲内であると、流動性がさらに良好となる。
【0041】
エチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)単位の含有量(モル%)は、エチレン性不飽和カルボン酸(a1)単位、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)単位及びエチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)単位のモル数に基づいて、20〜90が好ましく、さらに好ましくは30〜79.5、特に好ましくは40〜69、最も好ましくは、45〜60である。この範囲内であると、流動性がさらに良好となる。
【0042】
他のエチレン性不飽和単量体(a4)を含む場合、他のエチレン性不飽和単量体(a4)の含有量(モル%)は、エチレン性不飽和カルボン酸(a1)単位、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)単位及びエチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)単位のモル数に基づいて、0.1〜40が好ましく、さらに好ましくは0.5〜25、特に好ましくは1〜10であるが、他のエチレン性不飽和単量体(a4)を含まないことが最も好ましい。
【0043】
共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、流動性の観点から、5,000〜100,000が好ましく、さらに好ましくは10,000〜80,000、特に好ましくは15,000〜70,000、最も好ましくは、20,000〜50,000である。
この範囲であると、流動性が著しく優れ、かつその流動性を長期間にわたって維持することができる。
【0044】
なお、重量平均分子量(Mw)は、分子量既知の(ポリ)エチレングリコールを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される(カラム温度40℃、溶離液 メタノール:イオン交換水:酢酸ナトリウム=800:1200:15(重量比)、流速0.8ml/分、試料濃度:0.4重量%溶離液溶液。)。
【0045】
共重合体(A)は、通常のビニルモノマーの重合方法を用いて得ることができ、重合方法としては懸濁重合、塊状重合及び溶液重合等が適用でき、生産性の観点等から、溶液重合が好ましい。
【0046】
共重合体(A)は、エチレン性不飽和カルボン酸(a1)、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)、エチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)及び必要により他のエチレン性不飽和単量体(a4)を共重合して製造する方法(方法1);エチレン性不飽和カルボン酸(a1)、エチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)及び必要により他のエチレン性不飽和単量体(a4)を共重合してから、塩基(アルカリ金属水酸化物やアンモニア等)で中和して製造する方法(方法2);並びにこれらの(方法1)及び(方法2)を併用する方法(方法3)等により得ることができる。
【0047】
重合には、重合触媒を使用することができる。重合触媒としては、通常の重合触媒等が用いられ、アゾ化合物、過硫酸塩、無機過酸化物、レドックス触媒及び有機過酸化物等が含まれる。アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−アルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]及び1,1’−アゾビス(1ーアセトキシー1−フェニルエタン)等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等が挙げられる。無機過酸化物としては、過硼酸塩及び過酸化水素等が挙げられる。レドックス触媒としては、アスコルビン酸−過酸化水素等が挙げられる。有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。これらの重合触媒は、単独又は混合して用いられてもよい。これらのうち、過硫酸塩及びアゾ化合物が好ましく、さらに好ましくは過硫酸塩及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、特に好ましくは過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムである。
【0048】
重合触媒を使用する場合、重合触媒の使用量(重量%)は、構成単量体の重量に基づいて、3〜100が好ましく、さらに好ましくは8〜80、特に好ましくは10〜60である。
【0049】
また、必要によりラジカル重合用連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えばチオカルボン酸(n−ラウリルメルカプタン、メルカプトエタノール及びメルカプトプロパノール等)、チオール酸(チオグリコール酸及びチオリンゴ酸等)、2級アルコール(イソプロパノ−ル等)、アミン(ジブチルアミン等)、次亜燐酸塩(次亜燐酸ナトリウム等)等が挙げられる。
【0050】
連鎖移動剤を使用する場合、連鎖移動剤の使用量(重量%)は、構成単量体の重量に基づいて、0.01〜10が好ましく、さらに好ましくは0.05〜5、特に好ましくは0.1〜1である。
【0051】
溶液重合及び懸濁重合の場合、溶媒としては、水(水道水、イオン交換水及び工業用水等)、アルコール溶剤(メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等)及び/又は芳香族溶剤(トルエン及びキシレン等)等が使用できる。これらのうち、水、水及びアルコール溶剤の混合溶媒が好ましく、さらに好ましくは水及びアルコールの混合溶媒、特に好ましくはイオン交換水及びイソプロピルアルコールの混合溶媒である。
溶媒を使用する場合、この使用量(重量%)は、構成単量体の全重量に基づいて、50〜900が好ましく、さらに好ましくは60〜800、特に好ましくは100〜600である。
【0052】
重合反応温度は、40〜130℃程度が好ましく、重合反応時間は、1〜15時間程度が好ましい。
【0053】
なお、構成単量体の全量又は一部を滴下しながら重合してもよい。また、重合触媒の全量又は一部を滴下しながら重合してもよい。また、溶媒の全量又は一部を構成単量体又は重合触媒と共に滴下しながら重合してもよい。一方、溶媒の全量を重合槽に仕込んでおき溶媒を除去しながら重合してもよい。これらのうち、生産性の観点等から、構成単量体と重合触媒との全量を滴下する方法及び溶媒の一部を構成単量体又は重合触媒と共に滴下する方法が好ましく、さらに好ましくは構成単量体と重合触媒との全量を溶剤の一部と共に滴下する方法である。
【0054】
共重合体(A)の形態としては特に限定はなく、液状でも、固状でもよい。
共重合体(A)が液状の場合、水性溶媒に共重合体(A)が溶解又は分散した状態を意味する。この場合、共重合体(A)を懸濁重合又は溶液重合等によって得て、溶媒をすべて除去しないで得てもよいし、塊状重合等によって得た共重合体(A)を水性溶媒に溶解又は分散させて得てもよい。
水性溶媒としては、水、炭素数1〜6のアルコール(エチルアルコール、メチルアルコール、エチレングリコール及びジエチレングリコール等)及び炭素数1〜6のケトン(メチルイソブチルケトン及びアセトン等)等が挙げられ、これらは単独又は混合して用いてもよい。
【0055】
一方、共重合体(A)が固状の場合、共重合体(A)からなる固体であってもよく、液状の共重合体(A)を粉体に担持させた粉であってもよい。
共重合体(A)からなる固体の場合、塊状重合によって得てもよいし、共重合体(A)を含む溶液又は分散液を懸濁重合又は溶液重合等によって得てから、溶媒を除去することにより得てもよい。
共重合体(A)を含む溶液又は分散液から溶媒を除去する方法としては、乾燥粉砕法、凍結粉砕法、スプレイドライヤー法及びドラムドライヤー法等の公知の方法を用いることができる。これらのうち、乾燥粉砕法及びスプレイドライヤー法が好ましい。
固状の共重合体(A)の大きさ(mm;最大長)は、本発明の流動化剤の溶解性の観点等から、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3、特に好ましくは0.08〜1である。
液状の共重合体(A)を粉体に担持させる場合、粉体としては、活性炭、炭酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、シラスバルーン及びベントナイト等が挙げられる。
これらの粉体に液状の共重合体(A)を担持させる方法としては、公知の撹拌混合機(リボンミキサー及びヘンシェルミキサー等)を使用して、粉体と液状の共重合体(A)とを撹拌混合する方法等が適用できる。
共重合体(A)の形態のうち、液状が好ましく、さらに好ましくは水性溶媒に共重合体(A)が溶解した状態である。
【0056】
本発明の無機粒子スラリー用流動性改良剤には、さらに、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B1)及び/又は一般式(2)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B2)を含有してもよい。
まず、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B1)について説明する。
【0057】

{R-(OA-)ni}m Q (1)
【0058】
Qは非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Rは炭素数1〜3のアルキル基、プロペニレン基及び/又は水素原子を表し、m個のR及びm個の(OA)niは同じでも異なっていてもよく、niは0〜100の整数、mは2〜4の整数、iは1〜mの整数を表し、m個のniは同じでも異なってもよいが少なくとも1個は1以上であり、OAの総数(Σni×m)は10〜100である。
【0059】

-(OA-)p OH (2)
【0060】
は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、pは1〜100の整数を表す。
【0061】
非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基(Q)を構成することができる二又は三糖類としては、蔗糖(サッカロース)、トレハロース、イソトレハロース、イソサッカロース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース及びプランテオース等が含まれる。これらのうち、流動性の観点等から、蔗糖、トレハロース、ゲンチアノース、ラフィノース及びプランテオースが好ましく、さらに好ましくはトレハロース及び蔗糖であり、供給性及びコストの観点等から特に好ましくは蔗糖である。これらは単独で、または混合して用いてもよい。
【0062】
mは、2〜4の整数が好ましく、さらに好ましくは3又は4、特に好ましくは3である。この範囲であると流動性がさらに良好となる。このmは、非還元性の二又は三糖類の1級水酸基の数に対応する。
【0063】
niは、0〜100の整数が好ましく、さらに好ましくは2〜98の整数、特に好ましくは5〜95の整数、最も好ましくは7〜90の整数である。この範囲であると流動性がさらに良好となる。
iは、1〜mの整数を表し、m個のniは同じ値でも異なった値でもよいが、少なくとも1個は1以上である。
【0064】
OAの総数(Σni×m)は、10〜100が好ましく、さらに好ましくは25〜95、特に好ましくは30〜90、最も好ましくは35〜85である。この範囲であると流動性がさらに良好となる。
【0065】
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(OA)としては、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン及びこれらの混合等が含まれる。これらのうち、流動性の観点等から、オキシエチレン、オキシエチレンを含有する混合物及びオキシプロピレンが好ましく、さらに好ましくはオキシエチレンを含有する混合物である。
ni個のOAは、同じでも異なっていてもよく、m個の(OA)niは同じでも異なってもよい。
【0066】
OA内に複数種類のオキシアルキレン基を含む場合、これらのオキシアルキレン基の結合順序(ブロック状、ランダム状及びこれらの組合せ)及び含有割合には制限ないが、ブロック状又はブロック状とランダム状との組合せを含むことが好ましい。また、この場合、オキシエチレンを含むことが好ましく、オキシエチレンの含有割合(重量%)は、オキシアルキレン基の全重量に基づいて、2〜30が好ましく、さらに好ましくは3〜27、特に好ましくは4〜23、最も好ましくは5〜20である。
【0067】
OAにオキシエチレン基と、オキシプロピレン基及び/又はオキシブチレン基とを含む場合、反応残基(Q)から離れたところにオキシプロピレン及び/又はオキシブチレンが位置することが好ましい。すなわち、反応残基(Q)にオキシエチレン基が直接結合していることが好ましい。
【0068】
炭素数1〜3のアルキル基、プロペニレン基及び/又は水素原子(R)のうち、炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル及びiso−プロピルが挙げられる。また、プロペニレン基としては、2−プロペニル及び1−プロペニルが挙げられる。これらのうち、メチル、エチル、iso−プロペニル及び2−プロペニルが好ましく、さらに好ましくはメチル、エチル及び2−プロペニル、特に好ましくはメチル及びエチルである。
m個のRは同じでも異なっていてもよい。
【0069】
m個のR中に、アルキル基及び/又はアルケニル基を含む場合、すべてのRのうち、水素原子の数は、mが4のとき0〜3が好ましく、さらに好ましくは0〜2、特に好ましくは0又は1であり、mが3のとき、0〜3が好ましく、さらに好ましくは0又は1であり、mが2のとき、0又は1が好ましい。
【0070】
一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B1)としては、非還元性の二又は三糖類(b1)、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(b2)及び必要により炭素数1〜3のモノハロゲン化炭化水素(b3)の化学反応により製造され得る構造を有するものが含まれる。すなわち、このような化学反応により製造され得る構造を有するポリオキシアルキレン化合物(B1)は、オキシアルキレン基に分布を生じる場合があり、この場合、厳密には複数種類のポリオキシアルキレン化合物(B1)の混合物となり、この混合物の中に、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B1)が含まれるものである。なお、この場合でも製造方法を限定するものではない。
【0071】
そして、アルキレンオキシド(b2)の使用量(モル部)としては、非還元性の二又は三糖類(b1)1モル部に対して、10〜100が好ましく、さらに好ましくは25〜95、特に好ましくは30〜90、最も好ましくは35〜85である。この範囲であると、流動性がさらに良好となる。
また、炭素数1〜3のモノハロゲン化炭化水素(b3)を使用する場合、(b3)の使用量(モル部)としては、非還元性の二又は三糖類単位1モル部に対して、1〜4が好ましく、さらに好ましくは1.2〜3.7、特に好ましくは1.4〜3.3、最も好ましくは1.5〜3.0である。この範囲であると、流動性がさらに良好となる。
【0072】
非還元性の二又は三糖類(b1)としては、一般式(1)における反応残基(Q)を構成することができる二又は三糖類と同じものが使用でき、好ましい範囲も同じである。
【0073】
アルキレンオキシド(b2)としては、炭素数2〜4のアルキレンオキシド等が使用でき、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド(1,2−ブチレンオキシド等)(BO)及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、流動性の観点等から、EO、EOを含有する混合物及びPOが好ましく、さらに好ましくはEOを含有する混合物である。
また、複数種類のアルキレンオキシドを用いる場合、反応させる順序(ブロック状、ランダム状及びこれらの組合せ)及び使用割合には制限ないが、ブロック状又はブロック状とランダム状の組合せを含むことが好ましい。また、この場合、EOを含有することが好ましく、EOの使用割合(重量%)は、アルキレンオキシドの全重量に基づいて、2〜30が好ましく、さらに好ましくは3〜27、特に好ましくは4〜23、最も好ましくは5〜20である。EOと、PO又は/及びBOとを含む場合、EOの反応後にPO及び/又はBOを反応させることが好ましい。
【0074】
モノハロゲン化炭化水素(b3)としては、炭素数1〜3のモノハロゲン化アルキル及びモノハロゲン化プロペン等が使用できる。モノハロゲン化アルキルとしては、モノクロロメタン、モノブロモメタン、モノクロロエタン、モノブロモエタン、2−ブロモプロパン、1−クロロプロパン及び2−クロロプロパン等が挙げられる。
モノハロゲン化プロペンとしては、1−クロロプロペン、1−ブロモプロペン、2−ブロモプロペン及び2−クロロプロペン等が挙げられる。
これらのうち、モノクロロメタン、モノブロモメタン、モノクロロエタン、モノブロモエタン、2−ブロモプロパン、2−クロロプロパン、1−クロロプロペン及び1−ブロモプロペンが好ましく、さらに好ましくはモノクロロメタン、モノブロモメタン、モノクロロエタン、モノブロモエタン、1−クロロプロペン及び1−ブロモプロペン、特に好ましくはモノクロロメタン、モノブロモメタン、モノクロロエタン及びモノブロモエタンである。
これらは単独で、または混合して使用してもよい。
【0075】
ポリオキシアルキレン化合物(B1)は、公知のアルキレンオキシド付加反応及びWilliamson合成反応により得られる(国際公開WO2004/101103パンフレット等)。
【0076】
次に一般式(2)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B2)について説明する。
水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基(R)のうち、炭素数1〜30のアルキル基としては、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基等が使用できる。
【0077】
直鎖アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、ヘニコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ヘプタコシル、ヘキサキシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル及びトリアコンシル等が挙げられる。
【0078】
分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル、2−エチルヘキシル、イソトリデシル、イソテトラデシル、イソオクタデシル、イソトリアコンシル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、2−ブチルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルドデシル、2−デシルテトラデシル、2−ドデシルヘキシル、2−ドデシルヘキサデシル、3,5,5−トリメチルヘキシル及び3,7,11−トリメチルドデシル等が挙げられる。
【0079】
また、(R)のうち、炭素数2〜30のアルケニル基としては、直鎖アルケニル基及び分岐アルケニル基等が使用できる。
【0080】
直鎖アルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘニコセニル、ドコセニル、トリコセニル、テトラコセニル、ヘプタコセニル、ヘキサキセニル、ヘプタコセニル、オクタコセニル、ノナコセニル及びトリアコンテニル等が挙げられる。
【0081】
分岐アルケニル基としては、イソブテニル、イソペンテニル、ネオペンテニル、イソヘキセニル、イソトリデセニル、イソオクタデセニル及びイソトリアコンテニル等が挙げられる。
【0082】
これらのうち、流動性の観点等から、水素原子、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基が好ましく、さらに好ましくは水素原子及び分岐アルキル基、特に好ましくは炭素数4〜18の分岐アルキル基、最も好ましくは2−エチルヘキシル、2−ブチルオクチル及び2−オクチルドデシルである。
【0083】
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(OA)としては一般式(1)と同じである。これらのうち、オキシエチレン及びオキシプロピレンが好ましい。
OAには2種以上のオキシアルキレン基が含まれてもよい。2種以上のオキシアルキレン基が含まれる場合、ブロック状、ランダム状及びこれらの混合のいずれでもよいが、オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック状が好ましい。
【0084】
pは、1〜100の整数を表し、好ましくは2〜50の整数、さらに好ましくは4〜20の整数、特に好ましくは6〜15の整数である。
【0085】
なお、ポリオキシアルキレン化合物(B2)は、1種のpを持つ単一化合物でもよく、分布を持つ混合物でもよい(製造しやすさの観点等から、分布のある化合物が好ましい)。また、アルキル基又はアルケニル基の種類が異なる化合物同士の混合物でもよい。
【0086】
ポリオキシアルキレン化合物(B2)は、公知のアルキレンオキシド付加反応により得られる(特開2005−054128公報等)。
【0087】
ポリオキシアルキレン化合物(B2)は市場からも容易に入手でき、たとえば以下の商品等が挙げられる。
PEGシリーズ(PEG200、PEG600、PEG1000、PEG2000、PEG4000S等){三洋化成工業(株)製}
ナローアクティー(登録商標)シリーズ(CL−40、CL−70、CL−100、CL−120、CL−140、CL−160、ID−40、ID−60、ID−70、FD−80、FD−140等){三洋化成工業(株)製}
ニューポール(登録商標)シリーズ(LB−285、LB−1715、50HB−100、50HB−260、50HB−400、PP−200、PP−1000、PP−4000、PE−61、PE−71、PE−75等){三洋化成工業(株)製}
サンノニック(登録商標)シリーズ(SS−70、SS−90、SS−120等){三洋化成工業(株)製}
【0088】
ポリオキシアルキレン化合物(B1)及び/又は(B2)を含有する場合、ポリアルキレン化合物(B1)及び/又は(B2)の含有量(重量%)は、共重合体(A)、ポリアルキレン化合物(B1)及び(B2)の合計重量に基づいて、0.1〜40が好ましく、さらに好ましくは0.2〜30、特に好ましくは0.5〜20である。この範囲であると、流動性がさらに良好となる。
【0089】
ポリオキシアルキレン化合物(B1)及び(B2)を含有する場合、ポリオキシアルキレン化合物(B1)の含有量(重量%)は、ポリオキシアルキレン化合物(B1)及び(B2)の重量に基づいて、0.1〜60が好ましく、さらに好ましくは1〜50、特に好ましくは10〜30である。また、この場合、ポリオキシアルキレン化合物(B2)の含有量(重量%)は、ポリオキシアルキレン化合物(B1)及び(B2)の重量に基づいて、40〜99.9が好ましく、さらに好ましくは50〜99、特に好ましくは70〜90である。
【0090】
ポリオキシアルキレン化合物(B1)及び/又は(B2)を含有する場合、共重合体(A)の含有量(重量%)は、共重合体(A)、ポリアルキレン化合物(B1)及び(B2)の合計重量に基づいて、60〜99.9が好ましく、さらに好ましくは70〜99.8、特に好ましくは80〜99.5である。この範囲であると、流動性がさらに良好となる。
【0091】
本発明の流動化剤には、共重合体(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B1)及び(B2)以外に、他の構成成分(界面活性剤及び/又は水性溶媒等)を含有してもよい。
界面活性剤としては、ノニオン型、カチオン型、アニオン型又は両性型の公知の界面活性剤が使用できる。
【0092】
ノニオン型界面活性剤としては、アルキルフェノールのアルキレンオキシド(アルキレンオキシドの炭素数2〜4;以下特記しない限り同様)付加体、高級脂肪酸アルキレンオキシド付加体、多価アルコール脂肪酸エステル、高級アルキルアミンのアルキレンオキシド付加体、高級脂肪酸アミドのアルキレンオキシド付加体、アセチレングリコールのアルキレンオキシド付加体及びポリオキシアルキレン変性シリコーン(ポリエーテル変性シリコーン)等が挙げられる。
【0093】
カチオン型界面活性剤としては、高級アルキルアミン塩、高級アルキルアミンアルキレンオキシド付加体、ソロミンA型カチオン界面活性剤、サパミンA型カチオン界面活性剤、アーコベルA型カチオン界面活性剤、イミダゾリン型カチオン界面活性剤、高級アルキルトリメチルアンモニウム塩、高級アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、サパミン型第4級アンモニウム塩及びピリジニウム塩等が挙げられる。
【0094】
アニオン型界面活性剤としては、脂肪酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸とその塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルアルキルタウリン塩及びアルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。
【0095】
両性型界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩及び高級アルキルジメチルベタイン等が挙げられる。
【0096】
界面活性剤を含有する場合、この含有量(重量%)は、共重合体(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B1)及びポリオキシアルキレン化合物(B2)の重量に基づいて、0.1〜20が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10、特に好ましくは1〜5である。この範囲であると流動性がさらに良好となる。
【0097】
水性溶媒としては、上記のものが挙げられる。
水性溶媒を含有する場合、この含有量(重量%)は、共重合体(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B1)及びポリオキシアルキレン化合物(B2)の重量に基づいて、10〜1000が好ましく、さらに好ましくは50〜900、特に好ましくは100〜600である。
【0098】
本発明の無機粒子スラリー用流動性改良剤に、ポリオキシアルキレン化合物(B1)、ポリオキシアルキレン化合物(B2)及び/又は他の構成成分を含有する場合、本発明の無機粒子スラリー用流動性改良剤は、共重合体(A)と、ポリオキシアルキレン化合物(B1)、ポリオキシアルキレン化合物(B2)及び/又は他の構成成分とを均一混合(均一溶解又は均一分散)することにより得られる。
【0099】
たとえば、共重合体(A)が液状の場合、ポリオキシアルキレン化合物(B1)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B2)は、水性溶媒と共に共重合体(A)と均一混合(均一溶解又は均一分散)される。
【0100】
また、共重合体(A)が固状の場合、共重合体(A)は、ポリオキシアルキレン化合物(B1)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B2)と均一混合(均一溶解又は均一分散)されてもよい。また、本発明の流動性改良剤は、液状の共重合体(A)とポリオキシアルキレン化合物(B1)及び/又はポリオキシアルキレン化合物(B2)とを均一混合した液体を粉体に担持させた粉であってもよい。
【0101】
本発明の流動化剤は、無機粒子スラリー用の流動化剤として適している。本発明の流動性改良剤を添加すると、被添加体のスラリー流動性が大きく向上し、作業性が非常に良好となる。
【0102】
無機粒子としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属ケイ酸塩、金属窒化物及び金属粉、並びにこれらの混合物及びこれらの複合体等が含まれる。
【0103】
金属酸化物としては、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化スズ、酸化銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化バナジウム、酸化モリブテン、酸化イットリウム及び酸化アンチモン等が挙げられる。
【0104】
金属水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0105】
金属炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、及びハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0106】
金属硫酸塩としては、硫酸カルシウム及び硫酸バリウム等が挙げられる。
【0107】
金属ケイ酸塩としては、ケイ酸カルシウム、クレー(モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土等)、タルク、マイカ、セピオライト、イモゴライト、セリサリト及びガラス等が挙げられる。
【0108】
金属窒化物としては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素及び窒化ケイ素等が挙げられる。
【0109】
金属粉としては、金、銀、銅、チタン、クロム、バリウム、白金、ロジウム及びスズ等が挙げられる。
【実施例】
【0110】
次に、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下、特記しない限り部は重量部を、%は重量%を意味する。
<実施例1>
滴下ライン、撹拌装置及び温度計付きの耐圧反応容器にイオン交換水500部及びイソプロピルアルコール200部、2−メルカプタノール3部をを投入し、撹拌下、アクリル酸50部、アクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル[ブレンマーAE−90、日油(株)製;「ブレンマー」は同社の登録商標である。]1000部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液100部をそれぞれ別々の滴下ラインから2時間かけて一定速度で滴下しながら密閉下で反応させた。反応温度は80〜100℃を保った。滴下終了後、3時間95〜100℃に保った後、150部のイオン交換水を滴下(加水)しながらイソプロピルアルコールを減圧除去した後、30℃まで冷却し、撹拌下、40℃以下に保ちながら、徐々に48%水酸化ナトリウム水溶液[試薬特級、関東化学(株)製]0.6部を分割投入した。そして加水して濃度を40%に調整して、本発明の流動性改良剤(1)[アクリル酸(9.9モル%−アクリル酸ナトリウム塩(0.1モル%)−アクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル(90モル%)共重合体]を得た。なお、重量平均分子量は5,000であった。
【0111】
<実施例2>
「イソプロピルアルコール200部、2−メルカプタノール3部、アクリル酸50部及びアクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル1000部及び48%水酸化ナトリウム水溶液0.6部」を、「イソプロピルアルコール0部、2−メルカプタノール1部、メタクリル酸50部、メタクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:90モル)エステル[ブレンマーPME−4000、日油(株)製]583部及び28%アンモニア水溶液[試薬特級、ナカライテスク(株)製]0.04部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の流動性改良剤(2)[メタクリル酸(79.9モル%)−メタクリル酸アンモニウム(0.1モル%)−メタクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:90モル)エステル(20モル%)共重合体]を得た。なお、重量平均分子量は20,000であった。
【0112】
<実施例3>
「イソプロピルアルコール200部、2−メルカプタノール3部、アクリル酸50部及びアクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル1000部及び48%水酸化ナトリウム水溶液0.6部」を、「イソプロピルアルコール0部、2−メルカプタノール0.5部、無水マレイン酸50.0部、メタクリル酸オクタデシルオキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:30モル)エステル[ブレンマーPSE−1300、日油(株)製]845.9部及び50%水酸化カリウム水溶液[試薬特級、和光純薬(株)製]28.6部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の流動性改良剤(3)[マレイン酸(25モル%)−マレイン酸カリウム(25モル%)−メタクリル酸オクタデシルオキシポリオキシエチレン(オキシエチレン30モル)エステル(50モル%)]を得た。なお、重量平均分子量は50,000であった。
【0113】
<実施例4>
「イソプロピルアルコール200部、2−メルカプタノール3部、アクリル酸50部及びアクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル1000部及び48%水酸化ナトリウム水溶液0.6部」を、「イソプロピルアルコール0部、2−メルカプタノール0.1部、アクリル酸50部、アクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル74.1部及び48%水酸化ナトリウム水溶液38.6部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の流動性改良剤(4)[アクリル酸(20モル%−アクリル酸ナトリウム塩(40モル%)−アクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル(40モル%)共重合体]を得た。なお、重量平均分子量は100,000であった。
【0114】
<実施例5>
「イソプロピルアルコール200部、2−メルカプタノール3部、アクリル酸50部及びアクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル1000部及び48%水酸化ナトリウム水溶液0.6部」を、「イソプロピルアルコール0部、2−メルカプタノール1.5部、メタクリル酸50部、メタクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:23モル)エステル[ブレンマーPME−1000、日油(株)製]958.6部及び28%アンモニア水溶液8.7部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の流動性改良剤(5)[メタクリル酸(30モル%)−メタクリル酸アンモニウム(10モル%)−メタクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:23モル)エステル(60モル%)共重合体]を得た。なお、重量平均分子量は30,000であった。
【0115】
<実施例6>
「イソプロピルアルコール200部、2−メルカプタノール3部、アクリル酸50部及びアクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル1000部及び48%水酸化ナトリウム水溶液0.6部」を、「イソプロピルアルコール0部、2−メルカプタノール0.5部、無水マレイン酸50部、メタクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:90モル)エステル[ブレンマーPME−4000、日油(株)製]2531.7部及び28%アンモニア水溶液3.4部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の流動化剤(6)[マレイン酸(40モル%)−マレイン酸アンモニウム(5モル%)−メタクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:90モル)エステル(55モル%)共重合体]を得た。なお、重量平均分子量は40,000であった。
【0116】
<実施例7>
実施例1で得た流動化剤(1)[アクリル酸(9.9モル%−アクリル酸ナトリウム塩(0.1モル%)−アクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル(90モル%)共重合体]99部と、ポリオキシアルキレン化合物(B1−1)[蔗糖・プロピレンオキシド35モル付加体・メチル2モルエーテル化体]1部とを攪拌しながら40℃まで昇温し、この温度にて均一攪拌混合して、本発明の流動性改良剤(8)を得た。
【0117】
なお、ポリオキシアルキレン化合物(B1−1)は以下のようにして得た。
精製グラニュー糖342部(1モル部)及びN−メチルピロリドン800部を均一混合しながら、窒素ガスを用いて加圧窒素置換(ゲージ圧で0.4MPaになるまで加圧し0.02MPaになるまで排出する操作)を3回繰り返した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、次いで同温度でプロピレンオキシド2030部(35モル部)を6時間かけて滴下し、さらに同温度にて4時間攪拌を続けて残存するプロピレンオキシドを反応させた。その後120℃、666〜13332Paの減圧下にてN−メチルピロリドンを留去した後、50℃以下にて水酸化ナトリウム88部(2.2モル部)を加えた。減圧下攪拌しつつ昇温し80℃とした後、大気圧に戻して、攪拌下同温度にてメチルクロライド101部(2モル部)を4時間かけて導入した。さらに2時間同温度にて攪拌を続けた後に40℃まで冷却した。得られた反応混合物のうち500部を分液ロートに採り、イオン交換水500部とn−ヘキサン{試薬特級、シグマ社(株)製}500部を加えて振とうした後静置して分離させ、n−ヘキサン層を得た。このn−ヘキサン層から、100℃、666〜13332Paの減圧下にてn−ヘキサンを留去した後、90℃にて、粗ポリオキシアルキレン化合物にイオン交換水85部を加え均一混合し、引き続き、キョーワード700{協和化学工業(株)製}200部を加え、同温度にて1時間均一攪拌した後、同温度にてNo.2濾紙{東洋濾紙(株)製}を用いて濾過してキョーワード700を取り除き、さらに1333〜2666Paの減圧下120℃にて1時間脱水して、ポリオキシアルキレン化合物(B1−1)[蔗糖・プロピレンオキシド35モル付加体・メチル2モルエーテル化体]を得た。
【0118】
<実施例8>
実施例2で得た流動化剤(2)[メタクリル酸(79.9モル%)−メタクリル酸アンモニウム(0.1モル%)−メタクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:90モル)エステル(20モル%)共重合体]90部と、ポリオキシアルキレン化合物(B1−2)[蔗糖・プロピレンオキシド13モル・プロピレンオキシド/エチレンオキシド各5モルランダム・プロピレンオキシド40モル付加体]5部と、ポリオキシアルキレン化合物(B2−1)[ブタノール・プロピレンオキシド50モル・エチレンオキシド50モル付加体]5部とを攪拌しながら40℃まで昇温し、この温度にて均一攪拌混合して、本発明の流動性改良剤(8)を得た。
【0119】
なお、ポリオキシアルキレン化合物(B1−2)及びポリオキシアルキレン化合物(B2−1)は以下のようにして得た。
サンニックスポリオールRP−410A{三洋化成工業(株)製、蔗糖のプロピレンオキシド13モル付加体;「サンニックス」は同社の登録商標である。}1095部(1モル部)及び水酸化カリウム{試薬特級(有効成分85%)、以下同じ}10部(水分を減じた有効成分量、以下同じ)を均一混合しながら、130℃、1333〜2666Paの減圧下で1時間脱水した後、同減圧下でプロピレンオキシド290部(5モル部)及びエチレンオキシド220部(5モル部)の混合物を100〜120℃にて約2時間で滴下し、引き続き、プロピレンオキシド2320部(40モル部)を100〜120℃にて約6時間で滴下し、さらに約4時間同温度に保ち残存するプロピレンオキシドを反応させて、粗ポリオキシアルキレン化合物を得た。
次いで、実施例7と同様にして、200部のキョーワード700にて処理して、ポリオキシアルキレン化合物(B1−2)[蔗糖・プロピレンオキシド13モル・プロピレンオキシド/エチレンオキシド各5モルランダム・プロピレンオキシド40モル付加体]を得た。
【0120】
ブタノール74部{試薬特級、和光純薬工業(株)製}(1モル部)及び水酸化カリウム{試薬特級、和光純薬工業(株)製}0.5部を均一混合及び加圧窒素置換しながら100℃に昇温した後、減圧下(0.013MPa以下)で1時間脱水した。次いで、150℃に昇温し、この温度でプロピレンオキシド2900部(50モル部)を連続滴下し(0.1〜1MPa)、同温度にさらに2時間保った。その後、130℃にし、この温度でエチレンオキシド2200部(50モル部)を連続滴下し(0.1〜1MPa)、同温度でさらに3時間保った。そして、この反応生成物にマグネシウムシリケート(キョーワード600、協和化学株式会社)200部を加え、同温度にて1時間均一撹拌した後、同温度にてNo.2濾紙{東洋濾紙(株)製}を用いて濾過してキョーワード600を取り除き、ポリオキシアルキレン化合物(B2−1)[ブタノール・プロピレンオキシド50モル・エチレンオキシド50モル付加体]を得た。
【0121】
<実施例9>
実施例3で得た流動化剤(3)[マレイン酸(25モル%)−マレイン酸カリウム(25モル%)−メタクリル酸オクタデシルオキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:30モル)エステル(50モル%)]80部と、ポリオキシアルキレン化合物(B1−3)[トレハロース・エチレンオキシド10モル付加体]20部とを攪拌しながら40℃まで昇温し、この温度にて均一攪拌混合して、本発明の流動性改良剤(9)を得た。
【0122】
なお、ポリオキシアルキレン化合物(B1−3)は以下のようにして得た。
トレハロース{試薬特級、和光純薬工業(株)製}342部(1モル部)及びDMF{ジメチルホルムアミド;三菱ガス化学(株)製、水分含有量0.005%、以下同じ}2000部を均一混合しながら、窒素ガスを用いて加圧窒素置換(ゲージ圧で0.4MPaになるまで加圧し0.02MPaになるまで排出する操作)を3回繰り返した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、同温度にてエチレンオキシド440部(10モル部)を12時間かけて滴下し、さらに同温度にて4時間攪拌を続けて残存するエチレンオキシドを反応させた。次いで120℃で1333〜13332Paの減圧下にてDMFを除去し、さらに実施例7と同様にして、200部のキョーワード700にて処理し、ポリオキシアルキレン化合物(B1−3)[トレハロース・エチレンオキシド10モル付加体]を得た。
【0123】
<実施例10>
実施例4で得た流動化剤(4)[アクリル酸(20モル%−アクリル酸ナトリウム塩(40モル%)−アクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル(40モル%)共重合体]70部と、ポリオキシアルキレン化合物(B1−4)[ラフィノース・エチレンオキシド100モル付加]15部と、ポリオキシアルキレン化合物(B2−2)[トリアコンタノール・エチレンオキシド1モル付加体]15部とを攪拌しながら40℃まで昇温し、この温度にて均一攪拌混合して、本発明の流動性改良剤(10)を得た。
【0124】
なお、ポリオキシアルキレン化合物(B1−4)及びポリオキシアルキレン化合物(B2−2)は以下のようにして得た。
「トレハロース342部及びエチレンオキシド440部」を「ラフィノース{試薬特級、和光純薬工業(株)製}504部(1モル部)及びエチレンオキシド4400部(100モル部)に変更」したこと以外、実施例9と同様にして、ポリオキシアルキレン化合物(B1−4)[ラフィノース・エチレンオキシド100モル付加体]を得た。
【0125】
トリアコンタノール438部{純度96%以上、アルドリッチ社製}(1モル部)水酸化カリウム{試薬特級、和光純薬工業(株)製}0.5部を均一混合及び加圧窒素置換しながら100℃に昇温した後、減圧下(0.013MPa以下)で1時間脱水した。次いで、150℃に昇温し、この温度でエチレンオキシド44部(1モル部)を連続滴下し(0.1〜1MPa)、同温度にさらに2時間保った。そして、この反応生成物にマグネシウムシリケート(キョーワード600、協和化学株式会社)200部を加え、同温度にて1時間均一撹拌した後、同温度にてNo.2濾紙{東洋濾紙(株)製}を用いて濾過してキョーワード600を取り除き、ポリオキシアルキレン化合物(B2−2)[トリアコンタノール・エチレンオキシド1モル付加体]を得た。
【0126】
<実施例11>
実施例5で得た流動化剤(5)[メタクリル酸(30モル%)−メタクリル酸アンモニウム(10モル%)−メタクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:23モル)エステル(60モル%)共重合体]60部と、ポリオキシアルキレン化合物(B2−3)[トリデシルアルコール・エチレンオキシド5モル付加体]40部とを攪拌しながら40℃まで昇温し、この温度にて均一攪拌混合して、本発明の流動性改良剤(11)を得た。
【0127】
なお、ポリオキシアルキレン化合物(B2−3)は以下のようにして得た。
「トリアコンサノール438部及びエチレンオキシド44部」を「トリデカノール200部{試薬特級、和光純薬工業(株)}(1モル部)及びエチレンオキシド220部(5モル部)に変更」したこと以外、実施例10と同様にして、ポリオキシアルキレン化合物(B2−3)[トリデシルアルコール・エチレンオキシド5モル付加体]を得た。
【0128】
<実施例12>
実施例6で得た流動化剤(6)[マレイン酸(40モル%)−マレイン酸アンモニウム(5モル%)−メタクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:90モル)エステル(55モル%)共重合体]99部と、ポリオキシアルキレン化合物(B2−4)[ポリオキシエチレングリコール(エチレンオキシド45モル付加物)、PEG2000、三洋化成工業(株)]1部とを攪拌しながら40℃まで昇温し、この温度にて均一攪拌混合して、本発明の流動性改良剤(12)を得た。
【0129】
<比較例1>
滴下ライン、撹拌装置及び温度計付きの耐圧反応容器にイオン交換水300部及びイソプロピルアルコール300部を投入し、撹拌下、アクリル酸50部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液100部をそれぞれ別々の滴下ラインから3時間かけて一定速度で滴下しながら密閉下で反応させた。反応温度は80〜100℃を保った。滴下終了後、3時間95〜100℃に保った後、150部のイオン交換水を滴下(加水)しながらイソプロピルアルコールを減圧除去した後、30℃まで冷却し、撹拌下、40℃以下に保ちながら、徐々に48%水酸化ナトリウム水溶液[試薬特級、関東化学(株)製]57.3部を分割投入した。そして加水して濃度を40%に調整して、比較用の流動性改良剤(13)[アクリル酸(1モル%)−アクリル酸ナトリウム塩(99モル%)共重合体]を得た。なお、重量平均分子量は20,000であった。
【0130】
<比較例2>
「イソプロピルアルコール200部、2−メルカプタノール3部、アクリル酸50部及びアクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル1000部及び48%水酸化ナトリウム水溶液0.6部」を、「イソプロピルアルコール0部、2−メルカプタノール1部、メタクリル酸50部、メタクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:90モル)エステル[ブレンマーPME−4000、日油(株)製]411.8部及び28%アンモニア水溶液28.7部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、比較用の流動性改良剤(14)[メタクリル酸(11モル%)−メタクリル酸アンモニウム(50モル%)−メタクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:15モル)エステル(39モル%)共重合体]を得た。なお、重量平均分子量は20,000であった。
【0131】
<比較例3>
「イソプロピルアルコール200部、2−メルカプタノール3部、アクリル酸50部及びアクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル1000部及び48%水酸化ナトリウム水溶液0.6部」を、「イソプロピルアルコール0部、2−メルカプタノール0.05部、アクリル酸50部、アクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル[ブレンマーAE−4000、日油(株)製]1000部及び48%水酸化ナトリウム水溶液5.8部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、比較用の流動性改良剤(15)[アクリル酸(9モル%)−アクリル酸ナトリウム(1モル%)−アクリル酸メトキシポリオキシエチレン(オキシエチレン:2モル)エステル(90モル%)共重合体]を得た。なお、重量平均分子量は150,000であった。
【0132】
実施例及び比較例で得た流動性改良剤(1)〜(15)を用いて、アルミナスラリーについて、流動性試験を行い、これらの結果を以下に示す。
【0133】
<多価金属イオン水溶液の調整1>
ステンレスビーカーに塩化カルシウム二水和物[試薬特級、関東化学(株)製]1.44部と塩化マグネシウム六水和物[試薬特級、関東化学(株)製]1.64部及びイオン交換水1000部を投入後、完全に溶解させるまで撹拌を行い、多価金属イオン水溶液(C−1)を得た。
【0134】
<多価金属イオン水溶液の調整2>
ステンレスビーカーに塩化アルミニウム六水和物[試薬特級、関東化学(株)製]1部及びイオン交換水1000部を投入後、完全に溶解させるまで撹拌を行い、多価金属イオン水溶液(C−2)を得た。
【0135】
<流動性試験方法1>
容量500mlのステンレスビーカーに上記で調製した多価金属イオン水溶液(C−1)92gを投入し、40重量%水溶液にした流動性改良剤7g及び消泡剤(ノプコNXZ:サンノプコ(株)製)2gを加えた。ついで、ホモミキサー[T.K.HOMO MIXER MARKII、特殊機化工業(株)製]で1,000rpmで攪拌しつつ、炭酸カルシウム[エスカロン#2000、三共精粉(株)製]308gを投入した後、3,000rpmにて10分間攪拌を行い、濃度77重量%のスラリーを調製した。得られたスラリーを25℃に温調し、スラリーの粘度をただちにE型粘度計[CAP−2000L、ブルックフィールド社製]を用いて回転速度5rpmにて測定した。粘度測定した後のスラリーを密閉下、25℃にて1ヶ月間静置した後、ハードケーキの有無をガラス棒を用いて確認した。ハードケーキの無いもののみ、上下に30回振とうした後、スラリー調製直後と同様の条件にて粘度を測定した。
流動性改良剤を用いなかったこと以外、上記と同様にして、ブランク用のスラリーを調製し、同様にして粘度を測定した。
これらの結果を表1に示す。数値の小さい方が流動性が高いことを意味し好ましい。
【0136】
【表1】




(注)表中の「×」は、ハードケーキが発生し、粘度測定ができなかったことを意味する。
「スラリー作成不可」は、多価金属イオン水溶液と無機粒子とを均一に混合することすらできないため、スラリー化もできなかった(以下同じ)。
【0137】
<流動性試験方法2>
容量500mlのステンレスビーカーに上記で調製した多価金属イオン水溶液(C−2)120gを投入し、40重量%水溶液にした流動性改良剤7g及び消泡剤(ノプコNXZ:サンノプコ(株)製)2gを加えた。ついで、ホモミキサー[T.K.HOMO MIXER MARKII、特殊機化工業(株)製]で1,000rpmで攪拌しつつ、酸化チタン[GTR−100、堺化学工業(株)製]280gを投入した後、3,000rpmにて10分間攪拌を行い、濃度70重量%のスラリーを調製した。
また、流動性改良剤を用いなかったこと以外、上記と同様にして、ブランク用のスラリーを調製した。
これらのスラリーについて、<流動性試験方法1>と同様にして粘度を測定し、これらの結果を表2に示す。数値の小さい方が流動性が高いことを意味し好ましい。
【0138】
【表2】




(注)表中の×は、ハードケーキが発生し、粘度測定ができなかったことを意味する。
【0139】
<流動性試験方法3>
容量500mlのステンレスビーカーに上記で調製した多価金属イオン水溶液(C−1)120gを投入し、40重量%水溶液にした流動性改良剤7g及び消泡剤(ノプコNXZ:サンノプコ(株)製)2gを加えた。ついで、ホモミキサー[T.K.HOMO MIXER MARKII、特殊機化工業(株)製]で1,000rpmで攪拌しつつ、アルミナ[AES−11、住友化学(株)製]280gを投入した後、3,000rpmにて10分間攪拌を行い、濃度70重量%のスラリーを調製した。
また、流動性改良剤を用いなかったこと以外、上記と同様にして、ブランク用のスラリーを調製した。
これらのスラリーについて、<流動性試験方法1>と同様にして粘度を測定し、これらの結果を表3に示す。数値の小さい方が流動性が高いことを意味し好ましい。
【0140】
【表3】




(注)表中の×は、ハードケーキが発生し、粘度測定ができなかったことを意味する。
【0141】
本発明の流動性改良剤を用いたスラリーは、比較用の流動性改良剤を用いたスラリーに比べ、多価金属イオンが多量に存在するようなスラリーであっても、高い流動性を示し、かつ長期分散安定性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の流動化剤は、多価金属イオンが存在するような無機粒子(金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属ケイ酸塩、金属窒化物及び金属粉など)スラリーに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和カルボン酸(a1)、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)及びエチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有してなり、
エチレン性不飽和カルボン酸(a1)単位、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)単位及びエチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)単位のモル数に基づいて、エチレン性不飽和カルボン酸(a1)単位の含有量が9.9〜79.9モル%、エチレン性不飽和カルボン酸塩(a2)単位の含有量が0.1〜40モル%、エチレン性不飽和カルボン酸アルコキシポリオキシアルキレンエステル(a3)単位の含有量が20〜90モル%であることを特徴とする無機粒子スラリー用流動性改良剤。
【請求項2】
共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が、5,000〜100,000である請求項1に記載の流動性改良剤。
【請求項3】
さらに、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B1)及び/又は一般式(2)で表されるポリオキシアルキレン化合物(B2)を含有してなる請求項1又は2に記載の流動性改良剤。

{R-(OA-)ni}m Q (1)

Qは非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Rは炭素数1〜3のアルキル基、プロペニレン基及び/又は水素原子を表し、m個のR及びm個の(OA)niは同じでも異なっていてもよく、niは0〜100の整数、mは2〜4の整数、iは1〜mの整数を表し、m個のniは同じでも異なってもよいが少なくとも1個は1以上であり、OAの総数(Σni×m)は10〜100である。

-(OA-)p OH (2)

は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、pは1〜100の整数を表す。
【請求項4】
共重合体(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B1)及びポリオキシアルキレン化合物(B2)の合計重量に基づいて、共重合体(A)の含有量が60〜99.9重量%、ポリオキシアルキレン化合物(B1)及びポリオキシアルキレン化合物(B2)の合計含有量が0.1〜40重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の流動性改良剤。
【請求項5】
無機粒子が金属酸化物である請求項1〜4のいずれかに記載の流動性改良剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の流動性改良剤、無機粒子及び水性媒体からなる無機粒子のスラリー。

【公開番号】特開2011−6621(P2011−6621A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153131(P2009−153131)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】