説明

無機粒子分散エマルション

【課題】無機粒子の分散性が良好な状態で維持可能な無機粒子分散エマルションを提供することを目的とする。
【解決手段】油相液と、無機粒子を含む水相液とを撹拌混合して得られる油中水型エマルションであって、前記水相液には、比重1.5g/cm〜11g/cmの無機粒子と、前記水相液に含有する水分量を100wt%としたときに、0.5wt%〜5wt%の寒天とを含有し、前記水相液を油中水型エマルションの分散相として、前記無機粒子を分散させたことを特徴とする無機粒子分散エマルションを採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油相液と水相液とを撹拌混合して得られる油中水型エマルション(以下、「W/O型エマルション」と記す。)であって、特に無機粒子を高い分散状態で保つことができる無機粒子分散エマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
無機粒子を含有したエマルションは、顔料、各種触媒、異方性導電材料等様々な分野において、エマルション、もしくは、エマルションから分離採取して固形成分を得るための製造工程等で利用されている。例えば、特許文献1には、有機EL素子をバックライトに用いたフィールドシーケンシャル液晶表示装置において、有機EL素子と液晶パネルとの間に、光拡散部材を設けており、この光拡散部材は、液状の冷却媒体に、金属粒子、ガラスビーズ等の光拡散用粒子をエマルション粒子として備えている例が開示されている。
【0003】
特許文献2には、電波吸収材料に用いられる多孔質体に関する技術であり、導電性材料を均等に分散させたシリコーンエマルジョンを用い、このシリコーンエマルジョンを硬化、乾燥させて多孔質電波吸収体を形成する技術が開示されている。
【0004】
特許文献3には、光触媒効果を有する酸化亜鉛又は酸化チタンと貴金属粒子を含む光触媒の粒子と、バインダー成分とを含むエマルションから、水分と油分を乾燥させて、光触媒効果を有する多孔質膜を製造する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−290146号公報
【特許文献2】特開2004−172200号公報
【特許文献3】特開2005−296830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術の分野において、スラリーやサスペンション等の液中に無機粒子を均一に分散させた状態が望まれている。しかし、比重の大きい無機粒子は沈降しやすく、液中に無機粒子を均一に分散させるのは難しいとされてきた。同様に、無機粒子を含有したエマルションが各方面で利用される場合に、エマルション中に形成された分散相の粒子(以下、「エマルション粒子」と記す。)に無機粒子を含有させ、このエマルション粒子が所望の大きさで均一に分散された状態が望まれている。しかし、比重の大きい無機粒子を含む分散相を連続相に混合した場合、無機物の比重が大きいために、無機粒子は、分散相に留まらず無機粒子のみが連続相中に沈降してしまう。もしくは、無機粒子を含むために、連続相と分散相の比重差が大きくなり、乳化しても非常に短時間で連続相と分散相とに分離してしまい、無機粒子の分散性を保つことは難しくなる。このため、無機粒子をエマルション粒子に含有させる場合には、無機粒子の大きさや比重により材料選定の制約があった。また、生成したエマルションの撹拌状態を維持する必要があり、生成したエマルションの乳化状態を長期保存することが難しかった。
【0007】
そこで、本件発明は、無機粒子の分散性が良好な状態で維持可能な無機粒子分散エマルションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するため、以下のような手段を採用した。
【0009】
本件発明に係る無機粒子分散エマルションは、油相液と、無機粒子を含む水相液とを撹拌混合して得られる油中水型エマルション(W/O型エマルション)であって、前記水相液には、比重1.5g/cm〜11g/cmの無機粒子と、前記水相液に含有する水分量を100wt%としたときに、0.5wt%〜5wt%の寒天とを含有し、前記水相液を油中水型エマルション(W/O型エマルション)の分散相として、前記無機粒子を分散させたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る無機粒子分散エマルションは、前記無機粒子は、金属粒子、金属被覆粒子、金属酸化物粒子、金属塩、金属水酸化物のいずれか1種または2種以上であることが望ましい。
【0011】
本発明に係る無機粒子分散エマルションは、前記無機粒子は、平均粒径が0.01μm〜5μmであることが好ましい。
【0012】
本発明に係る無機粒子分散エマルションは、前記水相液は、前記水相液量を100wt%としたときに前記無機粒子を5wt%〜40wt%含有することが好ましい。
【0013】
本発明に係る無機粒子分散エマルションは、撹拌混合後の油中水型エマルション(W/O型エマルション)を、微細孔を通過させてエマルション粒子を整粒化したものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る無機粒子分散エマルションでは、W/O型エマルションの分散相となる水相液に、バインダー成分として寒天を用いることにより、無機粒子をW/O型エマルション中に分散させることができる。即ち、寒天を含有させて粘度の高い水相液とし、比重1.5g/cm〜11g/cmの比重の大きい無機粒子を含有しても、連続相中に無機粒子のみが沈降することがなく、水相液中に無機粒子を分散させることができる。そして、粘度の高い水相液により形成されるエマルション粒子は、乳化安定性に優れるので、比重の大きい無機粒子を含んでもエマルション粒子の形状を保つことができる。その結果、エマルション粒子中に無機粒子を分散させ、そのエマルション粒子が連続相である油相中に分散されることにより、エマルション中の無機粒子の分散状態を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る粒子の製造方法の最良の実施の形態に関して説明する。
【0016】
本件発明に係る無機粒子分散エマルションは、油相液と水相液とを撹拌混合して得られ、水相液にフィラーとして無機粒子を含有するW/O型エマルションである。W/O型エマルションは、油相液が連続相であり、水相液が分散相である。即ち、油相液中に、水相液からなるエマルション粒子が分散したエマルションである。W/O型エマルションは、分散相の水相液に比べて、連続相の油相液の粘度が高いので、水中油型エマルション(O/W型エマルション)に比べて、乳化安定性に優れている。
【0017】
水相液は、水に無機粒子と寒天とを加えて、フィラーとしての無機粒子を分散させた水系スラリーである。
【0018】
無機粒子は、比重1.5g/cm〜11g/cmであり、金属粒子、金属被覆粒子、金属酸化物粒子、金属塩、金属水酸化物のいずれか1種または2種以上である。比重が11g/cmより大きい無機粒子は沈降しやすいため、水相液中に分散させた状態を維持するために添加する寒天量が多くなり、エマルションの粘度が過度に高くなり取り扱い性が低下する。なお、前記無機粒子のより好ましい比重の上限値は9g/cmである。本発明に係る無機粒子分散エマルションは、沈降しやすい無機粒子を水相液中に分散させた状態を維持しやすい点に特徴があるので、水より比重の大きい粒子には対応可能ではある。しかし、水との比重の差が小さい粒子は寒天を添加せずとも、水相液中での分散性を比較的保てることを考えると、寒天を添加して得られる上記効果を発揮する下限値として比重1.5g/cmとする。
【0019】
無機粒子を構成する無機物の例としては、銅、銀、ニッケル、マグネタイト、酸化鉄(III)、四酸化三マンガン、二酸化マンガン、酸化銅(II)、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。特に、湿式合成により得られた銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、マグネタイト粒子、酸化鉄(III)粒子、酸化チタン粒子は粒径が小さく、水相液中に分散させる材料として、より好ましい。
【0020】
また、無機粒子は、平均粒径が0.01μm〜5μmであるものが好適である。平均粒径が0.01μm未満の無機粒子の場合、分散相(水相液)の粘度が上がりやすくなり、連続相(油相液)との乳化に適さない。一方、平均粒径が5μmを上回ると、無機粒子の沈降速度が速くなり、本件発明に係る無機粒子分散エマルションを用いても分散性を保持することが難しい。
【0021】
本明細書における平均粒径の測定は、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(Model9320−X100)を用いて測定される。分散媒には水を用いた。試料10gと水80mlを100mlのビーカーに入れ、分散剤(ヘキサメタリン酸ナトリウム)を2〜3滴添加する。次いで、超音波ホモジナイザー(SMT.Co.LTD.社製、UH−150型)を用い、出力レベル4に設定し、20秒間分散を行った。その後、ビーカー表面にできた泡を取り除き、試料を装置へ投入し、平均粒径を測定した。
【0022】
更に、水相液には、バインダーとしての寒天を含有するものである。寒天は、天草、オゴノリ、オバクサ等、特に限定することなくいずれの原料から得られたものでも使用できる。また、寒天の形状は、粉末寒天、フレーク寒天、固形寒天、角寒天、糸寒天いずれも使用可能であるが、生産性を考慮すると、吸水性能に優れる粉末寒天が好適である。
【0023】
水相液にバインダー成分として寒天を添加することで、エマルション粒子の形状安定性が増す。この結果、エマルション粒子同士の合一を防いで、エマルション粒子が分散した状態を保持できる。更に、この無機粒子分散エマルションを冷却して寒天をゲル化させると、ゲル化した寒天がエマルション粒子の保形剤として作用し、撹拌しなくても長時間エマルション粒子の形状を保つことができる。従って、本発明に係る無機粒子分散エマルションは、容易に長時間管理することができる。
【0024】
そして、寒天の含有量は、前記水相液に含有する水分量を100wt%としたとき0.5wt%〜5wt%である。寒天の含有量が0.5wt%未満であると、水相液の粘度が不足して、水相液中の無機粒子の分散性を保持する効果が得られず、無機粒子が沈降しやすくなるだけでなく、冷却した時の寒天のゲル化によるエマルション粒子の保形剤としての効果が得られず、エマルション粒子が壊れやすくなる。一方、寒天の含有量が5wt%を上回ると、エマルションの粘度が高くなりすぎて、水相液の調整段階において、寒天が溶解している温度で水相液を撹拌する際に、無機粒子の分散が阻害される可能性があるため好ましくない。
【0025】
[水相液の調整]
純水を攪拌機の容器内に投入し、次いで無機粒子及び分散剤を加え、1時間〜3時間撹拌混合し、水系スラリーを得る。撹拌は、せん断能力の高い攪拌機、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサーやTKフィルミクス(プライミクス社製)等を用いることができる。得られた水系スラリーの固形分が、水系スラリーを100wt%としたときに、10wt%〜55wt%となるように純水で調整し、これに寒天を加えて、3分間撹拌混合する。この水系スラリーを70℃〜90℃に加熱して、寒天を溶解させると同時に水分を蒸発させ、水系スラリーの固形分が、水系スラリーを100wt%としたときに5wt%〜40wt%となるように調整して水相液を得る。この時、水相液の粘度が100cp以下となるように分散剤を添加する。このようにして得られた水相液は、寒天の凝固を防ぐために、容器ごと90℃に保温し、撹拌を継続する。
【0026】
[油相液]
油相液は、植物油脂のみで良い。また、適宜、乳化剤等を添加しても良いが、本発明に係る無機粒子分散エマルションは、W/O型エマルションであり、且つ水相液中に寒天を含んでいるので、乳化剤等を添加せずとも、エマルションの安定性が得られる点も特徴であるので、乳化剤等は不要である。そして、油相液の粘度は、室温(23℃)で100cp〜1000cpであることが好ましい。植物油脂は、レシチン、大豆油、サラダ油、食用サフワラー油、ひまわり油、なたね油、とうもろこし油、こめ油、落花生油、オリーブ油、ごま油、亜麻仁油、ココナッツ油、パーム油、やし油、調合油等いずれを用いても良い。
【0027】
[乳化]
水相液と油相液とを同じ容器に入れ、混合撹拌することにより乳化して、W/O型エマルションを得る。水相液と油相液との体積混合比は、[水相液]:[油相液]=1:1〜1:4が好ましい。水相液と油相液との混合方法は、最初に一括混合しても良いし、油相液に水相液を徐々に添加しても良く、周知の方法を用いることができる。但し、水相液中における無機粒子ならびに寒天の分散状態を保つために、容器に少なくとも水相液を入れたら撹拌を開始することが好ましい。
【0028】
乳化時の撹拌速度は、乳化の進展に伴う混合液の粘度変化に応じて調整すると、エマルション粒子の形状安定性と分散性を保つことができるので、より好ましい。粘度に対して撹拌速度が速すぎると、所望のエマルション粒径よりも小さくなる可能性が高く、また、撹拌速度が遅すぎると所望のエマルション粒径よりも大きくなる可能性が高くなる。例えば、乳化によりエマルション粒子が生成されると、エマルション全体の粘度が低下するので、この粘度低下に応じて回転数も下げるのがより好ましい。
【0029】
上記乳化条件で得られるW/O型エマルションのエマルション粒子は、粒子径が1μm〜500μmであり、寒天と、複数の無機粒子とを含有するものとなる。なお、エマルション粒子中に含有する無機粒子数は、エマルション粒子の大きさと、乳化時の撹拌状態が影響する。本発明に係る無機粒子分散エマルションは、特に、エマルション粒子の粒子径が1μm〜50μmサイズに揃ったエマルションを製造するのに適している。
【0030】
無機粒子分散エマルションは、上記撹拌混合後のW/O型エマルションを、微細孔を通過させてエマルション粒子を整粒化すると、エマルション粒子の粒子径を、精度良く揃えることができる。エマルション粒子の粒子径が揃うと、各エマルション粒子に含有する無機粒子量も揃うので、結果として、エマルション中の無機粒子の分散状態を、より良好な状態とすることができる。
【0031】
無機粒子分散エマルションを通過させる微細孔は、周知のフィルタを用いることができ、微細孔の形状は特に限定しない。しかし、微細孔の孔径の下限値は、少なくとも含有する無機粒子が通過可能な大きさでなければならない。一方、微細孔の上限値は、整粒化したいエマルション粒子の大きさにより決まる。即ち、平均粒径が0.01μm〜5μmの無機粒子を用い、エマルション粒子の粒子径の上限値が500μmであることを考慮して、微細孔の孔径は、3μm〜400μmの範囲が望ましい。
【0032】
以下、実施例及び比較例を示して本件発明を具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0033】
無機粒子として、酸化鉄(III)、四三酸化マンガン、水酸化マグネシウム、炭酸ストロンチウムを用い、これらを含むエマルション粒子を分散させた無機粒子分散エマルションの例を示す。
【0034】
[水相液の調整]
40Lのビーズミルに水25Lを投入し、酸化鉄(III)15.55kg、四三酸化マンガン8.90kg、水酸化マグネシウム0.57kg、炭酸ストロンチウム0.72kg、及び分散剤として固形分40%の特殊カルボン酸型高分子界面活性剤を275g添加し、2時間撹拌して混合した。こうして得られた水系スラリーを217g採取し、水108gを加えて固形分を33.5%とし、更に、粉末寒天(伊那食品工業株式会社製 UP−37)7.5gを添加し、ホモジナイザーを用いて5000rpmで3分間撹拌して混合した。混合終了後に、水系スラリーを加熱して、寒天を溶解させると同時に、固形分が40wt%になるように水分を蒸発させた。この際、水系スラリーの粘度が50cp以下となるように分散剤を添加して水相液を調整した。生成した水相液は、寒天による水相液の凝固を防止するために、水相液の入った容器ごと撹拌しながら90℃で保温した。
【0035】
[乳化]
油相液は、室温(23℃)における粘度が100cpである合成植物油(日清オイリオグループ株式会社製 サラダ油)600ccを加熱して90℃にしたものを用意した。90℃に保温し、ホモジナイザーで撹拌している水相液に油相液を滴下した。この際、水相液が常にムラなく分散した状態となるように、ホモジナイザーの回転数を最初は3000rpm前後にし、乳化の進展に伴う撹拌容器内の混合液の粘度上昇に応じて撹拌速度を5000rpmを上限として上げることにより制御して、無機粒子分散エマルションを得た。次に、この無機粒子分散エマルションを10℃に冷却した。
【0036】
本実施例で得られた無機粒子分散エマルションを、冷却直後に光学顕微鏡で観察したところ、直径40μm程度のエマルション粒子が多数存在していることが確認できた。なお、このときのエマルション粒子は、冷却により寒天がゲル化して形状が保たれた状態である。その後、当該無機粒子分散エマルションを24時間静置し、再度光学顕微鏡で観察したところ、一部にエマルション粒子の合一が見られたものの、概ね直径40μm前後のエマルション粒子の状態を保っていた。
【比較例】
【0037】
比較例として寒天を含まない水相液を用いたエマルションを挙げる。水相液は、寒天を除く他の材料は実施例と同じもので調整し、油相液は実施例と同じくサラダ油を用いた。
【0038】
[水相液の調整]
40Lのビーズミルに水25Lを投入し、酸化鉄(III)15.55kg、四三酸化マンガン8.90kg、水酸化マグネシウム0.57kg、炭酸ストロンチウム0.72kg、及び分散剤として、固形分40%の特殊カルボン酸型高分子界面活性剤を275g添加し、2時間撹拌して混合した。こうして得られた水系スラリーを217g採取し、水108gを加えて固形分を33.5%とし、ホモジナイザーを用いて5000rpmで3分間撹拌して混合した。混合終了後に、水系スラリーを加熱して、固形分が40wt%になるように水分を蒸発させた。この際、水系スラリーの粘度が50cp以下となるように分散剤を添加して水相液を調整した。調整した水相液は、実施例と同様に水相液の入った容器ごと撹拌しながら90℃で保温した。
【0039】
上記水相液と、実施例と同じ油相液とを用いて、実施例と同様の方法で乳化してW/O型エマルションを得た。得られたエマルションを実施例と同じ方法で冷却した。
【0040】
比較例で得られたエマルションを、生成直後に光学顕微鏡で観察したところ、実施例と同様に直径40μm程度であったが、実施例と同じ条件で24時間放置後に、再度光学顕微鏡で観察したところ、水相液と油相液に完全に分離し、無機粒子は沈降していた。
【0041】
以上より、実施例で得られた無機粒子分散エマルションは、比較例のエマルションに比べ、エマルション粒子を長時間にわたり保形できた。なお、上記実施例では、無機粒子分散エマルションを冷却し、静置した状態までを示したが、上述の通り、実施例で得られた無機粒子分散エマルションは、静置後も良好な分散状態を保持しているので、これを生産中間体として、各種用途に使用できる。例えば、無機粒子分散エマルションをろ過して、連続相の合成植物油を分離除去すれば、無機粒子を含むエマルション粒子を得られ、適宜、望ましい連続相に入れて使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本件発明の無機粒子分散エマルションは、エマルション粒子の保形性に優れるので、無機粒子を含有したエマルション粒子の分散性に優れ、W/O型エマルション中に無機粒子が良好に分散した状態を保持できる。また、無機粒子分散エマルションは、エマルション粒子が分散した状態を長時間保持できるので、エマルションとしての利用、無機粒子の採取、生産中間体等、いずれの用途においても取り扱い性が向上する。また、寒天は吸水性に優れるが、他の物質と化合しにくいので、他の製造原料への影響が少ないので、汎用性が高い。従って、本件発明の無機粒子分散エマルションは、各種金属粉、酸化物、化粧料、医薬、肥料、色材、感光材、香料等の製造において、無機粒子の分散性と、その分散状態の保持が望まれる様々な分野で利用できる。例えば、本発明に係る無機粒子分散エマルションから無機粒子を分離採取したり、静電防止材料、導電材料等の製造の中間体として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相液と、無機粒子を含む水相液とを撹拌混合して得られる油中水型エマルションであって、
前記水相液には、比重1.5g/cm〜11g/cmの無機粒子と、
前記水相液に含有する水分量を100wt%としたときに、0.5wt%〜5wt%の寒天とを含有し、
前記水相液を油中水型エマルションの分散相として、前記無機粒子を分散させたことを特徴とする無機粒子分散エマルション。
【請求項2】
前記無機粒子は、金属粒子、金属被覆粒子、金属酸化物粒子、金属塩、金属水酸化物のいずれか1種または2種以上である請求項1に記載の無機粒子分散エマルション。
【請求項3】
前記無機粒子は、平均粒径が0.01μm〜5μmである請求項1又は請求項2に記載の無機粒子分散エマルション。
【請求項4】
前記水相液は、前記水相液量を100wt%としたときに前記無機粒子を5wt%〜40wt%含有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の無機粒子分散エマルション。
【請求項5】
撹拌混合後の油中水型エマルションを、微細孔を通過させてエマルション粒子を整粒化したものである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の無機粒子分散エマルション。

【公開番号】特開2008−247708(P2008−247708A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94082(P2007−94082)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000231970)パウダーテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】